説明

繊維における捲縮特性の測定装置及び測定方法

【課題】捲縮数等の捲縮特性を自動で容易に且つ高精度に測定し、信頼性の高い測定結果を得ることができる捲縮特性の測定装置を提供する。
【解決手段】本発明により、捲縮が付与された繊維の捲縮特性を測定する測定装置であって、前記繊維に所定の荷重を付加する荷重付加手段と、前記繊維までの距離を測定する変位センサと、前記変位センサと前記繊維とを前記繊維の長手方向に沿って相対的に定速移動させる移動手段と、前記変位センサの位置情報と、前記変位センサで測定した変位センサ及び繊維間の距離とから、前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量を求め、同求めた高さ位置の変位量に基づいて前記繊維の捲縮特性を演算する捲縮特性演算手段と、を備えてなることを特徴とする捲縮特性測定装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捲縮が付与された繊維、特にトウバンド等における捲縮特性を測定する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、たばこフィルター等に用いられるアセテートトウ(トウバンド)は、一般にフィラメントを集合したトウ糸条を複数本集束して帯状に形成し、この形成した帯状の繊維束に例えばギア・クリンパー等により捲縮を付与することによって製造することができる。このようなトウバンドに対する捲縮の付与は、例えば、たばこフィルター等へ加工した際に、たばこフィルターとしての硬さや通気抵抗を発現させるために行われている。
【0003】
ところで、上記のように捲縮が付与されたトウバンドにおいて、その捲縮特性を示す指標の1つに捲縮数がある。捲縮数は、トウバンドの品質を判断する重要なファクターの1つである。特に、トウバンドを最終製品の1つであるたばこフィルターへ加工する場合、トウバンドの捲縮特性は、たばこ煙ろ過性能に影響を及ぼす因子の1つとなっている。
【0004】
現在、捲縮を付与した繊維における捲縮数に関しては、その測定方法がJIS L 1051において規定されており、以下のような方法を用いて捲縮数を測定することが記載されている。先ず、捲縮が損なわれていない部分から単繊維を1本ずつ採取して測定試料とする。次に、採取した試料(試料糸)に所定の初荷重をかけた状態で、試料長さ25mm当たりの捲縮数を測定する。そして、このような試験を20回行ったときの平均値を、繊維の捲縮数として表すことができるとしている。
【0005】
しかし、例えば前述のようなたばこフィルター等に用いられるアセテートトウは、単繊維同士が複雑に絡み合った構造を有している。このため、アセテートトウの捲縮数を測定する場合、JISに規定されている方法に基づいて、アセテートトウから単繊維を1本ずつ採取してその捲縮数を測定することは非常に困難であるといった問題があった。そこで、従来では、トウバンドを所定の長さに切断し、得られた試料片にJIS規格に準拠した荷重(張力)を加えた状態で、作業者が目視により捲縮数を数えることが一般的に行われていた。
【0006】
しかしながら、このような作業者の目視による捲縮特性の測定は、非常に煩雑な作業であるため誤差が生じやすく、作業者の熟練度等が必要とされた。また、測定作業が多数回に及ぶことから、作業者に対する負担が非常に大きくなるという問題があった。更に、測定結果に個人差が生じ易く、同一の試料を測定した場合であっても、各作業者によって測定値が異なってしまうという問題もあった。
【0007】
そこで、上記のような問題を解消するために、特許第3038010号明細書(特許文献1)や特開平7−316975号公報(特許文献2)においては、トウバンドの捲縮特性を作業者の目視によらずに測定可能な測定装置及び測定方法に関する発明が開示されている。
【0008】
これら特許文献1及び2に記載されている捲縮特性の測定においては、先ず、光源を用いて、測定対象となるトウバンドに対して斜め上方から光を照射し、トウバンドの表面に捲縮に対応した明暗を形成する。次に、光の明暗を形成したトウバンドの表面を、トウバンドの上部に配設した撮像手段(カメラ)で撮像し、得られた画像の輝度(反射光の強さ)をコンピュータ等で解析する。そして、撮影画像における輝度の濃淡レベル差が所定値以上となる部位を捲縮の山部又は谷部として検出する。このように画像の輝度を利用してトウバンドの捲縮を検出することにより、トウバンドにおける捲縮数等のような捲縮特性を、人手によらずコンピュータで自動的に測定することが可能となる。
【特許文献1】特許第3038010号明細書
【特許文献2】特開平7−316975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び2では、前述のように、トウバンドに斜め上方から光を照射し、この光を照射したトウバンド表面をカメラ等で撮像し、得られた画像の輝度を解析することによってトウバンドの捲縮特性を測定している。従って、このような測定方法においては、撮像した画像の輝度レベルが捲縮特性の測定結果に大きな影響を及ぼすことになる。このため、捲縮特性の測定を高精度に行うためには、トウバンドの表面に照射する光の明るさが常に一定となるように制御することが必要となる。
【0010】
しかしながら、実際の捲縮特性の測定においては、光を照射する光源の劣化、光源の照射位置や周囲の明るさの変化等に起因して、各試料の測定間で測定環境が変化しやすいため、トウバンドの表面に照射する光の明るさを常に一定に保つことは困難である。このため、前記特許文献1及び2に記載されているような測定においては、例え同一の測定試料であっても測定を行う毎に捲縮特性の測定結果にばらつきが生じることがあり、信頼性に欠けるといった欠点があった。また実際に、このような輝度を利用した捲縮特性の測定は、熟練した作業者の目視による測定結果との相関も低いという不具合もあった。
【0011】
