説明

織物、特に織物構造体及び/又は被覆用の織物

本発明は、特に織物構造体及び/又は被覆用の織物であって、PTFE紡績糸の縦糸と横糸からなり、縦糸の数が横糸の数の少なくとも約2倍である織物に関する。また、本発明は、縦糸間における製織時に、縦糸間の通路に少なくとも2本の平行に延びる糸を同時に挿入する織物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に係るPTFE紡績糸の縦糸と横糸からなる織物、特に織物構造体及び/又は被覆用の織物に関する。また、本発明は織物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
織物の製造においてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)紡績糸を利用することが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、特にコーティングされていない条件において高い引張強さによる特に高い防水性を有するPTFE織物を提供することにある。また、本発明の目的は、織物、特に上記特性を有するPTFE織物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は、請求項1又は2の特徴を有する織物によって達成される。従属請求項は好適な実施形態を示すものである。また、上記目的は、請求項11の特徴を有する方法によって達成される。
【0005】
本発明によれば、上記目的は、縦糸の数を横糸の数の少なくとも約2倍とすることによって達成される。このような構成によって特に良好な防水性が得られることが判明している。
【0006】
本発明の別の態様では、縦糸の数は100〜125本/cm、特に115±3本/cmであり、及び/又は横糸の数は50〜80本/cm、特に57±3本/cmである。
【0007】
試験によれば、上記糸密度により、コーティングを施すことなく8cm以上の防水圧(water column)の防水性を達成することができる。糸の数が比較的多いため、細孔を比較的小さくすることができ、良好な防水性を得ることができる。また、縦糸の数が比較的多いため、特に高い引張強さを達成することができる。横糸の数が比較的多いため、製織時に機械出力(machine output)を向上させることができ、操業経済性を向上させることができる。
【0008】
本発明に係る織物は、建築物、より詳細には屋外建築物に使用することができる。特に、本発明に係る織物は、日よけ構造物、大型テント、太陽光オーニング(sun−blind awning)、折り畳み式ブラインド(シェード)、テント型構造物及び/又は平面耐力構造物に使用することができる。本発明に係る織物によれば、例えば25m×25mの寸法を有する日よけ構造物を実現することができる。
【0009】
本発明によれば、特に化学的に不活性でUV安定性を有し、特に屋外用途に好適なPTFE紡績糸を使用する。
【0010】
本発明によれば、縦糸は単糸からなり、及び/又は縦糸のタイターは低いことが好ましい。本発明によれば、縦糸のタイターは例えば350〜370dtex、特に約360dtexであることができる。紡績糸の質量密度が低い場合には、特に柔軟な感触が得られる。
【0011】
また、横糸が好ましくは縦糸よりも高いタイターを有する単糸からなることが有利であり、横糸のタイターは最適には縦糸のタイターの約2倍である。より詳細には、横糸のタイターは640〜660dtex、好ましくは約650dtexであることができる。また、横糸のタイターは少なくとも約720dtexであってもよい。
【0012】
横糸は、特に2本の糸を有する諸撚糸からなることができる。この場合、横糸のタイターは縦糸のタイターに対応していることが好適である。例えば、横糸のタイターは350〜370dtex、好ましくは約360dtexであることができる。特に、各糸のタイターを上述した値とすることができる。諸撚糸とは、特に、絡み合っておらず、少なくともほぼ平行に延びる数本の糸からなる紡績糸を意味する。
【0013】
絡み合った紡績糸と比較して、諸撚糸の各糸は織物構造体において僅かに大きなスペースを必要とするため、諸撚糸を使用して得られる織物を僅かに厚く及び/又は特に柔軟にすることができる。また、諸撚糸を使用することにより、絡み合った糸と比較して色に関する柔軟性を高めることができる。
【0014】
2本の糸を有する諸撚糸を横糸として使用する場合には、単位長さ当たりの糸の数を横糸の数の2倍とすることができる。例えば、1cm当たり50〜65本の横糸を設ける(すなわち、諸撚糸からなる横糸の数が50〜65本/cm)場合には、各横糸の数は100〜130本/cmとなる。
【0015】
糸が撚り合わされていないか、僅かに撚り合わされた諸撚糸の代わりに、絡み合った紡績糸を使用することも基本的に可能である。特にこの場合、紡績糸は、例えば350〜370dtex、好ましくは約360dtexのタイターを有する2本の糸を有することができる。糸全体のタイターが同一である単糸と比較して、紡績糸又は諸撚糸の比較的細い各糸を利用することにより表面積が増加して撥水性が向上し、屋外建築物用途において特に有利である。
【0016】
横糸及び/又は縦糸を緩く撚り合わせることによって織物の感触を向上させることができる。
【0017】
屋外建築物用途においては、織物の重量が少なくとも900g/mであることが特に有利である。例えば、織物の重量は約1000g/m、好ましくは約2000g/mとすることができる。
【0018】
織物の織り方をパナマ織り又はあや織りとすることにより、特に柔軟な感触と良好な防水性を得ることができる。好ましくは、パナマ6/6織りとすることができる。具体的には、連続数4の4糸パナマ6/6織り(P6/6(4)4織り)とすることができる。
【0019】
織物の引張強さに関しては、織物が多層織り、特に二層織りされていることが特に有利である。本発明に係る比較的多数の縦糸と共に二層織物構造を織物が有する場合には、5000N/5cmを超える引張強さを得ることができる。
【0020】
