説明

練り粉を体積分割する方法とその方法を実施する装置

本発明は、特に、製パン業、ウィーン風菓子パン製造業、ケーキ製造業などで用いられる練り粉(1)を、漏斗型容器(3)に入れて、体積によって分割する方法に関するものである。この方法というのはつまり、これから分割しようとする練り粉(1)の量を定めるのに適しており、前記漏斗型容器(3)の基底部に位置する開口部(7)の下に広がる分量決定室(6)の中に、前記練り粉(1)が重力により流れ込むのにまかせ;−前記分量決定室(6)を少なくとも部分的に閉じ;−前記分量決定室の中に納められたその量の練り粉(1)を体積によって複数の練り粉断片(2)に分割し;−分割された複数の前記練り粉断片(2)を前記分量決定室(6)から取り出して排出搬送台(14)の上に載せる、というものである。本発明はまた、そのような方法を実施する為の装置に関するものでもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製パン業、ウィーン風菓子パン製造業、ケーキ製造業などで用いられる練り粉を、漏斗型容器に入れて、体積によって分割する方法、並びに、その方法を実施する為の装置で、前記練り粉を入れる漏斗型容器を備え、その漏斗型容器の下部に、これから分割しようとする練り粉の分量を決めることのできる分量決定室に通じる開口部が開けられているような装置に関するものである。
【0002】
本発明は、製パン業、ウィーン風菓子パン製造業、ケーキ製造業などで用いられる練り粉の処理に関する分野に属するものである。
【背景技術】
【0003】
周知のように、製パン業で用いられる練り粉を体積によって複数の練り粉断片に分割するのは、前記練り粉を受け入れる為の漏斗型容器を用いて行うのであって、前記漏斗型容器の傾斜内壁面に沿って流れ落ちていく練り粉に作用する自然な重力により、練り粉が漏斗型容器の下部に溜まることになる。この漏斗型容器は下部のところで別の室に通じており、その室は、ピストンの作用で練り粉がその室に吸入されることから、所謂「強制注入室」と呼ばれているものである。そのようなピストンの数は、5本か6本、更には最大で12本ということもあるが、それはプチパンを作る場合で、ピストンはその漏斗型容器の全長にわたって隣り合わせに配置され、前記漏斗型容器の長手軸に対して直角方向に水平移動をする。
【0004】
その量の練り粉が強制注入室の中に吸い込まれるとすぐに、刃物がそこにスライドしてきて、それにより、前記強制注入室を閉鎖することにもなり、その練り粉は、その漏斗型容器の下部から切り離されることになる。留意されたいのは、前記刃物が塞ぐのは、その漏斗型容器の下部の開口部の一部だということで、だからこそ、そのようなピストンが逆方向に動くことで、その強制注入室の内部に取り入れられた、その量の練り粉を圧縮することが可能になるのである。事実、強制注入室の気密性は、漏斗型容器の下部のところでは実現されておらず、それは、場合によっては、まだその強制注入室の中にある空気や、余分な練り粉を排出することができるようにする為である。それゆえ、刃物でその強制注入室を閉じた後の圧縮作業の間に、余分な練り粉を漏斗型容器の中に戻すことができる。
【0005】
これに関連して、強制注入室は、分量決定室に向かい合うように配置されており、それぞれ互いに、強制注入ピストンを一本、分量決定ピストンを一本、備えている。既に触れたように、強制注入ピストンは漏斗型容器から練り粉を吸引し、つぎにそれを分量決定室に向かって圧縮する。強制注入ピストンで練り粉を圧縮する動きは、分量決定ピストンを押し戻すことになり、そこで分量決定ピストンは、留め具で歯止めのかかった後方位置まで後退することになる。この留め具は、分量決定ピストンの行程を制限し、それにより、分量決定室の容積と、実現される練り粉断片のサイズに変化をもたせる為に、調節できるようになっている。
【0006】
現行技術の不都合の第一のものは、練り粉を吸引し、圧縮する際に、練り粉に加えられる応力がとても強力であることに起因している。練り粉を吸引すると、それが裂けることになるし、その後で、圧縮すると、汗玉ができる、つまり、その練り粉に含まれた水分の一部が出てくることになる。それと同時に、練り粉を漏斗型容器の中に置いている間に発酵により形成された気泡が破壊されることになる。そういうわけで、練り粉の密度が大きく増大する傾向が生じて、ついには、1.2から1.3程度の値に達する。練り粉の中に蓄えられた張力は、練り粉が伸縮性と形状記憶性を有する材質であるだけに、練り粉を断片に分ける作業中に弾けてしまうことになり、その結果、出来上がった製品にムラが生じてしまう。
【0007】
