説明

繊維機械用のスピンドル

本発明は、繊維機械用のスピンドルであって、スリーブ継ぎ手を備えており、スリーブ継ぎ手の連行体(19)は外側に向いている端部に連結面を有している。連結面は、スピンドルに被せはめられたスリーブの内壁に遠心力の作用下で接触して、スピンドルとスリーブとの間の力伝達可能な結合部を形成する。このために連行体は、半径方向に向いている切欠き内を、遠心力の作用下で前記各切欠きに対して同軸的にスリーブ(15)に向かって運動可能である。連行体は前記切欠きの内部と周囲との間のシール部として作用している。連行体(19)は、スピンドル(13)の中心軸線に向いている端部で、該連行体(19)と結合された後部保持部材(20)によって外側から切欠き内に挿入可能であり、かつ後部保持部材(20)は切欠き内にロック可能である。本発明に基づくスピンドルは、汚されることなく正確に作動できるスリーブ継ぎ手を有している。スリーブ継ぎ手は安価に製造できて、簡単かつ迅速に組み立てられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械のための、請求項1の上位概念に記載の形式のスピンドルに関する。
【0002】
スイス国特許出願公開第464751号明細書により公知のスリーブ継ぎ手においては、ボタン状の複数の連行体はスピンドルの周囲に分配して袋孔内に配置されている。連結ボタンとも称される連行体は、中空でハット状に形成されている。連行体は該連行体の縁部でアンダーカット部に係合しており、アンダーカット部は袋孔内に形成されている。連行体はばね弾性的な材料から成っていて、これによって袋孔内に挿入されるようになっている。連行体と協働する各ばねを袋孔内に装着するようになっている。ばねは連行体を常に外側へ押圧している。従ってスリーブの保持はばね力によって行われる。スリーブの差し嵌め及び抜き取りに際して克服されねばならない力は比較的大きくなっている。連行体は薄肉のものであるので、連行体の質量は小さい。従って、連行体をスリーブへ押圧する力は、ほぼばね力によってのみ生ぜしめられる。ばね力は少なくとも、スリーブを確実に連行できる程度に大きくなっていなければならない。このように大きな力は、差し嵌めるべき空のスリーブをもっぱら自重によって運転位置へ移し、これによって連行体をばね力に抗してスリーブの移動方向に対して垂直に袋孔内へ押し込む場合に、ボビン交換の妨げになる。紡績機械の玉揚げにおいて、スリーブの抜き取りに際しても差し嵌めに際しても大きな摩擦力を克服しなければならない。スリーブの内周面と連行体との間の摩擦は摩耗を生ぜしめ、摩耗はスリーブの内周面を粗面化することになる。このような粗面はスリーブと連行体との間の摩擦係数を増大させ、ひいてはスリーブの圧着力を使用時間の経過に伴って増大させることになる。汚れに対する袋孔内部の密閉も不十分であり、それというのは薄肉の連行体は装着に際してしばしば不均一に塑性変形して、袋孔表面との間に隙間を生ぜしめてしまうことになるからである。
【0003】
同じくスイス国特許出願公開第464751号明細書には別の手段として中実の連行体を示してあり、該連行体はスピンドルの回転に際して遠心力によって半径方向外側へ移動させられ、かつスリーブの内壁に圧着される。該中実な各連行体はそれぞれスピンドルの軸線方向の中空室内に挿入され、かつ連行体の円柱状の部分で内側から外側へ孔内へ差し込まれるようになっている。孔内に連行体は運動可能に保持されている。該保持のために連行体は後方保持肩部を有しており、該後方保持肩部の直径は連行体の前記円柱状の部分の直径よりも大きくなっている。部分的に中空スピンドルとしての該スピンドルは煩雑で、かつ付加的な摩耗防止手段、例えば特殊な構造の閉鎖キャップを必要とする。このような連行体の装着は器用さと時間を必要とする。組み立て費用のほかに製造費用も大きい。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4323068A1号明細書に記載のスリーブ継ぎ手においては、薄肉のキャップとして形成された連行体は同じくばね負荷されている。変形可能な弾性的な連行体内に、付加的な質量体を差し込んである。ばね力、ひいてはスピンドルの静止状態でのスリーブの差し嵌めの際の抵抗は、スイス国特許出願公開第464751号明細書から公知のもっぱらばね負荷された連行体のために必要な値の30乃至70パーセントに小さく保たれる。玉揚げ過程中のスピンドルの静止状態では連行体の小さい圧着力しかスリーブに作用しない。回転数の増大に伴って圧着力は、付加的な質量体に作用する遠心力に基づき増大する。従って、ばね力が小さいにも拘わらずスピンドルとスリーブとの間にスリップは生じない。
