説明

繊維製品の加工方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、直接皮膚に接する衣料として用いたときに皮膚に対する保湿効果を与え健康を保持させると共に優れた柔軟性、風合いについて、その耐洗濯性能を具備した繊維製品の加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より天然繊維や合成繊維等よりなる紡績糸、編織布帛、不織布等の繊維製品に柔軟性を付与させるために柔軟仕上剤として、シリコーン系油剤やアニオン性、非イオン性、カチオン性或いは両性界面活性剤を用いて処理することが提案されている。特開平3−14674号公報には、天然繊維材料を四級アンモニウム基と繊維の水酸基と反応する反応基を有するカチオン系化合物で処理後、アニオン系柔軟剤で柔軟処理する2段処理する方法が開示されているが、第1段処理は天然繊維材料とのカチオン化反応を目的としているためあらゆる繊維素材に供することが出来ない欠点がある。
【0003】又、衣料として皮膚に保湿性を与えるために特開平2−300301号公報に1種の保湿剤又はそのマイクロカプセルをバインダーで衣料に付着させることが開示されているが、バインダーを用いているために柔軟性、耐洗濯性において劣る加工方法による衣料である。そして保湿剤としてビタミンEとスクワラン成分をマイクロカプセル化し繊維に付与した商品[東邦レーヨン(株)製商品名ラァイブリスキン]が上市されているが、その加工方法は開示されておらず、ビタミンEは日光等により劣化する傾向が大きいので衣料を黄変させる懸念がある。上述の状況下にあって、更に保湿効果、柔軟性、触感性を具備し乍らその効果の持続性を発揮する耐洗濯性に高い繊維製品の加工方法の開発が要望されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の欠点を解決し保湿効果、柔軟性、触感性が従来よりも優れこれらの性能を持続させる耐洗濯性の高い繊維製品の加工方法を提供する。
【0005】
【発明が解決するための手段】本発明者等は上述の課題を解決すべく鋭意改善研究を重ねた結果本発明を完成した。本発明は、繊維製品をカチオン系界面活性剤乳化分散水溶液で処理後乾燥し、次いで保湿剤スクワランとホホバ油が分散混合しているアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液で処理後乾燥する繊維製品の加工方法である。
【0006】本発明で用いられる繊維製品とは、絹、木綿、麻、羊毛及びポリアミド、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリウレタン、ポリビニールアルコール等及びそれらを基本とする共重合ポリマーからなる合成繊維、ビスコースレーヨン、アセテート等のあらゆる繊維素材からなる単独または混合繊維の紡績糸、編織布帛、不織布等である。
【0007】特に、これらの繊維製品を直接皮膚に接して着用される、ランジェリー、肌着、ブラジャー、ボディスーツ、和装用肌着類、パンティーストッキング、ガードル、腹巻き、靴下、手袋等に供される繊維製品の加工に優れた効果を発揮する。保湿剤としては、特開平2−300301号公報に開示されている以外にソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ホホバ油やオリーブ油及びヤシ油などの天然油脂、ポリブテン、水素添加ポリブテンなどの液状高分子炭化水素、コラーゲン、月見草油、ミンク油及びこれらの誘導体等が挙げられる。しかし、本発明の目的からすれば保湿剤として人間に対する安全性、皮膚への親和性、酸化安定性が高く繊維製品に対して劣化、黄変等の影響のないもの及びアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液に支障なく分散混合する性能を具備しているものが選択されることが重要である。
【0008】本発明者等は、従来1種類の保湿剤を用いることより相乗効果に加えて違った保湿効果の組合せでより高い保湿性能を発揮する組合せについて鋭意検討の結果、後述の実施例で具体的に開示している如くスクワランとホホバ油の組合せが優れていることを見い出した。
【0009】スクワランとしては鮫肝油、オリーブ油由来のスクワレンの部分水素添加物および完全水素添加物あるいはイソプレンを出発原料として製造される合成スクワランが用いられる。
