説明

繊維−セメント製品組成物及びそれらから得られた形作られた製品

繊維−セメント製品の製造のための組成物は、ポリプロピレン繊維(A)と他の合成有機繊維(B)とを含み、前記ポリプロピレン繊維(A)は、6.0dtexよりも高く、かつ20.0dtexよりも小さい滴定濃度を有し、かつ前記合成有機繊維(B)は、少なくとも0.5dtexで、かつ15.0dtexよりも小さい滴定濃度を有するポリ(ビニルアルコール)繊維(B1)か、少なくとも0.5dtexで、かつ3.0dtexよりも小さい滴定濃度を有するポリプロピレン繊維(B2)か、あるいはそれらの混合の中から選択されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリプロピレン繊維(A)及び他の合成有機繊維(B)を含む強化用繊維を含む繊維−セメント製品組成物に関する。
【0002】
本発明は、前記組成物から製造された形づくられた繊維−セメント製品とも関係する。屋根と正面の部材、扁平と波形のシート、及び石板は、形づくられた繊維−セメント製品の例として挙げることができる。
【0003】
技術分野の状態
形づくられた繊維−セメント製品は、水硬性バインダー、強化用及び加工用の繊維、そしてことによると充填剤及び添加剤を含む水溶性懸濁液から開始して製造されている。この水溶性懸濁液は、成分の均一な分散を得るために混合される。この懸濁液は、その後、脱水される。得られた、固まっていない出来立ての製品は、平坦なシート、波形シートあるいはチューブに成形され得る。固まっていない形作られた製品は、その後、大気条件下あるいは特定の圧力、温度及び湿度条件下で硬化される。
【0004】
ハチェク(Hatschek)法は、繊維−セメント製品の製造においてもっとも広く知られている。この方法は、最初に石綿セメントに適用され、ハラルドクロス(Harald Klos)により書籍「Asbestzement」に余すところなく記載されている(Springer Verlag 1967)。当業者により知られた他の製造方法で挙げることが可能なものは、マニャーニ(Magnani)、マッツア(Mazza)、フローオン(Flow-on)、押出し及び射出である。ハチェク(Hatschek)法は、平坦なシート、波形シート及びチューブの製造のために特に最適であり、脱水用円筒篩の使用に基づいている。この方法において、バット(vat)に含まれる繊維、セメント、充填剤及び添加剤の希釈浮遊液から生じる層は、円筒篩を通してフェルトに移され、その後、この層は、シートの必要とされた厚さが得られるまで成形ドラム上に巻かれる。
【0005】
成形ドラム上に形作られた繊維−セメントシートは、ひとたび所望の厚さが得られれば、裁断され、そしてドラムから取り除かれる。このシートは、その後、波形シートの場合、例えば油の補給された金属波形テンプレート等の波形テンプレートの間にそれを置くことからなる成形工程が施される。その後、それは室温で硬化段階に委ねられる(空気硬化)。ある一定の応用のため、固まっていない製品は、成形段階と硬化段階の間で圧縮される(後期の圧縮)。我々は、プレスなし繊維−セメント製品に対し、これらをプレスされた繊維−セメント製品と呼ぶ。プレスされた繊維−セメント製品は、4.9MPaあるいはそれ以上の圧力で圧縮されている。通常は、適用された圧力は、9.8MPa〜24.5MPaの間に含まれる。
【0006】
強化用及び加工用の繊維は、耐アルカリ性でなければならない(例えば、水酸化カルシウムの飽和溶液に対して)。それらは、水溶性の希釈セメント分散液に容易に分散可能でなければならない。それらは、他の添加剤が添加された条件においても均一に分散したままでなければならない。繊維の良好な分散は、一方で、これらの繊維が塊状物を形成しないことを確認することが重要で、他方で、完成した繊維−セメント製品中の繊維の均一濃度を確実なものにすることが重要である。補強剤として使用された繊維は、良好な機械特性も持たなければならない。文献は、天然又は合成の有機及び無機の繊維の使用と関連した刊行物を含む。従って、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリプロピレン(PP)及びポリ(ビニルアルコール)(PVA)の繊維は、補強のために使用された。同様に、研究は、ガラス、鋼、アラミド及び炭素の繊維を使ってなされていた。残念なことに、天然又は合成の繊維は、全て前述の特性を持っていない。その上、良好な機械的特性を持ち、かつ関心を引く値段で形作られた繊維−セメント製品を製造することが重要である。