説明

繊維構造物

【課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、花粉が付着しにくく、落ちやすい花粉付着防止性能に優れ、耐久制電性および柔軟な風合いを有する繊維構造物を提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の繊維構造物は、繊維表面に形成された樹脂組成物が5〜400nmの有機微粒子を含むことを特徴とする花粉付着防止繊維構造物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉症の原因である花粉が付着しにくく、落ちやすいという花粉付着防止性と耐久制電性および柔軟な風合いを有する花粉付着防止繊維構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花粉症は2月〜4月頃のスギ花粉に代表されるように、ヒノキ、イネ、ブタクサ、ハンノキなど多くの花粉がアレルゲンとなり鼻、目、喉、皮膚などに不快感を与えるものであり、有効な治療法がないために年々、患者数が増大し、国民病とまでいわれている。
【0003】
従来から、花粉症患者は、外出時には防塵マスクや防塵メガネをしたりなどの対策を講じているが、衣服に付着した花粉はそのまま家の中に持ち込んでいるので、屋内外を問わず花粉症に悩まされているのが現状である。
【0004】
衣服等に付着した花粉をできるだけ屋内に持ち込まないために、繊維布帛の表面摩擦係数や表面粗さを規定し、花粉が付きにくく、かつ、落ちやすい繊維構造物が提案されている(特許文献1参照)。かかる繊維構造物は高密度の長繊維織物を弗素系撥水剤で処理し、布帛表面を平滑にして花粉をつきにくく、落ちやすくするには効果的なものであるが、短繊維を用いた布帛や編物では効果が不十分で、また、ブラウスやシャツ等の用途には布帛設計上、着用感に問題があった。
【0005】
また、繊維構造物に花粉付着防止機能を賦与するために、繊維構造物生地をコロイダルシリカ類の微粒子を含有する加工剤で処理し、該生地の表面にコロイダルシリカ類の微粒子を均一に付着させる方法が提案されている(特許文献2)。しかしながらコロイダルシリカのような無機微粒子は布帛のスリップ防止剤として使用されることも多く、布帛の風合いを粗硬にさせるものであり、摩擦抵抗が大きくなり制電性が低下するため衣料としては好ましくないものであった。
【0006】
また、アクリル基および/またはメタクリル基を有する重合体の被膜上にオルガノポリシロキサンおよび/またはポリエチレンワックスを有する繊維構造物であって摩擦堅ロウ度に優れたポリエステル系繊維構造物が提案されている(特許文献3)。ポリエチレンワックスはオレフィン系樹脂の1種であるが、重合体の被膜上にポリエチレンワックスを有するという2層構造とするもので柔軟性に劣るものであった。
【特許文献1】特開2003−227070号公報
【特許文献2】特開2004−3046号公報
【特許文献3】特開2002−294562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、花粉が付着しにくく、落ちやすい花粉付着防止性能に優れ、耐久制電性および柔軟な風合いを有する繊維構造物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、有機微粒子を含む樹脂組成物からなる被膜を繊維表面に有する花粉防止繊維構造物であって、該有機微粒子の粒径が5〜400nmであることを特徴とする花粉付着防止繊維構造物である。
【0009】
(1) 有機微粒子を含む樹脂組成物からなる被膜を繊維表面に有する花粉防止繊維構造物であって、該有機微粒子の一次粒径が5〜400nmであることを特徴とする花粉付着防止繊維構造物。
【0010】
(2) 該有機微粒子がオレフィン系微粒子であることを特徴とする上記(1)に記載の花粉付着防止繊維構造物。
【0011】
(3) 該オレフィン系微粒子が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体およびエチレン・ビニルアセテート共重合体から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の花粉付着防止繊維構造物。
【0012】
(4) 該樹脂組成物が、ポリアルキレンオキサイドセグメントを主体とする主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として2個以上のアクリル基および/またはメタクリル基を有する重合性単量体を重合せしめてなる樹脂組成物であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の花粉付着防止繊維構造物。
【0013】
