説明

置換換気システム

【課題】置換換気の対象となる空調空間を形成する部屋の省スペース化が可能な置換換気システムを提供する。
【解決手段】床板4と、側壁6と、躯体天井8から下方へ離間させて配置した天井板10とにより囲まれた空調空間2内に、空調空間2内の温度よりも低い低温空気を供給し、低温空気よりも高い高温空気を空調空間2内で上昇させて空調空間2外へ排気して、空調空間2内の換気を行う置換換気システム1であって、空調空間2内に低温空気を供給する給気口16と、高温空気を空調空間2外へ排気する主排気口18を備え、給気口16を、排気フード32の下端よりも上方で、天井板10から下方に突出した配置した給気チャンバ26により形成した、天井板10から垂下した垂下部28において、床板4と対向する下面に開口する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、厨房等、加熱された高温の空気や、油脂成分を含んだ空気や、水蒸気を含んだ空気や、臭気成分を含んだ空気等が存在する空調空間に対して換気を行う、置換換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、業務用の電化厨房等、加熱調理に伴い発生する高温の空気やオイルミスト(油脂成分を含んだ空気・油煙)等が存在する空調空間に対し、置換換気方式により換気を行うシステムとして、例えば、特許文献1に記載の置換換気システムがある。
特許文献1に記載の置換換気システムは、空調空間内の空気を排気するための排気口を、空調空間を形成する部屋の側壁において、側壁の高さ方向中心よりも、上方に設けている。これに加え、空調空間内に、空調空間内の温度よりも低い低温空気を供給するための給気口を、空調空間を形成する部屋の側壁において、側壁の高さ方向中心よりも、下方に設けている。また、給気口は、外気を空調機等に取り込んで作られた低温空気が供給される、給気チャンバに開口している場合が多い。
【0003】
このような置換換気システムであれば、給気口から、空調空間の下方へ低温空気を供給することにより、空調空間内で加熱されて温度が上昇した、低温空気よりも高い高温空気を空調空間の上方へ移動させ、この移動させた高温空気を排気口から排気して、空調空間内の換気を行う、置換換気を行うことが可能となる。
このため、空調空間内を少ない風量で効率良く換気することが可能となり、換気量及び換気に要するエネルギーの低減が可能となるとともに、空調空間内の温熱・空気環境を良好な状態とすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−372268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1に記載の置換換気システムでは、空調空間内へ低温空気を供給するための給気口を、給気チャンバに開口して、空調空間を形成する部屋の側壁に設けている場合が多い。
しかしながら、建築時には置換換気システムを備えていない建築物に対して、改築等により置換換気システムを施工する場合は、給気チャンバや空調機等を、空調空間を形成する部屋の内部に配置する必要がある場合が多い。
【0006】
また、空調機を、空調室等、空調空間を形成する部屋以外の部屋に設置し、空調機と給気チャンバを給気ダクトにより連結する場合であっても、給気チャンバや給気ダクトを、空調空間を形成する部屋の内部に配置する必要がある場合が多い。
このため、給気チャンバや空調機、給気ダクト等により、空調空間を形成する部屋の作業スペース等が減少するという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、置換換気の対象となる空調空間を形成する部屋の省スペース化が可能な、置換換気システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、床板と、側壁と、躯体天井から下方へ離間させて配置した天井板と、により囲まれた空調空間内に、当該空調空間内の温度よりも低い低温空気を供給し、当該低温空気よりも高い高温空気を前記空調空間内で上昇させて空調空間外へ排気して、前記空調空間内の換気を行う置換換気システムであって、
前記空調空間内に前記低温空気を供給する給気口と、前記高温空気を前記空調空間外へ排気する主排気口と、を備え、
前記給気口は、前記天井板から垂下した垂下部に開口することを特徴とするものである。
【0008】
本発明によると、床板と、側壁と、躯体天井から下方へ離間させて配置した天井板により囲まれた空調空間内に、その空調空間内の温度よりも低い低温空気を供給する給気口を、天井板から垂下した垂下部に開口する。
このため、低温空気を作るための空調機等を、躯体天井と天井板との間に形成されるスペースに配置することが可能となる。
また、給気口を天井面に開口する場合と比較して、空調空間の上部における空気の誘引や拡散を抑制することが可能となり、空調空間内の換気状態が混合換気となることを抑制することが可能となるため、空調空間内に対する置換換気を安定して行うことが可能となる。
【0009】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記主排気口は、前記天井板から前記床板へ向けて張り出して床板との間に空間を形成する排気フードにより周囲を覆われ、
前記天井板のうち前記給気口と前記排気フードとの間の位置に開口し、且つ前記高温空気を前記空調空間外へ排気する従排気口を備えることを特徴とするものである。
本発明によると、天井板のうち、主排気口の周囲を覆う排気フードと給気口との間の位置に、高温空気を空調空間外へ排気する従排気口を開口する。
このため、主排気口から空調空間外へ排気されず、排気フードの外側へ移動して天井板へ向けて上昇した高温空気を、従排気口から空調空間外へ排気することが可能となる。
【0010】
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した発明であって、前記主排気口からの排気量と前記従排気口からの排気量との割合を制御する排気量制御手段を備え、
前記排気量制御手段は、前記従排気口からの単位時間当たりの排気量が、前記主排気口からの単位時間当たりの排気量よりも少なくなるように、前記主排気口からの排気量と前記従排気口からの排気量との割合を制御することを特徴とするものである。
【0011】
本発明によると、排気量制御手段が、従排気口の単位時間当たりの排気量を、主排気口の単位時間当たりの排気量よりも少なくする。
このため、主排気口からの高温空気の排気を阻害することなく、主排気口から空調空間外へ排気されず、排気フードの外側へ移動して天井板へ向けて上昇した高温空気を、従排気口から空調空間外へ排気することが可能となる。
【0012】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した発明であって、前記排気量制御手段は、前記主排気口からの排気量をEA1とし、前記従排気口からの排気量をEA2とした場合に、EA1:EA2が19:1〜4:1の範囲内となるように前記主排気口からの排気量と前記従排気口からの排気量との割合を制御することを特徴とするものである。
【0013】
本発明によると、排気量制御手段が、主排気口からの排気量と従排気口からの排気量との割合を、19:1〜4:1の範囲内となるように制御する。
このため、主排気口からの排気量と従排気口からの排気量との割合を、空調空間に対する置換換気に適切な割合に制御することが可能となり、空調空間に対する置換換気の効率を向上させることが可能となる。
【0014】
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項2から4のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記空調空間内には、当該空調空間内の空気の温度を高くする加熱源が配置されており、
