説明

繰出装置

【課題】球体を安定して繰り出す。
【解決手段】球体Xの繰り出し方向の反対側で互いの方向に付勢されて球体Xを狭持する弾性を有する一対の挟持部11fと、繰り出し方向側が広がるように挟持部11fを繰り出し方向に移動させる移動機構と、を有する繰出装置10では、球体Xは挟持部11fにより安定して挟持され、球体Xを所定の位置から繰り出すことが可能となり、さらに、挟持部11fからの弾性力の分の繰り出し力が増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繰出装置に関し、特に、球を1つずつ繰り出す繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ、ビンゴゲーム、又はその他の多くの遊戯機ではパチンコ玉、又はボール等の球体が用いられる。
各遊戯機には、各遊戯機内に球体を供給するための繰出装置が備えられている。
【0003】
球体を供給するために、球体を爪形状の部材に掛けた状態で爪形状の部材を移動することにより、球体を繰り出す方法が採用されている。具体的には、次のような繰出装置が提案されている。球体が嵌入可能な凹状であって爪形状の部材を外周面に備えたスプロケットの当該外周面の一部を、供給通路に露出させる。供給通路の球体を爪形状の部材にかけてスプロケットを回転させることにより球体を繰り出すことができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】第2930377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のように球体を爪形状の部材に球体を掛けて繰り出す方法では、繰り出す時に、爪形状の部材に球体を確実に掛けることができずに、繰り出し不良が発生する問題点があった。
【0005】
また、爪形状の部材に球体を掛けることができたとしても、球体の繰り出し位置が定まらない場合があり、この場合にも繰り出し不良が発生する問題点があった。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、球体を安定して繰り出すことが可能な繰出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、球体を1つずつ繰り出す繰出装置が提供される。
この繰出装置は、前記球体の繰り出し方向の反対側で互いの方向に付勢されて前記球体を狭持する弾性を有する一対の挟持部と、前記繰り出し方向側が広がるように前記挟持部を前記繰り出し方向に移動させる移動機構と、を有する。
【0007】
このような繰出装置によれば、弾性を有する一対の挟持部が、球体の繰り出し方向の反対側で互いの方向に付勢されて球体を狭持し、移動機構が、繰り出し方向側が広がるように挟持部を繰り出し方向に移動させる。
【発明の効果】
【0008】
上記繰出装置では、球体を安定して繰り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
まず、実施の形態の繰出装置の構成について以下の図面を参照して説明する。
図1は繰出装置の前方斜視図、図2は繰出装置の後方斜視図、図3は繰出装置の上面図、図4は繰出装置の側面図である。
【0010】
繰出装置10は、球体Xを端部で狭持する板ばね11と、繰り出された球体Xが通るレール12と、板ばね11を移動させる移動部14と、レール12に外周面の一部が露出されたガイドローラ15bと、球体Xを板ばね11に装填するカセット16とを有する。
【0011】
まず、板ばね11は、U字状に湾曲した一対の部材であって、一方の端部で球体Xを狭持し、他方の端部は移動部14のシャフト14hに接続されている。板ばね11は、後述する移動部14により、板ばね11の他方の端部が前方又は後方に移動する。なお、後方とは、図において球体Xに対してレール12の反対側の方向を表す。一方、前方とは、レール12側を表す。なお、板ばね11は、例えば、厚さが0.5mm〜1mm程度に薄く平らにした金属の板金等の弾性を有する部材で構成されている。
【0012】
また、板ばね11の一方の端部はガイドピン13aにより所定の範囲で移動可能に固定されている。ガイドピン13bはガイドピン13aとともに板ばね11を挟むように配置されている。ガイドピン13cは板ばね11の湾曲の内側付近に配置されている。さらに、板ばね11の他方の端部側に、ガイドピン13c,13d,13eが板ばね11に対して互い違いに配置されている。
【0013】
