説明

置換ヒドロキシメチルフェノールの新規な合成

本開示は、2-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-4-(ヒドロキシメチル)フェノール又はそのフェノールモノエステル又はその塩の製造方法に関するもので、a)式(II)の化合物を、溶媒中のグリニャール反応開始剤とMgとの混合物に反応させ、b)任意であるが、グリニャール試薬の温度を工程a)における温度より低くしてもよく、得られたグリニャール試薬を、溶媒中の過剰なカーボネートと反応させて、式(III)で表される化合物(式中、AはC1-C6アルキルである)を得て、更に式(III)の化合物を公知のやり方で反応させて所望の最終生成物を得ることを特徴とする。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(分野)
トルテロジンの活性代謝物(以下「活性代謝物」と呼ぶ)として公知の2-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-4-(ヒドロキシメチル)フェノール及びそのフェノールモノエステル類の調製方法で、グリニャール反応を介した短縮合成ルートによる調製方法をここに記載する。目的とする化合物は下記式(I)で表される。
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、Rは水素、直鎖又は分岐のC1−C6アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基である。)式(I)のRが水素の場合、この式は活性代謝物を表す。
式(I)で表されるフェノールモノエステル類の中で特に好適な例は、化学的にR-(+)-2-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-4-(ヒドロキシメチル)イソ酪酸フェノールエステルと定義ができるフェソテロジンである。フェソテロジンは以下に示す式(Ia)で表される。
【0004】
【化2】

【0005】
式(I)の化合物には、活性代謝物及び式(I)で表されるそのフェノールモノエステル類が含まれるが、これらはWO99/058478から公知である。
また、本願明細書では、具体的にはフェソテロジンの塩、さらに詳細にはフェソテロジンのフマル酸水素塩の調製をはじめとする、式(I)で表される化合物の塩の製造方法も記載する。
さらに、フェソテロジン等の式(I)で表される化合物を含有する医薬製剤の調製、及び、式(I)の化合物のいずれかの医薬的に許容できる塩、例えばフェソテロジンのフマル酸水素塩又は塩酸塩水和物を含有する医薬製剤の調製を開示する。
【0006】
(背景)
人間の正常な膀胱の収縮は、コリン作用性ムスカリン受容体刺激がある程度介在している。ムスカリン受容体は、正常な膀胱の収縮にある程度介在しているだけでなく、頻尿、尿意切迫及び切迫性尿失禁等の兆候を示す結果となる過活動膀胱における収縮のおもだったところを仲介している可能性がある。
ヒトなどの哺乳類にフェソテロジンや式(I)で表される他のフェノールモノエステルを投与すると、これらの化合物はエステラーゼによって開裂し、人体内で活性代謝物を形成する。この活性代謝物は、強力な拮抗的なムスカリン受容体拮抗薬であることが知られている(WO94/11337)。このように、フェソテロジンや式(I)で表される他のフェノールエステルは、活性代謝物の潜在的なプロドラッグであることを示す。とりわけフェソテロジンは、切迫性尿失禁、尿意切迫、頻尿といった兆候を示す過活動膀胱、ならびに排尿筋過活動の治療用として有効な薬剤であることが示されてきた(米国特許第6,713,464号、EP−B−1,077,912に記載)。
活性代謝物及びフェソテロジン等の該活性代謝物のフェノール性水酸基のモノエステルを製造するための合成方法は、米国特許第6,713,464号に下記のごとく記載されている。
第1の工程では、R-(-)-[3-(2-ベンジルオキシ-5-ブロモフェニル)-3-フェニルプロピル]-ジイソプロピルアミンと臭化エチルとマグネシウムとからエーテル溶液を調製し、この溶液を無水テトラヒドロフランで希釈して-60℃に冷却する。
【0007】
第2の工程で、固体の二酸化炭素粉末を少しずつ添加し、反応混合物を室温に上げる。
第3の工程で、反応を塩化アンモニウム水溶液で終わらせる。
第4の工程で、反応を終了した反応混合物の水性相をpH0.95に調整する。
第5の工程で、pH調整した水性相を濾過して、R-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸塩酸塩を固形物から回収することができる。
第6の工程で、精製後の安息香酸をエステル化して対応のメチルエステルにする。この多段合成を概説する図を下記に示す。
【0008】
【化3】