更に、前記特許文献1及び2では、トウバンド表面を撮像した画像の濃淡から捲縮特性を測定している。このため、例えば捲縮の高さ又は深さ(捲縮における山谷間の高さ)といった捲縮特性の測定が非常に難しいという問題もあった。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、本発明の具体的な目的は、熟練者でなくても、捲縮数等の捲縮特性を自動で容易に且つ高精度に測定し、信頼性の高い測定結果を得ることができる捲縮特性の測定装置及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明により提供される捲縮特性の測定装置は、基本的な構成として、捲縮が付与された繊維の捲縮特性を測定する測定装置であって、前記繊維に所定の荷重を付加する荷重付加手段と、前記繊維までの距離を測定する変位センサと、前記変位センサと前記繊維とを前記繊維の長手方向に沿って相対的に定速移動させる移動手段と、前記変位センサの位置情報と、前記変位センサで測定した変位センサ及び繊維間の距離とから、前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量を求め、同求めた高さ位置の変位量に基づいて前記繊維の捲縮特性を演算する捲縮特性演算手段とを備えてなることを最も主要な特徴とするものである。
【0014】
また、本発明における捲縮特性測定装置では、前記捲縮特性演算手段が、前記捲縮特性として、前記繊維における捲縮数、捲縮波長、及び捲縮高さのうちの少なくとも1つを演算することができる。
【0015】
更に、本発明において、前記捲縮特性演算手段が、前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量の極大値及び極小値を決定する極値決定部と、前記極値決定部で決定した極大値のうち、前記高さ位置が予め規定した上限値よりも大きい値を示す前記繊維の測定点を捲縮の山部とし、同山部前後の極小値を示す前記繊維の測定点を捲縮の谷部として特定する山谷特定部と、前記山谷特定部で特定した捲縮の山部及び谷部に基づいて、前記繊維の捲縮特性を演算する演算部とを備えていることが好ましい。
【0016】
更にまた、本発明の測定装置は、前記変位センサが、レーザ式変位センサであることが好ましい。また、この場合は、前記レーザ式変位センサのレーザスポット径が、30μm以上100μm以下であることが特に好ましい。
【0017】
次に、本発明により提供される捲縮特性の測定方法は、基本的な構成として、捲縮が付与された繊維の捲縮特性を測定する測定方法であって、前記繊維に所定の荷重を付加すること、変位センサを用いて、同変位センサと前記繊維とを前記繊維の長手方向に沿って相対的に定速移動させながら、変位センサ及び繊維間の距離を測定すること、前記変位センサの位置情報と、前記変位センサで測定した前記変位センサ及び繊維間の距離とから、前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量を求めること、前記求めた繊維の長手方向における高さ位置の変位量に基づいて、前記繊維の捲縮特性を演算することを含んでなることを最も主要な特徴とするものである。
【0018】
また、本発明においては、前記繊維の捲縮特性を演算する際に、前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量の極大値及び極小値を決定し、前記決定した極大値のうち、前記高さ位置が予め規定した上限値よりも大きい値を示す前記繊維の測定点を捲縮の山部とし、同山部前後の極小値を示す前記繊維の測定点を捲縮の谷部として特定し、前記特定した捲縮の山部及び谷部に基づいて、前記繊維の捲縮特性を演算することが好ましい。
更に、本発明の測定方法では、前記繊維として、トウバンドを用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る繊維の捲縮特性測定装置は、荷重付加手段が繊維に所定の荷重を付加した状態で、移動手段により変位センサと繊維とを繊維の長手方向に沿って相対的に定速移動させながら、変位センサにより変位センサと繊維との間の距離の測定を連続的に又は間欠的に行う。本発明において、前記移動手段は、変位センサと繊維とを繊維の長手方向に沿って相対的に定速移動させるときに、変位センサのみを移動させることも、また、繊維のみを移動させることも、更に、変位センサと繊維の両方を移動させることができる。これにより、変位センサは、繊維の長手方向に沿った所定範囲又は各測定点において、変位センサの現在の位置を基準とした繊維の相対的な位置を測定することができる。
【0020】
そして、本発明の測定装置は、捲縮特性演算手段を備えていることにより、変位センサで測定した変位センサ及び繊維間の距離と、変位センサがその距離の測定を行ったときの変位センサの位置情報とを用いて、繊維の長手方向における高さ位置の変位量を求めることができる。更に、捲縮特性演算手段は、この求めた高さ位置の変位量に基づいて繊維の捲縮特性を演算することが可能となる。
【0021】
従って、本発明の測定装置によれば、上述のように繊維の捲縮特性を自動で容易に且つ高精度に測定することが可能となり、熟練者でなくても、また繊維表面に照射する光の明るさが一定でなくても、信頼性の高い捲縮特性の測定結果を得ることができる。更に、本発明では、捲縮特性の測定結果に各作業者の個人差が反映されることがないので、捲縮特性の評価精度の向上や作業の効率化が図れるといった効果も得ることができる。
【0022】
また、本発明の測定装置では、繊維の捲縮特性として、捲縮数や捲縮波長等を正確に測定できるだけでなく、例えば前記特許文献1及び2等のような従来の測定では得ることが難しかった捲縮高さといった繊維の捲縮特性をも正確に安定して測定することができる。
【0023】
また、本発明の測定装置においては、前記捲縮特性演算手段が、上述したような極値決定部、山谷特定部、及び演算部を備えている。これにより、捲縮特性演算手段は、前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量を求めた後、極値決定部で、高さ位置の変位量における増加・減少を判断することにより、高さ位置の変位量の極大値及び極小値を決定することができる。また、変位量の極大値及び極小値を決定した後、山谷特定部により、決定した極大値の中から、その高さ位置が予め規定した上限値よりも大きい値を示す前記繊維の測定点を捲縮の山部とし、その特定した山部の前後の極小値を示す前記繊維の測定点を捲縮の谷部として特定する。更に、捲縮の山部及び谷部を特定した後、これらの山部及び谷部の繊維長手方向における測定点や高さ位置に基づいて演算を行うことにより、捲縮数、捲縮波長、及び捲縮高さといった捲縮特性を高精度に求めることができる。
【0024】
