説明

繊維製品処理剤の製造方法

【課題】 攪拌混合が容易であり、貯蔵安定性に優れ、且つ平滑性、潤滑性などのシリコーンに期待される効果を満足できる程度に得ることができる繊維製品処理剤の製造方法を提供する。
【解決手段】 シリコーン化合物(a1)、分子中に1,2−ベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物(a2)、界面活性剤(a3)、及び水を含有するシリコーン乳化物(A)と、特定の3級アミン又はその酸塩もしくはその4級化物(b1)を含有する組成物(B)とを混合する工程を含む繊維製品処理剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維製品処理剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟剤組成物などの繊維製品処理剤にシリコーン化合物を用いることは公知であり、例えば特許文献1、2を参考にすることができる。また、これら公報には繊維製品処理剤に防腐・抗菌剤を用いることが記載されている。
【特許文献1】特開2002−327375号公報
【特許文献2】特開2003−89979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1〜2に記載されているようにシリコーン乳化物に防腐剤を含有させることは公知である。これをそのまま繊維製品処理剤に使用することは便利であるが、防腐剤を含有するシリコーン乳化物は一般に粘度が高く、特に高分子量のジメチルポリシロキサンを用いた場合、粘度の低い繊維製品処理剤に対して高粘度のシリコーン乳化物を混合するため、高いせん断力を有する混合機を用いなければ均一に分散することができないという課題がある。また、混合が不十分である場合には繊維製品処理剤中でのシリコーン化合物の分離などの安定性に問題が生じ、更には、期待されるシリコーンの効果が十分に得られないという課題も生じる。
【0004】
従って本発明の課題は、攪拌混合が容易であり、柔軟性及び貯蔵安定性に優れ、且つ平滑性、潤滑性などのシリコーンに期待される効果を満足できる程度に得ることができる繊維製品処理剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シリコーン化合物(a1)を5〜70質量%、分子中に1,2−ベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物(a2)、界面活性剤(a3)、及び水を含有するシリコーン乳化物(A)と、窒素原子に結合する基のうち、1〜3個がエステル基若しくはアミド基で分断されてもよい炭素数14〜26の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基である3級アミン又は、該3級アミンの酸塩若しくは該3級アミンの窒素原子に炭素数1〜3のアルキル基が結合した4級化物(b1)を5〜40質量%含有する組成物(B)とを混合する工程を含む繊維製品処理剤の製造方法に関する。
【0006】
また、本発明は、上記本発明の方法で製造された繊維製品処理剤に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<シリコーン乳化物(A)>
本発明に係るシリコーン乳化物(A)は、(a1)成分としてシリコーン化合物を含有する。また、本発明においては高粘度のシリコーン化合物を用いた場合は、本発明の効果を有効に得ることができるため好ましく、具体的には25℃における粘度が10,000mm2/sを超え10,000,000mm2/s、好ましくは50,000mm2/s〜7,000,000mm2/s、より好ましくは100,000mm2/s〜6,000,000mm2/sのシリコーン化合物を用いることが好適である。また、本発明の(a1)成分は直鎖状の高分子化合物が好適であり、架橋したシリコーン化合物や分岐状のシリコーン化合物よりも柔軟効果改善効果の点で好ましい。
【0008】
シリコーン化合物の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンを挙げることができ、これらの中でも、攪拌混合性を容易にするという観点、及び柔軟性と吸水性の観点から、特にジメチルポリシロキサンが好ましい。ジメチルポリシロキサンは信越化学工業(株)KF96Hシリーズ、アミノ変性シリコーンは信越化学工業(株)KF−800番シリーズポリエーテル変性シリコーンは東レ・ダウコーニング(株)SH−8700、SH−8410、FZ−2222などから入手可能である。
【0009】
本発明に係るシリコーン乳化物は(a2)成分として分子中に1,2−ベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物を含有する。(a2)成分としては、下記一般式(1)の化合物が好ましい。
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、R11は水素原子、アリール基、アラールキル基、シクロアルキル基または炭素数1〜20のアルキル基であり、Xはハロゲン、ニトロ、シアノまたは炭素数1〜8のアルコキシであり、nは0〜4の数である。〕
【0012】