前記加熱源の作動状態に応じて、前記主排気口及び前記従排気口からの排気状態を制御する排気状態制御手段を備え、
前記排気状態制御手段は、前記加熱源の作動中は、前記主排気口及び前記従排気口からの排気を行うように前記排気状態を制御し、作動している前記加熱源が停止してから所定の時間が経過すると、前記主排気口からの排気を停止するとともに前記従排気口からの排気が継続されるように前記排気状態を制御することを特徴とするものである。
【0015】
本発明によると、排気状態制御手段が、空調空間内の空気の温度を高くする加熱源の作動中は、主排気口及び従排気口からの排気を行うように、主排気口及び従排気口からの排気状態を制御する。一方、作動している加熱源が停止してから所定の時間が経過すると、主排気口からの排気を停止するとともに従排気口からの排気が継続されるように、主排気口及び従排気口からの排気状態を制御する。
このため、空調空間内に高温空気が多く存在する状態では、主排気口及び従排気口からの排気量を増加させ、空調空間内の高温空気が減少した状態では、従排気口からのみ排気を行うことにより、換気量及び換気に要するエネルギーの低減が可能となるとともに、空調空間内の温熱・空気環境を良好な状態とすることが可能となる。
【0016】
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項2から5のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記給気口は、前記垂下部のうち前記排気フードの下端よりも上方で開口することを特徴とするものである。
本発明によると、空調空間内に低温空気を供給する給気口が、垂下部のうち、排気フードの下端よりも上方で開口する。
このため、天井板から垂下する垂下部の下方への突出量を、排気フードの下方への突出量よりも減少させることが可能となり、空調空間内における人員や物品の移動が垂下部により阻害されることを、抑制することが可能となる。
【0017】
次に、本発明のうち、請求項7に記載した発明は、請求項1から6のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記給気口は、前記垂下部の前記床板と対向する下面に開口することを特徴とするものである。
本発明によると、給気口が、垂下部の床板と対向する下面に開口するため、空調空間内に低温空気を供給する給気口が、床板へ向けて低温空気を供給することとなる。
このため、空調空間内において、高温空気を効率的に上昇させて空調空間外へ排気することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温空気を作るための空調機等、空調空間内へ低温空気を供給するための部材を、躯体天井と天井板との間に形成されるスペースに配置することが可能となるため、置換換気の対象となる空調空間を形成する部屋の省スペース化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態の置換換気システムの構成を示す図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】主排気口側フィルタを形成するグリスフィルタの斜視図である。
【図4】本発明の第一実施形態の変形例の構成を示す図である。
【図5】本発明の第一実施形態の変形例の構成を示す図である。
【図6】第一発明例の置換換気システムにより空調空間内の置換換気を行った際の、空調空間内の温度分布及び空気濃度の測定に用いる、測定装置の構成を示す図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】比較例の換気システムにより空調空間内の換気を行った際の、空調空間内の温度分布及び空気濃度の測定結果を示す図である。
【図9】第一発明例の置換換気システムにより空調空間内の換気を行った際の、空調空間内の温度分布及び空気濃度の測定結果を示す図である。
【図10】第二発明例の置換換気システムにより空調空間内の換気を行った際の、空調空間内の温度分布及び空気濃度の測定結果を示す図である。
【図11】第三発明例の置換換気システムにより空調空間内の換気を行った際の、空調空間内の温度分布及び空気濃度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態の置換換気システム1の構成を説明する。
図1は、本実施形態の置換換気システム1の構成を示す図である。また、図2は、図1のII−II線断面図である。
【0021】
本実施形態の置換換気システム1は、空調空間2内に、空調空間2内の温度よりも低い低温空気を供給し、この低温空気よりも高い高温空気を上昇させて空調空間2外へ排気して、空調空間2内の換気を行う換気システムである。すなわち、低温空気は、空調空間2内の温度よりも温度の低い空気であり、高温空気は、低温空気よりも温度の高い空気である。
【0022】
ここで、空調空間2は、床板4と、側壁6と、躯体天井8から下方へ離間させて配置した天井板10とにより囲まれた空間である。なお、本実施形態では、空調空間2を、業務用の厨房とした場合について説明する。また、本実施形態では、天井板10の下面(床板4と対向する面)に、点灯時に発熱する照明12が取り付けられている場合について説明する。
【0023】
また、空調空間2内には、空調空間2内の空気の温度を高くする加熱源14が配置されている。すなわち、加熱源14の作動時には、空調空間2内の空気が加熱されて、空調空間2内の空気の温度が高くなる。なお、本実施形態では、加熱源14を、電気グリドルや、IH(Induction Heating)フライヤ等の電磁調理器とした場合について説明する。具体的には、図1中に示すように、加熱源14は、2口のIHレンジ14a、電気グリドル14b及びIHフライヤ14cとした場合について説明する。したがって、本実施形態では、空調空間2を、業務用の電化厨房とする。
【0024】
以下、置換換気システム1の具体的な構成を説明する。
図1及び図2中に示すように、置換換気システム1は、給気口16と、主排気口18と、従排気口20と、排気量制御手段22と、排気状態制御手段24を備えている。
給気口16は、天井板10よりも下方に配置して天井板10から垂下した給気チャンバ26に開口しており、空調空間2内に低温空気を供給する。
【0025】
すなわち、本実施形態では、天井板10よりも下方に配置した給気チャンバ26により、天井板10から垂下した垂下部28を形成している。したがって、本実施形態では、給気口16は、給気チャンバ26で形成した垂下部28に開口している。
なお、本実施形態では、給気口16を、給気チャンバ26に取り付けた多孔板により形成した場合について説明する。また、給気チャンバ26の一部を、躯体天井8と天井板10との間に形成された天井空間30内に配置してもよい。なお、図2中では、説明のために、天井空間30の空調空間2に対する広さを、実際の比率よりも大きく図示している。
【0026】
また、給気口16は、給気チャンバ26のうち、後述する排気フード32の下端よりも上方で開口している。
また、給気口16は、給気チャンバ26のうち、下面(床板4と対向する面)に開口しており、床板4へ向けて低温空気を供給する。なお、図2中には、給気口16から床板4へ向けて低温空気を供給する方向(低温空気の吹出し方向)を、下向きの矢印により示している。
【0027】
給気チャンバ26には、後述する外気取り入れダクト34を介して、外気を空調機36に取り込んで作られた低温空気が、給気ダクト38を介して供給される。そして、この供給された低温空気を、給気口16から所定の風量及び風速で吹き出す。なお、本実施形態では、図1中に示すように、置換換気システム1が、四つの給気チャンバ26を備える場合について説明するが、これに限定するものではない。すなわち、置換換気システム1が、三つ以下の給気チャンバ26を備えていてもよく、五つ以上の給気チャンバ26を備えていてもよい。
【0028】