【0009】
さらに米国特許第6,713,464号には、メチルエステルを活性代謝物に変換して、活性代謝物をエステル化してフェソテロジンのようなフェノールモノエステルにすることが記載されている。
またWO94/11337にも活性代謝物の前駆体の多段合成方法が記載されている。
活性代謝物の上記製造方法は多数の工程が必要であり、その結果、精製手順が複雑であり、時間がかかり、人的過誤が増える可能性があるため、最適な効率や費用対効果を妨げることになる。また、この技術で使用される固体の二酸化炭素は、非常に低い温度で処理し、砕いたドライアイスを分けた状態で添加する必要があるため、更には、反応の著しい発熱特性を制御することが難しいので大規模に取り扱うことは困難である。
【0010】
本開示はこれらの問題点や欠点を解決することを目的とする。グリニャール反応においてジ(C1−C6アルキル)カーボネート、好ましくはジメチルカーボネート、又は環状C1−C6アルキレンカーボネートを使うことにより純度の高い生成物となり、同時に、安息香酸の生成とその精製を省くことができることがわかった。
本願明細書に開示の方法は予想外であり、驚くべきものである。現行の公知であるテキストには、カーボネートや他のエステル類にグリニャール試薬を添加すると主に第三アルコールが生成されることが教示されている。例えば、F.A.Carey、R.J. Sundbergの「Advanced Organic Chemistry」(Springer Media、2001年)には、一般に、エステル類(カーボネートを含む)にグリニャール試薬を添加することにより第三アルコールを生成することが記載されている(447〜448ページ)。同様に、有名な概論書「March's Advanced Organic Chemistry」(Wilex-Interscience Publication、John Wiley & Sons, Inc.、第5版、2001年、1214ページ)では、グリニャール反応において「3個のR基すべてが同じである第三アルコールがカーボネートにより得られる」と記載されている(1214ページ)。
【0011】
しかしながら驚くべきことに、本願明細書に記載の方法では、マグネシウム及びグリニャール反応開始剤を式(II)の化合物に添加してグリニャール試薬を形成し、更にこのグリニャール試薬にカーボネートを反応させると、主要生成物として式(III)で表されるアルキルエステルが得られ、第三アルコールは副産物として形成されるにすぎない。本願明細書に記載のグリニャール反応では、通常、直接反応生成物の約60%〜約70%が式(III)で表される化合物である。
また、驚くべきことに、本発明記載の方法の最中に形成される第三アルコール及び他の不純物は、式(III)のエステルをイソプロパノール中で結晶化させている間に簡単かつ非常に効果的に除去できることがわかった。これは現時点での技術からは予測できないことであった。
【0012】
したがって、ジメチルカーボネート又はより高度な同族物といったカーボネート類をグリニャール反応で使用すれば、安息香酸中間体の生成とその精製を省くことにより短縮された費用対効果に優れた式(I)の化合物の合成方法が見込める。更に、本方法は、当該分野で公知の固体二酸化炭素を必要とする反応に比べると、大規模な方法により適合している。
また、グリニャール反応開始剤としての塩化メチルマグネシウムの使用がとりわけ有利であることが、期せずしてわかった。イソプロパノールでの結晶化による式(III)の純度は、塩化メチルマグネシウムを使ってグリニャール反応を開始した場合、通常約96.1〜97.4%である。一方、グリニャール反応開始剤として臭化イソプロピルマグネシウムを使って生成させた3つのバッチでは、式(III)の化合物の純度は約94%を超えなかった。
【0013】
(概要)
本願明細書は、活性代謝物及びそのフェノールモノエステル類、例えばフェソテロジンとその塩類、またより詳細にはフェソテロジンのフマル酸水素塩をはじめとする、式(I)で表される化合物の短縮した製造方法を記載する。
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Rは水素、直鎖又は分岐のC1−C6アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基である。)
式(I)の化合物の短縮合成方法は、下記の工程を特徴とする。
a)式(II)の化合物を、好ましくは溶媒中のマグネシウムとグリニャール反応開始剤との混合物に反応させてグリニャール試薬を形成し、
【0016】
【化5】

【0017】
b)任意であるが、グリニャール試薬の温度を工程a)における温度よりも下げるとよく、
c)前記グリニャール試薬を、ジ(C1−C6アルキル)カーボネート又は環状C1−C6アルキレンカーボネート、好ましくはジメチルカーボネートと反応させて式(III)で表される化合物を得る。
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、AはC1−C6アルキルであり、好ましくはメチル基である。)
前記開示の方法において、MeMgClがグリニャール反応開始剤として好適に使用される。
本出願で使用のごとく、「カーボネート」という用語は、例えばジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートといったジ(C1−C6アルキル)カーボネート、ならびに、例えばエチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートといった環状C1−C6アルキレンカーボネートを包含する。
本出願で使用のごとく、「C1−C6アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子を有する、直鎖、分岐又は環状の飽和炭化水素鎖を指す。
本出願で使用のごとく、「グリニャール反応開始剤」という用語は、一般式R1MgXで表される化合物を指すもので、式中、R1はC1-C12アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、置換又は未置換のフェニル又はフェニル(C1-C6)アルキルで、前記フェニルは例えば、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ又はCF3で置換されていてもよく、Xは臭化物、塩化物及びヨウ化物から選択される。R1は、好ましくはC1-C6アルキル、ビニル、アリル、プロペニル、エチニル、フェニル又はベンジルから選択され、より好ましくはC1-C4アルキルである。グリニャール反応開始剤の具体例としては、臭化イソプロピルマグネシウム、塩化t-ブチルマグネシウム、とりわけ好ましくは塩化メチルマグネシウムである。
また、本願明細書には、活性代謝物及びそのフェノールモノエステル類、例えばフェソテロジンとその塩類、またより詳細にはフェソテロジンのフマル酸水素塩及び塩酸塩水和物をはじめとする、式(I)で表される化合物の短縮された製造方法であって、
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、Rは水素、直鎖又は分岐のC1−C6アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基である)、下記の工程により特徴づけられる式(I)の化合物の短縮製造方法が記載される。
a)式(II)の化合物をマグネシウム及びグリニャール反応開始剤と、好ましくは溶媒中のマグネシウムとMeMgClとの混合物と混合して、反応混合物を形成する工程、
【0022】
【化8】