一般式(1)の化合物は、特表2001−510467号公報に記載の方法で入手することが可能である。具体的には、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(R11が水素原子であり、nが0である化合物)が挙げられ、攪拌混合性を容易にするという観点から好ましく、アビシア社製「プロキセルBDN」(含有量30〜40%)として市販されているものを用いることもできる。
【0013】
本発明のシリコーン乳化物は(a3)成分として界面活性剤を含有する。界面活性剤としては陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤を用いることが可能であり、本発明では柔軟効果の点から非イオン界面活性剤(a31)、陰イオン界面活性剤(a32)から選ばれる1種以上を含有することが好適である。
【0014】
(a31)成分としては下記一般式(2)の化合物が好適である。
21−O−(AO)n−H (2)
〔式中、R21は炭素数10〜16の炭化水素基であり、Aはエチレン基またはプロピレン基であり、nは平均付加モル数であり1〜100の数である。〕
【0015】
21は炭素数12〜16のアルキル基が好適であり、Aはエチレン基が好ましく、nは好ましくは1〜100、より好ましくは1〜70、特に好ましくは1〜40である。また、本発明ではシリコーン乳化物の配合安定性の点から親油性の(a31)成分、及び親水性の(a31)成分を併用することが好ましく、親油性の(a31)成分として、具体的には一般式(2)においてnが1〜10、好ましくは1〜5の化合物〔以下(a31o)成分という〕と、一般式(2)においてnが11〜70、好ましくは11〜40の化合物〔以下(a31w)成分という〕を(a31o)/(a31w)=5/95〜80/20、好ましくは20/80〜50/50の質量比で含有することが好ましい。
【0016】
(a32)成分としては 下記一般式(3)の化合物が好適である。
31−X (3)
〔式中R31は炭素数10〜16のアルキル基又はアルキル基の炭素数が10〜16のアルキルアリール基であり、Xは−SO3M、−(OB)m−OSO3Mである。Bはエチレン基またはプロピレン基であり、mは平均付加モル数であり、0〜4の数である。Mは無機又は有機の陽イオンである。〕
【0017】
具体的には炭素数10〜16のアルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数10〜16、好ましくは10〜14のアルキル硫酸エステル塩、オキシエチレン基(Bがエチレン基である化合物)の平均付加モル数1〜4好ましくは1.5〜3、アルキル基の炭素数が10〜16、好ましくは10〜14のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好適である。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアミン塩が好ましい。
【0018】
本発明では(a31)成分と(a32)成分を併用することが好ましく、(a31)成分/(a32)成分の質量比は、好ましくは99.8/0.2〜85/15、より好ましくは99.8/0.2〜90/10、特に好ましくは99.6/0.4〜99/1が柔軟効果を向上させる目的から好ましい。
【0019】
本発明のシリコーン乳化物(A)は、上述の(a1)成分、(a2)成分、及び(a3)成分を水に乳化させた乳化物の形態であり、乳化粒子(液滴)の平均粒子径は、50〜900nm、更に100〜800nmが、混合の容易性、貯蔵安定性、及び柔軟効果の点から好適である。
【0020】
このような粒子径を有する乳化組成物を調製するためには、ホモミキサー、高圧ホモジナイザーなどのような高速剪断力を付与し得る撹拌装置を用いて乳化する方法をあげることができる。また低分子の環状ポリシロキサンを出発物質とし、これを乳化分散状態で強酸あるいは強アルカリ物質を触媒として重合させる、いわゆる乳化重合方法による方法も採用することができる。好適には(a3)成分の一部と、水の一部を含有する水溶液にホモミキサーや高圧ホモジナイザーなどの装置で高速剪断力をかけながら(a1)成分、残りの(a3)成分を添加し、その後、残りの水と(a2)成分を混合する方法が好ましい。なお、粒子径の測定はサブミクロン粒径測定装置(光子相関法)を用いて測定することができる。
【0021】
(a1)成分の含有量はシリコーン乳化物(A)中に5〜70質量%、好ましくは20〜65質量%、特に好ましくは40〜60質量%であり、(a2)成分の含有量はシリコーン乳化物(A)中に好ましくは0.0004〜0.4質量%、より好ましくは0.0012〜0.2質量%、特に好ましくは0.0020〜0.12質量%である。また、(a3)成分の含有量はシリコーン乳化物(A)中に好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。
【0022】
さらに(a2)成分/(a1)成分の質量比は、好ましくは0.0003/99.9997〜0.75/99.25、より好ましくは0.0007/99.9993〜0.40/99.60であり、そして(a3)成分/(a1)成分の質量比は、好ましくは0.900/99.100〜32.000/68.000、より好ましくは1.750/98.250〜22.000/78.000である。
【0023】
水の含有量は、シリコーン乳化物(A)中、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。
