説明

縮毛矯正施術方法

【課題】縮毛矯正施術を繰り返しても、良好なストレート状態を維持しながら毛髪の損傷を低減させることができ、良好な感触を保持する。
【解決手段】還元剤を含む縮毛矯正用第1剤を毛髪に塗布して縮毛を還元軟化させる還元軟化工程と、酸化剤を含む縮毛矯正用第2剤を塗布して矯正された状態で毛髪を酸化定着させる酸化定着工程とを備えた縮毛矯正施術方法において、前記還元軟化工程の前に、(A)毛髪に水を塗布し、噴霧し、若しくは毛髪を水に浸漬させる工程と、(B)濡れた毛髪にテンションをかけて水分を毛髪に浸透させる工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮毛を矯正する施術方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、縮毛の毛髪を矯正して永久にストレートにセットする美容技術(俗に、ストレートパーマ)が広く行なわれている。この施術方法の代表例として、高温整髪用アイロン(以下、アイロンという)を用いたコールド2浴式縮毛矯正方法がある。この方法は、以下の工程によって行われる。
1.毛髪を診断し、髪質や量、ダメージなどに合った適切な薬剤(1剤及び2剤)を選定する。
2.毛髪を薬剤(特に、還元剤を含む1剤)から保護するための前処理剤(トリートメント剤など)を塗布する。
3.アルカリ剤と還元剤を含む1剤を塗布し、毛髪を還元軟化させる。
4.毛髪を巻き付けたり、引っ張ったりして毛髪の還元軟化状態を確認する(軟化チェック)。
5.還元軟化状態を確認できたら毛髪を水ですすぎ1剤を十分洗い流す。
6.毛髪を乾燥させる。
7.毛髪を挟んでアイロンで熱を加える。この時のアイロンの設定温度は、一般には120℃〜180℃である。
8.毛髪に酸化剤を含む2剤を塗布し、ストレート状態に酸化定着させる。
9.毛髪や頭皮に2剤が残らないように、毛髪を水で丁寧に洗い流す。
10.毛髪後処理剤や、ヘアコンディショナーなど毛髪保護剤を用いて仕上げる。
【0003】
このようにして矯正された毛髪は、永久的にその状態が維持されるが、一方で、その後に伸びてくる新生部分は縮毛なので、数ヶ月おきに縮毛矯正施術を繰り返す必要がある。縮毛矯正施術は、パーマネント剤の作用によって毛髪の組織を変質させるものであるため、施術を繰り返す度に毛髪に損傷を与えることになる。このように痛んだ毛髪は、洗髪やブローなどの日々の手入れによっても蛋白質構造が破壊され易くなり、経日的に徐々に硬くなってしまう。特に、矯正効果が強いアイロンを使用する場合は、熱によるダメージも加わるため、毛髪の損傷はより大きくなる。このように硬くなった毛髪は、毛髪内部までダメージを受けている可能性が高いため、さらに縮毛矯正施術を行なうと、毛髪が強く縮れた状態(ハレーション毛と呼ばれる)になってしまう。このような状態の毛髪を回復させることはできないため、カットしてその部分を取り除くしかない。
【0004】
そのため、従来から、毛髪をパーマネント剤(特に、第1剤による還元作用)やアイロンなどの熱から保護するために、例えばケラチン加水分解物やヘアコンディショナーのような前処理剤を縮毛矯正施術前に毛髪に塗布する前処理が行われている。このような前処理によって毛髪を保護する技術や、毛髪を痛め易いアイロンを使用しないで縮毛を矯正する技術として、以下の特許文献1、2が参考になる。
【0005】
【特許文献1】特開2000−256147号公報
【特許文献2】特開2006−16920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した前処理剤を用いても、繰り返し行なわれる縮毛矯正施術において、縮毛を矯正しつつ良好な髪質を維持することは非常に困難である。例えば、毛髪を保護するために強力な前処理剤を使用したり、大量に塗布すると、1剤の還元力が大幅に減退し、縮毛を美麗なストレート状態に矯正することが出来ない。
【0007】
