説明

繊維構造物の加工方法

【課題】繊維構造物の表面に、任意の大きさ及び密度をもった多数の斑点を加工するにあたり、予め加工剤を内包した微粒子を準備するなどの煩雑な操作を必要とせず、上記表面及び上記斑点のうち少なくともいずれか一方が、任意の色または機能を示すように、染色、脱色または改質等された繊維構造物の加工方法を提供する。
【解決手段】繊維構造物を構成する繊維等と反応性物質との反応に対する作用粉体と非作用粉体とを混合して混合粉体を調整する。続いて、繊維構造物を湿潤液で均一に湿潤させてから、上記混合粉体をこの繊維構造物に付与する。その後、繊維構造物の表面で繊維等と反応性物質とを反応させると、この作用粉体が付着した部分のみで当該作用粉体が作用し、任意の大きさ及び密度をもった多数の斑点を加工することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維構造物の表面を斑点状に染色、脱色または改質することのできる繊維構造物の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維織編物の表面に任意の色、大きさ及び密度をもつ微細な斑点を配して、意匠性に優れた染色織編物を得ることがよく行われている。これらの染色織編物は、例えば、斑点柄の捺染型を使用した捺染法により得ることができる。
【0003】
しかし、この方法では、予め一定の斑点柄を配した捺染型を準備しなければならず、斑点の色、大きさ及び密度に対応した多くの捺染型を必要とする。
【0004】
そこで、染料を内包した微粒子を利用して無地の捺染型で捺染する試みがなされてきた。例えば、下記特許文献1には、ポリアニオン高分子とポリアミンからなる水不溶性の粒子状凝固物内に染料を含有しておき、この粒子状凝固物を任意の割合で混合した捺染糊を柄のない無地の捺染型で捺染することが提案されている。
【特許文献1】特開平10−110395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1では、種々の斑点柄に対応した多くの捺染型は必要としないが、一方で、予め染料を内包した微粒子(粒子状凝固物)を準備する煩雑な操作が必要である。
【0006】
また、上記特許文献1は、主に分散染料により繊維織編物を斑点状に染色するものであり、その他の種類の染料や染料以外の機能加工剤で繊維織編物を任意の斑点状に加工することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、繊維構造物の表面に、任意の大きさ及び密度をもった多数の斑点を加工するにあたり、予め加工剤を内包した微粒子を準備するなどの煩雑な操作を必要とせず、上記表面及び上記斑点のうち少なくともいずれか一方が、任意の色または機能を示すように、染色、脱色または改質等された繊維構造物の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、繊維などに反応性を有する材料または反応性に作用する材料からなる作用粉体と、逆に当該反応性または作用を有さない材料からなる非作用粉体とを混合した混合粉体を直接、繊維構造物に付与することにより、上記目的を達成できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明に係る繊維構造物の加工方法は、請求項1の記載によれば、繊維構造物を構成する繊維または当該繊維の付加物と反応性物質とを反応させる反応工程を備えた繊維構造物の加工方法において、上記反応に対する作用粉体及び非作用粉体を混合して混合粉体とする混合工程と、上記繊維構造物を湿潤液で均一に湿潤させる湿潤工程と、当該湿潤工程後に上記混合粉体を上記繊維構造物に付着させる付着工程とを備え、当該付着工程後に上記反応工程において、反応が上記繊維構造物の表面で部分的に生じるようにする。
【0010】
上述の構成によれば、本発明は、繊維構造物の表面に、任意の大きさ及び密度をもった多数の斑点を加工するにあたり、予め加工剤を内包した微粒子を準備するなどの煩雑な操作を必要とせず、上記表面及び上記斑点のうち少なくともいずれか一方が、任意の色または機能を示すように、染色、脱色または改質等された繊維構造物の加工方法を提供することができる。
【0011】
また、本発明は、請求項2に記載のように、請求項1に記載の繊維構造物の加工方法であって、その混合工程において、作用粉体は、反応性物質からなる反応性粉体であって、非作用粉体は、非反応性粉体であってもよい。
【0012】
これにより、反応性物質からなる反応性粉体が、作用粉体として繊維またはその付加物と直接反応することになる。即ち、繊維構造物の表面においては、反応性粉体が存在する部分のみで反応が生じ、反応性粉体が存在しない部分では反応が生じない。その結果、請求項2に記載の発明においても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0013】
また、本発明は、請求項3の記載のように、請求項1に記載の繊維構造物の加工方法であって、その混合工程において、作用粉体は、上記反応の触媒性粉体であって、非作用粉体は、上記反応の非触媒性粉体であって、その湿潤工程において、湿潤液は、反応性物質を含有する湿潤液であって、その反応工程において、触媒性粉体の作用により、上記反応が繊維構造物の表面で部分的に生じるようにしてもよい。
【0014】
この場合は、反応性物質が繊維またはその付加物と反応するために、触媒性粉体を形成する触媒の作用が不可欠である反応に適用される。
【0015】
これにより、作用粉体としての触媒性粉体の作用により、湿潤液に含有される反応性物質が、繊維またはその付加物と反応することになる。即ち、繊維構造物の表面には、反応性物質が全体に存在するが、触媒性粉体が存在する部分のみで反応が生じることになる。一方、触媒性粉体が存在しない部分では、反応性物質が存在していても反応が生じない。その結果、請求項3に記載の発明においても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0016】
