繊維製品の製造方法およびそれにより得られた繊維製品
【課題】 従来にない斬新なデザインが可能な繊維製品の製造方法を提供する。
【解決手段】 多層構造繊維生地表面にデザインが施された繊維製品の製造方法において、前記多層構造繊維生地表面1を叩打して摩砕することにより、前記表面上に粒状突起を形成することでデザイン6を施す。前記叩打による摩砕は、前記生地1の裏面に鋼板3を接した状態で配置し、前記表面に、マスク2を介して鋼球微粒子5を多数投射することにより実施できる。マスク2には、星型形状の開口4が形成されており、この開口を通過した前記粒子5が前記生地1の表面に投射される。その結果、前記生地1の表面に星型状に粒状突起が形成され、星型のデザイン6が形成できる。
【解決手段】 多層構造繊維生地表面にデザインが施された繊維製品の製造方法において、前記多層構造繊維生地表面1を叩打して摩砕することにより、前記表面上に粒状突起を形成することでデザイン6を施す。前記叩打による摩砕は、前記生地1の裏面に鋼板3を接した状態で配置し、前記表面に、マスク2を介して鋼球微粒子5を多数投射することにより実施できる。マスク2には、星型形状の開口4が形成されており、この開口を通過した前記粒子5が前記生地1の表面に投射される。その結果、前記生地1の表面に星型状に粒状突起が形成され、星型のデザイン6が形成できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にデザインが施された繊維製品の製造方法およびそれにより得られる繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類等の繊維製品は、身体の保護等の機能的な面を有するが、同等かそれ以上に装飾的な機能が強い。このため、繊維製品には、形状、色彩および模様等を組み合わせた様々なデザインが施され、様々なデザイン手法も開発されている。最近では、ナチュラルな風合いが好まれているのを反映して、従来は嫌われていた皺を積極的に活用した皺加工や、プリーツ加工等が流行している(特許文献1参照)。しかしながら、需要者のデザインに対する要求は無限であり、さらに斬新なデザイン手法の開発が強く要求されている。
【特許文献1】特許第1869964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、従来にない斬新なデザインが可能な繊維製品の製造方法およびそれにより得られる繊維製品の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明の製造方法は、多層構造繊維生地表面にデザインが施された繊維製品の製造方法であって、前記多層構造繊維生地表面を叩打して摩砕することにより、前記表面上に粒状突起を形成することでデザインを施す製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明者等は、上記課題について鋭意検討した結果、前記多層構造繊維生地表面を叩打摩砕することにより、繊維製品表面に全く新規なデザインを提供できる事を見出し、本発明に到達した。すなわち、前記多層構造繊維表面を叩打摩砕して形成される粒状突起は、例えば、生地表面を平坦な二次元構造から凹凸の有る三次元構造に変える効果がある。また、前記粒状突起は、サイズも発生位置も規則性が無く不揃に形成できるため、ナチュラルなデザインを施すことが可能である。さらに、この粒状突起は、前記叩打摩砕による繊維表面の擦過や短繊維の解繊により形成されるものであり、この粒状突起の存在しない部分(領域)とは異なった光沢や色彩等を示すため、粒状突起が引き立って見えるものとすることもできる。したがって、本発明の製造方法により、斬新で、かつ需要者の要求にマッチしたデザインを施した繊維製品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0007】
本発明の製造方法において、前記粒状突起は、これ以外の前記繊維生地表面の部分と、色および光沢の少なくとも一つが異なることが好ましい。
【0008】
本発明の製造方法において、前記粒状突起は、不揃いに複数形成されることが好ましい。
【0009】
本発明の製造方法において、予めデザインのパターンが設定され、このパターンに応じて前記多層構造繊維生地表面を叩打することが好ましい。
【0010】
本発明の製造方法において、前記粒状突起が形成されている部分と形成されていない部分とによってデザインが施されることが好ましい。
【0011】