【0010】一方、ホホバ油としては、ホホバ(Simmondsia chinensis)の種子を圧搾して得られる油の金属ナトリウムによる還元により得られるホホバアルコール、圧搾油の精製油、脱臭油および水素添加油、さらにホホバワックスなどが挙げられる。なお、いずれにしろスクワランとホホバ油はその由来する生物はもちろん、化学構造も互いに明瞭に相違する化合物である。
【0011】スクワラン、ホホバ油は化粧品原料として広く使用され、酸化安定性に優れているばかりでなく、皮膚に対する親和性、安全性にも優れており、アニオン系界面活性剤乳化分散水溶液によく分散し、保湿効果としてはスクワランは皮膚からの水分の喪失を防ぎ適量な水分を保持する能力があり、これを用いて加工された繊維製品に風合的にぬめり感を与えることとなり、ホホバ油は優れた浸透性を有しており皮膚に対して吸収性が高く油性感を与えず爽快感を残すためこれを用いて加工された繊維製品に風合的にドライ感を与える。従って両保湿剤の混合により保湿性を具備させると共に両保湿剤の混合比率を変更することにより加工した繊維製品の風合いを希望するものを得ることが可能である。又、繊維製品として経時変化(製品の色調変化)にも耐えるものである。
【0012】併用するスクワランとホホバ油の量比は、スクワン:ホホバ油の重量比で1:10〜10:1の範囲である。なお、本発明はスクワランとホホバ油を併用することを必須とするが、本発明の効果を阻害しない範囲で繊維用添加剤として公知の他の成分、例えばスクワレンなどを適宜に添加することができる。
【0013】本発明で用いられるカチオン系界面活性剤乳化分散としては、従来より柔軟加工剤として用いられているカチオン系界面活性剤で水分散可能であればいかなるものでもよい。例示すれば、ポリアミン系、脂肪酸または脂肪酸アミドから誘導された第三アミンまたは第四ピリジニウム塩、第四アンモニウム塩等が挙げられるがこれらに制限されない。
【0014】本発明で用いられるアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液としては、従来より柔軟加工剤として用いられているアニオン系界面活性剤で水分散可能にして、かつ、スクワランとホホバ油をよく乳化分散可能なものであればいかなるものでもよい。例示すれば、硫酸化高級アルコール、リン酸化高級アルコール、脂肪酸またはその誘導体の硫化物、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリエチレングリコールエーテルの硫酸エステル塩等が挙げられるが、これらに限定されるものでない。そして、アニオン系界面活性剤乳化分散水溶液を得るのに保湿剤のスクワランとホホバ油が乳化分散させるのに非イオン系の活性剤、例えばアルキルエーテルエチレンオキサイド系、アルキルエーテルエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド系等を用いて予め乳化分散させてからアニオン系界面活性剤に乳化分散させて水溶液とすることが好ましい。
【0015】本発明の繊維製品の加工方法は、繊維製品を上述のカチオン系界面活性剤乳化分散水溶液中に浸漬し、マングル等で所望の絞り率で絞り、繊維品に応じて80℃〜160℃、60分〜20秒の乾燥処理をする。次いで該繊維製品をスクワランとホホバ油が分散混合しているアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液中に浸漬しマングル等で所望の絞り率で絞り繊維製品に応じて80℃〜160℃、60分〜20秒の乾燥処理する方法やチーズ染色機などを用いて吸尽方法で加工することもできる。
【0016】特にカチオン系界面活性剤乳化分散水溶液の水以外の薬剤量に対して、スクワランとホホバ油が分散混合しているアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液中の水以外の薬剤量が重量比で1:1以上が好ましい。処理するカチオン系界面活性剤乳化分散水溶液であるカチオン系処理液濃度は、通常0.1〜20g/Lであり、また処理するアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液であるアニオン系処理液濃度は、スクワランやホホバ油を含むため比較的高濃度であり、通常それは0.1〜200g/Lである。この様にカチオン系とアニオン系の界面活性剤乳化分散水溶液を夫々別工程としたことにより夫々の水溶液の回収再使用が可能となり経済的にも優れている。
