説明

置換めっき液中の鉄イオンの除去方法およびその設備

【課題】鉄を含有する置換めっき液から鉄を除去して置換めっき液を再生する手段とその設備を提供する。
【解決手段】本発明の置換めっき液中の鉄イオン除去方法は、鉄イオンを0.1g/l以上含有する置換めっき液に酸素を通気し、pH2.5以上に保つことで、鉄イオンを効率的に沈殿除去する。また本発明の置換めっき液中の鉄イオン除去設備は、置換めっき液主槽またはその予備槽に、酸素または酸素含有気体通気装置と、鉄水酸化物を含む沈殿物を除去する沈殿物除去装置、置換めっき液pH調整装置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の置換めっきにおいて、鉄を含有する置換めっき液から鉄イオンを除去して置換めっき液を再生する手段とその設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐食性、導電性、意匠性、その他の性能確保を目的として、多くのめっきが提供され、とりわけ、水溶液から金属を析出させる電気めっき、無電解めっき、置換めっきは、その取り扱いの容易さから、自動車、建材、家電用材料向けに広く製造されている。
【0003】
一方、環境問題への懸念から、廃液処理に対する規制は厳しさを増しており、容易かつ低コストで処理する技術への要望は強く、また、めっき液を廃棄処分することなくリサイクルしながら長期的に使用できるようにするニーズは高い。
鉄鋼業においては、鋼材への金属めっきが主流であることから、めっき液へ不可避的に混入する鉄イオンによるめっき液の汚染は、狙い通りの金属析出を妨害したり、その効率を低下せしめるため、めっき液から鉄イオンを除去することは重要な課題である。
【0004】
特に、鋼材の鉄とめっき液中の金属との電位差で電子交換を起こして、金属を置換析出させる置換めっきは、その原理上、めっき液への鉄の混入は避けられず、単に消耗した金属イオンの補充だけでは、置換反応によってめっき液中に溶存した鉄イオンが蓄積される一方であり、めっき液の汚染が続き、めっき液は廃棄処分することが必要となる。
【0005】
この問題に対し、重金属などを除去するイオン交換樹脂による除去を行うことは一般的であるが、コストが大きい上、鉄イオンに加え他の重金属イオンも同時に除去してしまうため、めっき液中のめっき主成分金属をも除去してしまう。また特許文献1、特許文献2では、微生物を使用しためっき液中の鉄の除去法を提示しているが、微生物を使用する環境を担保しなければならないという制約が生じる。
【0006】
特許文献3では、固形廃水処理材を使用することで、めっき液中の鉄の除去法を提案しているが、固形処理材は酸を中和する能力を有しているため、廃水処理といった水溶液の最終処理には適しているが、リサイクル使用に向けためっき液の再生処理やめっき製造の操業中での除去を考慮すると、極端なpH変動は好ましくない。特許文献4では鉄および酸素を励起させる波長の光を照射せしめて、めっき液中の鉄イオンを3価の鉄へ酸化させ、沈殿除去することを提案しているが、光励起されて生じた原子状態の酸素は、強い酸化作用を有するため、装置自体へのダメージを与えてしまうとともに、工業的な多量のめっき溶液中に存在する鉄イオンに確実に紫外光といった短波長の光を照射することは困難である。
【0007】
特許文献5では酸素および触媒として白金族金属を使用して、電気めっき液中に蓄積した2価の鉄の酸化を進めて、3価の鉄として分離する手段を提示している。電気めっき液は当該公報にもある通り、光沢性や平滑性などを得る目的で各種の有機添加剤が使用され、通常の酸素の通気では添加剤が分解されてしまう課題があり、白金族を触媒として利用することで添加剤の損耗を最小限にすることができる。しかし白金族金属は極めて高価であり、コスト的に課題がある。また、そもそも、金属間の電位差を利用して置換析出させる置換めっきにおいては有機添加剤は置換の妨害であるだけでなく、極めて貴な白金族が万一置換めっき液中に溶解した場合には、白金族が置換析出する危険性を生じ、貴金属を置換めっき系に持ち込むことは好ましくない。
【0008】