外気取り入れダクト34は、外気と空調機36とを連通する配管であり、外気量制御ダンパ40と、外気状態制御手段42と、外気取り入れ量制御装置44と、外気ガラリ46を備えている。
外気量制御ダンパ40は、外気取り入れダクト34内に配置されており、外気取り入れ量制御装置44が出力する制御信号に応じて、開口面積を変化可能に構成されている。
【0029】
したがって、外気量制御ダンパ40は、外気取り入れ量制御装置44が出力する制御信号に応じて、空調機36への、単位時間当たりの外気の取り入れ量を変化させることが可能である。
外気状態制御手段42は、外気取り入れダクト34内において、空調機36の給気側に配置されており、外気取り入れダクト34内の温度を計測可能な温度計と、外気取り入れダクト34内における気体の流量を計測可能な流量計を備えている。
【0030】
また、外気状態制御手段42は、外気取り入れダクト34内の温度を計測すると、この計測した温度を含む情報信号を、外気取り入れ量制御装置44へ出力する。同様に、外気状態制御手段42は、外気取り入れダクト34内における気体の流量を計測すると、この計測した気体の流量を含む情報信号を、外気取り入れ量制御装置44へ出力する。
外気取り入れ量制御装置44は、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合に加え、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との総排気量に応じて、給気口16から空調空間2内への低温空気の供給量を制御する。
【0031】
具体的には、外気取り入れ量制御装置44は、外気状態制御手段42が出力した情報信号と、排気量制御手段22及び排気状態制御手段24が出力した情報信号に基づいて、外気量制御ダンパ40の開口面積を変化させる制御信号を生成し、この生成した制御信号を、外気量制御ダンパ40へ出力する。同様に、外気取り入れ量制御装置44は、外気状態制御手段42が出力した情報信号と、排気量制御手段22及び排気状態制御手段24が出力した情報信号に基づいて、後述する給気送風機48の送風量を変化させる制御信号を生成し、この生成した制御信号を、給気送風機48へ出力する。
【0032】
ここで、排気量制御手段22が出力した情報信号は、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との単位時間当たりの総排気量を含む。また、排気状態制御手段24が出力した情報信号は、加熱源14の動作状態と、主排気口18及び従排気口20からの排気状態を含む。
以上により、外気取り入れ量制御装置44は、給気口16からの単位時間当たりの低温空気の供給量が、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との単位時間当たりの総排気量と等しくなるように、外気量制御ダンパ40の開口面積と給気送風機48の送風量を制御する。
【0033】
外気ガラリ46は、例えば、外気取り入れダクト34への雨の侵入を抑制可能に傾斜した羽板により形成されており、外気取り入れダクト34の外気に連通する開口部に取り付けられている。
空調機36は、取り込んだ外気を冷却して低温空気を生成する冷却部(図示せず)と、冷却部が生成した低温空気を、給気ダクト38を介して給気チャンバ26へ送風する給気送風機48を備えており、天井空間30内に配置されている。
【0034】
また、空調機36は、排気量制御手段22及び排気状態制御手段24が出力した情報信号により、給気ダクト38を介して、給気チャンバ26へ送風する低温空気の量を変化させることが可能な構成となっている。
したがって、空調機36は、排気量制御手段22及び排気状態制御手段24が出力した情報信号に応じて、空調空間2への、単位時間当たりの低温空気の供給量を変化させることが可能に形成されている。
【0035】
主排気口18は、天井板10のうち、加熱源14の上方に開口しており、天井空間30内に配置されている主排気ダクト50を介して、高温空気を空調空間2及び天井空間30外へ排気する。
主排気ダクト50は、主排気口18と空調空間2及び天井空間30外とを連通する配管であり、主排気風量制御ダンパ52と、主排気送風機54と、主排気状態制御手段56と、主排気量制御装置58と、主排気ガラリ60を備えている。なお、図2中では、説明のために、主排気ダクト50のうち、主排気口18と主排気風量制御ダンパ52との間の部分を屈曲させて図示しているが、この部分は、直線状の場合もある。
【0036】
主排気風量制御ダンパ52は、主排気ダクト50内に配置されており、主排気量制御装置58が出力する制御信号に応じて、開口面積を変化可能に構成されている。
主排気送風機54は、例えば、インペラー等を備えた排気ファンにより形成されており、主排気ダクト50内において、主排気風量制御ダンパ52よりも排気側に配置されており、主排気量制御装置58が出力する制御信号に応じて、送風量を変化可能に構成されている。
したがって、主排気風量制御ダンパ52及び主排気送風機54は、主排気量制御装置58が出力する制御信号に応じて、主排気口18から空調空間2及び天井空間30外への、単位時間当たりの空気の流量を変化させることが可能である。
【0037】
主排気状態制御手段56は、主排気ダクト50内において、主排気送風機54の排気側に配置されており、主排気ダクト50内の温度を計測可能な温度計と、主排気ダクト50内における気体の流量を計測可能な流量計を備えている。
また、主排気状態制御手段56は、主排気ダクト50内の温度を計測すると、この計測した温度を含む情報信号を、主排気量制御装置58へ出力する。同様に、主排気状態制御手段56は、主排気ダクト50内における気体の流量を計測すると、この計測した気体の流量を含む情報信号を、主排気量制御装置58へ出力する。
【0038】
主排気量制御装置58は、主排気状態制御手段56が出力した情報信号と、排気量制御手段22及び排気状態制御手段24が出力した情報信号に基づいて、主排気風量制御ダンパ52の開口面積を変化させる制御信号を生成し、この生成した制御信号を、主排気風量制御ダンパ52へ出力する。同様に、主排気量制御装置58は、主排気状態制御手段56が出力した情報信号と、排気量制御手段22及び排気状態制御手段24が出力した情報信号に基づいて、主排気送風機54の送風量を変化させる制御信号を生成し、この生成した制御信号を、主排気送風機54へ出力する。
主排気ガラリ60は、例えば、主排気ダクト50への雨の侵入を抑制可能に傾斜した羽板により形成されており、主排気ダクト50の空調空間2及び天井空間30外に連通する開口部に取り付けられている。
【0039】
また、主排気口18は、排気フード32により周囲を覆われている。
排気フード32は、一枚の側壁6と、この側壁6に取り付けた二枚の板材32a,32bと、これら二枚の板材を連結する一枚の板材32cにより箱型に形成されており、天井板10から床板4へ向けて張り出して、床板4との間に空間を形成している。
また、排気フード32の内部には、主排気口側フィルタ62が、主排気口18を下方(床板4側)から見て、主排気口18を閉塞するように取り付けられている。
なお、本実施形態では、主排気口側フィルタ62を、グリスフィルタにより形成した場合について説明する。
【0040】
ここで、図3を用いて、上記のグリスフィルタの構成を説明する。
図3は、主排気口側フィルタ62を形成するグリスフィルタ64の斜視図である。
図3中に示すように、グリスフィルタ64は、円筒形状に形成されており、軸方向を上下に向けた状態で、排気フード32の内部に取り付けられている。
具体的には、グリスフィルタ64は、複数枚のエキスパンドメタルを積層した多層構造で形成されており、積層したエキスパンドメタルは、それぞれ、網目の向きを各層で変化させている。
【0041】