また、強制注入ピストンと分量決定ピストンが同時に移動することにより、練り粉が強制注入室の中に密封されて圧縮されるとすぐに、その分量決定ピストンと、そのようにして形の決まった練り粉断片とを、垂直抽出通路にぴったり合わせるように、その強制注入室をずらすことになる。その結果、この分量決定ピストンと前記練り粉断片とに垂直のずれが生じ、ついには排出位置に達すると、そこで分量決定ピストンがその練り粉断片をベルト・コンベヤーのようなものの上に押し出すことになる。このような排出は、その分量決定ピストンの水平方向の推進力によって行われるのであり、練り粉断片は、強制注入室から前記ベルト・コンベヤーの上へと滑り出ることになる。
【0008】
その分量決定ピストンの影響で、その練り粉がまた改めて応力を受けることになる上に、このような排出手順の一通りは、相対的に複雑であり、生産を妨げ、そのスピードを頭打ちにする要因となる可能性がある。
【0009】
もう一つの解決方法は、特に文献仏国特許発明第2172446号明細書により、周知のもので、分割した後の練り粉断片を、強制注入室を45°の回転角度で旋回させた後、直接、その分量決定ピストンで、確実に排出するというものである。
【0010】
同様に、文献仏国特許発明第1176715号明細書で知られていることであるが、その強制注入室とそのピストンを垂直にずらした後、その排出ベルト・コンベヤーの上にその練り粉断片を押し出すことのできるように与えられた傾斜角度に従ってその方向づけを行うというものである。
【0011】
まず、観察してわかることは、これらの先行文献で提案された解決法ではいずれも、練り粉を漏斗型容器から押したり、吸引したりして、分量を決定したり分割したりすることである。それゆえ、こういう練り粉に加えられる応力が、得られる最終製品の品質を損なうおそれがある。
【0012】
また、このような二つの現行技術の文献に記載された装置は、練り粉断片を取り出す作業を改善することはあっても、完全な満足をもたらすものではない。事実、強制注入室の外にその練り粉断片を押し出すというのは、内壁に沿って加えられる摩擦のせいで、その練り粉断片を変形させることになる。このような取り出しへの抵抗力は、練り粉がとても柔らかい場合には、ますます大きくなる。事実、このような練り粉は、その練り粉に水分が多いため、それだけ一層、流動的で接着性の強いものになり、それを取り出すというのは、とても難しくなる。
【0013】
既に今、説明したように、そのような装置は、結果として、分割器から出たところで変形した練り粉断片を送り出すことになるのであり、その結果、最終製品の形状を整ったものにしたければ、そのような練り粉断片を成形するために更に追加の作業を想定する必要がある。
【0014】
そこに付け加えなければならないのは、国際公開第2004/043151号パンフレットで知られているように、焼き上がったパン製品を、複数の針を用いて掴み、それにより、それを鋳型から取り出すというものである。それらの針は、この鋳型から取り出すために、その製品を締めつけることができるように、互いに向かい合って配置されている。しかしながら、これは、焼き上がった製品、つまりある程度の剛直性とまとまりがあるものについてしか考えられていない。
【特許文献1】仏国特許発明第2172446号明細書
【特許文献2】仏国特許発明第1176715号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/043151号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような現行技術の不都合を克服することをめざすものである。以上のようなわけで、第一の進歩性の一環として考えられたのが、漏斗型容器から練り粉を引き受け、そこから単純に重力で分割することを目指すということなのだが、これは、当業者の固定観念には反するものであり、当業者であれば、そのように重力にまかせて練り粉を流すのでは、パン製品や類似のものの通常の生産速度を満たすことは到底できないと考えるものである。
【0016】
また、これも一切の論理に反するものではあるが、第二の進歩性で考えたのは、分割した後、排出ベルト・コンベヤーの上に押し出すというよりはむしろ、練り粉断片を掴んで、排出ベルト・コンベヤーの上に置くことができるように設計された把握手段を用いて、分割室の中のそれぞれの区分から練り粉断片を取り出すということである。要するに、本発明では、それぞれの区分から練り粉断片を取り出すためには、練り粉断片を押し出すよりもむしろ、掴んだ方が、練り粉断片の変形を抑制することができるということを明らかにすることができたということである。
【0017】
このように論理を進めることで、本発明は、更に一歩を踏み出し、掴もうとする製品が剛直で焼き上がったものでなく、生の練り粉にありがちなように、流動的で形が変わりやすく、水分を多く含んでいても、把握手段は針の形をしていてもよいと思いつくに至った。事実、このような流動性ゆえに、当業者は、このような生の練り粉はそのような針の間を流れ落ちるだけだと考え、そのような解決法を到底、思いつくことはできない。要するに、本発明は、当業者の常識の逆を行くことができたのである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そういうわけで、本発明は、製パン業、ウィーン風菓子パン製造業、ケーキ製造業などで用いられる練り粉を、漏斗型容器に入れて、体積によって分割する方法に関するものであって、その方法は、
