説明

縦形液体噴出ポンプ

【課題】 縦形液体噴出ポンプの噴出液体の切れを向上させると共に、構造を簡易化し、かつ各部材の組付けが容易とし、又そのポンプをモジュール式として外形を異にする同種ポンプへの完成が容易とした。
【解決手段】 上端部に外向きフランジ5を有するシリンダ部材1内から、上部を大内径筒部25とする筒状プランジャ21を上方付勢させて起立し、その大内径筒へ下方筒部を嵌着させ、又中間筒部を第2シリンダ43に、かつ上方筒部には内向きフランジ44を付設してそのフランジ孔を吐出弁孔45とした筒状上部材41を設け、その上部材内へ、有頂かつ下面開口の筒状で中間部にピストン52を有する吐出弁部材51を、そのピストンを第2シリンダ内へ、吐出弁体部54とした上部を吐出弁孔45内へ、かつ下端筒部を筒状プランジャの筒孔26上部内へ上下動可能に嵌合させ、ピストン52と吐出弁体部54との間に透孔55を穿設した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は縦形液体噴出ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】例えば実開昭50-93305号が示すように、容器体内へ垂下させた吸込み弁付きの大径第1シリンダ内から、第1スプリングにより上方付勢させて、上端にノズル付き押下げヘッドを嵌合させた作動部材を起立させ、又該作動部材内には第2スプリングによる上方付勢により作動部材頂壁に穿設された吐出弁孔を閉塞する吐出弁部材を小径の第2シリンダを介し内装させ、上記押下げヘッド押下げにより第1、第2両シリンダ内が共に高圧化し、すると上記吐出弁部材が作動部材に対し下降して吐出弁孔が開口し、該開口により第1、第2シリンダ内液体が吐出弁孔を通り、該弁孔に連通する押下げヘッドのノズル孔から噴出可能とした縦形液体噴出ポンプが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のポンプは、作動部材上方付勢用の第1スプリングとは別に吐出弁部材上方付勢用の第2スプリングを設けて第1、第2シリンダ内が共に高圧化したとき作動部材に対して吐出弁部材だけが下降するよう設けたから、吐出液体の液切れをよくすることが出来るが、各部材の構造が複雑となると共に部材数が多くなり、従って又各部材の組付けも面倒となる欠点があった。
【0004】本発明はそれ等欠点を除去すると共にそのポンプをモジュールタイプとすることで、広く用途を広げることが可能とすることを主目的とするもので、その他目的は明細書により明白とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】第1の手段として吸込み弁2付きの第1シリンダ3を垂下すると共に上端部に容器体装着用の外向きフランジ5を付設するシリンダ部材1と、上記第1シリンダ3内から第1スプリング31で上方付勢されて上下動自在に起立し、上方筒部を大内径筒部25とする筒状プランジャ21と、上記大内径筒部25内へ、下方筒部を嵌着させると共に中間筒部を第2シリンダ43に、かつ上方筒部には内向きフランジ44を付設して該フランジ孔を吐出弁孔45とする上下両端面開口の筒状上部材41と、上面閉塞で下端開口筒部の上下方向中間部を大外径のピストン52として、該ピストンを第2シリンダ43内へ、又下方筒部を筒状プランジャ21の筒孔上部へ、更に上部を上方小外径のテーパ状吐出弁体部54として該吐出弁体部上部を吐出弁孔45内へ、それぞれ嵌合させると共に、吐出弁体部とピストン52との間の筒壁部分に透孔55を穿設し、更に又第2スプリング57で上方付勢させることで吐出弁孔45へ吐出弁体部54を圧接させて吐出弁となし、ピストン上方の第2シリンダ内を第2シリンダ加圧室とする吐出弁部材51とからなり、シリンダ部材1に対する上部材41の下降で、第2シリンダ43加圧室内が高圧化すると、上部材および筒状プランジャに対して吐出弁部材51が下降して吐出弁が開放可能に形成した。
【0006】第2の手段として、上記第1の手段を有すると共に上記第1シリンダ3内径よりも第2シリンダ43内径を小内径に形成した。
【0007】第3の手段として、上記第1、又は第2の手段を有すると共に上記外向きフランジ5の上面から第1ガイド筒11を起立させて、該第1ガイド筒上部内へ、大内径筒部25外面へ嵌合させた上部材41筒部の外面ないし上部材筒部の外面へ嵌着させた大内径筒部25外面を上下動可能に嵌合させた。
