説明

繊維又は繊維製品に対する機能性粒子の担持方法、および該担持方法にて得られる繊維又は繊維製品。

【課題】 機能性粒子を、その機能性粒子の機能を十分に発揮できるように繊維又は繊維製品に担持させる方法を提供する。
【解決手段】 下記成分(A)と成分(B)を成分(C)に分散させてなる組成物(I)と、
(A);水に溶解されて溶解液を形成可能であり、且つ、該溶解液を加熱下でゲル化させることが可能である分散剤
(B);機能性粒子
(C);水
下記成分(D)にてなる組成物(II)とでなる粒子分散液に対して、
(D);自己乳化型であり加熱下でポリアミン(P)と反応して水不溶化するポリエステル樹脂と、水とを含んでなるポリエステル樹脂の分散液
繊維又は繊維製品を浸漬して且つ粒子分散液にポリアミン(P)を添加した後に加熱することにより、繊維又は繊維製品に機能性粒子を担持させることを特徴とする機能性粒子の担持方法により、機能性粒子を、その機能性粒子の機能を十分に発揮できるように繊維又は繊維製品に担持させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維又は繊維製品に対する機能性粒子の担持方法、および該担持方法にて得られる繊維又は繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維又は繊維製品に様々な付加価値を与えるべく、繊維又は繊維製品に対して様々な機能を発揮可能な機能性粒子を担持させる方法が検討されている。例えば、機能性粒子として、遠赤外線を放出する無機粒子、多孔性の無機粒子、金属粒子、有機樹脂からなり、内部に消臭剤や芳香剤等を含有したマイクロカプセル、光触媒作用を有する金属酸化物等が用いられ、上記機能性粒子を繊維又は繊維製品に担持させる担持方法がいろいろと検討されている。
【0003】
例えば、光触媒作用を有する金属酸化物の担持方法について、これまで、紡績された繊維又は繊維製品に対して光触媒作用を有する金属酸化物を固着させる方法(特許文献1)や、繊維そのものの内部に光触媒作用を有する金属酸化物を練りこむ方法(特許文献2)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−126764号公報
【特許文献2】特開2000−78174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法は、光触媒のような機能性粒子を含有する繊維処理剤に繊維製品を含浸し繊維に一定重量の機能性粒子を固着させる方法であり、繊維製品が浸漬された後、一定荷重で繊維製品が絞液され乾燥されることで、繊維製品に機能性粒子が固着されていた。この様な方法では、光触媒を含む繊維処理剤の殆どが残液となり極めて不経済であった。極端な場合は準備した繊維処理剤の95%もが残液となることさえあった。このことは、産業廃棄物の観点からも問題であり、機能性粒子を繊維製品に固着させる方法を改善することが求められていた。
【0006】
特許文献2に記載された技術のように、光触媒を繊維に練りこむ方法にて光触媒を繊維製品に担持させたものを得ようとする場合、光触媒粒子の表出面積が著しく減少し、光触媒粒子に光触媒機能を効率的に発揮させることができない虞があった。この点、光触媒粒子が延伸工程で繊維表面に顕在化させることも検討されているが、それでも光触媒に十分に光触媒活性を発揮させているとはいえない状況にあった。
【0007】
また、光触媒を繊維に練りこむ方法にて光触媒を繊維製品に担持させたものを得ようとする場合、光触媒を練りこまれる繊維を構成する材料物質が、通常、有機化合物であるために繊維の劣化が進みやすいという問題もある。この問題を抑制するため、光触媒粒子表面をハイドロキシアパタイトで被覆することが検討されているが、光触媒とハイドロキシアパタイトを複合化する工程で光触媒を含む粒子の粒径が約10〜100倍以上にもなるために細い繊維を紡糸できない他、光触媒の表出面積が著しく減少していることから、光触媒の活性が著しく減退する問題があった。この様な方法が用いられる場合、光触媒を含む粒子が繊維内部への染料の拡散を妨げるため、繊維の奥まで染料を行き渡らせた繊維が得られにくくなる。さらに、上記したような光触媒粒子表面をハイドロキシアパタイトで被覆することを用いた方法では、染色した製品の耐光性が悪く、そのような方法は、白綿程度でしか実施用途のないものであった。なお、耐光性の悪さは、次のような理由によるものと思われる。すなわち、繊維に練りこまれる光触媒を含む大粒径の粒子において、高い吸着能力を有するハイドロキシアパタイトが、染料分子を優位的にハイドロキシアパタイトに吸着して、染料分子自体を光触媒の酸化作用に曝すため、染色した製品の耐光性が悪くなると考えられる。
【0008】
本発明は、機能性粒子を、その機能性粒子の機能を十分に発揮できるように繊維又は繊維製品に担持させる方法を提供すること、光触媒といった機能性粒子を繊維又は繊維製品に担持させる方法として極めて経済的な方法を提供すること、また、機能性粒子を担持させた繊維又は繊維製品として、機能性粒子を強固に担持しつつ更に、担持させた後、染色を施されることも可能な繊維又は繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)下記成分(A)と成分(B)を成分(C)に分散させてなる組成物(I)と、
(A);水に溶解されて溶解液を形成可能であり、且つ、該溶解液を加熱下でゲル化させることが可能である分散剤
(B);機能性粒子
(C);水
下記成分(D)にてなる組成物(II)とでなる粒子分散液に対して、
(D);自己乳化型であり加熱下でポリアミン(P)と反応して水不溶化するポリエステル樹脂と、水とを含んでなるポリエステル樹脂の分散液
繊維又は繊維製品を浸漬して且つ粒子分散液にポリアミン(P)を添加した後に加熱することにより、繊維又は繊維製品に機能性粒子を担持させることを特徴とする機能性粒子の担持方法、を要旨とする。
【0010】
また、本発明は、(2)組成物(II)に用いられる成分(D)は、N-メチルビス-3-メチルプロピルアミン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、3.9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンからなる群より選ばれたポリアミンと、自己乳化型であり加熱下で前記ポリアミンと反応して水不溶化するポリエステル樹脂と、水とを含んでなる分散液である、上記(1)に記載の担持方法、(3)組成物(II)には、下記成分(E)が更に含まれている、上記(1)または(2)に記載の機能性粒子の担持方法、