・ これから分割しようとする練り粉の量を定めるのに適しており、前記漏斗型容器の基底部に位置する開口部の下に広がる分量決定室の中に、前記練り粉が重力により流れ込むのにまかせ、
・ 前記分量決定室を少なくとも部分的に閉じ、
・ 前記分量決定室の中に納められたその量の練り粉を体積により複数の練り粉断片に分割し、
・ 前記分量決定室から、そのように分割された前記複数の練り粉断片を取り出して、搬送台、特に、排出ベルト・コンベヤーの上に載せる、
ことを特徴とする。
【0019】
本発明のもう一つの特徴として、その分量決定室の構成部分である可動式の底面に、その分量決定室に流れ込んだ練り粉がくっ付いていくということがある。
【0020】
特に強調しておきたいことは、前記可動式の底面が行き来できる行程の範囲で、これから分割しようとする練り粉の量を決定するということである。
【0021】
本発明の更にもう一つの特徴として、その分量決定室から、分割された練り粉断片の一つ一つを個別に掴み取って、それを前記搬送台の上に載せるということがある。
【0022】
できれば、把握手段による練り粉断片の取り出し作業の間、個別にか、またはグループごとに操作される複数のピストンが、仕切られたその分量決定室の可動式の底面を介して、その練り粉断片を押し上げていくことが望ましい。
【0023】
本発明はまた、前記の方法を実施する為の装置で、製パン業、ウィーン風菓子パン製造業、ケーキ製造業などで用いられる練り粉を、体積によって分割する装置に関するものであり、その装置は、前記練り粉を入れる漏斗型容器を備え、前記漏斗型容器の下部には、これから分割しようとする練り粉の分量を決めることのできる分量決定室に通じる開口部が開けられており、その装置は、一方では、前記分量決定室を更に小さな区分に分ける小分け手段の形で、前記分量の練り粉を更に練り粉断片に分ける切り分け手段を備え、他方では、前記練り粉断片を機械的に取り出し、そのような練り粉断片を排出搬送台の上に載せるのに適した手段を備えており、その装置は、前記分量決定室が、最低20個の練り粉断片に対応する量の練り粉を重力により受け入れるのに適したような寸法でできていて、その一方で、その切り分け手段が、その分量決定室を、練り粉断片一つを納めるのに適した少なくとも20個の個別の区分に小分けするように設計されていることを特徴としている。
【0024】
この装置のもう一つの特徴によると、一方では、この分量決定室の中に重力で流れ込んだ練り粉がくっ付いていく為、他方では、前記分量決定室の容積を調整し、これから分割しようとする練り粉の分量を決定する為に、その分量決定室の底面は可動式に設計されている。
【0025】
特に強調しておきたいことは、その分量決定室の可動式の底面は、複数のピストンに小分けされていて、そのそれぞれが、一つの区分の底面を画定しているということである。
【0026】
本発明の更にもう一つの特徴によると、前記練り粉断片を機械的に取り出す手段を構成しているのは、練り粉断片一つ一つを個別に掴み取る把握手段である。
【0027】
ある好適な実施態様では、前記把握手段は、少なくとも一対の引き込み式の針である。
【0028】
特に強調しておきたいのは、前記針は、その分量決定室の中の一つの区分の中に、前記区分の深さに合わせて調整した深さで、つまり、前記分量決定室の構成部分である可動式の底面の位置に合わせて調整した深さで食い込むように設計されているということである。
【0029】
本発明では、その装置は、練り粉断片を排出搬送台の上に載せる際に、そこからそのような針を抜き取る為に、練り粉断片一つを固定するのに適した留め具を一つ備えている。
【0030】
本発明から生じる利点は、ここが極めて重要なのだけれども、要するに、練り粉に圧縮型の応力が加わらないということである。漏斗型容器から練り粉を採取するのも、ただ重力だけで行われる。ところが予想外にも、本発明は、その漏斗型容器からの練り粉の採取を確実に行う為に吸引や圧力、つまり機械的手段を用いていた先行技術の解決法と同等の速度を達成することを可能にしているのである。このような結果が得られるのは、分量決定室の区分の数を多くしたことによるが、一方、現行技術の論法は、要するに、そのような区分の数を制限し、更には最小限にまで減らして、必要な吸引力を封じ込めようというものである。
【0031】
そういうわけで、逆説的なことに、本発明を用いると、練り粉を複数の練り粉断片に分割する際には、その練り粉には物理的な特徴を改変するような外力は一切、加わらず、しかも、分割作業は、パン製品の生産ラインで制限要因にはならない。
【0032】