更に、本発明の測定装置では、前記変位センサとして非接触式の変位センサを用いることができ、その中でもレーザ式変位センサを用いることが好ましい。前記変位センサとしてレーザ式変位センサを用いることにより、変位センサと繊維との間の距離を高速・高精度に測定することができる。また、このようにレーザ式変位センサを用いる場合においては、レーザ式変位センサのレーザスポット径を30μm以上100μm以下にすることが好ましい。これにより、変位センサと繊維との間の距離を非常に正確に安定して測定することができる。
【0025】
次に、本発明に係る繊維の捲縮特性測定方法は、繊維に所定の荷重を付加した後、変位センサを用いて、同変位センサと前記繊維とを前記繊維の長手方向に沿って相対的に定速移動させながら、変位センサ及び繊維間の距離を連続的に又は間欠的に測定する。これにより、変位センサは、繊維の長手方向に沿った所定範囲又は各測定点において、変位センサの現在の位置を基準とした繊維の相対的な位置を測定することができる。
【0026】
そして、本発明の測定方法では、変位センサで測定した変位センサ及び繊維間の距離と、変位センサがその距離の測定を行ったときの変位センサの位置情報とを用いて、繊維の長手方向における高さ位置の変位量を求め、更にこの求めた繊維の長手方向における高さ位置の変位量に基づいて、前記繊維の捲縮特性を演算することができる。
【0027】
これにより、繊維の捲縮特性を自動で容易に且つ高精度に測定することが可能となり、信頼性の高い捲縮特性の測定結果を安定して得ることができる。更に、捲縮特性の測定結果に各作業者の個人差が反映されることもないので、捲縮特性の評価精度の向上や作業の効率化を図ることができる。
【0028】
また、本発明の捲縮特性測定方法は、繊維の捲縮特性を演算する際に、前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量を求めた後、高さ位置の変位量における増加・減少を判断することにより、高さ位置の変位量の極大値及び極小値を決定する。また、変位量の極大値及び極小値を決定した後、決定した極大値の中から、その高さ位置が予め規定した上限値よりも大きい値を示す前記繊維の測定点を捲縮の山部とし、この山部の前後の極小値を示す前記繊維の測定点を捲縮の谷部として特定する。更に、捲縮の山部及び谷部を特定した後、これらの山部及び谷部の繊維長手方向における測定点や高さ位置に基づいて演算を行うことにより、捲縮数、捲縮波長、及び捲縮高さといった捲縮特性を高精度に求めることができる。
【0029】
更に本発明では、変位センサを繊維の幅方向に一定間隔で移動させるとともに変位センサ及び繊維間の距離を測定し、その後、繊維の長手方向に沿って相対的に定速移動させながら、変位センサ及び繊維間の距離を連続的に測定する。この一定間隔での幅方向への移動を繰り返し行うことにより、繊維の長手方向だけでなく、繊維幅方向の捲縮特性を演算することができる。
【0030】
特に、本発明の測定方法は、トウバンドの捲縮特性を測定するときに、非常に好適に適用することができ、トウバンドにおける捲縮数、捲縮波長、及び捲縮高さといった捲縮特性を高精度に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明における好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、主としてアセテートトウ等のトウバンドにおける捲縮特性を測定する場合を例に挙げているが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。本発明では、トウバンドの他にも、例えばフィラメントやステープルファイバー等の捲縮特性を測定する場合にも同様に適用することが可能である。
【0032】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る捲縮特性の測定装置について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る測定装置の構成を模式的に表す模式図であり、図2は、測定装置が備えるレーザ式変位センサの測定原理を説明する説明図である。
【0033】
本第1実施形態における測定装置1は、捲縮が付与された繊維の捲縮特性を測定する装置であり、特にアセテートトウ等のような単繊維を1本ずつ採取することが困難となるトウバンドにおける捲縮特性を測定する際に、非常に好適に用いることができる。
【0034】
この図1に示した捲縮特性の測定装置1は、試料となる繊維13(例えば、トウバンド)を載置する試料台2と、繊維13に所定の荷重を付加する荷重付加手段3と、試料台2に載置した繊維13までの距離を測定する変位センサ4と、変位センサ4を移動させる移動手段5と、変位センサ4及び移動手段5が接続されたコンピュータ6とを備えている。
【0035】
前記試料台2は、繊維13を載置する載置面が略水平となるように構成されている。前記荷重付加手段3は、試料台2に載置した繊維13の一部を固定する固定手段7,8と、試料台2の一端部に取り付けた滑車9と、この滑車9に巻き掛けて垂下している繊維13の端部に取り付ける重り10とから構成されている。
【0036】
この荷重付加手段3は、滑車9が設けられている側とは反対側に配設した一方の固定手段7により、試料台2に載置した繊維13の一端部側を固定することができる。また、繊維13の滑車9から垂下した側の端部に所定荷重の重り10を取り付け、この状態で試料台2上の滑車9側に配設した他方の固定手段8により繊維13の一部を固定することができる。これにより、試料台2上で、繊維13を所定の荷重が付加された状態で固定することが可能となる。
【0037】
前記変位センサ4は、変位センサ4と試料台2上に載置された繊維13との間の距離を測定するものであり、繊維13と接触せずに前記距離の測定を行うことができる非接触式の変位センサを用いることが好ましい。非接触式の変位センサとしては、例えばレーザ式、静電容量式、渦電流式、超音波式、光ファイバ式といった種々の変位センサを例示することができる。このような非接触式の変位センサを用いることにより、繊維を傷めることなく、変位センサ4と繊維13との間の距離を容易に測定することができる。
【0038】
本第1実施形態においては、上記に例示した種々の変位センサの中でもレーザ式変位センサを用いることが特に好ましい。ここで、レーザ式変位センサの測定原理について、図2を参照しながら説明する。
【0039】