本発明の製造方法において、前記叩打による摩砕の程度を調整することにより、形成される前記粒状突起の形状、大きさ、色および光沢の少なくとも一つを調整することが好ましい。
【0012】
本発明の製造方法において、前記多層構造繊維生地の裏面に支持体を配置し、この状態で、前記多層構造繊維生地表面に対し粒子を投射し、前記粒子の衝突時の圧力で前記生地表面を摩砕することが好ましい。この製造方法において、デザインパターンに応じたマスク材を準備し、このマスクを介して前記粒子を投射してもよい。また、前記支持体として、デザインパターンに応じた形状を有する支持体を用い、この支持体が配置された部分に対応する前記生地表面が摩砕されて粒状突起が形成されてもよい。そして、例えば、前記粒子の投射速度、前記粒子の投射数、前記粒子の投射時間、前記粒子の大きさ、前記粒子の硬度、前記粒子の形状および前記支持体の硬度からなる群から選択される少なくとも一つの条件を変化させることにより、摩砕の程度を調整することができる。
【0013】
前記支持体の形状は特に制限されないが、例えば、板状であり、この場合の厚みは、例えば、2〜10mmである。また、支持体の材質は、硬くて剛性のあるものが好ましく、例えば、鋼板が使用できる。前記粒子の材質、形状および大きさは、特に制限されず、例えば、材質は、例えば、金属、ガラス、セラミック等があげられ、形状は、例えば、球状、チップ状、非破砕形状などがある。前記粒子としては、直径0.8〜5.0mmの鋼球粒子が好ましい。前記粒子の投射条件は、特に制限されない。例えば、投射速度は、10〜90m/秒であり、好ましくは30〜80m/秒であり、より好ましくは50〜70m/秒である。時間および生地単位面積当たりの投射粒子の個数は、例えば、500〜2500個/分・cm2であり、好ましくは800〜2000個/分・cm2であり、より好ましくは900〜1500個/分・cm2である。投射装置としては、特に制限されないが、例えば、羽根車の回転による遠心力により粒子を投射するショットブラスト機が使用できる。前記生地表面と投射器との距離は、特に制限されないが、例えば、10〜200cmである。前記マスクの材質は、特に制限されないが、例えば、ゴムがある。また、このマスクは、投射粒子を生地に当てたい部分に対応する部分が開口している。
【0014】
本発明の製造方法において、前記多層構造繊維生地は、表面繊維と内部繊維とから構成され、前記表面繊維と前記内部繊維とが、その接点で交絡している織物であることが好ましい。このような前記多層構造繊維生地は、例えば、ツイル、朱子およびパイルがある。なお、本発明は、単層構造繊維生地を使用することはできない。単層構造繊維生地は、繊維が生地表面で交絡しており、叩打摩砕により、繊維の交絡部が破壊され生地の欠落が生じるし、粒状突起が形成できない。
【0015】
つぎに、本発明の繊維製品は、表面にデザインが施された繊維製品であって前記本発明の製造方法により得られる繊維製品である。
【0016】
つぎに、本発明の製造方法について、例を挙げて説明する。
【0017】
図10に、本発明の製造方法の一例を示す。同図(A)に示すように、この製造方法では、多層構造繊維生地1の裏面に、板状支持体3を接した状態で配置し、この状態で、多数の粒子5を投射器(図示せず)で投射する。その際、デザインパターンに応じた形状のマスク2を、前記生地1と投射器との間に介在させる。この例では、星型形状の開口4を有するマスク2を使用しているので、この開口4の形状に応じた生地1表面に粒子5が当たることになる。そして、同図(B)に示すように、粒子の投射によって生じた粒状突起により、生地1の表面に星型状のデザイン6が形成される。
【0018】
図11に、本発明の製造方法のその他の例を示す。同図(A)に示すように、この製造方法では、多層構造繊維生地1の裏面に、ドーナッツ状(環状)支持体7を配置し、この状態で、多数の粒子5を投射器(図示せず)で投射する。なお、同図では、支持体7の形状を説明するために、支持体7と生地1とを離した状態で描いているが、投射時は、支持体7は生地1の裏面に接した状態で配置される。この例では、粒子5の投射領域が制限されていないが、支持体7が接している部分で粒子5の衝突による圧力が生じ、これによって摩砕される。そして、同図(B)に示すように、粒子の投射によって生じた粒状突起により、生地1の表面にドーナッツ状のデザイン8が形成される。
【0019】