また、本発明は、請求項4の記載のように、請求項1に記載の繊維構造物の加工方法であって、その混合工程において、作用粉体は、上記反応の阻害性粉体であって、非作用粉体は、上記反応の非阻害性粉体であって、その湿潤工程において、湿潤液は、反応性物質を含有する湿潤液であって、その反応工程において、阻害性粉体の作用により、上記反応が繊維構造物の表面で部分的に阻害されるようにしてもよい。
【0017】
この場合は、反応性物質と繊維またはその付加物との反応が、阻害性粉体を形成する阻害性物質の作用により阻害される反応に適用される。
【0018】
これにより、作用粉体としての阻害性粉体の作用により、湿潤液に含有される反応性物質が、繊維またはその付加物と反応しなくなる。即ち、繊維構造物の表面には、反応性物質が全体に存在しており、反応が生じることになる。しかし、阻害性粉体が存在する部分では、反応性物質が存在していてもその反応が疎外される。その結果、請求項4に記載の発明においても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0019】
本発明において、繊維構造物とは、主として繊維から構成された構造物であって、例えば、糸、織物、編物、不織布または縫製品などをいう。特に、本発明においては、上記繊維構造物のうち、織物、編物または不織布などを利用することにより、これらを連続して加工することができる。
【0020】
ここで、上記繊維構造物を構成する繊維とは、綿、麻等の天然セルロース繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、溶剤紡糸セルロース繊維等の再生セルロース繊維、羊毛、絹等の天然タンパク質繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維をいう。また、これらの繊維は、単一種類の繊維のみで繊維構造物を構成していてもよく、複数の種類の繊維が複合して繊維構造物を構成していてもよい。
【0021】
特に、本発明においては、上記繊維のうち、反応性の高い天然セルロース繊維、再生セルロース繊維または天然タンパク質繊維などを利用することが好ましい。更に、天然セルロース繊維や再生セルロース繊維などのセルロース系繊維を利用することが特に好ましい。これらセルロース系繊維は反応性が特に高く、例えば、反応染料による染色やその他の各種改質反応が利用できるからである。
【0022】
また、本発明において、繊維の付加物とは、繊維構造物を構成する繊維に、本発明に係る加工方法を行う以前に付加されている物質をいう。これら付加物には、例えば、当該繊維を染色している染料または当該繊維に各種機能を付与している機能加工剤などがある。
【0023】
本発明において、反応性物質とは、繊維構造物を構成する繊維または当該繊維の付加物に対して化学反応などにより特定の機能を生じさせる物質をいう。これら反応性物質には、例えば、セルロース系繊維に対して反応する反応染料やセルロース改質剤、繊維に染色された染料を分解反応で漂白する酸化剤や還元剤、または繊維に対して反応する親水化剤、撥水剤、防炎剤、抗菌剤などの各種機能加工剤などがある。
【0024】
本発明において、作用粉体(粉体については後述する)とは、上記繊維または上記付加物と反応性物質との反応に対して、何らかの作用を生じさせる物質からなる粉体をいう。これらの作用粉体は、上記反応性物質そのものからなる粉体、即ち、反応性粉体であってもよい。また、これらの作用粉体は、上記反応に対して触媒作用を有する物質からなる粉体、即ち、触媒性粉体であってもよい。更に、これらの作用粉体は、上記反応に対して阻害作用を有する物質、即ち、阻害性粉体であってもよい。
【0025】
上記触媒性粉体としては、例えば、セルロース系繊維と反応染料の反応を触媒するアルカリ剤、酸化剤または還元剤の活性化剤、或いは、親水化剤、撥水剤、防炎剤、抗菌剤などの各種機能加工剤に対する反応触媒などからなる粉体がある。また、上記阻害性粉体としては、例えば、セルロース系繊維と反応染料の反応を触媒するアルカリ剤を中和する酸剤、反応染料がセルロース系繊維と反応する前に当該反応染料と反応する防染剤(この防染剤には、ビニルスルホン基を有する反応染料に対するヒドロキシメタンスルホン酸などがある。)、酸化剤または還元剤の失活剤、或いは、親水化剤、撥水剤、防炎剤、抗菌剤などの各種機能加工剤に対する反応阻害剤などからなる粉体がある。
【0026】
一方、本発明において、非作用粉体とは、上記作用粉体とは逆に、上記繊維または上記付加物と反応性物質との反応に対して、何らの作用も生じさせない物質からなる粉体をいう。これらの非作用粉体は、反応性粉体に対して非反応性粉体、触媒性粉体に対して非触媒性粉体、そして、阻害性粉体に対して非阻害性粉体である。これらの非作用粉体には、例えば、セルロース系繊維などに対して反応性、触媒性、阻害性を有しない硫酸ナトリウムなどの各種塩類、タルクなどの無機物、ガラス微粒子からなる粉体などがある。
【0027】
続いて、本発明を構成する混合工程、湿潤工程、付着工程及び反応工程の各工程について説明する。
【0028】
まず、混合工程においては、作用粉体と非作用粉体とを混合して混合粉体とする。
【0029】
ここで、混合粉体とは、上述のように作用粉体と非作用粉体とを混合してなる粉体であって、作用粉体が非作用粉体の中の所々に分散した状態となっている粉体をいう。従って、この混合粉体が繊維構造物の表面に付着した場合でも、作用粉体は、この表面の全体ではなく、所々に付着することとなる。その結果、繊維構造物の表面において、繊維またはその付加物と反応性物質との反応が繊維構造物の表面で斑点状に作用を受けることとなる。
【0030】
また、目的とする斑点の大きさは、使用する作用粉体の粒子径によって制御することができる。作用粉体の粒子径が大きい場合には、大きな斑点として現れる。
【0031】