特許文献6では、酸素またはオゾンのバブリングで2価の鉄を酸化して3価の鉄として除去する手段を提案しているが、強い酸化剤のオゾンは有害であり、安全上の厳重な管理とそのためのコストを要求する。また特許文献6では、キレート樹脂を使用することから酸化されて生じた3価の鉄イオンを沈殿させずにイオン交換除去するものである。したがって沈殿などが生じるpH領域ではキレート樹脂が目づまりを起こして機能しなくなるため、pH範囲は該公報にあるように3価の鉄の沈殿が生じないような高い酸性水溶液中、すなわち低いpHに限定される。
【0009】
ここで高い酸性水溶液について考えてみる。Fe(OH)の溶解度積Ksp=3.16×10−38(化学便覧基礎編 改訂3版、ページII−179、丸善、1984)より、電気めっき液中に存在する2価の鉄イオンが0.1g/lがすべて3価の鉄イオンに酸化されたとすると、沈殿しないpH領域は2.4以下であり、このような低いpH領域を保つことで除去できるものである。一方置換めっきにおいては、当該範囲の低いpH領域を維持することは浴調整を必要とするため、酸素バブリングとキレート樹脂による3価の鉄の除去は極めて高いコストを要求することになる。また、一般的にキレート樹脂はイオン交換樹脂と同様多くの重金属イオンを配位結合する能力を有し、目的とする3価の鉄の除去だけでなく、主たる重金属イオンをも除去してしまうなどの不具合がある。また、必須のキレート樹脂の添加によるコスト増や残存する酸素やオゾンによりキレート樹脂そのものが分解してめっき液を汚染する課題も発生する。
【特許文献1】特開平8−164399号公報
【特許文献2】特開平8−173990号公報
【特許文献3】特開2004−174327号公報
【特許文献4】特開平2−66199号公報
【特許文献5】特開平3−232999号公報
【特許文献6】特開平3−24298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題に鑑み、置換めっき液中に蓄積された鉄イオンを低コストで容易に除去できる方法とその設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、まず鉄の化学的性質に着目した。置換めっき液中に溶存する鉄イオンは2価イオンであるが、これは酸化される能力を有しているところに特徴がある。すなわち鉄は何らかの酸化剤の存在によって3価イオンになりうる。3価の鉄イオンは、水溶液中では不安定であり、計算上は前述のようにpH2.4を超えると水酸化物の形態で沈殿する。
【0012】
本発明者らは、上記の3価の鉄の沈殿する性質を利用して、鉄を酸化し、沈殿除去することを検討した。もっとも容易なのは酸素を利用した酸化であるが、2価の鉄が酸化されるときの反応 Fe2+→Fe3++eの標準電極電位+0.771Vは、酸素の還元反応 1/2O+HO+2e→2OHの標準電極電位+0.401Vより貴に位置しているため、単純に酸素による酸化が進まない。2価の鉄イオンを酸化する手段として、オゾンといった強い酸化剤や酸化微生物、光照射を使用し、さらにイオン交換、キレート樹脂等を組み合わせて利用する理由がここにある。しかしながらオゾンはそれ自身が毒性であり、微生物においても、厳格な設備管理、安全管理を要求するためコストは大きくなる。また、3価の鉄イオンを除去する手段として、イオン交換樹脂やキレート樹脂などの高価な金属イオン除去設備はコストも大きくなり、樹脂の再生コストや廃棄処分の際の問題も生じる。
【0013】
設備管理上、その手段は簡便かつ安全なものであることが望ましく、本発明者らは上記の酸素を使用した鉄の除去方法について再度検討を重ねた。標準電極電位の大小は、平衡がどちらに傾くかを示しているものであり、酸素を酸化剤とした2価の鉄の酸化反応は発生しないのではなく、酸化反応が進んでも、3価のまま永続的に安定して存在するのではなく、無限時間のうちに、2価の鉄に戻ることを意味しているものである。したがって、3価になった鉄イオンを即座に水溶液系外から排出すれば、反応を進める可能性があるのではないかと考えた。この推察に基づき、3価の鉄が沈殿しうるpH領域になるようにめっき液を調整し酸素を吹き込んだところ、酸素の供給とともにめっき液中の2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに酸化され、水酸化物として黄色の沈殿を発生することを見出した。