このように、多層構造繊維生地の裏面に支持体を接した状態で配置し、前記生地の表面に粒子を投射すると、前記生地表面が摩砕されて粒状突起が生じる。この摩砕による粒状突起の形成メカニズムをもう少し詳しく説明すると、裏面に支持体を配置した繊維生地の表面に粒子を投射すると、投射された粒子は生地表面を叩くだけでなく、生地内部に突入していく。この突入に際し、生地表面繊維と投射粒子の接点で強烈な摩擦力が働き、突入粒子の先端では特に強い摩擦力が働きこれにより表面繊維は摩砕されると考えられる。また、確かな事は未解明ではあるが、この摩擦力により摩砕されずに残された表面繊維が粒状形態に変換されると推定している。
【0020】
なお、粒子の投射により多層構造繊維生地表面を叩打して摩砕すると、粒状突起を良好に形成できるが、本発明はこれに限定されず、他の方法で叩打摩砕してもよい。例えば、先を丸めた細い棒で多層構造繊維表面を突いてもよい。
【実施例1】
【0021】
つぎに、本発明の実施例について説明する。
【0022】
図10に示すように、投射器から多層構造繊維生地表面に鋼球粒子を多数投射して粒状突起を形成し、デザインを施した。その条件を下記に示す。
【0023】
1.使用生地
(1)素材:綿100%
(2)生地構造:ツイル
【0024】
2.投射粒子、投射器、支持体、マスク
(1)投射粒子:直径1.8mmの鋼球粒子
(2)投射距離:1.3m
(3)投射装置:ショットブラスト機(メーカ名:新東工業株式会社、型式:CVC)
(4)支持体:厚み10mmの鋼板
(5)マスク:厚み3mmのゴム板(開口部有り)
【0025】
3.投射条件
実施例1−1:投射速度:56m/秒、投射時間:1.0分
実施例1−2:投射速度:56m/秒、投射時間:1.2分
実施例1−3:投射速度:64m/秒、投射時間:1.2分
【0026】
4.マスクの開口形状
実施例1−1:矩形
実施例1−2:矩形
実施例1−3:曲線形状
【0027】
このようにして得られた、実施例1−1〜3の生地表面の状態を、図3〜図9の写真に示す。なお、参考例として、図1および図2の写真に、未処理の状態の生地の状態を示す。図1は、未処理の状態の生地の平面状態を示す写真であり、図2は、拡大写真(倍率14倍)である。図3は、実施例1−1の生地の平面写真であり、図4は、その拡大写真(倍率14倍)である。図5、実施例1−2の生地の平面写真であり、図6、その拡大写真(倍率14倍)である。図7、実施例1−3の生地の平面写真であり、図8は、その斜め上方からの写真であり、図9は、その拡大写真(倍率14倍)である。これらの図に示すように、粒子が投射された生地の表面部に粒状突起が形成されて、マスクの開口形状にしたがったデザインがされている。また、粒子の投射条件の強弱に応じて、粒状突起のサイズや色合いが変化している。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の製造方法によれば、例えば、斬新で個性的でナチュラルなデザインを施した繊維製品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、未処理生地の平面写真である。
【図2】図2は、未処理生地の拡大写真である。
【図3】図3は、本発明の一実施例により得られた生地の平面写真である。
【図4】図4は、前記実施例により得られた生地の平面拡大写真である。
【図5】図5は、本発明のその他の実施例により得られた生地の平面写真である。
【図6】図6は、前記実施例により得られた生地の平面拡大写真である。
【図7】図7は、本発明のさらにその他の実施例により得られた生地の平面写真である。
【図8】図8は、前記実施例の斜め上方から写真である。
【図9】図9は、前記実施例により得られた生地の平面拡大写真である。
【図10】図10は、本発明の製造方法の一例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の製造方法のその他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 多層構造繊維生地
2 マスク
3 支持体
4 開口
5 粒子
6 粒状突起により形成されたデザイン
7 支持体
8 粒状突起により形成されたデザイン
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にデザインが施された繊維製品の製造方法およびそれにより得られる繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類等の繊維製品は、身体の保護等の機能的な面を有するが、同等かそれ以上に装飾的な機能が強い。このため、繊維製品には、形状、色彩および模様等を組み合わせた様々なデザインが施され、様々なデザイン手法も開発されている。最近では、ナチュラルな風合いが好まれているのを反映して、従来は嫌われていた皺を積極的に活用した皺加工や、プリーツ加工等が流行している(特許文献1参照)。しかしながら、需要者のデザインに対する要求は無限であり、さらに斬新なデザイン手法の開発が強く要求されている。