【0005】
孔内にはアンダーカット部を設けなければならない。弾性的な薄肉の連行体の密閉作用はこの場合にも不十分である。製造及び組み立て費用は大きい。付加的な質量として設けられる円柱状の部材の縁部は、薄肉の連行体における点状の圧力負荷によって時間の経過に伴って摩耗並びに損傷を引き起こすことになる。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4430709A1号明細書に記載のスピンドルのためのスリーブ継ぎ手には、半径方向の貫通孔を設けてある。各貫通孔内には、ほぼ円柱状の2つの連行体を差し込んである。該連行体は貫通孔から突出した端面に凸面状に湾曲された連結面及びこれに続く円錐形の支持面を有しており、支持面は肩部と称される。肩部は、連行体がスピンドルの運転に際して、即ち回転軸線を中心とした回転に際して、スピンドルにスリーブを差し嵌めてない場合に、スピンドルから投げ飛ばされることを防止するものである。このために各肩部に対応してスピンドルの外周に相応の対向面を配置してある。対向面は塑性変形によって形成されており、この場合に孔はスピンドルの外周へ移行している。連行体の装着に際してスピンドルの変形若しくはかしめのために、工具、例えばたがねを使用する必要がある。このような塑性変形は、連行体を孔から破壊なしに外すことを不可能にしている。連行体がスピンドルの静止状態では完全に孔内に沈み込んでいる場合には、汚れ、例えばほこりや繊維くずは対向面と連行体との間に積もることになる。スピンドルの回転に際して汚れは対向面に圧着され、従って除去されにくくなる。このことはスリーブ継ぎ手の機能障害若しくは故障につながる。
【0007】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式のスピンドルにおいてスリーブ継ぎ手を改善することである。
【0008】
前記課題は、請求項1に記載の構成によって解決される。本発明の有利な実施態様を従属請求項に記載してある。
【0009】
本発明は種々の利点を有している。本発明に基づくスピンドルに備えられた連行体は、スピンドルの切欠き内に簡単に、迅速にかつ正確に組み込まれるものである。連行体の組み込みに際してスピンドルの、工具を用いた時間のかかる変形は不要である。さらに、スピンドルを部分的に手間を掛けて中空スピンドルとして形成しかつ中空スピンドルの中空室の閉鎖のために閉鎖キャップを設ける必要もない。本発明に基づく連行体は頑丈でかつ摩耗しにくい。スピンドルの切欠きの内部及び該内部に挿入された連行体の保持部は、汚れに対して効果的に保護されている。切欠きの外側縁部に堆積した汚れは、連行体によって再びかき落とされる。連行体は、スピンドルの回転に際して該連行体の質量による遠心力のみでスリーブの連行を達成するように形成されている。後部保持部材は、連行体を切欠きから外れ落ちないように確保している。この場合に後部保持部材、ひいてはスピンドルに対する連行体の所定の遊び(運動)は、維持されている。後部保持部材を、摩擦力で切欠き内にロック(固定)するように形成してあると、切欠き内におけるアンダーカット部を省略することができる。装着は簡単に行われる。連行体の分解は、外れ落ちを阻止する形状係合的な保持手段によって容易に行われる。
【0010】
連行体と後部保持部材とが予め組み立て可能(前組み立て可能)な1つの構成ユニットを形成していると、後部保持部材と連行体との前組み立てにも切欠き内への装着にもわずかな時間しか必要としない。両方の構成部分の製造にもわずかな費用しか必要としない。
【0011】
