説明

繊維材料ウェブを生産する機械内のサクションロール

本発明は、紙、厚紙、ティッシュ、又は他の繊維材料ウェブを生産する機械の乾燥区間内のサクションロール(1)に関するものであり、前記ロールは、本体表面(7)に、繊維ウェブを吸引するための穴を有する。ロールは、外部ジャケット(7)が単位面積当たりに異なる数の穴を有する区間に分割されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、厚紙、ティッシュ、又は他の繊維ウェブを製造する機械の乾燥区間内のサクションロールに関するものであり、このサクションロールは、その外周面に、吸引により繊維ウェブを引き寄せるための穴を有する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、特に、印加される乾燥ガスを有する紙ウェブを案内し保持するのに役立つ、材料ウェブを乾燥させるための乾燥シリンダが記載されている。乾燥シリンダはカバーを備えており、材料ウェブは、ロールの操作中、工程中のロールの周りを一部分包むような形でこのカバー上を案内される。カバー内にはガスを流すための開口部がある。ロールカバーの内部には、第2の気密カバーがあり、この第2の気密カバーは、外部のロールカバーと共に環状の空間を形成する。環状の空間は、内部カバーの内部に対して気密封止される。
【0003】
特許文献2には、材料ウェブを製造する機械の乾燥区間内の乾燥群が開示されている。乾燥群は、いくつかのシリンダを有し、これらは、材料ウェブの流れ方向から見て、交互に加熱され冷却され、材料ウェブは、この周りを多孔性の運搬ベルトで及び金属ベルトで蛇行しながら案内される。ここでは、材料ウェブは、運搬ベルトと金属ベルトとの間に配置される。金属ベルト又は運搬ベルトには、予めかなりの張力がかけられ、シリンダには、運搬ベルト及び金属ベルトと共に材料ウェブを支える、円周の領域に作用する追加加熱装置が割り当てられる。
【0004】
均一な開放面、即ち幅全体に穴又は他の開口部が設けられた表面を有する、繊維ウェブを製造する機械の乾燥区間内で使用されるサクションロールが、開示されている。
【0005】
この種のサクションロールは、紙ウェブがそのウェブ幅全体に渡って移送される場合には、紙ウェブとロール又はこの上に載っている織物との間に形成された境界空気層が十分素早く除去されないという欠点を有する。紙ウェブの移送中にも問題が発生し得る。また、サクションロールの円周面の表面積全体に対する開放面積の割合が増加した場合にも、吸引によって除去されるべき空気量が、余りにも大きくなる。
【特許文献1】独国特許出願公開第10047369A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19619530A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、この周りを案内される繊維ウェブが十分な真空力で保持される、サクションロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記目的は、冒頭に記載した種類のサクションロールによって達成され、その円周面が、単位面積当りに異なる数の穴を有する、又はそれぞれが単位面積当りに異なる直径の穴を有する、3つ以上の領域に分割される。
【0008】
したがって、ロールの円周面は、たとえば、少なくとも3つの領域を有し、2つの領域内には、ロールの残りの円周面より大きい開放面がある。より広い開放面は、これらの2つの領域内の穴の数が他の領域内より多いことにより、又はそれぞれ穴が他の領域内より大きい直径を有することにより作られる。両方の対策(より多数の穴、より大きい直径の穴)はまた、それぞれ、組み合わせられ得る。
【0009】
本発明の好ましい発展形態が、従属請求項、以下の説明、及び図面より生じる。
【0010】
本発明の1つの特に好ましい改良形態においては、サクションロールの円周面が、その端部側の縁の少なくとも1つに、円周面の中心の領域内の単位面積当りの穴の数と比較してより多くの数の穴を有する、又はより大きい直径の穴を有する、領域を有するようになっている。これは、まさに、狭い移送片の移送に特に適したサクションロールの改良形態であり、この幅は、より多くの数の穴を有する縁側の領域の幅にほぼ対応し、この結果、移送片は移送プロセス中吸引により確実に引き寄せられ、同時に、サクションロールのカバーの、まだ繊維ウェブによって覆われていない残りの表面内の極めて大きい開口部により、真空が大きく損失することがない。
【0011】
円周面が、円周方向に延在し、かつ円周面の帯片の間の領域と比較して単位面積当りにより多くの数の穴を有する、又はより大きい直径の穴を有する、帯片を備えるようになっていることが好ましい。
【0012】
別の好ましい改良形態においては、円周面が、円周面の残りの領域と比較して単位面積当りにより多くの数の穴を有する、又はより大きい直径の穴を有する、この上をらせん形に延在する1つの帯片又はこの上をらせん形に延在する複数の帯片を備えるようになっている。
【0013】
サクションロールが、サクションロールの長手軸の方向に実質的に延在する又は斜めにある、かつ帯片の間の領域と比較して単位面積当りにより多くの数の穴を有する又はより大きい直径の穴を有する、帯片を備えることも好ましい。
【0014】