また、縮毛矯正施術を行なった毛髪に対して、さらにヘアカラーなどの他の化学処理を行なうと、毛髪には縦方向(長さ方向)に異なるダメージが与えられることになる。このような複雑に変質した状態の毛髪を、根元から毛先まで均一なストレート状態に矯正することは不可能に近い。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたもので、縮毛矯正施術を繰り返しても、良好なストレート状態を維持しながら毛髪の損傷を低減させることができ、良好な感触を保持することができる施術方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情を鑑み本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、縮毛矯正処理に先立ち毛髪に水を塗布しながら毛髪を延伸させて水を毛髪内部に浸透させておくことにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、還元剤を含む縮毛矯正用第1剤を毛髪に塗布して縮毛を還元軟化させる還元軟化工程と、酸化剤を含む縮毛矯正用第2剤を塗布して矯正された状態で毛髪を酸化定着させる酸化定着工程とを備えた縮毛矯正施術方法において、前記還元軟化工程の前に、(A)毛髪に水を塗布し、噴霧し、若しくは毛髪を水に浸漬させる(以下、「塗布等する」と称する)工程と、(B)濡れた毛髪にテンションをかけて水分を毛髪に浸透させる工程とを備えたことを特徴とする方法である。
【0011】
毛髪は、中心部から、柔らかいタンパク質と脂質を主成分とするメデュラ(毛髄質)と、ケラチン(繊維状のタンパク質)を主成分とするコルテックス(毛皮質)と、ケラチンタンパク質を主成分とする平板な細胞のキューティクルとの3層構造になっている。前記メデュラ(毛髄質)には、ボイドと呼ばれる多数の空洞(空胞)があり、本出願人は、このボイド周辺のメデュラには毛髪の表面に塗布した第1剤及び第2剤が十分に浸透していないという事象を確認した。そのため本発明では、縮毛矯正施術の前処理工程で毛髪に水を塗布等しながら引っ張ったり揉み込むことで、このボイド内の空気を水に置換し、この水を媒体として毛髪の中心部のメデュラ(毛髄質)の全体に第1剤及び第2剤を浸透させることができる。このボイド内に浸透した水は、その後のタオルドライはもちろんのこと、ドライヤーの温風やアイロンの熱等によっても容易には蒸発しないため、毛髪の保湿効果を持続させる機能も有する。また、前処理工程で毛髪に保護剤などを塗布する場合にも、この水分によって毛髪内部のメデュラまで保護剤を浸透させることができる。従って、第1剤及び第2剤の量を増やしたり強力なものを使用しなくても、毛髪の内部まで均一に縮毛を矯正でき、良好な仕上がりが期待できるようになる。また、毛髪へのダメージも最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、縮毛矯正施術の前処理工程で、毛髪内部まで水を浸透させておくことで、縮毛矯正の効果を損なわずに毛髪へのダメージを抑えることができ、好適な仕上がり状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明する。以下に示す方法は、最も広く採用されている整髪用アイロンを利用した方法である。この方法は、大きく分けて、前処理工程、第1剤による還元軟化工程、アイロンによる縮毛矯正工程、第2剤による酸化定着工程、及び後処理工程、からなる。本発明は、前処理工程に特徴を有しており、他の工程は従来から行われている方法と同様である。以下に、前処理工程を中心に、各工程について詳細に説明する。
【0014】
(前処理工程1−軟水等の用意)
この工程では、まず、硬度120度以下、好ましくは40度以下の軟水若しくは中軟水を用意する。カルシウムは、毛髪に水が浸透するのを阻害することから、カルシウム含有量が少ない軟水若しくは中軟水を用いる。日本では、多くの地域で水道水の硬度が20〜90程度(平均で60程度)であるため、そのまま使用することができるが、地域によって硬度のバラつきもあるため、イオン交換樹脂などを利用した軟水生成器でカルシウムを除去若しくは低減させて硬度を下げるのが好ましい。その他にも、例えば、市販のミネラルウォーター(硬度20〜40)、イオン交換水(硬度0)、蒸留水(硬度0)、アルカリイオン水、電解水なども利用可能である。また、海洋深層水(硬度250以上)のような硬水を使用することもできる。
