説明

織機の織布巻取、巻戻し方法と装置

【課題】織布の切卸し作業あるいは機替え後の織布巻き付け作業を容易化する。
【解決手段】製織運転停止時、作業者は織布巻取モータ15を正逆転し、巻取ローラ8を単独で容易にかつ自由に回転させることができる。織布6の切卸しの場合、製織運転停止後、織布巻取モータ逆転スイッチ21をON操作する。織布巻取モータ逆転スイッチ21の操作のみで、巻取ローラ8を逆転し、巻戻しを行うことができ、作業者は特別な負担なく、織布6を容易に緩めることができる。切卸し完了後の新しい巻取ローラ8に切断後の織布端部を巻き付ける必要があるが、作業者は、切卸し時に緩めた織布6の織布端部を巻取ローラ8に巻き付け、織布巻取モータ正転スイッチ20を操作して織布巻取モータ15を駆動する。この操作により、織布6の緩み分が巻取ローラ8に巻き付けられ、織布6に一定の張力が付与されるため、製織運転開始の準備を簡単に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、織機の織布巻取、巻戻し方法とその方法を実施する織布巻取、巻戻し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クロスロール着脱作業を簡単にした織機用クロスロール着脱装置が開示されている。クロスロール着脱装置は、クロスロール軸線方向に沿って進退可能なクロスロール支持部材と、牽引部材及びワイヤーを介してクロスロール支持部材を駆動する足踏みペダルを有する。作業者はクロスロール着脱時、足踏みペダルを踏むことで、その力がワイヤーを介して支持部材に伝達され、支持部材間の距離が増加し、クロスロールの取り付け、取り外しが容易になる。特許文献1のクロスロール着脱装置は、足踏み式なので手による着脱に比べ力が大きく、また作業者の両手をフリーにしてクロスロールの取り扱いを助ける。また、ワイヤーによってクロスロール支持部材の両側を連動させるようにしたので一箇所からの駆動力が両側のクロスロール支持部材に伝達され、装置もコンパクトになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−31876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、クロスロールの着脱を容易にした構成を開示しているが、クロスロールの取り外しを行うには、サーフェスローラからクロスロールに繋がる織布を予め切断しておく必要がある。織布は大きな張力を付与された状態に有り、そのまま切断すると織布の切断部が反動で跳ね返り、織布の損傷を生じる恐れが有る。また、サーフェスローラとプレスローラとの間の織布把持力が弱いと、織布の跳ね返りにより織前位置を変動する恐れがある。このため、織布を切断するには、クロスロールを回して織布を緩めておく必要がある。
【0005】
しかし、クロスロールは駆動機構に連結されているため、そのままではクロスロールを回すことができない。例えば、特許文献1の機構を利用して足踏みペダルを操作し、クロスロールと駆動機構の連結を解除したとしても、織布を巻いたクロスロールは大きな重量を有し、作業者がクロスロールを手回しすることは容易でない。また、クロスロールを手回しするために多くの作業時間が必要となり織機の生産性を低下する要因になる。
【0006】
また、新しいクロスロールを装着した場合、切断された織布の織布端部をクロスロールに巻き付ける作業が必要である。新しいクロスロールに巻き付けた織布には、織機の再運転時に織布品質が低下しないように、一定の巻き始め張力を付与しておく必要がある。織布に張力を付与するには、クロスロールを回さなければならない。
【0007】
この場合にも、例えば、特許文献1の足踏みペダルを操作してクロスロールと駆動機構との連結を遮断した状態で、作業者はクロスロールを織布の巻き付け方向に手回ししなければならない。しかし、クロスロールの手回し作業は大きな力を必要とするため、一定の張力を付与することが困難であるばかりか、作業毎に織布張力のばらつきが生じ、織布の巻き始めにおける巻皺の発生等により織布品質を低下する要因ともなっている。