一方、目的とする斑点の密度は、作用粉体と非作用粉体との混合比率により制御することができる。作用粉体が多すぎる場合には、斑点状とならずに連続柄となる。上記混合比率は、使用する作用粉体の種類によって左右されるが、一般には、作用粉体を1重量%以下、非作用粉体を99重量%以上であることが好ましく、更に、作用粉体を0.3重量%以下、非作用粉体を99.7重量%以上であることがより好ましい。
【0032】
粉体の混合は、どのような方法で行ってもよく、手作業にて混合してもよく、一般に使用される混合機を使用してもよい。混合機を使用する場合には、その機構を特に限定するものではなく、例えば、傾斜円筒形混合機、V形混合機、二重円錐形混合機、リボン形混合機または垂直スクリュウ形混合機などが使用される。
【0033】
ここで、粉体とは、固体の物質がきわめて細かい粒の集まりとなっている状態をいう。
従って、当該粉体には、微粒子や顆粒なども含むものとする。本発明においては、粉体の形状及び粒子径を特に限定するものではないが、本発明においては、繊維構造物の表面に付着させる目的から、平均粒子径が1〜500μm程度のものが好ましく、更に好ましくは、1〜100μm程度のものがよい。例えば、粉体状染料の一般的な平均粒子径は1〜100μm程度であり、顆粒状染料の一般的な平均粒子径は100〜500μm程度である。また、工業用無機塩の粉体の一般的な平均粒子径は1〜500μm程度である。
【0034】
次に、湿潤工程においては、繊維構造物を湿潤液で均一に湿潤させる。
【0035】
ここで、湿潤液とは、繊維構造物を湿潤させることのできる液体であって、上記混合粉体を繊維構造物の表面に付着させるために付与される液体をいう。この湿潤液で濡れた繊維構造物の表面には、乾燥状態にある混合粉体が付着しやすくなる。
【0036】
ここで、繊維構造物が必要以上に湿潤すると、混合粉体を過剰に濡らしてしまい、斑点状の柄が滲むとことになる。逆に、繊維構造物の湿潤が不十分であると、混合粉体が繊維構造物に付着しないことになる。よって、繊維構造物の湿潤の程度は、使用する混合粉体によっても変化するが、一般に、繊維重量に対して50重量%〜100重量%の範囲が好ましく、70重量%〜100重量%の範囲がより好ましい。
【0037】
通常、この湿潤液には、水が使用される。本発明における作用粉体が反応性粉体である場合には、この湿潤液には、上記反応性物質と上記繊維または上記付加物との反応を触媒する物質または反応助剤などを含むことができる。これらには、例えば、セルロース系繊維と反応染料の反応を触媒するアルカリ剤、酸化剤または還元剤の活性化剤または保護剤、或いは、親水化剤、撥水剤、防炎剤、抗菌剤などの各種機能加工剤に対する反応触媒などが含まれる。
【0038】
また、本発明における作用粉体が触媒性粉体または阻害性粉体である場合には、この湿潤液には、上記反応性物質を含み、反応助剤なども含むことができる。これらの反応性物質には、例えば、セルロース系繊維に対して反応する反応染料やセルロース改質剤、繊維に染色された染料を分解反応で漂白する酸化剤や還元剤、または繊維に対して反応する親水化剤、撥水剤、防炎剤、抗菌剤などの各種機能加工剤などがある。
【0039】
更に、本発明における作用粉体が阻害性粉体である場合には、上記湿潤液には、上記反応性物質の他にその反応を触媒する物質を含むことができる。この場合には、上記阻害性粉体は、上記反応性物質または上記触媒のいずれかに作用して、上記反応性物質と上記繊維または上記付加物との反応を疎外する。
【0040】
ここで、繊維構造物を湿潤させるには、一般に使用される湿潤方法を使用すればよく、その方法を特に限定するものではない。これらの湿潤方法には、例えば、織物または編物などに対しては、パッド法、スプレー法またはキスロール法などがある。一般には、繊維構造物を湿潤液に浸漬した後に余剰の湿潤液をマングルで搾液するパッド法が好ましい。
【0041】
次に、付着工程においては、上記湿潤工程後の湿潤した繊維構造物に上記混合粉体を付与する。
【0042】
ここでは、繊維構造物が湿潤液で濡れており、この繊維構造物の表面が乾燥状態にある混合粉体に接触すると、この繊維構造物の表面全体に当該混合粉体が付着する。しかし、上述のように混合粉体は、作用粉体が非作用粉体の中の所々に分散した状態となっている。従って、作用粉体は、繊維構造物の表面全体ではなく、所々に分散して付着することとなる。
【0043】
ここで、繊維構造物の表面に付着する混合粉体の量は、繊維構造物の湿潤の程度、混合粉体の粒子径などによって変化する。本発明においては、この付着量を特に限定するものではないが、例えば、乾燥状態の繊維構造物の重量に対して、一般に300重量%〜700重量%の範囲となる。但し、本発明の効果を奏する範囲で、これより少なくしてもよい。
【0044】
湿潤した繊維構造物に混合粉体を付着させる方法は、どのようなものでもよく、例えば、繊維構造物が混合粉体の中をくぐる方法、繊維構造物に混合粉体を振り掛ける方法、混合粉体の流動層の中を繊維構造物が通過する方法などがある。また、付与方法によっては、両面加工以外に片面加工も可能である。一般に、織物、編物などの連続した繊維構造物に対しては、湿潤した織編物がスリット部を通して混合粉体を収容した粉体付着装置内を通過して、織編物の表面に混合粉体を均一に付与する方法が好ましい。
【0045】
次に、反応工程においては、上記付着工程後の繊維構造物の表面で反応性物質を繊維またはその付加物に対して反応させる。
【0046】
反応の条件は、使用される反応性物質と繊維またはその付加物との組み合わせによって変化する。また、触媒性粉体または阻害性粉体の作用が顕著に現れる条件を選定することが好ましい。この反応工程の手段には、例えば、乾熱処理法、湿熱処理法、コールドバッチ法などを採用することができる。
【0047】
