説明

織機の耳組装置

【課題】 織機の耳組装置において、耳糸に開口運動を与える機構の大型化を招くことなく、かつ、耳糸に開口運動を与える機構の上流側で発生する耳糸同士の撚りを随時解消していき、その発生に伴う耳糸切れ等を有効に防止する。
【解決手段】 耳糸を案内するガイド孔が形成された回転体を回転させて一対の耳糸に開口運動を行わせる織機の耳組装置において、回転体を一定方向で間欠的に回転駆動する専用の駆動モータを備えた耳糸開口機構と、該耳糸開口機構の耳糸引き出し方向に関する上流側に設けられ、耳糸給糸体から引き出された耳糸を案内する一対のガイド部が形成されたガイド体及び該ガイド体を支持して前記回転体と同方向で連続的に回転駆動される回転部材を含み、上記回転部材が回転によって各耳糸給糸体から対応するガイド体の耳糸挿通部へ連なる耳糸が互いに交わることなしに公転運動する耳糸供給機構とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の耳組装置であって、特に、耳糸を案内する一対のガイド部が形成された回転体を回転させて耳糸に開口運動を行わせる形式の織機の耳組装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記形式の織機の耳組装置として、特許文献1及び2に記載されたものがある。特許文献1に記載の耳組装置では、それぞれに耳糸(からみ糸)が挿通されて案内されるガイド孔(アイレット)が形成された一対のアームを備え、該アームを専用の駆動モータで回転駆動することにより、耳糸に撚りを与えつつ開口運動を行わせている。
【0003】
上記形式の耳組装置では、上記アームの回転により、その上流側(耳糸給糸側)で、耳糸同士の撚り(2本の耳糸が互いに巻き付く状態)が発生する。この上流側での耳糸同士の撚りは、上記アームの回転回数に比例して増加し、放置すると撚り数が大きくなって糸切れを招いてしまう。従って、この上流側で発生する耳糸同士の撚りは、製織過程において随時解消していく必要がある。
【0004】
特許文献1に記載の耳組装置では、この上流側で発生する耳糸同士の撚りを解消するために、アームの一方向への所定数の回転後に、アームの回転方向を反転させて耳組動作を行っている。すなわち、アームの一方向への回転によって所定数の撚りが発生した後、アームを逆方向へ回転させることにより、この耳糸同士の撚りを戻す動作を行っている。
【0005】
しかし、この特許文献1に記載の耳組装置でも、アームの上記所定数の回転に相当する数だけ上流側で耳糸同士の撚りが発生する。耳糸が強度的に弱い糸の場合、多少の撚りでも糸切れが発生し易くなる。このため、この特許文献1に記載の耳組装置では、使用できる耳糸が制限されてしまう。また、耳組を行うためのアームの回転を、所定の回転回数毎に反転させているため、製織された織物の耳部の仕上がりが、一様ではなく、見栄えの悪いものとなってしまう。
【0006】
上記のようなアームの回転方向を反転させるものとは別に、耳糸の引き出し方向の上流側に、上記耳糸同士の撚りを解消するための機構を設けたものがある。その一例として、特許文献2に記載の耳組装置が挙げられる。
【0007】
この特許文献2に記載の耳組装置では、両端部に耳糸が挿通されて案内される一対のガイド孔を備えた耳糸開口用のガイド体を、織機の原動モータを駆動源とする駆動軸によって回転駆動して耳糸に開口運動を与えている。また、この耳糸に開口運動を与える機構の上流側に、一対の耳糸給糸体が配置される回転板を備え、その回転板に各耳糸給糸体から引き出される耳糸が挿通されて案内されるガイド孔を形成した撚り戻し機構を設けている。そして、この様な撚り戻し機構を設けることにより、上記ガイド体の回転に伴って発生するガイド体の上流側での耳糸同士の撚りが、上記ガイド孔の回転に伴う耳糸の公転運動よって戻されて解消される。
【0008】
しかし、この特許文献2に記載の耳組装置では、上記耳糸に開口運動を与えるための機構(耳糸開口機構)が織機の原動モータを駆動源としており、耳糸開口用のガイド体が略等速で連続的に回転駆動されるものとなっている。このため、耳糸の開口状態は常に高速で連続的に変化し、耳糸が最大開口もしくはそれに近い状態となっている期間は極めて短い。このため、この特許文献2に記載の耳組装置では、緯入れ期間中に十分な開口量を確保するためには、ガイド孔の間隔を大きくする、すなわち、ガイド体を大型化しなければならない。その結果、耳糸開口機構が大型化するといった問題が生じる。