【0008】第4の手段として、上記第1、第2又は第3の手段を有すると共に大内径筒部25底面の内周部から筒状プランジャ筒孔26よりも大内径の筒孔延長筒27を起立すると共に、吐出弁部材下端部を下外方へ拡開する第3弾性シール筒53に形成して、該シール筒外面を上記延長筒27内へ上下動可能に、かつ水密に嵌合させた。
【0009】第5の手段として、上記第1、第2、第3又は第4の手段を有すると共に頂板75下面から嵌合筒72を垂下し、かつ該嵌合筒上部内から頂板外周から垂設した周壁74外面へ開口させてノズル孔73を穿設した押下げヘッド71を設けて、該ヘッドの嵌合筒72を上部材41の上方筒部外面へ嵌合させて嵌合筒上端部内とノズル孔73とを連通させると共に、 容器体口頸部外面へ着脱自在に嵌合させる覆合筒92の上端に内向きフランジ93を付設した装着部材91を設けて、その内向きフランジ下面へ上記外向きフランジ5の外周部上面を当接させて、外向きフランジ外周面を覆合筒92の上端部内面へ嵌合させた。
【0010】
【発明の実施の形態】以下図面について説明すると、1はシリンダ部材で、吸込み弁2を底部内面に有する第1シリンダ3を、該第1シリンダよりも大径とした吊下げ筒4を介して垂下し、該吊下げ筒上端に外向きフランジ5を付設する。第1シリンダ下端からは吸込み弁孔と連通させて吸上げパイプ嵌合筒6を垂下し、第1シリンダ底部は下部小径のテーパ部とし、かつそのテーパ部内面へ玉弁7を嵌合し、該嵌合部分上方には玉弁抜出し防止突部を複数付設すると共にこれ等突部上方には第1スプリング載置用上向き段部を付形している。又第1シリンダの下部内面には凹溝8を周設すると共に第1シリンダ上部筒壁に残圧排出孔9を、吊下げ筒4上部に外気吸入孔10を、それぞれ穿設している。上記外向きフランジ5の内周部上面からは上端部内面に第1係合突条を周設する第1ガイド筒11を起立している。
【0011】21は筒状プランジャで、図示例にあってはその中間やや上部を小外径部22とし、その下方を上面閉塞の内外二重筒とし、その外筒上部を大外径部に、かつ下部を小外径部として、該小外径部下端と上記大外径部下端とから下外方へ第1、第2弾性シール筒23,24 を突設して第1弾性シール筒下端を第1シリンダ3上部内面へ、かつ第2弾性シール筒24下端を吊下げ筒4の上部内面へ、それぞれ水密かつ上下動可能に嵌合させている。又上記小外径部22上方筒部分は外向きフランジを介して大内径筒部25として起立させ、中間部外面に後述上部材の下方筒部内面へ付設した係合突条嵌合用の凹溝を周設している。又大内径筒部の底面を形成する外向きフランジ内周部からは、筒状プランジャの筒孔26よりも僅かに大内径の延長筒27を短かく起立させ、該延長筒内を筒状プランジャ筒孔26の上部としている。
【0012】尚既述内外二重筒の内筒には下端面へ開口させて割溝28を縦設している。
【0013】31は上記筒状プランジャ21を上方付勢する第1スプリングで、上記内外二重筒の間隙内へ上部を嵌合させて、その下端を既述上向き段部上へ、かつ上端を上記間隙上端面へ、それぞれ圧接させている。
【0014】41は筒状の上部材で、上記大内径筒部25外面へ下方筒部42を嵌合させると共に、該下方筒部上端から内向きフランジを介して中間筒部および上方筒部を起立させ、その中間筒部を第2シリンダ43に、かつ上方筒部には吐出弁孔形成用内向きフランジ44を付設してそのフランジ孔を吐出弁孔45としている。下方筒部は多少上方へ延長させている。下方筒部の下方内面へは既述大内径筒部外面の凹溝内へ嵌合させた係合突条46を周設し、又下端外面へは第1ガイド筒上端の第1係合突条下面へ係合させて第2係合突条を周設している。上記大内径筒部25外面への下方筒部42の嵌合は、大内径筒部内面への下方筒部の嵌合に代えてもよく、この場合は上記凹溝、第3、第2係合突条等も逆に設けることとなる。第2シリンダ43の上部内面には複数の突条47を縦設している。
【0015】51は吐出弁部材で、上面閉塞で下端開口筒部の上下方向中間部を大外径のピストン52として該ピストンを第2シリンダ内へ嵌合させ、又下方筒部を下外方へ拡開させ第3弾性シール筒53として筒状プランジャ21の筒孔上部を形成する延長筒27内へ嵌合させ、更に上部は上方小径のテーパ状吐出弁体部54として該吐出弁体部の上部を吐出弁孔45内へ嵌合させている。更に又吐出弁体部とピストン52との間の筒壁部分に透孔55を穿設して筒孔56と連通させ、第2スプリング57により該吐出弁部材を上方付勢させている。