【0014】
しかし反応が進むと溶液は酸性化し、あるpHまで酸性化した後、鉄の沈殿反応が進まなくなった。これは下式(1)の反応が進んで溶液が酸性化し、酸化して発生した3価の鉄イオンが沈殿することなく溶液系内にとどまることができることで、平衡上有利な2価の鉄イオンに戻ることが可能になり、結果的に下式(1)の反応が進まなかったものと推察した。
Fe2++1/4O+5/2HO→Fe(OH)+2H・・・・・(1)
【0015】
そこで、生成した3価の鉄イオンを沈殿させるために、溶液を3価の鉄イオンの沈殿領域であるpH2.5以上に維持したところ、3価の鉄イオンの沈殿除去が進むことを見出した。図1に酸素の吹き込み時間に対する2価の鉄イオンの減少量、3価鉄イオンの沈殿量、pHの変化を示す。酸素の吹き込みとともに、pHは低下し、2価の鉄イオンが減少して、3価鉄イオンの沈殿量が増加した。ところが、pH2.5を下回ると、2価鉄イオンの減少と3価鉄イオンの沈殿は停滞した。24時間後、pHを4に再調整したところ、再び2価鉄イオンの減少と3価鉄イオンの沈殿が進行した。
【0016】
一般的に電気めっきに用いる溶液は、例えば100A/dmなどのような高電流密度の電気印加時には電子を受け取る金属イオンの電極表面への拡散が間に合わず、めっきやけといわれるめっきの焦げ現象(金属酸化物の生成)が生じるために、これを防ぐ目的として例えばpH1といった強い酸性溶液としてプロトンを多く存在させ、金属イオンの拡散が間に合わない場合に敢えて水素発生させる。逆に、プロトンが少ない弱酸から中性側(例えばpH3〜5)へのpHの調整は、めっきやけという品質劣化を招くために、電気めっき溶液への本発明の採用は難しい。
【0017】
しかし、金属イオンと鉄との自然な電子交換反応による置換めっきは、めっきやけは発生しないため、むしろ水素発生をさせないよう弱酸から中性付近のpH領域(例えばpH3〜5)を利用することがめっき効率上好ましく、鉄イオンを沈殿除去するpH域とうまく適合する。
【0018】
本発明は上記の知見に基づきなされたもので、本発明の要旨とするところは、
(1)鉄イオンを0.1g/l以上含有する置換めっき液を用いて、鋼材に鉄以外の金属を置換めっきするに際し、置換めっき液のpHを2.5以上とし、酸素または酸素含有気体を置換めっき液に通気することを特徴とする置換めっき液中の鉄イオン除去方法、
(2)置換めっき液に通気する酸素量がめっき液1mあたり0.01L/min以上でることを特徴とする前記1に記載の置換めっき液中の鉄イオン除去方法、
(3)置換めっきする金属の炭酸塩を置換めっき液に投入することを特徴とする前記1または前記2に記載の置換めっき液中の鉄イオン除去方法、
(4)鋼材の置換めっき設備において、置換めっき液主槽またはその予備槽に、酸素または酸素含有気体通気装置と、鉄水酸化物を含む沈殿物を除去する沈殿物除去装置、置換めっき液pH調整装置を有する置換めっき液中の鉄イオン除去設備、
である。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明は、置換めっき液中に蓄積した鉄イオンを酸素または酸素含有気体の通気という極めて容易な手段により低コストでかつ簡便に除去することを可能としたものであり、産業への貢献はきわめて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず本発明におけるめっき液であるが、鉄イオンが次々と溶解してくる置換めっきに対して最も効果が大きい。また図1より、3価の鉄イオンが沈殿しないとされるpHが2.4以下の領域とは異なるpHが2.5以上であることが必須であり、このpH領域にある置換めっきが最も効果が大きい。
【0021】
なお、置換めっきとは、鉄より貴な電位を有する金属イオンと鉄との電位差によって金属が析出し鉄が溶解する電気化学反応であり、電流を強制的に印加し、鉄との電子交換をさせる必要のない電気めっきとは異なるめっきであり、また、還元補助剤を加えることで、母材と溶液中の金属イオンとの電子交換を生じさせない無電解めっきとも異なる。
【0022】