(5) 該被膜の厚みが5〜40nmであって、該重合性単量体/有機微粒子の重量混合比が1/0.4〜1/1.0であることを特徴とする上記(4)に記載の花粉付着防止繊維構造物。
【0014】
(6) 該繊維構造物が、下記測定法により測定したときの繊維構造物表面への擬似花粉の付着数が250個以下の布帛である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の花粉付着防止繊維構造物。
(測定方法)
7×7cmの繊維布帛30枚を20℃×65%RH下に24時間放置した後、1gの擬似花粉とともにポリエチレンの袋の中に入れ、20℃×65%RHの空気で、約20リットルに膨らませて口を縛る。かかるポリエチレン袋を1回/1秒の速度で縛り口を基準に上下に100回振ったのち、繊維布帛を取り出し、繊維布帛表面を50倍に拡大した写真を3カ所撮り、写真の7.5×10cmの擬似花粉の個数を数え、3カ所の平均を計算する。
【0015】
(7) 該繊維構造物が、コート、ブルゾン、ウインドブレーカー、ブラウス、シャツ、スカート、スラックス、手袋、帽子、布団側地、布団干しカバーおよびカーテンから選ばれるものである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の花粉付着防止繊維構造物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、花粉が付着しにくく、かつ落ちやすいという優れた花粉付着防止性能と耐久制電性および柔軟な風合いを有する繊維構造物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は前記課題、つまり優れた花粉付着防止性能を有し、且つ柔軟な風合いを有する繊維構造物について鋭意検討した結果、繊維表面に有機微粒子を含む樹脂組成物を固着させることにより、かかる課題を解決することを究明したものである。
【0018】
すなわち、一次粒経5〜400nmという特定の粒子径を有する有機微粒子を含んだ樹脂組成物を用いて、繊維上で被膜を形成してみたところ、繊維構造物からの花粉の離脱性が向上し、得られた繊維構造物は優れた花粉付着防止性と制電性および柔軟な風合いを有するものであった。
【0019】
本発明の樹脂組成物において用いる有機微粒子は、5〜400nmの一次粒径を有することが必要である。さらには10〜100nmの一次粒径を有するものが好ましく用いられる。一次粒径が5nmより小さいと樹脂組成物の持つ表面特性を変えることができず、粘着性のある樹脂組成物では花粉の離脱性向上がはかれない。また、一次粒径が400nmより大きいと有機微粒子の特性が表面に出過ぎるため繊維構造物を形成する糸糸間の滑りが大きくなりすぎ目ズレなどの欠点が発生する上に、親水性が阻害され制電性をも阻害する。有機微粒子としては粒径が5〜400nmの範囲内とする必要があるが、本発明においては、該粒径範囲外の粒径のものが0%を超え、10%程度まで含まれる場合もさしつかえなく、本発明の繊維構造物に含まれる。樹脂組成物中に、有機微粒子を添加する際、分散液の状態で、添加することが好ましい。
【0020】
本発明の有機微粒子はオレフィン系微粒子であることが好ましく、さらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体およびエチレン・ビニルアセテート共重合体から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。これらを単独あるいは2種以上の混合物として使用できる。オレフィン系樹脂の中でも花粉付着防止性、風合いの柔軟性を考慮してエチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体が好ましい。
【0021】
かかる有機微粒子は特に限定されるものではないが、融点が140℃以下と低いものがより好ましい。繊維構造物に熱処理を行った際、融点が低いと樹脂組成物が均一な膜になりやすくまた、融点が高いと部分的に溶融しない粒子が樹脂組成物の形成を阻害する可能性がある。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、ポリアルキレンオキサイドセグメントを主体とする主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として2個以上のアクリル基および/またはメタクリル基を有する重合性単量体を重合せしめてなる樹脂組成物であることが好ましい。
【0023】
本発明の繊維構造物は、繊維構造物を構成する単繊維表面に5〜40nm、特に好ましくは10〜30nmの樹脂組成物被膜が形成されているものである。
【0024】