【0024】
本発明のシリコーン乳化物(A)の25℃におけるpHは好ましくは3〜9、より好ましくは5〜8であり、pH調整剤としてはクエン酸、酢酸、りんご酸、コハク酸、安息香酸などの有機酸や塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸を用いることができる。
【0025】
本発明のシリコーン乳化物(A)は、粘度が著しく低下する。このため、後述する組成物(B)と混合した場合に、攪拌混合が非常に容易となる。本発明に係るシリコーン乳化物(A)の25℃における粘度は、好ましくは20mm2/s〜1000mm2/s、より好ましくは30mm2/s〜800mm2/s、特に好ましくは30mm2/s〜600mm2/sである。
【0026】
<組成物(B)>
本発明に係る組成物(B)は、窒素原子に結合する基のうち、1〜3個がエステル基若しくはアミド基で分断されてもよい炭素数14〜26の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基である3級アミン又は、該3級アミンの酸塩(酸としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸が好ましく、特に塩酸が好ましい)若しくは該3級アミンの窒素原子に炭素数1〜3のアルキル基が結合した4級化物(4級化剤としては、メチルクロライド等の低級アルキルハライド、ジメチル硫酸やジエチル硫酸等のジ低級アルキル硫酸等が挙げられ、特にメチルクロライドが好ましい)(b1)を含有する。(b1)成分の3級アミンにおいて、窒素原子に結合する基のうち、3個が炭素数14〜26の炭化水素基の場合、残りの基は存在しない。(b1)成分としては下記一般式(4)の化合物が好適である。
【0027】
【化3】

【0028】
〔式中、R41は、エステル基、又はアミド基で分断されていてもよい炭素数14〜26のアルキル基、又はアルケニル基であり、R42は、エステル基、アミド基もしくはエーテル基で分断されていても良い炭素数14〜26のアルキル基、又はアルケニル基であるか、もしくは炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。R43は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基であり、R44は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。X-は陰イオン基を示す。〕
より具体的には一般式(5)の化合物が好ましい。
【0029】
【化4】

【0030】
〔式中、R51は、炭素数14〜26、好ましくは16〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、R53は、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基であるか、R56−[E−R57d−で示される基である。R54は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基であり、R55は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。R56は、炭素数14〜26のアルキル基又はアルケニル基である。R52、R57は炭素数1〜6のアルキレン基である。D、Eは−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基であり、c及びdは0又は1の数である。X-は陰イオン基を示す。〕
【0031】
一般式(5)の化合物において、R51は好ましくは16〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、R53は、R56−[E−R57d−で示される基が好ましく、R56は16〜20のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。R54、R55はメチル基又はヒドロキシエチル基又は水素原子が好ましく、R52、R57はエチレン基またはプロピレン基が好ましい。D、Eは−COO−、−CONH−が好適であり、c、dは少なくとも一方が1の数、好ましくは両方が1の数であることが好ましい。X-はハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜18の脂肪酸イオンが好適である。
【0032】
本発明に係る組成物(B)には、(b1)成分以外に、柔軟効果をさらに向上させる目的、及び貯蔵安定性の点から(b2)成分として炭素数12〜24の脂肪酸、及び(b3)成分として(b2)成分以外の界面活性剤を配合することが好ましい。なお、本発明においては、(b3)成分は(a31)成分と区別して取り扱うものとする。
【0033】
(b2)成分としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、ベヘニン酸が好ましく、特にパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が好適である。
【0034】