レーザ式変位センサ4は、発光素子である半導体レーザ14と、受光素子であるPSD15(Position Sensitive Light Detector)と、その周辺回路(不図示)とにより主に構成されている。PSD15とは、PSD15上に入射したスポット光の位置を検出して、スポット光の位置に応じた電流値を出力することができる素子である。レーザ式変位センサ4は、このPSD15の性質を利用し、三角測量に基づいて変位センサ4と繊維13との間の距離を以下のようにして測定することができる。
【0040】
先ず、半導体レーザ14により発せられたレーザ光16は、投光レンズ17によって集光されて、対象物である繊維13に照射される。レーザ光16は繊維13の表面で反射し、反射した光の一部を受光レンズ18によってPSD15上に集光する。PSD15は、上述のようにPSD15上に集光したスポット光の位置に応じて、出力する電流値を変化させる。このため、このPSD15から出力される電流値に基づいて、PSD15上のスポット光の位置を検出することができる。なお、レーザ式変位センサ4において、半導体レーザ14の中心位置と受光レンズ18の中心位置との間の距離L、及び、受光レンズ18からPSD18までの距離F(受光レンズの焦点距離)の値は固定されている。
【0041】
従って、例えば繊維13がP1の高さ位置にある場合、半導体レーザ14から出射したレーザ光16は、繊維13の表面で反射してPSD15上に結像する。このとき、PSD15は、その結像したスポット光の位置(重心位置)に応じた電流値を出力し、変位センサ4の周辺回路は、このPSD15の出力電流値に基づいてスポット光の位置X1(例えば、受光レンズ18の中心位置からの距離X1)を検出することができる。これにより、レーザ式変位センサ4は、変位センサ4と繊維13との間の距離d1を、検出したスポット光の位置X1の値に基づいてd1=(F×L)/X1の計算式から求めることができる。
【0042】
一方、繊維13がP2の高さ位置にある場合、レーザ式変位センサ4は、PSD15から出力される電流値に基づいてPSD15上に結像したスポット光の位置X2を検出し、これにより、変位センサ4と繊維13との間の距離d2を、d2=(F×L)/X2の計算式から求めることができる。従って、前記測定装置1の変位センサ4として、このようなレーザ式変位センサを用いることにより、変位センサ4と繊維13との間の距離を非常に高精度に測定することが可能となる。
【0043】
また、このようにレーザ式変位センサを用いて前記距離の測定を行う場合、レーザ式変位センサにおいて、対象物に照射するレーザ光のレーザスポット径を30μm以上100μm以下にすることが好ましい。レーザスポット径が100μmよりも大きくなると、繊維に形成された細かい捲縮における高さ位置の変位差を測定することが困難になる恐れがある。一方、レーザスポット径が30μmよりも小さくなると、繊維表面で乱反射を引き起こし易く、捲縮の高さ位置の変位差を正確に測定することができなくなることがある。
【0044】
従って、レーザ式変位センサのレーザスポット径を上記のような所定範囲に制御することにより、前記距離の測定を非常に正確に且つ安定して行うことができる。なお、本第1実施形態において、レーザ式変位センサから発光するレーザ光としては、従来一般的に用いられている略円形状のレーザ光を利用することができるし、また例えば繊維の幅方向に長辺を有する矩形状のレーザ光を用いることも可能である。
【0045】
また、本第1実施形態の測定装置1において、前記移動手段5は、試料台2の試料載置面と平行で且つ繊維13の長手方向に沿って配設されたガイドレール11と、前記変位センサ4をガイドレール11に沿って所定の速度で移動させることができる駆動部12とから構成されている。これにより、移動手段5は、変位センサ4を、試料台2の試料載置面に対して平行で、且つ、繊維13の長手方向に沿って相対的に定速移動させることができる。
【0046】
なお、本第1実施形態において、移動手段5は、変位センサ4を繊維13の長手方向に沿って相対的に定速移動させることができれば良い。従って、例えば下記第2実施形態で説明するような、試料台2を繊維13の長手方向に沿って前後に移動させることができる自動ステージシステムを移動手段として更に組み込んで、変位センサ4と試料台2とを同時に繊維13の長手方向に定速移動させるような構成をとることもできる。
【0047】
前記コンピュータ6は、極値決定部、山谷特定部、及び演算部を有する捲縮特性演算手段と、記憶部とを備えている。このコンピュータ6の記憶部は、変位センサ4によって測定した変位センサ4及び繊維13間の距離と、その距離測定を行ったときの変位センサ4の位置情報を記憶できるように構成されている。本第1実施形態において、変位センサ4の位置情報は、例えば移動手段5で変位センサ4を移動させる移動速度や移動時間等から求めることができ、この求めた変位センサ4の位置情報を変位センサ4が測定した前記距離と対応させて記憶部に記憶することができる。
【0048】
また、コンピュータ6の捲縮特性演算手段は、記憶部に対応させて記憶した変位センサ4及び繊維13間の距離と変位センサ4の位置情報とから繊維13の長手方向における高さ位置の変位量を求め、更に、この求めた高さ位置の変位量に基づいて繊維13の捲縮特性を演算できるように構成されている。
【0049】
更に、前記コンピュータ6は、表示手段(不図示)を備えることができる。この表示手段は、例えば前記捲縮特性演算手段で演算した捲縮特性の結果や、また繊維の長手方向における高さ位置の変位量を示すグラフ(図5を参照)等を作業者等に対して表示することができる。
【0050】
続いて、上記の本第1実施形態における測定装置1を用いて、捲縮が付与されたアセテートトウにおける捲縮特性を測定する方法について詳細に説明する。
本第1実施形態における捲縮特性の測定方法は、先ず、測定対象となるトウバンドを所定の長さに切断し、得られたトウバンド13を試料台2の所定の位置に載置する。このとき、試料台2に載置したトウバンド13の一端部側を一方の固定手段7で固定する。
【0051】
それとともに、トウバンド13の一部を滑車9に巻き掛けて、滑車9から垂下した側のトウバンド13の端部に所定荷重の重り10を取り付ける。これにより、トウバンド13に所定の荷重を付加することができる。更に、このようにトウバンド13に所定の荷重が付加された状態で所定時間が経過した後に、他方の固定手段8によりトウバンド13の一部を固定する。
【0052】
