説明

練り胡麻調合品

【課題】 貯蔵時に粘度上昇が少ない練り胡麻調合品を提供しようとする。
【解決手段】 練り胡麻と、該練り胡麻に対して1.1〜11重量%のエタノールと、該練り胡麻に対して0.13〜1.1重量%の水とを含んでなる練り胡麻調合品であり、練り胡麻と、該練り胡麻に対して1.5〜5.5重量%のエタノールと、該練り胡麻に対して0.3〜0.5重量%の水とを含んでなる練り胡麻調合品であり、練り胡麻に、該練り胡麻に対して1.5〜5重量%の濃度80〜95重量%の含水エタノールとが混合されてなる前記練り胡麻調合品である。又、前記練り胡麻に、該練り胡麻に対して胡麻油が添加された練り胡麻調合品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度を下げかつ沈殿物の生じにくい練り胡麻調合品に関する。
【背景技術】
【0002】
練り胡麻は風味が好まれ、ビン詰や小割りの袋詰状の、練り胡麻を配合したドレッシングやつけタレ製品が広く愛用されている。この練り胡麻は、胡麻をペースト状になるまで擂り潰して得られるものであるが、これらの練り胡麻配合品を工業的に製造する場合、大量の練り胡麻を貯蔵タンク等に一時貯留する必要がある。しかし、練り胡麻は長時間貯留すると堆積した高粘度の沈殿物を生じ、この貯留物をポンプで移送するうえで障害をきたす。
【0003】
貯蔵タンクからこの貯留物をポンプで移送する場合、上澄み液と沈殿物とに分離したこの貯留物を均一に戻す作業が必要であり、そうしないとポンプで汲み出し操作を行なった後も沈殿物が貯蔵タンク内に残ってしまう。貯留時間が長いと沈殿物が固化して均一化作業が困難になる。練り胡麻の粘度を上げると沈殿しにくくなるが、高い粘度はポンプの移送能力を大幅に低下させ、加工工程にとって問題となる。
【0004】
このため、あるいは更には加工工程全般にわたって工場現場からはもっと低粘度化の要望が大きい。しかし、上澄み液と沈殿物への分離は粘度が低いと起こりやすい。この分離を防ぐために増粘物質を添加すると当然粘度が増加し、現場でのハンドリング性を損なう。
【0005】
又、練り胡麻を用いた最終製品の安定性を向上させることに関しては、固形分の径の最適化等各種の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)が、最終製品を量産して製造する過程での大量の練り胡麻の安定性については、汎用の原料素材として風味が変わるような添加物が使用できないこともあり、有効な手段が見出されていない。
【特許文献1】特開2004−159606(特許請求の範囲及び段落番号0005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる点に鑑み、本発明の目的は、粘度が低く、貯蔵による粘度上昇が少なくかつ貯蔵時に分離しにくいという相反する事象の改善を行なった練り胡麻調合品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、練り胡麻と、該練り胡麻に対して1.1〜11重量%のエタノールを含んでなる練り胡麻調合品であることにある。
【0008】
又、本発明の要旨とするところは、更に、前記練り胡麻に対して0.13〜1.1重量%の水を含んでなる前記練り胡麻調合品であることにある。
【0009】
更に、本発明の要旨とするところは、練り胡麻と、前記練り胡麻に対して1.5〜5.5重量%のエタノールと、該練り胡麻に対して0.3〜0.5重量%の水とを含んでなる前記練り胡麻調合品であることにある。
【0010】
又更に、本発明の要旨とするところは、練り胡麻に、前記練り胡麻に対して1.5〜5重量%の濃度80〜95重量%の含水エタノールが混合されてなる前記練り胡麻調合品であることにある。
【0011】
前記練り胡麻調合品は、前記練り胡麻に対して胡麻油が添加され得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、粘度が低く、貯蔵により沈殿物が生じにくく、又、その沈殿物の粘度が工程操作に支障をきたすほどに上昇せず、かつ練り胡麻の風味をそのまま保ち、練り胡麻入り最終製品用の配合用原料として汎用的に使用できる練り胡麻調合品が提供される。更に、本発明の練り胡麻調合品はこれらの効果に加えて防腐効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
練り胡麻は、放置すると沈殿物を生じ、この沈殿物は高粘度である。例えば、粘度4210mpa・sの練り胡麻が、4週間の放置により5%の上澄み液(油分)を生じ、沈殿物の粘度が5160mpa・sになることが本願発明者により観察された。貯留期間が更に長くなれば沈殿物の粘度は更に上昇する。例えば、貯留期間を更に長くすることに対応する遠心分離機処理で遠心分離し強制沈殿させた沈殿物の粘度は、52900mpa・sに達する。なお、本明細書においては、遠心分離は遠心分離機処理として日立工機製:日立卓上遠心機(SCT5B)を使用、4000rpm、5分間で強制沈殿させることにより実施した。
【0014】
一方、練り胡麻に胡麻油を添加すると粘度が著しく低下することが本願発明者により観察された。表1に練り胡麻−胡麻油混合物における胡麻油の含有比率(重量%)と粘度との関係を示す。本明細書においては、粘度は検体の温度を20℃に設定しトキメックB型粘度計により、ローターNo.4を用い12rpmで測定した。
【0015】
【表1】