【特許文献1】特表平11−501999号公報
【特許文献2】特開2000−170052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、織機の耳組装置において、耳糸開口機構の大型化を招くことなく、かつ、回転体の回転に伴って発生する耳糸開口機構上流側での耳糸同士の撚りを随時解消していき、その発生に伴う耳糸切れ等を有効に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題のもとに、本発明の織機における耳組装置は、耳糸を案内する一対のガイド部が形成された回転体を回転させて耳糸に開口運動を行わせる織機の耳組装置において、上記回転体及び該回転体を一定方向で間欠的に回転駆動する専用の駆動モータを備えた耳糸開口機構と、該耳糸開口機構の耳糸引き出し方向に関する上流側に設けられた耳糸供給機構機構であって、一対の耳糸給糸体から引き出された耳糸を案内する一対のガイド部が形成されたガイド体及び該ガイド体を支持して前記回転体の回転と同方向で連続的に回転駆動される回転部材を含み、該回転部材が回転駆動されることによって上記ガイド体のガイド部が公転運動して各耳糸給糸体から対応する上記ガイド体のガイド部へ連なる耳糸が互いに交わることなしに公転運動する耳糸供給機構と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
なお、ここでいう「各耳糸給糸体から対応する上記ガイド体のガイド部へ連なる耳糸が互いに交わることなしに」とは、上記ガイド体のガイド部の公転運動に伴って、各耳糸給糸体から対応するガイド体のガイド部へ連なる部分の耳糸に回転運動が与えられるが、このような回転運動が与えられたとしても、一対の耳糸の上記部分が、上記回転部材の一回転中においてその位置を共有することがない、すなわち、耳糸の上記部分上の全ての位置が上記回転部材の一回転中において常に異なる、ということを意味する。また「間欠的に回転駆動」とは、停止と回転とを交互に繰り返すものや、低速回転と高速回転とを交互に繰り返すもののように、異なる回転状態を所定の期間毎に定期的に繰り返すものをいう。さらに「公転運動」とは、ある特定の軸線又は部材の周りの円軌道上を周回運動することをいう。
【0012】
本発明の織機の耳組装置は、上記耳糸供給機構が、上記回転部材を回転駆動する専用の駆動モータを備えたものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明によれば、耳糸開口機構は、織機の原動モータとは独立した専用の駆動モータより、一対の耳糸を案内するアーム等の回転体を間欠的に回転駆動するものであるため、緯入れ期間中の任意の期間において、耳糸に開口運動を与える回転体を、耳糸が最大開口もしくはそれに近い状態となる位置(回転位相)を維持した状態とすることができる。従って、耳糸が案内されるガイド部の間隔を大きくすることなく、延ては回転体を大型化することなく、緯入れ期間中において必要とされる十分な耳糸の開口量を得ることができる。
【0014】
しかも、本発明では、上記のような回転体が専用モータで間欠的に駆動される形式の耳糸開口機構を備えた耳組装置において、従来の技術のように回転体を所定回転数毎に反転させるのではなく、その耳糸開口機構の耳糸引き出し方向に関する上流側に、ガイド体の回転によって耳糸同士の撚りを解消する撚り戻し機構(耳糸供給機構)を設けたため、耳糸開口機構の上流側で耳糸同士の多数回の撚りが発生することが無い。従って、回転体の反転に伴う織物耳部の不均一性が生じないと共に、上記の様な耳糸同士の撚りによる糸切れ等の発生を有効に防止することができる。
【0015】
耳糸供給機構における回転部材の駆動源を専用の駆動モータとすれば、織機の原動モータを駆動源とするものに比べ、織機の原動モータから耳糸供給機構までの間の駆動伝達機構を省略することができ、織機自体の構成を簡略化することができる。また、耳組装置がユニット化されるため、織機への取り付けが容易に行えると共に、位置調整が容易に行えるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1〜4に示すのは本発明の一実施形態であって、耳組装置10は、耳糸開口機構20と耳糸供給機構30とから成る。図1及び2に示すように、耳糸開口機構20は、織機の両側のサイドフレーム1、1間に架設されたビーム(梁)3上に、支持ブロック5等を介して支持され、複数本の経糸から成る経糸列Tの外側近傍に配置されている。また、耳糸供給機構30は、織機の両側のサイドフレーム1、1上に支持ブロック7等を介して支持されている。