後部保持部材と連行体との解離不能な結合部は、リベット結合部として形成されていてよく、製造技術的に簡単に成形される。
【0012】
切欠きの表面を連行体の案内として用いると、後部保持部材は極めて簡単に、例えば皿ばねとして形成されて有利である。後部保持部材に案内手段を設けるための製造コストは、省略できる。
【0013】
請求項6に基づき形成された連行体は、袋孔として形成された切欠き内で、スペースを有効に活用して、大きな質量を有している。後部保持部材を皿ばねとして形成されて成る構成ユニットの組み付けに際して、該構成ユニットの差し込みは容易に行われる。連行体の円錐形状は、皿ばねを組み付けにとって都合よく予め湾曲させるために役立っている。
【0014】
請求項7に基づき形成されたスピンドルは、唯一の平面内で最小の数、即ち3つだけの連行体による安定的な三点保持及びセンタリングを可能にしている。
【0015】
請求項8に基づくスピンドルにおいて、貫通孔を設けることは製作技術的に極めて簡単である。各貫通孔内に2つの連行体を、即ち袋孔の場合の二倍の数の連行体を挿入してある。貫通孔の場合にはアンバランスのおそれは、袋孔の場合に比べて著しく小さい。連行体の取り外しも容易である。
【0016】
連行体の、スリーブ内面に接触する連結面をスピンドル表面の湾曲に適合させて成形することによって、スリーブ継ぎ手には、汚れが堆積しやすい凹所若しくは窪みはもはや存在していない。この場合には、球欠状の連結面を有する連行体が挿入される孔に施されるような面取り部は、不要である。
【0017】
連行体と後部保持部材とは、該連行体と後部保持部材とを構成ユニットとして互いに解離可能に結合できる(該構成ユニットをスピンドル内に組み付けた状態では両者間の分離が不可能である)ように形成されていると、構成ユニットとしての組合せは簡単である。連行体と後部保持部材とを互いに組み合わせた後に、構成ユニットとして互いに結び付けておくための変形加工、例えば前述のリベット結合のために必要なリベット頭の成形加工は、不要である。保持ヘッドは、構成ユニットとしての組合せ前に、例えばピン端部の変形によって若しくは切削加工によって成形されている。連行体と後部保持部材とを予め組み立てて(組み合わせて)成る構成ユニットは、該組立の後に直接にスピンドルの各切欠き内に挿入される。このようにして、装着に必要な手間は減少される。
【0018】
請求項11に基づき形成された後部保持部材だけではなく、該後部保持部材と協働する連行体も、簡単に製造される。後部保持部材と連行体とは互いに容易に組み合わされ、かつ構成ユニットの分解によって互いに容易に分離される。このような分離は破壊作業なしに実施されるものである。
【0019】
後部保持部材をリングとして形成しかつ接着結合によって切欠き内に固定する場合には、切欠きは単純な孔として形成され、かつアンダーカット部の形成は不要である。リングは、後部保持部材の特に簡単かつ安価な構成手段である。後部保持部材の、連行体の運動を妨げることになる不都合な変形は、避けられる。連行体と後部保持部材との組合せは、わずかな手間で簡単に行われる。
【0020】
スピンドルのための本発明に基づくスリーブ継ぎ手は、汚されることなく正確に作動できる。さらに該スリーブ継ぎ手は安価に製造でき、簡単かつ迅速に組み立てられる。
【0021】
次に本発明を図示の実施例に基づき説明する。図面において、
図1は、4つの連行体から成る本発明に基づくスリーブ継ぎ手を備えていてかつスリーブ又は管を差し嵌められたスピンドルの一部分の部分的に破断した平面図であり、
図2は、図1のI−I線に沿った断面図であり、
図3は、各袋孔内に挿入された3つの連行体から成るスリーブ継ぎ手を備えたスピンドルの断面図であり、
図4は、皿ばねとして形成された後部保持部材から成るスリーブ継ぎ手を備えたスピンドルの断面図であり、
図5は、連行体の連結面をスピンドル表面の湾曲に適合されて成るスリーブ継ぎ手を備えたスピンドルの断面図であり、
図6は、図5のスリーブ継ぎ手の構成ユニットを連行体のピンの側から示す斜視図であり、この場合にピンは部分的に破断してあり、