【0016】
表1により、胡麻油の含有率の増加に伴って急激に練り胡麻−胡麻油混合物の粘度が低下し、胡麻油の含有比率約6〜6.5重量%で、練り胡麻−胡麻油混合物の粘度が練り胡麻の粘度の約半分の値となる。
【0017】
しかし、練り胡麻に大量の胡麻油を加えると、練り胡麻の風味が損なわれ、胡麻油の風味が強調されることとなり、練り胡麻利用製品にとって好ましいことではない。更に、胡麻油の添加は、沈殿物の増加をもたらすことも観察された。例えば、練り胡麻x%に対して胡麻油y容量%(x+y=100)を混合した混合物は、1ヶ月で約0.6×容量y%の油分が上澄み液として分離し、2ヶ月で約0.9×y容量%の油分即ち添加された胡麻油の大部分が上澄み液として分離し、安定性に欠ける。
【0018】
一方練り胡麻は水を添加すると沈殿しにくくなることが観察された。しかし、水の添加は練り胡麻の粘度の増加をもたらす。
【0019】
このように、胡麻油や水の添加により、練り胡麻の粘度や沈殿物の発生状態をかえることは出来ても、この粘度の減少と沈殿物の抑制とは相反する事象であり、両者を両立させて実現することは胡麻油や水の添加では困難と判った。
【0020】
この点に鑑み、本願発明者は鋭意検討の結果、沈殿物の発生と粘度の増加がともに抑制される練り胡麻調合品を見出した。
【0021】
本発明の練り胡麻調合品は、練り胡麻と、該練り胡麻に対して1.1〜11重量%のエタノールを含んでなる。このように、練り胡麻に少量かつ適量のエタノールを用いて沈殿物の発生と粘度の増加がともに抑制されかつ練り胡麻の風味が損なわれたり異種の風味が加わらない練り胡麻調合品が得られた。
【0022】
本発明の練り胡麻調合品は、練り胡麻と、該練り胡麻に対して1.1〜11重量%のエタノールと、該練り胡麻に対して0.13〜1.1重量%の水とを含んでなる。このように、練り胡麻に少量かつ適量のエタノール及び水を用いて沈殿物の発生と粘度の増加がともに抑制されかつ練り胡麻の風味が損なわれたり異種の風味が加わらない練り胡麻調合品が得られた。
【0023】
本発明の態様及び効果を詳細に説明する。表2は、練り胡麻に濃度99.5%の含水エタノールを添加した練り胡麻調合物の、含水エタノールの添加量と、この練り胡麻調合物の粘度(mpa・s)を示す。表3は、表2の練り胡麻調合物をそれぞれ遠心分離機で遠心分離したときの上澄み液の発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物の粘度(mpa・s)を示す。
【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
表2により、濃度99.5%の含水エタノールの添加により、胡麻油を添加した場合より急激に添加量の増加につれて練り胡麻調合物の粘度が減少することがわかる。
【0027】
又、表3から、添加量の増加につれて沈殿物の粘度が減少することがわかる。濃度99.5%の含水エタノールが約4〜6重量%添加された練り胡麻調合物が沈殿物の粘度が低く更に好ましい。
【0028】
一方、練り胡麻とエタノールとの混合物の、混合割合と粘度との関係を表4に示す。表4中の添加量は、練り胡麻に対するエタノールの添加比率(重量%)であり、粘度は混合物の粘度である。この場合、エタノールの添加により添加比率の増加につれて混合物(練り胡麻調合物)の粘度が減少することがわかるが、添加比率が6%を越えたあたりで粘度が上昇に転じ、エタノール添加量が10%を越えると(詳細な観察では11%を越えると)エタノール添加による好ましい粘度減少効果が得られない。又、添加比率が30%になると、混合物にエタノールの分離が認められる。
【0029】
【表4】