【0023】
b)任意であるが、工程a)の反応混合物の温度を工程a)での温度よりも低くしてもよく、
c)工程a)による反応混合物をカーボネートと、好ましくは、ジ(C1−C6アルキル)カーボネート又は環状C1−C6アルキレンカーボネートと、さらに好ましくはジメチルカーボネートと混合して、式(III)で表される化合物を得る。
【0024】
【化9】

【0025】
(式中、AはC1−C6アルキルであり、好ましくはメチル基である。)
生成後、式(III)の化合物は精製してもよく、好適な溶媒中、好ましくはイソプロパノールで結晶化させることにより精製するとよい。
こうして得られた式(III)の化合物の純度は、好ましいことに、少なくとも約93%である。例えば、グリニャール反応開始剤として臭化イソプロピルマグネシウムを使用した場合は、式(III)の化合物の結晶化させた後の純度は、通常約93〜約96%である。
より好ましくは、式(III)の化合物は、結晶化後の純度が約96〜約99.5%、例えば約96.1〜約97.4%である。このような好適な純度にするためのグリニャール反応用の反応開始剤として特に好適なものは、塩化メチルマグネシウムである。
結晶化後、式(III)の化合物を公知のやり方で更に反応させて、式(I)の化合物又はその塩を得ることができる。ここに記載のグリニャール反応による不純物は、もし残留していたとしても、最新の技術(例えば米国特許第6,858,650号等)による処理(work-up)の間にそのほとんどを更に取り除くことができ、約99%を超える純度で活性代謝物が生成される。
【0026】
更に本願明細書には、式(I)の化合物又は式(III)の化合物であって、本願明細書中に開示のいずれかの方法により製造された化合物が記載されている。さらに、式(I)の化合物又は式(III)の化合物であって、本願明細書中に開示のいずれかの方法により製造された化合物を含有する医薬組成物が記載されている。
【0027】
また、本願明細書には、純度が少なくとも約93%、好ましくは少なくとも約96〜約99.5%、より詳細には少なくとも約96.1〜約97.4%の式(III)で表される化合物の製造方法であって、式(II)の化合物をマグネシウム及びグリニャール反応開始剤と、好ましくは溶媒中のマグネシウムとMeMgClとの混合物と混合した後、
【0028】
【化10】

【0029】
好ましくは、得られた化合物を前記で定義したカーボネートと反応させることによる製造方法が記載されている。
(詳細な説明)
グリニャール反応開始剤(好ましくはMeMgCl)と、マグネシウムと、カーボネートであって、好ましくは、式(I)で開示の活性代謝物及び該活性代謝物のフェノールモノエステル類、例えばフェソテロジン、さらに詳細にはフェソテロジンのフマル酸水素塩の調製に使用することができるジメチルカーボネートとによるグリニャール反応を介した短縮された合成について、好適な実施形態を言及しながら更に詳細に説明する。
本開示の方法における工程a)では、式(II)の化合物を、溶媒中のマグネシウムとグリニャール反応開始剤との混合物に反応させて、グリニャール試薬を形成する。
【0030】
【化11】