図7は、図5のスリーブ継ぎ手の構成ユニットを連行体の連結面の側から示す斜視図であり、
図8は、構成ユニットの互いに解離可能に結合される連行体と後部保持部材との斜視図であり、
図9は、図8の連行体と後部保持部材とを組み合わせて成る構成ユニットの斜視図であり、
図10は、リングとして形成された後部保持部材から成るスリーブ継ぎ手を備えたスピンドルの一部分の部分的に破断した平面図である。
【0022】
図1に部分的に示すスピンドル1にスリーブ2を差し嵌めてあり、該スリーブはスリーブ継ぎ手によって保持されている。前記スリーブ継ぎ手は、連結ボタンとして形成された連行体3を有しており、該連行体のうちの各2つの連行体は、互いに直交する2つの貫通孔4,5として形成された各切欠き内に直径方向で互いに相対して差し込まれている。
【0023】
図2には、破線で描く貫通孔4内に差し込まれた連行体は、図面を見易くするために完全には示されていない。連行体3はそれぞれ後部保持部材6によって保持されて、半径方向運動可能に案内されている。後部保持部材6は貫通孔4,5内に締まりばめによる摩擦力でロックされている。連行体3はピン7で以て、後部保持部材6の中央に配置された円形の開口8を貫通している。ピン7の自由端部は保持ヘッド9としてリベット頭の形に形成されており、これによって連行体3と後部保持部材6とは互いに解離不能に結合されている。連行体3は後部保持部材6に対して相対的に、制限された範囲で運動可能である。該運動の量は、ピン7の円柱区分の長さに依存している。連行体3と後部保持部材6とはそれぞれ、組み込み前に構成ユニットとして互いに組み合わされている。連行体3も後部保持部材6も回転対称的な部材である。組み合わせのために円柱状のピン7は後部保持部材6の開口8を通されて、次いで該ピン7の自由端部を保持ヘッド9に変形される。これによって連行体3と後部保持部材6とは、予め組み立てられた構成ユニットとしてスピンドル1内に装着される。このようにして組み立ても装着も簡単に、迅速にかつ経済的に行われる。貫通孔4,5内への後部保持部材6の押し込みは、後部保持部材6の外側へ向いている縁部が貫通孔4,5の外側の縁部と同列を成すまで深く行われる。貫通孔4,5は両方の端部に面取り部10を有しており、該面取り部は、汚れの溜まりやすい角隅のある凹部の形成を防止するものである。図1の作図で左側に配置されている連行体3は、スピンドル1の停止時(静止時)の位置を占めている。該図示の位置で連行体3の円柱状の部分は、後部保持部材6の外側の端部と同列を成している。後部保持部材6の外側へ向いていて連結面12を成す端部は、球欠11として形成されている。図1の作図で右側に配置されている連行体3は、スピンドル1の回転時の位置を占めている。この場合に該連行体3の球欠11として形成された連結面12はスリーブ2の内周面に伝力接続的に、即ち力を伝達可能な摩擦力で接触していて、スピンドル1の回転運動をスリーブ2に伝達する。該図示の位置では、連行体3の円柱状の部分は後部保持部材6の外側の端部を越えて突出している。
【0024】
図示のスリーブ継ぎ手は、いわゆる4点式遠心力カップリング(4点式遠心力クラッチ)である。連行体3及び後部保持部材6から成る4つのすべての構成ユニットは、同一構造であって、簡単かつ安価に大量生産されるものである。4つのすべての連行体3はスピンドル1の回転時に、図1で例として右側に配置の連行体3によって示す位置を占める。スピンドル1の停止時には、図1で例として左側に配置の連行体3によって示す位置か、若しくは玉揚げに際して貫通孔4,5内へ再び押し込まれた中間位置を占める。本発明に基づくスリーブ継ぎ手においては、貫通孔4,5の内部の汚れは防止されている。連行体3及び後部保持部材6から成る装着された構成ユニットは、貫通孔の内部を隙間なく確実に密閉している。
【0025】
