説明

繊維束、及び繊維束の製造方法

【課題】天然毛髪に似た風合いを有する繊維束を提供する。
【解決手段】繊度の変動係数が10〜40%である複数の単繊維からなる繊維束である。又、塩化ビニル系繊維からなる繊維束である。さらに、繊維束からなる頭髪装飾用繊維束である。さらに、かつら、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘアー、又はドールヘアーから選ばれる頭髪装飾用繊維束からなる頭髪製品である。又、少なくとも、繊度の変動係数が10〜40%である複数の単繊維を混合する工程を行う繊維束の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつら、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘアー、ドールヘアーなどに用いられる繊維束及びそれの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、かつら、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘアー、或いはドールヘアー等の頭髪装飾用に使用する天然毛髪は、産出国の経済成長などの影響から価格が上昇し、なおかつ良質な天然毛髪を安定的に入手することが困難になりつつある。このような背景から、容易で安定的に入手可能で、天然毛髪に近似した風合いを持つ人工毛髪の開発がなされている。
【0003】
前記風合いとは、外観(光沢、太さなど)、触感(コシ強さ、自然感、ボリュームなど)、櫛通りなどのことを指し、これらに難があると一見して人工毛髪であると判定され、頭髪装飾用に使用するには致命的な欠陥となってしまう場合がある。これらの改良として、繊維の断面形状をC字型の断面とした繊維(例えば、特許文献1を参照。)が提案されている。又、アクリル系繊維の特性と塩化ビニル系繊維の特性を合わせたもの(例えば、特許文献2を参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開2003−96618号公報
【特許文献2】特開2002−227020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、天然毛髪に似たコシ強さ、自然感をバランスよく兼ね備える繊維束及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決するため鋭意検討した結果、繊維束を構成する単繊維の繊度分布を特定の範囲にすることにより、天然毛髪に似た風合いを有する繊維束が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、繊度の変動係数が10〜40%である複数の単繊維からなる繊維束である。
【0007】
また、塩化ビニル系繊維からなる繊維束が好ましい。又、本発明の繊維束は、頭髪装飾用繊維束に用いることができる。さらに、かつら、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘアー、又はドールヘアーから選ばれる頭髪装飾用繊維束からなる頭髪製品として使用できる。
【0008】
また、本発明は、少なくとも、繊度の変動係数が10〜40%である複数の単繊維を混合する工程を行う繊維束の製造方法である。さらに、前記の工程が、少なくとも以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする繊維束の製造方法である。
(1)二以上の前記単繊維を混合してマルチフィラメントとすることで、複数のマルチフィラメントを得る工程、
(2)前記複数のマルチフィラメントの中から少なくとも一のマルチフィラメントを選択し、選択したマルチフィラメントと、該マルチフィラメントと平均繊度の差が10〜50デシテックスである他のマルチフィラメントと、を組み合わせてマルチフィラメント束を得る工程、
(3)前記(2)工程で得るマルチフィラメント束を構成するマルチフィラメントのうち、繊度の最小のものより10〜50デシテックス細い他のマルチフィラメントを組み合わせる工程、又は繊度の最大のものより10〜50デシテックス太い他のマルチフィラメントを組み合わせる工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、天然毛髪に似たコシ強さ、自然感をバランスよく兼ね備える繊維束及びその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