【0031】
グリニャール反応開始剤(例えばMeMgCl):マグネシウムのモル比は、好ましくは約1:2〜約2:1、さらに好ましくは約1:1であり、グリニャール反応開始剤:式(II)の化合物及びマグネシウム:式(II)の化合物のモル比は、それぞれ約1:1〜約2:1が好ましく、さらに約1:1〜約1.5:1が好ましい。
好ましくは、工程a)は、
a1)式(II)の化合物を好適な溶媒に溶解させて溶液を作り、
a2)前記溶液を、好適な溶媒中のMeMgClとMgとの混合物に添加してグリニャール試薬を形成することにより実行することができる。
反応工程a1)において、化合物(II)を溶解する好ましい溶媒はトルエンであるが、他の適当な溶媒も使用することができる。化合物(II)を含む溶液中の水分は、約0.05%未満であることが好ましい。
反応工程a2)では、グリニャール反応開始剤、好ましくはMeMgClを溶解するための好ましい溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)が好適であるが、この分野の当業者に公知のジエチルエーテルやt-ブチルメチルエーテル等をはじめとする他の適当なエーテル類も使用することができる。
【0032】
工程a)で記載のグリニャール試薬の形成は、好ましくは約40〜55℃の範囲、より好ましくは約40〜約50℃の範囲で行うことが好ましい。反応が終了するまで攪拌下で反応を実行させることができる。
好適な実施形態では、その後、グリニャール試薬を周囲温度に、例えば約20〜25℃に冷却して、好ましくは攪拌しながら次の工程のために保持しておくことができる。
工程c)では、得られたグリニャール試薬を、ジ(C1−C6アルキル)カーボネートのような適切なカーボネートと、好ましくはジメチルカーボネートと反応させて、下記に示す式(III)の化合物(式中、AはC1−C6アルキルで、好ましくはメチル基)を得る。式(II)の化合物に対して、カーボネート、好ましくはジメチルカーボネート過剰が好ましく、約1.1倍から約50倍過剰のカーボネートがより好ましく、約5倍から約50倍過剰が特に好適である。
【0033】
【化12】

【0034】
ジメチルカーボネートが最も好適なカーボネートである。
他の好適なカーボネートとしては、例えばジエチルカーボネート等のジ(C1−C6アルキル)カーボネート、及び、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネート等の環状(C1−C6アルキレン)カーボネートが挙げられる。
工程c)ではカーボネートを溶媒に溶解してもよい。カーボネートを溶解するのに使用する好適な溶媒はヘキサンであるが、使用するカーボネート、例えば、好適なジメチルカーボネートの沸点よりも沸点が低く、水と共沸混合物を形成することができる不活性溶媒で、ヘプタン、ヘキサン異性体及びこれらの好適な混合物をはじめとする溶媒が使用可能である。
カーボネート、好ましくはジメチルカーボネートの溶解に使用されるヘキサンの一部は、グリニャール試薬を添加する前に共沸蒸留等の蒸留により除去することができる。この蒸留により、ヘキサンの約90〜約95%までを除去することができる。また、溶媒の蒸留はカーボネート溶媒混合物から水を除去するので、グリニャール試薬と混合する際に脱臭素(des-bromo)アミン不純物の形成を最小限にできる。蒸留後のカーボネート溶媒混合物中の水分は約0.1質量%未満がよく、好ましくは約0.05質量%未満、さらに好ましくは約0.01質量%未満がよい。
本発明の最も好適な実施形態では、グリニャール試薬とカーボネート(好ましくはジメチルカーボネート)との反応は、約10℃を下回る温度で攪拌条件下で行う。
【0035】
好ましいオプションの1つは、攪拌中のカーボネート溶媒混合物にグリニャール試薬(例えば、MeMgCl)をゆっくり添加して、形成された式(III)のエステルが反応溶液中で速やかに、かつ、均一に希釈されるようにすることである。添加とそれに続くグリニャール試薬とカーボネートとの反応の最中の攪拌速度はできるだけ高速であることが好ましく、例えば少なくとも約75rpm、好ましくは少なくとも約90rpmがよい。
別のオプションは、グリニャール試薬にカーボネート溶媒混合物を好ましくは攪拌しながら添加することである。攪拌時間は好適には約2〜3時間である。
工程c)は、適当な試薬を用いて反応混合物の反応を終了させる(quenching)。この好適な反応停止剤は塩化アンモニウム水溶液であるが、酢酸エチル水溶液、塩化ナトリウム水溶液、塩酸水溶液等といった、この分野の当業者に公知の他の反応停止剤も使用できる。
この後、グリニャール溶媒(例えばトルエン及び/又はTHF)から、結晶化に適した溶媒(例えばイソプロパノール)に溶媒を変える。
イソプロパノールは、R-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸メチルエステルを精製するのに非常に効果的であることがわかっている。
そこで、本発明の好適な実施形態の1つは、式(III)の化合物、好ましくはR-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸メチルエステルをイソプロパノールで結晶化させることである。
【0036】
別の好適な実施形態は前記に述べた式(I)の化合物又はその塩の製造方法であって、該製造方法が、式(III)の化合物、好ましくはR-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸メチルエステルをイソプロパノールで結晶化させる工程を有することを特徴とした製造方法である。
反応停止剤を添加した後の好適な処理工程は、例えば、
− 水で洗浄する。
− 共沸乾燥等により有機相から水を取り除く。
− 蒸留により有機相を取り除く。
− イソプロパノールで結晶化させる。
− 任意で、イソプロピルアルコール等の好適な溶媒で洗浄して乾燥させてもよい。
この後、式(III)の化合物は良好な純度(通常約96〜約99.5%)で単離して得られる。
前記の方法は、本願明細書の実験の項の実施例1でより詳細に開示されている。
本発明の別の好適な実施形態は、式(I)の化合物:
【0037】
【化13】