次に、トウバンド13の基準点(測定開始点)となる地点(この地点をX1とする)の真上の位置に変位センサ4を移動手段5で移動させ、その後、変位センサ4によって、変位センサ4の現在の位置を基準とし、変位センサ4とトウバンド13との間の距離(L1)を測定する。そして、この測定した変位センサ4及びトウバンド13間の距離L1を、測定点X1と対応させてコンピュータ6の記憶部に記憶する。
【0053】
続いて、移動手段5により変位センサ4をトウバンド13の長手方向に沿って定速移動させながら、変位センサ4及びトウバンド13間の距離(L)を測定する。このとき、変位センサ4及びトウバンド13間の距離の測定は、変位センサ4を移動させながら連続して行うこともできるし、また、所定の間隔毎に間欠的に行うこともできる。
【0054】
また、変位センサ4が移動しながら前記距離(L)の測定を行う際に、移動手段5は、変位センサ4を移動させる移動速度や移動時間等の情報を、コンピュータ6に対して出力する。コンピュータ6は、移動手段5から入力された情報に基づいて、変位センサ4が距離の測定を行ったときの変位センサ4の位置情報(即ち、トウバンド13の測定点X)を演算することができる。
【0055】
そして、変位センサ4が測定した変位センサ4及びトウバンド13間の距離と、変位センサ4の位置情報とを、互いに対応させてコンピュータ6の記憶部に記憶する。なお、本第1実施形態において、変位センサ4の位置情報については、高精度に求めることができさえすれば、その位置情報を求める手段及び方法は特に限定されるものではない。
【0056】
その後、前記変位センサ4をトウバンド13の長手方向に沿って所定の長さで移動させて、トウバンド13の基準点X1から所定長さで離れた測定点Xnまでに渡って、変位センサ4による前記距離の測定を行う。
【0057】
この変位センサ4による距離の測定が終了した後、コンピュータ6は、捲縮特性演算手段により、記憶部に記憶した測定距離L1〜Lnの中から最大値を特定する。そして、この特定した測定距離の最大値を基準にし、最大値が検出された測定点におけるトウバンドの高さ位置をゼロ(高さ位置=0)に設定し、その他の各測定点X1〜Xnにおけるトウバンドの基準値に対する相対的な高さ位置を演算する。これにより、各測定点X1〜Xnにおけるトウバンドの高さ位置Y1〜Ynを求めることができる。更に、この演算した各測定点における高さ位置から、例えば図5に示したようなグラフを作成することができ、トウバンド13の長手方向における高さ位置の変位量を求めることができる。なお、このとき、必要に応じてノイズ除去処理等を行うことができる。
【0058】
次に、コンピュータ6の捲縮特性演算手段は、前記で求めた高さ位置の変位量に基づいて、トウバンド13の捲縮特性を演算する。より具体的に説明すると、先ず、捲縮特性演算手段は、極値決定部により、高さ位置の変位量の増加・減少を判断することにより、トウバンド13の長手方向における高さ位置の極大値及び極小値を決定する。次に、山谷特定部により、極値決定部で決定した極大値の中から、その高さ位置が予め規定した上限値よりも大きい値を示すトウバンド13の測定点を捲縮の山部として特定する。一方、この特定した山部前後の極小値を示すトウバンド13の測定点を捲縮の谷部として特定する。
【0059】
上記のようにして捲縮の山部と谷部とを特定した後、捲縮特性演算手段は、演算部により、山谷特定部で特定した山部及び谷部に基づいて、トウバンドの捲縮特性を演算する。即ち、捲縮特性としてトウバンドの捲縮数を求める場合は、トウバンドの所定の間隔内に存在する山部及び谷部の個数を数えて、単位間隔(例えば、25mm)当たりの「(山部+谷部)/2」の値を捲縮数として演算することができる。
【0060】
また、捲縮波長は、各山部(又は、各谷部)の測定点を特定し、隣接する山部間(又は、谷部間)の間隔(トウバンドの長手方向における長さ)を演算することによって求めることができる。更に、捲縮高さは、隣り合う山部と谷部とにおける高さ位置の差を演算することによって求めることができる。その後、コンピュータ6は、得られた捲縮特性の演算結果や繊維の長手方向における高さ位置の変位量を示すグラフ等を、表示手段等に表示させることができる。
【0061】
以上のように、本第1実施形態によれば、トウバンドにおける捲縮数、捲縮波長、及び捲縮高さといった種々の捲縮特性を自動で容易且つ高精度に測定することができる。従って、例えばトウバンドに照射する照明の設定等のような煩雑な条件設定が不要であり、熟練者でなくても、信頼性の高い捲縮特性の測定を安定して行うことができる。更に、捲縮特性の測定結果に各作業者の個人差が反映されることがないので、捲縮特性の評価精度の向上や作業の効率化が図れるといった多大な効果を得ることができる。
【0062】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る捲縮特性の測定装置について説明する。ここで、図3は、第2の実施形態に係る測定装置の構成を模式的に表す模式図である。なお、以下に示す説明及び参照図面において、前記第1実施形態で説明した部材と同様の構成を有する部材については、同じ符合を用いて表すことによってその説明を省略する。
【0063】
本第2実施形態における測定装置21は、トウバンド13を載置する試料台2が移動手段22上に取り付けられており、試料台2をトウバンド13の長手方向に沿って前後に移動可能な自動ステージシステムに組み込んで構成されている。また、変位センサ4は、試料台2の上方の所定位置に固定されている。これにより、移動手段22が試料台2をトウバンド13の長手方向に沿って平行移動させることにより、結果的に変位センサ4の位置をトウバンド13の長手方向に沿って相対的に変化させることができる。なお、本第2実施形態はこれに限定されず、例えば変位センサ4を前記第1実施形態のように移動可能とし、変位センサ4と試料台2とを同時にトウバンド13の長手方向に沿って定速移動させるように構成することもできる。
【0064】
コンピュータ6は、移動手段22と変位センサ4とにそれぞれ接続されており、移動手段22からは試料台2の移動速度等の情報が入力され、変位センサ4からは測定した変位センサ4及びトウバンド13間の距離が入力されるように構成されている。
【0065】