【0017】本発明の方法によるとスクワランとホホバ油がよくアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液に均一に混合されており、この加工処理した繊維が衣料として皮膚面に接する様使用されるので保湿効果が発揮される。耐洗濯性に優れる現象については明らかではないが、繊維がアニオン性基を有するものは積極的なカチオン系界面活性剤との反応ではないが若干のイオン結合が生じ剥離しにくくなり、繊維がカチオン性基を有するものはアニオン系界面活性剤がカチオン系界面活性剤を通じてイオン結合が生じるのではないかと推測され、カチオン系界面活性剤からなる層とアニオン系界面活性剤からなる層とはお互いにイオン結合が強固に生じ1体化されるのでないかと推測される。
【0018】本発明の方法により繊維製品を得るのに、本発明の加工方法による処理後、繊維製品を染色することは困難となるので、染色、プリント加工品の繊維製品を得るためには、本発明の加工を行う以前に繊維製品を予め処理しておくことが望ましい。
【0019】
【実施例】以下本発明の繊維製品の加工方法を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの範囲に限定されるものではない。尚、実施例で示した各測定値は次の試験法に従った。
1.皮膚水分量20〜40才の女性パネラー5名を、20℃、湿度60%の室内で2時間在室し、上腕部内側皮膚の水分量を皮膚角質層水分量測定機(ラージ・カザカ(西独)製、商品名コーネオメーターCM−820)で測定し、メーターの表示値から5名の平均値で試験前のデータとして表示し、次いで各試料を各パネラーの上述の測定部位に幅10cmで1重に巻き、同室内で3時間後各試料をはずし試験前のデータを測定した皮膚部位の水分量を測定し、平均値で表した。
【0020】2.水分量増加率(%)
上記1.の測定値の結果から次式で求めた。
(試料巻付け3時間後の皮膚水分量−試験前の皮膚水分量) 水分量増加率(%)=───────────────────────────×100 (試験前の皮膚水分量)
【0021】3.洗濯法は、各試料をJIS L1042「織物の収縮率試験方法」記載のF−1法により0.1%粉石けん液で40℃,15分間洗濯,脱水,乾燥を10回及び30回繰返し行った
【0022】4.柔軟性(1)剛軟JIS L1096「一般織物試験方法」記載のB法(スライド法)で各試料を測定し、未加工試料の剛軟を100として比較表示した。
(2)風合各加工試料を5名のパネラーが未加工試料の風合と比較して次の基準で評価し平均値で表示した。
1:非常に柔らかい2:柔らかい3:やや柔らかい4:変らない5:やや硬い6:硬い
【0023】5.触感性各試料を5名のパネラーが加工品のぬめり感( しめった感じを有し乍らしなやかな感じ) とドライ感( さらり感を有し乍らしなやかな感じ) を未加工試料と比較して次の基準で評価し平均値で表示した。


【0024】6.経時変化デシケーターの下部に水を満たして、中板の上に10cm×10cmの大きさの加工試料及び未加工試料をガラス製架台に掛け、デシケーターの蓋をした後、60℃の恒温装置内に7日間放置して、夫々の試料を取出しJIS0805「汚染用グレースケール」に基づき、未加工処理試料と比較し評価して表した。
【0025】〔実施例1〕
50番手単糸の綿紡績糸を用いて、経285本/5cm、緯165本/cmの密度、目付100g/m2 の綿ブロード織物を織成し、常法により毛焼、糊抜き、精練、漂白、マーセル加工、乾燥を行って綿ブロード織物の繊維製品を得た(未加工品試料1)。得られた綿ブロード織物をポリアミン系カチオン界面活性剤(高松油脂(株)製,商品名ハイソフナーFC)の3.8g/L含有カチオン系界面活性剤乳化分散水溶液中(以下カチオン系処理液と云う)に1.5秒間浸漬処理し、絞り率80%で絞った後、140℃で30秒間の乾燥処理をした。次いで、スクワランとホホバ油を非イオン系活性剤であるアルキルエーテルエチレンオキサイド付加物とアルキルエーテルエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド付加物に乳化分散し更にアニオン系界面活性剤であるアルキル・メチルタウリン酸塩を混入乳化分散した後水を加えアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液を調整製造する。