単繊維の集合体であるマルチフィラメントを、複数束ねてマルチフィラメント束として、該マルチフィラメント束を複数束ねて繊維束とする。本発明の繊維束は、繊度の変動係数が10〜40%である複数の単繊維からなる繊維束である。繊維束を構成する単繊維の繊度のばらつきを示す変動係数は、10〜40%、好ましくは20〜30%である。該単繊維の繊度の変動係数が10%未満であると、単繊維の繊度分布が狭すぎて天然毛髪に似た自然感が得られない。一方、該変動係数が40%を超えると、該繊度分布が大きすぎて天然毛髪に似た自然感、コシ強さが得られない。
【0011】
変動係数は、次の式(1)によって求めることができる。
Cv(%)=σ/D×100 式(1)
(式中、Cvは変動係数であり、σは繊維束を構成する単繊維の繊度の標準偏差であり、Dは繊維束を構成する単繊維の繊度である。)
【0012】
繊度は、繊維束中から単繊維を無作為に300本選び、該単繊維1mの重さ「W」を測定し10000mに換算して「W×10/300」により算出した。
【0013】
本発明の繊維束は、本発明の繊維束の製造方法によって製造することができる。本発明の繊維束の製造方法は、少なくとも、繊度の変動係数が10〜40%である複数の単繊維を混合する工程を行う繊維束の製造方法である。さらに、前記の工程が、少なくとも以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする繊維束の製造方法である。:(1)二以上の前記単繊維を混合してマルチフィラメントとすることで、複数のマルチフィラメントを得る工程、(2)前記複数のマルチフィラメントの中から少なくとも一のマルチフィラメントを選択し、選択したマルチフィラメントと、該マルチフィラメントと平均繊度の差が10〜50デシテックスである他のマルチフィラメントと、を組み合わせてマルチフィラメント束を得る工程、(3)前記(2)工程で得るマルチフィラメント束を構成するマルチフィラメントのうち、繊度の最小のものより10〜50デシテックス細い他のマルチフィラメントを組み合わせる工程、又は繊度の最大のものより10〜50デシテックス太い他のマルチフィラメントを組み合わせる工程。
【0014】
前記(2)工程と前記(3)工程で、平均繊度の差が10〜50デシテックスとすることにより、繊維束の自然感が極めて良好になる。該平均繊度の差が10デシテックス未満であると、繊維束の繊度分布が狭くなる場合がある。一方、該平均繊度の差が50デシテックスを超えると、繊維束の自然感が不自然になる場合がある。前記混合は、ハックリング等の公知の方法により行える。ハックリングとは、剣山のように針が乱立した板を用い、繊維束を針の間に通して混合することである。
【0015】
平均繊度は、繊維束中からマルチフィラメントを無作為に1本選び、そのマルチフィラメントから無作為に10本の単繊維を選び、該単繊維1mの重さ「M」を測定し10000mに換算して「M×10/10」により算出した。
【0016】
本発明の繊維束を構成する単繊維の断面形状については特に限定されないが、頭髪装飾用繊維束としての風合いを勘案すると、好ましい断面形状としては、メガネ形、星形、馬蹄形、C字形、中空形、楕円形、円形、亜鈴形、Y字形、X字形などが適しており、これらの形状を1種単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0017】
本発明の繊維束において、触感をより天然毛髪に近づけるために単繊維の繊度は30〜100デシテックス、より好ましくは40〜90デシテックス、さらに好ましくは50〜80デシテックスである。単繊維の繊度が30デシテックス未満であると、単繊維を繊維化する際に糸切れ等の問題が発生しやすくなり安定した製造が困難になる場合がある。一方、該繊度が100デシテックスを超えると、単繊維が太く剛直になってしまうために触感が不自然になる場合がある。
【0018】
さらに、本発明の繊維束と天然毛髪とを、任意の割合で混合することによって頭髪装飾用商品としての自由なスタイルを作ることができる。
【0019】
本発明に適用される繊維としては、どのような合成繊維でも可能であるが特に、塩化ビニル系、アクリル系、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ナイロン系、ポリ乳酸系が実用的に使用され、特に塩化ビニル系、アクリル系が好適である。特に好ましくは、強度、光沢、色相、難燃性、感触、熱収縮性などの特性から塩化ビニル系繊維である。
【0020】
以下に塩化ビニル系繊維の具体例について説明する。
【0021】