その後、必要な場合には、反応後の繊維構造物から、未反応の反応性物質、触媒、反応助剤及び非作用粉体などを洗浄等により除去する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明に係る繊維構造物の加工方法を各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
本第1実施形態は、繊維構造物として綿織物を使用し、作用粉体として反応性物質である反応染料を反応性粉体として使用して、綿織物の表面を斑点状に染色する繊維構造物の加工方法に関するものである。
【0049】
本第1実施形態に使用する反応染料は、粉体であることが必要である。通常、繊維用反応染料は、粉状、顆粒状または液状で市販されている。このうち、市販の粉状反応染料をそのまま使用することが好ましい。但し、大きな径の斑点状に染色するために、粒子径を大きくした反応染料を作成して使用し、または顆粒状の反応染料を使用してもよい。
【0050】
これらの反応染料としては、セルロースに反応する、少なくとも1個の反応性基を有するモノアゾ系、ポリアゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、ホルマザン系又はジオキサジン系等の染料がある。ここで、セルロースに対する代表的な反応基としては、クロロトリアジン基、クロロピリミジン基、ビニルスルホン基等があるが、これらに限るものではなく、いずれのタイプでもよい。また、ビニルスルホン基とモノクロロトリアジン基を有する二官能染料等であってもよい。
【0051】
ここで使用される反応染料は、求める斑点状の柄の色相と染色濃度によって適宜決定される。また、色相の異なる複数の染料を組み合わせて使用し、多色の斑点柄に染色してもよい。更に、繊維構造物として既に染色された染色布を使用する場合には、重ねて染色される斑点状の柄が明確になるため、先に染色されている色相または濃度から識別可能な斑点状の色相及び濃度でなければならない。
【0052】
以下、本第1実施形態において、次のような実施例1−1〜実施例1−3の加工方法を行った。これらの実施例は、混合工程、湿潤工程、付着工程及び反応工程を含む。以下、各実施例を各工程に沿って説明する。
実施例1−1:
本実施例1−1では、通常の方法で糊抜き・精練・漂白・シルケット加工した綿織物(経緯40番手綿糸、平織り)を白地のまま綿織物10として使用した。
(A)混合工程
反応性粉体としての反応染料には、Remazol Red RUN(ダイスタージャパン株式会社)の粉体タイプを市販粉体のまま使用した。この染料の平均粒子径は、1〜100μmの範囲にあった。一方、非反応性粉体として、中性無水芒硝(石田化学工業株式会社)を市販粉体のまま使用した。この薬品の平均粒子径は、150〜250μmの範囲にあった。
【0053】
上記反応染料を1グラムと上記中性無水芒硝を999グラムとをプラスチック製袋に入れて、これを手作業にて10分間混合し、反応染料を0.1重量%含有する混合粉体20を作成した。
(B)湿潤工程
本実施例1−1に係る湿潤液は、上記反応染料の反応触媒であるアルカリ剤を含有する。具体的には、メタ珪酸ソーダ・9水和物(石田化学工業株式会社)を10グラム/リットル溶解した室温(25℃)の水溶液を湿潤液30として使用した。
【0054】
本実施例1−1に係る湿潤工程では、連続浸漬法を使用した。具体的には、上記綿織物10を上記湿潤液30に浸漬後、マングルにて搾液して、ピックアップ90重量%に湿潤した綿織物10を得た。
(C)付着工程
本実施例1−1に使用した粉体付着装置を図1により説明する。図1において、湿潤工程で湿潤した綿織物10が、ガイドロール40を経て、粉体付着装置50に導入される。この粉体付着装置50の内部には、上記混合粉体20が収容されている。また、この粉体付着装置50の下部には、綿織物10の導入部として、装置壁60、61の間にスリット部70が設けられている。
【0055】
このように、粉体付着装置50に導入され湿潤した綿織物10の表面には、粉体付着装置50内の混合粉体20が付着する。その後、混合粉体20が付着した綿織物10は、粉体付着装置50の上部に取り出される。この時、綿織物10の両表面には、均一に混合粉体20が付着しており、余分の混合粉体20は自然に落下して粉体付着装置50内に回収される。また、綿織物10を振動させることにより、この余分の混合粉体20を強制的に回収してもよい。
【0056】
次に、この粉体付着装置50の構造を図2により説明する。図2は、粉体付着装置50を側面から見たX−X断面図であり、綿織物10の両面に加工できるものである。湿潤した綿織物10が粉体付着装置50に導入される場合に、この綿織物10は、粉体付着装置50の下部に設けられたスリット部70において、装置壁60、61の下端に付設されたスキージ80、81によって扱かれ、綿織物10の導入によって粉体付着装置50内の混合粉体20が装置外に脱落することがない。
【0057】
上述のように、粉体付着装置50内を通過して当該装置の上部に取り出された綿織物10の両面には、混合粉体20が均一に付着していた。この混合粉体20の付着量は、乾燥状態の綿織物10の重量に対して、500重量%であった。
(D)反応工程
上記付着工程を経て混合粉体20が付着した綿織物10をロール状に巻き上げた。この巻き上げたロールの表面をシートでカバーして上記湿潤液30の乾燥を防止しながら、コールドバッチ法で上記反応染料を綿織物10に反応させた。この際の反応条件は、室温(25℃)で30分間であった。
【0058】
上記反応工程終了後の綿織物10を冷水及び温水(90℃)により洗浄して、綿織物10から未固着の反応染料、アルカリ剤及び芒硝を除去した。この洗浄した綿織物10を乾燥して本実施例1−1に係る斑点状に染色された綿織物10を得た。
【0059】
この染色された綿織物10には、白地に赤色で約0.5mm径の斑点が、10cm角当り1500〜2500個程度、ほぼ均一に分散した柄が表裏両面に染色されていた。
実施例1−2:
本実施例1−2では、上記実施例1−1と同一の綿織物を予め反応染料により黄色に地染めして、染色された綿織物11として使用した。この黄色の地染めは、Remazol Brilliant Yellow 4GL(ダイスタージャパン株式会社)を綿織物の重量に対して、1.0重量%使用して通常の浸染法で染色した。
(A)混合工程
反応性粉体としての反応染料には、反応染料としてCibacron Red C−2G(ハンツマン・ジャパン株式会社)とCibacron Navy C−R(ハンツマン・ジャパン株式会社)との2種類の染料を市販粉体のまま使用した。これらの染料の平均粒子径は、いずれも1〜100μmの範囲にあった。一方、非反応性粉体としては、上記実施例1−1と同一の中性無水芒硝(石田化学工業株式会社)を使用した。
【0060】
上記2種類の反応染料をそれぞれ0.5グラム及び上記中性無水芒硝を999グラムとをプラスチック製袋に入れて、これを手作業にて10分間混合し、2種類の反応染料を合計で0.1重量%含有する混合粉体21を作成した。
(B)湿潤工程、(C)付着工程及び(D)反応工程は、上記実施例1−1と同様にして行った。ここで、付着工程における混合粉体21の付着量は、乾燥状態の綿織物11の重量に対して、500重量%であった。
【0061】
上記反応工程終了後の綿織物11を上記実施例1−1と同様にして洗浄及び乾燥して、本実施例1−2に係る斑点状に染色された綿織物11を得た。
【0062】
この綿織物11には、黄色地に青色と赤色の2色で約0.5mm径の斑点が、10cm角当り1500〜2500個程度、ほぼ均一に分散した柄が表裏両面に染色されていた。
実施例1−3:
本実施例1−3では、上記実施例1−1と同一の綿織物を白地のまま綿織物12として使用した。
(A)混合工程
反応性粉体としての反応染料には、Cibacron Navy C−R(ハンツマン・ジャパン株式会社)を市販粉体のまま使用した。この染料の平均粒子径は、1〜100μmの範囲にあった。一方、非反応性粉体として、ガラスビーズ(アズワン株式会社)を使用した。このガラスビーズの平均粒子径は、0.105〜0.125mmであった。
【0063】
上記反応染料を0.5グラムと上記ガラスビーズを999.5グラムとをプラスチック製袋に入れて、これを手作業にて10分間混合し、上記反応染料を0.05重量%含有する混合粉体22を作成した。
(B)湿潤工程
上記実施例1−1のメタ珪酸ソーダ・9水和物に代えて、アルカリ剤として、食品添加物用苛性ソーダ(日本曹達株式会社)を2グラム/リットル使用したものを湿潤液31として使用した以外は、上記実施例1−1と同様にして行った。
(C)付着工程
上記実施例1−1で使用した図1及び図2に示す粉体付着装置50に代えて、図3に示す粉体付着装置51を使用した以外は、上記実施例1−1と同様にして行った。
【0064】
ここで、図3は、粉体付着装置51を側面から見た断面図(図2のX−X断面図に対応するもの)であり、綿織物12の片面のみに加工できるものである。湿潤した綿織物12が粉体付着装置51に導入される場合に、この綿織物12は、粉体付着装置51の下部に設けられたスリット部71において、装置壁62の下端に付設されたスキージ82によって装置壁63に押さえつけられた状態で扱かれる。
【0065】
そのことにより、綿織物12の装置壁63側には混合粉体22が接触せず、粉体付着装置51内を通過して当該装置の上部に取り出された綿織物12には、その片面のみに混合粉体22が均一に付着していた。この混合粉体22の付着量は、乾燥状態の綿織物12の重量に対して、300重量%であった。
(D)反応工程
上記付着工程を経て混合粉体22が付着した綿織物12をロール状に巻き上げた。その際、綿織物とポリエチレンフィルムを重ねて巻き上げることにより、綿織物12の両面のうち混合粉体22が付着した面の混合粉体22が、付着していない面に接触することを防止した。この巻き上げたロールの表面をシートでカバーして上記湿潤液31の乾燥を防止しながら、コールドバッチ法で上記反応染料を綿織物12に反応させた。この際の反応条件は、室温(25℃)で60分間であった。
【0066】
上記反応工程終了後の綿織物12を上記実施例1−1と同様にして洗浄及び乾燥して、本実施例1−3に係る斑点状に染色された綿織物12を得た。
【0067】
この綿織物12は、白地に青色で約0.5mm径の斑点が、10cm角当り800〜1200個程度、ほぼ均一に分散した柄が片面のみに染色されていた。この反対側の面は、白地の無地のままであった。
(第2実施形態)
本第2実施形態は、繊維構造物として反応染料で染色された綿織物を使用し、作用粉体として反応性物質である漂白剤を反応性粉体として使用して、綿織物に染色された染料を漂白剤で斑点状に脱色する繊維構造物の加工方法に関するものである。
【0068】
本第2実施形態に使用する反応染料で染色された綿織物は、上記第1実施形態で説明したものと同様の反応染料で、予め、通常の染色法を用いて染色されたものである。染色に使用される染料と漂白剤との組み合わせにより、脱色の程度は異なってくる。
【0069】
本第2実施形態に使用する漂白剤は、粉体状であることを必要とし、一般に繊維の漂白剤としては、酸化剤または還元剤が使用される。粉体状の酸化剤としては、サラシ粉、高度サラシ粉、過酸化ソーダ、過ホウ酸ソーダまたは過マンガン酸カリなどがある。一方、粉体状の還元剤としては、酸性亜硫酸ソーダ、ハイドロサルファイト、ロンガリット、デクロリンなどがある。
【0070】
以下、本第2実施形態において、次のような実施例2−1の加工方法を行った。この実施例2−1を各工程に沿って説明する。
実施例2−1:
本実施例2−1では、上記実施例1−1と同一の綿織物を予め反応染料により紺色に地染めして綿織物13として使用した。この紺色の地染めは、Drimarene Navy X−RBL(クラリアントジャパン株式会社)を綿織物の重量に対して、4.0重量%使用して通常の浸染法で染色した。
(A)混合工程
反応性粉体としての漂白剤には、酸化剤である高度サラシ粉(株式会社小出商店)を使用した。この高度サラシ粉はペレット状で市販されており、これを乳鉢で粉砕して使用した。この粉砕後の平均粒子径は、1〜100μmの範囲にあった。一方、非反応性粉体としては、上記実施例1−1と同一の中性無水芒硝(石田化学工業株式会社)を使用した。