(E);縮合反応硬化型のシリコーンゴムと、水とを含んでなるシリコーンゴムの分散液、も要旨とする。
【0011】
また、本発明は、(4)下記成分(A)と成分(B)を成分(C)に分散させてなる組成物(I)と、
(A);水に溶解されて溶解液を形成可能であり、且つ、該溶解液を加熱下でゲル化させることが可能である分散剤
(B);機能性粒子
(C);水
下記成分(E)にてなる組成物(III)とでなる粒子分散液に対して、
(E);縮合反応硬化型のシリコーンゴムと、水とを含んでなるシリコーンゴムの分散液
繊維又は繊維製品を浸漬し且つ加熱することにより、繊維又は繊維製品に機能性粒子を担持させることを特徴とする機能性粒子の担持方法、も要旨とする。
【0012】
さらに、本発明は、(5)組成物(I)には、成分(A)として、ポリアクリル酸アンモニウムが用いられている、上記(1)から(4)のいずれかに記載の担持方法、(6)組成物(I)には、成分(B)として、可視光線をうけて触媒活性を生じる機能を有する金属酸化物微粒子でなる光触媒が用いられている、上記(1)から(5)のいずれかに記載の担持方法、(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載の担持方法にて得られる繊維又は繊維製品、(8)上記(1)から(7)のいずれかに記載の担持方法にて機能性粒子を担持された後、アルカリ洗浄されて組成物(I)の成分(A)を除去された後、染色を施されてなる繊維又は繊維製品、をも要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の担持方法によれば、組成物(II)として、自己乳化型であり加熱下でポリアミンと反応して水不溶化するポリエステル樹脂の分散液が用いられ、及び/又は、組成物(III)として、縮合反応硬化型のシリコーンゴムの分散液が用いられる。したがって、本発明では、組成物(II)を含む粒子分散液にポリアミン(P)が添加されて加熱されること、もしくは、組成物(III)を含む粒子分散液が加熱されることが行われ、その際に、組成物(II)や組成物(III)から水不溶化した樹脂(非水溶性樹脂)が析出して繊維又は繊維製品の表面に固着される。ところで、本発明の担持方法では、粒子分散液には組成物(II)や組成物(III)のほかに組成物(I)が含まれるが、この組成物(I)は、水に溶解されて溶解液を形成可能であり、且つ、該溶解液を加熱下でゲル化させることが可能である分散剤(成分(A))が用いられて機能性粒子を水中に分散させて構成されている。すると、粒子分散液が加熱されると、機能性粒子を分散させる成分(A)がゲル化し、組成物(I)に含まれる機能性粒子は徐々に分散性を失う。ここで、本発明の担持方法では、粒子分散液は上記のような組成物(II)や組成物(III)に組成物(I)が混在することから、組成物(II)や組成物(III)に組成物(I)が混在する状態で加熱が行われる。したがって、本発明の担持方法では、粒子分散液が加熱される際、組成物(II)や組成物(III)から形成される非水溶性樹脂に、組成物(I)に含まれる機能性粒子が抱えられ、非水溶性樹脂と機能性粒子の複合体を形成することができ、さらに、非水溶性樹脂が繊維又は繊維製品の表面に固着されることに伴って、機能性粒子が繊維又は繊維製品の表面に対して担持される。このとき、非水溶性樹脂は繊維又は繊維製品に対して強固に固着されるので、機能性粒子も繊維又は繊維製品に対して強固に担持される。
【0014】
また、本発明の担持方法では、非水溶性樹脂は、定量的な反応にて形成される。したがって、この反応を制御することで、繊維又は繊維製品に固着される非水溶性樹脂の量を定量的に制御することができ、したがって、非水溶性樹脂に抱えられる機能性粒子について、繊維又は繊維製品に担持される機能性粒子の量も定量的に制御することが可能となる。
【0015】
これまで、機能性粒子を含有する繊維処理剤に繊維製品を含浸し繊維重量に一定の機能性粒子を固着させる方法では、機能性樹脂を分散させた樹脂材料をそのまま繊維製品に固着させており、繊維製品を構成する複数の繊維の間(特に、繊維同士が交絡する部分)に樹脂材料が過剰に付着した部分(樹脂溜まり)が多数形成されていた。この点、本願発明の担持方法では、そのような樹脂溜まりが形成される虞が効果的に抑制される。
【0016】
本発明の担持方法は、従前の染色加工技術に用いる染色機(たとえばチーズ染色機、オーバーマイヤー染色機、ジッカー、ロータリー染色機、カセ染め機等の一般的な染色機)をそのまま用いて実施可能であり、汎用性が高いうえ、特別な機械を用意する必要もなく経済的な方法である。そして、本発明によれば、そのような従前から用いられる染色機内に、繊維(例えば長繊維、短繊維など)が充填密度0.3〜0.5g/cmのような高密度で充填された場合にあっても、また、繊維の繊維径が10〜30μmの物であっても、繊維表面におおよそ均一に機能性粒子を担持させることが可能となる。
【0017】
また、本発明の担持方法によれば、機能性粒子と機能性粒子を抱える非水溶性樹脂を除いて、そのほかに粒子分散液に含まれる界面活性剤や分散剤等の成分を水溶性化合物のみで構成することが可能となり、機能性粒子と機能性粒子を抱える非水溶性樹脂のみを繊維上に固着させた状態を形成することが容易になる。したがって、粒子分散液に含まれるほかの成分によって、機能性粒子の機能が悪影響を受ける虞を抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明の担持方法によれば、機能性粒子を担持させた繊維又は繊維製品を得る
ことができるが、得られた繊維又は繊維製品は、更に染色を施すことが可能なものである。すなわち、従前の担持方法では、機能性粒子が繊維に担持される際、繊維の周囲には樹脂溜まりができるほどに繊維の周囲に多くの樹脂が付着されていたので、その後に、繊維を染色しようとすると、多くの染料が樹脂部分に付着して、その樹脂が染色されてしまうに留まり、繊維まで染料が行き渡らなくなってしまう。ここで樹脂には光触媒が付着しているため、樹脂を染色した染料は、光触媒によって分解されてしまい、まだらに染色されたようになってしまう。この点、本発明の担持方法では、樹脂溜まりができてしまう虞が抑制されており、繊維に染料が直接含浸させることができる。したがって、本発明の担持方法では、問題なく後染色を実施することができるような繊維又は繊維製品を得ることが可能となる。
【0019】