【0016】上記図1の実施形態においては筒状プランジャ21を一体成形しているが、図2が示すようにその筒状プランジャを上下二部分で形成し、これ等を連結して形成することも出来る。該図2実施形態にあっては図1筒状プランジャの小外径部22の下端部で上下二部分21a,21b に分離し、下部分21b の内外二重筒部分の上端外周から連結筒61を起立させて該連結筒を上部分21a の小外径部22外面へ嵌着させ、又下部分21b 上面内周部から短筒62を起立して、該短筒外面へ上部材小外径部62の下端に形成した大内径部63を嵌合させ、このようにすることで下部分筒孔26b,26b と上部分筒孔26a とを連通させている。
【0017】その他部分は図1実施形態と図2実施形態とは同一であり、よって同一符号を付することで説明は省略する。
【0018】上記構成において、シリンダ部材1に対して上部材41を押下げすると、筒状プランジャ21が共に押下げられることで第1シリンダ3内が高圧化し、すると筒状プランジャ21および吐出弁部材の各筒孔内を通ってピストン52上方の第2シリンダ内も高圧化することとなり、よって該第2シリンダ内高圧化で吐出弁部材51が上部材41に対して下降し、吐出弁体部54下降で吐出弁孔45が開き、各シリンダ内および上記両筒孔内の高圧空気は吐出弁孔45から排出され、該高圧状態低下により、第2スプリング57が上方付勢により再び吐出弁体部54を押上げ、よって該吐出弁体部と吐出弁孔45とが形成する吐出弁は閉塞する。尚筒状プランジャ21下端の第1弾性シール筒23下端が凹溝8内へ入ると、該凹溝を介して外筒下部の小外径部と第1シリンダ筒壁との間に隙間が形成され、該隙間および残圧排出孔9を通って加圧室内残圧が排出される。
【0019】上記ポンプを容器体に取付け、使用する際には図3が示すように別に設けた押下げヘッド71の嵌合筒72を、上部材41の上方筒部外面へ嵌合させて、押下げヘッドが有するノズル孔73と上方筒部の上端開口とを連通させ、又第1シリンダ3下端から垂設した吸上げパイプ嵌合筒6に吸上げパイプ81上部を嵌合させて垂下し、更に容器体口頸部外面へ着脱自在に嵌合させる覆合筒92上端に内向きフランジ93を付設した装着部材91を設けて、その内向きフランジ下面へ外向きフランジの外周部上面を当接させ、かつ外向きフランジ外周面を上記覆合筒92の上端部内面へ嵌合させ、上記吸上げパイプおよび第1シリンダ等を液体入り容器体内へ垂下させて覆合筒92を容器体口頸部外面へ嵌合させ、既述のようにポンプ操作を行えばよい。
【0020】尚図示の押下げヘッド71は、頂板75外周から周壁74を垂下し、装着部材の内向きフランジ93上面から起立させた第2ガイド筒94の上部内へ押下げヘッドの頂板外周から垂下する周壁の下部を下降可能に嵌合させている。
【0021】
【発明の効果】本発明は既述構成とするものであり、請求項1記載のポンプは、上部材41の上方筒部に適合する複数種数のノズル付きの押下げヘッドおよびシリンダ部材1の外向きフランジ5に組付け可能な容器体口頸部嵌合用の複数種数の装着部材をそれぞれ別に設けておき、需要に応じて押下げヘッド、又は装着部材だけを異にする複数種の液体噴出ポンプにして販売できるモジュール式のポンプとすることが出来る。即ち複数種数の押下げヘッドとしては、ノズルを変えることで噴霧用、又発泡用、或いは液体をそのまま噴出するもの等が考えられ、又ノズル孔径を変えることで異なる噴出量とした押下げヘッドとすることが出来、装着部材としては覆合筒の内径を変えることで異なる外径を有する容器体へ嵌合できるようにしたもの、又螺合式、打設式等にしたものが考えられる。又請求項1記載の構造としたから吐出弁からの液切れがよく、筒状プランジャ21の上方筒部が形成する大内径筒部25へ、下方筒部を嵌合させて上部材41を起立し、該上部材が有するシリンダ43内へ吐出弁部材51を嵌合させて該部材上部が形成する吐出弁体部54上部を上記上部材41の上部に形成した吐出弁孔45内へ嵌合させて吐出弁とするから、吐出弁部材51を小形化できると共に、筒状プランジャ21、上部材41、吐出弁部材51の各構造を簡易化でき、又各部材の組付けも簡易化することが出来る。
【0022】請求項2のようにすることで上部材41および吐出弁部材51を、従って上部材の上方筒部外面へ嵌合させる押下げヘッド71の各外径をシリンダ部材1に対して小径化でき、ポンプ外見を向上できる。