【0071】
上記粉砕後の高度サラシ粉を1グラムと上記中性無水芒硝を999グラムとをプラスチック製袋に入れて、これを手作業にて10分間混合し、高度サラシ粉を0.1重量%含有する混合粉体23を作成した。
(B)湿潤工程
本実施例2−1に係る湿潤液は、上記高度サラシ粉の保護剤であるアルカリ剤を含有する。具体的には、食品添加物用苛性ソーダ(日本曹達株式会社)を2グラム/リットル溶解した室温(25℃)の水溶液を湿潤液32として使用した。
【0072】
本実施例2−1に係る湿潤工程では、上記第1実施形態と同様の連続浸漬法を使用した。具体的には、上記綿織物13を上記湿潤液32に浸漬後、マングルにて搾液して、ピックアップ90重量%に湿潤した綿織物13を得た。
(C)付着工程
上記湿潤した綿織物13を上記第1実施形態と同一の粉体付着装置(図1参照)で加工した。粉体付着後の綿織物13の両面には、上記混合粉体23が均一に付着していた。混合粉体23の付着量は、乾燥状態の綿織物13の重量に対して、500重量%であった。
(D)反応工程
上記付着工程を経て上記混合粉体23が付着した綿織物13に対する反応は、室温(25℃)で30秒間のタイミングを取って行った。
【0073】
上記反応工程終了後の綿織物13を冷水及び温水(90℃)により洗浄して、綿織物13から未反応の酸化剤、アルカリ剤及び芒硝を除去した。この洗浄した綿織物13を乾燥して本実施例2−1に係る斑点状に脱色された綿織物13を得た。
【0074】
この綿織物13には、紺色地に白色で約0.3mm径の斑点が、10cm角当り1500〜2500個程度、ほぼ均一に分散した柄が表裏両面に脱色されていた。
(第3実施形態)
本第3実施形態は、繊維構造物として綿織物を使用し、作用粉体として反応性物質であるセルロース改質剤を反応性粉体として使用して、綿織物の表面を斑点状に改質する繊維構造物の加工方法に関するものである。
【0075】
セルロース系繊維の改質には、一般にエステル化、エーテル化などの多くの反応が利用できる。そこで、本第3実施形態においては、セルロース系繊維のエーテル化反応を取り上げ、改質剤としてクロロ酢酸ナトリウムを使用した。
【0076】
セルロース系繊維にクロロ酢酸ナトリウムを反応させると、反応部分がカルボキシメチルセルロース(以下、CMCという)となり、親水性のアニオン物質に改質される。綿織物をこのCMCに改質すると、改質部分の親水性が向上し、また、このCMCに亜鉛等の金属を担持させると抗菌性や消臭性を発揮するようになる。
【0077】
ところが、綿織物の全面にこのCMCへの改質を行うと、場合によっては、綿織物の風合いを損ね、強度を低下させることもある。そこで、本発明の加工方法をこの改質に利用すると、改質された部分だけで十分な機能を発揮するとともに全面加工の欠点が解消される。
【0078】
以下、本第3実施形態において、次のような実施例3−1の加工方法を行った。この実施例3−1を各工程に沿って説明する。
実施例3−1:
本実施例3−1では、上記実施例1−1と同一の糊抜き・精練・漂白・シルケット加工した綿織物(経緯40番手綿糸、平織り)を白地のまま綿織物14として使用した。
(A)混合工程
反応性粉体としての改質剤には、クロロ酢酸ナトリウム(ダイセル化学工業株式会社)を市販の顆粒のまま使用した。この顆粒の平均粒子径は、100〜500μmの範囲にあった。一方、非反応性粉体としては、上記実施例1−1と同一の中性無水芒硝(石田化学工業株式会社)を使用した。
【0079】
上記クロロ酢酸ナトリウムを3グラムと上記中性無水芒硝を997グラムとをプラスチック製袋に入れて、これを手作業にて10分間混合し、クロロ酢酸ナトリウムを0.3重量%含有する混合粉体24を作成した。
(B)湿潤工程
本実施例3−1に係る湿潤液は、上記クロロ酢酸ナトリウムの反応触媒であるアルカリ剤を含有する。具体的には、食品添加物用苛性ソーダ(日本曹達株式会社)を5グラム/リットル溶解した室温(25℃)の水溶液を湿潤液33として使用した。
【0080】
本実施例3−1に係る湿潤工程では、上記第1実施形態と同様の連続浸漬法を使用した。具体的には、上記綿織物14を上記湿潤液33に浸漬後、マングルにて搾液して、ピックアップ90重量%に湿潤した綿織物14を得た。
(C)付着工程
上記湿潤した綿織物14を上記第1実施形態と同一の粉体付着装置(図1参照)で加工した。粉体付着後の綿織物14の両面には、上記混合粉体24が付着していた。混合粉体24の付着量は、乾燥状態の綿織物14の重量に対して、500重量%であった。
(D)反応工程
上記付着工程を経て上記混合粉体24が付着した綿織物14に乾熱処理装置を用いて乾熱処理法により反応させた。反応条件は、120℃で90秒間のタイミングを取って行った。
【0081】
上記反応工程終了後の綿織物14を冷水及び温水(90℃)により洗浄して、綿織物14から未反応の改質剤、アルカリ剤及び芒硝を除去した。この洗浄した綿織物14を乾燥して本実施例3−1に係る斑点状に改質された綿織物14を得た。
【0082】
この綿織物14は、白地に白色の改質であり、そのままでは確認できない。そこで、塩基性染料を使用して通常の方法で染色することにより、改質の程度を確認した。その結果、綿織物14は、改質部分のみが塩基性染料により染色され、約2〜3mm径の斑点が、10cm角当り400〜600個程度、ほぼ均一に分散した柄が表裏両面に確認された。
(第4実施形態)
本第4実施形態は、繊維構造物として綿織物を使用し、反応性物質としての反応染料を湿潤液に含有させて使用する。ここでは、作用粉体として上記反応染料の反応触媒であるアルカリ剤を触媒性粉体として使用して、綿織物の表面を斑点状に染色する繊維構造物の加工方法に関するものである。
【0083】