更に、本発明は、練り粉の固まりの中でももっとも柔らかいものに適合させた引き抜き方を用いて、練り粉断片を更に均一なものにし、そのような練り粉断片が置かれた状態も改善するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照しつつ、本発明の実施態様についての、以下の詳細な説明を読むことで明らかとなる。なお、該実施態様は、本発明を限定する趣旨のものではない。
−図1は、本発明の装置の一部分の概略的な斜視図であり、
−図2から図6は、本発明の方法の主な工程を断面図により概略的に示すものである。
【0034】
本発明は、製パン業、ウィーン風菓子パン製造業、ケーキ製造業などで用いられる練り粉の固まり1を体積によって、断片2に分けることに関するものである。
【0035】
そのようにする為に、練り粉の固まり1を漏斗型容器3に納めるのだが、その漏斗型容器の形は漏斗型で、前記練り粉の固まり1が重力により傾斜内壁面4に沿って流れ落ちていくことができるようになっている。それゆえ、練り粉の固まり1は漏斗型容器3の下部に溜まるのだが、その漏斗型容器が開口部7を通して分量決定室6に通じていて、その分量決定室が、これから分割しようとする練り粉の固まりの分量を決めるのに適したものになっている。
【0036】
前記分量決定室6は、その漏斗型容器3の長手方向の全長にわたり、あるいはその一部に沿って、その漏斗型容器3の下に広がっており、その漏斗型容器3から練り粉の固まり1が重力で流れ落ちることにより、これから複数の練り粉断片2に分割しようとする練り粉の固まりの分量をその分量決定室が受け入れるようになっている。
【0037】
本発明の利点の一つは、その練り粉の固まり1に吸い込みや吸引の応力がかからないことである。事実、その練り粉の固まり1が漏斗型容器3から分量決定室6へと通過していくのは、重力の働きによる自重の作用下において行われる。
【0038】
この分量決定室6は複数の側壁5と一つの底面8とでできている。具体的には、そのような側壁の少なくとも一つ、できれば、底面8が、動かせるようになっていて、その分量決定室内に納めることのできる練り粉の固まり1の分量を定めることができるようにし、そして、以下の説明で詳述することになる練り粉の分割作業が確実に行えるようになっていることが望ましい。
【0039】
好適には、分量決定室6の底面8が、このように可動性のものであることにより、その漏斗型容器3から練り粉の固まり1が流れ落ちていくのにくっ付いていくことができるようなものであればよい。できれば、この底面8は、上から下へ、そして逆方向へと垂直に移動できるようになっていることが望ましい。
【0040】
所定の量の練り粉の固まり1が分量決定室6の中に注ぎ込まれるとすぐに、この分量決定室6は、少なくとも部分的に、好ましくは全面的に閉鎖される。分量決定室6の閉鎖は、漏斗型容器3の下部にある開口部7を塞ぐことで行うのだが、そのときに用いるのが切断器具9であり、それは例えば、その漏斗型容器3に対して長手方向に延びる薄板のようなものであり、それによってその漏斗型容器3を分量決定室6から切り離すようになっている。
【0041】
この切断器具9は可動式のもので、できれば、前記漏斗型容器3の長手軸に対して直角水平方向である水平の平行移動をさせることができるようになっているのが望ましい。
【0042】
本発明の方法の次の工程は、要するに、前記分量決定室6に納まった練り粉の固まり1を、複数の断片2に体積分割することである。
【0043】
そうする為に、本発明の装置は、前記量の練り粉の固まり1を断片2に切り分ける切り分け手段11を備えているが、それは、この分量決定室6を、断片2が一つ納まるのに適した個別の区分12が少なくとも20個できるように、小分けするように設計された手段である。そのような切り分け手段11は、具体的には、一つまたは複数の刃物13であり、その分量決定室6の下に、垂直に移動できるように可動式に取り付けられている。刃物13の平行移動は、その分量決定室の上下方向の全長にわたって行われ、それにより、練り粉の固まり1を断片2に切り分けることになるが、それもできれば、同じような大きさに切り分けるのが望ましい。そのように均等に切り分けるとすぐに、刃物13のそれぞれは、高い位置に維持されて、その分量決定室6の内部で区分12が区切られることになる。
【0044】
それに関連して、区分12の区切り方は、図1にみられるように、その分量決定室6の長手方向の全長にわたり、または一部に沿って、前記分量決定室6に対して横断面を区切るようにして行ってもよい。もう一つ別の実施態様においては、横方向の区分けと組み合わせて、もしくは横方向の区分けは行わずに、その分量決定室を長手方向に分割するというのも可能である。
【0045】