上記のようなグリスフィルタ64により形成した主排気口側フィルタ62であれば、空気に含まれる油分の捕集に必要な必要面風速を低減することが可能であるため、置換換気のように、空調空間2内の換気量が少ない換気であっても、高い油分捕集効率を実現することが可能となる。このため、加熱源14として電磁調理器もしくは電気調理器を用いた電化厨房、すなわち、空間中への放熱が少ない空調空間2に対する置換換気において、オイルミスト等に含まれる油分を捕集するフィルタとして好適である。
【0042】
以下、図1及び図2を用いた説明に復帰する。
排気フード32を形成する三枚の板材32a〜32cのうち、主排気口18を間に挟んで対向する二枚の板材32a,32b、すなわち、側壁6に取り付けた二枚の板材32a,32bの下端には、それぞれ、袖壁66が取り付けられている。
袖壁66は、排気フード32を形成する板材と連続する直角三角形の板材である。具体的には、袖壁66の斜辺は、空調空間2の中心から側壁6へ向かうにつれて、下方へ傾斜しており、袖壁66の直交する二辺は、それぞれ、二枚の板材32a,32bと、側壁6に取り付けられている。これにより、袖壁66が、加熱源14を用いて調理を行う人員の動作を阻害することを抑制可能となる。
【0043】
なお、袖壁66の形状は、直角三角形に限定するものではなく、例えば、台形もしくはアーチ形状等としてもよい。
従排気口20は、平面視で、天井板10のうち、給気口16と排気フード32との間の位置に開口しており、天井空間30内に配置されている従排気ダクト68を介して、高温空気を空調空間2及び天井空間30外へ排気する。
【0044】
従排気ダクト68は、従排気口20と空調空間2及び天井空間30外とを連通する配管であり、従排気風量制御ダンパ70と、従排気送風機72と、従排気状態制御手段74と、従排気量制御装置76と、従排気ガラリ78を備えている。
従排気風量制御ダンパ70は、従排気ダクト68内に配置されており、従排気量制御装置76が出力する制御信号に応じて、開口面積を変化可能に構成されている。
【0045】
従排気送風機72は、例えば、インペラー等を備えた排気ファンにより形成されており、従排気ダクト68内において、従排気風量制御ダンパ70よりも排気側に配置されており、従排気量制御装置76が出力する制御信号に応じて、送風量を変化可能に構成されている。
したがって、従排気風量制御ダンパ70及び従排気送風機72は、従排気量制御装置76が出力する制御信号に応じて、従排気口20から空調空間2及び天井空間30外への、単位時間当たりの空気の流量を変化させることが可能である。
【0046】
従排気状態制御手段74は、従排気ダクト68内において、従排気送風機72の排気側に配置されており、従排気ダクト68内の温度を計測可能な温度計と、従排気ダクト68内における気体の流量を計測可能な流量計を備えている。
また、従排気状態制御手段74は、従排気ダクト68内の温度を計測すると、この計測した温度を含む情報信号を、従排気量制御装置76へ出力する。同様に、従排気状態制御手段74は、従排気ダクト68内における気体の流量を計測すると、この計測した気体の流量を含む情報信号を、従排気量制御装置76へ出力する。
【0047】
従排気量制御装置76は、従排気状態制御手段74が出力した情報信号と、排気量制御手段22及び排気状態制御手段24が出力した情報信号に基づいて、従排気風量制御ダンパ70の開口面積を変化させる制御信号を生成し、この生成した制御信号を、従排気風量制御ダンパ70へ出力する。同様に、従排気量制御装置76は、従排気状態制御手段74が出力した情報信号と、排気量制御手段22及び排気状態制御手段24が出力した情報信号に基づいて、従排気送風機72の送風量を変化させる制御信号を生成し、この生成した制御信号を、従排気送風機72へ出力する。
従排気ガラリ78は、例えば、従排気ダクト68への雨の侵入を抑制可能に傾斜した羽板により形成されており、従排気ダクト68の空調空間2及び天井空間30外に連通する開口部に取り付けられている。
【0048】
また、天井板10のうち、従排気口20の下方には、従排気口側フィルタ80が、従排気口20を下方(床板4側)から見て、従排気口20を閉塞するように取り付けられている。
なお、本実施形態では、従排気口側フィルタ80を、ガラス繊維等を積層して形成した板状の部材とした場合について説明する。この場合、従排気口側フィルタ80は、マグネット等を用い、天井板10に対して容易に着脱可能な構成とすることが好適である。
【0049】
排気量制御手段22は、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を制御する。
具体的には、排気量制御手段22は、加熱源14の動作状態に応じて、従排気口20からの単位時間当たりの排気量が、主排気口18からの単位時間当たりの排気量よりも少なくなるように、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を演算すする。そして、この演算した割合に応じて、主排気風量制御ダンパ52の開口面積及び主排気送風機54の送風量を演算し、この演算した開口面積及び送風量を含む制御信号を、主排気量制御装置58へ出力する。同様に、従排気風量制御ダンパ70の開口面積及び従排気送風機72の送風量を演算し、この演算した開口面積及び送風量を含む制御信号を、従排気量制御装置76へ出力する。
【0050】
また、排気量制御手段22は、主排気量制御装置58及び従排気量制御装置76へ出力する制御信号に基づき、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との単位時間当たりの総排気量を演算する。そして、この演算した総排気量を含む情報信号を、外気取り入れ量制御装置44へ出力する。
本実施形態では、排気量制御手段22が、加熱源14の作動中に、主排気口18からの排気量をEA1とし、従排気口20からの排気量をEA2とした場合に、EA1:EA2が19:1〜4:1の範囲内となるように、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を制御する場合について説明する。
【0051】
ここで、排気量制御手段22が、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を制御する際には、まず、加熱源14が作動しているか否かを判定する。なお、加熱源14が作動しているか否かの判定を可能とするために、例えば、加熱源14の構成を、加熱源14が作動していることを示す情報信号を、排気量制御手段22へ出力可能な構成とする。これにより、加熱源14が出力した情報信号を受信した排気量制御手段22が、上記の判定を行うことが可能な構成とする。
【0052】
そして、加熱源14が作動していると判定すると、主排気量制御装置58及び従排気量制御装置76へ、それぞれ、開口面積を変化させる制御信号を出力する。これにより、上述したEA1:EA2が、19:1〜4:1の範囲内となるように、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を制御する。
なお、上述したEA1:EA2を、19:1〜4:1の範囲内で制御する際には、例えば、加熱源14の加熱温度や出力等に応じて、EA1:EA2の割合を制御する。
【0053】
排気状態制御手段24は、加熱源14の動作状態に応じて、主排気口18及び従排気口20からの排気状態を制御する。
具体的には、排気状態制御手段24は、加熱源14の作動中は、主排気口18及び従排気口20からの排気を行うように、主排気口18及び従排気口20からの排気状態を制御する。この場合、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合は、上述したように、排気量制御手段22により制御する。
また、排気状態制御手段24は、加熱源14の動作状態と、主排気口18及び従排気口20からの排気状態を含む情報信号を、外気取り入れ量制御装置44へ出力する。
【0054】
一方、作動している加熱源14が停止してから所定の時間が経過すると、主排気口18からの排気を停止するとともに、従排気口20からの排気を行うように、主排気口18及び従排気口20からの排気状態を制御する。