塩化ビニル系繊維に使用される塩化ビニル系樹脂は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等によって得られたものを使用できるが、単繊維の初期着色性等を勘案して、懸濁重合によって製造したものを使用するのが好ましい。塩化ビニル系樹脂とは、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂、または従来公知の各種のコポリマー樹脂であり、特に限定されるものではない。該コポリマー樹脂としては、従来公知のコポリマー樹脂を使用できる。例えば、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとビニルエステル類とのコポリマー樹脂;塩化ビニル−アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとアクリル酸エステル類とのコポリマー樹脂;塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピレンコポリマー樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類とのコポリマー樹脂;塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー樹脂などが代表的に例示される。特に好ましくは、塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂、塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂などを使用することが好ましい。該コポリマー樹脂において、コモノマーの含有量は特に限定されず、成形加工性、繊維特性などの要求品質に応じて決めることができる。コモノマーの含有量は、好ましくは2〜30質量%であり、特に好ましくは2〜20質量%である。
【0022】
塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度は、600〜2500が好ましく、600〜1800がより好ましい。塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度が600未満だと、溶融粘度が低下して得られる単繊維が熱収縮しやすくなる恐れが有る。一方、粘度平均重合度が2500を超えると、溶融粘度が高くなるためノズル圧力が高くなり安全な製造が困難になる恐れが有る。尚、粘度平均重合度は、樹脂200mgをニトロベンゼン50mlに溶解させ、このポリマー溶液の比粘度を30℃恒温槽中において、ウベローデ型粘度計を用いて測定し、JIS−K6720−2により算出したものである。
【0023】
熱安定剤は、従来公知のものが使用できる。中でも、Ca−Zn系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、錫系熱安定剤、ゼオライト系熱安定剤から選択される1種又は2種以上を使用するのが望ましい。該熱安定剤は、成形時の熱分解、ロングラン性、フィラメントの色調を改良するために使用するもので、特に好ましくは、成形加工性、糸特性のバランスが優れている、Ca−Zn系熱安定剤とハイドロタルサイト系熱安定剤の併用が好ましい。これらの熱安定剤は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜5.0質量部であり、さらに好ましくは0.3〜3.0質量部使用する。ハイドロタルサイト系熱安定剤は、具体的にはハイドロタルサイト化合物であり、さらに具体的には、マグネシウム及び/又はアルカリ金属とアルミニウムあるいは亜鉛、マグネシウム及びアルミニウムからなる複合塩化合物であり、結晶水を脱水したものがある。又、ハイドロタルサイト化合物は、天然物であっても合成品であってもよく、合成品の合成方法は、従来公知の方法でよい。
【0024】
本発明の繊維束形成用の樹脂組成物には塩化ビニル系樹脂以外に、目的に応じて塩化ビニル樹脂に使用される従来公知の添加剤が混合される。例えば、滑剤、相溶化剤、加工助剤、強化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、充填剤、難燃剤、顔料、初期着色改善剤、導電性付与剤、表面処理剤、光安定剤、香料等がある。
【0025】
本発明の繊維束を構成する単繊維の製造方法について述べる。単繊維の製造に使用する樹脂組成物は、従来公知の混合機、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等を使用して混合してなるパウダーコンパウンド、又は、これを溶融混合してなるペレットコンパウンドとして使用することができる。パウダーコンパウンドの製造は、従来公知の通常の条件で製造でき、ホットブレンドでもコールドブレンドでも良いが、特に好ましくは、樹脂組成物中の揮発分を減少する為に、ブレンド時のカット温度を105〜155℃迄上げてなるホットブレンドを使用するのが好ましい。ペレットコンパウンドは、通常の塩化ビニル系ペレットコンパウンドの製造と同様にして製造できる。例えば、単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機、同方向2軸押出機、コニーダー、プラネタリーギアー押出機、ロール混練り機等の混練り機を使用して、ペレットコンパウンドとすることができる。ペレットコンパウンドを製造する際の条件は、特に限定はされないが、樹脂温度を185℃以下になる様に設定することが望ましい。