この分量決定室6の、複数の内壁のうちの一つのところに確保された隙間を通るようにして、刃物13が分量決定室6に切り込んでいく。一つの好ましい実施態様においては、その問題の内壁を底面8ということにして、それを刃物13の通る隙間で幾つにも仕切り、その各々が、一つの区分12の底面として機能するようになっている。事実、そのような複数の仕切られた底面を構成するのが複数のピストン10であり、そのような複数のピストンが集まって、全体として、前記可動式の底面8を形成するようになっている。
【0046】
本発明のもう一つの極めて重要な特徴は、その分量決定室6から練り粉断片2を引き出して、搬出台14の上に置くことである。
【0047】
これについては、搬出台14の種類は、どのようなものでも、固定式のものでも可動式のものでもよいのではあるが、できれば、ベルト・コンベヤーか、それに類するようなコンベヤーであるのが望ましい。この搬出台14が、分量決定室6の出口のところで、練り粉断片2を、製パン業、ウィーン風菓子パン製造業、ケーキ製造業などの製品製造の他の工程に向けて運んでいくようにしてもよい。
【0048】
また、体積で分割する装置は、前記練り粉断片2を機械的に取り出す手段16を備えていて、それは、そのような練り粉断片を、その搬出台14の上に置くのに適したものである。
【0049】
好適には、本発明の方法は、要するに、分量決定室6の中の区分12の中にある練り粉断片2を、一つずつ個別に掴んで、それを前記搬出台14の上に置くことである。
【0050】
そのようにする為に、機械的取り出し手段16を構成するのは、練り粉断片2を、一つずつ個別に把握する手段15である。この把握というのは、引き込み式の針または爪17のついた装置を介して行うことができれば理想的であろう。更に詳細には、練り粉断片2の一つ一つを、少なくとも一対の針17で掴むことができるということである。
【0051】
そういうわけで、そのような把握手段15は、一対もしくは複数対の針17が、少なくとも部分的に、練り粉断片2の一つ一つの内部に食い込むことにより、前記分量決定室6の中の区分12から、前記練り粉断片2を採取するのに適したものである。そのようにする為に、前記針17が、互いに向かい合って垂直に延び、平行移動できるように可動式に取り付けられていて、それにより、分量決定室6の中で、練り粉断片2の内部に食い込んでいくことができるようになっている。このような食い込みは、同時に行われる。
【0052】
留意されたいのは、そのような針17は、一方の針と他方の針の間に間隔が空けられていて、その間隔が、分量決定室6の幅及び/または、これから掴み取ろうとする練り粉断片2が納められた区分12の幅に応じて、調節可能であることである。
【0053】
更に詳細に述べると、そのような間隔を設けるについては、針17が前記分量決定室6の中に、もしくはその分量決定室6の中で仕切られた区分12の中に、互いに向かい合う二つの内壁側面5に沿って、食い込んで行けるようにすることである。しかも、その際に、針は、二つの内壁面5に対してより短い距離を保ちつつ、食い込んでいかなければならない。このような配置は、図5で見られる。好適には、区分12の深さに合わせて調整した深さで、つまり、前記分量決定室6の構成部分である可動式の底面8の位置に応じて、区分12に食い込んでいくように、前記針17が設計されていればよい。要するに、練り粉断片2を掴み取る工程は、その練り粉断片2が収納された区分12の底面を画定するピストン10の位置に応じた深さで行われる。こうすることにより、練り粉断片2の中に深く食い込むことができ、この練り粉断片を改めて成型する為の追加作業を行わなければならないような変形を生じさせることなく、練り粉断片を引き出すことができる。
【0054】
その次の工程は、要するに、把握手段15を平行移動させるか回転させて、その練り粉断片2への締めつけを改めて行うことである。その為に、針17は、相互に平行移動をしたり、回転したりするような取り付け方をして、二つ一組になったそのような針17が、それぞれの対の中で、互いに向かって接近していくようになっている。
【0055】
図6に見られる実施態様では、針17は回転するように可動式になっていて、その結果、各針の末端のそれぞれが、ほぼ同一直線上に整列するようになっており、しかも、しっかりとした締めつけを維持している。注目すべきは、一対の針17の両方の針17が、同一の垂直平面、あるいはややずれた複数の平面の中を延びていくようにすることができるようになっていて、それにより、場合によっては、回転した後で、互いに交わるようにもすることができるということである。
【0056】
要するに、前記把握手段15は、互いに接近していく方向に沿って可動式になった少なくとも二本の針17を備え、それにより、針が前記練り粉断片2に食い込んだのちに、その練り粉断片2をしっかりと確実に把握することができるようになっている。
【0057】