【0023】請求項3のようにすることで、シリンダ部材1に対する上部材41のグラつきを防止出来、第1シリンダの軸線延長線上に上部材および吐出弁部材の各軸線を位置させて上下動させることが出来る。
【0024】請求項4のように形成することで、筒状プランジャ21と吐出弁部材51との各筒孔との連通が確実で、かつその連通状態を保ったままで筒状プランジャに対する吐出弁部材の上下動を容易とすることが出来る。
【0025】請求項5のようにすることで、請求項1記載のモジュール式ポンプを容器体へそのまま取付けできるポンプにすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明ポンプの半断面図である。
【図2】 別実施形態で示すポンプの半断面図である。
【図3】 図2のポンプに、押下げヘッドおよび装着部材等を付設して示すポンプの半断面図である。
【符号の説明】
1…シリンダ部材 21…筒状プランジャ
41…上部材 51…吐出弁部材
71…押下げヘッド 91…装着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 吸込み弁2付きの第1シリンダ3を垂下すると共に上端部に容器体装着用の外向きフランジ5を付設するシリンダ部材1と、上記第1シリンダ3内から第1スプリング31で上方付勢されて上下動自在に起立し、上方筒部を大内径筒部25とする筒状プランジャ21と、上記大内径筒部25内へ、下方筒部を嵌着させると共に中間筒部を第2シリンダ43に、かつ上方筒部には内向きフランジ44を付設して該フランジ孔を吐出弁孔45とする上下両端面開口の筒状上部材41と、上面閉塞で下端開口筒部の上下方向中間部を大外径のピストン52として、該ピストンを第2シリンダ43内へ、又下方筒部を筒状プランジャ21の筒孔上部へ、更に上部を上方小外径のテーパ状吐出弁体部54として該吐出弁体部上部を吐出弁孔45内へ、それぞれ嵌合させると共に、吐出弁体部とピストン52との間の筒壁部分に透孔55を穿設し、更に又第2スプリング57で上方付勢させることで吐出弁孔45へ吐出弁体部54を圧接させて吐出弁となし、ピストン上方の第2シリンダ内を第2シリンダ加圧室とする吐出弁部材51とからなり、シリンダ部材1に対する上部材41の下降で、第2シリンダ43加圧室内が高圧化すると、上部材および筒状プランジャに対して吐出弁部材51が下降して吐出弁が開放可能に形成したことを特徴とする縦形液体噴出ポンプ。
【請求項2】 上記第1シリンダ3内径よりも第2シリンダ43内径を小内径に形成したことを特徴とする、請求項1記載の縦形液体噴出ポンプ。
【請求項3】 上記外向きフランジ5の上面から第1ガイド筒11を起立させて、該第1ガイド筒上部内へ、大内径筒部25外面へ嵌合させた上部材41筒部の外面ないし上部材筒部の外面へ嵌着させた大内径筒部25外面を上下動可能に嵌合させたことを特徴とする請求項1又は2記載の縦形液体噴出ポンプ。
【請求項4】 大内径筒部25底面の内周部から筒状プランジャ筒孔26よりも大内径の筒孔延長筒27を起立すると共に、吐出弁部材下端部を下外方へ拡開する第3弾性シール筒53に形成して、該シール筒外面を上記延長筒27内へ上下動可能に、かつ水密に嵌合させたことを特徴とする、請求項1、2又は3記載の縦形液体噴出ポンプ。
【請求項5】 頂板75下面から嵌合筒72を垂下し、かつ該嵌合筒上部内から頂板外周から垂設した周壁74外面へ開口させてノズル孔73を穿設した押下げヘッド71を設けて、該ヘッドの嵌合筒72を上部材41の上方筒部外面へ嵌合させて嵌合筒上端部内とノズル孔73とを連通させると共に、容器体口頸部外面へ着脱自在に嵌合させる覆合筒92の上端に内向きフランジ93を付設した装着部材91を設けて、その内向きフランジ下面へ上記外向きフランジ5の外周部上面を当接させて、外向きフランジ外周面を覆合筒92の上端部内面へ嵌合させたことを特徴とする、請求項1、2、3又は4記載の縦形液体噴出ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2002−66399(P2002−66399A)
【公開日】平成14年3月5日(2002.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−262066(P2000−262066)
【出願日】平成12年8月31日(2000.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】