製織後に少なくとも1種の浴内で織物を処理することによって織物の純度を向上させることができる。好ましくは、酸性浴、アルカリ性浴及び/又は酸化剤浴内で織物を洗浄する。最適には、酸性浴、アルカリ性浴、酸化剤浴の順番で、織物をこれらの3種類の浴内で連続的に洗浄する。酸化剤浴は、例えば、特に有効で経済的な酸化剤である過酸化水素浴である。有利には、化学品浴を加熱し、特に高い有効性を得るために好適には約80℃の温度とする。化学品浴内で洗浄する場合には、洗浄の最後に織物を純水内ですすぐことが有利である。また、各浴内での洗浄間に織物を純水内ですすぐこともできる。
【0021】
織物の継ぎ目の滑りを防止する(特に高い継ぎ目安定性を得る)ために、縦糸を少なくともほぼ一平面内に配置することが有利な場合がある。
【0022】
また、白い縦糸を使用し、少なくとも横糸の一部が着色されていることが有利である。特に、織物構造体では、着色された横糸を周期的に設け、残りの横糸は白色とすることができる。例えば、5本目又は10本目毎に横糸が着色されていてもよい。その結果、着色された織物構造体を特に簡便で経済的な方法で得ることができる。本実施形態によれば、着色された糸を1つの糸系統にのみ設けるため、その後の処理工程において織物を特に簡単に配置調整することができる。また、織物の外観を特に調和させると共に均一にすることができる。
【0023】
本発明に係る織物によれば、高い機械的安定性、特に耐風性、高い耐老化性、特にUV安定性及び/又は良好な遮蔽性を達成することができる。
【0024】
本発明に係る縦糸と横糸を含む織物の製造方法は、縦糸間における製織時に、縦糸間の通路に少なくとも2本の平行に延びる糸を同時に挿入することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る方法の基本的な着想は、各横糸として、少なくとも2本、好ましくは2本の糸を縦糸間の通路にまさに平行に挿入する点にある。そのため、本発明の本態様によれば、諸撚糸を特に横糸として使用し、上述した利点を実現することができる。2本の糸を縦糸間の通路に同時に挿入するため、絡み合った紡績糸を使用する場合と同じ機械出力(横糸挿入能力)を実現することができる。
【0026】
製織時に一度に複数の縦糸間の通路を設け、少なくとも1本が諸撚りされた数本の横糸を同時に挿入することもできる。その結果、生産性を更に向上させることができる。
【0027】
本発明に係る方法を実施する際には、好ましくは1cm当たり50〜65本の横糸を用意する。ただし、横糸毎に数本の糸を同時に挿入するため、横糸の数はそれに対応して増加する。
【0028】
本発明に係る方法は、特にPTFE紡績糸からなる織物の製造に好適である。好ましくは、本発明に係る織物を製造するために本発明に係る方法を使用する。
【0029】
本発明に係る方法を実施するために、少なくとも2つの紡績糸キャリヤと、横糸の2本の糸のための少なくとも2つの事前巻取装置を有する織機を使用することが好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面に模式的に示す好適な実施形態によって本発明について更に詳細に説明する。図1は本発明に係る織物の反復パターンを示し、矢印は縦方向を示している。図1では、4糸パナマ6/6(4)織りとしている。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物、特に織物構造体及び/又は被覆用の織物であって、PTFE紡績糸の縦糸と横糸からなり、前記縦糸の数が前記横糸の数の少なくとも約2倍であることを特徴とする織物。
【請求項2】
請求項1において、PTFE紡績糸の縦糸と横糸からなり、前記縦糸の数が100〜125本/cmであり、及び/又は前記横糸の数が50〜65本/cmであることを特徴とする織物。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記縦糸が単糸からなり、及び/又は前記縦糸のタイターが低いことを特徴とする織物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記横糸が、前記縦糸よりも高いタイター、好ましくは前記縦糸のタイターの約2倍のタイターを有する単糸からなることを特徴とする織物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記横糸が2本の糸を有する諸撚糸からなることを特徴とする織物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、前記横糸及び/又は前記縦糸が撚り合わせられていることを特徴とする織物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、前記織物の重量が少なくとも900g/mであることを特徴とする織物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、前記織物の織り方がパナマ織り又はあや織りであることを特徴とする織物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項において、多層織り、特に二層織りされていることを特徴とする織物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項において、酸性浴、アルカリ性浴及び酸化剤浴内で洗浄されていることを特徴とする織物。
【請求項11】
縦糸と横糸を含む織物、特に前記請求項のいずれか1項に記載の織物の製造方法であって、前記縦糸間における製織時に、前記縦糸間の通路に少なくとも2本の平行に延びる糸を同時に挿入することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−540135(P2009−540135A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513572(P2009−513572)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004684
【国際公開番号】WO2007/140893
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(506161108)シーファー アーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】SEFAR AG
【住所又は居所原語表記】Hinterbissaustrasse 12 9410 Heiden Switzerland
【Fターム(参考)】