説明

縦型射出成形機

【課題】昇降される射出ノズルの位置に可及的に制限されることなく、射出ノズルの保守・点検を容易に行なうことができる利便性を図った縦型射出成形機を提供する。
【解決手段】上側金型10の取り付けられる保持プレート13と、上側金型10とキャビティを形成する下側金型12の取り付けられるターンテーブル11と、上側金型10と下側金型12とにより型閉されたキャビティに溶融樹脂を射出する射出ノズル6を備え、この射出ノズル6が挿通される保持プレート13に形成した貫通孔16に連設して作業用凹部17を形成する。これにより、射出ユニット3の先端に装着した射出ノズル6が貫通孔16内に挿入された状態であっても、作業用凹部17及び貫通孔16からなる空間部を通じ手や工具を差し入れて、射出ノズル6の先端の保守・点検作業を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の型開閉を縦方向に行って成形体を成形する縦型射出成形機に関し、特に縦方向に型開閉される金型内に溶融樹脂を射出する射出ノズルを容易に保守・点検できる縦型射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ターンテーブルを回転させることにより、1つの上側金型に対して、ターンテーブルに取り付けた2つの下側金型の各々を型開閉可能な対向位置に移動させ、縦方向に型開閉を行う、いわゆる2ステーション方式の縦型射出成形機が用いられている。こうした上側金型と複数の下側金型とを型締めするいわゆる2ステーション方式等の縦型射出成形機においては、成形体を成形する型締め工程の間に、型締めされている下側金型の反対側に配置された下側金型にインサート成形用の金属製の部品を組み付け、その組み付け後にターンテーブルを所定位置に回転し、金属製の部品を組み付けた下側金型と上側金型とを型締めすることで、金属製のインサート部品と樹脂とを一体成形する製造方法が採られている。
【0003】
図5は前述した従来技術に関連する縦型射出成形機の要部を示す断面図であり、図5(a)は射出ノズルを上昇させた状態、図5(b)は射出ノズルを下降させた状態、図5(c)は射出ノズルの先端が挿通される円形型の貫通孔が形成された保持プレートを示す平面図である。この従来の縦型射出成形機においては、4隅に設けられたタイバー101により縦方向に進退される保持プレート102を備え、保持プレート102の下面に取り付けられる図示しない上側金型が、保持プレート102と共に下方に前進されることにより、保持プレート102の下方に設けられた図示しないターンテーブルの上面に取り付けられた下側金型と型開閉されるようになっている。また、型閉された金型のキャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニット103が設けられており、射出ユニット103の先端に装着されている射出ノズル104が、図5(b)に示すように下方に前進され、射出ノズル104の先端側が、保持プレート102に形成されたすり鉢状の挿通孔105に挿通され、上側金型に対して射出ノズル104をタッチさせた状態で金型のキャビティに溶融樹脂の射出が行なわれる。
【0004】
前記従来技術に関連するものとして、特許文献1及び特許文献2には、射出ノズルが前進することで挿通される挿通孔を、上側金型の取り付けられる保持プレートに形成した縦型射出成形機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−313032号公報
【特許文献2】特開2006−218644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2等で開示されているような一般的な縦型射出成形機においては、射出ノズルの先端を保持プレートの上側へと上昇さえすれば、射出ノズルの先端を目視しながらにしてその保守・点検作業を比較的容易に行うことができるが、射出ノズルが下降され保持プレートの貫通孔に挿入されている状態では、図5(b)に示すように、射出ノズルの先端側を目視しながら且つ保守・点検作業を行なうことが実質上困難であることから、例えば縦型射出成形機の稼働後に、射出ノズルの先端に残存している樹脂をきれいに除去するなどの保守・点検を行なうに際して、射出ノズルが保持プレートの上面よりも下方に位置している状態においては、いちいち射出ノズルを上昇させなければならず、煩雑な作業を行なわざるを得ないという課題を有していた。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、昇降される射出ノズルの位置に可及的に制限されることなく、射出ノズルの保守・点検を容易に行なうことができる利便性を図った縦型射出成形機を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る縦型射出成形機は、