発明の担持方法によれば、組成物(I)と組成物(II)を用いた担持方法や組成物(I)と組成物(III)を用いた担持方法にて機能性粒子を繊維又は繊維製品に担持させた後、機能性粒子を担持した繊維又は繊維製品をアルカリ洗浄して、繊維又は繊維製品から組成物(I)の成分(A)が除去され、その後、該繊維又は繊維製品に染色が施されてもよい。本発明の担持方法では、特に、組成物(I)に含まれる光触媒粒子を組成物(II)と共に繊維又は繊維製品に固着させた場合、樹脂と光触媒粒子からなる複合体が繊維又は繊維製品に固着された状態が形成されるが、その樹脂と光触媒粒子からなる複合体中には、分散剤のポリアクリル酸アンモニウムが、その分子構造からアンモニアを離脱してなる構造の状態、即ち、ポリアクリル酸イオンの状態にて取り込まれている。そこで、繊維又は繊維製品がアルカリ洗浄されると、複合体からポリアクリル酸イオンが取り除かれる。これにより、繊維又は繊維製品内に染料が拡散しやすくなる。例えば、染料が塩基性染料である場合、ポリアクリル酸イオンに染料が吸着されることなく、繊維内部へ十分に染料を拡散することができるようになる。また、染料がアニオン性染料である場合、イオン化された染料がこれと電気的に同等であるポリアクリル酸イオンに対して電気的に反発されることなく、繊維又は繊維製品に染料を十分に拡散させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施形態について)
本発明は、組成物(I)と組成物(II)とでなる粒子分散液に対して、繊維又は繊維製品を浸漬して、且つ、該粒子分散液にポリアミン(P)を添加した後に加熱することで、繊維又は繊維製品に機能性粒子を担持させる機能性粒子の担持方法である。
【0021】
<粒子分散液を構成する組成物(I)について>
組成物(I)は、次に示す成分(A)と成分(B)と成分(C)を用い、成分(A)と成分(B)を成分(C)に分散させてなるものである。
【0022】
(A);水に溶解されて溶解液を形成可能であり、且つ、該溶解液を加熱下でゲル化させることが可能である分散剤
(B);機能性粒子
(C);水
【0023】
すなわち、成分(A)は、上記したように、水に溶解されて溶解液を形成可能であり、且つ、該溶解液を加熱下でゲル化させることが可能である分散剤である。そのような分散剤としては、ポリアクリル酸アンモニウムが好ましく用いられる。本発明では、組成物(I)を含む粒子分散液が繊維又は繊維製品とともに加熱されるが、分散剤がポリアクリル酸アンモニウムである場合、加熱下で分散剤がゲル化するとともにアンモニアを生じるので、アンモニアが組成物(I)から揮発することにともなって、機能性粒子の分散性を段階的に低下させることができる。そして、機能性粒子の分散性の低下とともに、その機能性粒子は、組成物(II)に抱えられ、組成物(II)とともに繊維又は繊維製品に付着することになり、定量的に機能性粒子を繊維又は繊維製品に担持させることができる。
【0024】
また、成分(A)にあたる分散剤は、具体的に、ダイドールC27(大同化成工業株式会社製)、ポイズ532A(花王株式会社製)、その他、上市された製品を適宜採用することができる。
【0025】
成分(B)は、上記したように機能性粒子である。機能性粒子は、繊維又は繊維製品に担持された状態で、所定の機能を発揮して繊維又は繊維製品に付加価値を与えるものである。具体的に、機能性粒子としては、光触媒、導電性粒子、蛍光や蓄光性の顔料、遠赤外線やマイナスイオンを放出する無機粒子、マイクロカプセル等を挙げることができる。
【0026】
機能性粒子が光触媒である場合、その光触媒としては、可視光線をうけて触媒活性を生じる機能を有する金属酸化物微粒子を挙げることができ、具体的に酸化チタンを挙げることができる。
【0027】
機能性粒子が導電性粒子である場合、その導電性粒子としては、酸化亜鉛、ポリピロール、ポリアニリン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、導電性酸化チタン、アンチモンドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫等を挙げることができる。
【0028】
成分(C)は、上記したように水である。組成物(I)に使用される水は、純水であることが好ましい。水の中に多価金属イオンが存在すると自己乳化型樹脂の分散液不安定となり、ポリアミンによるゲル化の障害となるおそれがある。ポリアミンによる自己乳化型樹脂のゲル化にとって障害となる多価金属イオンとしては、例えば、Al、Cu、Fe,Mg、Ca、Zn、Ni、Cr、Hg、Cd等のイオンが挙げられる。
【0029】
組成物(I)は、成分(A)と成分(B)を成分(C)に分散させることで調製される。組成物(I)を調整するにあたり、成分(B)である機能性粒子を成分(C)である水に安定して分散させた状態にするには、ビーズミルやホモジナイザーを使用して成分(A)と成分(B)を成分(C)に分散させることが好ましい。
【0030】
例えば、具体的に、成分(B)である機能性粒子が光触媒であり、その光触媒として酸化チタンが用いられる場合には、組成物(I)が、成分(A)としてのポリアクリル酸アンモニウムと成分(B)としての光触媒たる酸化チタンを、成分(C)としての水に対して、ビーズミルやホモジナイザー等を使用して分散させることで調製されることが好ましい。
【0031】
なお、このとき、組成物(I)において、光触媒は、その平均粒子径が100nm以下の状態にて分散されていることが好ましい。また、上記のように、組成物(I)において、成分(A)としての分散剤がポリアクリル酸アンモニウムである場合、光触媒は、可視光線を受けて光触媒活性を発現可能な可視光線応答型の光触媒であることが好ましく、さらに窒素をドーピングされた窒素ドープ型の光触媒であることが好ましい。この例における組成物(I)では、成分(A)としてポリアクリル酸アンモニウムが使用されているので、組成物(I)を含む粒子分散液が加熱されるとアンモニアを生じ、そのアンモニアの揮発とともに組成物(I)のゲル化が進む。そこで、組成物(I)を効果的にゲル化させるためには、組成物(I)がアルカリ性下で光触媒を分散させたものであることが好ましい。組成物(I)がアルカリ性であると、組成物(I)が加熱された際に生じるアンモニアが効率よく揮発することから、効率よく組成物(I)のゲル化を進めることが可能となる。組成物(I)をアルカリ性にするには、上記成分(A)と成分(B)を成分(C)に分散させる際に、水に溶解させるとアルカリ性を示す化合物を添加することで具体的に実現可能である。
【0032】
