説明

繊維模様付きクラフト紙

【課題】繊維模様付きクラフト紙における繊維模様形成材であるノットパルプ又はドライファイバーに近似した繊維模様を醸成すると共に、コストダウンを達成し、市場への安定供給を可能とする繊維模様付きクラフト紙を提供する。
【解決手段】廃麻袋の繊維3を組成分として含有し、表面に該廃麻袋の繊維3による繊維模様を有する繊維模様付きクラフト紙1。具体例として、切茶繊維4と、針葉樹パルプの繊維又は/及び広葉樹パルプの繊維5と、廃麻袋の繊維3を組成分として含有し、表面に該廃麻袋の繊維3による繊維模様を有する繊維模様付きクラフト紙1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面に繊維模様を有する繊維模様付きクラフト紙に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に繊維模様を出すための原料として、ノットパルプ或いはドライファイバーを用いたクラフト紙が既知である。
【0003】
ノットパルプは廃木材を物理的に磨り潰し繊維化したものであり、ドライファイバーは製材時に発生する木の皮部分を繊維化したものであるが、近年何れも入手し難くなり、製品(繊維模様付きクラフト紙)の安定供給に支障を来す市場状況となり、その対策が喫緊の課題となっている。
【0004】
他方繊維模様付きクラフト紙はその独特の風合いから各種包装容器等の原紙としての需要が高く、代替クラフト紙の提供が希求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記市場の実状に鑑み、上記ノットパルプ又はドライファイバーの代替物について種々検討と試行を重ね、輸入コーヒー豆の麻袋がノットパルプ又はドライファイバー調の繊維模様を醸成でき、加えて廃麻袋独特の繊維模様を醸成できることを見出した。
【0006】
コーヒー豆の麻袋は現在その大部分が有償にて産廃業者に処分を依頼しており、現在のところ入手コストがかからず、繊維模様付きクラフト紙のコストダウンに寄与できるばかりか、同クラフト紙に対する使用者の要請にも応えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記ノットパルプ又はドライファイバーの代替物として、コーヒー豆の麻袋に代表される廃麻袋を用いた繊維模様付きクラフト紙を特徴とするものである。
【0008】
その具体例として、切茶繊維と針葉樹パルプの繊維又は/及び広葉樹パルプの繊維中に、廃麻袋の繊維を混ぜ、その風合いを再現したものである。
【0009】
上記麻袋、特にコーヒー豆の麻袋はジュート又はケナフから成り、該ジュート又はケナフは広葉樹パルプや針葉樹パルプの繊維に比べ繊維径が大きく、引っ張りに対する伸びが小さい特徴を有し、包装資材等として用いられる繊維模様付きクラフト紙の繊維模様形成材として適材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、麻袋の繊維によってノットパルプ又はドライファイバーに近似した繊維模様を醸成することができるばかりか、廃麻袋独特の繊維模様を醸成できる。
【0011】
又麻袋の使用により繊維模様付きクラフト紙のコストダウンを達成でき、市場への安定供給を可能とする。
【0012】
上記廃麻袋の繊維は重量比で2〜20%の範囲で配合し、好ましくは3〜10%の範囲で配合することにより、クラフト紙表面の繊維模様による風合いを良好に醸成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を実施するための最良の形態を図1乃至図3に基づき説明する。
【0014】
本発明はノットパルプ又はドライファイバーの代替物として、コーヒー豆の麻袋に代表される廃麻袋を用いた繊維模様付きクラフト紙1を特徴とするものである。
【0015】
具体例として、切茶繊維4と針葉樹パルプの繊維又は/及び広葉樹パルプの繊維5の混合物に廃麻袋の繊維3を配合し抄紙する。この廃麻袋の繊維3の長さは、目的とする繊維模様に応じ2mm〜12mmの範囲で選択する。
【0016】
好ましくは、上記廃麻袋繊維3は5mm〜8mmの範囲で選択する。又上記切茶繊維4と針葉樹パルプ又は/及び広葉樹パルプの繊維5の繊維長は従来のクラフト紙と同様、1mm〜10mmの範囲のものを用いる。
【0017】
上記針葉樹パルプの繊維又は広葉樹パルプの繊維5は、漂白繊維又は未漂白繊維、又はこれらを混合した繊維の使用が可能である。
【0018】
本発明は切茶繊維4と針葉樹パルプの繊維又は/及び広葉樹パルプの繊維5に加え、他の植物繊維又は合成繊維を配合した場合を含む。
【0019】
上記繊維模様付きクラフト紙1は、その単層又は複層抄きクラフト紙の単体として用いられる他、図2に示すように、複層抄きの板紙2の表面に上記繊維模様付きクラフト紙1を単層又は複層抄きして抄き合わせ紙とするか、板紙2の表面に単層又は複層抄きの繊維模様付きクラフト紙1を接着剤を介し合紙して包装紙材等として用いる。
【0020】
即ち繊維模様付きクラフト紙1を板紙2でバックアップした構造にして、各種包装紙、包装容器、封筒等の形成紙材として用いる。
【0021】
上記切茶繊維4は重量比で10〜96%、針葉樹パルプの繊維又は/及び広葉樹パルプの繊維5は同2〜80%、廃麻袋の繊維3は同2〜20%の範囲で混合し、抄紙する。
【0022】
上記麻袋、特にコーヒー豆の麻袋はジュート又はケナフから成り、該ジュート又はケナフは前記の通り、広葉樹パルプや針葉樹パルプの繊維に比べ繊維径が大きく、引っ張りに対する伸びが小さい特徴を有し、比較的濃い茶色の母材色を有し、繊維模様付きクラフト紙の繊維模様形成材として適材である。