【0008】
本願発明は、織布の切卸し作業あるいは機替え後の織布巻き付け作業を容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1は、製織された織布を、サーフェスローラにより引き取るとともに巻取ローラにより巻き取る織機の織布巻取、巻戻し方法において、前記巻取ローラを専用の織布巻取モータにより前記織機及び前記サーフェスローラから独立して駆動可能とし、織機の停止時に前記巻取ローラを前記織布巻取モータにより単独正転又は単独逆転し、前記巻取ローラの織布巻き付け又は織布巻戻しを行うことを特徴とする。
【0010】
請求項1によれば、織機の停止時に巻取ローラを織布巻取モータにより単独逆転あるいは単独正転することにより、織布の切卸し作業や切卸し後の新しい巻取ローラへの織布巻き付け作業を容易に行うことができる。特に、織布巻取モータによる巻取ローラの単独逆転は、切卸しにおける作業時間を短縮し、織機の停止に伴う生産性の低下を減少させることができる。また、織布の緩め作業が簡単になるため、織布切断時の織布跳ね返りを防止できるとともに、切卸し後に新しく装着された巻取ローラへの織布端部の巻き付け作業を容易にすることができる。さらに、織布巻取モータによる巻取ローラの単独正転は、設定された織布の巻き始め張力を常に一定に確保することができ、織機の製織運転開始時における織布品質を向上させることができる。
【0011】
請求項2は、設定された製織長の織布を製織後、設定された織布緩め長を製織して織機の運転を停止し、前記織布巻取モータを単独逆転して前記巻取ローラから前記織布緩め長を巻戻すことを特徴とする。請求項2によれば、設定された製織長及び織布緩め長を製織し、織機の製織運転停止後、織布巻取モータの単独逆転動作により、織布緩め長を自動的に巻戻し、待機させることができる。このため、織機に到着した作業者は直ちに織布の切卸し作業に入ることができ、切卸し作業の容易化と作業時間の短縮化を図ることができる。
【0012】
請求項3は、設定された製織長の織布の製織により警告ランプを点滅し、警告ランプの点滅を確認後織機の製織運転を停止し、前記織布巻取モータを単独逆転して前記巻取ローラから織布を巻戻し、前記設定された製織長を表示するカットマークの確認後、前記織布巻取モータを停止することを特徴とする。請求項3によれば、作業者による織布切卸しの準備作業は、織布巻取モータの単独逆転のみで行うことができ、切卸し作業の容易化と作業時間の短縮化を図ることができる。
【0013】
請求項4は、前記巻取ローラを織機に装着し、前記巻取ローラに織布端部を巻き付けた後、織布巻取モータを単独正転し、前記織布巻取モータの巻取トルクが予め設定された巻取トルクに達した後、前記織布巻取モータの単独正転を停止することを特徴とする。請求項4によれば、織布切卸し後の新しく装着された巻取ローラへの織布端部の巻き付け作業において、織布張力が一定となるように調整することができるため、織機の製織運転開始時における織布張力が安定し、織布品質を向上させることができる。
【0014】
請求項5は、織機の停止前に前記巻取ローラを単独停止し、前記サーフェスローラから送り出される織布に緩みを形成することを特徴とする。請求項5によれば、織機の製織運転停止時には、織布の緩め作業が終了しているため、直ちに織布の切卸し作業が可能となり、織布の切卸し作業の時間短縮と容易化に貢献することができる。
【0015】
請求項6は、設定された製織長の織布を製織後、前記織布巻取モータを単独停止するとともに織機の製織運転を継続し、設定された織布緩め長に相当する織布が前記サーフェスローラから送り出された時、織機の製織運転を停止することを特徴とする。請求項6によれば、設定された製織長を製織した織機の製織運転停止時には、常に一定長さの織布緩め長を得ることができ、織布の切卸し作業を直ちに行うことが可能であるとともに新しく装着された巻取ローラへ巻き付けるために必要な一定長さの織布端部を正確に得ることができる。