また、コンピュータ6は、前記第1実施形態と同様に、記憶部と捲縮特性演算手段とを備えている。記憶部は、変位センサ4によって測定した変位センサ4及びトウバンド13間の距離と、その距離測定を行ったときの変位センサ4のトウバンド13に対する相対的な位置情報(即ち、トウバンド13の測定点)を記憶できるように構成されている。本第2実施形態において、変位センサ4のトウバンド13に対する相対的な位置情報は、移動手段22で試料台2を移動させる移動速度や移動時間等から求めることができる。この求めた変位センサ4のトウバンド13に対する相対的な位置情報は、変位センサ4が測定した前記距離と対応させて記憶部に記憶することができる。
【0066】
また、コンピュータ6の捲縮特性演算手段は、記憶部に対応させて記憶した変位センサ4及びトウバンド13間の距離と変位センサ4の相対的な位置情報とから、トウバンド13の長手方向における高さ位置の変位量を求め、更に、この求めた高さ位置の変位量に基づいて、捲縮数、捲縮波長、及び捲縮高さ等のトウバンド13の捲縮特性を演算できるように構成されている。
【0067】
続いて、本第2実施形態における測定装置21を用いて、トウバンド13の捲縮特性を測定する方法について詳細に説明する。
先ず、前記第1実施形態と同様に、所定長さに切断したトウバンド13を試料台2に載置し、トウバンド13の一端部側を一方の固定手段7で固定するとともに、滑車9から垂下した側のトウバンド13の端部に所定荷重の重り10を取り付けることにより、トウバンド13に所定の荷重を付加する。更に、トウバンド13に所定の荷重が付加された状態で所定時間が経過した後に、他方の固定手段8でトウバンド13の一部を固定する。
【0068】
次に、変位センサ4の真下の位置に、基準点となるトウバンドの測定点X1がくるように移動手段22で試料台2を移動させた後、変位センサ4によって変位センサ4及びトウバンド13間の距離L1を測定する。この測定した変位センサ4及びトウバンド13間の距離L1を、測定点X1と対応させてコンピュータ6の記憶部に記憶する。
【0069】
更に、移動手段22で試料台2を所定の長さで移動させることにより、変位センサ4の位置をトウバンド13の長手方向に沿って相対的に変化させながら、変位センサ4及びトウバンド13間の距離(L)を順次測定し、トウバンド13の測定点X1から所定の長さで離れた測定点Xnまでに渡って前記距離の測定を連続的に又は間欠的に行う。これとともに、コンピュータ6は、移動手段22で試料台2を移動させる移動速度や移動時間等の情報に基づいて、変位センサ4が測定を行ったときの変位センサ4のトウバンド13に対する相対的な位置情報(即ち、トウバンド13の測定点X)を演算する。そして、変位センサ4が測定した変位センサ4及びトウバンド13間の距離と、変位センサ4の位置情報とを、互いに対応させてコンピュータ6の記憶部に記憶する。
【0070】
変位センサ4による測定が終了した後、コンピュータ6は、捲縮特性演算手段により、変位センサ4で測定した距離の中から最大値を特定する。そして、その最大値を基準にして各測定店X1〜Xnにおけるトウバンド13の高さ位置Y1〜Ynを求め、更に、トウバンド13の長手方向における高さ位置の変位量を求める。
【0071】
続いて、コンピュータ6の捲縮特性演算手段は、前記第1実施形態と同様に、前記で求めた高さ位置の変位量に基づいて、捲縮の山部と谷部とを特定し、その後、捲縮数、捲縮波長、捲縮高さ等のトウバンド13における捲縮特性を演算する。そして、コンピュータ6は、この演算した捲縮特性の演算結果等を表示手段に表示することができる。
【0072】
以上のように、本第2実施形態によっても、トウバンド等の繊維における捲縮数、捲縮波長、及び捲縮高さといった繊維の捲縮特性を自動で容易に且つ高精度に測定することができる。従って、例え熟練者でなくても、信頼性の高い捲縮特性の測定を安定して行うことが可能となり、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
(第3の実施形態)
更に次に、本発明の第3の実施形態に係る捲縮特性の測定装置について説明する。ここで、図4は、本第3実施形態に係る測定装置の構成を模式的に表す模式図である。
【0074】
この図4に示されている測定装置31は、トウバンド13を搬送可能な搬送部32,32’がトウバンド13の上流側と下流側の2箇所にそれぞれ設けられている。各搬送部32,32’は、上部ローラー33と下部ローラー34とをそれぞれ有しており、この上部及び下部ローラー33,34間にトウバンド13を挟み、各ローラー33,34を回転させることによってトウバンド13を所定の速度で搬送できるように構成されている。
【0075】
また、これらの搬送部32,32’は、それぞれ個別に回転駆動可能なように構成されている。このため、例えば上流側の搬送部32と下流側の搬送部32’とをローラー33,34の回転速度を互いに異ならせたり、また時間差を付けて駆動させることにより、搬送部32,32’間を移動するトウバンド13に所定の荷重を付加することが可能となる。
【0076】
変位センサ4は、上流側の搬送部32と下流側の搬送部32’との間の上方に固設されている。これにより、搬送部32,32’が所定の荷重を付加しながらトウバンド13を所定速度で搬送することによって、変位センサ4の位置をトウバンドの長手方向に沿って相対的に変化させることが可能となる。なお、この変位センサ4は、前記第1実施形態のように、移動手段を用いてトウバンド13の長手方向に沿って定速移動させるように構成することもできる。
【0077】
更に、コンピュータ6は、上流側及び下流側の搬送部32,32’と変位センサ4とにそれぞれ接続されている。これにより、コンピュータ6は、搬送部32,32’からは上部及び下部ローラー33,34の回転速度やトウバンド13の搬送速度等の情報が入力され、また変位センサ4からは測定した変位センサ4及びトウバンド13間の距離が入力されるように構成されている。
【0078】
このコンピュータ6は、前記第1及び第2実施形態と同様に、記憶部と捲縮特性演算手段とを備えている。コンピュータ6の記憶部は、変位センサ4によって測定した変位センサ4及びトウバンド13間の距離と、その距離測定を行ったときの変位センサ4のトウバンド13に対する相対的な位置情報を記憶できるように構成されている。本第3実施形態において、変位センサ4のトウバンド13に対する相対的な位置情報は、例えば搬送部32,32’でトウバンド13を搬送する搬送速度等の情報から求めることができる。
【0079】
続いて、本第3実施形態における測定装置31を用いて、トウバンドの捲縮特性を測定する方法について詳細に説明する。