【0018】
図1〜3に示すように、本実施例の耳糸開口機構20は、駆動源である専用の駆動モータ24と、駆動モータ24の出力軸24aに取り付けられた回転体であるアーム26を備える。そして、耳糸開口機構20は、織機のビーム3上の支持ブロック5に対し、ステー21及びブラケット22を介し、駆動モータ24がブラケット22に取り付けられることによって支持されている。支持ブロック5は、ビーム3に対し、ビーム3の長手方向へ位置調整可能に取り付けられている。従って、この支持ブロック5の位置を調整することにより、耳糸開口機構20の織機の幅方向に関する位置が調整可能となっている。
【0019】
駆動モータ24の出力軸24aは中空状に形成されており、その内部に耳糸供給機構30から引き出された2本の耳糸ST、STが挿通される。また、この出力軸24aの織前CF側(耳糸STの引き出し方向下流側)の端部には、ガイド孔が形成された耳糸ガイド26aを両端部に備えたアーム26が回転不能に取り付けられている。そして、出力軸24aの中空部に挿通された2本の耳糸ST、STは、出力軸24aの中空部を通過した後、アーム26の耳糸ガイド26a、26aのガイド孔に挿通されて案内され、耳糸ガイド26a、26aから筬9を経由して織布Wの織前CFに向けて引き出されている。なお、図示の例では、アーム26とは別体の耳糸ガイド26a、26aをアーム26に嵌装して回転体のガイド部としたが、この耳糸ガイド26a、26aを省略し、アーム26の両端部にそれぞれ形成された孔に耳糸ST、STを挿通させて案内するようにすることも可能である。また、回転体としてのアーム26は、一体的に形成された部材に限らず、出力軸24aに取り付けられた2つのアームによって回転体を構成してもよい。
【0020】
また、本発明における耳糸開口機構のための駆動モータは、1製織サイクル中の所定のタイミング毎に間欠的な回転を繰り返すものである。例えば、駆動モータは、2本の耳糸ST、STで形成される開口が最大開口となる回転位相で停止状態とされ、1製織サイクル中の所定のタイミング(例えば、緯入れの終了タイミングに対応して設定されたタイミング)で180°だけ半回転駆動されて再び停止状態とされる。これに伴い、耳糸ST、STで形成される開口は、緯糸が挿入された状態から上記回転の過程で一旦閉じられ、再び次の緯入れによる緯糸が挿入されるための開口が形成され、その開口量が最大となった状態で停止して次の緯入れに備える。このように、耳糸開口機構20のための駆動モータ24は、設定された上記所定のタイミングから、次の緯入れによる緯糸が耳糸ST、STで形成される開口内を通過するまで期間内において半回転駆動され、次の上記所定のタイミングまで停止状態にされるといった間欠的な駆動パターンで駆動されるものとすればよい。但し、本発明の耳糸開口機構における駆動モータの駆動は、上記のように停止と回転とを交互に繰り返すものに限らず、低速回転と高速回転とを交互に繰り返すものであってもよい。すなわち、2本の耳糸ST、STで形成される開口の開口量が最大開口となる回転位相の近傍で低速回転に切り換え、所定の期間に亘って必要な開口量以上の開口が維持されるようにし、緯糸の挿入が完了した後に再び高速回転に切り換えるといった動作を繰り返すようにしてもよい。
【0021】
図示の耳糸開口機構20には、出力軸24aの織前CF側端部におけるアーム26の反織前CF側に、耳糸STの切断を検知するための検知片28が設けられている。検知片28は、可撓性を有する薄板状の部材であって、その両端部に耳糸STが掛けられる切欠き部28aが形成されている。そして、この検知片28は、耳糸STの正常時には、耳糸STの張力によって、図3(a)に実線で示すような撓まされた状態となっており、耳糸STが糸切れを起こすと、耳糸STの張力が失われることに伴い、自身の弾性力によって図の点線で示す位置へ変位する。そこで、この検知片28の変位を適当なセンサ等で検知することにより、耳糸STの糸切れを検知することができる。
【0022】