【0016】
請求項7は、製織された織布を、サーフェスローラにより引き取るとともに巻取ローラにより巻き取る織機の織布巻取、巻戻し装置において、前記巻取ローラを前記織機及び前記サーフェスローラから独立して駆動する専用の織布巻取モータを設け、前記織機の停止時に前記織布巻取モータを単独正転及び単独逆転する制御部を備える制御装置を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項7によれば、織機の停止時に巻取ローラを織布巻取モータにより単独逆転あるいは単独正転することができるため、織布の切卸し作業や機替え後の巻取ローラへの織布巻き付け作業を容易に行うことができる。
【0018】
請求項8は、前記サーフェスローラは、専用の織布引取モータにより駆動されることを特徴とする。請求項8によれば、サーフェスローラと巻取ローラとがそれぞれ専用の織布引取モータと織布巻取モータとにより駆動されるため、織布の引き取りに必要なサーフェスローラの回転制御と織布の巻き取りに必要な巻取ローラの回転制御とを個別に行うことができ、精度の高い織布巻き取り制御が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明は、巻取ローラを専用の織布巻取モータにより織機及びサーフェスローラから独立して織機の停止中又は停止前に単独で動作させることにより、織布の切卸し作業あるいは織布の巻き付け作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態を示す織布巻取部の略側面図である。
【図2】第2の実施形態の織布切卸し動作を示す織布巻取部の略側面図である。
【図3】第2の実施形態のフローチャートである。
【図4】第3の実施形態の織布切卸し動作を示す織布巻取部の略側面図である。
【図5】第3の実施形態のフローチャートである。
【図6】第4の実施形態の織布切卸し動作を示す織布巻取部の略側面図である。
【図7】第4の実施形態のフローチャートである。
【図8】第5の実施形態の織布巻き付け動作を示す織布巻取部の略側面図である。
【図9】第5の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図1に基づいて説明する。織機のフレーム1に回転可能に配設されたサーフェスローラ2は、織機を製織運転する駆動モータ(図示せず)から独立した専用のサーボモータからなる織布引取モータ3に連結されている。織布引取モータ3は、信号線16により制御装置4と電気的に接続され、単独で正転、逆転が可能であるが、織機の製織運転中は織機の駆動モータ(図示せず)に同期して回転される。サーフェスローラ2には、加圧ローラ5が圧接されている。製織された織布6は、ガイドローラ7により案内された後、サーフェスローラ2の下方を周回し、サーフェスローラ2と加圧ローラ5との間に把持されている。従って、織布6は、織機の製織運転中、サーフェスローラ2の矢印方向の回転により引き取られ、加圧ローラ5を介して送り出される。
【0022】
サーフェスローラ2の下方には、巻取ローラ8がフレーム1に回転可能に配設されている。巻取ローラ8は、ウォームホイールボックス9に収容されたウォームホイール10、ウォームボックス11に収容されたウォーム12及びギヤボックス13に収容されたギヤ群14を介して織布巻取モータ15に連結されている。従って、巻取ローラ8は織布6の巻き取り時に織布巻取モータ15によって駆動される時、ギヤ群14、ウォーム12及びウォームホイール10により減速された状態で矢印方向に回転される。
【0023】
織布巻取モータ15は、サーボモータにより構成され、信号線17により制御装置4と電気的に接続され、織機の駆動モータ(図示せず)及び織布引取モータ3から独立して単独で正転、逆転が可能である。なお、織機の製織運転中、織布巻取モータ15は織機の駆動モータ(図示せず)及び織布引取モータ3と同期して回転される。また、織機の製織運転中、織布6は巻取ローラ8に巻き取られ、クロスロール18を形成する。織布巻取モータ15は、制御装置4からの指令により、クロスロール18の径の増加に伴って回転数を減少し、巻取ローラ8が織布6に一定の張力を付与して巻き取ることができるように制御されている。