このようにガイドピン13a〜13eが配置された板ばね11は駆動した移動部14により移動する。この時、他方の端部側はガイドピン13c,13d,13eをガイドとして移動部14に応じて移動する。また、一方の端部側はガイドピン13aにより所定の範囲で、他方の端部と逆方向に移動する。なお、板ばね11の一方の端部の移動方向はガイドピン13aとともにガイドピン13bにより制限される。板ばね11の詳細な構成については後述する。
【0014】
移動部14は、まず、対向配置された回転軸14a,14bと、回転軸14a,14bの対向するそれぞれの端部に掛けられたベルト14cと、を有する。また、回転軸14bの他方の端部に掛けられたベルト14dと、ベルト14dが掛けられた回転軸14eと、回転軸14eを回転させるモータ14fと、を有する。さらに、リニアガイド14gと、リニアガイド14gに沿って移動自在に設置された係止部14iと、係止部14iに係合し、板ばね11の他方の端部とそれぞれ接続されたシャフト14hと、を有する。なお、シャフト14hとベルト14cとは係止部(図示を省略)により係合されている。このような移動部14では、例えば、オープンループ制御により駆動するモータ14fに応じた回転軸14eの回転がベルト14dを介して回転軸14bに伝達し、回転軸14bの回転はベルト14cを介して回転軸14aに伝達する。ベルト14cの回転に伴って、ベルト14cに係合したシャフト14hがリニアガイド14gに沿って移動する。この時、シャフト14hとともに板ばね11も移動する。
【0015】
ガイドローラ15bは、レール12に外周面の一部を露出して、回転軸15cに回転自在に軸支されている。なお、回転軸15cは側板15aにより両側から支持されている。また、ガイドローラ15b及び弾性部15dは側板15aにより側部が囲われている。ガイドローラ15bの詳細な構成については後述する。
【0016】
カセット16は内部に複数の球体Xを鉛直方向に積載して充填されている。カセット16はレール12に対して下側から垂直に接続する。また、レール12に接続したカセット16の底部に配置した弾性部(図示を省略)等によって球体Xを下側からレール12側に押圧して、レール12の板ばね11の一方の端部に球体Xを装填する。
【0017】
以下、さらに板ばね11及びガイドローラ15bの詳細についてそれぞれ説明する。
まず、板ばね11について説明する。
図5は、繰出装置の板ばねの上面拡大図である。なお、図5(A)は板ばね11で狭持された球体X付近の拡大図、図5(B)は図5(A)の一点鎖線A−A’における断面図である。
【0018】
板ばね11は、ガイドピン13aに嵌められた枠部材11aが端部側に一体的に形成されている。このため、板ばね11は、枠部材11aに嵌められたガイドピン13aによって移動範囲が制限される。また、板ばね11の先端縁部に、図5(A)に示すように、後方爪部11dが、球体Xが挟持される挟持領域側に湾曲し、先端が挟持領域の外側を向いて形成されている。また、前方爪部11bが、板ばね11の後方爪部11dの略対向する位置に、先端が挟持領域側を向いて形成されている。さらに、板ばね11の端部の上下縁部には、図5(B)に示すように、上方爪部11c及び下方爪部11eが、先端が挟持領域側を向いてそれぞれ形成されている。なお、各爪部は弾性を有する弾性部材により構成される。例えば、板金で構成された板ばね11に同様に板金で一体的に各爪部を形成するようにしても構わない。
【0019】
このように板ばね11の端部、前方爪部11b、後方爪部11d、上方爪部11c及び下方爪部11eを有する一対の挟持部11fで囲まれた挟持領域に、下方のカセット16から供給される球体Xが下方爪部11eを容易に跳ね除けて装填される。装填された球体Xは前後上下が囲まれるように、挟持部11fに安定して狭持されるようになる。また、挟持部11fは位置がずれても弾性により元の位置に戻るため、挟持部11fに挟持された球体Xは常に所定の位置で保持される。
【0020】
次に、板ばね11による繰り出し機構について説明する。
図6は球体が装填された繰出装置の上面図、図7は球体が装填された繰出装置の前方斜視図、図8及び図9は球体を繰り出す繰出装置の上面図、図10は球体を繰り出す繰出装置の上面拡大図、図11は球体を繰り出した繰出装置の上面図、図12は球体を繰り出した繰出装置の前方斜視図である。
【0021】