この被膜としては、本発明においてはポリアルキレンオキサイドセグメントを主体とする主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として2個以上のアクリル基および/またはメタクリル基を有する単量体を重合してなる被膜が好ましく用いられる。かかる単量体としては、例えばポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート等を、単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0025】
かかる単量体を重合するために重合開始剤を使用することができ、重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリ、アゾビスイソブチロニトリル、硫酸アンモニウム等、一般的なビニル重合開始剤を使用することができる。
【0026】
かかる被膜は単繊維表面を被覆するものであるが、このことにより耐久性のある制電性、が得られるものである。
【0027】
かかる被膜を形成することは花粉を吸着しにくくする耐久制電性を得るために重要である。しかしながら該被膜の表面は粘着性を有するものであり、花粉の離脱性という観点からは好ましくない。花粉の離脱性を向上させるために有機微粒子を含有させて被膜化し、表面の粘着性を低下させるものである。
【0028】
本発明の重合体と有機微粒子の重量混合比は、単量体1に対して好ましくは0.4以上、より好ましくは0.4〜1.0であり、0.4より少ないと樹脂組成物の持つ表面特性を変えることができず、粘着性のある樹脂組成物では花粉の離脱性向上がはかれない。また、1.0より多いと有機微粒子の特性が表面に出過ぎるため繊維構造物を形成する糸糸間の滑りが大きくなりすぎ目ズレなどの欠点が発生する上に、制電性をも阻害するものである。
【0029】
該有機粒子は該重合体被膜に均一もしくはランダムに含有される。
【0030】
本発明の有機微粒子を含有する樹脂組成物からなる被膜を形成させる方法の一例としては、次の方法が挙げられる。まず重合性単量体、重合開始剤および有機微粒子を混合した水系液に、繊維布帛を浸漬して、マングル等で絞って所定の付着量に調整した後、80〜160℃に加熱することにより飽和水蒸気または過飽和水蒸気の雰囲気とする。その状態で0.5〜10分、好ましくは1〜4分間処理し、その後に非イオン系界面活性剤と炭酸ナトリウム等を含む40〜80℃の洗浄液で1〜5分間洗浄、水洗して未反応の単量体や重合開始剤を除去する。さらに100〜130℃で乾燥、140〜180℃でヒートセットする。また、水系液に繊維布帛を浸漬した後、100〜130℃で乾燥し、その後に水蒸気処理する方法も採用することもできる。かかる被膜形成加工をした後に、本発明の効果を阻害しない範囲で、帯電防止剤、吸水剤、吸湿剤、撥水剤、撥油剤、防汚剤、着色剤、増摩剤等で処理してもかまわない。
【0031】
被膜の厚みは単量体の付着量によってコントロールすることができる。すなわち、重合性単量体および重合触媒の混合液を作成する際の有効成分濃度と繊維構造物を混合液に含浸させてマングルで絞る際の絞り率、つまりマングルの加圧圧力を適宜調整することにより樹脂付着量をコントロールすることができる。一般的には単量体有効成分濃度を低くする、または絞り率を高くすれば被膜の厚みは薄くなる傾向にある。
【0032】
本発明の繊維布帛を構成する繊維としては、特に限定されないが、ポリエステル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維などの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、木綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維を使用することができ、
これらを単独または2種以上混合して使用することができ、また、長繊維でも短繊維でも良く、これらを混合して使用しても良い。本発明の繊維布帛の組織としては、前記繊維からなる織物、編物、不織布等のものを使用することができる。
【0033】
本発明の繊維構造物は、次の測定法により測定したときの繊維構造物表面への擬似花粉の付着数が250個以下であることが好ましい。本発明の重合性単量体のみを重合させた重合体被膜では、樹脂表面の粘着性が高く、擬似花粉の付着個数を250個以下にすることは難しく、重合体被膜に有機微粒子が一定の比率で含有していることによって、初めて擬似花粉付着数が250個以下を達成し得るものである。測定方法としては、まず7×7cmの繊維布帛30枚を20℃×65%RH下に24時間放置した後、1gの擬似花粉とともにポリエチレンの袋の中に入れ、20℃×65%RHの空気で、約20リットルに膨らませて口を縛る。その後かかるポリエチレン袋を1回/1秒の速度で縛り口を基準に上下に100回振ったのち、繊維布帛を取り出し、繊維布帛表面を50倍に拡大した写真を3カ所撮る。それぞれの写真中任意の7.5×10cm四方における擬似花粉の個数を数え、3カ所の平均を計算する。
【0034】