【0015】
また、用意する水には、毛髪への浸透性を阻害しない程度に他の成分(毛髪の保護剤など)を含んでいてもよい。この場合、液体である必要はなく、クリームやゲルなどの半流動体や粉体や他の液体との混合物・組成物などであってもよい。延伸による毛髪への浸透性や毛髪全体に均一に塗布することを考慮すればローションなどが好ましいが、一方で、取り扱いや施術のし易さからは、クリームなどの半流動体が好ましい。例えば、ローションを使用する場合は、適量の水で希釈した水組成物をトリガー容器に充填して毛髪に噴霧できるので、毛髪全体に均一に塗布できる。また、クリームを使用する場合は、施術者が手に適量を取り、少しづつ毛髪に塗布して行く。この時、施術者の手や毛髪から滴り落ちることがないので、作業が容易であると共に、床などが汚れない。また、対象部位(顔や耳付近など)や毛髪の損傷具合に応じて水を毛髪の局所に塗布したい場合にも、半流動体は好ましい。同様の若しくは異なる成分の液体と半流動体とを対象部位に応じて使い分けてもよい。
【0016】
(前処理工程2−水の浸透等と延伸)
次いで、用意した水を毛髪に塗布若しくは噴霧し、又は毛髪を水に浸漬させる(以下、「塗布等する」と総称する)。この状態で、濡れた毛髪を施術者が引っ張って延伸させながら水を毛髪に浸透させる。このような水の塗布等と延伸処理とを1〜5回程度繰り返すと、毛髪を0.1〜15%程度伸ばすことができる(手を離すと元の長さに戻る)。これにより、メデュラの多数のボイド内に含まれた空気を水に置換することができる。このボイド内に浸透させた水が、後述する第1剤(水溶性の還元剤)の媒体として機能するため、第1剤を毛髪内部まで効率的かつ確実に浸透させることができる。また、第1剤を毛髪の中心部分まで均一に浸透させることで、毛髪のダメージが縦方向で異なっている場合でも還元剤を均一に作用させることができ、良好な仕上がり(ストレート状態)が期待できる。
【0017】
従来から知られているように、毛髪は本来ダメージの少ない状態では疎水性であり、水をはじきやすい。そのため、ダメージの少ない根元付近は強めのテンションにより十分に延伸させて水を浸透させる必要がある。逆に、ダメージの大きい毛先付近などは疎水性が弱まっているため、強いテンションをかけて延伸させなくても揉み込む程度で水を浸透させることができる。このように、毛髪の状態に合わせて、施術方法や強さなどを適宜選択・調整する。
【0018】
施術者は、まず頭髪全体に水を噴霧した後、リングコームなどで2cm程度のスライス(毛髪の束)を取り、少量の水を直接若しくはスポンジなどに含ませて一方の手に取って、その水をスライス単位で毛髪に塗布等しながら他方の手で毛髪の根元から毛先に向かって毛髪を引っ張る。この段階では、水を浸透させることが目的であるため、毛髪を強く引っ張って縮毛を矯正する必要はない。逆に、強く引っ張り過ぎると、被施術者が痛みを感じると共に、毛髪に損傷を与えるおそれもあるため、水の浸透具合を見ながら引っ張る強さや回数を加減する。目安として、毛髪の表面に微小な気泡が生じてくれば、ボイド内の空気が水に置換されている証左となる。また、上記したように、毛髪のダメージを具合に合わせて、毛髪の根元から中間にかけては強めに水を延伸させて水を十分に浸透させ、逆に、毛先部分は水を揉み混む程度にしておく。
【0019】
水の塗布量は毛髪の状態や毛量などによって異なるが、目安としてミディアムヘアーの場合で一回の延伸工程につき、100ml程度である。
【0020】
なお、毛髪を延伸させる方法としては、手で引っ張る以外に、ツインストレートブラシで毛髪を引っ張る方法、テンションをかけて(縦方向の力を加えて)コームやブラシでコーミングする方法、髪をまとめて絞る方法、棒状のものにまきつける方法などでもよい。
【0021】
(前処理工程3−加温)
毛髪全体に水を浸透させた後、さらに水の浸透を高めるために、毛髪全体をラップして、例えば、40℃以上に設定したローラーボールやスチーマーなどで、5分〜15分程度加温する。加温することで、水の分子運動を活発にして毛髪内部に浸透させ易くする。また、この加温工程の後に、再び上記した水の塗布等及び毛髪の延伸工程を行い、これらの工程を1〜5回程度繰り返す。これにより、全頭で均一にもれなく水を浸透させることができる。例えば、疎水性が強く水が浸透しにくい根元などの部分に水を浸透させることがより容易になる。