【0030】
表5は、練り胡麻に濃度95.0%の含水エタノールを添加した練り胡麻調合物の、含水エタノールの添加量と、この練り胡麻調合物の粘度(mpa・s)を示す。表6は、表5の練り胡麻調合物をそれぞれ遠心分離機で遠心分離したときの上澄み液の発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物の粘度(mpa・s)を示す。
【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【0033】
表5により、濃度95.0%の含水エタノールの添加により、胡麻油を添加した場合とほぼ同様に添加量の増加につれて練り胡麻調合物の粘度が急激に減少することがわかる。
【0034】
又、表6から、添加量の増加につれて沈殿物の粘度が減少することがわかる。濃度95.0%の含水エタノールが約2〜6重量%添加された練り胡麻調合物が沈殿物の粘度が低く好ましい。
【0035】
表7は、練り胡麻に濃度90.0%の含水エタノールを添加した練り胡麻調合物の、含水エタノールの添加量と、この練り胡麻調合物の粘度(mpa・s)を示す。表8は、表7の練り胡麻調合物をそれぞれ遠心分離機で遠心分離したときの上澄み液の発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物の粘度(mpa・s)を示す。
【0036】
【表7】

【0037】
【表8】

【0038】
表7により、濃度90.0%の含水エタノールの添加により、添加量の増加につれて練り胡麻調合物の粘度が減少することがわかるが、減少の度合いは濃度95.0%の場合に比べて緩やかである。
【0039】
又、表8から、添加量の増加につれて沈殿物の粘度が減少し、添加量4重量%付近で粘度が最小になることがわかる。又、添加量の増加につれて沈殿物の量は増加傾向にある。濃度90.0%の含水エタノールが約2〜6重量%添加された練り胡麻調合物が沈殿物の粘度が低く、かつ沈殿物の発生が抑制されて好ましい。濃度90.0%の含水エタノールが約4重量%添加された練り胡麻調合物が沈殿物の粘度が低く更に好ましい。
【0040】
表9は、練り胡麻に濃度85.0%の含水エタノールを添加した練り胡麻調合物の、含水エタノールの添加量と、この練り胡麻調合物の粘度(mpa・s)を示す。表10は、表9の練り胡麻調合物をそれぞれ遠心分離機で遠心分離したときの上澄み液の発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物の粘度(mpa・s)を示す。
【0041】
【表9】

【0042】
【表10】

【0043】
表9により、濃度85.0%の含水エタノールの添加により、添加量の増加につれて練り胡麻調合物の粘度が増加することがわかる。又、表10から、添加量の増加につれて沈殿物の粘度が減少し、添加量4重量%付近で粘度が最小になることがわかる。又、添加量の増加につれて沈殿物の量は増加傾向にある。濃度85.0%の含水エタノールが約2〜6重量%添加された練り胡麻調合物が沈殿物の粘度が低く好ましい。濃度85.0%の含水エタノールが約4重量%添加された練り胡麻調合物が沈殿物の粘度が低く更に好ましい。
【0044】
表11は、練り胡麻に濃度80.0%の含水エタノールを添加した練り胡麻調合物の、含水エタノールの添加量と、この練り胡麻調合物の粘度(mpa・s)を示す。表12は、表11の練り胡麻調合物をそれぞれ遠心分離機で遠心分離したときの上澄み液の発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物の粘度(mpa・s)を示す。
【0045】
【表11】