更に具体的に言うと、望ましい実施例においては、把握手段15は、分量決定室6の内部で小分けすることのできる練り粉断片2の最大数と少なくとも同数の対をなす針17を備える。そのような針17の複数の対が、把握板20のところに可動式に取り付けられていて、その把握板20は、分量決定室6及び/または漏斗型容器3を移動させることにより、練り粉の分割作業が終わった後、前記分量決定室6の上に出てくるようにすることができる。この時点では、前記針17の複数の対は、これから掴み取ろうとする練り粉断片2が収納された区分12の上で、適合された開口面21の中で引き込まれた位置にある。
【0058】
そして、針17は、引き込まれた位置から、前記把握板20に対して突出した状態で、掴みに行く位置にまで移動するように操作され自動制御で動くようになっていること、そしてその逆の動きもするようになっていることに、注目すべきである。
【0059】
そのような把握手段15、特に針17は、練り粉断片2を、それぞれの区分12から直接、取り出すように、設計してもよい。
【0060】
できれば、そのような把握手段15の上昇によって練り粉断片2を引き上げていく間ずっと、その分量決定室6の可動式の底面8が練り粉断片2を押し上げていくようにするのが望ましい。更に詳しく言うと、針17が掴んだ練り粉断片2の一つの引き上げは、区分12の底面8を画定するピストン10が再び持ち上がって来ることで、その練り粉断片2が上方に移動する際に、それを押し上げていくことにより行われるということである。
【0061】
更に具体的に述べると、各区分12のピストン10のそれぞれは、別々に制御し操作できるように設計されていて、それにより、練り粉断片2を完全に、あるいは部分的に、持ち上げることができるようになっているということである。
【0062】
そこでまた、ピストン10についてと同様に、針17も、練り粉断片2二つのどちらか一つを掴むように、分量決定室6の中で、何本もの針17の連なりを隣り合わせに配置して、操作するようにし、それにより、搬出台14の上に連続して置くことができるようにしてもよい。
【0063】
もう一つの特徴は、その装置、好適には把握手段15が、練り粉断片2を前記搬出台14の上に置く際に、そこから針17を抜き取りやすいように、練り粉断片2を固定するのに適した留め具18を備えていることである。更に詳細に言うと、前記針17を抜き取る際には、練り粉断片2は、その留め具18と搬出台14との間で動かないようにされるということである。
【0064】
つぎにその装置は当初の位置に復帰して、また改めて、練り粉断片2を掴み取る工程を繰り返すことになる。
【0065】
そういうわけで、針17の複数の対の第一連が練り粉断片2を掴んだあと、把握手段15は、その搬出台14の上にその複数の練り粉断片2を置きにいく。つぎにまた、改めて掴み取りの工程が始まって、把握手段15は分量決定室6の上に戻って来て、針17の複数の対の第二連を(もしくは、同じく第一連でもよいが、その場合は把握手段15が平行移動した後に)作動することにより、分量決定室6から、複数の練り粉断片2の第二連を採取し、それらをその搬出台14の上に置くようにしてもよい。このようにして、この一連の作業が、前記分量決定室6が完全に空になるまで繰り返される。
【0066】
複数の練り粉断片2を積極的に掴み取り、それらを搬出台14、この場合はベルト・コンベヤーの上に置くことの利点は、練り粉断片2の一つが、隣のもう一つにくっついて、それを引きずり、このベルト・コンベヤーの上でのその位置づけの妨げになるおそれがまったくないことである。この点について、改めて言及したいのが、この位置づけは、そのような練り粉断片2が生産ラインの下流で受けることになる処理の質を大きく左右するということである。
【0067】
本発明のもう一つの利点は、練り粉断片2の一つ一つを取り出すのが制御可能だということである。事実、分量決定室6は区分12に分割されており、そのそれぞれにピストン10が一つ付いていて、練り粉断片2の一つ一つを取り出して、それらを搬出台14の上で間隔を空けて置くことが可能である。特に、複数の練り粉断片2を搬出台の上に規則的に配置することは、何よりもまず、練り粉断片2それぞれを等間隔で置くことにより行われるのである。その場合、特に、搬出台14を移動させることにより、練り粉断片2を均一に配列することが可能となる。
【0068】
要するに、この第二の実施態様の利点は、特に、流動的であったり、湿っていたり、粘着性が強かったりする柔らかい練り粉の処理の一環として用いれば際立つものとなる。
【0069】
更に、必要とあれば、本発明の方法に補足的工程を用意する。その補足的工程というのは、要するに、前記分量決定室6を洗浄し、且つ/または潤滑油をさして滑りをよくして、その後、引き抜きやすくすること、しかもそれを、練り粉断片2を抜き取る工程が一通り終わるごとに定期的に行うことである。
【0070】
もう一つの特徴は、本発明の装置に、特に漏斗型容器3に練り粉の固まり1を供給するところにある。その装置によって、強制注入室6が不足のないように充填された状態を確保できるようにする為に必要となるのは、前記漏斗型容器3の中に練り粉の固まり1を置く際には特に用心し、注意することである。特に、その漏斗型容器3の内部での練り粉の固まり1の計量は、練り粉の固まり1の高さが、前記漏斗型容器3のどの箇所でも同様となることを確保しつつ、分割の過程を通じて一定していなければならない。