下部に上側金型の取り付けられる平板状の保持プレートと、
上部に前記上側金型とキャビティを形成する下側金型の取り付けられるプレートと、
前記上側金型と前記下側金型とにより型閉されたキャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニットと、を備えた縦型射出成形機であって、
前記キャビティに溶融樹脂を射出するために、前記射出ユニットの先端に装着した射出ノズルを下方に前進させて該射出ノズルが挿通される貫通孔を前記保持プレートに縦方向に貫通して形成し、
前記貫通孔と連設する作業用凹部を前記保持プレートの上部に形成し、
前記射出ノズルが前記保持プレートの上面よりも下方へ前進された状態にあるときに、前記作業用凹部及び前記貫通孔からなる空間部を通じて、前記射出ノズルの目視及び保守点検作業が行えるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る縦型射出成形機は、請求項1記載の縦型射出成形機において、
前記貫通孔は下部の直径が小さく上に行くほど直径が大きくなるすり鉢状に形成し、前記作業用凹部は前記貫通孔から離れるほど径大になるように形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る縦型射出成形機は、請求項2記載の縦型射出成形機において、
前記作業用凹部を扇型に形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る縦型射出成形機は、請求項3に記載の縦型射出成形機において、
前記保持プレートの各隅にタイバー挿通孔を形成し、該各隅のタイバー挿通孔の各々に縦方向に設けられたタイバーを挿通して該タイバーに前記保持プレートを縦方向に昇降自在に保持させ、該保持プレートの各隅を結んだ各辺の内の何れかの中点と前記貫通孔の中心とを結ぶ仮想線上に位置して、前記作業用凹部を前記保持プレートに形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る縦型射出成形機は、請求項1〜4の何れか1項に記載の縦型射出成形機において、
前記射出ユニットには前記金型で成形される成形体の原料となるペレットを加熱溶融する加熱シリンダを備え、前記射出ノズルは前記加熱シリンダの先端に螺合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
縦型射出成形機の発明によれば、保持プレートの上面よりも下方に前進された状態で射出ノズルの保守・点検作業を行なう際、保持プレートに形成した作業用凹部及び前記貫通孔とからなる空間部を通じて射出ノズルの先端側を視認できると共に、作業用凹部及び貫通孔からなる空間部を通じて、ここから射出ノズルの先端側を目視しながら手や工具等を差し入れて、その保守・点検作業を行なうことができる。
【0014】
さらに、貫通孔は下部の直径が小さく上に行くほど直径が大きくなるすり鉢状に形成しており、作業用凹部は貫通孔から離れるほど径大になるように扇状に形成したことから、射出ノズルの先端側に向かって手や工具を差し入れやすくなり、射出ノズルの先端が保持プレートの上面より下降された状態であっても、射出ノズルの先端側に残存した樹脂の除去作業等の保守や点検作業を円滑に行なうことができる。
【0015】
さらに、保持プレートの各辺の内の何れかの中点と射出ノズルの先端が挿通される挿通孔の中心を結ぶ仮想線上に作業用凹部を形成したから、貫通孔とタイバーとを結ぶ線上でない位置に作業用凹部が位置することになるから、タイバーが邪魔になることなく、作業用凹部と貫通孔を通じて、射出ノズルの保守・点検作業を行うことができる。
【0016】
さらに、加熱シリンダの先端に螺合されている射出ノズルの交換等を行なう際には、作業用凹部と貫通孔とからなる空間部を通じて、加熱シリンダからの射出ノズルの着脱を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一例の縦型射出成形機を示す正面図である。
【図2】同上、縦型射出成形機の射出ノズルを上昇させた状態を示す正面図である。
【図3】同上、金型の取り付けられる保持プレートを示す平面図である。
【図4】同上、縦型射出成形機の射出ノズルを貫通孔内に下降させた状態を示す正面図である。