【0046】
【表12】

【0047】
表11により、濃度80.0%の含水エタノールの添加により、添加量の増加につれて練り胡麻調合物の粘度が著しく増加することがわかる。又、表12から、添加量の増加につれて沈殿物の粘度が減少し、添加量2重量%付近で粘度が最小になることがわかる。又、添加量の増加につれて沈殿物の量は増加傾向にある。濃度80.0%の含水エタノールが約2〜6重量%添加された練り胡麻調合物が沈殿物の粘度が低く好ましい。濃度80.0%の含水エタノールが約2重量%添加された練り胡麻調合物が沈殿物の粘度が低く更に好ましい。
【0048】
表13は、練り胡麻に濃度75.0%の含水エタノールを添加した練り胡麻調合物の、含水エタノールの添加量と、この練り胡麻調合物の粘度(mpa・s)を示す。表14は、表13の練り胡麻調合物をそれぞれ遠心分離機で遠心分離したときの上澄み液の発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))、沈殿物の粘度(mpa・s)を示す。
【0049】
【表13】

【0050】
【表14】

【0051】
表13により、濃度75.0%の含水エタノールの添加により、添加量の増加につれて練り胡麻調合物の粘度が著しく増加することがわかる。又、表14から、添加量の増加につれて沈殿物の粘度が減少し、添加量2重量%付近で粘度が最小になることがわかる。又、添加量の増加につれて沈殿物の量は増加傾向にある。濃度75.0%の含水エタノールが約2〜4重量%添加された練り胡麻調合物が沈殿物の粘度が低く好ましい。濃度75.0%の含水エタノールが約2重量%添加された練り胡麻調合物が沈殿物の粘度が低く更に好ましい。
【0052】
以上の観察結果をもとに鋭意検討の結果、練り胡麻に少量かつ適度のエタノールが含有されることにより、又更に少量かつ適度の水が含有されることにより沈殿物の粘度が低い練り胡麻調合品が得られた。
【0053】
即ち、本発明の練り胡麻調合品は、練り胡麻と、該練り胡麻に対して1.1〜11重量%のエタノールを含んでなる。これにより、貯蔵により沈殿物が生じにくく、又、その沈殿物の粘度が低く、かつ練り胡麻の風味をそのまま保ち、練り胡麻入り最終製品用の配合用原料として汎用的に使用できる練り胡麻調合品が提供される。エタノールの含有量が11重量%を超えて大きくなると練り胡麻調合品は粘度低下効果が不充分である。
【0054】
又、本発明の練り胡麻調合品は、練り胡麻と、該練り胡麻に対して1.1〜11重量%のエタノールと、該練り胡麻に対して0.13〜1.1重量%の水とを含んでなる。これにより、貯蔵により沈殿物が更に生じにくく、又、その沈殿物の粘度が低く、かつ練り胡麻の風味とテクスチャーをそのまま保ち、練り胡麻入り最終製品用の配合用原料として汎用的に使用できる練り胡麻調合品が提供される。
【0055】
更に、本発明の練り胡麻調合品は、練り胡麻と、該練り胡麻に対して1.5〜5.5重量%のエタノールと、該練り胡麻に対して0.3〜0.5重量%の水とを含んでなる。これにより、貯蔵により沈殿物が生じにくく、又、その沈殿物の粘度が更に低く、かつ練り胡麻の風味とテクスチャーをそのまま保ち、練り胡麻入り最終製品用の配合用原料として汎用的に使用できる練り胡麻調合品が提供される。
【0056】
本発明の練り胡麻調合品は、練り胡麻に所定量のエタノールと、水とをそれぞれ単独で添加して得ることも可能であるが、上述の観察例のように含水エタノールを添加して1工程で得ることもできる。
【0057】
含水エタノールを添加する場合は、練り胡麻に対して1.5〜5重量%の濃度80〜95重量%の含水エタノールを添加することにより、沈殿物の粘度が低い本発明の練り胡麻調合品を1工程で容易に得ることが出来る。練り胡麻に対して1.8〜4.5重量%の濃度83〜92重量%の含水エタノールを添加することにより、貯蔵により沈殿物が生じにくく粘度が低い更に好ましい練り胡麻調合品が容易に得られる。
【0058】
本発明におけるこのような少量の所定量のエタノールと水との添加による沈殿物の粘度の減少効果は、練り胡麻と胡麻油との混合品においても得られる。表15に、練り胡麻に胡麻油を6.3重量%添加した混合物に食添用のメイオール´89を0〜10重量%添加したときの粘度を示す。又、表16にメイオール´89が添加されたこれらの混合物を、それぞれ遠心分離機で遠心分離したときの上澄み液の発生量(練り胡麻・胡麻油混合物と添加されたメイオール´89との総和物に対する比率(容量%))、沈殿物発生量(総和物に対する比率(容量%))、沈殿物の粘度(mpa・s)を示す。
【0059】
【表15】