擬似花粉としては、石松子((有)津田商店 製)という花粉の粒径に近い天然物を用いる。石松子は一次30〜40μmのシダ科のヒカゲノカズラの胞子で花粉に近い粒径、形状を有するものであり、この石松子を擬似花粉として花粉の付着防止性を確認することが可能である。
【0035】
本発明は、かかる擬似花粉1gをポリエチレン袋に入れ、7cm×7cmの繊維布帛30枚と共に1分間攪拌し、繊維布帛表面を50倍に拡大した写真を3カ所撮り、写真の7.5cm×10cmの擬似花粉の個数を数えて、3カ所の平均値の個数が250個以下であるものである。付着個数が250個を越えると、布帛表面を肉眼で見たときに明らかに花粉の付着が確認され、花粉が付着しにくいとは言い難いものである。
【0036】
本発明の繊維構造物は、花粉が付着しにくいということから、コート、ブルゾン、ウインドブレーカー、ブラウス、シャツ、スカート、スラックス、手袋、帽子、布団側地、布団干しカバー等の寝装具、カーテン等のインテリア用具などの用途に好適に使用されるものである。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例中の品質評価は次の方法で実施した。
【0038】
<花粉付着防止性>
(付きにくさ)
7×7cmの繊維布帛30枚を20℃×65%RH下に24時間放置した後、1gの擬似花粉とともにポリエチレンの袋の中に入れ、20℃×65%RHの空気で、約20リットルに膨らませて口を縛る。かかるポリエチレン袋を1回/1秒の速度で縛り口を基準に上下に100回振ったのち、繊維布帛を取り出し、繊維布帛表面を50倍に拡大した写真を3カ所撮り、写真の7.5×10cmの擬似花粉の個数を数え、3カ所の平均を計算する。
(落ちやすさ)
上記サンプルの四隅の一片を持ち、3回振り払う。同様にもう一片を持ち3回振り払う。このサンプルについて上記同様に繊維布帛表面を50倍に拡大した写真を3カ所撮り、写真の7.5×10cmの擬似花粉の個数を数え、3カ所の平均を計算する。
【0039】
<制電性>
JIS L 1094B法(摩擦耐電圧測定法)に規定される方法で、20℃×30%RHの雰囲気中で、対象布を木綿として摩擦耐電圧を測定し、(kV)で表示した。数値が大きいほど、制電性が悪いことを示す。
【0040】
<風合い>
ハンドリングで官能評価を行った。
【0041】
○:ソフトで反発のある風合い ×:ガサガサして粗硬感のある風合い
<縫い目ズレ>
JIS L 1096B法(縫い目滑脱法)
・ 10×17cmの試験片をタテ、ヨコ方向にそれぞれ5枚採取する。
【0042】
・ 試験片の長辺方向を縫い目と平行に表面を内側に折り曲げ折り目を切断し下記条件で縫い合わせる。
【0043】
ミシン機種:JUKI DDL−227
ミシン針 :#11(普通針)DB×1 ORGAN印
ミシン糸 :ポリエステル フィラメント縫糸 70D×3
ミシン速度:3000〜3500針/分
縫い目数 :5針/cm
・ 試験片を定速伸長型引張試験機のつかみ間隔を7.6cmとし、試験片の縫い目がつかみ間隔の中央になるように上下つかみ固定する。
【0044】
・ 引張速度30cm/分で78.4Nの荷重まで引っ張った後ただちにクランプから試料を取り外し平らな場所に1時間放置する。
【0045】
放置後、試験片の縫い目に対して直角方向に9.8Nの初荷重を加えて縫い目の最大滑り幅を読み、縫い目滑脱距離とする。タテ、ヨコ方向それぞれ5枚の平均値で表し(mm)で表示した。数値が大きいほど目ズレが大きく品位が悪いことを示す。
【0046】
<洗濯耐久性>
自動反転渦巻き電気洗濯機に、JIS K 337に規定される弱アルカリ性合成洗剤を0.2%の濃度になるように溶解し、浴比1:50で、40±2℃の温度で、強条件で10分洗濯し、次いで排水し水洗5分をする工程を1回としこれを10回繰り返した後、風乾した。
実施例1〜6、比較例1〜8
ポリエチレンテレフタレートからなる167dtex、48フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸、ヨコ糸に使用してタテ×ヨコ織密度97×42本/2.54cmの平織物を製織したのち、該織物を95℃で連続式精練機を用いて常法に従い精練、湯水洗し、次いで130℃で乾燥、180℃でピンテンターセットした。引き続き、液流染色機で染色し、130℃で乾燥、170℃でピンテンターセットして、タテ×ヨコ織密度120×50本/2.54cmの紺色織物とした。該染色布を次に示す方法で処理し、性能を評価した結果を表1に示した。
【0047】
なお、被膜厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)で繊維断面の100000倍拡大写真を撮り、測定した。
【0048】
<使用薬剤>
(重合性単量体)
ポリアルキレンオキサイドセグメントが分子量1000であるポリエチレングリコールジメタクリレート(有効成分100重量%)を使用した。