【0024】
制御装置4はデータの記憶部4Aとデータの演算機能及び信号の受発信機能を有する制御部4Bを備え、また、ファンクションパネル19を備えている。ファンクションパネル19は、各種データの表示画面(図示せず)、データの入力部(図示せず)、織布巻取モータ正転スイッチ20、織布巻取モータ逆転スイッチ21、織機起動スイッチ22、織機停止スイッチ23及びその他公知の各種スイッチ類(図示せず)等を備えている。織布巻取モータ正転スイッチ20及び織布巻取モータ逆転スイッチ21は、作業者がON操作を継続している間、織布巻取モータ15が単独で回転し、ON操作を中断すると織布巻取モータ15の単独動作が停止するように構成されている。上記した制御装置4は織機全体の制御装置として記載しているが、織布引取モータ3及び織布巻取モータ15に対してそれぞれ専用の制御装置を設け、各専用の制御装置を制御装置4と接続し、制御装置4からの指令により織布引取モータ3及び織布巻取モータ15を個別に制御するように構成することも可能である。
【0025】
なお、織布巻取モータ正転スイッチ20及び織布巻取モータ逆転スイッチ21は、作業者が1度操作すると織布巻取モータ15の回転が維持され、再度操作すると織布巻取モータ15が停止するように構成することも可能である。また、織布巻取モータ正転スイッチ20及び織布巻取モータ逆転スイッチ21は、ファンクションパネル19以外の、例えば、巻取ローラ8の配設位置近辺のフレーム1に設ける構成としても良い。
【0026】
第1の実施形態では、織機の製織運転が停止した時、作業者が織布巻取モータ正転スイッチ20あるいは織布巻取モータ逆転スイッチ21を操作することにより、織布巻取モータ15のみを独立して正転あるいは逆転し、巻取ローラ8を単独で容易にかつ自由に回転させることができる。
【0027】
例えば、設定された製織長まで製織された織布6の切卸しを行う場合、織機の製織運転停止後、作業者が織布巻取モータ逆転スイッチ21をON操作する。織布巻取モータ逆転スイッチ21のON操作のみで、巻取ローラ8が逆転し、クロスロール18に巻かれた織布6の巻戻しを行うことができるため、作業者は特別な負担を受けることなく、加圧ローラ5からクロスロール18に至る織布6を容易に緩めることができる。
【0028】
また、織布6の切卸しが完了すると、新しく織機に装着した巻取ローラ8に加圧ローラ5から垂下する切断後の織布6の織布端部を巻き付ける必要がある。作業者は、切卸し時に緩めた織布6の織布端部を巻取ローラ8に接着し、織布巻取モータ正転スイッチ20をON操作し、織布巻取モータ15を一定時間駆動する。この操作により、織布6の緩み分が巻取ローラ8に巻き付けられるとともに織布6に一定の張力が付与されるため、作業者は、織機の製織運転を開始するための準備を簡単に行うことができる。
なお、サーフェスローラ2は、専用の織布引取モータ3を廃止し、織機の駆動モータ(図示せず)により駆動するように構成しても良い。
【0029】
(第2の実施形態)
図2及び図3は織布6の切卸しに関する第2の実施形態を示したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第2の実施形態では、制御装置4の記憶部4Aに、織布6の切卸しまでの製織長を緯入れ回数に換算したピック数で入力し、記憶させるとともに図示しないヤーンビームに整形された経糸群に対して、設定された製織長に相当する位置にカットマークが印されている。また、設定された製織長から一定の長さとなる織布6の緩め長をピック数で入力し、記憶部4Aに記憶させてある。なお、ピック数は制御装置4における緯入れ回数のカウント機能により検出することができる。また、以下に説明する一連の作業はプログラム化されて製織運転に必要なプログラムに組み込まれ、制御装置4の記憶部4Aに記憶されている。