帯片は、少なくとも70mm、特に100mm〜1000mmの幅を有することが好ましい。
【0015】
同様に、帯片が、少なくとも100mm、特に200mm〜2000mmの間隔を互いに隔てていることが好ましい。しかし、帯片の間の間隔及びそれらの幅を変えることもできる。
【0016】
さらなる改良形態においては、サクションロールは、その円周面に溝形の窪みを有する。本明細書においては、窪みは、1〜10mmの深さ及び1〜10mmの幅を有し得る。窪みは、5〜30mmの間隔を互いに隔てていることが好ましい。
【0017】
大きな直径を有するサクションロールが、使用されることが好ましい。少なくとも3mの直径を有するサクションロールが好ましい。
【0018】
サクションロールが乾燥織物及び乾燥織物上にある繊維ウェブで巻かれる場合、繊維ウェブを動かすために、インピンジメント乾燥機がサクションロールに据えられることが好ましいことが実証されている。
【0019】
サクションロールは、その軸内の回転貫通により真空源に連結されることが好ましい。代替改良形態においては、サクションロールが、その円周面に封止して支えられるサクションボックスを介して、これに働く真空を有するようになっている。
【0020】
サクションロールは、内部の気密カバーを有することが好ましく、内部カバーと穴を有する外部カバーとの間には、環状の真空空間がある。
【0021】
本発明のさらに好ましい改良形態においては、より少ない数の穴を有する又はより小さい直径の穴を有する、円周面の領域内の穴が占める表面の割合が、0.2%〜2.5%、特に1%〜1.5%であるようになっている。
【0022】
穴が占める表面の割合は、円周面の残りの領域より多数の穴を有する帯片のこれらの領域が、残りの領域内の穴が占める表面の少なくとも1.5倍であるよう選択されることが好ましい。
【0023】
要するに、本発明の利点は、サクションロールが、その幅又はその円周全体に複数の領域を有し、繊維ウェブの紙と織物又はロールとの間の境界空気が、大きな開放面により素早く除去され、したがって、ウェブは、全体的として、ウェブ幅全体に確実に保持され移送され得るということにある。
【0024】
以下、図面を使用した例示的実施形態において、本発明についてより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
サクションロール1(図1)が、乾燥区間の入口に、繊維ウェブ2を生産する機械のプレス区間の後ろに配置されている。繊維ウェブ2が、乾燥織物と共に第1のたわみロール3上で、サクションロール1のカバーの周りを下方に案内され、さらなるたわみロール4上でさらに上方に案内される。安定器5がサクションロール1上のたわみロール3と4との間に置かれており、この安定器5は必要な真空を供給し、したがって、サクションロール1は、乾燥織物を通ってその円周面上に繊維ウェブ2を吸い込み得る。
【0026】
サクションロール1の(ウェブの流れ方向から見て)出口側の下4分の1を実質的に覆い、かつ繊維ウェブ2を乾燥させるインピンジメント乾燥機6が、サクションロール1の下側に配置される。
【0027】
1つの好ましい改良形態においては、サクションロール1(図2)は、その円周面7の縁に、それぞれ、領域8と9との間の中心の領域10と比較して単位面積当りにより多くの数の穴又は開口部を有する領域8、9を有し、空気が、この穴又は開口部を通ってサクションロール1の内部から吸い出される。特に、本発明のこの実施形態は、繊維ウェブ2の送り片を通すのに適しており、この送り片は、領域8、9の1つの上で確実に保持される。何故なら、これらの領域8、9内では、サクションロール1の中心の領域10より大きい吸引力が作用するからである。
【0028】
さらなる実施形態(図3)においては、サクションロール1は、その幅全体に等しい間隔で延在する横片11を有し、それぞれ、単位面積当りにより少ない数の穴を有する領域12が、横片11の間に配置される。
【0029】
さらなる代替改良形態(図4)においては、サクションロールは、帯片13の隣りの領域14と比較してより多くの数の穴を有する、その円周面7にらせん状に延在する1つの帯片13を有する。
【0030】
代替形態として、これらの間の領域18、19、20、21と比較してより多くの数の穴を有する、斜めに延在する複数の帯片15、16、17(図5)もあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】インピンジメント乾燥機と合わせて、乾燥区間内のサクションロールを示す側面図である。
【図2】単位面積当りにより多数の穴を有する、縁に配置された2つの領域を有するサクションロールのカバーを示す平面図である。
【図3】残りの領域より単位面積当りにより多数の穴を有する横片を備えたサクションロールのカバーを示すさらなる平面図である。
【図4】残りの領域より単位面積当りにより多数の穴を有する斜めの帯片を備えたサクションロールのカバーを示すさらなる平面図である。
【図5】残りの領域より単位面積当りにより多数の穴を有するらせん状の帯片を備えたサクションロールのカバーを示すさらなる平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、厚紙、ティッシュ、又は他の繊維ウェブ(2)を製造する機械の乾燥区間内のサクションロール(1)であって、該外周面(7)に、吸引により前記繊維ウェブ(2)を引き寄せるための穴を有するサクションロール(1)において、