【0049】
(触媒)
過硫酸アンモニウム
(有機微粒子)
次に示す粒径の微粒子の水分散液を使用した。なお、ここでいう有効成分とは水分散液中の微粒子のことであり、示した粒径以外の粒径のものを数%含む。
【0050】
a.ケミパールS−120(一次粒径20〜30nm)(住友化学(株)製、有効成分27%)
b.ケミパールS−200(一次粒径120〜150nm)(住友化学(株)製、有効成分27%)
c.マーポゾールP138(一次粒径50〜70nm)(松本油脂製薬(株)、有効成分
30%)
d.マーポゾールPP(一次粒径50〜70nm)(松本油脂製薬(株)、有効成分30%)
e.ケミパールS−300(一次粒径450〜500nm)(住友化学(株)製、有効成分27%)
(無機微粒子)
f.スノーテックス20(一次粒径10〜20nm)(日産化学工業(株)製、有効成分20重量%)
<処理液の調整>
単量体を2g/l、10g/l、20g/l、50g/lの濃度で水に溶解し、該液に有機微粒子または無機微粒子の有効成分が単量体1に対して0.1、0.5、0.9、1.5の重量比になるように添加し、更に触媒の過硫酸アンモニウム2g/lを添加した。有機微粒子または無機微粒子を含まない処理液も調整した。
【0051】
<処理条件>
染色布を処理液に浸積して、マングルで絞り、処理液の付着量が100重量%になるように調整した後、103℃の飽和水蒸気雰囲気中にて3分間の処理を行った。
次いで、非イオン界面活性剤1g/L、炭酸ナトリウム1g/Lとした60℃の水溶液中で1分洗浄し、水洗し、130℃で乾燥、160℃でピンテンターセットした。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から明らかなように、比較例に比して、実施例のものは、重合性単量体に特定比率で有機微粒子を混合しているもので、5〜40nmの被膜が形成されており、花粉付着防止性が優れ、かつ制電性、風合いの柔軟性をも兼ね備え、耐洗濯性にも優れることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機微粒子を含む樹脂組成物からなる被膜を繊維表面に有する花粉防止繊維構造物であって、該有機微粒子の一次粒径が5〜400nmであることを特徴とする花粉付着防止繊維構造物。
【請求項2】
該有機微粒子がオレフィン系微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の花粉付着防止繊維構造物。
【請求項3】
該オレフィン系微粒子が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体およびエチレン・ビニルアセテート共重合体から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の花粉付着防止繊維構造物。
【請求項4】
該樹脂組成物が、ポリアルキレンオキサイドセグメントを主体とする主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として2個以上のアクリル基および/またはメタクリル基を有する重合性単量体を重合せしめてなる樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の花粉付着防止繊維構造物。
【請求項5】
該被膜の厚みが5〜40nmであって、該重合性単量体/有機微粒子の重量混合比が1/0.4〜1/1.0であることを特徴とする請求項4に記載の花粉付着防止繊維構造物。
【請求項6】
該繊維構造物が、下記測定法により測定したときの繊維構造物表面への擬似花粉の付着数が250個以下の布帛である請求項1〜5のいずれかに記載の花粉付着防止繊維構造物。
(測定方法)
7×7cmの繊維布帛30枚を20℃×65%RH下に24時間放置した後、1gの擬似花粉とともにポリエチレンの袋の中に入れ、20℃×65%RHの空気で、約20リットルに膨らませて口を縛る。かかるポリエチレン袋を1回/1秒の速度で縛り口を基準に上下に100回振ったのち、繊維布帛を取り出し、繊維布帛表面を50倍に拡大した写真を3カ所撮り、写真の7.5×10cmの擬似花粉の個数を数え、3カ所の平均を計算する。
【請求項7】
該繊維構造物が、コート、ブルゾン、ウインドブレーカー、ブラウス、シャツ、スカート、スラックス、手袋、帽子、布団側地、布団干しカバーおよびカーテンから選ばれるものである請求項1〜6のいずれかに記載の花粉付着防止繊維構造物。

【公開番号】特開2007−224427(P2007−224427A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339818(P2005−339818)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】