【0030】
図3に示すように、織機の製織運転が開始されると(ステップP1)、ピック数のカウントが開始され(ステップP2)、設定されたピック数に達した時点で、カットマークは図2に仮想線24Aで示した位置に到達する。続いて織布6の緩め長に相当する織布緩めピック数のカウントが開始され(ステップP3)、織布緩めピック数が設定値に達すると(ステップP4)、制御装置4の制御部4Bは織機の停止指令を発信し、製織運転を停止する(ステップP5)。織機の製織運転停止時点で、カットマークは図2に仮想線24Bで示すように、クロスロール18に一定量巻き付けられた位置に到達する。
【0031】
制御部4Bはさらに、織布緩めピック数に基づき、織布緩め長に相当する織布巻取モータ15の回転量を算出し(ステップP5)、織布巻取モータ15に逆転指令を発信する。織布巻取モータ15は逆転を開始し(ステップP6)、巻取ローラ8を図2の矢印方向に回転して、クロスロール18に巻かれた織布6の巻戻しを行う。織布巻取モータ15の逆転回転量が設定値に達すると(ステップP7)、制御装置4の制御部4Bは織布巻取モータ15に停止指令を発信し、織布巻取モータ15を停止する(ステップP8)。また、制御装置4は適宜表示手段を用いて作業者の呼び出しを行う。
【0032】
この時点で、図2に実線で示したように、カットマーク24Cは織布6の巻戻しによりカットし易い位置に達しており、織布6には切卸しや巻き付けに必要となる十分な緩みが生じている。従って、織機は織布6の切卸し準備を自動的に完了して待機するため、作業者は該当する織機に到着すると直ちに織布6の切卸し作業に入り(ステップP9)、織布6をカットマーク24Cの位置で切断するとともにクロスロール18を織機から取り外すことができる。
【0033】
なお、第2の実施形態では、織布6の切卸し準備を制御装置4からの指令により自動的に行うようにしているが、ステップP6における織布巻取モータ15の逆転駆動は、作業者が織布巻取モータ逆転スイッチ21を操作して行う方法に置き換えても実施することができる。
【0034】
(第3の実施形態)
図4及び図5は織布6の切卸しに関する第3の実施形態を示したもので、第1及び第2の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第3の実施形態では、製織運転に必要なプログラムが制御装置4の記憶部4Aに記憶されている。製織運転用のプログラムには、製織長に相当するピック数をカウントするプログラム、ピック数が設定値に達した時、織布巻取モータ15にのみ停止信号を発信するプログラム及び織布緩め長に相当する織布緩めピック数をカウントするプログラムが組み込まれている。また、以下に説明する一連の作業がプログラムされ、制御装置4の記憶部4Aに記憶されている。
【0035】
図5に示すように、織機の製織運転が開始されると(ステップP10)、ピック数のカウントが開始され(ステップP11)、製織長に相当するピック数に達した時点で、カットマークは図4に仮想線24Aで示した位置に到達する。また、ピック数が設定値に達すると、制御装置4の制御部4Bは、織布巻取モータ15にのみ停止指令を発信し、織機の製織運転を継続しながら織布巻取モータ15のみを停止する(ステップP12)。このため、織布6は図4に示すようにクロスロール18上に弛みを形成し始める。
【0036】
制御装置4は、ピック数が設定値に達すると、織布緩めピック数のカウントを開始し(ステップP13)、織布緩めピック数が設定値に達すると(ステップP14)、織機に対し停止信号を発信し、製織運転を停止する(ステップP15)。また、制御装置4は適宜表示手段を用いて作業者の呼び出しを行う。織機が停止すると、カットマークは図4に実線24Cで示した位置にあり、織布6は織布緩め長に相当する長さがクロスロール18上に滞留した状態となる。従って、織機が停止した時点で、織布6の切卸し準備が完了しており、第2の実施形態と同様に、作業者は織機に到着すると直ちに切卸し作業を開始することができる(ステップP16)。