【0060】
【表16】

【0061】
表15により、メイオール´89の添加により、添加量の増加につれて練り胡麻・胡麻油混合物の粘度が著しく増加することがわかる。又、表16から、添加量の増加につれて沈殿物の粘度が減少し、添加量2〜4重量%付近で粘度が最小になり、6重量%を超える比率では添加量の増加に伴って急激に粘度が増大することがわかる。又、添加量の増加につれて沈殿物の量は増加傾向にある。メイオール´89が約2〜6重量%添加された練り胡麻・胡麻油混合物が沈殿物の粘度が低く、かつ沈殿物の発生が抑制されて好ましい。メイオール´89が約2〜4重量%添加された練り胡麻・胡麻油混合物が沈殿物の粘度が低く、かつ沈殿物の発生が抑制されて更に好ましい。胡麻油の風味も必要とされる製品についてもこのように少量のエタノールと少量の水の添加による沈殿物の粘度の減少効果が得られる。胡麻油の風味を加味する目的で練り胡麻に胡麻油を添加する場合は、胡麻油が練り胡麻に対して0.1〜10重量%添加されることが風味とテクスチャーのうえで好ましい。
【実施例】
【0062】
実施例1
練り胡麻200kgに食添用アルコールメイオール´89を8kg添加し攪拌後貯蔵用タンクに貯留した。貯留直後の粘度は3940mpa・sであった。1週間貯留後に油分の分離は見られなかった。4週間貯留後に上澄み液が僅か約4容量%生じた。残りの大半の沈殿物はスラリーポンプで汲み上げて他の槽に容易に移送することができた。貯留直後のこの液を遠心分離機で遠心分離したときの上澄み液の発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))は29.3%、沈殿物発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))は70.7%、沈殿物の粘度は28100mpa・sであった。
【0063】
実施例2
練り胡麻200kgにエタノール1.7kg、水2kgを添加し攪拌後貯蔵用タンクに1ヶ月貯留した。この沈殿物はスラリーポンプで汲み上げて他の槽に移送することができた。貯留直後のこの液を遠心分離機で遠心分離したときの沈殿物の粘度は37000mpa・sであった。
【0064】
実施例3
練り胡麻200kgにエタノール12kg、水0.3kgを添加し攪拌後貯蔵用タンクに1ヶ月貯留した。この沈殿物はスラリーポンプで汲み上げて他の槽に移送することができた。貯留直後のこの液を遠心分離機で遠心分離したときの沈殿物の粘度は35000mpa・sであった。
【0065】
実施例4
練り胡麻200kgに濃度75重量%の含水エタノール4kgを添加し攪拌後貯蔵用タンクに貯留した。貯留直後の粘度は3250mpa・sであった。1週間貯留後に油分の分離は見られなかった。4週間貯留後に、上澄み液が僅か約5容量%生じた。残りの大半の沈殿物はスラリーポンプで汲み上げて他の槽に容易に移送することができた。
【0066】
実施例5
練り胡麻200kgに濃度80重量%の含水エタノール4kgを添加し攪拌後貯蔵用タンクに貯留した。貯留直後の粘度は2860mpa・sであった。1週間貯留後に油分の分離は見られなかった。4週間貯留後に、上澄み液が僅か約5容量%生じた。残りの大半の沈殿物はスラリーポンプで汲み上げて他の槽に容易に移送することができた。
【0067】
実施例6
練り胡麻200kgに濃度85重量%の含水エタノール8kgを添加し攪拌後貯蔵用タンクに貯留した。貯留直後の粘度は3630mpa・sであった。1週間貯留後に油分の分離は見られなかった。4週間貯留後に、上澄み液が僅か約5容量%生じた。残りの大半の沈殿物はスラリーポンプで汲み上げて他の槽に容易に移送することができた。
【0068】
実施例7