従って、合成補強繊維を含む水硬性組成を使用することが知られている。現在使用された補強繊維の中で、ポリアクリロニトリル(PAN)及びポリ(ビニルアルコール ビニル)(PVA)の繊維が一般に好ましい。個別にもしくは組み合わせで、これらの繊維は、高い引張強度及び曲げ抵抗を持ち、形づくられた繊維−セメント製品を製造することを可能にする。残念ながら、PVA及びPANの繊維は、特に屋外に晒されている間の経年変化の後、形作られた製品に十分な衝撃抵抗を与えない。ポリプロピレン(PP)繊維は、110℃に近い温度でさえ、アルカリに対して優れた抵抗を有する。これらの繊維は、耐久力があり、かつ安価である。しかしながら、PP繊維は、一般技術的に、材料を含むセメントを補強するのに不十分なものに過ぎない。
【0007】
文献JP2004−352556は、2又は2.2dtex(texは繊維の単位長さ当りの質量のS.I.単位として使用され、10-6kg.m-1と等しく、それゆえ、dtex又はdecitexは10-7kg.m-1と等しい)を持つPVA補強繊維と、2.2dtexの滴定濃度により特徴付けられたポリプロピレン繊維とを含む水硬性組成物を開示する。しかしながら、そのような組成物から得られた繊維−セメントの板は、例えば屋根材への応用、より詳細には空気中に存在する二酸化炭素に晒されている間の自然な経年変化後に使用された時、不十分な衝撃抵抗を有する。特許出願EP−A−1854770は、少なくとも4.0dtexで、15.0dtex未満の滴定濃度によって特徴付けられたポリ(ビニルアルコール)繊維と、少なくとも1.5dtexで、3.0dtex未満の滴定濃度のポリ(ビニルアルコール)からなる繊維か、少なくとも0.7dtexで、3.0dtex未満の滴定濃度を持つプロピレンのポリマー又は共重合体からなる繊維か、あるいはそれらの混合の中から選択された合成有機繊維とを含む繊維−セメント物品の製造のための組成物を開示する。これらの組成物から製造された製品は、従来技術に対して向上された衝撃抵抗を有するが、改良の必要性がまだある。
【0008】
発明の要旨
発明の目的は、ポリプロピレン繊維(A)と合成有機繊維(B)とを含む繊維−セメント製品の製造のための組成物であって、現存する組成物の不利益を棄却したものを企図する。
【0009】
発明の目的は、実施することが容易で、アルカリに対して耐性のある安価な補強繊維を含み、高い補強能力と共に均一で、かつ安定な分散を提供する繊維−セメント製品用組成物を企図する。さらに、外部に晒されている間の経年変化後でさえ、優れた加工性、良好な曲げ抵抗、高くかつ耐久性のある衝撃抵抗を持ち、かつそのコストが極端に高くない繊維−セメント製品の組成物を企図することを課題とする。
【0010】
このため、本発明による組成物は、ポリプロピレン繊維(A)と合成有機繊維(B)とを含むことを特徴とし、ポリプロピレン繊維(A)は6.0dtexよりも高く、かつ20.0dtexよりも小さい滴定濃度を有し、かつ合成有機繊維(B)は、少なくとも0.5dtexで、かつ15.0dtexよりも小さい滴定濃度を有するポリ(ビニルアルコール)繊維(B1)か、少なくとも0.5dtexで、かつ3.0dtexよりも小さい滴定濃度を有するポリプロピレン繊維(B2)か、あるいはそれらの混合の中から選択されることを特徴とする。
【0011】
6.0dtex以下の滴定濃度を有するポリプロピレン繊維(A)を含む組成物は、より低い衝撃抵抗を持つ繊維−セメント物品をもたらす。少なくとも20.0dtexの滴定濃度を有するポリプロピレン繊維(A)を含む組成物は、劣った拡散性に難点がある。好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも10.0dtexで、かつ18.0dtexよりも小さい滴定濃度を有するポリプロピレン繊維(A)を含む。
【0012】