【0022】
さらに、これらの工程を繰り返した後に、毛髪全体にさらに水を噴霧等することで、水溶性の第1剤の浸透を促進させることができる。
【0023】
(前処理工程4−前処理剤の塗布)
この工程では、従来と同様に、第1剤の還元軟化作用による髪の損傷を抑えるため、毛髪を保護するための前処理剤を塗布する。すなわち、縮毛矯正施術を繰り返してダメージが大きい毛髪に対して、さらに還元軟化作用のある第1剤を直接塗布すると、ストレートにならなかったり、切れ毛の原因にもなる。また、後述するように、アイロンを用いて矯正する場合には、熱による損傷からも毛髪を保護する必要がある。そのため、第1剤を塗布する前に、特にダメージが大きい毛先などにタンパク質加水分解物や油性成分などを含む毛髪保護剤などを塗布しておく。前処理剤としては、美容施術者による施術前の毛髪診断に従って、適切なものを使用すればよい。また、このような毛髪保護剤を混合した水を毛髪に塗布等してもよい。
【0024】
(第1剤による還元軟化工程)
従来から一般に行なわれている縮毛矯正施術と同様に、アルカリ剤および還元剤を含む第1剤をスライス単位で粗歯のコームなどでコーミングして、毛髪に第1剤を浸透させ、還元軟化作用によって毛髪を十分に軟化させる。ここで、本実施形態の施術方法では、チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とする縮毛矯正剤、若しくはアイロンを利用するチオグリコール酸系2浴式縮毛矯正剤が好適に用いられる。軟化状態は、毛髪を指に巻き付けて戻り具合を見る、毛髪をU字に折り曲げて跳ね返り具合を見る、などの従来周知の方法でチェックする。十分に軟化していることが確認できたら、従来と同様に、前記第1剤をシャンプーボールに溜めた水や流水によって丁寧に洗い流す。そして、タオルやドライヤーで毛髪を十分に乾燥させる。ただ、乾燥し過ぎると、くせの伸びが悪くなったり、水分が毛髪に残らず、感触が悪くなってしまう傾向がある。逆に、毛髪に水分が多く残っていると、アイロンの熱が毛髪に強く作用してダメージを引き起こしてしまう。そのため、この段階では、70〜90%程度で乾燥させるのが好ましい。
【0025】
(アイロンによる縮毛矯正工程)
この工程では、第1剤によって軟化されてある程度直毛に矯正されている毛髪を、より強固に、かつ美麗に矯正する。具体的には、アイロンで、スライス単位の毛髪を挟み込み、一方の手で毛髪にテンションをかけて面を整え、他方の手でアイロンを操作することで、軟化させた毛髪を矯正する。この時のアイロンの温度は、120〜180度程度に設定する。アイロンは、強力な縮毛矯正効果を期待できる一方で、熱によって毛髪を傷めるおそれがある。また、毛先に近い部分ほど、縮毛矯正施術を繰り返し受けていてダメージも蓄積している場合が多い。そのため、テンションをかけるのは縮毛になっている根元付近や過去の施術で矯正が十分でなかった部分に限定するのが好ましい。また、毛髪の根元付近は温度を高めにして施術し、毛先部分は低めにして施術するのが好ましい。
【0026】
(第2剤による酸化定着工程)
この工程では、従来と同様に、過酸化水素などの酸化剤を含む第2剤を毛髪に塗布しながら粗歯のコームなどでコーミングする。毛髪が十分なストレート状態になったら、その状態で酸化定着させるために3〜20分程度、常温で放置する。
【0027】
(後処理工程)
最後に、溜め水若しくは流水で毛髪の第2剤を洗い流し、必要に応じてトリートメントなどを塗布し、ドライヤーなどで乾燥させて仕上げる。
【実施例】
【0028】
以下に、上記した本発明方法の実施例を説明する。
(1)実施条件
以下の実施例においては、25cmの人毛毛束(縮毛)1gに対して、縮毛矯正処理を行なった。水はすべてイオン交換水100%(硬度は0)のものを用いた。第1剤、第2剤については、ミルボン社製ラルーチェ ハイポジションH(第2剤の酸化剤は過酸化水素タイプ)を用いた。前処理工程における加温工程(前処理工程3)では、40℃に設定したローラーボールを用いて10分間加温した。矯正工程でアイロンを使用する例においては、ミルボン社製サーマルエフェクトアイロンFSを用い、温度は180℃に設定した。