先ず、上流側及び下流側の各搬送部32,32’にトウバンド13を通し、上部及び下部ローラー33,34をそれぞれ回転させることによってトウバンド13を所定速度で上流側から下流側に向けて搬送する。このとき、上流側及び下流側の搬送部32,32’を、ローラー33,34の回転速度に互いに差を付けて駆動することにより、搬送部32,32’間で搬送されるトウバンド13に所定の荷重を付加することができる。なお、上部及び下部ローラー33,34の回転速度やトウバンド13の搬送速度等は、コンピュータ6やその他の制御手段(不図示)で制御することができる。
【0080】
またこのように搬送部32,32’により所定の荷重を付加した状態でトウバンド13の搬送を行うとともに、変位センサ4により変位センサ4とトウバンド13との間の距離を測定する。このとき、変位センサ4は、変位センサ4の真下に位置するトウバンド13の測定点X1において、変位センサ4及びトウバンド13間の距離L1を測定し、この測定した変位センサ4及びトウバンド13間の距離L1を測定点X1と対応させてコンピュータ6の記憶部に記憶する。
【0081】
更に、上流側及び下流側の搬送部32,32’は、トウバンド13を連続的又は間欠的にその長手方向に向けて搬送することにより、変位センサ4の位置をトウバンド13の長手方向に沿って相対的に変化させることができる。これにより、トウバンド13を搬送しながら、固設した変位センサ4によって変位センサ4及びトウバンド13間の距離(L)を順次測定することができる。
【0082】
このとき、コンピュータ6には、上流側及び下流側の搬送部32,32’からトウバンド13の搬送速度等に関する情報が入力される。このため、コンピュータ6は、変位センサ4が測定を行ったときの変位センサ4のトウバンド13に対する相対的な位置情報(即ち、トウバンド13の測定点X)を演算することができる。従って、コンピュータ6は、変位センサ4で測定した距離の値と、そのトウバンド13の測定点とを対応させて記憶部に記憶することができる。
【0083】
そして、上流側及び下流側の搬送部32,32’でトウバンド13を所定長さで搬送することにより、トウバンド13の基準点X1から所定の長さで離れた測定点Xnまでに渡って、変位センサ4による変位センサ4及びトウバンド13間の距離の測定を行うことができる。
【0084】
変位センサ4による測定が終了した後、コンピュータ6は、捲縮特性演算手段により、前記第1及び第2実施形態と同様にして、トウバンド13の高さ位置Y1〜Ynを求め、更にトウバンド13の長手方向における高さ位置の変位量を求める。
【0085】
続いて、コンピュータ6の捲縮特性演算手段は、前記で求めた高さ位置の変位量に基づいて捲縮の山部と谷部とを特定し、これにより、捲縮数、捲縮波長、捲縮高さ等といったトウバンド13の捲縮特性を演算することができる。その後、コンピュータ6は、得られた捲縮特性の演算結果等を表示手段に表示することができる。
【0086】
以上のように、本第3実施形態によっても、トウバンド等の繊維における捲縮数、捲縮波長、及び捲縮高さといった繊維の捲縮特性を自動で容易に且つ高精度に測定することができ、熟練者でなくても、信頼性の高い捲縮特性の測定を安定して行うことが可能となる。
【0087】
特に、本第3実施形態では、例えば、トウバンドの製造ラインにおいて、複数台の変位センサを所定の位置に配設することが可能である。そして、各変位センサによって測定した変位センサ及びトウバンド間の距離の値と、製造ライン上のトウバンドの移動速度(搬送速度)等とをリンクさせてコンピュータに入力し、変位センサが測定した距離と測定時における変位センサのトウバンドに対する相対的な位置情報とを対応させてコンピュータの記憶部に記憶する。これにより、トウバンドの製造ラインにおいて、トウバンドの捲縮特性を効率的に測定することが可能となり、作業の効率をより一層高めることができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、以下の実施例1及び2においては、図1に示した前記第1実施形態に係る測定装置1を用いて、アセテートトウの捲縮数及び捲縮波長についての測定を行った。
【0089】
(実施例1及び2)
実施例1及び2の測定試料として、全繊度が1.87キロテックス、単繊維当たりの繊度が6.6デシテックスのY字断面形状を有する2種類のフィルター用アセテートトウを準備した。今回準備した2種類のアセテートトウは、製造条件の一部を変えることによって、捲縮状態が互いに相違するトウバンドである。これらのアセテートトウをそれぞれ約1mに切断し、図1に示した測定装置1を用いてそれぞれの捲縮特性を測定した。
【0090】
先ず、測定装置1の試料台2上にアセテートトウを載置した後、アセテートトウの一端部側を固定手段7で固定する。それとともに、アセテートトウの一部を滑車9に巻き掛けて、滑車9から垂下した側のアセテートトウの端部に85gの重り10を取り付けた。そして、重り10を取り付けてから1分後に、固定手段8によりアセテートトウの一部を固定した。更にその後、照明装置を用いて、試料台2上にセットしたアセテートトウの表面に光を照射した。
【0091】
なお、本実施例1及び2においては、3種類の照明条件の下で捲縮特性の測定を行った。照明条件1は、照明装置としてリング状蛍光灯を用いて照明を行った場合である。照明条件2は、ハロゲンを光源としたファイバ照明装置を用いて照明を行った場合である。照明条件3は、ハロゲンを光源としたファイバ照明装置を用い、照明条件2よりも光量レベルを高めて照明を行った場合である。
【0092】
次に、変位センサ4をアセテートトウの測定開始点となる基準点の真上の位置に移動させ、変位センサ4によって基準点における変位センサとトウバンドとの間の距離を測定した。その後、変位センサをアセテートトウの長手方向に沿って約50mm移動させて、変位センサとアセテートトウとの間の距離を測定した。このとき、変位センサのレーザスポット径を約30μmとし、またトウ長手方向における変位センサの測定ピッチを100μmとして、変位センサ及びアセテートトウ間の距離の測定を順次行った。
【0093】
コンピュータ6は、変位センサ4が変位センサとアセテートトウとの間の距離を測定する毎に、変位センサ4が測定した値とアセテートトウの測定点とを記憶部に記憶した。変位センサ4による測定が終了した後、コンピュータ6は、捲縮特性演算手段により、アセテートトウにおける山部と谷部とを特定し、アセテートトウの捲縮数(試料長さ25mm当たりの捲縮山部の個数)、及び捲縮波長(捲縮山部間の長さ)の平均値を演算した。更に、実施例1については、アセテートトウの長手方向における高さ位置の変位量を示すグラフを作成した。