板ばね11は、カセット16から挟持領域に装填された球体Xを狭持する挟持部11fと、ガイドピン13aに嵌められた枠部材11aと、を有し、U字状に湾曲して、ガイドピン13d,13eに支持されて、他方の端部が後方のシャフト14hに接続されている。U字状に湾曲した板ばね11は、自身の弾性力により、互いの方向に付勢された挟持部11fで球体Xを挟持する。なお、挟持部11fに対する付勢は、特に、後方爪部11d側で大きくなる。また、挟持領域の下方に配置されているカセット16から挟持領域に向かって球体Xが装填される際に、球体Xは挟持領域に対して多少ずれて装填されても弾性を有する挟持部11fに確実に捕捉される。また、捕捉された球体Xは挟持領域の所定の位置で狭持部11fに安定して挟持される。なお、枠部材11aの外側にはガイドピン13bが配置されており、枠部材11aの枠はガイドピン13a,13bに挟まれている(図6及び図7)。
【0022】
次いで、モータ14fを駆動させて回転軸14eを回転させる。回転軸14eの回転を、ベルト14dを介して回転軸14bに伝達する。回転軸14bの回転を、ベルト14cを介して回転軸14aに伝達する。そして、ベルト14cの回転によりシャフト14hがリニアガイド14gに沿って後方(矢印C方向)に移動する。シャフト14hに接続された板ばね11もガイドピン13c,13d,13eに沿って後方に移動するとともに、球体Xは狭持部11fに狭持された状態で前方に移動する。
【0023】
この時、板ばね11の弾性力により、挟持部11fは図8中のB点を支点として湾曲し、球体Xは湾曲した後方爪部11dにより弾性力(矢印E方向)を受け始める。また、枠部材11aは繰り出し方向に対してそれぞれ外側に傾斜して、ガイドピン13a,13bにガイドされながら互いの距離を広げて外側(矢印D)方向に移動する(図8)。
【0024】
次いで、シャフト14hをさらに後方(矢印C)方向に移動すると、挟持部11fに挟持された球体Xはさらに前方に移動する。そして、ガイドピン13aにより枠部材11aの動作に制限がかかると、枠部材11a間の距離の広がりが最大となり、球体Xの移動が制止される(図9)。
【0025】
この時、挟持部11fの湾曲も最大となり、湾曲した後方爪部11dから球体Xにより大きな弾性力(矢印E方向)が加わる(図10)。
次いで、球体Xは、狭持部11fにより挟持された状態で前方に移動させられるとともに、後方爪部11dによる弾性力を受けることにより、前方に押圧されて、ガイドローラ15bにガイドされてレール12に繰り出していく(図11及び図12)。
【0026】
このように、板ばね11の端部に弾性を有する部材により構成される挟持部11fに球体Xを挟持させて前方に移動させて繰り出す。この時、球体Xは挟持部11fにより安定して挟持され、球体Xを所定の位置から繰り出すことが可能となり、さらに、挟持部11fからの弾性力の分の繰り出し力が増加する。
【0027】
次に、ガイドローラ15bについて説明する。
図13は繰出装置のガイドローラ15bの前方斜視図、図14は繰出装置の側面断面図である。なお、図14は、図3の一点鎖線A−A’による断面図である。
【0028】
ガイドローラ15bは、回転軸15cに回転自在に軸支されて、レール12に外周面の一部を露出している。板ばね11の移動によって繰り出された球体Xはガイドローラ15bにガイドされてレール12に導かれる。なお、回転軸15cは側板15aにより両側から支持されている。また、ガイドローラ15bはレール12の球体Xの通路面に対して下方にばね等の弾性部15dが配置されており(図13では図示を省略)、ガイドローラ15bは弾性部15dの弾性力によりレール12に対して接近・退避する。なお、ガイドローラ15b及び弾性部15dは側板15aにより側部が囲われている。
【0029】
次に、球体Xが繰り出される際のガイドローラ15bの動作について説明する。
図15は球体を繰り出す繰出装置のガイドローラの動作を説明するための図である。なお、図15では、ガイドローラ15bについて記載しており、移動部14等の記載を省略している。
【0030】
カセット16から挟持領域に装填された球体Xは、球体Xの下部が破線Yに位置する。球体Xは板ばね11により移動され、ガイドローラ15bにガイドされてレール12に繰り出される。
【0031】
一方、カセット16又は板ばね11の挟持部11fの不具合等により、カセット16から装填された球体Xが破線Yに達せず、破線Y’に位置する場合がある(図15(A))。この場合には、繰り出される球体Xから下方への反発力を受けたガイドローラ15bは弾性部15dによりレール12の通路面に退避する。そして、球体Xはガイドローラ15bにガイドされてレール12に繰り出されるようになる(図15(B))。なお、球体Xの繰り出し後には、ガイドローラ15bは弾性部15dの弾性力により元の位置に戻り、次に繰り出される球体Xに備える。
【0032】