【0026】この時のスクワラン、ホホバ油、アルキルエーテルエチレンオキサイド付加物、アルキルエーテルエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド付加物とアルキルメチルタウリン酸塩濃度が表1に示す如く配合し6.0g/L,12.0g/L,18g/L,24g/L,30g/Lになる様に、即ちカチオン系界面活性剤濃度との比が1:1.6, 1:3.2, 1:4.7, 1:6.3, 1:7.9になる如くスクワラン、ホホバ油を含むアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液(以下アニオン系処理液と云う)を準備した。
【0027】カチオン系処理液で加工処理して得た、綿ブロード織物を上述の夫々の濃度からなるアニオン系処理液中に1.5秒間夫々浸漬処理し、絞り率80%で絞った後、140℃で30秒間乾燥処理し本発明の加工処理試料2,3,4,5,6を得た。各1〜6の試料について皮膚水分量、柔軟性、触感性及び経時変化の結果を表1に示した。
【0028】
【表1】


【0029】表1から明らかな如くスクワランとホホバ油の混合比率を1:1とし、カチオン系処理液濃度とアニオン系処理液濃度比を変化させると濃度比が増加するに従って皮膚水分量増加率が増加即ち保湿効果が向上し、柔軟性も向上する。そして、触感性は変化なく、経時変化(試料の色調変化)は全く影響がない。
【0030】〔実施例2〕
実施例1と同様にして得られた綿ブロード織物(試料1)を用いて、実施例1で用いた濃度38g/Lのカチオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率80%で絞った後、140℃で30秒間の乾燥処理をした。次いで、表2に示す如くスクワランとホホバ油の混合比を、1:4,3:7,7:3及び4:1と変更しアニオン系処理液中の全濃度18g/Lの液を調整製造し夫々のアニオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率80%で絞った後140℃で30秒間乾燥処理し本発明の加工処理試料7,8,9,10を得た。各7〜10試料について皮膚水分量、柔軟性、触感性及び経時変化の結果及び実施例1の試料1と4の結果も表2に示した。
【0031】
【表2】


【0032】表2の結果より、カチオン系処理液濃度とアニオン系処理液濃度比を同一にしてスクワランとホホバ油を混合比を変えても保湿性には影響なく効果があり、スクワランの割合を増やすと剛柔及び風合が低下し、触感性のぬめり感が増加しドライ感は低下する。これに対し、ホホバ油の割合がスクワランに比べ多いと剛柔び風合が向上し、触感性のぬめり感は低下し、ドライ感が向上していることが明らかであり、所望の柔軟性、風合等をスクワランとホホバ油の混合割合を変えることにより自由に加工できる。尚、この時も経時変化には全く影響はない。
【0033】〔比較例〕
(1)実施例1と同様にして得られた綿ブロード織物(試料1)を用いて実施例1で用いた濃度3.8g/Lのカチオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率80%で絞った後、140℃で30秒間の乾燥処理をした。次いで保湿剤としてスクワランのみを乳化分散させた表3に示す濃度のアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率80%で絞った後140℃で30秒間の乾燥処理をし、加工処理試料11を得た。
(2)上述の保湿剤スクワランの代りにホホバ油のみを分散させた表3に示す配合濃度のアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液を用いて上述の(1)同様の操作で加工処理試料12を得た。
(3)綿ブロード織物(試料1)をカチオン系処理液で加工処理を行わずに、スクワランとホホバ油の濃度比が1:1で表3に示す配合濃度のアニオン系処理液中に浸漬処理を実施例1同様に行い加工処理試料13,14を得た。各11〜14試料について皮膚水分量、柔軟性、触感性及び経時変化の、結果及び実施例の試料1,2,4の結果を表3に示した。
【0034】
【表3】