具体的には、主排気量制御装置58へ、主排気風量制御ダンパ52の開口面積を変化させて、主排気口18から主排気ダクト50への空気の流れを遮断する制御信号を出力する。これに加え、従排気量制御装置76へ、従排気風量制御ダンパ70の開口面積を変化させて、従排気口20から従排気ダクト68への空気の流れを確保する制御信号を出力する。この場合、従排気量制御装置76へは、開口面積を変化させる制御信号を出力してもよく、また、開口面積を維持する制御信号を出力してもよい。
【0055】
なお、加熱源14が作動しているか否かの判定を可能とするために、例えば、加熱源14の構成を、加熱源14が作動していることを示す情報信号を、排気状態制御手段24へ出力可能な構成とする。これにより、加熱源14が出力した情報信号を受信した排気状態制御手段24が、上記の判定を行うことが可能な構成とする。
また、所定の時間は、空調空間2の容積等に応じて設定する。これは、例えば、空調空間2が、数坪程度の厨房である場合、10分程度に設定する。
【0056】
(動作)
以下、図1から図3を参照して、本実施形態の置換換気システム1の動作を説明する。
なお、以下の説明では、空調空間2内において、加熱源14であるIHフライヤにより、コロッケ等の揚げ物を調理するとともに、本実施形態の置換換気システム1により、空調空間2内の置換換気を行う場合について説明する。
加熱源14(IHフライヤ)を作動させて調理を行うと、空調空間2内には、調理に伴い発生する高温の空気や、オイルミスト等が存在することとなる。
このとき、給気口16からは、空調空間2内の温度よりも低温の低温空気が、天井板10よりも下方から床板4へ向けて空調空間2内に供給される。なお、給気口16からの、空調空間2内への低温空気の供給は、加熱源14の作動前に行ってもよい。
【0057】
また、加熱源14の作動に応じて、排気量制御手段22が、主排気口18からの排気量EA1:従排気口20からの排気量EA2が、19:1〜4:1の範囲内となるように、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を制御する。すなわち、加熱源14を作動させて調理を行うと、排気量制御手段22が、加熱源14の作動に応じて、従排気口20からの単位時間当たりの排気量が、主排気口18からの単位時間当たりの排気量よりも少なくなるように、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を制御する。
給気口16から空調空間2内に低温空気を供給すると、空調空間2内に存在する、低温空気よりも高い高温空気(調理前から空調空間2内に存在していた低温空気よりも高温の空気と、調理に伴い発生する高温の空気を含む)が、空調空間2内で上昇する。
【0058】
そして、空調空間2内で上昇した高温空気は、主排気口18から、主排気ダクト50を介して空調空間2及び天井空間30外へ排気され、空調空間2内の置換換気が行われる。
さらに、主排気口18から空調空間2外へ排気されず、排気フード32の外側へ移動して天井板10へ向けて上昇した高温空気は、従排気口20から、従排気ダクト68を介して空調空間2及び天井空間30外へ排気される。
【0059】
また、空調空間2内で高温空気が上昇すると、この上昇した高温空気が主排気口18から排気される前に、空調空間2内に存在するオイルミスト等に含まれる油分が、主排気口側フィルタ62により捕集される。同様に、空調空間2内で高温空気が上昇すると、この上昇した高温空気が従排気口20から排気される前に、空調空間2内に存在するオイルミスト等に含まれる油分が、従排気口側フィルタ80により捕集される。
【0060】
調理を終了または中断し、作動している加熱源14を停止させた時点から、所定の時間が経過すると、排気状態制御手段24が、主排気口18からの排気を停止するとともに、従排気口20からの排気を行うように、主排気口18及び従排気口20からの排気状態を制御する。この時点では、給気口16からの低温空気の供給を継続して行う。
なお、給気口16からの低温空気の供給は、調理を行った作業員等の判断により人為的に終了してもよく、また、例えば、空調空間2内に温度センサを配置し、この温度センサが検出した空調空間2内の温度に応じて、自動的に終了してもよい。
給気口16からの低温空気の供給を終了すると、本実施形態の置換換気システム1による空調空間2内の置換換気が終了する。
【0061】
(第一実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態の置換換気システム1では、空調空間2内の温度よりも低い低温空気を空調空間2内に供給する給気口16を、天井板10から下方に突出した給気チャンバ26により形成した、天井板10から垂下した垂下部28に開口する。
このため、低温空気を作るための空調機36等を、躯体天井8と天井板10との間に形成された天井空間30内に配置することが可能となる。
その結果、置換換気の対象となる空調空間2を形成する部屋の省スペース化が可能となるため、建築時には置換換気システム1を備えていない建築物に対して、改築等により置換換気システム1を施工することが容易となる。
【0062】
また、給気口16を天井板10に開口する場合と比較して、空調空間2の上部における空気の誘引や拡散を抑制することが可能となり、空調空間2内の換気状態が混合換気となることを抑制することが可能となる。
このため、空調空間2内に対する置換換気を安定して行うことが可能となり、空調空間2内を、少ない風量で、安定して効率良く換気することが可能となる。
その結果、換気量及び換気に要するエネルギーの低減が可能となるとともに、空調空間2内の温熱・空気環境を、安定して良好な状態とすることが可能となる。
【0063】
(2)本実施形態の置換換気システム1では、天井板10のうち、主排気口18の周囲を覆う排気フード32と給気口16との間の位置に、高温空気を空調空間2外へ排気する従排気口20を開口する。
このため、主排気口18から空調空間2外へ排気されず、排気フード32の外側へ移動して天井板10へ向けて上昇し、垂下部28と排気フード32との間に存在している高温空気を、従排気口20から空調空間2外へ排気することが可能となる。
その結果、天井板10に従排気口20を開口していない場合と比較して、空調空間2全体に対し、空調空間2内で上昇した高温空気を、効率良く空調空間2外へ排気することが可能となり、空調空間2内の温熱・空気環境を良好な状態とすることが可能となる。
【0064】
(3)本実施形態の置換換気システム1では、排気量制御手段22が、従排気口20の単位時間当たりの排気量を、主排気口18の単位時間当たりの排気量よりも少なくする。
このため、主排気口18からの高温空気の排気を阻害することなく、主排気口18から空調空間2外へ排気されず、排気フード32の外側へ移動して天井板10へ向けて上昇した高温空気を、従排気口20から空調空間2外へ排気することが可能となる。
【0065】
その結果、高温空気の発生源となる加熱源14から発生する高温空気の大部分を、主排気口18から排気することが可能となるとともに、主排気口18から排気されずに空調空間2内に存在している高温空気を、従排気口20から排気することが可能となる。
これにより、従排気口20の単位時間当たりの排気量を、主排気口18の単位時間当たりの排気量以上とした場合と比較して、空調空間2内で上昇した高温空気を、効率良く空調空間2外へ排気することが可能となり、空調空間2内の温熱・空気環境を良好な状態とすることが可能となる。
【0066】
(4)本実施形態の置換換気システム1では、排気量制御手段22が、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を、19:1〜4:1の範囲内となるように制御する。