【特許文献1】特許第1869964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、従来にない斬新なデザインが可能な繊維製品の製造方法およびそれにより得られる繊維製品の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明の製造方法は、多層構造繊維生地表面にデザインが施された繊維製品の製造方法であって、前記多層構造繊維生地表面を叩打して摩砕することにより、前記表面上に粒状突起を形成することでデザインを施す製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明者等は、上記課題について鋭意検討した結果、前記多層構造繊維生地表面を叩打摩砕することにより、繊維製品表面に全く新規なデザインを提供できる事を見出し、本発明に到達した。すなわち、前記多層構造繊維表面を叩打摩砕して形成される粒状突起は、例えば、生地表面を平坦な二次元構造から凹凸の有る三次元構造に変える効果がある。また、前記粒状突起は、サイズも発生位置も規則性が無く不揃に形成できるため、ナチュラルなデザインを施すことが可能である。さらに、この粒状突起は、前記叩打摩砕による繊維表面の擦過や短繊維の解繊により形成されるものであり、この粒状突起の存在しない部分(領域)とは異なった光沢や色彩等を示すため、粒状突起が引き立って見えるものとすることもできる。したがって、本発明の製造方法により、斬新で、かつ需要者の要求にマッチしたデザインを施した繊維製品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0007】
本発明の製造方法において、前記粒状突起は、これ以外の前記繊維生地表面の部分と、色および光沢の少なくとも一つが異なることが好ましい。
【0008】
本発明の製造方法において、前記粒状突起は、不揃いに複数形成されることが好ましい。
【0009】
本発明の製造方法において、予めデザインのパターンが設定され、このパターンに応じて前記多層構造繊維生地表面を叩打することが好ましい。
【0010】
本発明の製造方法において、前記粒状突起が形成されている部分と形成されていない部分とによってデザインが施されることが好ましい。
【0011】
本発明の製造方法において、前記叩打による摩砕の程度を調整することにより、形成される前記粒状突起の形状、大きさ、色および光沢の少なくとも一つを調整することが好ましい。
【0012】
本発明の製造方法において、前記多層構造繊維生地の裏面に支持体を配置し、この状態で、前記多層構造繊維生地表面に対し粒子を投射し、前記粒子の衝突時の圧力で前記生地表面を摩砕することが好ましい。この製造方法において、デザインパターンに応じたマスク材を準備し、このマスクを介して前記粒子を投射してもよい。また、前記支持体として、デザインパターンに応じた形状を有する支持体を用い、この支持体が配置された部分に対応する前記生地表面が摩砕されて粒状突起が形成されてもよい。そして、例えば、前記粒子の投射速度、前記粒子の投射数、前記粒子の投射時間、前記粒子の大きさ、前記粒子の硬度、前記粒子の形状および前記支持体の硬度からなる群から選択される少なくとも一つの条件を変化させることにより、摩砕の程度を調整することができる。
【0013】
前記支持体の形状は特に制限されないが、例えば、板状であり、この場合の厚みは、例えば、2〜10mmである。また、支持体の材質は、硬くて剛性のあるものが好ましく、例えば、鋼板が使用できる。前記粒子の材質、形状および大きさは、特に制限されず、例えば、材質は、例えば、金属、ガラス、セラミック等があげられ、形状は、例えば、球状、チップ状、非破砕形状などがある。前記粒子としては、直径0.8〜5.0mmの鋼球粒子が好ましい。前記粒子の投射条件は、特に制限されない。例えば、投射速度は、10〜90m/秒であり、好ましくは30〜80m/秒であり、より好ましくは50〜70m/秒である。時間および生地単位面積当たりの投射粒子の個数は、例えば、500〜2500個/分・cm2であり、好ましくは800〜2000個/分・cm2であり、より好ましくは900〜1500個/分・cm2である。投射装置としては、特に制限されないが、例えば、羽根車の回転による遠心力により粒子を投射するショットブラスト機が使用できる。前記生地表面と投射器との距離は、特に制限されないが、例えば、10〜200cmである。前記マスクの材質は、特に制限されないが、例えば、ゴムがある。また、このマスクは、投射粒子を生地に当てたい部分に対応する部分が開口している。
【0014】
本発明の製造方法において、前記多層構造繊維生地は、表面繊維と内部繊維とから構成され、前記表面繊維と前記内部繊維とが、その接点で交絡している織物であることが好ましい。このような前記多層構造繊維生地は、例えば、ツイル、朱子およびパイルがある。なお、本発明は、単層構造繊維生地を使用することはできない。単層構造繊維生地は、繊維が生地表面で交絡しており、叩打摩砕により、繊維の交絡部が破壊され生地の欠落が生じるし、粒状突起が形成できない。
【0015】
つぎに、本発明の繊維製品は、表面にデザインが施された繊維製品であって前記本発明の製造方法により得られる繊維製品である。
【0016】
つぎに、本発明の製造方法について、例を挙げて説明する。
【0017】
図10に、本発明の製造方法の一例を示す。同図(A)に示すように、この製造方法では、多層構造繊維生地1の裏面に、板状支持体3を接した状態で配置し、この状態で、多数の粒子5を投射器(図示せず)で投射する。その際、デザインパターンに応じた形状のマスク2を、前記生地1と投射器との間に介在させる。この例では、星型形状の開口4を有するマスク2を使用しているので、この開口4の形状に応じた生地1表面に粒子5が当たることになる。そして、同図(B)に示すように、粒子の投射によって生じた粒状突起により、生地1の表面に星型状のデザイン6が形成される。
【0018】
図11に、本発明の製造方法のその他の例を示す。同図(A)に示すように、この製造方法では、多層構造繊維生地1の裏面に、ドーナッツ状(環状)支持体7を配置し、この状態で、多数の粒子5を投射器(図示せず)で投射する。なお、同図では、支持体7の形状を説明するために、支持体7と生地1とを離した状態で描いているが、投射時は、支持体7は生地1の裏面に接した状態で配置される。この例では、粒子5の投射領域が制限されていないが、支持体7が接している部分で粒子5の衝突による圧力が生じ、これによって摩砕される。そして、同図(B)に示すように、粒子の投射によって生じた粒状突起により、生地1の表面にドーナッツ状のデザイン8が形成される。
【0019】
このように、多層構造繊維生地の裏面に支持体を接した状態で配置し、前記生地の表面に粒子を投射すると、前記生地表面が摩砕されて粒状突起が生じる。この摩砕による粒状突起の形成メカニズムをもう少し詳しく説明すると、裏面に支持体を配置した繊維生地の表面に粒子を投射すると、投射された粒子は生地表面を叩くだけでなく、生地内部に突入していく。この突入に際し、生地表面繊維と投射粒子の接点で強烈な摩擦力が働き、突入粒子の先端では特に強い摩擦力が働きこれにより表面繊維は摩砕されると考えられる。また、確かな事は未解明ではあるが、この摩擦力により摩砕されずに残された表面繊維が粒状形態に変換されると推定している。
【0020】
なお、粒子の投射により多層構造繊維生地表面を叩打して摩砕すると、粒状突起を良好に形成できるが、本発明はこれに限定されず、他の方法で叩打摩砕してもよい。例えば、先を丸めた細い棒で多層構造繊維表面を突いてもよい。
【実施例1】
【0021】
つぎに、本発明の実施例について説明する。
【0022】
図10に示すように、投射器から多層構造繊維生地表面に鋼球粒子を多数投射して粒状突起を形成し、デザインを施した。その条件を下記に示す。
【0023】
1.使用生地
(1)素材:綿100%
(2)生地構造:ツイル
【0024】
2.投射粒子、投射器、支持体、マスク
(1)投射粒子:直径1.8mmの鋼球粒子
(2)投射距離:1.3m
(3)投射装置:ショットブラスト機(メーカ名:新東工業株式会社、型式:CVC)
(4)支持体:厚み10mmの鋼板
(5)マスク:厚み3mmのゴム板(開口部有り)
【0025】
3.投射条件
実施例1−1:投射速度:56m/秒、投射時間:1.0分
実施例1−2:投射速度:56m/秒、投射時間:1.2分
実施例1−3:投射速度:64m/秒、投射時間:1.2分
【0026】
4.マスクの開口形状
実施例1−1:矩形
実施例1−2:矩形
実施例1−3:曲線形状
【0027】