本第4実施形態に使用する反応染料は、上記第1実施形態において説明した反応染料と同様であるが、ここでは、粉体であることを必要としない。この反応染料は、湿潤液に含有させて使用するからである。ここで使用される反応染料は、求める斑点状の柄の色相と染色濃度によって適宜決定される。
【0084】
本第4実施形態に使用するアルカリ剤は、触媒性粉体として使用することから、粉体であることが必要である。これらのアルカリ剤としては、メタ珪酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどがある。これらのアルカリ剤のうち、粉状または顆粒状で市販されているものを使用することが好ましい。
【0085】
以下、本第4実施形態において、次のような実施例4−1の加工方法を行った。この実施例4−1を各工程に沿って説明する。
実施例4−1:
本実施例4−1では、上記実施例1−1と同一の糊抜き・精練・漂白・シルケット加工した綿織物(経緯40番手綿糸、平織り)を白地のまま綿織物15として使用した。
(A)混合工程
触媒性粉体としてのアルカリ剤には、メタ珪酸ナトリウム・無水物(米山薬品工業株式会社)を市販粉体のまま使用した。この粉体の平均粒子径は、1〜100μmの範囲にあった。一方、非反応性粉体としては、上記実施例1−1と同一の中性無水芒硝(石田化学工業株式会社)を使用した。
【0086】
上記メタ珪酸ナトリウム・無水物を1グラムと上記中性無水芒硝を999グラムとをプラスチック製袋に入れて、これを手作業にて10分間混合し、メタ珪酸ナトリウムを0.1重量%含有する混合粉体25を作成した。
(B)湿潤工程
本実施例4−1に係る湿潤液は、反応性物質である反応染料を含有する。具体的には、Remazol Brilliant Blue R−KN(ダイスタージャパン株式会社)を1グラム/リットル溶解した室温(25℃)の水溶液を湿潤液34として使用した。
【0087】
本実施例4−1に係る湿潤工程では、連続浸漬法を使用した。具体的には、上記綿織物15を上記湿潤液34に浸漬後、マングルにて搾液して、ピックアップ90重量%に湿潤した綿織物15を得た。
(C)付着工程
上記湿潤した綿織物15を上記第1実施形態と同一の粉体付着装置(図1参照)で加工した。粉体付着後の綿織物15の両面には、上記混合粉体25が付着していた。混合粉体25の付着量は、乾燥状態の綿織物15の重量に対して、500重量%であった。
(D)反応工程
上記付着工程を経て混合粉体25が付着した綿織物をロール状に巻き上げた。この巻き上げたロールの表面をシートでカバーして上記湿潤液34の乾燥を防止しながら、コールドバッチ法で上記反応染料を綿織物15に反応させた。この際の反応条件は、室温(25℃)で60分間であった。
【0088】
ここで、反応性物質である反応染料は、湿潤工程により綿織物15の全面に付与されている。しかし、上記反応条件においては、触媒性粉体が存在する斑点部分においてのみ、反応が生じることになる。
【0089】
上記反応工程終了後の綿織物15を冷水及び温水(90℃)により洗浄して、綿織物15から未固着の反応染料、アルカリ剤及び芒硝を除去した。この洗浄した綿織物15を乾燥して本実施例4−1に係る斑点状に染色された綿織物15を得た。
【0090】
この染色された綿織物15には、白地に淡青色で約0.5mm径の斑点が、10cm角当り1500〜2500個程度、ほぼ均一に分散した柄が表裏両面に染色されていた。
(第5実施形態)
本第5実施形態は、繊維構造物として綿織物を使用し、反応性物質としての反応染料とその反応触媒であるアルカリ剤を湿潤液に含有させて使用する。ここでは、作用粉体として上記アルカリ剤を中和して上記反応染料の反応を阻害する酸剤を阻害性粉体として使用して、綿織物の表面を染色する際に斑点状に染色を疎外する繊維構造物の加工方法に関するものである。
【0091】
本第5実施形態に使用する反応染料は、上記第1実施形態において説明した反応染料と同様であるが、ここでは、粉体であることを必要としない。この反応染料は、湿潤液に含有させて使用するからである。ここで使用される反応染料は、表面に求める色相と染色濃度によって適宜決定される。
【0092】
本第5実施形態に使用するアルカリ剤は、上記反応染料の触媒であり、上記第4実施形態において説明したアルカリ剤と同様であるが、ここでは、粉体であることを必要としない。このアルカリ剤は、湿潤液に含有させて使用するからである。ここで使用されるアルカリ剤は、上記反応染料の種類と求める色相と染色濃度によって適宜決定される。
【0093】
本第5実施形態に使用する酸剤は、上記アルカリ剤を中和してその触媒作用を阻害するものであり、阻害性粉体として使用することから、粉体であることが必要である。これらの酸剤としては、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸などの粉状または顆粒状で市販されている有機酸などを使用することが好ましい。
【0094】
以下、本第5実施形態において、次のような実施例5−1の加工方法を行った。この実施例5−1を各工程に沿って説明する。
実施例5−1:
本実施例5−1では、上記実施例1−1と同一の糊抜き・精練・漂白・シルケット加工した綿織物(経緯40番手綿糸、平織り)を白地のまま綿織物16として使用した。
(A)混合工程
阻害性粉体としての酸剤には、酒石酸(米山薬品工業株式会社)を使用した。この酒石酸は粉体で市販されているが、更にこれを乳鉢で粉砕して使用した。この粉砕後の平均粒子径は、1〜100μmの範囲にあった。一方、非反応性粉体としては、上記実施例1−1と同一の中性無水芒硝(石田化学工業株式会社)を使用した。
【0095】
上記酒石酸を1グラムと上記中性無水芒硝を999グラムとをプラスチック製袋に入れて、これを手作業にて10分間混合し、酒石酸を0.1重量%含有する混合粉体26を作成した。
(B)湿潤工程