前記円周面(7)が、単位面積当りに異なる数の穴を有する、又はそれぞれが単位面積当りに異なる直径の穴を有する、3つ以上の領域に分割され、前記円周面(7)が、帯片(11、13、15、16、17)の間の領域(12、14、18、19、20、21)と比較して単位面積当りにより多くの数の穴を有する、又はより大きい直径の穴を有する、円周方向に延在する帯片(11)、又はこの上をらせん形に延在する1つ以上の帯片(13)、又は前記サクションロール(1)の長手軸の方向に実質的に延在する又は斜めにある帯片(15、16、17)を有することを特徴とするサクションロール(1)。
【請求項2】
前記サクションロール(1)の前記円周面(7)が、該端部側の縁の少なくとも1つに、前記円周面(7)の中心の領域(10)内の単位面積当りの穴の数と比較してより多くの数の穴を有する、又はより大きい直径の穴を有する、領域(8、9)を有することを特徴とする請求項1に記載のサクションロール(1)。
【請求項3】
前記帯片(15、16、17)が、少なくとも70mmの、特に100mm〜1000mmの幅を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のサクションロール(1)。
【請求項4】
前記帯片(15、16、17)が、少なくとも100mm、特に200mmを超える間隔を互いに隔てることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のサクションロール(1)。
【請求項5】
前記帯片(15、16、17)が、該円周面(7)に溝形の窪みを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のサクションロール(1)。
【請求項6】
前記窪みが、1〜10mmの深さを有することを特徴とする請求項5に記載のサクションロール(1)。
【請求項7】
前記窪みが、1mm〜10mmの幅を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のサクションロール(1)。
【請求項8】
前記窪みが、5〜30mmの間隔を互いに隔てていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のサクションロール(1)。
【請求項9】
前記サクションロール(1)が、少なくとも3mの直径を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のサクションロール(1)。
【請求項10】
前記サクションロール(1)が、乾燥織物及び前記乾燥織物上にある繊維ウェブ(2)で巻かれ、インピンジメント乾燥機(6)が、前記繊維ウェブ(2)を乾燥させるために前記サクションロール(1)に据えられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のサクションロール(1)。
【請求項11】
前記サクションロール(1)が、該軸内の回転貫通により真空源に連結されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のサクションロール(1)。
【請求項12】
前記サクションロール(1)が、該円周面(7)に封止して支えられるサクションボックス(5)を介して、これに働く真空を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のサクションロール(1)。
【請求項13】
前記サクションロール(1)が、内部の気密カバーを有し、前記内部カバーと穴を有する前記外部カバー(7)との間に環状の真空空間があることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のサクションロール(1)。
【請求項14】
より少ない数の穴を有する又はより小さい直径の穴を有する、前記円周面(7)の領域内の穴が占める表面の割合が、0.2%〜2.5%、特に1%〜1.5%であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のサクションロール(1)。
【請求項15】
該領域の穴又は前記円周面(7)の残りの領域より多数の穴を有する帯片が占める表面の割合が、残りの領域内の穴が占める表面の少なくとも1.5倍であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載のサクションロール(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−536183(P2007−536183A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512144(P2007−512144)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051308
【国際公開番号】WO2005/111304
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506294244)ボイス パテント ゲーエムベーハー (57)
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
【Fターム(参考)】