説明

織物の製法

【課題】 ソフトでしなやかな風合の織物を提供する。
【解決手段】緯糸が、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸からなる織物をウォータージェットルームで製造するに際し、全自由飛走によって緯入れする織物の製法。噴射開始角度を70〜85°、先行角を15〜30°の範囲内として緯入れすることが好ましい。また前記マルチフィラメント糸は、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織物の製法に関する。より詳細には、緯段のない優れた品位の織物の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTという)を緯糸に用いてウォータージェットルーム(以下、WJLという)で製織すると、ヨコヒケや単糸切れが発生しやすく、問題となっていた。例えば、特許文献1には、PTT糸をWJLを用いて緯入れするに際し、自由飛走と拘束飛走によって緯入れすることが記載されている。
しかし、得られた織物はソフトでしなやかな風合という面では充分満足するものではなかった。
【特許文献1】特開2004−346433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、PTT糸を緯糸に用いてWJLで製織する際に、ソフトでしなやかな風合の織物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、緯糸としてPTT糸を用いた織物をWJLで製造する際に、緯入れを全自由走行によって行うことにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明で特許請求される発明は、下記の通りである。
(1)緯糸として、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸を用いた織物をウォータージェットルームで製造するに際し、全自由飛走によって緯入れすることを特徴とする織物の製法。
(2)噴射開始角度を70〜85°、先行角を15〜30°の範囲内として緯入れすることを特徴とする(1)記載の織物の製法。
(3)ポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸が、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることを特徴とする(1)記載の織物の製造法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上記の構成とすることにより、ソフトでしなやかな風合の織物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について、以下、具体的に説明する。
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル系繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0008】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の好ましい特性としては、強度は2〜5cN/dtex、好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらには3〜4.5cN/dtexが好ましい。伸度は30〜60%、好ましくは35〜55%、さらには40〜55%が好ましい。初期引張抵抗度は30cN/dtex以下、好ましくは10〜30cN/dtex、さらには12〜28cN/dtex、特に15〜25cN/dtexが好ましい。10%伸長時の弾性回復率は70%以上、好ましくは80%以上、さらには90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0009】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンド(ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で50%以上である)したり、複合紡糸(鞘芯、サイドバイサイド等)してもよい。
【0010】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0011】
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0012】
本発明においてポリトリメチレンテレフタレート系繊維の紡糸については、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)の何れを採用しても良い。
【0013】
又、繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0014】
トータル繊度は20〜550dtexが好ましく、より好ましくは30〜220dtexであり、また、単糸繊度は0.1〜12dtexが好ましく、特に0.1〜6dtexが柔軟な風合いが得られるので好ましい。
【0015】
さらに糸条の形態としては、マルチフィラメント糸であり、マルチフィラメント原糸、甘撚糸〜強撚糸、交絡糸、混繊糸、仮撚糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸等がある。
【0016】
本発明においては、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であると優れたストレッチ性、ストレッチバック性を発揮するので好ましい。
【0017】
潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、少なくとも二種のポリエステル成分で構成(具体的には、複合紡糸によってサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)され、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分の複合比(一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は限定されない。
【0018】
このような、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、具体的には、特開2001−40537号公報に開示されているようなポリトリメチレンテレフタレートを一成分とするものがある。すなわち、この繊維は、二種のポリエステルポリマーが、サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合された複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比は、好ましくは1.00〜2.00であり、偏芯芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0019】
具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)とポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)並びにポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)が好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されたものが好ましい。