【0038】
(式中、Rは水素、直鎖又は分岐のC1−C6アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基である)又はその塩、又は式(I)の化合物の前駆体の製造方法であって、前記で定義した式(III)の化合物、好ましくはR-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸メチルエステルをイソプロパノールで結晶化させる工程を含む製造方法である。
式(III)の化合物は、更に反応させて式(I)の化合物を得ることができる。
本発明の特に好適な実施形態は、活性代謝物及び所望であればそのフェノールモノエステル類の製造方法であって、とりわけフェソテロジン又はその塩、好ましくはフェソテロジンの医薬的に許容できる塩、さらに好ましくはフェソテロジンのフマル酸水素塩の製造方法であって、該方法は以下の工程を含む。
a1)式(II)の化合物をトルエンなどの溶媒に溶解させ反応混合物を形成する。
a2)前記反応混合物を、グリニャール反応開始剤(好ましくはMeMgCl)と、MgとTHFとの混合物に添加してグリニャール試薬を形成する工程で、反応を約40〜約50℃の反応温度で行う。
b)任意であるが、グリニャール試薬の温度を前記工程a2)の温度よりも低い温度に、より好ましくは約20℃〜約25℃の範囲に下げてもよく、攪拌下でもよいがグリニャール試薬を前記のより低い温度に保つ。
c)得られたグリニャール試薬を、反応温度約10℃未満、攪拌速度を少なくとも約90rpmにしてヘキサン中の過剰なカーボネート、好ましくはジメチルカーボネートと反応させ、続いて、こうして得られた混合物を塩化アンモンニウム水溶液を用いて反応を終了させ、式(III)の化合物を得る。この化合物は前述のように単離及び精製を行うことができる。
式(III)の化合物を形成した後のオプションの1つは、式(III)の化合物をさらに反応させて式(I)の化合物を得ることである。これは、例えば以下のようにして行う。
d)メチルエステルを相当するメチルアルコールに還元する。
【0039】
【化14】

【0040】
e)保護アルコールを脱ベンジル化して前記活性代謝物を形成する。
別のオプションは、活性代謝物をフェソテロジン等のエステルに、又は、フェソテロジンの塩、好ましくはフェソテロジンのフマル酸水素塩に以下のようにして変換する。
f)フェノールモノアシル化、及び
【0041】
【化15】

【0042】
g)塩の形成
【0043】
【化16】

【0044】
工程d)〜g)の例は、例えば米国特許第6,858,650号に開示されており、引用により本願明細書の記載に含まれるものとする。
活性代謝物の他のフェノールモノエステル類は、前記式の工程f)で異なる有機酸ハロゲン化物を用いることにより形成可能である。
最終化合物(I)又は(Ia)(フェソテロジンをはじめとする活性代謝物のフェノールモノエステル類又はその医薬的に許容できる塩類)は、さらに公知の方法で処方して経口、非経口又は経皮的医薬品を得ることができる。
本発明の別の態様は、活性代謝物又はフェソテロジンをはじめとする式(I)で表される化合物の前駆体の製造方法であり、ジメチルカーボネート等のカーボネートをグリニャール試薬と反応させて式(III)の化合物を得る工程を有し、
【0045】
【化17】

【0046】
(式中、AはC1〜C6アルキル基である)、前記グリニャール試薬が、式(II)で表される化合物:
【0047】
【化18】

【0048】
を溶媒中のグリニャール反応開始剤(好ましくはMeMgCl)とマグネシウムとの混合物に反応させることにより形成される。この方法では、式(III)の化合物は、先に述べたようにイソプロパノールでの結晶化により好適に処理することができる。
本開示を、以下の網羅的ではない実施例によりさらに説明する。この実施例は、後述のクレームに定義されている本開示の範囲を限定することを意図するものではない。式(II)の出発化合物は、例えば、米国特許第6,713,464号の実験の項に記載されているように、公知方法により調製することができる。
本発明のさらに好適な実施形態は以下のとおりである。
A) 式(I)の化合物:
【0049】
【化19】

【0050】
(式中、Rは水素、直鎖又は分岐のC1−C6アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基である)又はその塩の製造方法であって、
a)式(II)の化合物を、溶媒中のMeMgClとマグネシウムとの混合物と反応させてグリニャール試薬を形成し、
【0051】
【化20】

【0052】
b)任意であるが、グリニャール試薬の温度を工程a)の温度より低くしてもよく、
c)グリニャール試薬を過剰なジメチルカーボネートと反応させて、式(III)で表される化合物:
【0053】
【化21】

【0054】
(式中、Aはメチル基である)を得て、更に式(III)の化合物を公知のやり方で反応させて式(I)の化合物を得る工程、更に任意であるが塩を形成することを特徴とする製造方法。
B) 実施形態A)の方法であって、式(III)の化合物を反応させて式(I)とする前に結晶化させる製造方法。
C) 実施形態B)の方法であって、式(III)の化合物の結晶化をイソプロパノールで行う製造方法。
D) 実施形態A)〜C)のいずれかの方法であって、式(I)の化合物が式(Ia)で表されるフェソテロジン又はその塩である製造方法。
【0055】
【化22】