このようにして得られた、実施例1−1〜3の生地表面の状態を、図3〜図9の写真に示す。なお、参考例として、図1および図2の写真に、未処理の状態の生地の状態を示す。図1は、未処理の状態の生地の平面状態を示す写真であり、図2は、拡大写真(倍率14倍)である。図3は、実施例1−1の生地の平面写真であり、図4は、その拡大写真(倍率14倍)である。図5、実施例1−2の生地の平面写真であり、図6、その拡大写真(倍率14倍)である。図7、実施例1−3の生地の平面写真であり、図8は、その斜め上方からの写真であり、図9は、その拡大写真(倍率14倍)である。これらの図に示すように、粒子が投射された生地の表面部に粒状突起が形成されて、マスクの開口形状にしたがったデザインがされている。また、粒子の投射条件の強弱に応じて、粒状突起のサイズや色合いが変化している。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の製造方法によれば、例えば、斬新で個性的でナチュラルなデザインを施した繊維製品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、未処理生地の平面写真である。
【図2】図2は、未処理生地の拡大写真である。
【図3】図3は、本発明の一実施例により得られた生地の平面写真である。
【図4】図4は、前記実施例により得られた生地の平面拡大写真である。
【図5】図5は、本発明のその他の実施例により得られた生地の平面写真である。
【図6】図6は、前記実施例により得られた生地の平面拡大写真である。
【図7】図7は、本発明のさらにその他の実施例により得られた生地の平面写真である。
【図8】図8は、前記実施例の斜め上方から写真である。
【図9】図9は、前記実施例により得られた生地の平面拡大写真である。
【図10】図10は、本発明の製造方法の一例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の製造方法のその他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 多層構造繊維生地
2 マスク
3 支持体
4 開口
5 粒子
6 粒状突起により形成されたデザイン
7 支持体
8 粒状突起により形成されたデザイン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造繊維生地表面にデザインが施された繊維製品の製造方法であって、前記多層構造繊維生地表面を叩打して摩砕することにより、前記表面上に粒状突起を形成することでデザインを施す製造方法。
【請求項2】
前記粒状突起は、これ以外の前記繊維生地表面の部分と、色および光沢の少なくとも一つが異なる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記粒状突起は、不揃いに複数形成される請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
予めデザインのパターンが設定され、このパターンに応じて前記多層構造繊維生地表面を叩打する請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記粒状突起が形成されている部分と形成されていない部分とによってデザインが施される請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記叩打による摩砕の程度を調整することにより、形成される前記粒状突起の形状、大きさ、色および光沢の少なくとも一つを調整する請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記多層構造繊維生地の裏面に支持体を配置し、この状態で、前記多層構造繊維生地表面に対し粒子を投射し、前記粒子の衝突時の圧力で前記生地表面を摩砕する請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
デザインパターンに応じたマスク材を準備し、このマスクを介して前記粒子を投射する請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記支持体が、デザインパターンに応じた形状を有する支持体であり、この支持体が配置された部分に対応する前記生地表面が摩砕されて粒状突起が形成される請求項7または8記載の製造方法。
【請求項10】