このため、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を、空調空間2に対する置換換気に適切な割合に制御することが可能となり、空調空間2に対する置換換気の効率を向上させることが可能となる。
その結果、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量とのバランスを確保するとともに、空調空間2内で上昇した高温空気を、効率良く空調空間2外へ排気することが可能となり、空調空間2内の温熱・空気環境を良好な状態とすることが可能となる。
【0067】
(5)本実施形態の置換換気システム1では、排気状態制御手段24が、加熱源14の作動中は、主排気口18及び従排気口20からの排気を行うように、主排気口18及び従排気口20からの排気状態を制御する。一方、作動している加熱源14が停止してから所定の時間が経過すると、主排気口18からの排気を停止するとともに、従排気口20からの排気が継続されるように、主排気口18及び従排気口20からの排気状態を制御する。
このため、空調空間2内に高温空気が多く存在する状態では、主排気口18及び従排気口20からの排気量を増加させ、空調空間2内の高温空気が減少した状態では、従排気口20からのみ排気を行うこととなる。
その結果、空調空間2内の高温空気を効率良く排気することが可能となるため、換気量及び換気に要するエネルギーの低減が可能となるとともに、空調空間2内の温熱・空気環境を良好な状態とすることが可能となる。
【0068】
(6)本実施形態の置換換気システム1では、空調空間2内に低温空気を供給する給気口16が、給気チャンバ26により形成した垂下部28のうち、排気フード32の下端よりも上方で開口する。
このため、天井板10から垂下した垂下部28の下方への突出量を、排気フード32の下方への突出量よりも減少させることが可能となり、空調空間2内における人員や物品の移動が給気チャンバ26により阻害されることを、抑制することが可能となる。
その結果、給気口16が排気フード32の下端と同じ高さ、または排気フード32の下端よりも下方で開口する場合と比較して、空調空間2内における人員や物品の移動を円滑に行うことが可能となるため、空調空間2内の作業環境を良好な状態とすることが可能となる。
【0069】
(7)本実施形態の置換換気システム1では、空調空間2内に低温空気を供給する給気口16が、給気チャンバ26により形成した垂下部28の床板4と対向する下面に開口する。
このため、空調空間2内に低温空気を供給する給気口16が、床板4へ向けて低温空気を供給することとなり、空調空間2内において、高温空気を効率的に上昇させて空調空間2外へ排気することが可能となる。
その結果、給気口16が側壁6や天井板10へ向けて低温空気を供給する場合と比較して、空調空間2内の高温空気を効率良く排気することが可能となるため、換気量及び換気に要するエネルギーの低減が可能となるとともに、空調空間2内の温熱・空気環境を良好な状態とすることが可能となる。
【0070】
(応用例)
以下、本実施形態の応用例を列挙する。
(1)本実施形態の置換換気システム1では、天井板10のうち、主排気口18の周囲を覆う排気フード32と給気口16との間の位置に、従排気口20を開口したが、これに限定するものではなく、天井板10に従排気口20を開口していない構成、すなわち、従排気口20を備えていない構成としてもよい。
【0071】
(2)本実施形態の置換換気システム1では、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を制御する排気量制御手段22を備えた構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、排気量制御手段22を備えていない構成とし、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を制御しない構成としてもよい。
(3)本実施形態の置換換気システム1では、排気量制御手段22が、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を、19:1〜4:1の範囲内となるように制御する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、排気量制御手段22が、主排気口18からの排気量と従排気口20からの排気量との割合を、19:1〜4:1の範囲外となるように制御する構成としてもよい。
【0072】
(4)本実施形態の置換換気システム1では、加熱源14の作動状態に応じて、主排気口18及び従排気口20からの排気状態を制御する排気状態制御手段24を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、排気状態制御手段24を備えていない構成とし、主排気口18及び従排気口20からの排気状態を制御しない構成としてもよい。
(5)本実施形態の置換換気システム1では、給気口16が、給気チャンバ26により形成した垂下部28のうち、排気フード32の下端よりも上方で開口する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、給気口16が、垂下部28のうち、排気フード32の下端と同じ高さ、または排気フード32の下端よりも下方で開口する構成としてもよい。
【0073】
(6)本実施形態の置換換気システム1では、給気口16が、給気チャンバ26により形成した垂下部28の床板4と対向する下面に開口し、給気口16が、床板4へ向けて低温空気を供給する床板4へ向けて低温空気を供給する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、給気口16が、垂下部28の側壁6や天井板10と対向する面に開口し、給気口16が、側壁6や天井板10へ向けて低温空気を供給する構成としてもよい。ここで、給気口16が、垂下部28の側壁6と対向する面に開口する場合は、垂下部28の、四枚の側壁6のうち、加熱源14と近い側面6以外と対向する面に、給気口16を開口する。これは、垂下部28の、四枚の側壁6のうち、加熱源14と近い側面6と対向する面に、給気口16を開口すると、給気口16から供給する低温空気が、加熱源14の方向へ向けて移動するため、空調空間2内の換気状態が混合換気となりやすく、空調空間2内を置換換気することが困難となるためである。
【0074】
(7)本実施形態の置換換気システム1では、排気フード32を形成する板材32a,32bの下端に、袖壁66を取り付けたが、これに限定するものではなく、排気フード32を形成する板材32a,32bに、袖壁66を取り付けない構成としてもよい。
(8)本実施形態の置換換気システム1では、空調空間2を、業務用の電化厨房としたが、これに限定するものではなく、空調空間2を、例えば、冷凍食品の製造工場や、情報処理端末を多数配置したデータセンター等としてもよい。すなわち、空調空間2が、加熱された空気が発生する環境や、油分を含む空気を発生する環境であれば、本実施形態の置換換気システム1を用いた置換換気を効果的に行うことが可能となる。また、空調空間2を、情報処理端末を多数配置したデータセンターとした場合、加熱源14は、情報処理端末等のOA機器となる。
【0075】
(9)本実施形態の置換換気システム1では、給気口16を、給気チャンバ26により形成した垂下部28に取り付けた多孔板により形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図4中に示すように、給気チャンバ26の床板4と対向する下面のうち、給気チャンバ26の四辺それぞれに、床板4へ向けて垂下する四枚の垂壁82を取り付け、給気チャンバ26及び四枚の垂壁82により、天井板10から垂下した垂下部28を形成する。さらに、給気チャンバ26の床板4と対向する下面に、空調機36から給気チャンバ26に低温空気を供給する供給口84を形成する。そして、空調空間2内に対して実質的に低温空気を供給する給気口16を、四枚の垂壁82に囲まれた空間の下端に開口する開口部により形成して、給気口16を天井板10よりも下方に配置してもよい。