また、図示の耳糸開口機構20には、アーム26の耳糸ガイド26a、26aから引き出された耳糸ST、STの水平方向の位置を規制するためのガイド29が付設されている。図示の例のガイド29は、図3(b)に示すように、U字形をして上下方向に延在する部材であって、ステー29aによってブラケット22に支持されている。このガイド29は、アーム29の回転中における耳糸ST、STの水平方向の位置を規制するためのものであって、例えば、アーム26が水平状態もしくはそれに近い状態となったときでも、筬9の進行方向に対して耳糸STが為す角度をより小さいものとし、筬9の筬羽と耳糸STとの摺接による影響を小さいものとしている。
【0023】
耳糸供給機構30は、図1、2及び図4、5に示すように、給糸部40と駆動部50とから成っている。なお、図5(a)、(b)は、図1又は4に示す状態から後述の回転ガイド部材45が略水平となるまで給糸部40を回転された状態を示す。
【0024】
本実施例の耳糸供給機構30は、上記の耳糸供給機構20と同様に、専用の駆動モータ52を駆動源とするものである。その駆動モータ52を含む駆動部50は、ブラケット53及びベース板51を介し、織機のサイドフレーム1上に取り付けられた支持ブロック7に支持されることにより、織機のサイドフレーム1上に取り付けられている。
【0025】
駆動部50においては、駆動モータ52が、ブラケット53のステー部53aに対し、その出力軸52aが貫通した状態で支持されている。また、ブラケット53のステー部53bには、図示しないベアリング等を介して軸継手55が支持されており、この軸継手55は、その一端において駆動モータ52の出力軸53aに回転不能に取り付けられている。また、軸継手55の他端は、給糸部40に固定的に取り付けられている。従って、給糸部40は、軸継手55を介してブラケット53に回転可能に支持された状態となっており、更に軸継手55を介して駆動モータ52の出力軸52aに連結されている。
【0026】
なお、駆動モータ52は、その出力軸52aが、耳糸開口機構20のアーム26が1回転する毎に、すなわち、織機の2製織サイクル毎に1回転割合で連続的に回転するように駆動制御される。
【0027】
給糸部40は、一対の耳糸ボビン41a、42aが装着されたボビンホルダ41、42と、各ボビンホルダ41、42が取り付けられた支持板43、44と、耳糸ST、STが挿通されるガイド孔が形成された耳糸ガイド45a、45bを備えた回転ガイド部材45とをを含む。
【0028】
両支持板43、44は、4本の支柱48によって直列状に連結されている。従って、本実施例における一対の耳糸ボビン41a、42aは、駆動モータ52の出力軸52aの軸線方向に関し、直列状に配置された状態となっている。支持板43は、駆動部50の軸継手55に取り付けられており、駆動モータ52によって直接的に駆動される。
【0029】
回転ガイド部材45は、幅の狭い板材を図5(a)に示すように屈曲させて形成した部材であって、支持板44の対角線上に配置されるように支持板44に取り付けられている。そして、耳糸ガイド45a、45bは、回転ガイド部材45の耳糸開口機構20側の端部に取り付けられている。
【0030】
ボビンホルダ41、42は、詳細な説明は省略するが、例えば、特開平7−48749号公報に開示されているようなものであって、それぞれに耳糸ボビン41a、42aが装着され、ラチェット機構等を用い、通常は耳糸ボビン41a、42aを回転不能として耳糸STの送り出しを停止すると共に、耳糸STの張力が上昇した場合にラチェットとラチェットホィールとの係合が解除されて耳糸ボビン41a、42aを回転可能とし、耳糸STが引き出し可能となるものである。
【0031】
また、各ボビンホルダ41、42には、各耳糸ボビン41a、42aから引き出された耳糸ST、STを案内するガイド片46、47が取り付けられている。従って、各ガイド片46、47は、ボビンホルダ41、42を介して対応する支持板43、44に支持された状態となっている。
【0032】
各ガイド片46、47は、上記耳糸ST、STを挿通して案内するためのガイド孔46a、47aが形成されており、支持板43、44の回転軸線(=駆動モータ52の出力軸52aの軸心)から偏心した位置で対応するボビンホルダ41、42に取り付けられている。そして、各耳糸ボビン41a、42aからの耳糸ST、STは、ガイド片46、47のガイド孔46a、47aを経由し、回転ガイド部材45の耳糸ガイド45a、45bに向けて引き出され、耳糸ガイド45a、45bを通過して耳糸開口機構20へ導かれている。