また、組成物(I)の構成要素である成分(A)がポリアクリル酸アンモニウムである場合、組成物(I)を含む粒子分散液が加熱された際に粒子分散液からアンモニアを効率よく揮発させるには、組成物(I)を含む粒子分散液が、大気下、開放状態で80〜100℃に加熱されることが好ましい。なお、組成物(I)を含む粒子分散液が耐圧容器内などの閉空間で加熱される場合であっても、その閉空間の容積を十分大きくすることで組成物(I)から生じるアンモニアが粒子分散液から蒸発し、粒子分散液のゲル化を促進することは可能ではある。ところが、組成物(I)を含む粒子分散液が耐圧容器内などの閉空間で加熱される場合(ケース1)と、組成物(I)を含む粒子分散液が開放状態で加熱される場合(ケース2)とを比べると、ケース1のほうがケース2よりも揮発したアンモニアのうち再度水に溶解するものの量が多くなることから、ケース1のほうがケース2よりも粒子分散液のゲル化が進行し難くなる虞が高くなる。
【0033】
<粒子分散液を構成する組成物(II)>
組成物(II)は、次に示す成分(D)にてなる。
【0034】
(D);自己乳化型であり加熱下でポリアミン(P)と反応して水不溶化するポリエステル樹脂と、水とを含んでなる分散液
【0035】
<成分(D)について>
まず、成分(D)は、上記したように、自己乳化型であり加熱下でポリアミン(P)と反応して水不溶化するポリエステル樹脂と、水とを含んでなる分散液である。
【0036】
成分(D)に含まれるものとして採用可能なポリエステル樹脂は、自己乳化型であり加熱下でポリアミン(P)と反応して水不溶化するポリエステル樹脂であり、具体的に、東洋紡株式会社製、商品名バイロナール、MD1100,MD1200,MD1220,MD1245,MD1250,MD1335,MD1400,MD1480,MD1500,MD1930,MD1985や、互応化学工業株式会社製、Z221,Z446,Z−561,Z450,Z565,Z8509,Z3308,RZ105,RZ570,Z730,RZ142等を挙げることができる。そのほか、成分(D)として使用可能なポリエステル樹脂としては、ユニチカ株式会社や東亞合成化学株式会社等から販売されているポリエステル樹脂のうち自己乳化型であり加熱下でポリアミン(P)と反応して水不溶化するものが適宜用いられてよい。
【0037】
組成物(II)に用いられる成分(D)には、界面活性剤が含有されないことが好ましいが、界面活性剤は、ポリアミンと反応して水不溶化されたポリエステル樹脂の形成に影響を与えない程度のごく少量であれば、含まれていてもよい。また、成分(D)には、メチルセロソルブなどの有機溶媒が含有されないことが好ましいが、界面活性剤の場合と同様に、有機溶媒は、ポリアミンと反応して水不溶化されたポリエステル樹脂の形成に影響を与えない程度のごく少量であれば、含まれていてもよい。
【0038】
成分(D)からなる組成物(II)は、例えば次のように調製することができる。すなわち、上記したようなポリエステル樹脂を水中に分散させてポリエステル樹脂の乳化液を形成することで、成分(D)でなる組成物(II)を調整することができる。ここで、ポリエステル樹脂の乳化液の形成にあたり、ポリエステル樹脂を分散させようとする溶液が酸性であるとゲル化あるいは水不溶化してしまうことから、ポリエステル樹脂を分散させる前に、その溶液には水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物が添加され、アルカリ性の水溶液にされていることが好ましい。したがって、アルカリ性化
された水にポリエステル樹脂を乳化させて乳化液が形成されることで、成分(D)が調製されていることが好ましい。
【0039】
<粒子分散液について>
粒子分散液は、上記のように調製される組成物(I)と組成物(II)を混ぜあわせることで調製される。
【0040】
なお、粒子分散液には、必要に応じて柔軟剤、帯電防止剤、顔料、吸着剤等を適宜添加されていてもよい。
【0041】
<ポリアミンについて>
機能性粒子を繊維又は繊維製品に担持させる際、粒子分散液には、ポリアミン(P)が添加されるが、使用されるポリアミン(P)は、成分(D)を構成する乳化状態にあるポリエステル樹脂と、加熱条件下で反応して、そのポリエステル樹脂をゲル化させ、さらには水不溶化させるものである。そのようなポリアミン(P)としては、ポリエステル樹脂を効率的に水不溶化させる点でジアミンが用いられることが好ましく、具体的に、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジプロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンを用いることができる。また、ポリアミン(P)としては、N-メチルビス-3-メチルプロピルアミン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、3.9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンからなる群より選ばれたポリアミンを用いることができる。さらに、ポリアミン(P)としては、特に、Nメチルビスアミノプロピルアミンが好ましい。
【0042】
ポリアミンは、粒子分散液が加熱される前に粒子分散液中に存在する状態を形成可能に添加されていればよく、組成物(I)と組成物(II)を混合して粒子分散液を調整した後に添加されるほか、組成物(II)を調製する段階でポリエステル樹脂の乳化液に添加されていてもよい。
【0043】
<粒子分散液による機能性粒子の担持方法について>
本発明における機能性粒子の担持方法は、粒子分散液に対して、繊維又は繊維製品を浸漬して且つ粒子分散液にポリアミン(P)を添加して加熱することで実施される。このとき、「粒子分散液に対する繊維又は繊維製品の浸漬と加熱」が実施されているが、これは、染色機を用いて具体的に実施することができる。
【0044】
「粒子分散液に対する繊維又は繊維製品の浸漬と加熱」に使用可能な染色機としては、チーズ染色機、オーバーマイヤー染色機、液流染色機、回転ドラム式染色機、噴射式染色機、ウインス式染色機等、一般的に使用される染色機を挙げることができるが、短繊維又は長繊維に対して均一に機能性粒子を担持することが実現可能である点で、チーズ染色機又はオーバーマイヤー染色機を特に好ましく用いることができる。
【0045】