【0035】表3から明らかな如く、(1)アニオン系処理液中にホホバ油を入れずスクワラン単独配合の時は水分量増加率が両保湿剤を混合した時に比較し低下していることが明らかで、剛軟及び風合も低下しているがぬめり感は向上するもドライ感は低下している。
(2)アニオン系処理液中にスクワランを入れずホホバ油単独配合の時は水分増加率は若干向上し、剛軟及び風合も若干向上しているがぬめり感が低下しドライ感が向上している。
(3)カチオン系処理液で加工せずアニオン系処理液で加工処理した時は試料2と13、及び試料4と14の結果より水分量増加率は著しく低下し、耐洗濯性能も低下している。柔軟性も低下しぬめり感、ドライ感共に低下している。このことからスクワラン単独又はホホバ油単独のアニオン系処理液で処理するより、又、カチオン系処理液で加工処理しない場合に比べ本発明の加工方法が凡ゆる点で優れていることが明らかである。
【0036】〔実施例3〕
(1)75デニールのポリエステルフィラメント糸を用いて経210本/5cm、緯191本/5cmの目付70g/m2 のポリエステル織物を織成した。これを通常の方法で精練、漂白、乾燥しポリエステル織物の繊維製品を得た(未加工品試料15)。得られたポリエステル織物を実施例1と同一の3.8g/Lのカチオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率25%で絞った後、140℃で20秒間の乾燥処理をした。次いで実施例1の試料4を得た時に用いたアニオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率25%で絞った後、140℃で20秒間の乾燥処理をし本発明の加工処理試料16を得た。
【0037】(2)70デニールのナイロンフィラメント糸を用いて経214本/5cm、緯150本/5cmの目付70g/2 のナイロン織物を織成した。これを通常の方法で精練、漂白、乾燥し、ナイロン織物の繊維製品を得た(未加工品試料17)。得られたナイロン織物を実施例1と同一の3.8g/Lのカチオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率34%で絞った後、140℃で20秒間乾燥処理をした。次いで、実施例1の試料4を得た時に用いたアニオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率34%で絞った後、140℃で20秒間の乾燥処理をし本発明の加工処理試料18を得た。
【0038】(3)梳紡番手64番単糸のポリアクリルニトリル紡績糸を用いて、経149本/5cm、緯139本/5cm、目付95g/m2 のアクリル織物を織成した。これを通常の方法で精練、漂白、乾燥しアクリル織物の繊維製品を得た(未加工品試料19)。得られたアクリル織物を実施例1と同一の3.8g/Lのカチオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率106%で絞った後、140℃で20秒間乾燥処理をした。次いで、実施例1の試料4を得た時に用いたアニオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率106%で絞った後、140℃で20秒間乾燥処理をし本発明の加工処理試料20を得た。
【0039】(4)280デニールのポリウレタン弾性糸(富士紡績(株)製,商品名フジボウスパンデックス)と70デニールのポリアミドセミダル糸を用い、ポリアミド糸80%(重量)、ポリウレタン弾性糸20%(重量)の目付180g/m2のサテン調パワーネットを経編機で編成した。この織地を通常のスチームリラックス、プレヒートセット、精練、漂白、乾燥しパワーネット編地の繊維製品を得た(未加工品試料21)。得られたパワーネット編地を実施例1と同一の3.8g/Lのカチオン系処理液中に1.5秒間浸漬し、絞り率98%で絞った後、160℃で43秒間乾燥処理をした。次いで、実施例1の試料4を得た時に用いたアニオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率98%で絞った後、160℃で43秒間乾燥処理をし本発明の加工処理試料22を得た。