【0056】
E) 実施形態D)の方法であって、フェソテロジンの塩がフマル酸水素塩である製造方法。
F) 実施形態A)〜E)のいずれか1つの方法であって、工程c)においてジメチルカーボネートを約5倍〜50倍過剰で使用することを特徴とする方法。
G) 実施形態A)〜F)のいずれか1つの方法であって、工程c)において溶媒を使用することを特徴とし、好ましくはヘキサンを使用することを特徴とする方法。
H) 実施形態G)の方法であって、工程c)においてジメチルカーボネートをヘキサンに溶解させた後、蒸留を行い水分を0.01%以下に削減してからグリニャール試薬を添加することを特徴とする方法。
I) 実施形態A)〜H)のいずれか1つの方法であって、反応工程c)を好適な試薬で混合物の反応を終了させる方法。
J) 実施形態I)の方法であって、試薬がNH4Cl水溶液である方法。
K) 実施形態A)〜J)のいずれか1つの方法であって、MeMgCl:Mgのモル比が1:2〜2:1の範囲であり、MeMgCl:式(II)の化合物のモル比が約1:1〜2:1の範囲である方法。
L) 実施形態A)〜K)いずれかの方法であって、
a1)式(II)の化合物を好適な溶媒に溶解させて溶液を形成し、
a2)該溶液を好適な溶媒中のMeMgCl及びMgの混合物に添加することにより、工程a)が実施されることを特徴とする方法。
M) 実施形態L)の方法であって、工程a1)において式(II)の化合物の溶解に使用される溶媒がトルエンである方法。
【0057】
N) 実施形態L)又はM)の方法であって、工程a2)の溶媒がTHFであることを特徴とする方法。
O) 実施形態L)〜N)のいずれかの方法であって、
− 工程a1)で、式(II)の化合物をトルエンに溶解させ、
− 工程a2)で、前記溶液をTHF中のMeMgCl及びMgの混合物に添加して、反応終了まで攪拌し、
− 工程b)で、工程a2)で得られた混合物を攪拌下に保ち、
− 工程c)で、前記混合物をヘキサン中の過剰なジメチルカーボネートに添加し、更にNH4Cl水溶液で反応を終了させる、方法。
P) 実施形態A)〜O)いずれか1つの方法であって、工程a)の反応温度が40〜50℃であることを特徴とする方法。
Q) 実施形態A)〜P)いずれか1つの方法であって、工程b)の反応温度が20〜25℃であることを特徴とする方法。
R) 実施形態A)〜Q)いずれか1つの方法であって、工程c)の反応温度が10℃未満であることを特徴とする方法。
S) 実施形態A)〜R)いずれか1つの方法であって、工程c)において反応混合物を攪拌速度90rpm以上で攪拌することを特徴とする方法。
T) フェソテロジンフマル酸水素塩を含む医薬組成物の調製方法であって、
(i)前記実施形態のいずれかに記載の方法によりフェソテロジンフマル酸水素塩を調製し、
(ii)こうして得られたフェソテロジンフマル酸水素塩を公知のやり方で処方して、医薬組成物を得る工程を有する方法。
U) 活性代謝物又はフェソテロジンの前駆体又はそれらの製造における中間体の調製方法であって、ジメチルカーボネートをグリニャール試薬と反応させて式(III)の化合物を得る工程を有し、
【0058】
【化23】

【0059】
(式中、Aはメチル基である)
前記グリニャール試薬が、式(II)の化合物を溶媒中のMeMgClとMgとの混合物に反応させて形成される、方法。
【0060】
【化24】