【0071】
その為に、図示されていない、もう一つの漏斗型容器を追加して、その漏斗型容器3の上に置く。サイズは小さくなっているが、それもまた、漏斗型に成形されていて、下部の開口部は前記漏斗型容器3に通じるようになっている。
【0072】
一つの特徴は、この追加の漏斗型容器を、特に、移動装置を介して、動かすところにある。それゆえ、この漏斗型容器は、作動中に、前記漏斗型容器3の上部に、練り粉の固まりを等しい体積で分けたものを、前記漏斗型容器3の開いた表面全体にわたって置くことになる。
【0073】
この追加の漏斗型容器の下部には、そこに置かれた練り粉の固まり1の片割れを、特にその下部をプログラムされたとおりに開閉することを通して、調節することのできる手段が設けられている。そういうわけで、落ちていく練り粉の固まりの量は、その漏斗型容器3の流量に応じて調節することができる。
【0074】
それゆえ、練り粉の固まりは、次のような順序で置かれていく。追加の漏斗型容器が、停止して、練り粉の固まり1の片割れを一つ置き、移動し、つぎにまたもう一つの片割れを置く等々。しかしながら、この順序は、その手順を行う間はずっと継続して繰り返されるものである。
【0075】
本発明の装置を複数、並列で取り付けて用いる場合には、追加の漏斗型容器を一つだけ、そのような装置に練り粉の固まり1を一定して供給する為に用意してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の装置の一部分の概略的な斜視図
【図2】分割しようとする練り粉が分量決定室に自重で下りた状態の断面図
【図3】切断器具により開口部を塞ぎ、分量決定室を閉鎖する状態の断面図
【図4】刃物によって練り粉を所定の体積で分割する状態の断面図
【図5】分割した練り粉に針が食い込んだ状態の断面図
【図6】針が回転し、接近した状態の断面図
【図7】把握手段の上昇により練り粉断片を引き上げた状態の断面図
【図8】引き上げた練り粉断片を搬出台にのせた状態の断面図
【符号の説明】
【0077】
1 練り粉
2 練り粉断片
3 漏斗型容器
4 傾斜内壁面
5 側壁
7 開口部
8 底面
9 切断器具
10 ピストン
11 切り分け手段
12 区分
13 刃物
14 搬出台
15 把握手段
16 取り出し手段
17 針
18 留め具
20 把握板
21 開口面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製パン業、ウィーン風菓子パン製造業、ケーキ製造業などで用いられる練り粉(1)を、漏斗型容器(3)に入れて、体積によって分割する方法であって、
・ これから分割しようとする練り粉(1)の量を定めるのに適しており、前記漏斗型容器(3)の基底部に位置する開口部(7)の下に広がる分量決定室(6)の中に、前記練り粉(1)が重力により流れ込むのにまかせ、
・ 前記分量決定室(6)を少なくとも部分的に閉じ、
・ 前記分量決定室の中に納められたその量の練り粉(1)を体積により複数の練り粉断片(2)に分割し、
・ 前記分量決定室(6)から、分割された前記複数の練り粉断片(2)を取り出して、排出搬送台(14)の上に載せる
ということを特徴とする方法。
【請求項2】
その分量決定室(6)の構成部分である可動式の底面(8)に、その分量決定室(6)に流れ込んだ練り粉(1)がくっ付いていくことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可動式の底面(8)が行き来できる行程の範囲で、これから分割しようとする練り粉(1)の量を決定することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
その分量決定室(6)から、分割された練り粉断片(2)の一つ一つを個別に掴み取って、それを前記排出搬送台(14)に載せることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
把握手段(15)により練り粉断片(2)が取り出されている間、その分量決定室(6)の可動式の底面(8)が、その練り粉断片を押し上げていくことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