【0094】
(比較例1及び2)
比較例として、前記実施例1と同じアセテートトウ(比較例1)と前記実施例2と同じアセテートトウ(比較例2)の2種類の測定試料を準備し、各アセテートトウについて、前記特許文献2に記載されている方法に準じて、アセテートトウの捲縮数、及び捲縮波長の平均値をそれぞれ測定した。
【0095】
先ず、アセテートトウを試料台上に載置し、アセテートトウの斜め上方約20°の方向から照明を当てることにより、トウ表面に捲縮に対応した明暗を形成した。そして、この明暗を形成したアセテートトウの表面をCCDカメラで撮像した後、得られた撮像画像の輝度をコンピュータで解析してアセテートトウの捲縮を検出し、その捲縮数及び捲縮波長の平均値を求めた。なお、この比較例1及び2においても、前記実施例1及び2と同様の3種類の照明条件下で捲縮特性の測定をそれぞれ行った。
【0096】
前記実施例1及び2、並びに前記比較例1及び2において測定した捲縮数及び捲縮波長の平均値の結果を、以下の表1にまとめて示す。また、図5には、前記実施例1で作成したアセテートトウの長手方向における高さ位置の変位を示すグラフを表す。
【0097】
【表1】

【0098】
上記表1に示したように、実施例1及び2では、それぞれ比較例1及び2に比べて、照明条件の変更による測定結果のばらつきが小さく、照明装置の影響を殆ど受けずにアセテートトウの捲縮特性を高精度に安定して測定できたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、捲縮が付与されたトウバンド等の繊維の捲縮特性を測定する際に有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】第1実施形態に係る測定装置の構成を模式的に表す模式図である。
【図2】レーザ式変位センサの測定原理を説明する説明図である。
【図3】第2実施形態に係る測定装置の構成を模式的に表す模式図である。
【図4】第3実施形態に係る測定装置の構成を模式的に表す模式図である。
【図5】実施例1で作成したアセテートトウの長手方向における高さ位置の変位量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0101】
1 捲縮特性測定装置
2 試料台
3 荷重付加手段
4 変位センサ(レーザ式変位センサ)
5 移動手段
6 コンピュータ
7,8 固定手段
9 滑車
10 重り
11 ガイドレール
12 駆動部
13 繊維(トウバンド)
14 半導体レーザ
15 PSD
16 レーザ光
17 投光レンズ
18 受光レンズ
21 捲縮特性測定装置
22 移動手段
31 捲縮特性測定装置
32,32’ 搬送部
33 上部ローラー
34 下部ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捲縮が付与された繊維の捲縮特性を測定する測定装置であって、
前記繊維に所定の荷重を付加する荷重付加手段と、
前記繊維までの距離を測定する変位センサと、
前記変位センサと前記繊維とを前記繊維の長手方向に沿って相対的に定速移動させる移動手段と、
前記変位センサの位置情報と、前記変位センサで測定した変位センサ及び繊維間の距離とから、前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量を求め、同求めた高さ位置の変位量に基づいて前記繊維の捲縮特性を演算する捲縮特性演算手段と、
を備えてなることを特徴とする捲縮特性測定装置。
【請求項2】
前記捲縮特性演算手段が、前記捲縮特性として、前記繊維における捲縮数、捲縮波長、及び捲縮高さのうちの少なくとも1つを演算してなることを特徴とする請求項1記載の捲縮特性測定装置。
【請求項3】
前記捲縮特性演算手段が、
前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量の極大値及び極小値を決定する極値決定部と、
前記極値決定部で決定した極大値のうち、前記高さ位置が予め規定した上限値よりも大きい値を示す前記繊維の測定点を捲縮の山部とし、同山部前後の極小値を示す前記繊維の測定点を捲縮の谷部として特定する山谷特定部と、
前記山谷特定部で特定した捲縮の山部及び谷部に基づいて、前記繊維の捲縮特性を演算する演算部と、
を備えてなることを特徴とする請求項1又は2記載の捲縮特性測定装置。
【請求項4】
前記変位センサが、レーザ式変位センサであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の捲縮特性測定装置。
【請求項5】
前記レーザ式変位センサのレーザスポット径が、30μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項4記載の捲縮特性測定装置。
【請求項6】
捲縮が付与された繊維の捲縮特性を測定する測定方法であって、
前記繊維に所定の荷重を付加すること、
変位センサを用いて、同変位センサと前記繊維とを前記繊維の長手方向に沿って相対的に定速移動させながら、変位センサ及び繊維間の距離を測定すること、
前記変位センサの位置情報と、前記変位センサで測定した前記変位センサ及び繊維間の距離とから、前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量を求めること、
前記求めた繊維の長手方向における高さ位置の変位量に基づいて、前記繊維の捲縮特性を演算すること、
を含んでなることを特徴とする捲縮特性測定方法。
【請求項7】
前記繊維の捲縮特性を演算する際に、
前記繊維の長手方向における高さ位置の変位量の極大値及び極小値を決定し、
前記決定した極大値のうち、前記高さ位置が予め規定した上限値よりも大きい値を示す前記繊維の測定点を捲縮の山部とし、同山部前後の極小値を示す前記繊維の測定点を捲縮の谷部として特定し、
前記特定した捲縮の山部及び谷部に基づいて、前記繊維の捲縮特性を演算する
ことを特徴とする請求項6記載の捲縮特性測定方法。
【請求項8】
前記繊維として、トウバンドを用いることを特徴とする請求項6又は7記載の捲縮特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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