本発明による組成物は、少なくとも0.5dtexで、かつ15.0dtexよりも小さい滴定濃度を有するポリ(ビニルアルコール)繊維(B1)か、少なくとも0.5dtexで、かつ3.0dtexよりも小さい滴定濃度を有するポリプロピレン繊維(B2)か、あるいはそれらの混合の中から選択される合成有機繊維(B)を含む。0.5dtexよりも小さい滴定濃度を有するポリ(ビニルアルコール)繊維(B1)を含む組成物は、劣った加工性に難点があるのに対し、少なくとも15dtexの滴定濃度を持つポリ(ビニルアルコール)繊維(B1)は劣った分散性に難点があり、要求された機械的特性を持たない繊維−セメント製品を導く。少なくとも1.0dtexで、かつ10.0dtex未満の滴定濃度を持つポリ(ビニルアルコール)繊維(B1)を含む組成物は、好ましい。0.5dtex未満の滴定濃度によって特徴付けられたポリプロピレン繊維(B2)を含む組成物は、繊維−セメント製品の製造中に加工性の問題を生じる。ポリプロピレン繊維(A)とポリプロピレン繊維(B2)とを含み、後者が少なくとも3.0dtexの滴定濃度によって特徴付けられている組成物は、分散問題を生じ、それゆえ劣った機械的特性を持つ繊維−セメント製品を導く。少なくとも0.7dtexで、かつ2.5dtexよりも小さい滴定濃度を持つポリプロピレン繊維(B2)を含む組成物が好ましい。
【0013】
好ましくは、本発明による組成物のポリプロピレン繊維(A)は、6mm〜30mmの範囲での長さを有する。8〜25mmの長さの繊維(A)は、特に好ましい。良好な結果は、10〜15mmの長さによって特徴付けられた繊維(A)を使用して得られる。6mmより短いか、30mmよりも長い長さによって特徴付けられたポリプロピレン繊維(A)を含む組成物は、劣った衝撃抵抗を持つ繊維−セメント物品を導く。好ましくは、本発明による組成物の他の合成繊維(B)の長さは、2〜20mmの範囲である。4〜10mmの長さによって特徴付けられた合成繊維(B)は、特に好ましい。
【0014】
特定の実施形態によると、本発明による組成物は、少なくとも8cN/dtexのテナシティー(tenacity)によって特徴付けられた繊維(A)及び繊維(B)を含むことを特徴としている。テナシティーが8cN/dtex未満の繊維(A)及び(B)を含む繊維−セメント製品は、要求された機械的特性を持たない。
【0015】
本発明による組成物は、組成物の総乾燥重量に対して0.05〜5.0重量%の繊維(A)を好ましくは含む。読みやすく、かつ明確にするため、以下の記載で使用された“繊維の重量パーセント”という表現は、“組成物の初期乾燥総重量と比較した繊維重量の重量パーセント”というように、組成物中の繊維と関連するものと理解されなければならない。0.05重量%未満の繊維(A)を含む組成物から製造された製品は、低い衝撃抵抗に難点がある。5.0重量%よりも多い繊維(A)を含む組成物は、セメント母材中の繊維の劣った分散性のため、不十分な機械的特性を持つ繊維−セメント製品を与える。0.1〜1.5重量%の繊維(A)を含む組成物は、特に好ましい。
【0016】
有利な実施形態によると、本発明による組成物は、組成物の初期乾燥総重量に対して0.5〜5重量%の繊維(B)を含むことを特徴としている。特に、0.5重量%未満の繊維(B)を含む組成物を用いて製造された繊維−セメント製品は、曲げ抵抗が極めて低いという難点を有する。加えて、5重量%よりも多い繊維(B)を含む組成物から製造された製品は、セメント母材中の繊維の劣った分散性のために不十分な機械的特性を有する。有利なことに、本発明による組成物は、0.5〜3.5重量%の繊維(B)を含む。良好な結果は、ポリ(ビニルアルコール)(B1)からなる繊維を0.5〜2.5重量%と、0.3〜1.0重量%のポリプロピレン繊維(B2)とを含む組成物から得られた。
【0017】
繊維(A)及び(B)の部分は、円形あるいは不規則な形状、例えばX又はYの形状であることができる。繊維は、それらが引き伸ばされている間あるいはその後に、織られることが可能である。特定の実施形態によると、繊維(A)及び/又は(B2)は、押出成形されたポリプロピレンフィルムから出発して得られることも可能である。繊維は、その後、リボンの形状を示すことができる。好ましくは、ポリプロピレン繊維(A)及び(B2)は、円形断面を持つマルチフィラメントであり、紡糸口金を通して溶融紡糸により得られる。繊維(A)及び(B2)は、プロピレンのポリマー、共重合体あるいはターポリマーからなり、通常使用されるあらゆる種類のポリプロピレン樹脂から得られ得る。繊維(A)及び/又は(B2)の少なくとも一部は、フィラーをできる限り含むことができる。好ましくは、それらは、8〜18の炭素原子を有意には含み、かつカリウム又はナトリウムの塩のような有機燐酸化合物のアルカリ金属塩のような親水化剤をさらにできる限り含むことができる。実施の代替方法によると、繊維(A)及び/又は(B2)は、高いアイソタクチシティ(isotacticity)ポリプロピレンから作られることができる。