練り胡麻200kgに濃度90重量%の含水エタノール8kgを添加し攪拌後貯蔵用タンクに貯留した。貯留直後の粘度は2690mpa・sであった。1週間貯留後に油分の分離は見られなかった。4週間貯留後に、上澄み液が僅か約5容量%生じた。残りの大半の沈殿物はスラリーポンプで汲み上げて他の槽に容易に移送することができた。
【0069】
実施例8
練り胡麻200kgに濃度99.5重量%の含水エタノール8kgを添加し攪拌後貯蔵用タンクに貯留した。貯留直後の粘度は1990mpa・sであった。1週間貯留後に油分の分離は見られなかった。4週間貯留後に、上澄み液が僅か約5容量%生じた。残りの大半の沈殿物はスラリーポンプで汲み上げて他の槽に容易に移送することができた。
【0070】
比較例1
練り胡麻200kgを攪拌後貯蔵用タンクに1ヶ月貯留した。貯留後は上澄み液が約10容量%生じ、90容量%が沈殿物となった。この沈殿物は粘度が高く、貯留物をスラリーポンプで汲み上げて他の槽に移送するときに沈殿物がタンクに残りぎみで、貯留物の円滑な移送が困難であった。貯留直後のこの液を遠心分離機で遠心分離したときの上澄み液の発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))は44%、沈殿物発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))は56%、沈殿物の粘度は53000mpa・sであった。
【0071】
比較例2
練り胡麻200kgに食添用アルコールメイオール´89(エタノール濃度:85重量%)20kgを添加し貯蔵用タンクに1ヶ月貯留した。この沈殿物は粘度が高く、貯留物をスラリーポンプで汲み上げて他の槽に移送するときに沈殿物がタンクに残りぎみで、貯留物の円滑な移送が困難であった。貯留直後のこの液を遠心分離機で遠心分離したときの上澄み液の発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))は20.8%、沈殿物発生量(全体の練り胡麻調合物に対する比率(容量%))は79.2%、沈殿物の粘度は100000mpa・s以上であった。
【0072】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の練り胡麻調合品は、胡麻風味調味料の原料として広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
練り胡麻と、該練り胡麻に対して1.1〜11重量%のエタノールを含んでなる練り胡麻調合品。
【請求項2】
更に、前記練り胡麻に対して0.13〜1.1重量%の水を含んでなる請求項1に記載の練り胡麻調合品。
【請求項3】
練り胡麻と、前記練り胡麻に対して1.5〜5.5重量%のエタノールと、該練り胡麻に対して0.3〜0.5重量%の水とを含んでなる請求項2に記載の練り胡麻調合品。
【請求項4】
練り胡麻に、前記練り胡麻に対して1.5〜5重量%の濃度80〜95重量%の含水エタノールが混合されてなる請求項2又は3に記載の練り胡麻調合品。
【請求項5】
前記練り胡麻に対して胡麻油が添加された請求項1乃至4のいずれかに記載の練り胡麻調合品。

【公開番号】特開2006−25658(P2006−25658A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207011(P2004−207011)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(393014682)星野科学株式会社 (4)
【出願人】(596082703)九鬼産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】