図3は、本発明に基づくスリーブ継ぎ手の別の実施例を示している。該実施例のスリーブ継ぎ手は3点式遠心力カップリングである。該スリーブ継ぎ手においては、図1及び図2に示す実施例と異なって、スリーブ15の機能に適った保持及びセンタリングのための同一構造の3つの連行体27を用いてある。すべての連行体27の中心軸線は、スピンドル13の中心軸線に対して垂直な1つの平面内に配置されている。該平面は図3にスピンドル13の横断面として示してある。後部保持部材14は、図1及び図2の後部保持部材6よりも短くなっている。後部保持部材14は切欠き(凹設部)内に容易に差し込まれる。切欠きは袋孔16として形成されている。袋孔16は深く、しかしながら該袋孔が互いに交わらないように穿たれ、袋孔16間には薄い分離壁17のみを残してある。分離壁17は図3では放射状に形成されている。孔16は連行体27の案内を形成している。スピンドル13は、図1のスピンドル1の貫通孔4,5の場合と同様に袋孔16の縁部に面取り部を有しており、該面取り部は図3には現れていない。連行体27の連結面は球欠18として形成されている。図示の位置では、連行体27はスリーブ15の内周壁に接触している。該位置は、スピンドル13を回転させた場合に占められるものである。
【0026】
スピンドル13の図4に示すスリーブ継ぎ手も、同一構造の3つの連行体19を有している。該連行体19は外周面で以て袋孔16の内周面に案内されていて、皿ばねとして形成された後部保持部材20によってロックされている。連行体19の、後部保持部材20に向いている端部は円錐形に形成されている。これによって皿ばね20は、連行体19及び皿ばね20から成る構成ユニットの装着に際して、連行体の端部の前記円錐形に沿って湾曲されて、押し込まれる。
【0027】
図4では連行体19は、スピンドル13内へ押し込まれた内側の終端位置で示してある。スピンドル13の回転時には、連行体19は半径方向外側へ運動してスリーブ15の内壁に接触して該スリーブを連行する。連行体19の構造は質量を増大させている。このことは、スリーブ15に作用する力の値に有利に影響する。
【0028】
図5は、スピンドル26の断面を示しており、該スピンドル内に同一構造の3つの連行体21を挿入してある。連行体21は、同じく皿ばねとして形成された後部保持部材22と結合されている。連結面を球欠として形成されている連行体19(図4)と異なって、連行体21の連結面25はシリンダー状(柱面状)に形成され、スピンドル表面の湾曲に適合されている。後部保持部材22は、円形の開口ではなく、図6に示してあるようにスロット形の開口23を有している。ピン24は、図示してあるように2つの側で面取りされている。このようにして連行体21は常に相対回動不能に保持されて、連結面25で以て、連行すべきスリーブへの最適な接触を可能にしている。
【0029】
図7は、連行体21及び後部保持部材22から成る構成ユニットを、スピンドル26内への組み込み前の状態で示している。該斜視図では、連結面25のシリンダー形状(柱面形状)を明確に認識することができる。
【0030】
図8は連行体28及び後部保持部材29を示している。連行体28はピン30及び保持ヘッド31を有している。後部保持部材29内に、異なる大きさで互いにオーバーラップした、即ち互いにつながった2つの孔32,33を設けてあり、該両方の孔は一緒に1つの開口34を形成している。大きい方の孔32の中心軸線35は、後部保持部材29の回転対称軸線36に対し離間してかつ平行に延びている。小さい方の、即ち第2の孔33の中心軸線は後部保持部材29の回転対称軸線36と合致している。孔32の直径は保持ヘッド31の直径よりもわずかに大きくなっているのに対して、孔33の直径は保持ヘッド31の直径よりも小さくなっている。連行体28と後部保持部材29とを組み合わせて構成ユニットを組み立てるために、連行体28の回転対称軸線37は孔32の中心軸線35と合致させられる(図9、参照)。図9に示す組み立てた状態では、保持ヘッド31は、保持ヘッドの直径が孔33の直径よりも大きいので、連行体28と後部保持部材29との分離を阻止し、連行体28と後部保持部材29との軸線方向の所定の遊び(運動)のみを許すようになっている。連行体28及び後部保持部材29から成る図9に示す構成ユニットは、保持ヘッド31並びに後部保持部材29を先にしてスピンドル1,13,26の切欠き内に差し込まれる。連行体28及び後部保持部材29は、図1に示す形式で、若しくは図3に示す形式でスピンドル1,13,26の切欠き内に差し込まれて、4点式遠心力カップリング若しくは3点式遠心力カップリングを形成する。後部保持部材29は切欠き内に固定され、連行体28は切欠きの軸線方向で限定的に、即ち所定の距離にわたって運動可能に保持されている。構成ユニットの分解の際の連行体28と後部保持部材29との分離は、組合せの場合と同様に簡単かつ迅速に行われる。少なくとも連行体28は、連行体28と後部保持部材29とを分離した後に再び使用されてよい。
