説明

置換ピラゾールを合成するための方法

本出願は、式Iの化合物の合成のための方法に関する。
【化20】


式Iの化合物は、グルカゴン受容体拮抗薬であり、および2型糖尿病を治療し、予防しまたは発症を遅らせるために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換ピラゾールを合成するための方法に関する。本化合物は、抗糖尿病化合物として特に有用である。特に、この化合物は、グルカゴン受容体拮抗薬としての活性を実証している。
【背景技術】
【0002】
グルカゴンは、肝臓糖新生の抑制におけるインシュリンの効果を減弱する主要な調節ホルモンとして役立ち、通常、血中グルコース濃度の低下に応答して膵島中のα細胞により分泌される。このホルモンは、肝細胞中の特定の受容体に結合し、cAMP媒介の事象を通してグリコーゲン分解および糖新生の増加を引きおこす。これらの応答はグルコースを生成して(例えば、肝臓グルコース生成)、血中グルコース濃度の著しい低下を防止することにより正常血糖を維持する助けとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
循環するインシュリンの濃度の上昇に加え、II型糖尿病においては、血漿グルカゴンの濃度が高くなり、肝臓グルコース生成の速度が増加する。グルカゴン拮抗薬における本明細書中に記載の方法の主題である化合物は、従って、肝臓中のインシュリン応答性の向上、糖新生速度の低減、および血漿グルコース濃度低下をもたらす肝性グルコース産出速度の低下において有用である。
【0004】
本発明の1つの目的は、保護基が、過酷な脱保護条件の手段を講じることなく容易に除去される方法を提供することである。
【0005】
本発明のもう1つの目的は、選択的脱保護を容易にする方法を提供することである。
【0006】
これらのおよびその他の目的は、本明細書中に含まれる教示から明らかとなる。
【0007】
(発明の概要)
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式I:
【0009】
【化14】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を合成する方法であり、
式III:
【0010】
【化15】

の化合物を、1,1’−カルボニルジイミダゾールおよびそのベータアラニンエステルまたはその塩もしくは溶媒和物と反応させること;ならびに
塩基により加水分解し、式Iの化合物を提供すること;
を含む前記方法、を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、下記の略語および定義に関連して記載される。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
Ph−Fc−P−(tBu)はJosiphos配位子であり、米国特許第6,777,567B2号(Solvias)に開示され、Strem社から市販されている。Xyl−P−Phosは米国特許第5,886,182号(Synetix)に開示され、Strem社から市販されている。Me−f−Ketal PhosはChiral Quest社から同様に市販されている。多様なRh系触媒を同様に用いることができる。
【0015】
本明細書中に記載の化合物は、次の一般合成模式図中で概説される方法に従って調製され得る。
【0016】
【化16】

【0017】
【化17】

【0018】
【化18】

【0019】
上記模式図中、Rは適切なエステル形成基をあらわす。その例は、エチル、イソプロピル、t−ブチル、t−ブチルシクロヘキシルなどのC1−10アルキル、およびベンジルを含む。好ましいのはエチルである。
【0020】
同様に、表記「保護基−ヒドラジン」は、保護基を表す「保護基」と名づけられた適切な保護基で保護されたヒドラジンを指す。その例は、t−ブトキシカルボニル、メトキシカルボニル、カルボキシベンゾイル、ベンジルなどを含む。
【0021】
中間体の多くは不斉中心を含み、従ってラセミ体およびそれらの混合物として生成する。それゆえ本発明は、その化合物のすべてのこのような異性体を、純粋な形で並びに混合物として含む。
【0022】
本明細書中に記載の方法は、一般に、立体特異的合成と考えられる。ケトンAは、保護されたヒドラジンと縮合して、保護されたヒドラゾンBを生成する。この縮合反応は、トルエンなどの適した溶媒中、酸性条件下、例えば酢酸と共に約60℃で行う。
【0023】
保護されたヒドラゾンBは、水素ガスなどの水素源および触媒を用い非対称的に水素付加されて、キラルN−保護ヒドラジンCを生成する。このヒドラジンは、鏡像体過剰(約86%鏡像体過剰率)で生成する。この変換に適した触媒は、Josiphosなどの適切な配位子と混合した、Rh(COD)BFなどの触媒前駆体である。
【0024】
Cにおける保護基の脱保護および引き続く、エタノール中でベンゼンスルホン酸を用いる鏡像体過剰率の向上により、結晶性ヒドラジンDがベンゼンスルホン酸塩(図示されない)として、鏡像体過剰率99%超過で提供される。
【0025】
模式図2に関し、1,3ジオンGが、エステルEおよびケトンFを、カリウムt−ブトキシドなどの塩基の存在下、縮合させることにより調製される。次に、DとGの間の環化を、DMAc、NMPなどの適切な溶媒中で添加剤の存在下、行うことができる。添加剤の適切な例は、LiCl、LiBr、MgBrおよびその他のルイス酸を含む。あるいは、テトラブチルアンモニウムクロリドを用いることができる。添加剤は、約17:1程度の高さの高い位置選択性を与える。化合物IIのエステル形成部分は、その後、例えばNaOHなどの適切な塩基により加水分解され酸IIIを生成する。
【0026】
模式図3を参照して示されるように、酸IIIは、次に、ベータアラニンエステルまたはその塩もしくは溶媒和物、好ましくはHCl塩と結合してIIIのベータアラニルエステル(図示されない)を形成することができる。このエステルを次に、例えばNaOHなどの追加の塩基などを用いて加水分解し、ならびにアセトニトリルおよび水などから場合により結晶化し、表題化合物Iを遊離酸として生成することができる。
【0027】
式IIの化合物の合成のための代替法を、下の模式図4に示す。
【0028】
【化19】