【0029】
また、図1の(ii)に示す洗髪処理は以下の3工程で行い、1カ月間毎日洗髪を繰り返した状態を人工的に作り出した。
工程1:ミルボン社製ディーセスアウフェ ヘアシャンプーAを20倍に希釈してシャンプー溶液を生成する。
工程2:インキュベーター内で30〜35℃に加温したシャンプー溶液に毛束を20分間浸漬する。
工程3:毛束を30〜35℃程度のぬるま湯で洗浄した後、ドライヤーで乾燥する。
【0030】
(2)実施例1〜3
以下の実施例1〜3及び比較例1では、コールド2浴式縮毛矯正方法において、アイロンを使用せずに縮毛を矯正した。
【0031】
実施例1では、延伸方法として手で引っ張る方法を用いた。
実施例2では、延伸方法としてリングコームを用いてコーミングする方法を用いた。
実施例3では、手で引っ張って延伸した後、加温しこれらの工程を2度繰り返した。
比較例1では、毛束の延伸を行なわなかった。
【0032】
(3)実施例4〜6
以下の実施例4〜6及び比較例2では、コールド2浴式縮毛矯正方法において、アイロンを使用して縮毛を矯正した。
【0033】
実施例4では、延伸方法として手で引っ張る方法を用いた。
実施例5では、延伸方法としてリングコームを用いてコーミングする方法を用いた。
実施例6では、手で引っ張って延伸した後、加温しこれらの工程を2度繰り返した。
比較例2では、毛束の延伸を行なわなかった。
【0034】
(評価方法)
上記した実施例及び比較例による施術後の毛束について、ねじり応力と、5人のパネラーによる複数項目の官能評価とによって、仕上がり具合を評価した。
【0035】
ここで、ねじり応力は、カトーテック社製のトルク感知式ねじり測定装置KES−YN−1を用いて測定した。具体的には、処理毛束からランダムに選択した試料毛髪の長さを2cmとし、ねじり回転速度を120℃/秒、ねじり回転数を±3回転に設定して施術後の毛束のねじり応力を測定した。
【0036】
また、官能評価項目は、施術後の毛束の柔らかさ、艶、及び伸び(毛髪がまっすぐであること)の3項目とした。これらの各項目について、5人のパネラーが未処理毛束と比較して下記評価点に従って点数付けした。そして、パネラー全員の点数を合計して、下記の総合評価基準に従って総合的な評価を行った。総合評価基準で◎および○のもの(15点以上)が合格である。
【0037】
<評価点>
5点:非常によい、4点:よい、3点:普通、2点:悪い、1点:非常に悪い。
【0038】
<総合評価基準>
評価◎:点数の合計が20点以上(平均4点以上)
評価○:点数の合計が15点以上20点未満
評価△:点数の合計が10点以上15点未満
評価×:点数の合計が10点未満
【0039】
(評価結果)
各実施例及び比較例の評価結果を図1及び図2に示す。これらの評価結果から分かるように、実施例1〜6の全てにおいて、比較例1、2より極めて良好な結果が得られた。特に、毛髪を手で引っ張って延伸させ、アイロンを使って矯正した実施例4及び6では、洗髪の前後において全ての項目で良好な結果が得られた。
【0040】
(実施例7)
次に、縮毛の被験者2名(A及びB)に対して、本発明方法の縮毛矯正施術を行なった実施例を説明する。
【0041】
被験者Aは、毛髪の長さは肩下10cmで、くせは強くない(普通毛)。この被験者Aは、過去に酸化型染毛剤によるカラー処理を3回、本発明の縮毛矯正処理を3回繰り返している。そのため、毛先部分は特にダメージしている。
【0042】
また、被験者Bは、毛髪の長さは肩にかかる程度で、強い縮毛である。この被験者Bは過去に、延伸工程を含まない通常の縮毛矯正処理を1回、本発明の縮毛矯正処理を2回繰り返している。そのため、毛髪が全体的に硬くなっている。
【0043】