【図5】従来の縦型射出成形機示す断面図であり、図5(a)は射出ノズルを上昇させた状態、図5(b)は射出ノズルを下降させた状態、図5(c)は射出ノズルの先端が挿通される円形型の貫通孔が形成された保持プレートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態としての実施例を図1〜図4により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施例において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0019】
図1は本発明の一例の縦型射出成形機を示す正面図、図2は縦型射出成形機の射出ノズルを上昇させた状態を示す正面図、図3は上側金型の取り付けられる保持プレートを示す平面図、図4は縦型射出成形機の射出ノズルを貫通孔内に下降させた状態を示す正面図である。
【0020】
図1に示す縦型射出成形機1は大別すると、型締めユニット2、溶融樹脂を供給する射出ユニット3、縦型射出成形機1の各種稼動状況等を表示する表示装置4等が構成されており、射出ユニット3は、成形体の材料となるペレットを加熱溶融する加熱シリンダ5とこの先端(下部)に着脱可能に螺合させた射出ノズル6を構成し、図示しないサーボモータを駆動源として縦方向に昇降可能に設けられている。
【0021】
また、型締めユニット2には、図1に示すように、上部に下側金型12の取り付けられたプレートとしてのターンテーブル11、下側金型12の上方に離間して設けられ、型開閉の際に縦方向に昇降される上側金型10の固定される保持プレート13、伸縮されることにより保持プレート13の下部に取り付けられた上側金型10を、保持プレート13を介してタイバー14の長手方向に沿って昇降させ、下側金型12に対し型開閉を行うトグルリンク機構、トグルリンク機構を作動させ型開閉を行う駆動源としてのサーボモータ等を備えている。
【0022】
図3に示すように保持プレート13は、上方から視ると四角形型に形成されており、その4辺が縦型射出成形機1の前後左右になるように設けられている。また、保持プレート13の4隅にはタイバー挿通孔15が形成されており、これら4つのタイバー挿通孔15の各々にタイバー14が縦方向に挿通され、タイバー14により保持プレート13が昇降自在に保持される。また、保持プレート13の中心部には、射出ユニット3の先端に装着された射出ノズル6を挿脱することができるサイズの貫通孔16が形成されており、上下に貫通した貫通孔16に射出ノズル6の先端が挿通された状態で上側金型10に射出ノズル6をタッチさせた状態で、この射出ノズル6から型閉された金型のキャビティに溶融樹脂の射出が行なわれる。
【0023】
貫通孔16は、図4に示すように、下部の直径(100mm)が小さく上に行くほど直径が大きい(上部の直径200mm)すり鉢状に形成されており、直径が大きい貫通孔16の上側に連設して作業用凹部17が形成されている。作業用凹部17は、図3に示すように、四角形型の保持プレート13の4辺のうちの一方(本実施例においては縦型射出成形機1の右側)側に扇状に形成されており、前記4辺の内の、縦型射出成形機1の右側に位置する1辺の中点と貫通孔16の中心とを結ぶ仮想線上に位置して、保持プレート13に作業用凹部17を形成し、これにより、射出ノズル6の先端が保持プレート13の上面より下方に前進された状態であっても、作業用凹部17と貫通孔16とからなる空間部を通じ、射出ノズル6の先端側の保守・点検を行うことができる。
【0024】
以上のように本発明に係る縦型射出成形機1によれば、保持プレート13の上面よりも下方に前進された状態で射出ノズル6の保守・点検作業を行なう際、保持プレート13に形成した作業用凹部17及び貫通孔16を通じて、射出ノズル6の先端側を視認できるよう作業用凹部17を形成し、この作業用凹部17及び貫通孔16からなる空間部を通じ、ここから射出ノズル6の先端側を目視しながら手や工具等を差し入れて、保守・点検作業を行なうことができる。
【0025】
さらに、貫通孔16は下部の直径が小さく上に行くほど直径が大きくなるすり鉢状に形成し、作業用凹部17は貫通孔16の中心から水平方向に離れるほど径大になるよう扇状に形成したことから、射出ノズル6の先端側に向かって手や工具を差し入れやすくなり、射出ノズル6の先端が保持プレート13の上面より下降された状態であっても、射出ノズル6の先端側に残存した樹脂の除去作業等の点検や保守作業を容易に行なうことができる。
【0026】
