説明

繊維加工用組成物及び該組成物を用いる繊維加工製品の製造方法

【課題】 製造時の乾燥処理時にフクレやクラックなどのブリスターの発生がなく、貯蔵安定性に優れる繊維加工用組成物であって、接着強度や型保持性などに優れ、ホルマリンの発生がない繊維加工製品の安定な製造方法を提供する。
【解決手段】 ガラス転移温度が−50〜30℃の間に少なくとも1つ存在する共重合体ラテックス100重量部(固形分換算)に対して、(b)曇点が50〜80℃の範囲にあるノニオン性界面活性剤0.5〜3重量部と、(c)ジルコニウム系化合物0.1〜2重量部を含有し、かつホルマリン由来の物質を含まないことを特徴とする繊維加工用組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維加工用組成物及び該組成物を用いる繊維加工製品の製造方法に関する。
詳しくは、製造時の加熱乾燥処理時にブリスターの発生がなく、貯蔵安定性に優れる繊維加工用組成物であって、接着強度や型保持性などに優れ、ホルマリンの発生が無い繊維加工製品を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にタフテッドカーペットなどのバッキング剤や不織布のバインダーには、ブタジエン系共重合体ラテックスやアクリル系エマルションに炭酸カルシウムなどの無機充填材を配合した水系の接着剤が使用されている。これらの接着剤は基材に塗布された後、ガスバーナーや高温熱風で乾燥処理され、接着機能や風合いを調整するための機能を有した塗布層を形成する。
【0003】
近年においては、生産性を追及するために塗布機のスピードを上げるケースが増えており、乾燥処理としては温度を高めたり、風量を高めたりするなどの対応が取られている。しかしながら、水系の接着剤は急激に加熱乾燥すると、いわゆるブリスターと呼ばれるフクレやクラックなどの現象が出やすくなり、これら現象が発生すると生産性が著しく低下したり、製品の品質が低下するといった問題を抱えていた。
【0004】
この乾燥処理時のブリスターを防ぐ方法としては、添加剤としてポリオルガノシロキサン感熱剤化合物と非イオン界面活性剤を併用する方法(特許文献1:特公昭56−44191)や最も一般的な例として澱粉を添加する方法(特許文献2:特公昭57−30429)が知られている。
【0005】
例えば、ポリオルガノシロキサン感熱剤化合物を利用する場合は化学的に不安定なラテックスを併用する必要があり、貯蔵中にゲル化してしまうという懸念がある。
また、澱粉を利用する場合はゲル化などの懸念はないが、耐ブリスター性が経時で低下する問題や腐敗しやすいといった問題があった。
【0006】
またブリスター防止のためにジルコニウム系化合物である炭酸ジルコニウムアンモニウムをカーペット用水系接着剤に使用した例(特許文献3:特開03−234779公報許)はあるが、接着剤の長期保存安定性や流動性などの性能バランスは不充分である。
【0007】
さらにはラテックスにアルキルフェノール−ホルマリン縮合物を配合した合成樹脂ラテックス組成物を使用した例(特許文献4:特開04−261453公報)はあるが、ホルマリン発生の懸念があり、環境上好ましくない。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭56−44191公報
【0009】
【特許文献2】特公昭57−30429公報
【0010】
【特許文献3】特開03−234779公報
【0011】
【特許文献4】特開04−261453公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は前述の諸事情に鑑み現状の問題点を解決すべく、製造時の乾燥処理時にブリスターの発生がなく、貯蔵安定性に優れる繊維加工用組成物であって、接着強度や型保持性などに優れ、ホルマリンの発生がない繊維加工製品の安定な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)(a)脂肪族共役ジエン系単量体25〜55重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜4重量%および共重合可能な他の単量体41〜74.5重量%を乳化重合して得られるガラス転移温度が−50〜30℃の間に少なくとも1つ存在する共重合体ラテックス100重量部(固形分換算)に対して(b)曇点が50〜80℃の範囲にあるノニオン性界面活性剤0.5〜3重量部と(c)ジルコニウム系化合物0.1〜2重量部を含有し、かつホルマリン由来の物質を含まないことを特徴とする特徴とする繊維加工用組成物、
(2)(1)に記載の繊維加工用組成物を繊維基材に塗布して得られる繊維加工製品を製造するにあたり、該組成物の塗布処理工程の直前に設けた混合機で、(c)ジルコニウム系化合物の一部又は全部を添加することを特徴とする繊維加工製品の製造方法、
を提供する。

【発明の効果】
【0014】
本発明により、貯蔵安定性に優れる繊維加工用組成物であって、かつ該組成物を用いた繊維加工製品を製造する際の乾燥処理時にブリスターの発生がなく、接着強度や型保持性などに優れ、ホルマリンの発生がない繊維加工製品の安定な製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】繊維加工製品の製造方法についての説明図である。(実施例9)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明における(a)共重合体ラテックスに使用する脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンの使用が好ましい。