発明の実施の他の形態によると、繊維(A)及び/又は(B2)は、例えば芯及び外部層からなり、後者は充填剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムあるいはそれらの混合物のようなアルカリ土類金属炭酸塩粒子を好ましくは含む同時押出成形された複合繊維を含むことができる。この発明の有利な手続きによれば、繊維(A)及び/又は(B2)は、それらのセメントマトリックスに対する親和性を改善するため、コロナ放電又はプラズマのような表面酸化処理を受けている。この発明の特に有利な代替によれば、繊維(A)及び/又は(B2)は、表面酸化処理、次いで、親水性アビベイジ(avivage)か、より好ましくは極性有機ポリマーの水溶性分散液か、無水マレイン酸、アクリル酸あるいはメタクリル酸の中から好ましくは選択される極性基により合成後に変性され、例えばグラフトによって得られた、オレフィンのホモポリマーあるいはオレフィンモノマーの共重合体の分散液の噴霧もしくは浸漬により適用され得る、湿潤剤を用いる処理を受けていることがあり得る。
【0018】
本発明の他の好ましい実施形態によると、繊維(A)は、少なくとも160cN/dtexのヤング率によって特徴付けられている。17%以下の破断点伸びを有するポリプロピレン繊維(A)が好ましい。少なくとも160cN/dtexのヤング率及び/または17%以下の破断点伸びを持つ繊維(A)の使用は、高められた衝撃特性を持つ繊維−セメント物品を与える。
【0019】
本発明による組成物は、セルロース繊維を好ましくはさらに含む。化学的な木材パルプから得られたセルロース繊維が好ましい。クラフトパルプは特に好ましい。セルロース繊維は、漂白されているか、もしくは無漂白であることがあり得る。適切なパルプは、例えばニュージーランドマツ(Pinus Radiata)等の軟材か、硬材から加工される。良好な結果は、無漂白の軟材クラフトパルプからのセルロース繊維を用いて得られた。20〜40の範囲、さらに好ましくは20〜30のカッパー価によって特徴付けられたセルロース繊維が特に好ましい。15〜85の範囲、さらに好ましくは25〜70の範囲のショッパーリーグラー度(Shopper Riegler degree)で規定されたセルロース繊維は、満足な結果を与える。好ましいのは、TAPPI法T271によって決定された、0.8〜4mmの範囲の長さを持つセルロース繊維を提供することである。TAPPI法T212によって測定された、3.5重量%未満のアルカリ可溶性量を持つセルロース繊維が、適している。好ましい組成物は、0.5〜12重量%のセルロース繊維を含む。特に好ましい組成物は、1〜10重量%のセルロース繊維を含む。良好な結果は、1〜5重量%のセルロース繊維を含む組成物を用いて得られた。
【0020】
特定の実施形態によると、本発明による組成物は、セルロース繊維に加え、繊維(A)及び繊維(B)、無機又は有機の繊維の中から選択される他の補強繊維を含むことを特徴としている。好ましくは、有機繊維は、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、アラミド及び炭素の繊維の中から選択される。有意には、無機繊維は、ガラス繊維、岩綿、鉱さい綿、ケイ灰石繊維、セラミック繊維、及び類似物の中から選択される。本発明による組成物は、例えばポリオレフィン微小繊維などの微小繊維をさらに含むことができる。
【0021】
特定の実施形態によると、本発明による組成物は、水硬性バインダーとしてセメントを含むことを特徴としている。有意には、セメントは、ポルトランドセメント、高いアルミナ含有量のセメント、鉄のポルトランドセメント、トラッスセメント、スラグセメント、石膏、オートクレーブ処理によって形成された珪酸カルシウム、及び特定のバインダーの組み合わせの中から選択される。ポルトランドセメントが、特に良く適している。
【0022】
特定の実施形態によると、本発明による組成物は、微小繊維及び添加剤をことによると含むことを特徴としている。添加剤は、分散剤、可塑剤及び凝集剤の中から好ましくは選択される。充填剤は、フライアッシュ、非晶質シリカ、粉砕された水晶、粉砕された岩、粘度、高炉スラグ、炭酸塩、ポゾラン等の中から有意に選択される。充填剤の総量は、好ましくは、組成物の初期乾燥総重量と比較して50重量%未満である。
【0023】