【0031】
図10は、本発明のさらに別の実施例を示している。スピンドル38は複数の切欠き(凹設部)を有しているものの、図10には図面を見易くするために1つの切欠きだけを図示してある。切欠きは単純な袋孔39として形成されている。連行体40は、リングとして形成された後部保持部材41によって保持されており、後部保持部材自体は接着剤42によって袋孔39の表面に堅く結合されている。組み付けのために、リング41は連行体40に被せ嵌められて、接着剤42を塗布され、次いで構成ユニットとして切欠き内に挿入される。このようにして組立は簡単に行われる。
【0032】
本発明は図示の実施例に限定されるものではない。遠心力クラッチ若しくは遠心力カップリングとしての本発明に基づく構成は、例えばスピンドルの切欠き内にコイルばねを設けて、スピンドルの停止状態若しくは静止状態でも半径方向外側への力を連行体に生ぜしめて、既にスピンドルの停止状態でスリーブの保持及び仮位置決めを行うことを排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に基づくスリーブ継ぎ手を備えていてかつスリーブを差し嵌められたスピンドルの一部分の部分的に破断した平面図
【図2】図1のI−I線に沿った断面図
【図3】3つの連行体から成るスリーブ継ぎ手を備えたスピンドルの断面図
【図4】皿ばねとして形成された後部保持部材から成るスリーブ継ぎ手を備えたスピンドルの断面図
【図5】連行体の連結面をスピンドル表面の湾曲に適合されて成るスリーブ継ぎ手を備えたスピンドルの断面図
【図6】図5のスリーブ継ぎ手の構成ユニットを連行体のピンの側から示す斜視図
【図7】図5のスリーブ継ぎ手の構成ユニットを連行体の連結面の側から示す斜視図
【図8】互いに解離可能に結合される連行体と後部保持部材との斜視図
【図9】図8の連行体と後部保持部材とを組み合わせて成る構成ユニットの斜視図
【図10】リングとして形成された後部保持部材から成るスリーブ継ぎ手を備えたスピンドルの一部分の部分的に破断した平面図
【符号の説明】
【0034】
1 スピンドル、 2 スリーブ、 3 連行体、 4,5 貫通孔、 6 後部保持部材、 7 ピン、 10 面取り部、 12 連結面、 13 スピンドル、 14 後部保持部材、 15 スリーブ、 16 袋孔、 18 球欠、 19 連行体、 20 後部保持部材、 21 連行体、 24 ピン、 25 連結面、 27,28 連行体、 29 後部保持部材、 30 ピン、 31 保持ヘッド、 32,33 孔、 34 開口、 35 中心軸線、 36,37 回転対称軸線、 38 スピンドル、 39 袋孔、 40 連行体、 41 後部保持部材、 42 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維機械用のスピンドルであって、スリーブ継ぎ手を備えており、スリーブ継ぎ手の連行体は外側に向いている端部の連結面で以て、スピンドルに被せはめられたスリーブの内壁に遠心力の作用下で接触して、スピンドルとスリーブとの間の力伝達可能な結合部を形成するようになっており、このために連行体は、半径方向に向いている切欠き内を遠心力の作用下で前記各切欠きに対して同軸的にスリーブに向かって運動可能であり、かつ連行体は前記切欠きの内部と周囲との間のシール部として作用している形式のものにおいて、