【0037】
(第4の実施形態)
図6及び図7は織布6の切卸しに関する第4の実施形態を示したもので、第1〜第3の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第4の実施形態は、制御装置4に信号線25で接続されたタワーランプ26に織布6の切卸し時期を示す警告ランプ27を付加した構成を有する。また、制御装置4には、前記各実施形態と同様に、製織長に相当するピック数をカウントするプログラム及びピック数が設定値に達した時、警告ランプ27の点滅信号を発信するプログラムが製織運転用のプログラムに組み込まれ、記憶部4Aに記憶されている。
【0038】
図7に示すように、織機の製織運転が開始されると(ステップP20)、ピック数のカウントが開始され(ステップP21)、製織長に相当するピック数に達した時点で、カットマークは図6に仮想線24Aで示した位置に到達する。ピック数が設定値に達すると、制御装置4の制御部4Bはタワーランプ26に点滅指令信号を発信し、警告ランプ27を点滅させるが、織機の製織運転は継続される(ステップP22)。織布工場内に点在する作業者は、警告ランプ27の点滅を確認すると(ステップP23)、該当する織機に急行し、織機停止スイッチ23をON操作し(ステップP24)、織機を停止する。織機が停止した時点で、図6に仮想線で示すように、カットマーク24Bはクロスロール18に巻き込まれた状態にある。
【0039】
作業者は織布巻取モータ逆転スイッチ21をONし(ステップP24)、ON操作を継続することにより織布巻取モータ15を逆転し(ステップP25)、巻取ローラ8を図6の矢印方向に回転して、クロスロール18に巻かれた織布6の巻戻しを行う。作業者は巻取ローラ8の逆転により巻戻される織布6を監視し、図6に実線で示したカットマーク24Cの位置を確認すると(ステップP26)、織布巻取モータ逆転スイッチ21をOFFにし(ステップP27)、織布巻取モータ15を停止する(ステップP28)。この状態で、織布6の切卸し準備が完了するため、作業者は続けて織布6の切卸し作業を行う(ステップP29)。このように、作業者は織布巻取モータ逆転スイッチ21を操作するのみで、重量のあるクロスロール18を容易にかつ短時間で回転し、切卸し準備を行うことができる。
【0040】
(第5の実施形態)
図8及び図9に示した第5の実施形態は、織布6の巻き付けに関するもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第5の実施形態では、予め設定されている製織運転開始時に必要な織布6の張力と新しい巻取ローラ8Aの径に基づき算出された巻取トルクが設定され、制御装置4の記憶部4Aに記憶されている。また、織布巻取モータ15の回転数を制御し、設定された巻取トルクに達した時、織布巻取モータ15の停止信号が発信されるプログラムが制御装置4に設定されている。
【0041】
図9において、織機の製織運転が停止され(ステップP30)、織布6の切卸しが完了すると(ステップP31)、図8に示すように、新しい巻取ローラ8Aが織機に装着される。作業者は、加圧ローラ5から垂れ下がっている仮想線で示した織布6Aの織布端部28を巻取ローラ8Aの周囲に巻き付ける(ステップP32)。従って、織布6Aは図8に実線で示すように、加圧ローラ5と巻取ローラ8Aとの間に張られた状態となる。続いて、作業者は織布巻取モータ正転スイッチ20をON操作し(ステップP33)、織布巻取モータ15を正転して(ステップP34)、巻取ローラ8Aを図8の矢印方向に回転する。
【0042】
制御装置4は織布巻取モータ15の巻取トルクが予め設定された巻取トルクになるようにトルク制御を行い(ステップP35)、設定された巻取トルクとなった時点で、制御部4Bから停止信号を発信し、織布巻取モータ15を停止する(ステップP36)。加圧ローラ5と巻取ローラ8Aとの間に張られた織布6Aには、巻取ローラ8Aの巻取動作により製織運転開始時に必要な張力が付与されているため、作業者は織機起動スイッチ22を操作し、織機の製織運転を開始する(ステップP37)。従って、作業者に負担を掛けること無く、織布6Aに必要な張力を付与することができ、安定した製織運転を開始することができる。