さらに、保持プレート13の各隅(より詳しくは、四角形型に形成された保持プレート13の4隅)にタイバー挿通孔15を形成し、各隅のタイバー挿通孔15の各々に縦方向に設けられたタイバー14を挿通して該タイバー14に保持プレート13を縦方向に昇降自在に保持させ、保持プレート13の各辺(より詳しくは、四角形型に形成された保持プレート13の4辺)の内の何れかの中点と射出ノズル6の先端が挿通される挿通孔16の中心とを結ぶ仮想線上に作業用凹部17を形成したから、貫通孔16とタイバー14とを結ぶ線上でない位置に作業用凹部17が配設されることになるから、保持プレート13の各隅(より詳しくは、4隅)に設けられたタイバー14が邪魔になることなく、作業用凹部17等を通じて射出ノズル6の保守・点検作業を行うことができる。
【0027】
さらに、保持プレート13の4隅を結ぶ4辺が縦型射出成形機1の前後左右になるように配設したから、タイバー14が邪魔になることのない、縦型射出成形機1の前後左右の4方向の内の何れか一方の作業用凹部17の形成されている側から、射出ノズル6の保守・点検作業を行うことができる。
【0028】
さらに、加熱シリンダ5の先端に螺合されている射出ノズル6の交換等を行なう際、図4に示すように、射出ノズル6の先端が貫通孔16に挿入されているような状態であっても、作業用凹部17と貫通孔16とからなる空間部を通じて、加熱シリンダ5から射出ノズル6を着脱することが可能になる。
【0029】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能であり、例えば、本実施例の作業用凹部17は縦型射出成形機1の右側に位置して保持プレート13に形成されているが、右側に代えて、前側、後側、或いは左側にしてもよく、これらは適宜選択してもよい。また、本実施例の保持プレート13は前述したように四角形型に形成したものであり、その4隅にタイバー14を設けたものであるが、それに代えて、例えば保持プレートを三角形型とし、その3隅にタイバー14を設けた構造とした場合であっても、タイバー14が邪魔になることなく、作業用凹部17等を通じて射出ノズル6の保守・点検作業を行うことができるという前述した作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 縦型射出成形機
3 射出ユニット
5 加熱シリンダ
6 射出ノズル
10 上側金型
11 ターンテーブル(プレート)
12 下側金型
13 保持プレート
14 タイバー
15 タイバー挿通孔
16 貫通孔(空間部)
17 作業用凹部(空間部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に上側金型の取り付けられる平板状の保持プレートと、
上部に前記上側金型とキャビティを形成する下側金型の取り付けられるプレートと、
前記上側金型と前記下側金型とにより型閉されたキャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニットと、を備えた縦型射出成形機であって、
前記キャビティに溶融樹脂を射出するために、前記射出ユニットの先端に装着した射出ノズルを下方に前進させて該射出ノズルが挿通される貫通孔を前記保持プレートに縦方向に貫通して形成し、
前記貫通孔と連設する作業用凹部を前記保持プレートの上部に形成し、
前記射出ノズルが前記保持プレートの上面よりも下方へ前進された状態にあるときに、前記作業用凹部及び前記貫通孔からなる空間部を通じて、前記射出ノズルの目視及び保守点検作業が行えるようにしたことを特徴とする縦型射出成形機。
【請求項2】
前記貫通孔は下部の直径が小さく上に行くほど直径が大きくなるすり鉢状に形成し、前記作業用凹部は前記貫通孔から離れるほど径大になるように形成したことを特徴とする請求項1記載の縦型射出成形機。
【請求項3】
前記作業用凹部を扇型に形成したことを特徴とする請求項2記載の縦型射出成形機。
【請求項4】
前記保持プレートの各隅にタイバー挿通孔を形成し、該各隅のタイバー挿通孔の各々に縦方向に設けられたタイバーを挿通して該タイバーに前記保持プレートを縦方向に昇降自在に保持させ、該保持プレートの各隅を結んだ各辺の内の何れかの中点と前記貫通孔の中心とを結ぶ仮想線上に位置して、前記作業用凹部を前記保持プレートに形成したことを特徴とする請求項3記載の縦型射出成形機。
【請求項5】
前記射出ユニットには前記金型で成形される成形体の原料となるペレットを加熱溶融する加熱シリンダを備え、前記射出ノズルは前記加熱シリンダの先端に螺合されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の縦型射出成形機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate