説明

繊維強化エラストマー物品

複数の粘着性高分子繊維と組合せたエラストマーラテックス支持体から製造した物品。上記繊維は、密着マットを形成して、少なくとも部分的に互いに接着して、繊維強化エラストマー物品を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、繊維強化エラストマー物品に関する。さらに詳細には、本発明は、複数の繊維で補強した天然ゴムラテックスまたは合成ポリマーラテックス物品に関する。そのような物品の例としては、手術、クリーンルーム、作業および/または産業用の手袋があり、付与された強度、快適性、皮膚保護および無粉末状態が望ましい特徴である。
【背景技術】
【0002】
繊維強化エラストマー物品の製造においては多くの従来技術の仕様が存在する。多くは、コットンフロックのような繊維材料からなる内部ライニングを組み入れている。典型的なフロックは微分割した粉砕繊維状粒子からなり、該フロック粒子を、例えば、接着剤被覆裏張り材(例えば、手袋の外部シェル)上にスプレーすることによってライニングとして適用している。
1つの例としては、フロックからなる内部手袋ライニングは、平滑で快適な感触を与え、手を衝撃から和らげ、汗を吸収し且つ手の乾燥を保ち、かさばることなく中度の熱および低温を遮断し、手袋の着脱を容易にし、さらに、手袋の作業者受入れ性を増大させるという他の利点も有する。
綿フロック(または繊維材料のような)からなる内部ライニングを有する手袋の欠点は、次のように多面的である:1) 繊維およびその粒子は、手袋着用者が着ている作業衣または室内着の袖表面による磨耗により或いは手袋着用者の手による磨耗により、内部ライニングから離脱するようになり得、これらの離脱粒子は、とりわけ手袋を着用者の手から取り外すときに、手袋から移動する;2) 綿短繊維のような繊維類は弾性体ではなく、従って、ラテックス、ニトリル等から製造した使い捨て手袋上にコーティーングするのは困難である;3) 現存の商業なフロッキング方法は、接着剤を使用して綿短繊維を粘着性にしており、この方法は本質的にバッチ方式であり、繊維をポリマー層中に効率的に埋込むことはできない;4) 現在の商業的なフロック型手袋は、ある場合、粉末を使用して着用性および快適性を高めているが、これは、小粒子アレルギーおよび健康上の懸念故に、消費者において良好には受入れられてない。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、複数の粘着性不織布繊維と組合せたエラストマーラテックス支持体製の物品に関する。該繊維は、粘着性マットを形成し且つ少なくとも部分的に相互に接着して、繊維強化エラストマー物品を形成している。そのような物品は、繊維をエラストマー支持体中に埋込んで或いは少なくとも部分的に埋込んで、繊維を含まない同様な物品に比較したとき、物品強度を増強するようになる。
本発明の1つの局面においては、エラストマー物品は、複数のエラストマー繊維を注入した(impregnated)エラストマーラテックス支持体を含有する。上記繊維の繊維長は、その幅よりも実質的に長い。上記繊維は、互いに絡ませ合い、上記エラストマーラテックス支持体の本体中および表面上に部分的に溶融させる。ある場合には、上記繊維は、上記エラストマーラテックス支持体を部分的に覆う層を形成し得る。上記繊維層は上記エラストマーラテックス支持体よりも厚くあり得、上記繊維層はエラストマーラテックス支持体よりも薄くあり得るが、上記繊維層は、任意の厚さで且つ互いに対し任意の望ましい割合であり得る。
そのような物品は、上記エラストマーラテックス支持体上に付着(deposition)させる前に、平均直径において概して約10ミクロンよりも小さい繊維を有し得る。しかしながら、一旦上記エラストマーラテックス支持体上に付着させると、上記繊維は、上記エラストマーラテックス支持体と繊維間に形成された界面において(across an interface)約20ミクロンに平坦化され、拡散する(flatten and spread)。このタイプの物品は、とりわけ、手袋、コンドーム、ブーツ、失禁用パッド、ブランケットおよび衣料を製造するのに有用であることを見出し得る。他の物品も同様に製造し得る。
【0004】
本発明のもう1つの局面においては、複数の粘着性不織布繊維と組合せたエラストマーラテックス支持体を有するエラストマー物品を製造する。上記繊維は、密着マットを形成し、相互にさらにまた支持体に少なくとも部分的に接着する。そのような物品は、上記繊維によって完全にコーティーングされた少なくとも1表面を有し得、上記エラストマーラテックス支持体を繊維の密着マット内部に完全に包むことができ、上記エラストマーラテックス支持体内部に少なくとも部分的に注入された繊維を有し得、或いはこれら可能性ある配置各々の状態を有し得る。
もう1つの局面においては、上記エラストマー物品は、天然ゴム、合成ゴム、ニトリルポリマー、ネオプレンポリマーから製造し得る。上記繊維は、メルトブローン繊維、ナノ繊維または他の高分子繊維であり得る。得られた物品は、多孔性を示し得る。エラストマー支持体上へ繊維を付着させることにより製造した上記多孔質構造体は、トリートメント(処理剤)を含有し且つ放出可能であり得る。
これらおよび他の目的は、本明細書において開示し、特許請求する方法によって達成する。以下、本発明を、図面において例示する実施態様を参照してさらに詳細に説明する。
本発明の最良の形態を含み、当業者に向けられる本発明の十分且つ実施可能な内容を、添付図面に関連して、本明細書の残余においてさらに詳細に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
一般に、エラストマー物品、例えば、手袋は、“フォーマー(巻型)”と称するモールドにおいて形成させる。手袋の場合、フォーマーは手の形状である。フォーマーは、ガラス、金属、磁器等のような任意の適切な材料から製造し得る。フォーマー表面は、製造すべきエラストマー物品表面の少なくとも一部を構成する。当業者であれば、本説明は、単なる例としての実施態様の説明であって、本発明のより広い局面を限定するものではないことを理解すべきである。従って、一般に、本発明のそのような例示としてのエラストマー物品は、手袋を含む。例示および説明を容易にするため、本明細書は、多くの場合、本発明を手袋または手袋類として参照する。しかしながら、本発明は、手袋類のみに限定されず、より広いカテゴリーのエラストマー物品も同様に包含するものと理解すべきである。それはそれとして、手袋の場合、構成表面は、外表面と内表面を含む。内表面は、一般に、着用者接触面である。
プロセスにおいては、フォーマーを予熱オーブン内に搬送して、存在し得る水分を蒸発させる。その後、フォーマーを、凝固剤、粉末源、界面活性剤および水を典型的に含有する浴内に浸漬する。凝固剤は、ポリマーラテックスがフォーマー上に付着するのを可能にするカルシウムイオン(例えば硝酸カルシウムからの)を含有し得る。粉末は、完成した手袋のフォーマーからの剥離を助ける炭酸カルシウム粉末であり得る。界面活性剤は、増強された湿潤性をもたらし、メニスカス形成およびフォーマーと付着ラテックス間の、とりわけ袖口領域における空気内包を回避させる。しかしながら、Joungに付与された米国特許第4,310,928号に開示されている凝固剤のような任意の適切な凝固剤組成物を使用してもよく、該米国特許は、本明細書にその全体を参考として合体させる。残留熱は、凝固混合物中の水を蒸発させて、例えば、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム粉末および界面活性剤をフォーマー表面上に残存させる。凝固法を本明細書において説明するけれども、他の方法を使用して、凝固剤を必要としない本発明の物品を形成させ得ることを理解すべきである。例えば、ある実施態様においては、溶媒系方法を使用し得る。
【0006】
その後、フォーマーをコーティーングした時点で、フォーマーをポリマー浴内に浸漬する。本発明におけるポリマー浴は、一般に、天然ゴムラテックスまたは合成ポリマーラテックスである。上記浴内に存在するポリマーは、手袋本体を形成するエラストマー物質を含む。ある実施態様においては、エラストマー材料またはエラストマーは天然ゴムを含み、この天然ゴムは、配合天然ゴムラテックスとして供給し得る。即ち、上記浴は、例えば、配合天然ゴムラテックス、安定剤、酸化防止剤、硬化活性化剤、有機促進剤、加硫剤等を含有し得る。他の実施態様においては、エラストマー物質は、ニトリルブタジエンゴム、とりわけカルボキシル化ニトリルブタジエンゴムであり得る。他の実施態様においては、エラストマー材料は、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、合成イソプレン、クロロプレンゴム、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、ポリウレタンまたはそれらの混合物であり得る。
安定化剤は、リン酸塩タイプの界面活性剤を含み得る。酸化防止剤は、フェノール系、例えば、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)であり得る。硬化活性化剤は、酸化亜鉛であり得る。有機促進剤は、ジチオカルバメートであり得る。加硫剤は、イオウまたはイオウ含有化合物であり得る。屑片形成を回避するために、安定剤、酸化防止剤、活性剤、促進剤および加硫剤を、ボールミルを使用して先ず水中に分散させ、その後、ポリマーラテックスと混合し得る。
浸漬工程においては、フォーマー上の凝固剤が、幾分かのエラストマーを局所的に不安定とならしめ、フォーマー表面上に凝固させる。エラストマーは、凝固して、凝固剤組成物中に存在する粒子を凝固中のエラストマー表面において捕捉する。繊維を含まないエラストマー物品を製造する場合、通常は、フォーマーを上記浴から引き出し、凝固層が完全に凝固するのを可能にし、それによって1つの例として手袋を形成させる。しかしながら、本発明の1つの実施態様においては、この時点で、複数の繊維を、凝固中のエラストマー表面上に付着させる。
【0007】
繊維強化エラストマー物品を製造するのに、任意の多くの繊維タイプが、本発明において有用であり得ることを見出している。繊維または繊維材料は、メルトブローンおよびスパンボンド型のような天然繊維、合成繊維およびこれらの混合物含み得る。適切な繊維としては、溶融紡糸フィラメント、ステープル繊維、パルプ繊維、溶融紡糸多成分フィラメント等がある。さらにまた、上記繊維は、エラストマー成分のような各種他の材料も含み得る。合成繊維またはフィラメントは、当該技術において周知のように、中空または固形、線形または波形、単一成分、コンジュゲートまたは二構成成分繊維またはフィラメント、並びにそのような繊維および/またはフィラメントのブレンドまたは混合物のような、任意の適切な形態を有し得る。
本明細書において使用するとき、用語“二構成要素繊維(biconstituent fibers)”とは、同じ押出機からブレンドとして押出された少なくとも2種のポリマーから形成されている繊維を称する。二構成要素繊維は、繊維の断面積において比較的一定に位置した明確な領域内に配置された各ポリマー成分を有するものではなく、また、各ポリマーは繊維の長さ全体に沿って通常連続ではない、代りに、各ポリマーは、ランダムに発端、終端する微小繊維またはプロト微小繊維を通常形成する。二構成要素繊維は、マルチ構成要素繊維とも称する。この一般的タイプの繊維は、例えば、Gessnerに付与された米国特許第5,108,827号および第5,294,482号に記載されている。また、二構成要素繊維は、John A. MansonおよびLeslie H. Sperlingによる教科書“Polymer Blends and Composites”(著作権、1976年、Plenum Publishing社、Plenum Publishing Corporation of New York事業部、IBSN 0-306-30831-2)の273〜277頁においても説明されている。
【0008】
本明細書において使用するとき、用語“コンジュゲート繊維”とは、別々の押出機から押出されるが一緒に紡糸して1つの繊維を形成する少なくとも2種のポリマーから形成されている繊維を称する。また、コンジュゲート繊維は、多成分(multicomponent)または二成分(bicomponent)繊維とも称する。各ポリマーは、コンジュゲート繊維が単成分繊維であり得るとしても、通常は互いに異なる。各ポリマーはコンジュゲート繊維の断面において実質的に一定に位置した明確な領域内に配置され、また、各ポリマーはコンジュゲート繊維の長さに沿って連続的に延びている。そのようなコンジュゲート繊維の形状は、例えば、1つのポリマーが他のポリマーによって囲まれているシース/コア配列であり得、或いは並行配列、パイ状配列または“海島状(island-in-the-sea)”配列であり得る。コンジュゲート繊維は、Kaneko等に付与された米国特許第5,108,820号、Krueger等に付与された米国特許第4,795,668号、Strack等に付与された米国特許第5,336,552号に教示されている。また、コンジュゲート繊維は、Pike等に付与された米国特許第5,382,400号にも教示されており、2種(またはそれ以上)のポリマーの膨張と収縮の差速を使用することによる繊維内に波形を生じさせるのに使用し得る。また、波形繊維は、機械的手段およびドイツ特許DT 25 13 251 AI号の方法によっても製造し得る。二成分繊維においては、各ポリマーは、75/25、50/50、25/75の比率または任意の他の所望する比率で存在し得る。また、上記繊維は、Hogle等による米国特許第5,277,976号、Hillに付与された米国特許第5,466,410号、Largman等に付与された米国特許第5,069,970号、Largman等に付与された米国特許第5,057,368号に記載された形状のような形状も有し得、これらの米国特許は、慣用的でない形状を有する繊維を開示している。
本明細書において使用するとき、用語“フィラメント”とは、例えば、1000またはそれ以上の比のような、高長さ対直径比を有する一般的に連続したストランドを称する。
【0009】
本明細書において使用するとき、“メルトブローン繊維”とは、溶融熱可塑性材料を、複数の微細な、通常は円形のダイ毛管を通して、収束用の高速の通常は高温ガス(例えば、空気)流中に溶融スレッドまたはフィラメントとして押出し、このガス流が熱可塑性材料のフィラメントを減衰させてその直径を低下させる(マイクロファイバー直径までであり得る)ことによって形成された繊維を称する。その後、メルトブローン繊維は、上記高速ガス流に担持させて収集表面上に付着させ、ランダムに分配されたメルトブローン繊維のマットまたはウェブを形成させる。そのような方法は、例えば、Butin等に付与された米国特許第3,849,241号に開示されている。メルトブローン繊維は、連続または不連続であり得、一般に平均直径で10ミクロンより小さく、収集表面に付着させたときに一般に粘着性であるマイクロファイバーである。
本明細書において使用するとき、“スパンボンド繊維”とは、溶融熱可塑性材料を、スピナレットの複数の微細な、通常は円形のダイ毛管を通してフィラメントとして押出し、その後、押出したフィラメントの直径を、例えば、Appel等に付与された米国特許第4,340,563号、Dorschner等に付与された米国特許第3,692,618号、Matsuki等に付与された米国特許第3,802,817号、Kinneyに付与された米国特許第3,338,992号、Kinneに付与された米国特許第3,341,394号、Hartmanに付与された米国特許第3,502,763号およびDobo等に付与された米国特許第3,542,615号によるようにして、急速に低下させることによって形成された小直径繊維を称する。スパンボンド繊維は、収集表面に付着させたときに一般に粘着性ではない。スパンボンド繊維は、一般に連続繊維であり、その平均直径は7ミクロンよりも大きく、とりわけ、約10〜40ミクロン(少なくとも10本のサンプルからの平均)を有する。
【0010】
説明したように、1つの実施態様においては、メルトブローン繊維を、フォーマー上で凝固しているときの湿潤エラストマー材料に適用する。メルトブローン繊維は、変動濃度で適用し得る、即ち、物品のある領域を、多めの量のメルトブローン繊維の適用に供し得る。手袋の場合、追加のメルトブローン繊維を手掌、指領域および/または袖口に適用するのが望ましくあり得る。これらの領域は、高い度合の磨耗を典型的に被り、高い引裂き潜在性を有する。偶然の一致として、従来技術のフロッキング適用法は、通常、この製造段階において実施されている。しかしながら、フロッキングの適用は、全く異なる理由により、この段階においてなされている。従来技術の場合、フロッキングは、フロッキングが支持体に接着するのに最も適しているのがこの段階であるという理由で、まだ湿潤しているエラストマー支持体に加えられる。対照的に、本発明においては、メルトブローンは、適用時において粘着性である、即ち、メルトブローン繊維は、部分的に溶融させるのにまだ依然として十分に高温にある。従って、メルトブローン繊維は、支持体にまた相互に接着し、それによってランダムに配向した繊維の密着マットを形成する。
本発明のもう1つの局面においては、サブミクロン範囲の小繊維、例えば、(T. H. Grafe et al., Nonwovens in Filtration, Fifth International Conference Stuttgart, Germany, March 2003) において検討されているような、電気紡糸ナノファイバーも本発明においても適している。ナノファイバーは、より大きめの繊維と比較して、はるかに微細なウェブネットワークを形成して支持体と繊維層間の接触面積をさらに増大させ得るようにすることができる。また、ナノファイバーをベースとするそのような繊維層は、大きめの繊維よりも薄めで且つより快適な繊維層を提供し得ることが考えられる。さらに、ナノファイバーは、濾過産業従事者にとっては既知であるように、より良好な濾過満足度を提供することから、より良好な化学保護を提供し得る。
繊維を適用した時点で、フォーマーをポリマー浴に1回以上再度浸漬して、物品が所望の厚さを達成するようにし得る。物品を浸漬する毎に、必要であれば追加の繊維を適用してもよく或いは適用しなくてもよい。幾つかの手袋の実施態様においては、上記の厚さは、約0.025mm(0.001インチ)〜約0.102mm(インチ)ないし約0.305mm(0.012インチ)の範囲であり得る。産業用手袋として使用する手袋のような他の実施態様においては、その厚さは、さらに有意に厚くあり得る。ある実施態様においては、その厚さは、約0.4mmよりも厚くあり得、事実、約0.5mmよりも厚くあり得る。さらに他の実施態様においては、その厚さは、上記よりも幾分大きくあり得る。従って、約1mmないし約2mm以上のような厚さが意図される。
【0011】
他の層を、さらなる浸漬工程を含ませることによって形成させ得る。さらにまた、追加の繊維も、同様に浸漬工程間で加え得る。そのような浸漬工程および/または繊維適用は、さらなる特徴を物品に持たせるのに使用し得る。
物品を製造した後、シーラーポリマー浴中への最終シール浸漬を、必要に応じて実施し得る。また、シーラーポリマーは、物品自体に塗布してもよい。シーラーポリマーは、繊維をエラストマー物品上の所定の位置にさらに固定するのに有用であることが判明している。また、シーラーは、手袋をフォーマーから剥離または取外すときのピリングを防止するようにも機能し得る。ピリングとは、手袋をフォーマーから取外すときの繊維コーティーング表面での摩擦により、手袋上に繊維玉が形成され或いは不良物が形成され、その後、手袋から離脱する状態を称する。例としては、シーラーポリマーは、例えば、Reichhold社からの約2%Synthemul液のようなカルボキシル化アクリルポリマーエマルジョンがあり得る。さらに、繊維適用後の任意の時点並びに物品加工中の任意の時点において、フォーマーは、空気流、或いはある種の他の流体、典型的には加圧ガスまたは、例えば、送風機からのガスの移動流に供し得る;これらの流体は、存在し得る過剰のまたは緩んだ繊維をフォーマーから吹払うように機能する。
1つの別の実施態様においては、繊維は、フォーマーをエラストマー浴中に浸漬する前に、直接フォーマーに適用してもよい。この実施態様は、得られる物品を、繊維を凝固中のエラストマーに適用する上記実施態様から製造した物品と比較したときに、繊維をエラストマー支持体中により深く埋込む。勿論、繊維コーティーングと繰返しの交互浸漬は、これら実施態様の各々の特徴を示す物品を提供することを理解すべきである。
【0012】
いずれにせよ、物品をフォーマーから剥ぎ取る前の、物品をポリマー浴中に浸漬し所望量の繊維を適用した時点で、コーティーングしたフォーマーを、洗脱タンク中に浸漬し、このタンク内で、熱水を循環させて、残留硝酸カルシウム、天然ゴムラテックス中に含有されているタンパク質、および合成ポリマーラテックスからの過剰の加工化学薬品のような水溶性成分を除去し得る。この洗脱工程は、一般に、約49℃(120°F)の水温で約12分間続く。その後、繊維強化物品をフォーマー上で乾燥させて固化し、この物品をさらに安定化させる。各種の条件、工程および材料を使用してそのような物品を形成させ得ることを理解すべきである。
ラテックスエラストマーに関しては、物品、例えば、手袋を、その後、硬化ステーションに送り、エラストマーを、典型的にはオーブン内で加硫させる。硬化ステーションは、フォーマー上のコーティーング内の全ての残留水分を最初に蒸発させ、その後、高温加硫へと進む。乾燥は約85℃〜約95℃の温度で生じ得、加硫は約110℃〜約120℃の温度で生じ得る。例えば、手袋は、約115℃の温度の単一オーブン内で約20分間加硫させ得る。また、オーブンを4つの異なるゾーンに分割し、フォーマーを増分温度の各ゾーンに通して搬送し得る。例えば、オーブンは、4つのゾーンを有し、第1の2つのゾーンは乾燥専用であり、第2の2つのゾーンは主として加硫用である。各々のゾーンは、例えば、約80℃の第1ゾーン、約95℃の第2ゾーン、約105℃の第3ゾーン、および約115℃の最終ゾーンという若干高い温度を有し得る。各ゾーン内のフォーマーの滞留時間は、約10分であり得る。フォーマー上のラテックスコーティーングに含有させた促進剤と加硫剤を使用してエラストマーを架橋させる。加硫剤によって種々のエラストマーセグメント間にイオウブリッジを形成させ、促進剤は迅速なイオウブリッジ形成を促進させるのに使用する。
硬化させた時点で、フォーマーを、ストリッピングステーションに移行させ、手袋をフォーマーから取外す。ストリッピングステーションは、フォーマーからの手袋の自動または手動取外しを含み得る。例えば、1つの実施態様においては、手袋を手で取外し、フォーマーから剥ぎ取ったときに裏返す。この方法での手袋裏返しにより、フォーマー上の手袋の外面が手袋の内部表面になる。手袋の裏返しを生じない直接空気回収方法のような、フォーマーからの任意の手袋取外し方法も使用し得ることを理解すべきである。
【0013】
その後、固化手袋または複数の固化手袋を、手袋の少なくとも1表面への1種以上のトリートメントの適用のような種々の形成後工程に供し得る。例えば、ある実施態様においては、手袋をハロゲン化して内部表面の粘着性を減じ得る。ハロゲン化(例えば、塩素化)は、次のような任意の適切な方法によって実施し得る:(1) 塩素ガスの水混合物への直接注入、(2) 水中での高密度漂白用粉末と塩化アルミニウム混合、(3) 塩素化水を生成させる食塩水電気分解、および(4) 酸性化漂白剤。そのような方法の例は、Kavalirに付与された米国特許第3,411,982号、Agostinelliに付与された米国特許第3,740,262号、Homsy等に付与された米国特許第3,992,221号、Momoseに付与された米国特許第4,597,108号;およびMomoseに付与された米国特許第4,851,266号、Littleton等に付与された米国特許第5,792,531号に開示されており、これら米国特許は、各々、参考としてその全体を本明細書に合体させる。1つの実施態様においては、例えば、塩素ガスを水流に注ぎ込み、手袋を含んでいるクロリネーター(密閉容器)中に供給する。塩素濃度を変化させて、塩素化度を調整し得る。塩素濃度は、典型的には少なくとも約100百万分率(ppm)であり得る。幾つかの実施態様においては、塩素濃度は、約200ppm〜約3500ppmであり得る。他の実施態様においては、塩素濃度は、約400ppm〜約1200ppmであり得る。さらに他の実施態様においては、塩素濃度は、約800ppmであり得る。また、塩化工程時間を調整しても塩素化度を変えることができ、その時間は、例えば、約1〜約20分の範囲であり得る。幾つかの実施態様においては、塩化時間は、約10分であり得る。
その後、まだクロリネーター内ある間に、塩素化手袋(1個以上)は、およそ室温の水道水で洗浄し得る。この洗浄サイクルは、必要に応じて繰返し得る。その後、手袋をタンブリングさせて過剰の水を排出する。
【0014】
その後、潤滑剤組成物を手袋に添加し得る。例えば、潤滑剤組成物は、ハロゲン化を実施する場合のクロリネーター中に添加し、その後、約5分間続くタンブリング工程を実施し得る。しかしながら、潤滑剤は、ハロゲン化の有無にかかわらず、添加し得ることを理解すべきである。いずれにしても、潤滑剤は、内部表面の少なくとも1部上で層を形成して、手袋の着用性をさらに向上させる。1つの実施態様においては、この潤滑剤は、シリコーンまたはシリコーン系成分を含有し得る。本明細書において使用するとき、用語“シリコーン”は、繰返しのケイ素-酸素主鎖を有する広い群の合成ポリマーを一般に称し、限定するものではないが、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、エーテル、ポリエーテル、アルデヒド、ケトン、アミド、エステルおよびチオール基からなる群から選ばれた水素結合性官能基を有するポリジメチルシロキサンおよびポリシロキサン類がある。幾つかの実施態様においては、ポリジメチルシロキサンおよび/または修飾ポリシロキサンを、本発明に従うシリコーン成分として使用し得る。例えば、本発明において使用し得る幾つかの適切な修飾ポリシロキサンとしては、限定するものではないが、フェニル修飾ポリシロキサン、ビニル修飾ポリシロキサン、メチル修飾ポリシロキサン、フッ素修飾ポリシロキサン、アルキル修飾ポリシロキサン、アルコキシ修飾ポリシロキサン、アミノ修飾ポリシロキサンおよびこれらの混合物がある。本発明において使用し得る商業的に入手可能なシリコーン類の例としては、Dow Corning社(ミシガン州ミッドランド)から入手できるDC 365、およびGE Silicones社(ニューヨーク州ウォーターフォード)から入手できるSM 2140がある。しかしながら、潤滑作用を付与し得る任意のシリコーンを使用して手袋の着用特性を向上させ得ることを理解すべきである。その後、潤滑剤溶液は、クロリネーターから排出させ、所望であれば再使用し得る。潤滑剤組成物は、形成工程における後の段階においても適用し得、浸漬(dipping)、スプレー、浸漬(immersion)、プリンティング、タンブリング等のような任意の方法を使用して適用し得る。
その後、上記コーティーング手袋をタンブリング装置または他の乾燥器内に入れて、約20℃〜約80℃(例えば40℃)で約10〜約60分間(例えば40分)乾燥し得る。その後、上記手袋を裏返して、外部表面を露出し、その後、これを、約20℃〜約80℃(例えば40℃)で約20〜約100分間(例えば60分)乾燥させ得る。
上述した各種工程の後、手袋を裏返しし(必要に応じ)、エラストマー物品、例えば手袋の外表面を露出し得る。その後、任意のトリートメントまたはトリートメント混合物を手袋の上記外表面に適用し得る。個々の手袋を処理してもよく、或いは複数の手袋を同時に処理してもよい。同様に、任意のトリートメントまたはトリートメント混合物は、手袋の内部表面にも適用し得る。例えば、浸漬、スプレー、浸漬、プリンティング、タンブリング等のような、任意の適切な処理方法を使用し得る。
【0015】
上述したような、物品に適用し得る合成繊維に関しては、これらの合成繊維は、種々の熱可塑性ポリマーから形成させ得、用語“熱可塑性ポリマー”とは、熱に暴露したときに繰返し軟化し、そして、周囲温度に冷却したときにその元の状態に実質的に戻る長鎖ポリマーを称する。繊維および/またはフィラメントについて本明細書において使用するとき、用語“ポリマー”は、限定するものではないが、一般に、ホモポリマー類;例えば、ブロック、グラフト、ランダムおよび交互コポリマーのようなコポリマー類;ターポリマー類等;並びにこれらのブレンドおよび修飾物がある。本明細書において使用するとき、用語“ブレンド”とは、2種以上のポリマー混合物を意味する。さらにまた、特に断らない限り、“用語”ポリマー”は、上記分子の全ての可能性ある幾何学構造を含む。これらの構造としては、限定するものではないが、アイソタクチック、シンジオタクチック、およびランダム対称がある。
熱可塑性物質の例としては、限定なしに、ポリ塩化(ビニル)、ポリエステル、ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ(ビニル)アルコール、カプロラクタム、およびこれらのコポリマー類;並びに、弾性ポリオレフィンのような弾性ポリマー類、コポリエーテルエステル、ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー、エチレン酢酸ビニル(EVA);コポリ(スチレン/エチレン-ブチレン)、スチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-スチレン、スチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-スチレン、(ポリスチレン/ポリ(エチレン-ブチレン)/ポリスチレン、ポリ(スチレン/エチレン-ブチレン/スチレン)のような、一般式A-B-A'またはA-Bを有するブロックコポリマー類;、A-B-A-Bテトラブロックコポリマー等がある。
【0016】
多くのポリオレフィン類が繊維製造用に入手可能であり、例えば、Dow Chemical社のPE XU 61800.41線状低密度ポリエチレン("LLDPE")および25355または12350高密度ポリエチレン("HDPE")のようなポリエチレン類は、そのような適切なポリマーである。線維形成性ポリプロピレン類としは、Exxon Chemical Company社のEscorene(登録商標) PD 3445ポリプロピレンおよびMontell Chemical社のPF-304およびPF-015がある。多くの他の通常のポリオレフィン類も商業的に入手可能であり、ポリブチレン等がある。
ポリアミド類およびその合成方法の例は、Don E. Floydによる“Polymer Resins”(米国議会図書館目録番号66-20811、ニューヨークのReinhold Publishing社、1966年)において見出し得る。とりわけ商業的に有用なポリアミド類は、ナイロン-6、ナイロン6,6、ナイロン-11およびナイロン-12である。これらのポリアミドは、なかんずく、サウスカロライナ州サムターのEmser Industries社(Grilon(登録商標)およびGrilamid(登録商標)ナイロン)、ニュージャージー州グレンロックのAtochem社ポリマー事業部(Rilsan(登録商標)ナイロン)、ニューハンプシャー州マンチェスターのNyltech社(グレード2169、ナイロン6)、およびケンタッキー州ヘンダーソンのCustom Resins社(Nylene 401-D)のような多くの供給元から入手できる。
【0017】
上述したように、ステープル繊維を加え得る。幾つかの実施態様においては、ステープル繊維は、物品の強度、嵩、柔軟性および平滑性を増大させるのに使用し得る。ステープル繊維としては、例えば、各種ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、綿繊維、レーヨン繊維、非木材植物繊維、およびこれらの混合物がある。一般に、ステープル繊維は、パルプ繊維よりも典型的に長い。例えば、ステープル繊維は、典型的には、5mm以上の繊維長を有する。
また、本発明において使用する繊維は、カール化または波形化させ得る。繊維は、化学薬品を繊維に添加するか或いは繊維を機械的加工に供することによってカール化または波形化させ得る。カール化または波形化繊維は、繊維間の絡み合いおよび空隙容量をより多く発生させ、z方向に配向した繊維量をさらに増大させ、さらにまた、強度特性を増大させ得る。
説明したように、本発明において使用する合成繊維のタイプは、二成分繊維であり得る。二成分繊維は、限定するものではないが並行配列中、マトリックス-微小繊維配列(コアポリマーが複雑な断面形状を有する)中またはコアとシース配列中におけるような2種の材料を含有し得る繊維である。コアとシース配列においては、一般的に、シースポリマーは、コアポリマーよりも低い溶融温度を有して、繊維の熱結合を容易にする。例えば、コアポリマーは、1つの実施態様においては、ナイロンまたはポリエステルであり得、一方、シースポリマーは、ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなポリオレフィンであり得る。そのような商業的に入手し得る二成分繊維としては、Hoechst Celanese Company社から市販されている“CELBOND”繊維がある。
【0018】
合成繊維以外に或いはそれに加えて、パルプ繊維も物品に加え得る。使用するパルプ繊維は、加重平均長基準で、1mmよりも長い、とりわけ約2mm〜5mmの平均繊維長を有し得る針葉樹繊維であり得る。そのような繊維は、北方針葉樹クラフト繊維、セコイア繊維および松材繊維がある。また、リサイクル材料から得られた二次繊維も使用し得る。さらに、ユーカリ繊維のような広葉樹パルプ繊維も、本発明において使用し得る。
上述した繊維以外に、熱機械的パルプ繊維も基材ウェブに加え得る。熱機械的パルプとは、当業者に知られているように、通常のパルプよりも低い程度にはパルプ化工程中に加熱しないパルプを称する。熱機械的パルプは、硬質繊維を含有する傾向にあり、高めのリグニン量を有する。熱機械的パルプは、連続孔構造を生じさせ、それによって嵩および吸収性を増大させ且つ湿潤崩壊に対する抵抗性を改善するために、本発明の基材ウェブに加え得る。
パルプ繊維は、一般に、同時形成法として知られる工程において合成繊維と同時に加え得る。一般に、“同時形成(coform)”とは、他の材料を、ウェブが形成している間に、ウェブに加えるシュート近くに少なくとも1個のメルトブローンダイを配置させているプロセスを意味する。そのような他の材料としては、例えば、パルプ、超吸収性粒子、セルロースまたはステープル繊維がある。同時形成法は、Lauに付与された米国特許第4,818,464号およびAnderson等に付与された米国特許第4,100,324号に開示されており、これらの米国特許は、参考として本明細書に合体させる。
上述したように、種々の非弾性材料を含有する以外に、本発明において使用する繊維は、エラストマー成分も含有し得る。そのようなエラストマー成分を含有させることにより、物品は、ラテックス支持体と添加繊維の双方がエラストマー成分を含むので、改良された弾力性と強度を示すであろう。
【0019】
一般に、エラストマー特性を有することが当該技術において知られている任意の材料を、エラストマー成分として、本発明において使用し得る。適切なエラストマー樹脂としては、限定するものではないが、一般式A-B-A'またはA-B (式中、AおよびA'は、各々、ポリ(ビニルアレン)のようなスチレン系成分を含有する熱可塑性ポリマー末端ブロックであり;Bは、共役ジエンまたは低級アルケンポリマーのようなエラストマーポリマー中央ブロックである)を有するブロックコポリマー類がある。上記AおよびA'ブロックにおけるブロックコポリマーおよび本発明のブロックコポリマーは、線状、枝分れまたは放射状ブロックコポリマーを包含するものとする。この点、放射状ブロックコポリマーは、(A-B)m-Xで表示され得、Xは多官能性原子または分子であり、各(A-B)mは、Aが末端ブロックである形において、Xから放射している。放射ブロックコポリマーにおいては、Xは有機または無機の多官能性原子または分子であり、mはX中に元から存在している官能基と同じ価を有する整数である。Mは、通常少なくとも3であり、多くの場合4または5であるが、これらに限定されない。即ち、本発明においては、“ブロックコポリマー”なる表現、とりわけ、“A-B-A”および“A-B”ブロックコポリマーは、押出し得る(例えば、メルトブローイング法により)、ブロックの数に関して限定されない上述したようなゴム状ブロックおよび熱可塑性ブロックを有する全てのブロックコポリマーを包含するものとする。
エラストマー成分は、エラストマー(ポリスチレン/ポリ(エチレン-ブチレン)/ポリスチレン)ブロックコポリマーから調製し得る。そのようなエラストマーコポリマーの市販の例は、例えば、テキサス州ヒューストンのShell Chemical Company社から入手し得るKRATON(登録商標)物質として知られるエラストマーコポリマーである。KRATON(登録商標)ブロックコポリマーは、数種の配合物において入手し得、その多くは、米国特許第4,663,220号、第4,323,534号、第4,834,738号、第5,093,422号および第5,304,599号において特定し得、これらの米国特許は、参考として、本明細書に合体させる。
また、エラストマーA-B-A-Bテトラブロックコポリマーからなるポリマー類も、本発明の実施において使用し得る。そのようなポリマー類は、Taylor等に付与された米国特許第5,332,613号において説明されている。そのようなポリマーにおいては、Aは熱可塑性ポリマーブロックであり、Bは、実質的にポリ(エチレンプロピレン)モノマー単位に水素化されたイソプレンモノマー単位である。そのようなテトラブロックコポリマーの例は、テキサス州ヒューストンのShell Chemical Company社から商標KRATON(登録商標) G-1657として入手し得るスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)- スチレンポリ(エチレン-プロピレン)、即ち、SEPSEPエラストマーブロックコポリマーである。
【0020】
使用し得る他のエラストマー材料の例としては、例えば、B.F. Goodrich & Co. 社から商品名ESTANE(登録商標)としておよびMorton Thiokol Corp. 社からMORTHANE(登録商標)として入手し得るもののようなポリウレタンエラストマー材料;例えば、E. I. DuPont De Nemours & Company社から商標HYTREL(登録商標)として入手し得るもの、および以前はオランダ国アルンヘムのAkzo Plastics社から、現在はオランダ国シタルトのDSM社から入手し得るARNITEL(登録商標)として知られているもののようなポリエステルエラストマー材料がある。
他の適切な材料としては、ニュージャージー州グレンロックのELF Atochem社から商標PEBAX(登録商標)として入手し得るもののようなポリエステルブロックアミドコポリマーがある。そのようなポリマーの使用例は、Killianに付与された米国特許第4,724,184号、第4,820,572号および第4,923,742号において見出される。また、エラストマーポリマーとしては、エチレンと、例えば、酢酸ビニル、不飽和脂肪族モノカルボン酸およびそのようなモノカルボン酸のエステルのような少なくとも1種のビニルモノマーとのコポリマーもあり得る。これらのエラストマーポリマーおよびこれらのエラストマーポリマーからのエラストマー不織布ウェブの形成は、例えば、米国特許第4,803,117号に開示されている。コポリエーテルエステルのような熱可塑性コポリエステルエラストマーも使用し得る。そのようなコポリエステル材料の商業的例は、例えば、以前はオランダ国アルンヘムのAkzo Plastics社から、現在はオランダ国シタルトのDSM社から入手し得る入手し得るARNITEL(登録商標)として知られているコポリエステル、デラウェア州ウィルミントンのE. I. DuPont De Nemours社から入手し得るHYTREL(登録商標)として知られているコポリエステルである。ポリエステルエラストマー材料からのエラストマー不織布ウェブの形成は、例えば、Morman等に付与された米国特許第4,741,949号およびBoggsに付与された米国特許第4,707,398号に開示されている。
また、エラストマーオレフィンポリマーも、ポリプロピレン系ポリマーにおける商品名ACHIEVE(登録商標)、およびポリエチレン系ポリマーにおけるEXACT(登録商標)およびEXCEED(登録商標)としてテキサス州ベイタウンのExxon Chemical Company社から入手し得る。ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Company社は、ENGAGE(登録商標)として商業的に入手し得るポリマー類を有する。Exxon社は、彼等のメタロセン触媒技術を“単一部位”触媒と一般に称しており、一方、Dow社は、彼等の技術を品名INSIGHT(登録商標)として“強制(constrained)幾何学”触媒と称して、複数反応部位を有する伝統的なチーグラー・ナッタ触媒から区別している。
【0021】
以下、図1に関しては、本発明の1つの実施態様の走査電子顕微鏡写真、即ち、SEMを示している。この実施態様においては、エラストマー物品10の1部を示す。エラストマー物品10は、天然ゴムラテックス支持体12とその上に付着させた複数のエラストマーメルトブローン繊維14を含んでいる。
本発明において使用するメルトブローン繊維は、連続または不連続であり得る。メルトブローン繊維は、熱可塑性ポリマー材料をダイから押出すことによって通常に製造されて繊維またはフィラメントを形成している。溶融ポリマー繊維がダイを出たとき、加熱空気または流のような高圧流体により、溶融ポリマー繊維を減衰させて微細フィラメントを形成する。周囲の冷空気を上記高熱空気流中に誘導してフィラメントを冷却し、固化させる。その後、フィラメントをフォーマー上にランダムに付着させてウェブまたはマットを形成する。繊維がフォーマー上に付着したとき、繊維は、まだ粘着性であり、フォーマー表面にさらにまた相互に粘着する。
繊維14を相互に絡み合わせ、相互に部分的に溶融させていることは、図1において理解し得る。これによって、極めて強力な繊維層、引続いての強い物品を生じさせている。繊維が短い場合、繊維は、十分には絡み合い或いは相互連結することはないであろう。従って、得られる繊維層は、本発明において見出される強い粘着性形状を示さないであろう。短繊維は、多くのフロッキング用途において見られるように、支持体表面から容易に脱落する。高温メルトブローン繊維またはナノファイバーの使用に基づき、本発明は、糊剤または幾つかの他の接着剤のような他の成分の助けを必要とせずに、繊維の絡み合いを提供している。
【0022】
また、支持体12と繊維14間に極めて良好に形成された界面16が存在することも理解し得る。図1において示しているように、界面16での繊維と支持体間の接触面積は、約75%を越える。この接触は、確実に、繊維が支持体に堅固結合し、離脱またはピリングすることはほぼないようにする。さらにまた、図1において理解し得るように、繊維層は、明らかに支配的な特徴を有する。事実、繊維の適用は、支持体表面を完全に密封していることが分かる。この発見は、ラテックス自体が繊維層内に封入され或いは繊維層によって1表面上が少なくとも被覆されるラテックス物品を提供することが有用であると証明している点で望ましいものである。そのような物品は、ラテックスの特性は望まれ得るがラテックス支持体は皮膚との直接接触を避けなければならない場合に使用し得る。この性質を有する物品は、さもなければ発症し得るラテックス物品による皮膚アレルギー反応を最低限するのに、おそらくは予防するのに有用であると理解し得る。
さらに、ハロゲン化工程を本明細書の早期の段階で説明しているものの、本発明において見出したもう1つの独特の利点は、エラストマー物品上での繊維の適用が物品の粘着性を減少させるように機能しており、それによってハロゲン化の必要性を不要にしていることである。実際に、繊維は、支持体表面を少なくとも部分的に被覆していることが判明している。これによって、物品表面上にバリヤー層が本質的に形成されている。そのように、ラテックスに伴う粘着性は、繊維コーティーング表面に置換わっている。該繊維コーティーング表面は、さらなる表面処理を何ら必要としない。そのような表面処理は、さもなければ、通常に実施されるであろうし、ある場合には、粘着性を最小限にする必要があるであろう。さらにまた、何らかの処理が他の利点を付与させるのに必要であるにしても、上記繊維層は、表面改変により適応性であることを判明するであろう。
【0023】
以下、図2に関しては、例としてのメルトブローン繊維14を支持体12上に示している。この図2おいては、繊維を支持体への摘用時に変形させていることが容易に理解できる。例えば、典型的なメルトブローン繊維は約10〜15μmの断面を有して出発し得、メルトブローン繊維は、支持体との接触時に依然として変形するのに十分に高温であるので、外側に拡散することが理解し得る。この場合、表面接触即ち界面16は、約35.79μmの長さにある。この変形は、支持体とのほぼ連続した界面をもたらし、このことは繊維と支持体間の最高の結合を確実にする。結果として、繊維は、支持体に強力に結合する。事実、繊維が支持体自体の多孔質表面内で部分的に溶融し、再固化するのを繊維の1側面18に沿って見ることができる。前記で説明したように、伝統的なフロッキング方法と比較して、接着剤または糊剤を必要としない。
再び図1を見ると、繊維層は、支持体層よりも厚いことが理解し得る。とりわけ、前者が約116μmであるのに対し、後者は約98μmである。しかしながら、今度は図3(同様な物品10を示している)によれば、繊維層は、代りに、所望する特性に応じて支持体層よりも薄く製造されて得ることが理解し得る。図3においては、繊維層が約77.2μmであるのに対し、支持体層は約106.9μmである。
ラテックス支持体上の繊維厚を調整する能力は、本発明の有用な局面とみなされ得る。ある実施態様においては、繊維層は、望ましくは、ラテックス層よりも薄く製造し得るが、他の実施態様においては、その反対も望まれ得る。例えば、厚めの繊維層は、物品がオイル取扱いまたは重作業用に使用する手袋である場合に所望され得、一方、薄めの繊維層は、手術用手袋のような多大な機敏性を必要とする物品において望ましくあり得る。各層の厚さは、支持体を形成させるポリマー浴の粘度、フォーマーの浴中での滞留時間、支持体に適用する繊維の量等のような要因に依存する。これらのパラメーターは、製造工程中に調整可能であり、当業者であれば理解していることである。
【0024】
また、図3においては、孔20が物品10中に形成されていることが理解し得る。これらの孔は、潤滑剤ならびに他のさらなる望ましいトリートメントを保持し且つ着用者に分配し得るポケットを提供する。図4は、物品10および孔20(孔20は容易に可視化されている)の表面構造を示している。繊維層の独特の微孔質構造は、物品10に増強された通気性、増強された湿気および水分吸収性、および低減された皮膚との接触面積のような複合的なさらなる利点を与えている。
本発明のもう1つの局面においては、繊維コーティーングを、フォーマーをラテックスポリマー中に浸漬する前に適用し得る。このことは、ラテックスポリマーが繊維層を囲い込むことを可能にし、それによってラテックス層中に部分的にまたは完全に埋込んだ繊維を有する機会を提供する。図5は、本発明のそのような別の実施態様を示している。図5においては、繊維14を先ずフォーマーに適用し、その後、フォーマーをエラストマーポリマー中に浸漬する、従って、エラストマー支持体12を後で形成させている。この方法は、走査電子顕微鏡により観察したとき、全く異なる構造を発生させている。図5および6において理解し得るように、大多数の繊維がラテックス支持体内にほぼ完全に埋込まれている。そのような独特の特徴は、十分に注入された繊維とラテックス特性を有する繊維強化物品の製造を可能にする。さらに、このことは、物品の両面をラテックス内に十分に埋込んでいる1面でコーティーングしている繊維強化物品の製造を可能にしている。
【実施例】
【0025】
具体的実施例
本発明の1つの実施態様の具体的実施例として、手袋10を製造し得る。この方法においては、磁器フォーマーを約75〜80℃の予熱オーブン中に約20分間搬送して、存在し得る水分すべてを蒸発させる。その後、フォーマーを、ポリマーラテックスがフォーマー上に付着して凝固するのを可能にする10%の硝酸カルシウムを含む凝固剤、完成手袋をフォーマーから剥離するのを助ける10%の炭酸カルシウム粉末、および増強された湿潤性を与えてフォーマーと付着ラテックス間に、とりわけ袖領域に空気を捕捉し得るメニスカスの形成を回避させるようにする界面活性剤である0.5%のTween-20を含有する浴中に浸漬する。次に、凝固剤コーティーングフォーマーを75℃のオーブン内に約2分間置いて、フォーマーが凝固剤混合物からの水分を蒸発させて、フォーマー表面上に硝酸カルシウム、炭酸カルシウムおよび界面活性剤を残存させるのを可能にする。
その後、フォーマーを凝固剤でコーティーングした時点で、フォーマーを繊維でコーティーングするか或いはポリマー浴中に浸漬する:
次に、上述の凝固剤コーティーングフォーマーを、少なくとも次に成分を含有する連続撹拌しているラテックス浴中に約7秒間浸漬する:約28%の配合HAラテックス(60%HAラテックスの46.8%)、0.2%のラウリル酸アンモニウム、0.5%の水酸化カリウム、0.75%のSS Cure A、1.5%のPart B2-T、0.15%のBeveloid、および50%の水。その後、ラテックスコーティーングフォーマーを繊維コーティーングステーションに移行させて、Kratonからのメルトブローン繊維をコーティーングする。繊維の厚さおよびサイズは、ダイ-チップおよび繊維コーティーング系の空気流によって調整する。次に、フォーマーを空気流またはある種の他の流体、典型的には加圧ガスまたは、例えば、送風機からの移動ガス流(フォーマーから存在し得る過剰のまたは緩んだ繊維を吹き流すように機能する)に供する。この後、繊維コーティーングフォーマーを、接着性および手袋着用性を助長させるための2%Synthemul 907溶液でコーティーングする。その後、得られた手袋を120℃で20分間硬化させる。次に、硬化させた物品をフォーマー上で冷却する。冷却した時点で、手袋をフォーマーから剥ぎ取る。
【0026】
別法としては、上記による凝固剤コーティーングフォーマーを繊維コーティーングステーションに移行させて、繊維層をポリマー浸漬前にコーティーングし得る。その後、望ましい量の繊維をコーティーングした時点で、フォーマーを上述した組成と同様な組成のラテックス浴中に浸漬し得る。該方法は、必要に応じてのSynthemul 907溶液による硬化およびコーティーングに関しては同様である。
メルトブローン繊維以外に、他の方法の同様に使用し得ることを理解すべきである。1つのそのような方法は、スパンボンド繊維の適用を含む。スパンボンド繊維を、熱可塑性ポリマー樹脂を少なくともその軟化温度まで加熱し、次いでこの樹脂をスピナレットから押出して連続繊維またはフィラメントを形成させることによって典型的に製造し、引続き、これを繊維延伸装置に供給し得る。繊維延伸装置から、フィラメントをメルトブローン適用において使用した方法と同様な方法でフォーマー上に拡散させる。しかしながら、スパンボンドフィラメントは、粘着性ではないので、湿潤または粘着性表面に適用しなければならない。1つの応用においては、スパンボンドフィラメントを、フォーマーをポリマー浴から取出した後のまだ湿潤しているエラストマー表面コーティーングフォーマーに直接適用する。
上記のポリマー繊維に加えて、パルプ繊維および/またはステープル繊維も上述のようにして加え得る。例えば、パルプ繊維を上記ポリマー繊維に添加する方法は、上記熱可塑性ポリマー樹脂をダイまたはスピナレットから押出して上記のメルトブローン適用において説明したような連続繊維を形成させることを含む。繊維を加熱空気または流の第1流体流を使用することによってフィラメントに減衰する。この第1流体流を個別化した木材パルプ繊維を含有する第2の流体流と合体させる。2つの流れが合体したとき、ポリマー繊維は、パルプ繊維と一工程で合体する。
【0027】
本発明の繊維強化エラストマー物品は、当業者であれば、調整または修正して種々の望ましい特徴に適応させるであろうことを予期している。従って、本発明をある種の特定の実施態様および実施例を参照して説明してきたが、本発明はさらなる修正が可能であることを理解されたい。従って、本出願は、本発明の一般的原理に従い、且つ本発明が関与する技術における既知のまたは慣用の実施に属しまた特許請求の範囲の限定内に属するような本開示からの逸脱を含む変更、使用または適応化は全て包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】繊維が、物品をエラストマー浴内に浸漬した後に、コーティーングされた本発明の1つの実施態様の繊維コーティーングエラストマー物品の断面を示す走査電子顕微鏡からの画像である。
【図2】図1の実施態様の代表的な繊維と支持体間の界面を示す走査電子顕微鏡からの画像である。
【図3】図1の実施態様の繊維層と支持体間の界面を示す走査電子顕微鏡からの画像である。
【図4】図1の物品の多孔質表面構造を示す走査電子顕微鏡からの画像である。
【図5】繊維が、物品をエラストマー浴内に浸漬する前に、コーティーングされたもう1つの実施態様のエラストマー物品の表面構造を示す走査電子顕微鏡からの画像である。
【図6】図5の実施態様の代表的な繊維と支持体間の界面を示す走査電子顕微鏡からの画像である。
【符号の説明】
【0029】
10 エラストマー物品
12 天然ゴムラテックス支持体
14 エラストマーメルトブローン繊維
16 界面
18 繊維の1側面
20 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維幅よりも実質的に長い繊維長を有する複数のエラストマー繊維を注入したエラストマーラテックス支持体を含むことを特徴とする、エラストマー物品。
【請求項2】
前記繊維を、互いに絡ませ合い、エラストマーラテックス支持体の本体内部および表面上に部分的に溶融させている、請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記繊維が、前記エラストマーラテックス支持体を部分的に覆う層を形成する、請求項1記載の物品。
【請求項4】
前記繊維層が、前記エラストマーラテックス支持体よりも厚い、請求項3記載の物品。
【請求項5】
前記繊維層が、前記エラストマーラテックス支持体の約1倍〜約2倍の厚さである、請求項4記載の物品。
【請求項6】
前記繊維層が、前記エラストマーラテックス支持体よりも薄い、請求項3記載の物品。
【請求項7】
前記繊維層が、前記エラストマーラテックス支持体の約1/4〜約1倍の厚さである、請求項6記載の物品。
【請求項8】
前記繊維の平均直径が、前記エラストマーラテックス支持体上に付着する前およびエラストマーラテックス支持体上に付着した時点で、概して約10ミクロンよりも小さく、前記繊維が、前記エラストマーラテックス支持体と繊維との間に形成された界面において約20ミクロンに平坦化され拡散している、請求項1記載の物品。
【請求項9】
手袋、コンドーム、ブーツ、失禁用パッド、ブランケットおよび衣料のいずれかを構成する、請求項1記載の物品。
【請求項10】
前記エラストマーラテックス支持体が、ラテックスポリマー、合成ゴム、ニトリルポリマーおよびネオプレンポリマーからなる群から選択される、請求項1記載の物品。
【請求項11】
複数の粘着性高分子繊維と組合せたエラストマーラテックス支持体を含み、前記繊維が、密着マットを形成して、少なくとも部分的に接着することを特徴とする、エラストマー物品。
【請求項12】
前記繊維で完全にコーティーングされた少なくとも1表面を有する、請求項11記載の物品。
【請求項13】
前記エラストマーラテックス支持体が、繊維の密着マット内部に包まれている、請求項11記載の物品。
【請求項14】
前記繊維が、前記エラストマーラテックス支持体内部に少なくとも部分的に注入されている、請求項11記載の物品。
【請求項15】
前記繊維が、メルトブローン繊維およびナノファイバーからなる群から選択される、請求項11記載の物品。
【請求項16】
前記繊維が連続繊維である、請求項11記載の物品。
【請求項17】
前記繊維が、エラストマーである、請求項11記載の物品。
【請求項18】
前記エラストマーラテックス支持体と前記複数の粘着性高分子繊維との間に界面を含む、請求項11記載の物品。
【請求項19】
処理剤を含有し且つ放出し得る多孔質構造を含む、請求項11記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−513809(P2007−513809A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543811(P2006−543811)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/036077
【国際公開番号】WO2005/061779
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】