脂肪族共役ジエン系単量体の使用量は、共重合体ラテックス構成成分中25〜55重量%である。25重量%未満では接着剤としての性能が発現しなくなり、繊維加工製品の折り割れも発生しやすくなる。55重量%を超えると繊維加工製品にベタツキが生じてしまい、型保持性にも良くない。
【0017】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)を挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
エチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用量は、共重合体ラテックス構成成分中0.5〜4重量%である。0.5重量%未満では共重合体ラテックスの安定性が不足するために、得られた組成物の貯蔵安定性が著しく低下する。エチレン系不飽和カルボン酸単量体が4重量%を超えるとブリスターを防止する機能が低下し、また得られた組成物の貯蔵安定性も低下してしまい好ましくない。
【0018】
上記の脂肪族共役ジエン系単量体およびエチレン系不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体としては、アルケニル芳香族単量体、シアン化ビニル単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられる。
【0019】
アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にスチレンの使用が好ましい。
【0020】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0021】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマルエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0022】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0023】
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0024】
本発明において、乳化重合における各種成分の添加方法については特に制限するものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法の何れでも採用することができる。また重合方法としても、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合などを用いることができる。
更に、乳化重合の際には、常用の乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、炭化水素系溶剤、電解質、重合促進剤、キレート剤等を使用することができる。
【0025】
本発明において、(a)共重合体ラテックスを乳化重合する際に使用する乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体などのノニオン界面活性剤、ベタイン型などの両性界面活性剤を1種又は2種以上併用して使用することができる。
ただし、アルキルフェノール−ホルマリン縮合物やナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などのホルマリン系ノニオン性界面活性剤はホルマリン発生の懸念があり、好ましくない。
【0026】
本発明において、(a)共重合体ラテックスに使用する連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、α−メチルスチレンダイマー、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0027】
本発明において、(a)共重合体ラテックスに使用する重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、レドックス系重合開始剤、過酸化ベンゾイル等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に水溶性重合開始剤の使用が好ましい。
【0028】
また、乳化重合に際して、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素系溶剤を使用しても良い。
【0029】
本発明における(a)共重合体ラテックスのガラス転移温度は−50〜30℃の間に少なくとも1つ存在する。共重合体ラテックスのガラス転移温度が−50℃未満では繊維加工製品にベタツキが生じてしまい、型保持性にも良くない。一方、30℃を越えるとバインダーとしての性能が発現しづらくなり、配合物の脱落や繊維が飛散したり、繊維加工製品の折り割れが発生しやすくなる。
【0030】
本発明における(b)ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。ただし、アルキルフェノール−ホルマリン縮合物やナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などのホルマリン系ノニオン性界面活性剤はホルマリン発生の懸念があり、好ましくない。
なお、(b)ノニオン性界面活性剤は、乳化重合時に用いても、乳化重合して得られた後のラテックスに添加しても、いずれでもよい。乳化重合時に用いた量と重合後に添加した量の総量が、(a)共重合体ラテックス100重量部に対して0.5〜3重量部(固形分換算)の範囲にあることが必要である。
(b)ノニオン性界面活性剤の含有量が、0.5重量部未満では得られた組成物の貯蔵安定性や流動性が低下したり、3重量部を超えるとブリスターを防止する機能が低下してしまう。
(b)ノニオン性界面活性剤の曇点は、50〜80℃の範囲にあることが必須であり、この範囲以外では組成物の貯蔵安定性が低下したり、ブリスターを防止する機能が低下してしまう。
【0031】
本発明における(c)ジルコニウム系化合物は、炭酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、酸化ステアリン酸ジルコニウムなどが挙げられるが、炭酸ジルコニウムアンモニウムが好ましい。
(c)ジルコニウム系化合物の使用量は、共重合体ラテックス100重量部に対して0.1〜2重量部であり、0.1重量部未満ではブリスターを防止する機能が発現せず、2重量部を超えると組成物の貯蔵安定性や流動性が著しく低下する。
【0032】
本発明の繊維加工用組成物には、無機系充填剤として、炭酸カルシウム、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウムなどを1種または2種以上使用することができる。無機系充填剤の使用量は、共重合体ラテックス100重量部に対して200〜500重量部が好ましい。200重量部未満では組成物のコストが高くなる。500重量部を超えると接着強度が低下する傾向がある。
【0033】
本発明の繊維加工用組成物には、その他の添加剤として老化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、防腐剤、消臭剤、pH調整剤、増粘剤、分散剤、起泡剤、消泡剤、充填剤、染料、顔料、香料などを配合することも可能である。また、ブリスター防止の機能を有しているポリオルガノシロキサンや澱粉を併用しても良い。
【0034】
本発明の繊維加工用組成物において、(a)共重合体ラテックスと(b)ノニオン性界面活性剤と、(c)ジルコニウム系化合物を混合する場合は、同時に混合しても良いが、より好ましくは(a)共重合体ラテックスと(b)ノニオン性界面活性剤を含む混合物に対して、塗布処理工程の直前に設けた混合機で(c)ジルコニウム系化合物の一部又は全量を添加することが好ましい。
【0035】
本発明における塗布処理工程の直前に設ける混合機は、特に限定されないが、オークス式ミキサー、スネークポンプ、スタティックミキサー、インペラタイプ小型攪拌装置などが挙げられる。
図1は、カーペットバッキングで一般的に用いられる発泡機(オークスミキサー)の流路を示す図である。図1に示したように、ジルコニウム系化合物はミキシングヘッドに混合物を供給するポンプの手前で添加することが好ましく、この場合、ポンプ手前に発生した負圧を利用して添加できるので便利である。
【0036】
本発明の繊維加工用組成物を塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、ロールコート法、発泡ダイレクトコート法、含浸法、スプレー法などが挙げられる。塗布後の乾燥については、加熱処理して乾燥する方法が好ましいが、加熱温度は80〜160℃であり、より好ましくは100〜140℃である。
【0037】
以下、実施例を挙げ本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は特に断りのない限り重量基準によるものである。また実施例における諸物性の評価は次の方法に拠った。
【0038】
貯蔵安定性の評価(経時粘度安定性の評価)
繊維加工用組成物を調製した後、調製直後の粘度と50℃で7日間保存した後の静置状態の粘度をBM型粘度計(No.4ローター、12rpm)にて測定した。この調製直後の粘度と経時の静置粘度を用いて粘度差を算出し、その粘度差の調製直後の粘度に対する変化率(%)を比較した。その粘度の変化率が+25%以下を○、+25%を超えると×の判定を行った。
【0039】
ブリスターの評価
ハンドミキサーにて2倍に発泡させた繊維加工用組成物をポリエステル製のタフトカーペット基布の裏面に900g/m2(ウェット)塗布した後、200℃設定の熱風乾燥機で5分乾燥させた。
塗布表面に発生したフクレやクラックなどのブリスターを、5点(優:ブリスターが発生していない)から1点(劣:ブリスターが全面に発生している)として目視にて評価した。
また、実施例9においては、実機で加工した製品についてブリスターを上記と同様に目視にて評価した。
【0040】
抜糸強度の評価
JIS L 1021−8(繊維製床敷物試験方法−第8部:パイル糸の引抜き強さ試験方法)に準拠した方法で測定した。
【0041】
ベタツキ性の評価
繊維加工製品を1cm幅の短冊に加工し、塗布面を谷折りにして1cm×1cmの面積にプレス機で50℃×0.2MPa×1分間の圧力を掛けた。圧着面を剥離させる時のベタツキ具合を肉眼で判定し、5点(優:ベタツキ少ない)から1点(劣:ベタツキ多い)まで相対的に評価した。
【0042】
(実施例1〜9と比較例1〜10)
共重合体ラテックスの作製
耐圧性の重合反応機に全単量体100部に対して重合水120部、過硫酸カリウム0.9部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3部を仕込み、十分攪拌した後、表1に示す各単量体とt−ドデシルメルカプタン0.2部、シクロヘキセン2部を加えて70℃にて重合を開始し、最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した。
次いで、これら共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpH8に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスA〜Gを得た。
【0043】
【表1】

【実施例1】
【0044】
表2に示した塗料処方に従って共重合体ラテックスAを100重量部と、ノニオン性界面活性剤としてノイゲンLF−80X(曇点57℃、第一工業製薬製)を1重量部、無機充填剤として炭酸カルシウムのSS#30(日東粉化工業製)を400重量部、分散剤としてアロンT−50(東亞合成製)を0.3重量部、起泡剤としてネオペレックスG−25(花王製)を0.5重量部、増粘剤としてIX−1177(第一工業製薬製)を2.5重量部と所定量の水を用い、最後に炭酸ジルコニウムアンモニウムとしてAZコート5800MT(サンノプコ製)0.2重量部を配合することによって本発明の組成物を作製した。
この組成物をハンドミキサーにて発泡倍率2倍まで発泡させ、ポリエステル製タフトカーペットの裏面にコーティングバーを用いて900g/m2(ウェット)の塗布量になるよう塗布した後、140℃×15分間乾燥させて繊維加工製品を得た。
【実施例2】
【0045】
実施例1で用いた共重合体ラテックスAの代わりに共重合体ラテックスBを用いた以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【実施例3】
【0046】
実施例1で用いた共重合体ラテックスAの代わりに共重合体ラテックスCを用いた以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【実施例4】
【0047】
実施例1で用いたノニオン性界面活性剤ノイゲンLF−80Xの代わりにノイゲンLF−100X(曇点73℃、第一工業製薬製)を用いた以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【実施例5】
【0048】
実施例1で用いたノニオン界面活性剤の配合量が3重量部、炭酸ジルコニウムアンモニウムの配合量が1.5重量部になっていること以外は、実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【実施例6】
【0049】
実施例1で用いたノニオン界面活性剤の配合量が1重量部、炭酸ジルコニウムアンモニウムの配合量が2重量部になっていること以外は、実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【実施例7】
【0050】
実施例1で用いたノニオン界面活性剤の配合量が2.5重量部、炭酸ジルコニウムアンモニウムの配合量が0.1重量部になっていること以外は、実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【実施例8】
【0051】
実施例1で用いたノニオン界面活性剤の配合量が0.5重量部、炭酸ジルコニウムアンモニウムの配合量が0.1重量部になっていること以外は、実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【実施例9】
【0052】
共重合体ラテックスAを100重量部とノニオン性界面活性剤としてノイゲンLF−80X(曇点57℃、第一工業製薬製)を1重量部、無機充填剤として炭酸カルシウムのSS#30(日東粉化工業製)を400重量部、分散剤としてアロンT−50(東亞合成製)を0.3重量部、起泡剤としてネオペレックスG−25(花王製)を0.5重量部、増粘剤としてIX−1177(第一工業製薬製)を2.5重量部と所定量の水を用い、図1に示すように発泡機の入り口で炭酸ジルコニウムアンモニウム(AZコート5800MT、サンノプコ製)0.3重量部を有効成分濃度15%で添加した。この組成物をロールコーターでポリエステル製タフトカーペットの裏面に900g/m2(ウェット)の塗布量になるよう塗布した後、140℃×5分間乾燥させて繊維加工製品を得た。
【0053】
(比較例1)
実施例1で用いた共重合体ラテックスAの代わりに共重合体ラテックスDを用いた以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【0054】
(比較例2)
実施例1で用いた共重合体ラテックスAの代わりに共重合体ラテックスEを用いた以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【0055】
(比較例3)
実施例1で用いた共重合体ラテックスAの代わりに共重合体ラテックスFを用いた以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【0056】
(比較例4)
実施例1で用いた共重合体ラテックスAの代わりに共重合体ラテックスGを用いた以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【0057】
(比較例5)
実施例1で用いたノニオン性界面活性剤ノイゲンLF−80Xの代わりにエマルゲン108(曇点40℃、花王製)を用いた以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【0058】
(比較例6)
実施例1で用いたノニオン性界面活性剤ノイゲンLF−80Xの代わりにエマルゲン120(曇点98℃、花王製)を用いた以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【0059】
(比較例7)
実施例1で用いたノニオン界面活性剤の配合量が0.3重量部になっている以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【0060】
(比較例8)
実施例1で用いたノニオン界面活性剤の配合量が4重量部になっている以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【0061】
(比較例9)
実施例1で用いた炭酸ジルコニウムアンモニウムの配合量が0.05重量部になっている以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【0062】
(比較例10)
実施例1で用いた炭酸ジルコニウムアンモニウムの配合量が3重量部になっている以外は実施例1と同様の操作で組成物と繊維加工製品を得た。
【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
表3の結果から、比較例1は本発明範囲よりもTgが低い共重合体ラテックスを用いたため、繊維加工製品のベタツキ性が大きく劣っていた。比較例2は本発明範囲よりTgが高い共重合体ラテックス繊維加工製品の抜糸強度が大きく劣っていた。
【0066】
比較例3は本発明範囲よりもエチレン系不飽和カルボン酸単量体を多く使用した共重合体ラテックスを用いたため、組成物の粘度安定性が劣り、耐ブリスター性が劣っていた。
比較例4は本発明範囲よりもエチレン系不飽和カルボン酸単量体を少なく使用した共重合体ラテックスを用いたため、組成物の粘度安定性が大きく劣っていた。
【0067】
比較例5は本発明範囲よりも曇点の低いノニオン性界面活性剤を用いたため、組成物の粘度安定性が劣り、耐ブリスター性が劣っていた。
比較例6は本発明範囲よりも曇点の高いノニオン性界面活性剤を用いたため、耐ブリスター性が劣っていた。
【0068】
比較例7は本発明範囲よりもノニオン性界面活性剤の配合量が少ないため、組成物の粘度安定性が劣っていた。
比較例8は本発明範囲よりもノニオン性界面活性剤の配合量が多いため、耐ブリスター性が劣っていた。
【0069】
比較例9は本発明範囲よりも炭酸ジルコニウムアンモニウムの配合量が少ないため、耐ブリスター性が大きく劣っていた。
比較例10は本発明範囲よりも炭酸ジルコニウムアンモニウムの配合量が多いため、組成物の粘度安定性が大きく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明により、製造時の乾燥処理時にブリスターの発生がなく、かつ貯蔵安定性に優れる繊維加工用組成物が得られ、さらに本発明の製造方法によって該組成物を塗布することにより、接着強度や型保持性などに優れ、ホルマリンの発生がない繊維加工製品を安定的に提供できる。

【符号の説明】
【0071】
1 配合原料タンク
2 ジルコニウム化合物タンク
3 ポンプ
4 エアコンプレッサー
5 エア流量計
6 背圧弁
7 ミキシングヘッド
8 モーター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)脂肪族共役ジエン系単量体25〜55重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜4重量%および共重合可能な他の単量体41〜74.5重量%を乳化重合して得られるガラス転移温度が−50〜30℃の間に少なくとも1つ存在する共重合体ラテックス100重量部(固形分換算)に対して、(b)曇点が50〜80℃の範囲にあるノニオン性界面活性剤0.5〜3重量部と、(c)ジルコニウム系化合物0.1〜2重量部を含有し、かつホルマリン由来の物質を含まないことを特徴とする繊維加工用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維加工用組成物を、繊維基材に塗布して得られる繊維加工製品を製造するにあたり、該組成物の塗布処理工程の直前に設けた混合機で、(c)ジルコニウム系化合物の一部又は全部を添加することを特徴とする繊維加工製品の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2011−117112(P2011−117112A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277925(P2009−277925)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】