【0026】
前記塩化ビニル系樹脂組成物を繊維状の未延伸糸にするのは、従来公知の紡糸法によって行われる。紡糸法は特に限定されないが、溶融紡糸法が好ましい。溶融紡糸を行う際には従来公知の押出機を使用できる。例えば単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機等を使用できるが、特に好ましくは、口径が35〜85mmφ程度の単軸押出機、又は口径が35〜50mmφ程度のコニカル押出機を使用するのが良い。口径が過大になると、押出量が多くなり、ノズル圧力が過大になり、未延伸糸の流出速度が早過ぎて、巻取りが困難になる場合があり好ましくない。
【0027】
本発明においては、従来公知のノズルを用いて溶融紡糸をすることが可能である。単繊維の横断面形状が、例えば、C型の形状とほぼ同様の形状のC型の形状をしたノズルをダイ(紡糸金型)の先端部に取り付けて溶融紡糸をすることができる。頭髪装飾用としてのカール特性などの品質面を勘案すれば、塩化ビニル系樹脂組成物は、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm以下の複数のノズル孔をダイに配列してなるマルチタイプのノズル孔(ノズル孔数は、50〜300。ノズル配列数は1〜5。)からストランドを溶融・流出せしめて、単繊度が300デシテックス以下の未延伸糸を製造することが好ましい。具体的には樹脂組成物のペレットコンパウンド等を、例えば、単軸押出機を使用して金型温度160〜190℃、より好ましくは165〜185℃で溶融紡糸することによって未延伸糸が得られる。該未延伸糸の繊度が300デシテックスを超えると、細繊度の単繊維を得るためには、延伸処理の際に延伸倍率を大きくする必要があるので、延伸処理を施した後の細繊度の単繊維に光沢が出て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる場合がある。又、溶融紡糸の際、ノズル圧力は50MPa以下で紡糸するのが好ましい。ノズル圧力が50MPaを超えると、押出機のスラスト部にかかる負荷が過大になり、押出機に不具合を発生し易くなる、又、ターンヘッド、ダイ等の接続部から「樹脂漏れ」を発生する場合がある。
【0028】
前記溶融紡糸で得られた未延伸糸に公知の方法で延伸処理・熱処理を施して、100デシテックス以下の細繊度の単繊維(延伸糸)とすることができる。延伸処理条件としては、延伸処理温度90〜120℃の雰囲気下で、延伸倍率は、200〜400%程度延伸することが特に好ましい。延伸処理温度が90℃未満であると単繊維の強度が低くなると共に、糸切れを発生し易く、逆に120℃を超えると単繊維の触感がプラスチック的な滑り触感になり好ましくない。又、延伸倍率が200%未満であると単繊維の強度発現が不十分となり、400%を超えると延伸処理時に、糸切れを発生し易く好ましくない。
【0029】
さらに、延伸した単繊維を110〜140℃の温度に保持した空気雰囲気下で熱弛緩処理前の60〜95%の長さになるまで熱弛緩処理することにより、熱収縮率を低下させることができる。該熱弛緩処理は、延伸処理と連動して実施することもできるし、切り離して実施することもできる。又、本発明に於いては、従来公知の溶融紡糸に関わる技術、例えば、各種ノズル横断面形状に関わる技術、加熱筒に関わる技術、延伸処理に関わる技術、熱処理に関わる技術等は、自在に組み合わせて使用することが可能である。
【0030】
単繊維の断面積の形状は、いかなるものでも良い、例えば、円形、メガネ形、C形、Y形、楕円形、馬蹄形、ハート形である。又、これらの中空体であっても良い。
【実施例】
【0031】
以下に、表1を参照しつつ、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【表1】

【0032】
表1において、「変動係数」は、単繊維24000本を束ねた繊維束中から、任意に単繊維300本をとり、次式により算出した。
Cv(%)=(σ/D)×100
(ここで、Cv:変動係数、σ:単繊維300本の繊度の標準偏差、D:単繊維300本の繊度である。)
【0033】
表1において、「コシ強さ」は、かつら処理技術者(実務経験5年以上)10人の判定による官能評価であり、単繊維24000本を束ねた繊維束を折り曲げたときの反発感を、次の評価基準