【0043】
なお、巻取トルクが設定値に達したか否かを検出する手段としては、織布巻取モータ15から巻取ローラ8Aに至る駆動系の回転軸にトルクセンサーを設置する構成としても良い。この場合、織布巻取モータ15の停止制御はトルクセンサーからの信号により行われる。
【符号の説明】
【0044】
1 フレーム
2 サーフェスローラ
3 織布引取モータ
4 制御装置
5 加圧ローラ
6、6A 織布
8 巻取ローラ
15 織布巻取モータ
18 クロスロール
19 ファンクションパネル
20 織布巻取モータ正転スイッチ
21 織布巻取モータ逆転スイッチ
24A、24B、24C カットマーク
26 タワーランプ
27 警告ランプ
28 織布端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製織された織布を、サーフェスローラにより引き取るとともに巻取ローラにより巻き取る織機の織布巻取、巻戻し方法において、
前記巻取ローラを専用の織布巻取モータにより前記織機及び前記サーフェスローラから独立して駆動可能とし、織機の停止時に前記巻取ローラを前記織布巻取モータにより単独正転又は単独逆転し、前記巻取ローラの織布巻き付け又は織布巻戻しを行うことを特徴とする織機の織布巻取、巻戻し方法。
【請求項2】
設定された製織長の織布を製織後、設定された織布緩め長を製織して織機の運転を停止し、前記織布巻取モータを単独逆転して前記巻取ローラから前記織布緩め長を巻戻すことを特徴とする請求項1に記載の織機の織布巻取、巻戻し方法。
【請求項3】
設定された製織長の織布の製織により警告ランプを点滅し、前記警告ランプの点滅を確認後織機の製織運転を停止し、前記織布巻取モータを単独逆転して前記巻取ローラから織布を巻戻し、前記設定された製織長を表示するカットマークの確認後、前記織布巻取モータを停止することを特徴する請求項1に記載の織機の織布巻取、巻戻し方法。
【請求項4】
前記巻取ローラを織機に装着し、前記巻取ローラに織布端部を巻き付けた後、織布巻取モータ正転スイッチを操作して織布巻取モータを単独正転し、前記織布巻取モータの巻取トルクが予め設定された巻取トルクに達した後、前記織布巻取モータの単独正転を停止することを特徴とする請求項1に記載の織機の織布巻取、巻戻し方法。
【請求項5】
織機の停止前に前記巻取ローラを単独停止し、前記サーフェスローラから送り出される織布に緩みを形成することを特徴とする請求項1に記載の織機の織布巻取、巻戻し方法。
【請求項6】
設定された製織長の織布を製織後、前記織布巻取モータを単独停止するとともに織機の製織運転を継続し、設定された織布緩め長に相当する織布が前記サーフェスローラから送り出された時、織機の製織運転を停止することを特徴とする請求項5に記載の織機の織布巻取、巻戻し方法。
【請求項7】
製織された織布を、サーフェスローラにより引き取るとともに巻取ローラにより巻き取る織機の織布巻取、巻戻し装置において、
前記巻取ローラを前記織機及び前記サーフェスローラから独立して駆動する専用の織布巻取モータを設け、前記織機の停止時に前記織布巻取モータを単独正転及び単独逆転する制御部を備える制御装置を設けたことを特徴とする織機の織布巻取、巻戻し装置。
【請求項8】
前記サーフェスローラは、専用の織布引取モータにより駆動されることを特徴とする請求項7に記載の織機の織布巻取、巻戻し装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−60685(P2013−60685A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200048(P2011−200048)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】