説明

缶用孔開け具

【課題】工場等で使用する缶の缶蓋に容易に且つ簡易に孔を開けることができる缶用孔開け具を提供する。
【解決手段】本発明の缶用孔開け具1は、缶胴13の外側面にあてる支持部7と、缶蓋3の周縁の内側で缶蓋3に先端9aが押し込まれる切羽9と、支持部7と切羽9との基端部9bにおいて支持部7と切羽9とを間隔を開けて連結した連結部11とを備え、缶胴13
の外側面に支持部7をあてながら切羽9の先端9aを缶蓋3の周縁よりも内側に配置して連結部11を押し下げることにより、切羽9の支持部側面で孔Sの開口縁を押し潰しつつ缶蓋3に孔Sを開ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一斗缶(約18リットル缶)や半斗缶(約9リットル缶)等の缶に孔を開ける缶用孔開け具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲料製造や食品製造において添加液(例えば、練乳、シロップ等)を用いる場合に、これらの添加液等は缶に詰められ、工場等に搬入されている。これらの缶には缶蓋に注ぎ口が設けられているが、注ぎ口だけでは、注いでいるときに缶内の空気を補うために注ぎ口から空気が流入して注ぎ液が踊ってしまうため、別に空気孔を開ける必要がある。また、缶蓋には注ぎ口を設けていないものもある。したがって、缶から液を注ぎ出すときには缶蓋に孔を開けている。
【0003】
特許文献1には、その図8に缶蓋のコーナ部に屈曲した形状の切羽を缶蓋の上から押し込んで缶蓋に孔を開けることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−359278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の従来技術では、缶蓋に切羽のみを押しあてて孔を開けるので、切羽が不安定なために力が入り難くなると共に、力を入れ過ぎると切羽が勢いよく缶の中に入って缶内に落ちてしまうという問題がある。
【0006】
更に、特許文献1の図3に開示のように、缶蓋にプルタブを設けた構成では、缶の製造工程が複雑になるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、工場等で使用する缶の缶蓋に容易に且つ簡易に孔を開けることができる缶用孔開け具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、缶胴の外側面にあてる支持部と、缶蓋の周縁の内側で缶蓋に先端が押し込まれる切羽と、支持部と切羽との基端部において支持部と切羽とを間隔を開けて連結した連結部とを備え、缶胴の外側面に支持部をあてながら切羽の先端を缶蓋の周縁よりも内側に配置して連結部を押し下げることにより、切羽の支持部側面で孔の開口縁を押し潰しつつ缶蓋に孔を開けることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、切羽は先端を頂点とし基端を底辺とする正面視三角形状を成しており、頂点から基端に向かう両側辺に沿って刃を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載の発明において、支持部は缶胴の外周側に突設した屈曲形状を成し、切羽は缶胴の外周側に突設した屈曲形状を成し、缶胴はコーナ部を有し、支持部は缶胴のコーナ部の外側面にあて、缶蓋のコーナ部に孔を開けることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載の発明において、切羽は屈曲した左右の一方側部と他方側部とに跨って設けた案内板を有し、案内板は切羽の両側辺間に平面を形成していることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項3に記載の発明において、切羽は先端が支持部から離れる方向に屈曲していることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載された発明は、請求項4に記載の発明において、連結部には、屈曲を成す支持部の一方側と他方側との各々に対応する位置に把持用グリップが形成してあることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載された発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発明において、支持部は脱着自在に連結部に取付けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、缶蓋の周縁の内側に切羽を配置して押し下げると、支持部が缶胴の外側面に沿って移動すると共に、切羽と支持部とは缶胴の側壁を挟むようにして下方に移動して缶蓋に孔を開ける。
【0016】
支持部は缶胴の外側面に沿って移動するので、支持部と共に移動する切羽を安定に押し下げることができ、缶蓋に容易に孔が形成できる。
【0017】
切羽と支持部とは基端部が連結部により連結されているので、力を入れ過ぎて押し下げすぎた場合には連結部が缶胴の側壁頂部に当接して切羽の移動を停止するので、切羽が缶内に落ち込むことがない。
【0018】
孔開け後に連結部を引き上げれば、支持部と共に切羽を缶蓋から容易に引き抜くことができる。
【0019】
缶蓋に形成した孔の切口は、切羽の裏面(支持部側面)が缶蓋の内周縁側の切口を押圧して切口を押し潰すので、切口が鋭利になるのを防止できる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、切羽は先端が尖っており、押し込みにより開口を次第に広げるので、小さな力で缶蓋に容易に孔を開けることができる。