優良:反発感が強いもの
良 :やや反発感があるもの
不良:反発感が弱いもの
で相対評価した。
【0034】
表1において、「自然感」は、かつら処理技術者(実務経験5年以上)10人の判定による官能評価であり、単繊維24000本を束ねた繊維束同士を摩擦した時の手触り感を、天然毛髪との違いを、次の評価基準
優良:天然毛髪に似た感じのもの
良 :ややプラスチック感があるもの
不良:プラスチック感が強いもの
で相対評価した。
【0035】
(実施例1)
(a)塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製 TH−1000:粘度平均重合度1000)100質量部、ハイドロタルサイト系安定剤(協和化学社製 アルカマイザー1)3質量部、12ヒドロキシステアリン酸亜鉛(日産化学社製 NF−12Zn)0.6質量部、12ヒドロキシステアリン酸カルシウム(日産化学社製 NF−12Ca)0.4質量部、高級脂肪酸エステル系滑剤(理研ビタミン社製 EW−100)4.0質量部、ポリエチレンワックス(三井石油化学社製 Hiwax400P)0.2質量部を配合した樹脂組成物をリボンブレンダーで混合する工程、(b)前記混合した樹脂組成物を、300メッシュの金網をつけた単軸押出機に、メガネ形のノズル形状、ノズル断面積0.06mm、及びノズル孔数120個の紡糸金型を用いて、金型温度180℃及び押出し量10kg/時間で溶融紡糸する工程、(c)前記溶融紡糸した単繊維を、イ)7.5倍、ロ)6倍、ハ)5倍、ニ)4.5倍、ホ)4倍、ヘ)3.5倍、ト)3倍、チ)2.5倍にドラフトし、さらに100℃の空気雰囲気下で3倍に延伸する工程、(d)前記延伸した単繊維を、120℃の空気雰囲気下で繊維全長が処理前の75%の長さに収縮するまで熱弛緩処理を施す工程を順次経て、平均繊度が、イ)40デシテックス、ロ)50デシテックス、ハ)60デシテックス、ニ)70デシテックス、ホ)80デシテックス、ヘ)90デシテックス、ト)100デシテックスの、単繊維総数120本のマルチフィラメントを得た。(e)前記マルチフィラメントを表1の質量混合比でハックリングして、繊維束を得た。
【0036】
(実施例2〜7、比較例1〜3)
平均繊度が異なるマルチフィラメントを、表1の質量混合比に従って混合して、実施例と同様にして、繊維束を得た。
【0037】
表1から明らかなように、本発明によれば、天然毛髪に似たコシ強さ、自然感をバランスよく兼ね備える繊維束が容易に得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の繊維束は、例えばかつら、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘアー、アクセサリーヘアーなどの頭髪装飾用の繊維束に好適に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度の変動係数が10〜40%である複数の単繊維からなる繊維束。
【請求項2】
少なくとも、繊度の変動係数が10〜40%である複数の単繊維を混合する工程を行う繊維束の製造方法。
【請求項3】
前記の工程が、少なくとも以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする請求項2記載の繊維束の製造方法。
(1)二以上の前記単繊維を混合してマルチフィラメントとすることで、複数のマルチフィラメントを得る工程、
(2)前記複数のマルチフィラメントの中から少なくとも一のマルチフィラメントを選択し、選択したマルチフィラメントと、該マルチフィラメントと平均繊度の差が10〜50デシテックスである他のマルチフィラメントと、を組み合わせてマルチフィラメント束を得る工程、
(3)前記(2)工程で得るマルチフィラメント束を構成するマルチフィラメントのうち、繊度の最小のものより10〜50デシテックス細い他のマルチフィラメントを組み合わせる工程、又は繊度の最大のものより10〜50デシテックス太い他のマルチフィラメントを組み合わせる工程。
【請求項4】
塩化ビニル系繊維からなる請求項1に記載の繊維束。
【請求項5】
請求項4に記載の繊維束からなる頭髪装飾用繊維束。
【請求項6】
かつら、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘアー、又はドールヘアーから選ばれる請求項5記載の頭髪装飾用繊維束からなる頭髪製品。


【公開番号】特開2010−121219(P2010−121219A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63769(P2007−63769)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】