【0033】
このような構成の耳糸供給機構30では、駆動モータ52の出力軸52aの回転により、支柱48によって一体的に連結された支持板43、44が回転駆動されるものであり、この支持板43、44が本発明における回転部材に相当する。
【0034】
また、支持板43、44が回転駆動されることにより、各支持板43、44に支持されたボビンホルダ41、42が支持板43、44の回転軸心を中心として回転され、さらに、各ボビンホルダ41、42に取り付けられたガイド片46、47が、支持板43、44の回転軸線周りで公転運動する。従って、このガイド片46、47が本発明におけるガイド体に相当し、各ガイド片46、47に形成されたガイド孔46a、47aがガイド体に形成された一対のガイド部に相当する。
【0035】
なお、図示の例では、耳糸ガイド45a、45bを備えた回転ガイド部材45が支持板44に取り付けられており、支持板43、44の回転に伴って耳糸ガイド45a、45bも支持板43、44の回転中心周りを公転運動する。よって、この場合は、回転ガイド部材45も本発明におけるガイド体として機能し、耳糸ガイド45a、45bもガイド体に形成された一対のガイド部として機能する。但し、この回転ガイド部材45に形成するガイド孔には必ずしも本発明でいうガイド部の機能を持たせる必要はなく、耳糸ガイド45a、45bの代わりに2本の耳糸ST、STが同時に挿通される単一のガイド孔を形成したものとしてもよい。また、回転ガイド部材45自体を省略し、ホビンホルダ41、42のガイド片46、47から直接的に耳糸開口機構20へ耳糸ST、STが導かれるようにしてもよい。
【0036】
そして、この実施例における耳組装置10によれば、耳糸開口機構20のアーム26の一方向への間欠的な回転運動によって、織前CFに連なる2本の耳糸ST、STが、織機の1製織サイクル毎に開口を形成しつつ、アーム26の回転中心周りに回転(公転)運動して織布Wに対する耳組みが行われる。しかも、アーム26の回転方向は常に一方向であるため、織物耳部の不均一性が生じることなく耳組みが行われる。
【0037】
また、アーム26の一方向への回転に伴い、アーム26の上流側で耳糸ST、ST同士の撚りが発生するが、耳糸供給機構30のガイド孔46a、47a及び耳糸ガイド45a、45bのアーム26の回転方向と同方向への公転運動により、その耳糸ST、ST同士の撚りが随時解消される。すなわち、耳糸ボビン41aから引き出されてガイド孔46a及び耳糸ガイド45aを経由して耳糸開口機構20へ至る耳糸STと、耳糸ボビン42aから引き出されてガイド孔47a及び耳糸ガイド45bを経由して耳糸開口機構20へ至る耳糸STとは、ガイド孔46a、耳糸ガイド45a及びガイド孔47a、耳糸ガイド45bの支持板43、44の回転中心周りの公転運動により、支持板43、44(ホビンホルダ41、42)の1回転中において互いに交わることなく、共に支持板43、44の回転中心周りに公転する。このため、互いに他方の周りを公転運動することとなり、しかもその公転運動の方向がアーム26の回転方向と同じであるため、アーム26の回転に伴ってその下流側で発生する耳糸ST、ST同士の撚りが戻されて解消される。よって、耳糸ST、ST同士の多数回の撚りに起因する耳糸切れの発生が起こることはない。
【他の実施の形態】
【0038】
上記実施例では、耳糸供給機構30が専用の駆動モータ52を駆動源とするものとしたが、本発明の耳糸供給機構はこれに限定されず、織機の原動モータを駆動源としてもよい。
【0039】
また、上記実施例では、耳糸開口機構の回転体として、耳糸ST、STを案内する耳糸ガイド26a、26aを両端部に備えたアーム26を採用しているが、本発明の耳糸開口機構はこれに限定されず、例えば、図6(a)、(b)に示すように、回転体として円盤状の部材60を採用したものであってもよい。また、回転体に形成される耳糸を案内するためのガイド部は、上記のような孔に限らず、回転体に形成した切欠き(図6の例では、切欠き60a)であってもよい。
【0040】
さらに、上記実施例では、ボビンホルダ41及びガイド片46を支持し、駆動モータ52によって直接的に回転駆動される支持板43と、ボビンホルダ42及びガイド片47を支持する支持板44とを直列的に連結し、出力軸52aの回転によってボビンホルダ42、43が共に回転し、ガイド片46、47が共に公転運動するものとしたが、本発明の耳糸供給機構はこのような形式のものに限定されない。