そのような練り粉断片(2)を取り出した後、前記分量決定室(6)を洗浄し、且つ/または潤滑油をさして滑りをよくすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法を実施する為の装置で、製パン業、ウィーン風菓子パン製造業、ケーキ製造業などで用いられる練り粉(1)を、体積によって分割する装置であり、その装置は、前記練り粉(1)を入れる漏斗型容器(3)を備え、前記漏斗型容器(3)の下部には、これから分割しようとする練り粉(1)の分量を決めることのできる分量決定室(6)に通じる開口部(7)が開けられており、前記装置は、一方では、前記分量決定室(6)を更に小さな区分(12)に分ける小分け手段の形で、前記分量の練り粉(1)を更に練り粉断片(2)に分ける切り分け手段(11)を備え、他方では、前記練り粉断片(2)を機械的に取り出す手段(16)で、そのような練り粉断片を排出搬送台(14)の上に載せるのに適した手段を備えており、その装置は、前記分量決定室(6)が、最低20個の練り粉断片(2)に対応する量の練り粉(1)を重力により受け入れるのに適したような寸法でできていて、その一方で、その切り分け手段(11)が、その分量決定室(6)を、練り粉断片(2)一つを納めるのに適した少なくとも20個の個別の区分(12)に小分けするように設計されていることを特徴とする装置。
【請求項8】
一方では、この分量決定室(6)の中に重力で流れ込んだ練り粉(1)がくっ付いていく為、他方では、前記分量決定室(6)の容積を調整し、これから分割しようとする練り粉(1)の分量を決定する為に、その分量決定室(6)の底面(8)が可動式に設計されていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
その分量決定室(6)の可動式の底面(8)が、複数のピストン(10)に小分けされていて、そのそれぞれが、一つの区分(12)の底面を画定しているということを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
そのような区分(12)のピストン(10)が、グループごとに別々に制御し操作するのに適しているように設計されていることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記練り粉断片(2)を機械的に取り出す手段(16)を構成しているのは、練り粉断片(2)一つ一つを個別に掴み取る把握手段(15)であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
前記把握手段(15)が、少なくとも一対の引き込み式の針(17)であることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記針(17)が、互いに向かい合って垂直に延び、平行移動できるように可動式であることにより、その分量決定室(6)の中で、練り粉断片(2)の内部に食い込んでいくことができるようになっていることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
一対の針(17)の両針の相互間に間隔が空けられていて、その間隔が、その分量決定室(6)の幅及び/またはこれから掴み取ろうとする練り粉断片(2)を納める区分(12)の幅に応じて、調節可能であることを特徴とする、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記針(17)が、その分量決定室(6)の可動式の底面(8)の位置に合わせて調整された深さでその分量決定室(6)の中に食い込むように設計されていることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一つに記載の装置。
【請求項16】
前記針が、回転し、且つ/または平行移動できるように取り付けられていることで、互いに向かって接近していき、その練り粉断片(2)を掴み取るようになっていることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
練り粉断片を排出搬送台(14)の上に載せる際に、そこからそのような針(17)を抜き取る為に、練り粉断片(2)の一つを固定するのに適した留め具を一つ備えていることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか一つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−523437(P2009−523437A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550824(P2008−550824)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050672
【国際公開番号】WO2007/083070
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508219254)メカテルム, ソシエテ アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】MECATHERM, SOCIETE ANONYME
【Fターム(参考)】