「粒子分散液に対する繊維又は繊維製品の浸漬と加熱」は、上記したようなチーズ染色機やオーバーマイヤー染色機といった染色機に繊維又は繊維製品をセットし、繊維又は繊維製品の間隙に粒子分散液を強制的に通過させるとともに粒子分散液を循環させ、且つ、粒子分散液にポリアミン(P)を添加して加熱することによって実施することができる。粒子分散液にポリアミン(P)を添加した後に加熱が行われることで、徐々に組成物(II)から非水溶性樹脂が析出するとともに組成物(I)の機能性粒子が徐々に分散状態でなくなり、機能性粒子が非水溶性樹脂に対して付着し、非水溶性樹脂に取り込まれる。そして、繊維又は繊維製品の間隙に粒子分散液が強制的に通過することで、機能性粒子を付着した非水溶性樹脂が繊維又は繊維製品の表面に固着する。このとき、粒子分散液は循環しているので、浸漬された繊維又は繊維製品の表面に部分的に非水溶性樹脂が固着してしまうこと虞が抑制されており、繊維又は繊維製品の表面に均一に非水溶性樹脂が固着させることができるので、繊維又は繊維製品の表面に均一に機能性粒子を担持させることができる。
【0046】
粒子分散液が加熱されることで徐々に組成物(II)から非水溶性樹脂が析出するとともに組成物(I)の機能性粒子が徐々に分散状態でなくなり、非水溶性樹脂に対して機能性粒子が付着し取り込まれる機構について、詳細は明らかでないが、「組成物(I)が成分(A)としてポリアクリル酸アンモニウム、成分(B)として酸化チタン、成分(C)として水を用いて構成され、組成物(II)が成分(D)にあたるポリエステル樹脂の分散液を用いて構成されている場合」を例として説明すると、おおよそ次のようになっているものと思料される。
【0047】
組成物(I)を含む粒子分散液が加熱されると、ポリアクリル酸アンモニウムからアンモニア成分が揮発する。このときポリアクリル酸アンモニウムにより水中で分散していた光触媒をなす機能性粒子が安定して分散できなくなり、複数の機能性粒子同士が集まってなる二次粒子が形成されて、粒子分散液中における機能性粒子の見かけの粒子径が増大する。一方で、粒子分散液に含まれる組成物(II)からは、加熱によって乳化状態にあるポリエチレン樹脂とポリアミンとが反応して非水溶性樹脂が形成され析出してくる。そして、機能性粒子の二次粒子は、非水溶性樹脂と会合して安定化しようとし、機能性粒子と非水溶性樹脂とが一体化して複合体を構成する。この複合体は分散液中で不安定であるので、繊維又は繊維製品の表面に固着して安定化しようとし、繊維又は繊維製品の表面に機能性粒子と非水溶性樹脂との複合体が固定される。こうして、機能性粒子は繊維又は繊維製品の表面に担持されるものと思料される。
【0048】
本発明における機能性粒子の担持方法において、粒子分散液を加熱するにあたり、その加熱条件としては室温から段階的に昇温する条件であることが好ましい。具体的に、40〜110度の範囲で加熱されることが好ましい。このような加熱条件であると、粒子分散液から非水溶解性樹脂と機能性粒子との複合物(機能性粒子を抱えた非水溶解性樹脂)が徐々に析出し、徐々に析出したその複合物を繊維又は繊維製品表面に順次より確実に固着させることができて好ましい。
【0049】
例えば、多数の小孔を形成した中空筒体染色ボビンに繊維を巻きつけたものをチーズ染色機の反応槽内にセットし、室温(25℃)で10分間程度、染色ボビン内側から外側に向かって粒子分散液を強制的に移動させるとともに粒子分散液を循環させる。このとき、染色槽内が十分に脱気され、繊維間の空隙部ができる限り粒子分散液で充填される。次いで、チーズ染色機の染色槽を徐々に加熱し、例えば3℃/minの昇温速度で95℃まで加熱しながら繊維間に粒子分散液を通過させ循環させる。更に粒子分散液から非水溶性樹脂の析出を完結させるために95℃まで昇温した状態を所定時間(例えば30分間)維持し、非水溶性樹脂と機能性粒子の複合体を繊維に固着させる。
【0050】
本発明の機能性粒子の担持方法において、上記のような加熱温度の条件を採用して粒子分散液の加熱が実施されると、ほぼ50〜80℃前後で非水溶性樹脂がおおよそ析出し尽くすとともに非水溶性樹脂の繊維又は繊維製品への固着が完了し、すなわち機能性粒子と非水溶性樹脂の複合体が繊維又は繊維製品の表面に固着されることが完了し、それにより、おおよそ機能性粒子と非水溶性樹脂は粒子分散液から除去される。但し、繊維又は繊維製品に対して機能性粒子を強固に固定する目的を達成するには、加熱温度の条件が、組成物(II)に含まれる樹脂のガラス転移温度以上に加熱する条件であることが重要であり、本発明においては、95℃まで加熱される条件であることで、その目的が十分に達成できる。なお、加熱温度の条件が、水の沸点以上の110〜130℃まで加熱するという条件である場合、繊維又は繊維製品に対して機能性粒子をさらに強固に固定することができるという結果が得られる傾向があり、こうした条件は、適宜設定することができる。
【0051】
本発明の機能性粒子の担持方法によれば、従来の染色加工技術に用いる染色機を用いて実施できることから極めて汎用性の高い方法であり、機能性粒子を担持させた繊維又は繊維製品を効果的に得ることができる。
【0052】
(第2の実施形態について)
本発明の第1の実施形態においては、組成物(II)が、成分(D)と次に示すような成分(E)とでなるものでもよい(第2の実施形態)。
【0053】
(E);縮合反応硬化型のシリコーンゴムと、水とを含んでなるシリコーンゴムの分散液
【0054】
<成分(E)について>
成分(E)は、上記したように、縮合反応硬化型のシリコーンゴムと、水とを含んでなる分散液である。
【0055】
成分(E)に含まれるシリコーンゴムとしては、ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましく、特に環状シロキサンオリゴマーが好ましい。環状シロキサンオリゴマーとしては、ジメチルシロキサン4量体環状化合物を挙げることができ、例えば、東レダウコーニング社製の「DOW CORNING TPRAY BY 22−826 EX」(pH11のコロイダルシリカであり1−10オクタメチルテトラシロキサンとジオクチル錫ジラウレートを含有するもの)(化合物T)を挙げることができる。化合物Tは、化合物Tを水に分散させた分散液において水分が揮発しあるいは分散液が加熱されることにより、その化合物Tの分子に開環を生じ、分子同士に脱水縮合反応を生じて硬化するものであり、その脱水縮合反応により水不溶性の樹脂を形成するものである。
【0056】
更に、上記化合物Tに示すような「加熱条件下で縮合反応を生じて硬化するもの」としては、信越化学工業株式会社製KM9717,X51−1302M,PolonMF28,X52−8148,PolonMF56,KM2002L1,KM2002T,X−51−131B,KM9749/X52−1133,PolonMF40等の化合物群を挙げることができ、これらの化合物群についても、成分(E)に含まれるシリコーンゴムとして使用可能である。
【0057】