発明の目的は、経年変化後でさえ、優れた衝撃抵抗と組み合わされた十分な曲げ抵抗を持つ繊維−セメント製品を提供することである。この理由のため、本発明による繊維−セメント製品は、本発明による組成物から出発して製造されることを特徴とする。本発明による製品は、二酸化炭素に晒されている間の経年変化後でさえ、標準ASTM D−256−81(方法B)によって測定された、良好なシャルピー(Charpy)衝撃抵抗を有する。加えて、本発明による製品は、高い曲げ率を有する。特定の実施形態によると、本発明による製品は、好ましくは、屋根材または正面の部材、扁平または波形のシートである。本発明による組成物は、波形のシートの製造に特に適している。他の特定の実施形態によると、製品は、パイプの形状、タンク貯蔵部材の形状、あるいは様々な形状のあらゆる他の付属品を有する。
【0024】
特定の実施形態の詳細な説明
本発明が、特に前述に開示され、かつ記載されたものに限定されないことは当業者に自明なことであろう。全ての新規な特徴とこれらの特徴のそれぞれの組み合わせは、発明の範囲に属している。請求項中の数の表示は、それらの保護範囲を制限するものではない。“含むこと(to comprise)又は備えること(to include)”の動詞の使用と、それらの複合した形態は、請求項に挙げられたもの以外の他の要素の存在を排除するものではない。要素の前に“a”又は“an”の冠詞を使用することは、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。発明は、以後、実施形態の特定の実施例を用いて詳細に記載される。
【0025】
実施例
繊維の特徴が表1に与えられる。
【表1】

【0026】
混合物の準備と、小型ハチェク装置(Mini-Hatschek machine (MiH))上での生産
セメント状製品は、工業上の方法により得られた製品の主要な特徴を再現する実験的な方法に従った、ハチェク(Hatschek)技術によって製造された。水で激しく希釈された後に使用されている組成物は、表2及び表3に述べられている(総乾燥物質に対する重量%で表現された固体の濃度)。セルロース繊維SUKP 65SRは、65°ショッパーリーグラー(Schopper-Riegler)で規定された、針葉樹の無漂白クラフトパルプを指しており、P30はポルトランドセメントを示す。
【0027】
シートは50℃で一晩中硬化され、その後、室温で7日間の間、プラスチックカバーシートの条件下で硬化された。
【0028】
シャルピー(Charpy)衝撃抵抗の測定
シャルピー衝撃抵抗(MPaで表す)は、標準ASTM D−256−81、方法Bに従い、Zwick DIN 5102.100/00装置を使用し、15*120mmの空気乾燥MiH試料及び全長100mmの条件下で測定される。10個のMiH試料は、製造後2週間で二方向(装置方向とこれに垂直な方向)について測定された。表3の試料の衝撃抵抗は、600Lの炉内で60℃で90%の相対湿度でエージング後にも、1.51CO2/minの投入を24時間しつつ、測定されていた。従って、CO2濃度は、調整の初期で7%から調整の末期で12%まで変化する。
【0029】
曲げ抵抗の測定
曲げ抵抗(kJ/m2で表す)は、全長146mmで、20mm/minuteの試験速度で、50*160mmの空気乾燥MiH試料の条件下で、UTS装置を用いて三点曲げ試験により決定される。10個の試料は、製造後2週間で二方向(装置方向とこれに垂直な方向)について測定される。装置は、曲げの応力/歪みを記録する。SMOR(最大応力)の値は、表2及び表3に述べられている。
【0030】
表2及び表3に述べられた衝撃及び曲げの抵抗測定の結果は、参照を比較して%で表現される。
【0031】
表2において、比較例1は比較例2及び実施例1の参照とみなされ、比較例3は比較例4及び実施例2の参照とみなされ、かつ比較例5は実施例3の参照とみなされる。表3において、比較例7は実施例4〜6の参照とみなされる。
【表2】

【0032】
表2中の結果は、繊維(B1)(比較例1と3)又は繊維(B2)(比較例5)の使用により達成できず、繊維(B1)及び(B2)(比較例2及び4)のあらゆる混合によっても達成されない水準での改良された衝撃抵抗を有する繊維(A)(実施例1−3)を含む組成物を示す。PVA繊維(B1)(1)のPP繊維(B2)による部分的な置換は、ただわずかに改良された衝撃特性を持つ繊維−セメント製品を導く(比較例2対比較例1)。
【表3】

【0033】
表3は、繊維(A)は、エージング(炭酸塩化)及びエージングなしの双方の衝撃抵抗を改良することと、最善の衝撃結果が13mmの長さの繊維(A)(1)の使用により得られる(実施例4対実施例5)ことを示す。
【0034】