【0076】
なお、図4は、第一実施形態の変形例の構成を示す図である。また、図4中では、図2中と同様、説明のために、天井空間30の空調空間2に対する広さを、実際の比率よりも大きく図示している。同様に、図4中では、説明のために、主排気ダクト50のうち、主排気口18と主排気風量制御ダンパ52との間の部分を屈曲させて図示しているが、この部分は、直線状の場合もある。
【0077】
(10)本実施形態の置換換気システム1では、給気口16を、給気チャンバ26により形成した垂下部28に取り付けた多孔板により形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図5中に示すように、給気口16を、垂下部28の床板4と対向する下面全体に開口する開口部により形成してもよい。この場合、例えば、図5中に示すように、給気チャンバ26を天井空間30内に配置し、天井空間30内に配置した給気チャンバ26の床板4と対向する下面のうち、垂下部28の四辺それぞれに、床板4へ向けて垂下する四枚の垂壁82を形成する。さらに、天井板10に、空調機36から給気チャンバ26に低温空気を供給する供給口84を形成する。これにより、四枚の垂壁82により、天井板10から垂下した垂下部28を形成して、空調空間2内に対して実質的に低温空気を供給する給気口16を、四枚の垂壁82に囲まれた空間の下端に形成して、給気口16を天井板10よりも下方に配置する。
【0078】
なお、図5は、第一実施形態の変形例の構成を示す図である。また、図5中では、図2中と同様、説明のために、天井空間30の空調空間2に対する広さを、実際の比率よりも大きく図示している。同様に、図5中では、説明のために、主排気ダクト50のうち、主排気口18と主排気風量制御ダンパ52との間の部分を屈曲させて図示しているが、この部分は、直線状の場合もある。
【0079】
(11)本実施形態の置換換気システム1では、グリスフィルタ64を、円筒形状に形成したが、これに限定するものではない。すなわち、グリスフィルタ64を、例えば、断面方形の筒状等、円筒形状以外の形状に形成してもよい。
(12)本実施形態の置換換気システム1では、空調機36を、天井空間30内に配置したが、これに限定するものではない。すなわち、空調機36を、空調室等、空調空間2を形成する部屋以外の部屋に設置し、空調機36と給気チャンバ26を給気ダクト38により連結してもよい。
【0080】
(第一実施例)
上述した第一実施形態の置換換気システムと構成が一部異なる置換換気システム(以下、「第一発明例」と記載する)により空調空間内の置換換気を行った場合と、第一実施形態の置換換気システムとは構成が大きく異なる換気システム(以下、「比較例」と記載する)により空調空間内の置換換気を行った場合に対し、空調空間内の温度分布及び空気の濃度(以下、「空気濃度」と記載する)を測定した。
【0081】
まず、図6及び図7を用いて、第一発明例の置換換気システム1により空調空間2内の置換換気を行った際の、空調空間2内の温度分布及び空気濃度の測定に用いる、測定装置の構成を説明する。
図6は、第一発明例の置換換気システム1により空調空間2内の置換換気を行った際の、空調空間2内の温度分布及び空気濃度の測定に用いる、測定装置の構成を示す図である。また、図7は、図6のVII−VII線断面図である。
【0082】
第一発明例の置換換気システム1は、従排気口を備えていない点と、排気フード32を形成する板材に袖壁を取り付けていない点を除き、上述した第一実施形態の置換換気システムと同様の構成であるため、その説明は省略する(図1から図3参照)。
なお、空調空間2の広さは、図6中に示す矢印X方向の長さを4000[mm]、図6及び図7中に示す矢印Y方向の長さを4000[mm]、図7中に示す矢印Z方向の長さを2500[mm]とした。
【0083】
また、空調空間2を形成する床板4、側壁6及び天井板10は、それぞれ、断熱性能が0.49[W・m/K]であり、厚さ42[mm]の断熱パネルで形成した。
また、天井板10の下面に取り付ける照明12は、40Wの蛍光灯を2本一組とし、それぞれ、天井板10の下面において、4箇所に取り付ける。
図6及び図7中に示すように、この測定装置は、複数の空間温度センサ86と、複数の表面温度センサ88と、複数のトレーサーガス(SF:六フッ化硫黄)濃度検出センサ(図示せず)と、複数のトレーサーガス(SF6)発生装置90と、擾乱発生装置92を備えている。
【0084】
各空間温度センサ86は、その一部が、空調空間2内において、図6中に示す矢印X方向の中心で、図6及び図7中に示す矢印Y方向へ、600[mm]間隔で配置されて6列に配列されている。また、各空間温度センサ86の残りは、排気フード32から遠い側の側壁6から数えて5列目に配列した各空間温度センサ86から、図6中に示す矢印X方向へ、左右1列ずつ配置されて、3列に配列されている。さらに、各空間温度センサ86の残りは、加熱源14の側方に配置されている。
なお、空間温度センサ86の、側壁6からの最短距離は、100[mm]である。
【0085】
また、各空間温度センサ86は、排気フード32から遠い側の側壁6から数えて3列目までは、給気チャンバ26により形成した垂下部28との干渉を避けるため、各列において、床板4と天井板10との間に立設したポール94を用いて、図7中に示す矢印Z方向へ、200[mm]間隔で配置されて、11段に配列されている。一方、残りの3列では、各列において、上記のポール94を用いて、図7中に示す矢印Z方向へ、200[mm]間隔で配置されて13段に配列されている。
【0086】
なお、空間温度センサ86の、床板4及び天井板10からの最短距離は、50[mm]である。
各表面温度センサ88は、床板4及び天井板10に配置されている。
床板4に配置されている各表面温度センサ88は、図6中に示す矢印X方向の中心で、図6及び図7中に示す矢印Y方向へ、600[mm]間隔で配置されて6列に配列されている。
【0087】
一方、天井板10に配置されている各表面温度センサ88は、給気チャンバ26により形成した垂下部28との干渉を避けるため、図6中に示す矢印X方向の中心で、図6及び図7中に示す矢印Y方向へ、600[mm]間隔で配置されて3列に配列されている。
各トレーサーガス濃度検出センサは、排気フード32から遠い側の側壁6から数えて4列目のポール94を用いて、図7中に示す矢印Z方向へ、最も天井板10に近い空間温度センサ86と同じ位置、天井板10から3から5段目、最も床板4に近い空間温度センサ86と同じ位置に、それぞれ設定された、トレーサーガス(SF)濃度測定点96に配置されている。
【0088】
各トレーサーガス発生装置90は、加熱源14、具体的には、IHレンジ14a(出力:5kW+5kw)、電気グリドル14b(出力:6.2kw)及びIHフライヤ14c(出力:4kw)の中心位置に配置されており、それぞれ、トレーサーガス(SF)を定量発生(0.3L/min)可能な構成である。なお、IHレンジ14aに配置するトレーサーガス発生装置90は、2口あるレンジのうちの外側(図6中では左側)のレンジに配置した。
【0089】
擾乱発生装置92は、キッチンフードの捕集性能試験に用いられる擾乱の試験方法である、「Nordtest VVS−088」で用いる擾乱装置と同様の構成であり、幅0.5[m]、高さ1.0[m]の板を、移動幅1.0[m]、一定の移動速度0.5[m/s]で左右に移動させる装置である。なお、板の移動中心は、加熱源14の図6中に示す矢印X方向の中心から、図6及び図7中に示す矢印Y方向へ、650[mm]離間させた位置に設定する。
【0090】
以下、図6及び図7を参照しつつ、図8及び図9を用いて、第一発明例の置換換気システム及び比較例の換気システムを用いて、空調空間内の温度分布及び空気濃度を測定する際の測定環境及び測定条件について説明する。