成分(E)は、上記したようなシリコーンゴムを水に分散させて分散液を作製することによって得ることができる。なお、この分散液を得るにあたり、シリコーンゴムを水中に安定して分散させるために、分散剤が添加されることが好ましいが、分散剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等の1種又は2種以上を適宜選択して使用できる。
【0058】
乳化剤の添加量は特に制限されず、得ようとする乳化物に要求される特性等に応じて広い範囲から適宜選択すればよいが、乳化安定性や皮膜形成性等が良好な乳化物を得るためには、分散液に対して通常1〜5重量%程度、好ましくは2〜3重量%程度とすればよい。バインダー樹脂中にこれらの界面活性剤が残存すると、光触媒機能を低下させるおそれがあり、曇点以下で溶解洗浄するか、アルカリ洗浄して、完全に除去することが好ましい。
【0059】
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸系(陰イオン) - 純石けん分(脂肪酸ナトリウム)、純石けん分(脂肪酸カリウム)、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、 直鎖アルキルベンゼン系 - 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、高級アルコール系(陰イオン) - アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィン系 - アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、ノルマルパラフィン系 - アルキルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、脂肪酸系(非イオン) - しょ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド 、高級アルコール系(非イオン) - ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルフェノール系 - ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩系 - アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0060】
第2の実施形態の担持方法では、組成物(II)が成分(D)と成分(E)にて構成されるので、粒子分散液が加熱されると、成分(D)のみならず成分(E)にあたるシリコーンゴムの分散液からも非水溶性樹脂が析出し、ポリエステル樹脂の非水溶性樹脂とシリコーンゴムの非水溶性樹脂と機能性粒子と機能性粒子の複合物が形成され、その複合物は繊維又は繊維製品の表面上に固着される。こうして、機能性粒子が繊維又は繊維製品に担持される。なお、粒子分散液が加熱されるにあたり、その加熱条件は「室温から段階的に昇温させる条件」であることが好ましい。
【0061】
(第3の実施形態について)
本発明は、組成物(I)と組成物(III)とでなる粒子分散液に対して、繊維又は繊維製品を浸漬して且つ加熱することで、繊維又は繊維製品に機能性粒子を担持させる機能性粒子の担持方法であってもよい。
【0062】
第3の実施形態における組成物(I)は、上記第1の実施形態で用いる組成物(I)と同じ構成にてなるものである。
【0063】
組成物(III)は、上記第2の実施形態で用いる成分(E)にてなるものである。
【0064】
そして、粒子分散液は、組成物(I)と組成物(III)を混合させることで調製される。
【0065】
<粒子分散液による機能性粒子の担持方法について>
本発明の第3の実施形態における機能性粒子の担持方法は、粒子分散液に対して、繊維又は繊維製品を浸漬して且つ加熱することで実施される。「粒子分散液に対する繊維又は繊維製品の浸漬と加熱」は、従前の染色機を用いて実施することができる。「粒子分散液に対する繊維又は繊維製品の浸漬と加熱」は、調製された粒子分散液にポリアミンを添加しないほかは、第1の実施形態と同じ工程を適用して実施できる。すなわち、この「粒子分散液に対する繊維又は繊維製品の浸漬と加熱」は、染色機といった染色機に繊維又は繊維製品をセットし、繊維又は繊維製品の間隙に粒子分散液を強制的に通過させるとともに粒子分散液を循環させ、且つ、粒子分散液にポリアミン(P)を添加せずに加熱することによって実施することができる。
【0066】
なお、第1の実施形態から第3の実施形態に示すような本発明の機能性粒子の担持方法にて繊維又は繊維製品に機能性粒子が担持された後、機能性粒子を担持した繊維又は繊維製品がアルカリ洗浄されて組成物(I)の成分(A)が繊維又は繊維製品から除去され、さらにその後、アルカリ洗浄された繊維又は繊維製品に対して染色が施されてもよい。
【0067】
次に、実施例を用いて本発明の機能性粒子の担持方法を更に説明する。
【実施例】
【0068】
実施例1
「繊維の準備」
機能性粒子を担持させる繊維として、アクリル繊維(2.2dtx、長さ51mm)(三菱レイヨン製)を準備した。
【0069】
「粒子分散液の調整」
まず組成物(I)を次のように調製した。
【0070】
示すような配合量にて成分(A)と成分(B)を成分(C)に添加して混合液を作製し、その混合液にジルコニアビーズ(粒子径50μ)4500gを併用するとともに、混合液をビーズミルに仕込んだ。そして、機能性粒子である光触媒の粒子をビーズミルにて水中に分散させて分散液を調整することで、組成物(I)が得られた。このとき、組成物(I)は、平均粒子径55nmの光触媒(豊田通商製、VCT01)を分散させた分散液となっていた。なお、光触媒の粒子径は日機装製マイクロトラックUP150にて測定された。
【0071】
<組成物(I)の各成分>
成分(A) ポリアクリル酸アンモニウム水溶液 25g
(花王株式会社製、ポイズ532A)
成分(B) 機能性粒子 1000g
(光触媒(酸化チタン);豊田通商製、VCT01)
成分(C) 水 8975g
【0072】
<組成物(II)の調製>
組成物(II)は、ポリエステル樹脂(東洋紡製、バイロナール、MD1245)と、コロイダルシリカ(日産化学社製)を水に対して分散させることで調整された。
【0073】
さらに、組成物(I)と組成物(II)を混合して粒子分散液を調整した。このとき、粒子分散液は、次に示すような組成比率にて調製された。
【0074】
<粒子分散液の組成比率>
組成物(I) 10.29重量%
MD1245(組成物(II)中に存在) 0.57重量%
コロイダルシリカ(組成物(II)中に存在) 2.57重量%
水(組成物(II)中に存在) 86.57重量%
【0075】
粒子分散液の調製とは別に、ポリアミン溶液が調製された。
【0076】
<ポリアミン溶液の調製>
ポリアミン溶液は、N-メチルビス-3-メチルプロピルアミン(MIBPA(N−メチル−イミノビス(nプロピルアミン))を、水に溶解させることで次のような組成比率にて調製された。
【0077】
<ポリアミン溶液の組成比率>
N-メチルビス-3-メチルプロピルアミン 0.14重量%
水 99.86重量%
【0078】
<アクリル繊維を粒子分散液に浸漬し且つ加熱する工程>
染色機(オーバーマイヤー染色機;伸光製作所製オーバーマイヤー1kg型)の槽内(キャリアー内)に、上記アクリル繊維(1kg)を、熱湯を注ぎながら充填した(キャリヤー内充填密度:約0.45g/cm)。
【0079】
次に、染色機の槽内に粒子分散液(8.8%owf)(光触媒は、アクリル繊維単位重量当たり0.906%owf)、ポリアミン溶液(8.8%owf)を注入し、粒子分散液とポリアミン溶液とを混合液(便宜上、加工液という)の状態にして、その加工液を槽内に充填されたアクリル繊維の間を通過させるとともに混合液を循環させた。このとき、アクリル繊維を構成の繊維間には加工液が存在することになるので、アクリル繊維を粒子分散液に浸漬させた状態が形成されている。
【0080】
上記のように加工液を循環させるにあたり、ポリアミン溶液を槽内に注入した後に加工液を徐々に加熱した。加熱条件は、「昇温速度を2℃/分として、粒子分散液の温度が110℃になるまで加熱し、その後、110℃で30分間維持する」という条件とした。
【0081】
なお、この工程を実施するにあたり、浴比は10/1であり、加工液の循環は、循環ポンプで実施され、加工液の循環方向は、槽内の内から外に向かう方向のみ行われた。これは、液の流れ方向を内から外、外から内、と反転させるとキャリヤー内の繊維に流動が発生し、キャリヤー内に空隙が生じて繊維に加工ムラが発生するという虞があるため、槽内での繊維の移動を極力抑え、ショートパスしないように配慮したことによる。
【0082】
こうして、粒子分散液をアクリル繊維に浸漬し且つ加熱する工程が実施され、機能性粒子たる光触媒をアクリル繊維に担持させてなる繊維(光触媒担持繊維)が得られた。
【0083】
<機能性粒子の担持状態の確認>
得られた光触媒担持繊維への機能性粒子の担持状態は、電子顕微鏡を用いて繊維を写真撮影する方法によって確認された。この方法により、得られた光触媒担持繊維がアクリル繊維に均一に光触媒を担持して構成されていることが確認された。
【0084】
<機能性粒子の機能発現可能性の確認>
機能性粒子として用いられた光触媒が、光触媒担持繊維において、光触媒の機能を有効に発現できるか否か(光触媒機能発現可能性)について、次のように確認された。
【0085】
光触媒機能発現可能性は、アセトアルデヒドの分解速度を測定することにより、確認された。すなわち、暗所にて、テドラーバッグ(5L)中に、アセトアルデヒド(21ppm)が含まれる空気と、光触媒担持繊維(5g)とを封入し、その後、そのテドラーバックにブラックライト(1mW/cm)を6時間照射した。なお、ブラックライトは、光源が蛍光灯(FL灯)であり、光量が6000ルクスのものであった。
【0086】
その後、ブラックライトを消灯し、ブラックライトの照射開始時を基準に17時間経過後、39時間経過後、72時間経過後、86時間経過後の各時点(測定時点)において、テドラーバッグ内のアセトアルデヒドの量(ppm)を測定した。結果は表1に示すとおりである。なお、アセトアルデヒドの量の測定は、検知管(株式会社ガステック製、No.92L、気体検知管、目盛範囲:1〜20ppm)によって実施された。これにより、アセトアルデヒドが分解されており、光触媒担持繊維に担持された光触媒が光触媒活性を発現していることが確認された。
【0087】
(表1)

【0088】
実施例2
<繊維と粒子分散液の準備>
実施例1で用いた繊維と同種の繊維(アクリル繊維(2.2dtx、長さ51mm)(三菱レイヨン製))を準備し、さらに、実施例1における組成物(II)に含まれるポリエステル樹脂として使用されたMD1245に変えて、プラスコートZ561(互応化学工業社製、水溶性ポリエステル樹脂 固形分25重量%)が使用されたほかは実施例1と同様にして、粒子分散液とポリアミン溶液を調整した。
【0089】
粒子分散液とポリアミン溶液を予め混合して加工液を調整し、その状態で、加工液を室温で1週間放置した。加工液を調製直後の時点では、加工液に含まれる光触媒の平均粒子径は約50nmであったが、1週間経過後の時点では、光触媒の平均粒子径は330nmになっていた。
【0090】
<アクリル繊維を粒子分散液に浸漬し且つ加熱する工程>
この工程は、1週間放置しておいた加工液を用いて、次のように実施された。
【0091】
まず、実施例1と同様の染色機を用いて槽内にアクリル繊維を充填した。
【0092】
次に、1週間放置しておいた加工液を、槽内に充填されたアクリル繊維の間を通過させるとともにその加工液を循環させた。この工程を実施するにあたり、実施例1と同様に、浴比は10/1であり、加工液の循環は、循環ポンプで実施され、加工液の循環方向は、槽内の内から外に向かう方向のみ行われた。また、この工程は、染色機の槽を密閉した状態にすることなく、すなわち開放下にて、実施された。
【0093】
上記のように加工液を循環させるにあたり、加工液を徐々に加熱した。加熱条件は、「昇温速度を2℃/分」という条件で実施された。なお、昇温開始時点における加工液の温度は、20℃であった。
【0094】
この実施例においては、加工液の温度が約45〜50℃の間にあるときに、加工液が清澄化したことが確認され、「粒子分散液から非水溶性樹脂と光触媒の複合体の析出が完了したこと」とともに「その複合体がアクリル繊維へ固着することが完了したこと」を確認できた。
【0095】
こうして、粒子分散液をアクリル繊維に浸漬し且つ加熱する工程が実施され、機能性粒子たる光触媒をアクリル繊維に担持させてなる繊維(光触媒担持繊維)が得られた。
【0096】
得られた光触媒担持繊維を用い、実施例1と同様に光触媒機能発現可能性の確認が行われた。得られた光触媒担持繊維に担持された光触媒が光触媒機能を発現する状態にあることが確認された。
【0097】
<紡績性試験>
得られた光触媒担持繊維を用い、次のように紡績性の試験を実施した。
【0098】
得られた光触媒担持繊維を水洗し、その後、光触媒担持繊維をシリコーンゴムの分散液(信越化学工業株式会社、ポロンMF56)の液に浸漬し(処理液中濃度3g/L)、遠心脱水方式で含水率25%の光触媒担持繊維とした後、光触媒担持繊維を110℃に加熱して、乾燥させた。次いで、乾燥させた光触媒担持繊維を小型カード機にセットし、光触媒担持繊維のカーディングを行った。光触媒担持繊維のカーディングを実施はスムーズに行われ、光触媒担持繊維が一般糸と同様なカード性を示すことが目視にて確認された。
【0099】
<染色性試験>
紡績性試験で得られたカーディングされた光触媒担持繊維を用い、次のように紡績性の試験を実施した。
【0100】
また、カード機を通した物をカヤクリルブルー(カチオン染料、日本化薬(株)製)を用いて染色性の比較を常法(色見本サンプルとの目視による比較評価)に従って行った結果、未処理の物と同様な染色性であった。
【0101】
実施例3
<繊維の準備>
実施例1と同様に、機能性粒子を担持させる繊維として、アクリル繊維(2.2dtx、長さ51mm)(三菱レイヨン製)を準備した。
【0102】
<粒子分散液の準備>
組成物(I)は、「実施例1で成分(B)として使用したVCT01にかえてテグッサ社製の酸化チタン(P20)を用いられ、成分(A)と成分(B)を成分(C)に添加してなる混合液にジルコニアビーズ(粒子径5μ)500gを併用してビーズミルにて分散させた」ほかについては実施例1と同様にして、調整された。
【0103】
さらに、実施例1と同様にして、組成物(II)とポリアミン溶液が調整された。
【0104】
そして、上記のように調整された組成物(I)と組成物(II)とで粒子分散液が調製された。このとき、実施例3の粒子分散液おいて、組成物(I)と組成物(II)の組成比率は実施例1と同じにされた。
【0105】
調製された繊維と粒子分散液とポリアミン溶液を用い、実施例1と同様にして、光触媒担持繊維を得た。
【0106】
得られた光触媒担持繊維を用い、実施例1と同様に、「機能性粒子の担持状態の確認」および「機能性粒子の機能発現可能性の確認」が実施され、アクリル繊維に均一に光触媒が担持されていることが確認され、光触媒が光触媒機能を発現可能な状態になっていることが確認された。
【0107】
実施例4
実施例2のプラスコートZ561に変えて、プラスコートZ446(互応化学工業社製、水溶性ポリエステル樹脂 固形分25重量%)を用いたほかは、実施例2と同様にして光触媒担持繊維を得た。得られた光触媒担持繊維について、紡績性試験、染色性試験を行った。紡績性試験、染色性試験は、実施例2と同様の方法で実施された。この光触媒担持繊維が、実施例2の結果と同程度の性能を有する光触媒性繊維であることが確認された。
【0108】
実施例5
実施例1のMD1245に変えて、シリコーンゴムエマルジョンとしてKM2002T(信越化学社製、水系シリコーンゴムエマルジョン 有効成分40%)を用いたほかは、実施例1と同様にして光触媒担持繊維を得た。得られた光触媒担持繊維について、実施例1と同様の方法で、機能性粒子の担持状態の確認と、機能性粒子の機能発現可能性の確認を行った。この光触媒担持繊維が、実施例1の結果と同程度の担持状態と機能発現可能性を備えるものであることが確認された。また、得られた光触媒担持繊維について、紡績性試験、染色性試験を行った。紡績性試験、染色性試験は、実施例2と同様の方法で実施された。この光触媒担持繊維が、実施例2の結果と同程度の性能を有する光触媒性繊維であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)と成分(B)を成分(C)に分散させてなる組成物(I)と、
(A);水に溶解されて溶解液を形成可能であり、且つ、該溶解液を加熱下でゲル化させることが可能である分散剤
(B);機能性粒子
(C);水
下記成分(D)にてなる組成物(II)とでなる粒子分散液に対して、
(D);自己乳化型であり加熱下でポリアミン(P)と反応して水不溶化するポリエステル樹脂と、水とを含んでなるポリエステル樹脂の分散液
繊維又は繊維製品を浸漬して且つ粒子分散液にポリアミン(P)を添加した後に加熱することにより、繊維又は繊維製品に機能性粒子を担持させることを特徴とする機能性粒子の担持方法。
【請求項2】
組成物(II)に用いられる成分(D)は、N-メチルビス-3-メチルプロピルアミン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、3.9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンからなる群より選ばれたポリアミンと、自己乳化型であり加熱下で前記ポリアミンと反応して水不溶化するポリエステル樹脂と、水とを含んでなる分散液である、請求項1に記載の担持方法。
【請求項3】
組成物(II)には、下記成分(E)が更に含まれている、請求項1または2に記載の機能性粒子の担持方法。
(E);縮合反応硬化型のシリコーンゴムと、水とを含んでなるシリコーンゴムの分散液
【請求項4】
下記成分(A)と成分(B)を成分(C)に分散させてなる組成物(I)と、
(A);水に溶解されて溶解液を形成可能であり、且つ、該溶解液を加熱下でゲル化させることが可能である分散剤
(B);機能性粒子
(C);水
下記成分(E)にてなる組成物(III)とでなる粒子分散液に対して、
(E);縮合反応硬化型のシリコーンゴムと、水とを含んでなるシリコーンゴムの分散液
繊維又は繊維製品を浸漬し且つ加熱することにより、繊維又は繊維製品に機能性粒子を担持させることを特徴とする機能性粒子の担持方法。
【請求項5】
組成物(I)には、成分(A)として、ポリアクリル酸アンモニウムが用いられている、請求項1から4のいずれかに記載の担持方法。
【請求項6】
組成物(I)には、成分(B)として、可視光線をうけて触媒活性を生じる機能を有する金属酸化物微粒子でなる光触媒が用いられている、請求項1から5のいずれかに記載の担持方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の担持方法にて得られる繊維又は繊維製品。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の担持方法にて機能性粒子を担持された後、アルカリ洗浄されて組成物(I)の成分(A)を除去された後、染色を施されてなる繊維又は繊維製品。

【公開番号】特開2010−47862(P2010−47862A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212152(P2008−212152)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】