前記粒子の投射速度、前記粒子の投射数、前記粒子の投射時間、前記粒子の大きさ、前記粒子の硬度、前記粒子の形状および前記支持体の硬度からなる群から選択される少なくとも一つの条件を変化させることにより、摩砕の程度を調整する請求項7から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記多層構造繊維生地は、表面繊維と内部繊維とから構成され、前記表面繊維と前記内部繊維とが、その接点で交絡している織物である請求項1から10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記多層構造繊維生地は、ツイル、朱子およびパイルの少なくとも一つである請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
表面にデザインが施された繊維製品であって、請求項1から12のいずれかに記載の製造方法により得られる繊維製品。
【請求項1】
多層構造繊維生地表面にデザインが施された繊維製品の製造方法であって、前記多層構造繊維生地表面を叩打して摩砕することにより、前記表面上に粒状突起を形成することでデザインを施す製造方法。
【請求項2】
前記粒状突起は、これ以外の前記繊維生地表面の部分と、色および光沢の少なくとも一つが異なる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記粒状突起は、不揃いに複数形成される請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
予めデザインのパターンが設定され、このパターンに応じて前記多層構造繊維生地表面を叩打する請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記粒状突起が形成されている部分と形成されていない部分とによってデザインが施される請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記叩打による摩砕の程度を調整することにより、形成される前記粒状突起の形状、大きさ、色および光沢の少なくとも一つを調整する請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記多層構造繊維生地の裏面に支持体を配置し、この状態で、前記多層構造繊維生地表面に対し粒子を投射し、前記粒子の衝突時の圧力で前記生地表面を摩砕する請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
デザインパターンに応じたマスク材を準備し、このマスクを介して前記粒子を投射する請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記支持体が、デザインパターンに応じた形状を有する支持体であり、この支持体が配置された部分に対応する前記生地表面が摩砕されて粒状突起が形成される請求項7または8記載の製造方法。
【請求項10】
前記粒子の投射速度、前記粒子の投射数、前記粒子の投射時間、前記粒子の大きさ、前記粒子の硬度、前記粒子の形状および前記支持体の硬度からなる群から選択される少なくとも一つの条件を変化させることにより、摩砕の程度を調整する請求項7から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記多層構造繊維生地は、表面繊維と内部繊維とから構成され、前記表面繊維と前記内部繊維とが、その接点で交絡している織物である請求項1から10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記多層構造繊維生地は、ツイル、朱子およびパイルの少なくとも一つである請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
表面にデザインが施された繊維製品であって、請求項1から12のいずれかに記載の製造方法により得られる繊維製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−13853(P2008−13853A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214791(P2004−214791)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000214043)蝶理株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000214043)蝶理株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
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