【0023】
上記切茶とは、製袋工場等より発生する印刷又は色刷りの無い製袋、封筒用クラフト紙の裁落(抜き屑)である。又切茶繊維4はパルパーにかけ離解した繊維である。
【0024】
以下、繊維模様付きクラフト紙1の製造工程の一具体例について説明し、構造についての理解に供する。
【0025】
(1)麻袋の前処理:麻袋を粉砕機にかけて粉砕し、該粉砕繊維を10分〜40分間蒸気で蒸し、柔らかくし、ほぐし易くする。
上記麻袋の粉砕機としては、例えば三力式万能粉砕機SF−8(大阪府東大阪市新町14−3 株式会社三力製作所)を用い、解砕する。
【0026】
(2)パルパーに針葉樹パルプ(NUKP)、上記前処理した麻袋の繊維を投入し、80度〜95度の加熱水を入れ5分〜20分間浸漬した後、パルパーを運転し、離解されて混合された繊維を得る。
【0027】
(3)染料を水で希釈しパルパー内に添加する。該染料は特に繊維模様を形成する麻袋の繊維を茶系に染色し際立たせる目的で使用されるものであり、例えば目的とする色に応じ、ブラック、レッド、イエローの順に染料を添加する。
又上記染料は上記クラフト紙全体を薄茶系に付色する。又染料を添加せずに、クラフト紙全体を白色に近い色にし、その中で茶系の廃麻袋の繊維による模様付けを出すことができる。
【0028】
(4)パルパー内に染料を定着するための定着剤を水で希釈して投入すると共に、同定着剤として硫酸バンドを投入する。染料を用いない場合は、定着剤は不要である。
【0029】
(5)(1)〜(4)で得られた原料と上記切茶繊維を混合する。
つまり、第1パルパーで(1)〜(4)の原料を調整し、第2パルパーで切茶繊維を生成することによって、染料による着色が施されていない切茶繊維を(1)〜(4)の原料に配合する。
染料を使用しない場合は、上記(2)のパルパー内に針葉樹パルプ(NUKP)と上記前処理した麻袋の繊維と一緒に切茶繊維を投入する。この場合、80度〜95度の加熱水を入れ5分〜20分間浸漬した後に、切茶繊維を投入しパルパーを運転することができる。
【0030】
(6)上記(5)で得られた原料内にサイズ剤と紙力増強剤を添加し、合わせて両剤の定着剤として硫酸バンドを添加し攪拌する。
【0031】
(7)(6)で得られたスラリーを抄紙機にかけ、繊維模様付きクラフト紙を抄造する。
【0032】
次に、上記繊維模様付きクラフト紙の組成分の配合例について説明する。
【0033】
<配合例1>
切茶繊維 88%(重量比、以下同様)
針葉樹パルプ繊維 4%
廃麻袋繊維 8%
【0034】
<配合例2>
切茶繊維 96%
針葉樹パルプ繊維 2%
廃麻袋繊維 2%
【0035】
<配合例3>
切茶繊維 10%
広葉樹パルプ繊維 70%
針葉樹パルプ繊維 10%
廃麻袋繊維 10%
【0036】
<配合例4>
切茶繊維 72%
針葉樹パルプ繊維 4%
廃麻袋繊維 20%
【0037】
<配合例5>
切茶繊維 95%
針葉樹パルプ繊維 2%
廃麻袋繊維 2%
モルトフィード繊維 1%
【0038】
配合例5におけるモルトフィードとは、ビール製造工程で出る廃棄物(ビールの搾り滓)である。その他植物繊維として、カカオの抽出残渣、コーヒーの抽出残渣、ヤシ殻繊維、木粉等を配合することができる。
【0039】
図1A,B、図2、図3(図面代用写真)は上記繊維模様付きクラフト紙1の表面色と繊維模様を例示しており、同図に示すように、繊維模様付きクラフト紙1の表面には、針葉樹パルプ又は/及び広葉樹パルプの細い繊維5と、切茶繊維4と、廃麻袋繊維3が混在して表面繊維模様を生成している。
【0040】
前記のように、廃麻袋繊維3は相対的に太く濃い茶色を呈し、これと相対的に細い切茶繊維4とパルプ繊維5とが独特の表面繊維模様を形成する。
【0041】
上記図3の図面代用写真はマイクロスコープを用い、100倍に拡大し撮影した写真である。同写真の現物(カラー写真)は本出願と同時に物件提出書にて提出した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】Aは繊維模様付きクラフト紙の断面図、Bは同平面図。
【図2】上記繊維模様付きクラフト紙を複層抄きの板紙の表面に抄造又は合紙した状態を示す断面図。
【図3】上記繊維模様付きクラフト紙の表面色と繊維模様を例示する図面代用写真。
【符号の説明】
【0043】
1…繊維模様付きクラフト紙、2…板紙、3…廃麻袋繊維、4…切茶繊維、5…針葉樹パルプ又は広葉樹パルプの繊維。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃麻袋の繊維を組成分として含有し、表面に該廃麻袋の繊維による繊維模様を有する繊維模様付きクラフト紙。
【請求項2】
切茶繊維と、針葉樹パルプの繊維又は/及び広葉樹パルプの繊維と、廃麻袋の繊維を組成分として含有し、表面に該廃麻袋の繊維による繊維模様を有する繊維模様付きクラフト紙。
【請求項3】
上記麻袋がジュート又はケナフから成る請求項1又は2記載の繊維模様付きクラフト紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−150691(P2010−150691A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329420(P2008−329420)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(390008176)京王製紙株式会社 (2)
【Fターム(参考)】