【0021】
切羽は先端を頂点とする平面視三角形を成しているので、切羽の押し込み量を調整することにより、孔の大きさを容易に調整できる。
【0022】
請求項3に記載された発明によれば、請求項2に記載された発明と同様の効果が得られると共に、支持部を缶胴の強度が高いコーナ部の外側面にあてて連結部を押し下げるので、缶胴の変形を防止できると共に、切羽及び支持部を屈曲して形成することにより、缶用孔開け具の強度も高くできる。
【0023】
請求項4に記載された発明によれば、請求項3に記載された発明と同様の効果が得られると共に、缶用孔開け具を押し下げると、案内板が缶蓋の切片に当接して缶内に押し曲げるので、孔の切口が広くできると共に切口が鋭利にならない。
【0024】
請求項5に記載された発明によれば、請求項3に記載された発明と同様の効果が得られると共に、缶蓋に孔を開けるときに切羽が缶蓋の上面に対して斜めに入り込むので、切り込みを形成しやすく、小さい力で容易に孔開けができる。
【0025】
請求項6に記載された発明によれば、請求項4に記載された発明と同様の効果が得られると共に、連結部には屈曲した左右両側部にグリップを設けているので、缶のコーナ部において両手で左右のグリップを握って体重をかけた押し込みができる。
【0026】
請求項7に記載された発明によれば、請求項1〜6のいずれか一項に記載された発明と同様の効果が得られると共に、切羽が缶内の内容物に触れて汚れた場合に支持部を外し連結部又はグリップを持って切羽を洗浄でき、連結部又はグリップを持って洗浄できるので、切羽の洗浄が容易である。また、支持部を外すことにより、切羽の裏側(支持部側面)が洗浄し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態にかかる缶用孔開け具の使用状態を示す斜視図であり、図2は図1に示す缶用孔開け具による孔開け操作前の状態を示す斜視図であり、図3は本発明の実施の形態にかかる缶用孔開け具を正面から見た斜視図であり、図4は図3に示す缶用孔開け具の側面図であり、図5は図3に示す缶用孔開け具の縦断面図であり、図6は缶用孔開け具により開けた孔の斜視図であり、図7は図6に示すA―A断面図である。
【0028】
本発明の実施の形態に係る缶用孔開け具1は、飲料の製造工場で飲料への添加物(練乳)が入った一斗(18リットル)缶Kの缶蓋に孔を開けるものである。この一斗缶Kは直方体を成すブリキ製の缶であり、平面視四角形の缶蓋(天面)3にはその一つのコーナ付近に注ぎ口4が設けてあり、注ぎ口4は開封栓5により閉じてある。
【0029】
缶用孔開け具1は、支持部7と、切羽9と、支持部7と切羽9との基端部を連結する連結部11とから構成されている。
【0030】
支持部7は、缶胴13の外側面にあてるものであり、先端側(下方側)ほど幅が狭くなっている。また、支持部7は横断面が缶胴13の外周側に突設した屈曲形状を成しており、本実施の形態では缶Kのコーナ部に対応して略直角に屈曲している。
【0031】
切羽9は、缶Kの缶蓋3におけるコーナ部に位置して、缶蓋3の上から缶Kの内部に押し込まれて缶蓋3に孔Sを開けるものである。切羽9は、缶胴13のコーナ部に沿って外周側に突設した屈曲形状を成し且つ支持部7との間に間隔を開けて支持部7と略平行に設けてあり、支持部7と切羽9との間に缶胴13の側壁Mが挿入されるようになっている。
【0032】
切羽9は先端(下端)9aを頂点とし基端9bを底辺とする正面視三角形状を成しており、頂点9aから基端(底辺)9bに向かう左右両側辺9c、9cに沿って刃が設けてある。切羽9の先端9aは、支持部7から離れる方向に屈曲しており、押し下げられたときに先端9aが斜め上方から缶蓋3に切り込む。
【0033】
切羽9は屈曲した左右の一方側部9eと他方側部9fとに跨って設けた案内板15が固定されている。案内板15は平面視略三角形状を成し、切羽9の両側辺9c、9cよりも内側に平面を形成している。尚、本実施の形態では、案内板15は切羽9に溶接により固定されている。
【0034】
連結部11は、支持部7と切羽9との各基端部(上端部)に取付けて、支持部7と切羽9とを間隔を開けて連結している。連結部11には、切羽9が固定されているが、支持部7はねじ17により脱着自在に取付けてある。尚、連結部11も支持部7の屈曲に沿って屈曲して形成されている。
【0035】
連結部11の上部には、屈曲を成す一方側部11aと他方側部11bとの各々に対応する位置に各々把持用グリップ19a、19bが設けられている。
【0036】
次に、本実施の形態による缶用孔開け具1の使用方法、及び作用効果を説明する。本実施の形態の缶用孔開け具1で缶Kに孔Sを開ける場合には、図2に示すように、缶蓋3のコーナ部において、支持部7と切羽9とで缶蓋3の周縁を挟むようにして、支持部7を缶胴13の外側面にあて切羽9の先端9aを缶蓋3の上に配置する。そして、把持用グリップ19a、19bを握って、上方から体重をかけていっきに押し下げる。
【0037】
これにより、切羽9の先端9aが缶蓋3を突き破って缶K内に入り込み、支持部7が缶胴13の外側面に沿って移動し、切羽9と支持部7とは缶胴13の側壁Mを挟むようにして下方に移動して缶蓋3のコーナに略三角形状の孔S(図6参照)を開ける。
【0038】
支持部7は缶胴13の外側面(側壁Mの外面)に沿って下方に移動して、切羽9の移動を案内するので、支持部7と共に移動する切羽9を安定に押し下げることができ、缶蓋3に容易に孔Sを形成できる。
【0039】