【0020】
上記特開2001−40537号公報以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に複合紡糸したものが開示されている。特に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0021】
本発明では、かかる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維が、初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであると好ましく、さらに好ましくは20〜30cN/dtex、より好ましくは20〜27cN/dtexである。初期引張抵抗度が30cN/dtexを越えると、ソフトな風合を損なうことがあり、10cN/dtex未満のものは製造が困難である。又、100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4cN/dtex、最も好ましくは0.1〜0.3cN/dtexである。100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、0.5cN/dtexを越える繊維の製造は困難である。
【0022】
さらに好ましい特性として、顕在捲縮の伸縮伸長率は、10〜100%、好ましくは10〜80%、より好ましくは10〜60%である。顕在捲縮の伸縮伸長率が10%未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、100%を越える繊維の製造は困難である。さらに、顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%、好ましくは85〜100%、より好ましくは85〜97%である。顕在捲縮の伸縮弾性率が80%未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、100%を越える繊維の製造は困難である。
【0023】
又、熱水処理後の伸縮伸長率は、好ましくは100〜250%、より好ましくは150〜250%、最も好ましくは180〜250%である。熱水処理後の伸縮伸長率が100%未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、250%を越える繊維の製造は困難である。熱水処理後の伸縮弾性率は、好ましくは90〜100%、より好ましくは95〜100%である。熱水処理後の伸縮弾性率が90%未満では、ストレッチバック性が不充分となる場合がある。
【0024】
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維があげられる。
【0025】
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.50(dl/g)であることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.45(dl/g)、最も好ましくは0.15〜0.45(dl/g)である。例えば、高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.50〜1.10(dl/g)から選択するのが好ましい。
【0026】
この複合繊維自体の固有粘度、すなわち、平均固有粘度は0.70〜1.20(dl/g)が好ましく、0.80〜1.20(dl/g)がより好ましい。0.85〜1.15(dl/g)がさらに好ましく、0.90〜1.10(dl/g)が最も好ましい。
本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸した糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである
【0027】
繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0028】
トータル繊度は20〜550dtexが好ましく、より好ましくは30〜220dtexであり、また、単糸繊度は0.1〜12dtexが好ましく、特に0.1〜6dtexが柔軟な風合いが得られるので好ましい。
【0029】
さらに糸条の形態としては、マルチフィラメントであり、マルチフィラメント原糸、甘撚糸〜強撚糸、交絡糸、混繊糸、仮撚糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸等がある。
【0030】
特に、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、仮撚加工糸であるとさらに優れたストレッチ性、ストレッチバック性を発揮するので好ましい。仮撚加工糸はいわゆる2ヒーターの仮撚加工糸(セットタイプ)よりも、いわゆる1ヒーターの仮撚加工糸(ノンセットタイプ)を用いる方が、ストレッチ性、ストレッチバック性から好ましい。さらに仮撚加工糸は、好ましくは2000m/分以上、より好ましくは2500〜4000m/分の巻取り速度で引取って得られる部分配向未延伸糸(POY)を延伸仮撚した仮撚加工糸が好ましい。
【0031】
仮撚加工糸は、無撚でもよいが、必要に応じて仮撚方向と同方向又は異方向に追撚したり、仮撚加工糸を双糸又は三子以上で合撚されたものやS仮撚加工糸とZ仮撚加工糸を合撚してもよい。特に追撚したり、合撚する場合、仮撚加工糸には、前述した部分配向未延伸糸(POY)を延伸仮撚した仮撚加工糸を用いると好ましい。
【0032】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸や潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の原糸及び仮撚加工糸は、熱リラックス等の手段により潜在捲縮を顕在化させて用いることが、ストレッチバック性を高めるためには好ましく、例えば、先染め糸(チーズ染め、かせ染め、プレバルキー後にチーズ染め、かせ染め等)として用いる方法がある。
【0033】
本発明は、かかるポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸を緯糸に用いてWJLで製織するに際し、全自由飛走で緯入れすることを特徴とするものである。
【0034】
本発明において、全自由飛走での緯入れとは、緯糸測長貯留装置に1ピック分の緯糸が貯留されて噴射水によって反ノズル側へ搬送される全ての緯糸が自由飛走によって緯入れされるものであり、緯糸測長貯留装置としてFDP方式を利用した緯入れである。なお、一般的に知られている緯入れは自由飛走と拘束飛走によるものであり、緯糸測長貯留装置に1ピック分に満たない緯糸が貯留されて噴射水によって反ノズル側へ搬送され(自由飛走)、反ノズル側に到達前に測長ローラーによって緯入れ(拘束飛走)するものであり、緯糸測長貯留装置としてRDP方式やSDP方式のものを利用した緯入れである。津田駒社製のWJLの型式でいえば、FDP方式としてはZW−400台が、RDP方式やSDP方式としてはZW−100、ZW−200、ZW−300の各台が該当する。
【0035】