(b3)成分としては非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び(b2)成分以外の陰イオン界面活性剤を用いることが可能であり、本発明では処理剤の貯蔵安定性を改善できる観点から非イオン界面活性剤を含有することが好適である。非イオン界面活性剤としては炭素数8〜20のアルキル基またはアルケニル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、特に下記一般式(6)の非イオン界面活性剤が良好である。
【0035】
61−F−[(R62O)e−R63]g (6)
〔式中、R61は、炭素数8〜18、好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R62は炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。R63は、炭素数1〜3のアルキル基、又は水素原子である。eは2〜100、好ましくは5〜80、より好ましくは5〜70、特に好ましくは10〜60の数を示す。Fは−O−、−COO−,−CON−又は−N−であり、Fが−O−又は−COO−の場合はgは1であり、Fが−CON−又は−N−の場合はgは1又は2である〕
【0036】
一般式(6)の化合物の具体例として以下の化合物を挙げることができる。
61−O−(C24O)h−H
〔式中、R61は前記の意味を示す。hは2〜100、好ましくは10〜60の数である。〕
61−O−[(C24O)i/(C36O)j]−H
〔式中、R61は前記の意味を示す。i及びjはそれぞれ独立に2〜40、好ましくは5〜40の数であり、(C24O)と(C36O)はランダムあるいはブロック付加体であってもよい。〕
【0037】
【化5】

【0038】
〔式中、R61は前記の意味を示す。k及びlはそれぞれ独立に0〜40の数であり、k+lは5〜60、好ましくは5〜40の数である。R64、R65はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。〕
【0039】
また、本発明に係る組成物(B)は、(b4)成分として無機塩を含有することができる。無機塩としては塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが貯蔵安定性の点から好ましい。但し、脂肪酸塩類などの界面活性剤にはナトリウム塩やカリウム塩が含まれているが、これら由来の無機塩も本発明の組成物中に含有し得る。
【0040】
本発明に係る組成物(B)には、(b5)成分として溶剤を用いても差し支えない。具体的には、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる溶剤であり、特にエタノールが匂いの点から好ましい。
【0041】
本発明に係る組成物(B)は、(b1)成分を5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは10〜25質量%含有する。また、任意ではあるが(b2)成分を好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%、特に好ましくは0.5〜2質量%、(b3)成分を好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%含有することが、攪拌混合の容易性、貯蔵安定性、及び柔軟効果の点から好適である。また、(b4)成分は、組成物(B)中、0.001〜5質量%、更に0.005〜3質量%、特に0.01〜1質量%、(b5)成分は、組成物(B)中、0.1〜10質量%、更に0.1〜5質量%、特に0.1〜3質量%が、それぞれ好ましい含有量である。
【0042】
本発明に係る組成物(B)には、貯蔵安定性を改善する目的で、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物を配合しても差し支えないが、外観に留意する必要がある。配合できる化合物としてはトリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド、ペンタエリスリトールのモノ、ジ又はトリエステル、ソルビタンエステルを挙げることができる。なお、本発明においては、これらのエステル化合物と、(a31)成分、(b3)成分とは区別して取り扱うものとする。
【0043】
本発明に係る組成物(B)は上記(b1)成分及び任意ではあるが好適な成分である(b2)成分〜(b5)成分を水に溶解、または分散させた水性組成物の形態であり、水は組成物(B)中に30〜95質量%、更に50〜85質量%配合されることが好ましい。さらに、本発明の組成物は、貯蔵安定性の点から、組成物の30℃におけるpHを1〜8.5、更に1〜8、特に2〜8に調整することが好ましい。pH調整剤としては塩酸、硫酸、燐酸などの無機酸を酸剤として用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等をアルカリ剤として用いることができる。
【0044】
<繊維製品処理剤の製造方法>
本発明の繊維製品処理剤は、上記シリコーン乳化物(A)、及び組成物(B)を混合する工程を含む方法で製造される。シリコーン乳化物(A)及び組成物(B)の混合比率は、両者の組成や最終的な処理剤の組成等にもよるが、質量比でシリコーン乳化物(A)/組成物(B)=0.1/99.9〜20/80、更に0.1/99.9〜15/85、特に0.5/99.5〜10/90が好ましい。混合方法としては通常のパドル式攪拌機を用いることができ、低攪拌力で容易に均一混合することが可能になる。