繊維(A)及び(B1)(実施例4及び5)の量を含む組成物は、繊維(B1)及び(B2)の同等量を含む組成物よりも高い衝撃強度を有し、繊維(B1)及び(B2)のみ含む組成物(比較例6)に比して約90%に維持された曲げ強度を有する。
【0035】
実施例6は、繊維(B1)(1),(B1)(2)及び(B2)を含む組成物に少量の繊維(A)の添加が、曲げ強度を維持しつつ、エージングされた試料及びエージングなしの試料の双方で測定された衝撃抵抗を大幅に改善する。本発明による繊維(A)及び繊維(B)を含む組成物から製造された繊維−セメント製品は、より良いバランスのとれた、衝撃抵抗及び曲げ強度の特性を有する。
【0036】
本発明は、発明の例示であり、かつ限定的とみなすべきでない実施の特定の用語で記載された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維−セメント製品の製造のための組成物は、ポリプロピレン繊維(A)と他の合成有機繊維(B)とを含み、
前記ポリプロピレン繊維(A)は、6.0dtexよりも高く、かつ20.0dtexよりも小さい滴定濃度を有し、かつ
前記合成有機繊維(B)は、少なくとも0.5dtexで、かつ15.0dtexよりも小さい滴定濃度を有するポリ(ビニルアルコール)繊維(B1)か、少なくとも0.5dtexで、かつ3.0dtexよりも小さい滴定濃度を有するポリプロピレン繊維(B2)か、あるいはそれらの混合の中から選択されることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1の組成物は、前記ポリ(ビニルアルコール)繊維(B1)が少なくとも1.0dtexで、かつ10.0dtex未満の滴定濃度を持つことを特徴とする。
【請求項3】
請求項1または請求項2の組成物は、前記ポリプロピレン繊維(B2)が少なくとも0.7dtexで、かつ2.5dtexよりも小さい滴定濃度により特徴付けられていることを特徴とする。
【請求項4】
先行する請求項のいずれか1項に記載の組成物は、前記ポリプロピレン繊維(A)が少なくとも10.0dtexで、かつ18.0dtexよりも小さい滴定濃度を有することを特徴とする。
【請求項5】
先行する請求項のいずれか1項に記載の組成物は、前記ポリプロピレン繊維(A)が6mm〜30mmの長さを有することを特徴とする。
【請求項6】
先行する請求項のいずれか1項に記載の組成物は、前記繊維(A)及び(B)は、少なくとも8cN/dtexのテナシティーを有することを特徴とする。
【請求項7】
先行する請求項のいずれか1項に記載の組成物は、前記組成物の初期乾燥総重量に対して0.05〜5.0重量%の繊維(A)を含むことを特徴とする。
【請求項8】
先行する請求項のいずれか1項に記載の組成物は、前記組成物の初期乾燥総重量に対して0.5〜5重量%の繊維(B)を含むことを特徴とする。
【請求項9】
請求項7の組成物は、0.1〜1.5重量%の繊維(A)を含むことを特徴とする。
【請求項10】
請求項8の組成物は、0.5〜3.5重量%の繊維(B)を含むことを特徴とする。
【請求項11】
先行する請求項のいずれか1項に記載の組成物は、前記ポリプロピレン繊維(A)が少なくとも160cN/dtexのヤング率によって特徴付けられていることを特徴とする。
【請求項12】
先行する請求項のいずれか1項に記載の組成物は、前記ポリプロピレン繊維(A)が17%以下の破断点伸びによって特徴付けられていることを特徴とする。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物を用いて製造された繊維−セメント製品。
【請求項14】
請求項13記載の繊維−セメント製品は、扁平又は波形のシートであることを特徴とする。

【公表番号】特表2012−504540(P2012−504540A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529500(P2011−529500)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061887
【国際公開番号】WO2010/037628
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(511085127)レドコ・エス.エー. (1)
【氏名又は名称原語表記】REDCO S.A.
【住所又は居所原語表記】Kuiermansstraat 1, BE−1880 Kappelle−op−den−Bos, Belgium
【Fターム(参考)】