尚、得られた織物に緯ヒケ欠点が懸念される場合は、噴射開始角度70〜85°、先行角15〜30°に設定して緯入れすることが好ましい。この緯入れの方法によれば、水噴射を早め、かつ先行角を大きくとることにより、緯糸における噴射水の水切れを早くする、即ち緯糸から水が無くなるタイミングを早めることによって、緯糸の飛走速度を減少させ、緯ヒケ軽減を図ることができる。一般的なWJL製織における噴射開始角度は90°以上、先行角は10°以上である。なお、ここでいう噴射開始角度とは緯打ち運動開始から緯入れ用ノズルが噴射開始するまでを織機角度で表した角度をいい、先行角とは噴射開始角度と緯糸の飛走開始角度との角度の差をいう。
【0036】
その他の好ましい製織条件としては、緯糸の飛走終了角度は180〜250°さらには200〜250°が好ましく、最も好ましくは210〜235°である。又、織機回転数は400〜700rpmが好ましい。
製織後の染色仕上げは、常法に従って精錬、染色、仕上げセットすればよい。
【実施例】
【0037】
本発明を実施例に基づいて説明する。
本発明に用いられる測定法及び評価法は以下のとおりである。
【0038】
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cは、g/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0039】
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
【0040】
(2)初期引張抵抗度
JIS L 1013化学繊維フィラメント糸試験方法初期引張抵抗度の試験方法に準じ、試料の単位繊度当たり0.0882cN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出する。試料10点を採取して測定し、その平均値を求める。
【0041】
(3)伸縮伸長率及び伸縮弾性率
JIS L 1090合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法の伸縮性試験方法A法に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)及び伸縮弾性率(%)を算出する。試料10点を採取して測定しその平均値を求める。
【0042】
顕在捲縮の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、巻取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、相対湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行う。熱水処理後の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥乾燥した試料を用いる。
【0043】
(4)熱収縮応力
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製、商品名KE−2)を用い、試料を20cmの長さに切り取り、両端を結んで輪を作り測定装置に装填し、初荷重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で収縮応力を測定し、得られた温度に対する熱収縮応力の変化曲線から100℃における熱収縮応力を読み取る。
【0044】
(5)織物風合の評価
熟練の加工技術者10人による評価を行い、その平均点で示す。
5級;ソフトでしなやかな風合の織物である
3級;ソフトでしなやかな風合に欠ける織物である
1級;硬い風合の織物である
【0045】
[実施例1]
固有粘度[η]=0.9の56dtex/24fポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸を経糸並びに緯糸に用いて、下記条件で平織物を製織した。
【0046】
<製織条件>
機種;ZW−408(緯糸測長貯留装置FDP方式;津田駒工業社製)
織機回転数;500rpm、
噴射開始角度;80°
先行角;20°
緯糸飛走終了角度;230°
常法に従って精錬、染色、仕上げセットして得られた織物の風合は4.5級であり、緯ヒケ欠点のない織物であった。
【0047】
[比較例1]
実施例1において、ZW−303(緯糸測長貯留装置RDP方式;津田駒工業社製)を用いた以外は実施例1同様に製織した。常法に従って精錬、染色、仕上げセットして得られた織物の風合は3.5級であり、実施例1対比劣ったものであった。
【0048】
[実施例2]
実施例1において、噴射開始角度90°先行角;20°と設定した以外は実施例1同様に製織した。
常法に従って精錬、染色、仕上げセットして得られた織物の風合は4.5級であり、僅かに緯ヒケ欠点のある織物であった。
【0049】
[実施例3]
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得た。
次いで、得られた未延伸糸を、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が56dtexとなるように設定して延撚し、56dtex/24fのサイドバイサイド型の複合繊維を得た。
【0050】
得られた複合繊維の固有粘度は、高粘度側が[η]=0.90、低粘度側が[η]=0.70であった。又、初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率及び伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率及び伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力は、各々23cN/dtex、25%及び89%、204%及び99%、0.21cN/dtexであった。
この複合繊維を緯糸に用いた以外は実施例1同様にして得られた織物の風合は4.5級であり、緯ヒケ欠点のない織物であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によって得られた織物は、ソフトでしなやかな風合を有し、特に裏地、アウター、スポーツ用の織物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯糸として、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸を用いた織物をウォータージェットルームで製造するに際し、全自由飛走によって緯入れすることを特徴とする織物の製法。
【請求項2】
噴射開始角度を70〜85°、先行角を15〜30°の範囲内として緯入れすることを特徴とする請求項1記載の織物の製法。
【請求項3】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸が、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることを特徴とする請求項1記載の織物の製造法。

【公開番号】特開2007−70770(P2007−70770A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261012(P2005−261012)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】