【0045】
混合時のシリコーン乳化物(A)の温度は20〜40℃、更に25〜35℃が好ましく、組成物(B)の温度は20〜40℃、更に25〜35℃が好ましい。
【0046】
本発明のシリコーン乳化物(A)と組成物(B)とを含む繊維製品処理剤の25℃におけるpHは好ましくは1〜8.5、より好ましくは2〜8であり、pH調整剤としてはクエン酸、酢酸、りんご酸、コハク酸、安息香酸などの有機酸や塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸を用いることができる。
【実施例】
【0047】
<シリコーン乳化物(A)の調製>
調製例1:(A−1)の調製
(a32)平均付加モル数2モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウムを1.0質量%含有する水溶液50gに高せん断力をかけながら(a1)シリコーン化合物(ジメチルポリシロキサン)(25℃における粘度500,000mm2/s)600g添加し、30分高せん断力で攪拌し続けた。その後、(a31o)平均付加モル数4のポリオキシエチレンラウリルエーテル15g、(a31w)平均付加モル数25モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル50gを加え、さらに高せん断力下、攪拌を30分間続けた。その後イオン交換水を285g、プロキセルBDNを0.75g加えて攪拌し、平均粒子径(乳化粒子の平均粒子径、以下同様)が500nmのシリコーン乳化物(A−1)を得た。
【0048】
調製例2:(A−2)の調製
(a1)シリコーン化合物(ジメチルポリシロキサン)(25℃における粘度200,000mm2/s)を600g用いたことを除いて調製例1と同様の操作を行い、平均粒子径が500nmのシリコーン乳化物(A−2)を得た。
【0049】
調製例3:(A−3)の調製
(a1)シリコーン化合物(ジメチルポリシロキサン)(25℃における粘度6,000,000mm2/s)を600g用いたことを除いて調製例1と同様の操作を行い、平均粒子径が500nmのシリコーン乳化物(A−3)を得た。
【0050】
調製例4:(A−4)の調製
(a1)シリコーン化合物(ジメチルポリシロキサン)(25℃における粘度500,000mm2/s)を400g、プロキセルBDNを0.3g用いたことを除いて調製例1と同様の操作を行い、平均粒子径が500nmのシリコーン乳化物(A−4)を得た。
【0051】
調製例5:(A−5)の調製
(a1)プロキセルBDNを1.5g用いたことを除いて調製例1と同様の操作を行い、平均粒子径が500nmのシリコーン乳化物(A−5)を得た。
【0052】
調製例6:(A−6)の調製
(a1)シリコーン化合物〔架橋型メチルポリシロキサン[(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー]〕を550g用いたことを除いて調製例1と同様の操作を行い、平均粒子径が500nmのシリコーン乳化物(A−6)を得た。
【0053】
調製例7:(A−7)の調製
(a2)プロキセルBDNの代わりに安息香酸ナトリウムを0.75g用いたことを除いて調製例1と同様の操作を行い、平均粒子径が500nmのシリコーン乳化物(A−7)を得た。
【0054】
調製例8:(A−8)の調製
(a2)プロキセルBDNの代わりにソルビン酸ナトリウムを0.75g用いたことを除いて調製例1と同様の操作を行い、平均粒子径が500nmのシリコーン乳化物(A−8)を得た。
【0055】
上記調製例1〜8における配合組成等を表1に示した。
【0056】
<組成物(B)の調製>
合成例1:(b1−1)の合成
N−(3−アミノプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミンと硬化牛脂脂肪酸を1/1.9のモル比で公知の方法に従って脱水縮合させた。反応物中の脂肪酸含量が5%になった時点で反応を終了させ、N−(3−硬化牛脂由来アルカノイルアミノプロピル)−N−(2−硬化牛脂由来アルカノイルオキシエチル)−N−メチルアミンを主成分とする(b1−1)成分を得た。
【0057】
合成例2:(b1−2)の合成
トリエタノールアミンと牛脂脂肪酸を1/1.8のモル比で公知の方法に従って脱水縮合させた。反応物中の脂肪酸含有量が3%になった時点で反応を終了させた。次に脱水縮合物に対して10%相当量のエタノールを加えた。次にアミンに対して0.98当量のジメチル硫酸を用いて公知の方法に従って4級化させた。その後、固形分含有量が90%になるように、エタノールを加え、N,N−ジ牛脂由来アルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウム メチルサルフェートを主成分とした(b1−2)成分を得た。
【0058】
調製例9:(B−1)の調製