切羽9は先端9aが尖っており、押し込みにより孔Sの開口を次第に広げるので、小さな力で缶蓋3に切り込むことができる。
【0040】
切羽9は先端9aを頂点とする平面視三角形を成しているので、切羽9の押し込み量を調整することにより、孔Sの大きさを容易に調整できる。
【0041】
切羽9及び支持部7は屈曲して形成してあるので、これらの強度を高くできる。
【0042】
切羽9と支持部7とは各々基端部が連結部11により連結されており、連結部11は缶胴13の側壁Mを跨いでいるので、力を入れ過ぎて缶用孔開け具1を押し下げすぎた場合でも、連結部11が缶の側壁Mの頂部に当接して切羽9の移動を停止するので、切羽9が缶K内に落ち込むことがない。
【0043】
支持部7を缶Kの強度が高いコーナ部の外側面にあてて連結部11を押し下げるので、缶Kの変形を防止できる。
【0044】
孔開け後に連結部11を引き上げれば、支持部7と共に切羽9を缶蓋3から容易に引き抜くことができる。
【0045】
図6及び図7に示すように、缶蓋3に形成した孔Sの切口は、切羽9の裏面(支持部7側面)が缶蓋3の内周縁部の切口S1、S2に当接して切口S1、S2を下方に向けて押し潰すので、切口Sにおける缶蓋周縁部S1、S2が鋭利になるのを防止する。更に、案内板15が缶蓋3の切片21に当接しつつ缶K内に向けて押し曲げるので、孔Sを広くできると共に切口S3も押し曲げてあるから、孔Sの開口周囲全体が鋭利にならないで済む。
【0046】
連結部11には屈曲した左右両側部に把持用グリップ19a、19bを設けているので、缶Kのコーナ部において両手で左右のグリップ19a、19bを握って体重をかけた押し込みができる。
【0047】
切羽9が缶K内の内容物に触れて汚れた場合には連結部11のねじ17を緩めて、支持部7を外し把持用グリップ19a、19bを持って洗浄できるので、切羽9の洗浄が容易である。また、支持部7を外すことにより、切羽9の裏側(支持部側面)が洗浄し易くなる。
【0048】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0049】
例えば、缶Kは直方体形状の一斗缶に限らず、円柱形状の缶であってもよいし、一斗缶や半斗缶に限るものでなく、缶であればその容量は制限されない。
【0050】
連結部11に対して、支持部7と切羽9との両方をねじにより脱着自在にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態にかかる缶用孔開け具の使用状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す缶用孔開け具による孔開け操作前の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる缶用孔開け具を正面から見た斜視図である。
【図4】図3に示す缶用孔開け具の側面図である。
【図5】図3に示す缶用孔開け具の縦断面図である。
【図6】缶用孔開け具により開けた孔の斜視図である。
【図7】図6に示すA―A断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 缶用孔開け具
3 缶蓋
7 支持部
9 切羽
9a 先端(下端)
9c 両側辺
11 連結部
13 缶胴
15 案内板
19a、19b 把持用グリップ
K 缶
M 缶の側壁
S 孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴の外側面にあてる支持部と、缶蓋の周縁の内側で缶蓋に先端が押し込まれる切羽と、支持部と切羽との基端部において支持部と切羽とを間隔を開けて連結した連結部とを備え、缶胴の外側面に支持部をあてながら切羽の先端を缶蓋の周縁よりも内側に配置して連結部を押し下げることにより、切羽の支持部側面で孔の開口縁を押し潰しつつ缶蓋に孔を開けることを特徴とする缶用孔開け具。
【請求項2】
切羽は先端を頂点とし基端を底辺とする正面視三角形状を成しており、頂点から基端に向かう両側辺に沿って刃を有することを特徴とする請求項1に記載の缶用孔開け具。
【請求項3】
支持部は缶胴の外周側に突設した屈曲形状を成し、切羽は缶胴の外周側に突設した屈曲形状を成し、缶胴はコーナ部を有し、支持部は缶胴のコーナ部の外側面にあて、缶蓋のコーナ部に孔を開けることを特徴とする請求項2に記載の缶用孔開け具。
【請求項4】
切羽は屈曲した左右の一方側部と他方側部とに跨って設けた案内板を有し、案内板は切羽の両側辺間に平面を形成していることを特徴とする請求項3に記載の缶用孔開け具。
【請求項5】
切羽は先端が支持部から離れる方向に屈曲していることを特徴とする請求項3に記載の缶用孔開け具。
【請求項6】
連結部には、屈曲を成す支持部の一方側と他方側との各々に対応する位置に把持用グリップが形成してあることを特徴とする請求項4に記載の缶用孔開け具。
【請求項7】
支持部は脱着自在に連結部に取付けてあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の缶用孔開け具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−302306(P2007−302306A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133403(P2006−133403)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(596126465)アサヒ飲料株式会社 (84)
【Fターム(参考)】