ここで、毛先部分のダメージが大きい被験者Aについては、前処理剤として、ミルボン社製 リシオ ラルーチェ プロテクション70を塗布した。また、何れの被験者についても、水の塗布等及び延伸工程と、加温工程とを2回繰り返し、縮毛矯正工程ではアイロンを使用した。さらに、第2剤を水で洗い流した後に、後処理として、トリートメント(ミルボン社製 ディーセスアウフェ ヘアトリートメントB+)を塗布して仕上げた。その他の、第1剤、第2剤、加温手段やアイロンの種類、設定温度などの条件は上記した実施例と同様である。
【0044】
(実験結果)
施術後、パネラーが目視で仕上がりの均一感、毛髪のやわらかさ・艶・伸びを確認したところ、被験者の何れにおいても全ての項目で良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の実施例1〜3及び比較例1の評価結果を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施例4〜6及び比較例2の評価結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤を含む縮毛矯正用第1剤を毛髪に塗布して縮毛を還元軟化させる還元軟化工程と、酸化剤を含む縮毛矯正用第2剤を塗布して矯正された状態で毛髪を酸化定着させる酸化定着工程とを備えた縮毛矯正施術方法において、
前記還元軟化工程の前に、
(A)毛髪に水を塗布し、噴霧し、若しくは毛髪を水に浸漬させる(以下、「塗布等する」と称する)工程と、
(B)濡れた毛髪にテンションをかけて水分を毛髪に浸透させる工程と
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、
前記(A)工程及び(B)工程を同時に行うことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1の方法において、
さらに、
(C)前記(B)工程で水を浸透させた毛髪を加温する工程と、
(D)加温した毛髪に再度水を塗布等する工程と
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3の方法において、
前記(B)工程、(C)工程、及び(D)工程を複数回繰り返すことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1の方法において、
前記(A)工程及び(B)工程は、毛髪の一部を束ねたスライス単位で水を塗布等し、かつテンションをかけて水分を毛髪に浸透させるものであり、
この方法は、さらに、
(E)前記(B)工程の後に、毛髪の全体に水を塗布等してコーミングする工程を備えた
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1の方法において、
さらに、
(F)前記(B)工程の後に、毛髪の熱変性を防止若しくは抑制する前処理剤を毛髪に塗布する工程と、
(G)前記還元軟化工程の後に、第1剤によって還元軟化された毛髪を高温整髪用アイロンでプレスする工程と
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1の方法において、
さらに、
(G)前記(A)工程の前に、水からカルシウム及びマグネシウムを除去若しくは低減した軟水若しくは中軟水、イオン交換水、若しくは蒸留水(以下、「軟水等」と称する)を生成し、又は軟水等を用意する工程を備え、
前記(A)工程は、毛髪に軟水等を塗布等するものである
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7の方法において、
前記軟水等は、硬度120以下、好ましくは40以下であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1の縮毛矯正施術方法の(A)工程で毛髪に塗布等される水であって、カルシウム及びマグネシウムが除去された若しくは低減された水。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−120543(P2009−120543A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296595(P2007−296595)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】