【0061】
V) 実施形態U)の方法であって、式(III)の化合物をイソプロパノールで結晶化させることを含む方法。
【0062】
(実施例)
実施例1
式(III)のR-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸メチルエステルの調製
(a) 化学量論的比率 MeMgCl:Mg:R-(-)-[3-(2-ベンジルオキシ-5-ブロモフェニル)-3-フェニルプロピル]-ジイソプロピルアミン = 1.5:1.5:1.0
マグネシウム(18kg、741mol)とTHF(1066kg)の混合物を適当な容器に充填し、塩化メチルマグネシウム(3M濃度THF溶液、246kg、743mol)を添加する。R-(-)-[3-(2-ベンジルオキシ-5-ブロモフェニル)-3-フェニルプロピル]-ジイソプロピルアミン(式(II))の溶液を、US-B-6,713,464記載の手順に従って486molのR-(-)-3-(2-ベンジルオキシ-5-ブロモフェニル)-3-フェニルプロピオン酸から調製し、添加する。この間、反応温度を約40〜約50℃に保つ。反応終了時、R-(-)-[3-(2-ベンジルオキシ-5-ブロモフェニル)-3-フェニルプロピル]-ジイソプロピルアミン(式(II))のグリニャール試薬を、温度約20〜約25℃に保つ。ガラス被覆容器中、過剰のジメチルカーボネート(1312kg、14kmol)を含むヘキサン(1846kg)を大気圧で蒸留して所定の体積1200〜1260Lとし、水分が0.01%(質量比)以下になるまで水分分析を行った。その後、ジメチルカーボネート溶液にグリニャール試薬を投入するが、残留マグネシウムを取り除くためにフィルターを介し、温度を10℃未満に保ちながら投入した。この添加作業及び後続の反応中の攪拌速度は90rpm以上であった。
【0063】
ステンレス鋼製容器中、グリニャール試薬とカーボネート-溶媒との混合物の反応を塩化アンモニウム水溶液(660kg)を用いて終了させた。攪拌後、二相性の混合物を沈殿させ、両層を分離した。任意であるが、相分離に先立って過剰の水を添加して、アンモニウム塩化物による反応停止の最中に析出するマグネシウム塩を溶解させることもできる。水をさらに投入して相分離を行うことができ、水性層をトルエンで抽出し、有機相を合わせた。有機層を水で二回洗浄した(2 x 600kg)。
ステンレス鋼製容器の有機相を蒸留して体積を約1400〜1750Lとした後、ガラス被覆容器に移し、イソプロパノールを投入し蒸留を繰り返して溶媒を交換した。必要であれば、さらにイソプロパノール溶媒の交換を行うことができる。過剰なジメチルカーボネート及びトルエンを取り除き、有機溶液を体積400〜800Lに減らした。
その後、析出が起こるまで約20〜約25℃で混合物を放置した。その後、冷却を行い、最低約2時間、約0〜約5℃で更に放置した。混合物を遠心分離にかけて析出物を分離し、これを冷却したイソプロパノール(63kg)で洗浄した。得られたR-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸メチルエステル(式(III))を約40〜約50℃で乾燥させ、結晶状態で得た。
6種のバッチで調製されたR-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸メチルエステルは、下記の代表的な純度を有した。
【0064】
バッチ1:96.5%
バッチ2:97.4%
バッチ3:96.9%
バッチ4:96.4%
バッチ5:96.4%
バッチ5:96.9%
バッチ6:96.1%
(b) 化学量論的比率 MeMgCl:Mg:R-(-)-[3-(2-ベンジルオキシ-5-ブロモフェニル)-3-フェニルプロピル]-ジイソプロピルアミン = 1:1:1
化学量論的比率を上記の示すように変えた以外は、(a)に記載のようにグリニャール反応を実行した。
その結果、R-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸メチルエステルを純度99.4%で得た。
【0065】
実施例2
R-(+)-[4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-フェニル]-メタノールの調製(還元)
R-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸メチルエステル(28g)の溶液を無水ジエチルエーテル(230mL)に溶解させた。この溶液を、水素化アルミニウムリチウム(1.8g)をエーテル(140mL)中に含む懸濁液に、約20℃を下回る温度で窒素雰囲気下ゆっくり(約2時間)滴下する。約18時間攪拌した後、水(4.7mL)を加えて反応を終了させる。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過及び蒸留乾固させて、R-(+)-[4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-フェニル]-メタノール(26g、収率98.9%)を油状物質として得たが、これは次第に結晶化した。
【0066】
実施例3
R-(+)-2-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシメチルフェノールの調製(脱ベンジル化)
R-(+)-[4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-フェニル]-メタノール(9.1g)を含むメタノール(100mL)溶液の水素添加を、周囲条件下でラネーニッケル(4.5g)を使って行った。約4〜5時間の時点で薄膜クロマトグラフィーで判断されるように水素添加が終了し、その後、触媒を濾過により取り除き、溶液を蒸留乾固させたところ、油状物(6.95g、収率96.5%)が残る。これを酢酸エチルに溶解させた。この溶液を、炭酸水素ナトリウム水溶液(5質量%)で洗浄した。有機相を分離し、酢酸エチルで共沸蒸留により乾燥させた。その後、酢酸エチル溶液をさらに蒸留して、1質量部のR-(+)-2-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシメチルフェノールが1.5容量部の酢酸エチルに溶解した状態の容量にした。この溶液を約-10℃に冷却し、約30〜60分間攪拌した。こうしてR-(+)-2-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシメチルフェノールを析出物として単離することができ、さらに少量の冷たい酢酸エチルで洗浄することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

(式中、Rは水素、直鎖又は分岐のC1−C6アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基である)又はその塩の製造方法であって、
a)式(II)の化合物:
【化2】