上記のように、本実施の形態の繰出装置10では、弾性を有する板ばね11の挟持部11fに球体Xを挟持させた状態で、球体Xを前方に移動させて繰り出す。この時、球体Xは挟持部11fにより安定して挟持されて、球体Xを所定の位置から繰り出すことが可能となる。さらに、挟持部11fからの弾性力の分の繰り出し力が増加する。
【0033】
また、本実施の形態の繰出装置10では、レール12の球体Xの通路面に外周面の一部を露出したガイドローラ15bの下方に弾性部15dを配置させた。このため、カセット16から装填された球体Xが所定位置よりも低い場合でも、ガイドローラ15bは通路面から退避するため、弾性部15dにより球体Xをレール12に確実にガイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】繰出装置の前方斜視図である。
【図2】繰出装置の後方斜視図である。
【図3】繰出装置の上面図である。
【図4】繰出装置の側面図である。
【図5】繰出装置の板ばねの上面拡大図である。
【図6】球体が装填された繰出装置の上面図である。
【図7】球体が装填された繰出装置の前方斜視図である。
【図8】球体を繰り出す繰出装置の上面図(その1)である。
【図9】球体を繰り出す繰出装置の上面図(その2)である。
【図10】球体を繰り出す繰出装置の上面拡大図である。
【図11】球体を繰り出した繰出装置の上面図である。
【図12】球体を繰り出した繰出装置の前方斜視図である。
【図13】繰出装置のガイドローラの前方斜視図である。
【図14】繰出装置の側面断面図である。
【図15】球体を繰り出す繰出装置のガイドローラの動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0035】
10 繰出装置
11 板ばね
14i 係止部
11b 前方爪部
11c 上方爪部
11d 後方爪部
11e 下方爪部
11f 挟持部
12 レール
13a,13b,13c,13d,13e ガイドピン
14 移動部
14a,14b,14e,15c 回転軸
14c,14d ベルト
14f モータ
14g リニアガイド
14h シャフト
15a 側板
15b ガイドローラ
15d 弾性部
16 カセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体を1つずつ繰り出す繰出装置において、
前記球体の繰り出し方向の反対側で互いの方向に付勢されて前記球体を狭持する弾性を有する一対の挟持部と、
前記繰り出し方向側が広がるように前記挟持部を前記繰り出し方向に移動させる移動機構と、
を有することを特徴とする繰出装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記挟持部の前記繰り出し方向側に接続され、前記繰り出し方向に対して外側に傾斜しており、前記挟持部を外側に向けてガイドするガイド部材を有することを特徴とする請求項1記載の繰出装置。
【請求項3】
前記挟持部の前記繰り出し方向の前記反対側は、挟持される球体側に競り出していることを特徴とする請求項1記載の繰出装置。
【請求項4】
前記挟持部の前記繰り出し方向に対して鉛直方向の対向する縁部は、挟持された前記球体側に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の繰出装置。
【請求項5】
前記挟持部に挟持された前記球体に対して前記繰り出し方向に延伸して配置され、前記球体が繰り出される通路部をさらに有することを特徴とする請求項1記載の繰出装置。
【請求項6】
前記通路部の通路面に外周面の一部を露出した、回動可能なローラをさらに有することを特徴とする請求項5記載の繰出装置。
【請求項7】
前記ローラは、前記球体の繰り出し方向に対して鉛直方向に移動可能に配置されていることを特徴とする請求項6記載の繰出装置。
【請求項8】
前記ローラの前記球体の繰り出し方向に対して鉛直下側に弾性部を有することを特徴とする請求項7記載の繰出装置。
【請求項9】
前記球体を挟持する一対の前記挟持部の間に対して鉛直に球体を装填する装填部をさらに有することを特徴とする請求項1記載の繰出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−148580(P2010−148580A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327856(P2008−327856)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】