連行体(3,27,19,21,28,40)は、スピンドル(1,13,26,38)の中心軸線に向いている端部で、該連行体(3,27,19,21,28,40)と結合された後部保持部材(6,14,20,22,29,41)によって保持されており、この場合に連行体(3,27,19,21,28,40)は、後部保持部材(6,14,20,22,29,41)を含めて外側から切欠き内に挿入され、かつ後部保持部材(6,14,20,22,29,41)は切欠き内にロックされるようになっていることを特徴とする、繊維機械用のスピンドル。
【請求項2】
後部保持部材(6,14,20,22,29)は、切欠き内に摩擦力でロック可能に形成されている請求項1に記載のスピンドル。
【請求項3】
連行体(3,27,19,21,28)と後部保持部材(6,14,20,22,29)とは、予め組立可能な1つの構成ユニットを形成している請求項又は2に記載のスピンドル。
【請求項4】
連行体(3,27,19,21)と後部保持部材(6,14,20,22)とは、互いに解離不能に結合されている請求項3に記載のスピンドル。
【請求項5】
切欠きの表面は、連行体(3,27,19,21)の案内として用いられている請求項1から4のいずれか1項に記載のスピンドル。
【請求項6】
連行体(19,21)の、後部保持部材(20,22)に向いている端部は、円錐形に形成されている請求項1から5のいずれか1項に記載のスピンドル。
【請求項7】
スピンドル(13,26)は少なくとも3つの切欠きを有しており、該切欠きは袋孔(16)として形成されていて、スピンドル軸線に対して垂直な1つの平面内でスピンドル(13,16)の周囲に配置されている請求項1から6のいずれか1項に記載のスピンドル。
【請求項8】
スピンドル(13,26)は、貫通孔(4,5)として形成された少なくとも2つの切欠きを有しており、該切欠きは、互いに直角を成してかつスピンドル軸線に対して垂直な各平面に配置されており、それぞれ2つの連行体(3)を、前記各切欠き内に互いに直径方向で相対して挿入してある請求項1から6のいずれか1項に記載のスピンドル。
【請求項9】
連行体(21)の、スリーブ内面に接触可能な連結面(25)は、スピンドル表面の湾曲に適合して形成されている請求項1から8のいずれか1項に記載のスピンドル。
【請求項10】
連行体(28)と後部保持部材(6,14,20,22)とは、互いに解離可能に構成ユニットとして結合されており、この場合に、連行体と後部保持部材との分離は、スピンドル(1,13,26)内に組み付けられた状態では不可能になっている請求項1から3のいずれか1項に記載のスピンドル。
【請求項11】
連行体(28)及び後部保持部材(29)は回転体として形成されており、連行体(28)はピン(30)及び保持ヘッド(31)を有しており、後部保持部材(29)は開口(34)を備えており、該開口は互いにオーバーラップした2つの孔(32,33)によって形成されており、この場合に第1の孔(32)は前記保持ヘッド(31)の直径よりも大きくなっており、かつ該孔(32)の中心軸線35は、後部保持部材(29)の回転対称軸線(36)に対し離間してかつ平行に延びており、第2の孔(33)は前記保持ヘッド(31)の直径よりも小さくなっており、前記ピン(30)はスピンドル(1,13,26)内に組み付けられた状態では第2の孔(33)内に位置決めされている請求項10に記載のスピンドル。
【請求項12】
後部保持部材(41)は、リングとして形成されていて、接着結合によって切欠き内に固定されるようになっている請求項1に記載のスピンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−503199(P2006−503199A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501283(P2005−501283)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011245
【国際公開番号】WO2004/035889
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(505009715)テクスパーツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【Fターム(参考)】