を、マグネシウムと式R1MgX(式中、R1はC1-C12アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、置換又は未置換のフェニル又はフェニル(C1-C6)アルキルを表し、Xは臭化物、塩化物及びヨウ化物から選択される)で表されるグリニャール反応開始剤との混合物と反応させてグリニャール試薬を形成し、
b)任意であるが、前記グリニャール試薬の温度を工程a)の温度より低くしてもよく、
c)前記グリニャール試薬を、ジ(C1−C6アルキル)カーボネート及び環状C1−C6アルキレンカーボネートから選択されるカーボネートを過剰にして反応させ、式(III)で表される化合物:
【化3】

(式中、AはC1-C6アルキル基である)を得る工程を有し、更に前記式(III)の化合物を公知のやり方で反応させて式(I)の化合物を生成し、任意で塩を形成してもよいことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記グリニャール反応開始剤が塩化メチルマグネシウム(MeMgCl)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カーボネートがジメチルカーボネートである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記式(III)の化合物を、式(I)への反応の前に結晶化させる、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記式(III)の化合物の結晶化をイソプロパノールで行う、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記式(I)の化合物が、下記式(Ia)を有するフェソテロジン又はその塩である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【化4】

【請求項7】
前記フェソテロジンの塩がフマル酸水素塩である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記工程c)において、前記カーボネートを約5倍〜50倍過剰で使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記工程c)において溶媒を使用することを特徴とし、好ましくはヘキサンを使用することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記工程c)において、前記カーボネートをヘキサンに溶解させた後、蒸留を行い水分を0.01%以下に削減してから前記グリニャール試薬を添加することを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記反応工程c)に続いて、適当な試薬で前記混合物の反応を終了させる、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記試薬が塩化アンモニウム水溶液である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記グリニャール反応開始剤:Mgのモル比が1:2〜2:1の範囲であり、前記グリニャール反応開始剤:式(II)の化合物のモル比が約1:1〜2:1の範囲である、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記工程a)が、
a1)前記式(II)の化合物を好適な溶媒に溶解させて溶液を形成し、
a2)前記溶液を好適な溶媒中のグリニャール反応開始剤及びMgの混合物に添加することにより実施されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記工程a1)において、前記式(II)の化合物の溶解に使用される前記溶媒がトルエンである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記工程a2)における前記溶媒がTHFであることを特徴とする、請求項14又は15いずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記工程a1)において、前記式(II)の化合物をトルエンに溶解させ、
前記工程a2)において、前記溶液をTHF中のグリニャール反応開始剤及びMgの混合物に添加して、反応終了まで攪拌し、
前記工程b)において、前記工程a2)で得られた前記混合物を攪拌下に保ち、
前記工程c)において、前記混合物をヘキサン中の過剰なカーボネートに添加し、更にNH4Cl水溶液で反応を終了させる、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記工程a)の反応温度が40〜50℃であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記工程b)の反応温度が20〜25℃であることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記工程c)の反応温度が10℃未満であることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記工程c)において、前記反応混合物を攪拌速度90rpm以上で攪拌することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
フェソテロジンフマル酸水素塩を含む医薬組成物の調製方法であって、
(a)請求項1〜21のいずれかに記載の方法によりフェソテロジンフマル酸水素塩を調製し、
(b)こうして得られたフェソテロジンフマル酸水素塩を公知のやり方で処方して、医薬組成物を得る工程を有する方法。
【請求項23】
2-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシメチルフェノール又はフェソテロジンの製造における中間体の調製方法であって、ジ(C1−C6アルキル)カーボネート及び環状C1−C6アルキレンカーボネートからなる群から選択されるカーボネートをグリニャール試薬と反応させ、式(III)で表される化合物:
【化5】

(式中、AはC1-C6アルキル基である)を得る工程を有し、
前記グリニャール試薬が、式(II)の化合物:
【化6】

を、溶媒中のマグネシウムと式R1MgX(式中、R1はC1-C12アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、置換又は未置換のフェニル又はフェニル(C1-C6)アルキルを表し、Xは臭化物、塩化物及びヨウ化物から選択される)で表されるグリニャール反応開始剤との混合物に反応させて形成される、方法。
【請求項24】
前記グリニャール反応開始剤がMeMgClで、前記カーボネートがジメチルカーボネートである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記式(III)の化合物をイソプロパノールで結晶化させることを含む、請求項23及び24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
式(I)の化合物又はその塩の製造方法であって、
【化7】

(式中、Rは水素、直鎖又は分岐のC1−C6アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基である)、前記製造方法が式(III)の化合物をイソプロパノールで結晶化させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記式(III)の化合物がR-(-)-4-ベンジルオキシ-3-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニルプロピル)-安息香酸メチルエステルである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記式(I)の化合物がフェソテロジン又はその塩である、請求項26及び27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記式(I)の化合物がフェソテロジンのフマル酸塩である、請求項26〜28のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2009−538849(P2009−538849A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512476(P2009−512476)
【出願日】平成19年5月26日(2007.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004705
【国際公開番号】WO2007/137799
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508352171)シュウォーツ ファーマ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】