置換めっき液の種類は問わず、鉄より貴な金属の置換めっきであればいずれでもよく、例えば銅やニッケルなどが相当する。また、置換めっきされる金属イオンの濃度は、本発明における鉄イオンの除去においてなんら影響を与えるものではなく、数mg/lから数十g/lなど、必要に応じた濃度の溶液を用いることができる。さらに、置換めっき液にめっきの平滑性や付着性を改善することを目的に、各種の添加剤を加えてもかまわない。また、置換めっきさせる金属イオンの対イオンとして、硫酸イオン、硝酸イオン、ハロゲン化物イオンなど、各種の対イオンを選択してもなんら影響がない。
【0023】
本発明の効果が大きく期待できるのは、置換めっき液に鉄イオンが0.1g/l以上含まれている場合である。0.1g/lを下回るような希薄な鉄イオン濃度であれば、鉄イオンによる置換めっき液の劣化は大して進まず、本発明を実施しなくても置換めっき液は良好な状態を保ち続けるため、本発明の除去効果は乏しい。上限は定めないが、水溶液中への2価の鉄イオンの溶解度の上限を考慮すると、20g/l以下が適当である。
【0024】
鉄の酸化に使用する酸素は、純酸素はもちろんのこと、空気などの酸素含有気体であればかまわない。また通気の方法は問わない。
【0025】
吹き込む酸素量は、めっき液1mあたり0.01L/minを下回ると反応が進みにくいため下限を0.01L/minとする。反応性の向上を考慮すると、めっき液1mあたりに1L/min以上が好ましく、鉄の酸化とその沈殿を極めて迅速に進めることができる。上限は定めないが、設備のスペースや設備コスト、気泡の発生等を考慮して、600L/minまでが好ましい。また、浴温も高い方が有利であり、40℃以上で反応性を高めることができる。図2は吹き込み酸素量と2価の鉄イオンの減少量の関係を示したものである。0.01L/min付近から鉄イオンの減少が顕著に進んだ。
【0026】
溶液のpHは2.5以上に保つことが必要である。pH2.5を下回ると、3価の鉄イオンが沈殿しにくいため、溶液中に生じた3価の鉄イオンは2価の鉄イオンに戻ってしまう。図3は、鉄イオンのpH−電位曲線図(Atlas of Electrochemical Equilibria in Aqueous Solutions、Marcel Pourbaix著、p313、NACE International 編、1996年)を示している。図3中の点線は、ある鉄濃度における沈殿発生の限界pHを示している。溶液中の鉄イオン濃度によって発生するFe(OH)の沈殿pHは変化するが、1mol/lの鉄イオン濃度ではpH1.8、0.01mol/lの鉄イオン濃度ではpH2.4である。したがって、pH1.5のような強い酸性領域では、3価の鉄イオンとして存在するため沈殿は発生しない。
【0027】
pH2.5以上に保つ手段は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどのアルカリ剤などが使用できるが、置換めっきする金属の炭酸塩、例えば銅の置換めっきの場合は炭酸銅、ニッケルの置換めっきの場合は炭酸ニッケルがもっとも好ましい。炭酸塩は酸性溶液下では、二酸化炭素が発生してめっき液外へ放散されるほか、金属イオンと水のみが供給されるため、他のアルカリ剤では発生する第三の成分、例えば水酸化物におけるカチオンやアンモニアにおけるアンモニウムイオンなどのめっき液への蓄積が無く、イオンバランスを崩すことなく、pH調整とイオン補給を同時に実施することができる。
【0028】
pH2.5以上を維持するように置換めっき液に緩衝溶液を用いても本発明の効果発現上なんら問題なく、むしろ3価の鉄イオンを効率よく沈殿でき、好ましい。緩衝溶液の種類は特に問わず、リン酸系、ハロゲン化物系、硝酸系、硫酸系など、一般的に緩衝作用のあるものを使用することができる。pHの上限は特に定めず、めっきする金属の沈殿限界、例えばpH5程度が好ましい。
【0029】
鉄イオンを除去する設備の一例を図4に示す。酸素通気装置では純酸素あるいは空気あるいは非反応性ガス(例えば窒素、アルゴンなど)+酸素にて任意の酸素濃度に調整した酸素含有ガスなどが酸素通気装置2によって置換めっき液主槽1に通気される。図4ではめっき液をためている置換めっき液主槽1に酸素を通気しているが、通気用に設置された別の予備槽を設けて、そこで酸素を通気してもかまわない。