【0040】(5)21デニールの絹糸を3本引き揃えた絹糸を用いて、経264本/5cm、緯190本/5cmの目付50g/m2 の絹織物を織成し通常の精練、漂白、乾燥を行い絹織物の繊維製品を得た(未加工試料23)。得られた絹織物を実施例1と同一の3.8g/Lのカチオン系処理液中に1.5秒間浸漬し絞り率100%で絞った後、140℃で30秒間乾燥処理をした。次いで、実施例1の試料4を得た時に用いたアニオン系処理液中に1.5秒間浸漬処理し、絞り率100%で絞った後、140℃で30秒間乾燥処理をし本発明の加工処理試料24を得た。
【0041】(6)マーセル化加工をした60番手双子の綿紡績糸を用いて28本/2.5cmゲージの丸編機で目付130g/m2 の天竺丸編地を編成し通常の精練、漂白、乾燥後開し、綿編物の繊維製品を得た(未加工試料25)。得られた綿編地を実施例1と同一の3.8g/Lのカチオン系処理液中に15秒間浸漬し、絞り率90%で絞った後、100℃で45秒間乾燥した。次いで、実施例1の試料4を得た時に用いたアニオン系処理液中に15秒間浸漬処理し、絞り率90%で絞った後、100℃で45秒間乾燥して本発明の加工処理試料26を得た。上述の如くして得られた試料15〜26について皮膚水分量、柔軟性、触感性及び経時変化の結果を表4に示した。
【0042】
【表4】


【0043】表4から明らかな如く、各繊維素材からなる繊維製品に本発明の加工方法で加工すればその効果があることが明らかである。
【0044】〔実施例4〕
マーセル化加工された65番手双糸の綿紡績糸をトラバース幅155mmで1kg巻きの49個のコーン巻きとし、これらの49チーズをチーズ染色機に充填し通常の方法により精練、漂をし取出しチーズ乾燥機で90℃で60分間の乾燥処理をした。次に再びチーズ染色機に充填し下記の染色条件で青色に染色し、水洗、脱液後チーズ乾燥機で乾燥し染色した綿糸を得た(未加工試料27)。
染色条件 シバクロンブルー TR−E(チバガイギー社製)0.011% o.w.f 芒硝 20g/L ソーダ灰 10g/L 浴比 1:15 温度×時間 80℃×30分
【0045】得られた染色した綿糸のコーン巻きを同様にチーズ染色機に充填し実施例1で用いた同一の薬品でカチオン活性剤濃度0.38g/Lのカチオン系処理液を染色機に注入し、ポンプで流量2205L/分で循環させ、浴比1:15で50℃、15分間浸漬処理し、該処理液を排出し、脱率200%で脱液後、該コーン巻き糸を取出しチーズ乾燥機に移し90℃で60分間乾燥した。次いで、これらの処理コーン巻き糸を再びチーズ染色機に充填し、スクワラン0.6g/L、ホホバ油0.6g/L、実施例1と同一の薬品の非イオン活性剤とアニオン活性剤の合計が0.6g/Lのアニオン系処理液をチーズ染色機に注入し、ポンプで流量2205L/分で循環させて浴比1:15、50℃で20分間処理した後、処理液を排出し脱液中200%で脱液した。各加工処理されたコーン巻1本をチーズ乾燥機に移し90℃で60分間乾燥し本発明の加工染色綿糸試料28を得た。得られた未加工試料27と加工染色綿糸試料28を用いて夫々実施例3(6)と同様に天竺丸編地を編成し、編地試料29と30を得た。得られた試料29,30について皮膚水分量、柔軟性、触感性及び経変化の結果を表5に示した。
【0046】
【表5】


【0047】第5表より、カチオン系処理液とアニオン系処理液の処理方法が実施例1〜3と異なった浸漬法ではなく吸尽法であっても又染色された繊維製品でも、本発明の効果には変わりがないことが明らかである。
【0048】
【発明の効果】本発明は、上述の如き加工方法で繊維製品を処理する結果より保湿性、柔軟性、触感性に優れこれらの性能が洗濯を繰返しても継続的に保持出来る効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 繊維製品をカチオン系界面活性剤乳化分散水溶液で処理後乾燥し、次いで保湿剤スクワランとホホバ油が分散混合しているアニオン系界面活性剤乳化分散水溶液で処理後乾燥することを特徴とする繊維製品の加工方法。

【特許番号】第2663328号
【登録日】平成9年(1997)6月20日
【発行日】平成9年(1997)10月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−202515
【出願日】平成5年(1993)7月26日
【公開番号】特開平7−42073
【公開日】平成7年(1995)2月10日
【出願人】(000231682)日本石油化学株式会社 (33)
【出願人】(000005359)富士紡績株式会社 (180)
【出願人】(000169651)高松油脂株式会社 (8)
【出願人】(000187459)松浦株式会社 (3)