【0041】
例えば、前述の特許文献2に記載されているもののように、回転駆動される円盤状あるいはアーム状の回転体(回転部材)上に一対の耳糸ボビンを配置すると共に、その回転体の回転に伴ってその回転軸線周りを公転運動する一対のガイド孔を介し、各耳糸ボビンから耳糸開口機構へ向けて耳糸を引き出す構成としてもよい。なお、この構成の場合、単一の部材である回転体が、本発明でいうガイド体と回転部材として兼用される。すなわち、本発明における耳糸供給機構のガイド体と回転部材とは、それぞれ別の部材であってもよいし、共通の部材であってもよい。
【0042】
また、本発明の耳糸供給機構は、上記実施例のように回転部材の回転に伴って一対の耳糸ボビンが共に回転もしくは公転するものに限らず、一対の耳糸ボビンの少なくとも一方が回転不能に配置されたものであってもよい。
【0043】
例えば、上記実施例の耳組装置10において、耳糸供給機構30の支持板44を、支持板43とは連結せずに、織機のサイドフレーム1等に固定的に支持されたものとし、駆動モータ52の出力軸52aの回転によって支持板43のみが回転駆動されるものとしてもよい。この場合、ガイド片46、47のガイド孔46a、47aの配置等の変更し、ガイド孔46aを介して耳糸ボビン41aから耳糸開口機構20へ導かれる耳糸STが、支持板43の回転に伴い、耳糸ボビン42aから耳糸開口機構20へ導かれる耳糸STの周りを公転運動するようにすればよい。
【0044】
また、特開昭60−34642号公報に記載された耳糸供給装置のように、一対の耳糸ボビン(ボビンホルダ)を共に回転不能に支持されたものとし、耳糸ボビンと耳糸開口機構との間で耳糸を案内するガイド体(ガイド部)のみを回転(公転)運動させるものとしてもよい。
【0045】
なお、本発明は上記のいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態を示す側面図。
【図2】本発明の一実施形態を示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態の要部を示す側面図及び正面図。
【図4】本発明の一実施形態の要部を示す側面図。
【図5】本発明の一実施形態の要部を示す平面図及び正面図。
【図6】本発明の他の実施形態の要部を示す側面図及び正面図。
【符号の説明】
【0047】
10 耳組み装置
20 耳糸開口機構
24 駆動モータ
24a 出力軸
26 アーム
26a 耳糸ガイド
30 耳糸供給機構
40 給糸部
41、42 ボビンホルダ
41a、42a 耳糸ボビン
43、44 支持板(回転部材)
45 回転ガイド部材(回転部材)
45a、45b 耳糸ガイド(耳糸挿通部)
46、47 ガイド片(ガイド体)
46a、47a ガイド孔(耳糸挿通部)
50 駆動部
52 駆動モータ
52a 出力軸
CF 織前
T 経糸列
W 織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳糸を案内する一対のガイド部が形成された回転体を回転させて耳糸に開口運動を行わせる織機の耳組装置において、
前記回転体及び該回転体を一定方向で間欠的に回転駆動する専用の駆動モータを備えた耳糸開口機構と、
前記耳糸開口装置の耳糸引き出し方向に関する上流側に設けられ、一対の耳糸給糸体から引き出された耳糸を案内する一対のガイド部が形成されたガイド体及び該ガイド体を支持して前記回転体の回転と同方向で回転駆動される回転部材を含み、該回転部材の回転に伴って前記ガイド体のガイド部が公転運動して各耳糸給糸体から対応する前記ガイド体のガイド部へ連なる耳糸が互いに交わることなしに公転運動する耳糸供給機構と、
を備えたことを特徴とする織機の耳組装置。
【請求項2】
前記耳糸供給機構が、前記回転部材を回転駆動する専用の駆動モータを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の織機の耳組装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−2385(P2007−2385A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303862(P2005−303862)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】