【0029】
要約すると、3,5−ジクロロフェニルアセチレンJは、ブロモ−3,5−ジクロロベンゼンHから臭素を置換することにより生成する。このような反応は、通常、不活性雰囲気下、適切な溶媒中の塩基(例えば、トリエチルアミン)中で行われる。この中間体を、6−メトキシ−2−ナフトエ酸クロリドKと反応してアセチレンケトンLを生成する。その後、アセチレンケトンLは、キラルヒドラジンDと反応してキラル中間体IIを生成する。化合物IIは、その後、模式図3について上記した合成に組み込まれ、ベータアラニルエステルと反応し、その後加水分解して標的化合物Iを生成する。
【0030】
投与量範囲
式Iの化合物の1日投与量の範囲は、単一用量または分割用量で約0.001mgから約1000mgの一般的範囲内である。いくつかの場合において、これらの限界外の投与量を用いることを要する可能性がある。
【0031】
従って、成人に対する代表的な投与量は、単一用量または分割用量で約0.1mg/日から約1g/日の範囲、好ましくは約1mgから約200mgの範囲内である。
【0032】
医薬組成物
医薬組成物は、式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物および薬学的に許容できる担体を含む。これは、活性化合物および担体を構成する1つ以上の不活性成分(薬学的に許容できる賦形剤)、並びに、成分のいずれか2つ以上の結合、錯体化もしくは凝集から、または成分の1つ以上の解離から、または成分間の反応もしくは相互作用のその他の型から、直接的または間接的に結果として生成する
すべての生成物を含む生成物を包含する。
【0033】
本発明を特定の実施形態について記述しおよび例証してきたが、その中で、数多くの変更、改変および置換を、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定され、その特許請求の範囲は、合理的である限りできるだけ広く解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物の合成のための方法であり、
式III:
【化2】

の化合物を、1,1’−カルボニルジイミダゾールの存在下、ベータアラニンのエステルまたはその塩もしくは溶媒和物と反応させ、式IIのエステルを生成すること;および塩基により加水分解し、式Iの化合物を提供すること;
を含む、前記方法。
【請求項2】
式C:
【化3】

の化合物の合成のための方法であり、
式B:
【化4】

(式中、Rは、エステル形成基を表す。)
の化合物を、触媒および水素源と反応させ、式Cの化合物を生成すること:
を含む、前記方法。
【請求項3】
式II:
【化5】

(式中、Rは、エステル形成基を表す。)
の化合物の合成のための方法であり、式G:
【化6】

の化合物および式D:
【化7】

の化合物を反応させ、式IIの化合物を生成することを含む、前記方法。
【請求項4】
式I:
【化8】

の化合物の合成のための方法であり、
(a)式EおよびF:
【化9】

の化合物を、カリウムt−ブトキシドの存在下、反応させ、式G:
【化10】

の化合物を生成すること;
(b)化合物Gを式D:
【化11】

(式中、Rは、エステル形成基を表す。)
の化合物と反応させ、式II:
【化12】

の化合物を生成すること;
(c)化合物IIのエステルを塩基により加水分解し、式III:
【化13】

の化合物を生成すること;
(d)化合物IIIをベータアラニンエステルまたはその塩もしくは溶媒和物と反応させ、IIIのベータアラニルエステルを生成すること;および
(e)IIIのベータアラニルエステルを加水分解し、式Iの化合物を生成すること;
を含む、前記方法。

【公表番号】特表2009−502923(P2009−502923A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524008(P2008−524008)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028545
【国際公開番号】WO2007/015999
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】