出来あがり質量が100gとなるように調製した。200mLビーカーに、イオン交換水を75g入れ、次いで(b3)エチレンオキサイド平均モル数23のポリオキシエチレンラウリルエーテルを3.0質量%(最終組成物(B−1)中の比率)、及び(b4)塩化カルシウム0.03質量%(最終組成物(B−1)中の比率)を入れた。その後、ウォーターバスで65℃に昇温し、一つの羽根の長さが2cmの攪拌羽根が3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌した(300r/min)。次に、合成例1で得た65℃の(b1−1)を21質量%(最終組成物(B−1)中の比率)添加し、そのまま5分攪拌後、35%塩酸水溶液と48%水酸化ナトリウム水溶液で目標のpHに調整した。その後、10分間攪拌し、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、攪拌しながら30℃に冷却した。出来あがり質量にするのに必要な量のイオン交換水を添加し、組成物(B−1)を得た。
【0059】
調製例10:(B−2)の調製
(b1−1)に代えて、合成例2で得た(b1−2)を20質量%用いたことを除いて調製例9と同様の操作を行い、組成物(B−2)を得た。
【0060】
上記調製例9及び10における配合組成等を表2に示した。
【0061】
<繊維製品処理剤の調製方法>
表3に示す組み合わせで、組成物(B)に特定の質量比のシリコーン乳化物(A)を添加し、10分間攪拌し、液体繊維製品処理剤を得た。得られた繊維製品処理剤において、シリコーン化合物の混合性、貯蔵安定性、柔軟効果を下記の方法で評価した。得られた繊維製品処理剤と評価結果を表3に示す。
【0062】
<評価>
(1)混合性の評価方法
以上に示した調製方法により表3に示す繊維製品処理剤を調製し、25℃で1時間放置した後、200メッシュでろ過を行った。その後、200メッシュ上に付着した液体柔軟剤組成物を25℃の水道水により洗い流し、乾燥機にて乾燥した(50℃2時間)。乾燥後、200メッシュ上に残存したシリコーン化合物を、下記の基準で判定した。
(200メッシュ上に残存したシリコーン化合物の評価基準)
シリコーン化合物が全く残っていない……0点
シリコーン化合物がわずかに残っている……1点
シリコーン化合物が残っている……2点
シリコーン化合物が多く残っている……3点
【0063】
(2)貯蔵安定性の評価方法
以上に示した調製方法により調製された表3の繊維製品処理剤を、40℃恒温室に20日貯蔵し、下記の基準で判定した。
(貯蔵安定性の評価基準)
分離・析出物が全く見られない……0点
分離・析出物がわずかに見られる……1点
分離・析出物が見られる……2点
分離・析出物が多く見られる……3点
【0064】
(3)柔軟効果の評価方法
以上に示した調製方法により調製された表3の繊維製品処理剤を用い、下記方法で処理した衣料の柔軟効果を、10人のパネラー(30代男性10人)により下記の基準で判定し、それぞれ平均点を求めた。
【0065】
(柔軟処理方法)
バスタオル(木綿100%)5枚を市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)アタック)を用いて洗濯機で洗浄した(東芝製2槽式洗濯機VH−360S1、洗剤濃度0.0667質量%、水道水30L使用、水温20℃、10分間)。その後、洗浄液を排出し、3分間脱水後、30Lの水道水を注水して5分間すすぎを行い、排水後3分間脱水を行った。その後再度30Lの水道水を注水した後、表3の繊維製品処理剤7mlを添加し5分間攪拌した。その後、脱水し自然乾燥した。
【0066】
(柔軟効果の評価基準)
比較例3の繊維製品処理剤の柔軟効果を基準(1点)とした。
基準と比較して非常に柔らかい……3点
基準と比較して柔らかい……2点
基準と同等の柔らかさ……1点
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン化合物(a1)を5〜70質量%、分子中に1,2−ベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物(a2)、界面活性剤(a3)、及び水を含有するシリコーン乳化物(A)と、窒素原子に結合する基のうち、1〜3個がエステル基若しくはアミド基で分断されてもよい炭素数14〜26の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基である3級アミン又は、該3級アミンの酸塩若しくは該3級アミンの窒素原子に炭素数1〜3のアルキル基が結合した4級化物(b1)を5〜40質量%含有する組成物(B)とを混合する工程を含む繊維製品処理剤の製造方法。
【請求項2】
(a1)成分として、25℃における粘度が10,000〜10,000,000mm2/sのジメチルポリシロキサンを用いる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
(a2)成分が下記一般式(1)の化合物である請求項1又は2記載の製造方法。
【化1】


〔式中、R11は水素原子、アリール基、アラールキル基、シクロアルキル基または炭素数1〜20のアルキル基であり、Xはハロゲン、ニトロ、シアノまたは炭素数1〜8のアルコキシであり、nは0〜4の数である。〕
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の方法で製造された繊維製品処理剤。

【公開番号】特開2007−51380(P2007−51380A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235181(P2005−235181)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】