【0030】
酸素を通気された置換めっき液は、pH維持のためのpH調整装置3に送り込まれ、pHの調整が実施される。このpH調整装置では、イオン補給が同時に行われてもかまわない。さらに、pHの調整が狙い通り行われているかを確認するために、pH調整装置3出口および/または置換めっき液主槽1および/または前述の別の予備槽にpHメーターを設置して、pH制御を自動的に制御するとより好ましい。
【0031】
沈殿除去装置4では、ろ過等によって沈殿した鉄イオンを除去が行われる。沈殿除去装置4にはめっき液の流れと逆流した自動洗浄装置などをつけることで沈殿物の堆積による目詰まりを回避することができる。さらには、沈殿除去装置4を複数設置し、順に作動させることで、目詰まりによる操業効率の低下を防ぐことができる。沈殿除去装置4とpH調整装置3は並列して設置されても、直列して設置されてもかまわない。
【実施例】
【0032】
次に、本発明の実施例を比較例とともにあげる。
表1に示す置換めっき金属成分と通気条件および各種pH調整剤にて鉄イオンの酸化除去試験を実施した。評価は、めっき液中のFe濃度とめっき付着効率の変化、浴寿命を実施した。めっき液中のFe濃度は、除去試験24時間後および48時間後のめっき液中の鉄の濃度をICP発光分析法にて分析した。めっき付着効率の変化は、鉄イオン除去前後にめっき付着量を測定し、鉄イオン除去後のめっき付着量が20%以上向上したものを◎、0%超20%未満向上したものを○、変化なかったものを△、減少したものを×とした。浴寿命は、めっき付着効率の変化が、0%超回復する現象が、6回以上繰り返しても可能だったものを○、4〜5回可能だったものを△、3回以下だったものを×とした。結果を同じく表1に示した。
【0033】
【表1】

【0034】
本発明例は何れも、24時間後には、鉄イオンの顕著な減少が見られ、めっきの付着効率も向上した。一方、初期の鉄イオンが少ない比較例9、通気するガスが酸素を含まない比較例10、通器量が少ない比較例11、調整したpHが低い比較例12では、鉄イオン除去の効果がほとんど認められず、めっき付着効率も向上しなかった。
【0035】
上記の通り、本発明によれば置換めっき液中に蓄積される鉄イオンを簡便、安全かつ安価に除去できることが可能となり、産業に貢献するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】酸素の吹込みによる鉄イオン除去の説明図である。
【図2】酸素の吹き込み量と置換めっき液中に存在する2価の鉄イオンの減少量の関係図である。
【図3】3価の鉄イオンの沈殿発生のpHの説明図である。
【図4】鉄イオン除去設備の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 置換めっき液主槽
2 酸素通気装置
3 pH調整装置
4 沈殿除去装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄イオンを0.1g/l以上含有する置換めっき液を用いて、鋼材に鉄以外の金属を置換めっきするに際し、置換めっき液のpHを2.5以上とし、酸素または酸素含有気体を置換めっき液に通気することを特徴とする置換めっき液中の鉄イオン除去方法。
【請求項2】
置換めっき液に通気する酸素量がめっき液1mあたり0.01L/min以上であることを特徴とする請求項1に記載の置換めっき液中の鉄イオン除去方法。
【請求項3】
置換めっきする金属の炭酸塩を置換めっき液に投入することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の置換めっき液中の鉄イオン除去方法。
【請求項4】
鋼材の置換めっき設備において、置換めっき液主槽またはその予備槽に、酸素または酸素含有気体通気装置と、鉄水酸化物を含む沈殿物を除去する沈殿物除去装置、置換めっき液pH調整装置を有することを特徴とする置換めっき液中の鉄イオン除去設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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