本実施例5−1に係る湿潤液は、反応性物質である反応染料とその反応触媒であるアルカリ剤とを含有する。具体的には、Remazol Brilliant Blue R−KN(ダイスタージャパン株式会社)を10グラム/リットルと、重炭酸ナトリウム(東ソー株式会社)を40グラム/リットルと、湿潤剤としての尿素(日産化学工業株式会社)を50グラム/リットルとを溶解した室温(25℃)の水溶液を湿潤液35として使用した。
【0096】
本実施例5−1に係る湿潤工程では、連続浸漬法を使用した。具体的には、上記綿織物16を上記湿潤液35に浸漬後、マングルにて搾液して、ピックアップ90重量%に湿潤した綿織物16を得た。
(C)付着工程
上記湿潤した綿織物16を上記第1実施形態と同一の粉体付着装置(図1参照)で加工した。粉体付着後の綿織物16の両面には、上記混合粉体26が付着していた。混合粉体26の付着量は、乾燥状態の綿織物16の重量に対して、500重量%であった。
(D)反応工程
上記付着工程を経て混合粉体26が付着した綿織物16を熱風乾燥機で乾燥した。上記付着工程及びこの乾燥の段階で、反応触媒である重炭酸ナトリウムは、阻害性粉体である酒石酸によって中和され、反応染料の触媒作用を消失する。
【0097】
この乾燥後の綿織物16に蒸熱処理装置を用いたスチーム処理法により反応染料を反応させた。反応条件は、110℃で3分間のタイミングを取って行った。
【0098】
ここで、反応性物質である反応染料と反応触媒である重炭酸ナトリウムとは、湿潤工程により綿織物16の全面に付与されている。従って、上記反応条件においては、全面で反応が生じることとなる。しかし、阻害性粉体が存在する斑点部分においては、上述のように中和がされており反応が生じることがない。
【0099】
上記反応工程終了後の綿織物16を冷水及び温水(90℃)により洗浄して、綿織物16から未固着の反応染料、アルカリ剤、酸剤、尿素及び芒硝を除去した。この洗浄した綿織物16を乾燥して本実施例5−1に係る斑点状に染色された綿織物16を得た。
【0100】
この染色された綿織物16には、青地に白色で約0.5mm径の斑点が、10cm角当り1500〜2500個程度、ほぼ均一に分散した柄が表裏両面に染色されていた。
【0101】
以上のことにより、上記各実施形態においては、繊維構造物の表面に、任意の大きさ及び密度をもった多数の斑点を加工するにあたり、予め加工剤を内包した微粒子を準備するなどの煩雑な操作を必要とせず、上記表面及び上記斑点のうち少なくともいずれか一方が、任意の色または機能を示すように、染色、脱色または改質等された繊維構造物の加工方法を提供することができる。
【0102】
また、繊維構造物の表面のうち片面のみでなく両面にも同時に、多数の斑点を加工することも可能である。
【0103】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限らず次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施形態は、繊維構造物として綿織物を使用するものであるが、綿織物以外にも、綿編物、レーヨン不織布、ポリエステル/綿混紡織物などが使用できる。
(2)また、繊維構造物として織編物のみでなく、縫製品に加工してもよい。例えば、ジーンズやTシャツに直接、加工してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1実施形態において使用する粉体付着装置を示す斜視図である。
【図2】図1においてX−X線に沿う断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態において実施例1−3で使用する粉体付着装置(片面加工用)の断面図である。
【符号の説明】
【0105】
10〜16…綿織物、20〜26…混合粉体、30〜35…湿潤液、40…ガイドロール、50、51…粉体付着装置、60〜63…装置壁、70、71…スリット部、80〜82…スキージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維構造物を構成する繊維または当該繊維の付加物と反応性物質とを反応させる反応工程を備えた繊維構造物の加工方法において、
前記反応に対する作用粉体及び非作用粉体を混合して混合粉体とする混合工程と、
前記繊維構造物を湿潤液で均一に湿潤させる湿潤工程と、
当該湿潤工程後に前記混合粉体を前記繊維構造物に付着させる付着工程とを備え、
当該付着工程後に、前記反応工程において、前記反応が前記繊維構造物の表面で部分的に生じるようにすることを特徴とする繊維構造物の加工方法。
【請求項2】
前記混合工程において、前記作用粉体は、前記反応性物質からなる反応性粉体であり、前記非作用粉体は、非反応性粉体であることを特徴とする請求項1に記載の繊維構造物の加工方法。
【請求項3】
前記混合工程において、前記作用粉体は、前記反応の触媒性粉体であり、前記非作用粉体は、前記反応の非触媒性粉体であり、
前記湿潤工程において、前記湿潤液は、前記反応性物質を含有する湿潤液であって、
前記反応工程において、前記触媒性粉体の作用により、前記反応が前記繊維構造物の表面で部分的に生じるようにすることを特徴とする請求項1に記載の繊維構造物の加工方法。
【請求項4】
前記混合工程において、前記作用粉体は、前記反応の阻害性粉体であり、前記非作用粉体は、前記反応の非阻害性粉体であり、
前記湿潤工程において、前記湿潤液は、前記反応性物質を含有する湿潤液であって、
前記反応工程において、前記阻害性粉体の作用により、前記反応が前記繊維構造物の表面で部分的に阻害されるようにすることを特徴とする請求項1に記載の繊維構造物の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−127171(P2009−127171A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307175(P2007−307175)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000219794)東海染工株式会社 (24)
【Fターム(参考)】