図8は、比較例の換気システムにより空調空間2内の換気を行った際の、空調空間2内の温度分布及び空気濃度の測定結果を示す図である。なお、図8中では、空調空間2内の温度分布を、複数種類のハッチングによって示す。また、図8中では、空調空間2内の空気濃度を、完全混合濃度で無次元化[%]した値を枠内に記載した( )外の数字によって示し、空調空間2内のトレーサーガス濃度[ppm]を、枠内に記載した( )内の数字によって示している。
【0091】
また、図8中では、給気口16から空調空間2内へ供給される低温空気を、矢印「SA」により示している。同様に、図8中では、主排気口18からの排気を、矢印「EA」により示している。
なお、比較例の換気システムは、給気口16が、側壁6の高さ方向中心よりも下方において、側壁6よりも空調空間2内へ突出した給気チャンバ26に開口する点を除き、上述した第一発明例の置換換気システム1と同様の構成であるため、その説明は省略する(図1から図3参照)。
【0092】
また、比較例の換気システムにより空調空間2内の置換換気を行った際の、空調空間2内の温度分布及び空気濃度の測定に用いる測定装置の構成は、6列に配列されている各空間温度センサ86が、全て、上記のポール94を用いて200[mm]間隔で配置されて13段に配列されている点と、床板4及び天井板10に配置されている各表面温度センサ88が、共に、600[mm]間隔で配置されて6列に配列されている点を除き、図6及び図7中に示した測定装置と同様の構成であるため、その説明は省略する(図6及び図7参照)。
また、比較例の換気システムにより空調空間2内の置換換気を行う際の、空調空間2内の温度分布及び空気濃度の測定は、以下の表1及び表2に示す条件下で行う。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
一方、図9は、第一発明例の置換換気システム1により空調空間2内の換気を行った際の、空調空間2内の温度分布及び空気濃度の測定結果を示す図である。なお、図9中では、図8中と同様、空調空間2内の温度分布を、複数種類のハッチングによって示す。また、図9中では、図8中と同様、空調空間2内の空気濃度を、完全混合濃度で無次元化[%]した値を枠内に記載した( )外の数字によって示し、空調空間2内のトレーサーガス濃度[ppm]を、枠内に記載した( )内の数字によって示している。
【0096】
また、図9中では、図8と同様、給気口16から空調空間2内へ供給される低温空気を、矢印「SA」により示している。同様に、図9中では、図8と同様、主排気口18からの排気を、矢印「EA」により示している。
また、第一発明例の置換換気システムにより空調空間2内の置換換気を行う際の、空調空間2内の温度分布及び空気濃度の測定は、以下の表3及び表4に示す条件下で行う。
【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
なお、比較例の換気システム及び第一発明例の置換換気システムにより空調空間2内の置換換気を行う際には、共に、空調空間2内の設定温度を25.0[℃]とし、各ケースにおいて給気による投入顕熱量が同じになるような給気温度とする。
以下、図6及び図7を参照しつつ、図8及び図9を用いて、第一発明例の置換換気システム及び比較例の換気システムを用いて、空調空間内の温度分布及び空気濃度を測定した結果について説明する。
【0100】
・温度分布
図8及び図9中に示されているように、比較例の換気システムによる換気と、第一発明例の置換換気システム1による換気においては、作業域(床面―床板4の上面から1800[mm]までの高さ)での温熱環境の差異は少ない。また、図9中に示す第一発明例においては、天井板10付近の高温領域が少ない。これは、天井板10から下方に突出した給気チャンバ26により形成した垂下部28に開口する給気口16から給気された23.5℃の低温空気が、空調空間2下部だけでなく、空調空間2上部の温度分布にも影響していると考えられるためである。
【0101】
・トレーサーガス濃度
図8中に示す比較例においては、図9中に示す第一発明例と比較して、空調空間2上部の空気濃度が高く、空調空間2下部の空気濃度が低い。また、図8中に示す比較例では、作業域と空調空間2上部との間を境に、空気濃度の変化が顕著であるが、図9中に示す第一発明例は、床面から天井面にかけて、徐々に空調空間2内のトレーサーガス濃度が高くなっている。
【0102】
以上の測定結果から、第一発明例は、比較例と比較して、作業域での温熱環境の差異が少なく、また、空調空間2内のトレーサーガス濃度の変化が緩やかであることを確認した。これにより、第一発明例は、比較例と比較して、空調空間2内の温熱・空気環境を、安定して良好な状態とすることが可能となることを確認した。
これは、給気口16を天井板10から下方に突出した給気チャンバ26により形成した垂下部28に開口して、天井板10よりも下方から低温空気を給気することにより、空調空間2の上部における空気の誘引や拡散を抑制することが可能となるためである。
【0103】
(第二実施例)
上述した第一実施形態の置換換気システムと構成が一部異なる置換換気システム(以下、「第二発明例」と記載する)により空調空間2内の置換換気を行った場合と、上述した第一実施例で説明した比較例により空調空間2内の置換換気を行った場合に対し、空調空間2内の温度分布及び空調空間2内のトレーサーガス濃度を測定した。
【0104】
第二発明例の置換換気システムにより空調空間2内の置換換気を行った際の、空調空間2内の温度分布及び空調空間2内のトレーサーガス濃度の測定に用いる、測定装置の構成は、上述した第一実施例で説明した、第一発明例の置換換気システムにより空調空間2内の置換換気を行った際の測定装置と同様であるため、その説明は省略する(図6及び図7参照)。
【0105】
また、第二発明例の置換換気システム1は、排気フード32を形成する板材に袖壁を取り付けていない点を除き、上述した第一実施形態の置換換気システムと同様の構成であるため、その説明は省略する(図1から図3参照)。
なお、空調空間2の広さ、空調空間2を形成する床板4、側壁6及び天井板10、天井板10の下面に取り付ける照明12は、上述した第一実施例と同様であるため、その説明は省略する。
【0106】
以下、図9を参照しつつ、図10を用いて、第二発明例の置換換気システム及び第一発明例の換気システムを用いて、空調空間2内の温度分布及び空調空間2内のトレーサーガス濃度を測定する際の測定環境及び測定条件について説明する。
なお、第二実施例における測定条件は、上述した第一実施例と同様であるため、その説明は省略する。
【0107】
図10は、第二発明例の置換換気システム1により空調空間2内の換気を行った際の、空調空間2内の温度分布及び空調空間2内のトレーサーガス濃度の測定結果を示す図である。なお、図10中では、図8中と同様、空調空間2内の温度分布を、複数種類のハッチングによって示す。また、図10中では、図8中と同様、空調空間2内のトレーサーガス濃度を、完全混合濃度で無次元化[%]した値を枠内に記載した( )外の数字によって示し、空調空間2内のトレーサーガス濃度[ppm]を、枠内に記載した( )内の数字によって示している。
【0108】
また、図10中では、図8と同様、給気口16から空調空間2内へ供給される低温空気を、矢印「SA」により示している。
また、図10中では、主排気口18からの排気を、矢印「EA1」により示し、従排気口20からの排気を、矢印「EA2」により示している。
また、第二発明例の置換換気システムにより空調空間2内の置換換気を行う際の、空調空間2内の温度分布及び空調空間2内のトレーサーガス濃度の測定は、以下の表5及び表6に示す条件下で行う。
【0109】
【表5】

【0110】
【表6】

【0111】
なお、第二発明例の換気システム及び第一発明例の置換換気システムにより空調空間2内の置換換気を行う際には、共に、空調空間2内の設定温度を25.0[℃]とし、各ケースにおいて給気による投入顕熱量が同じになるような給気温度とする。
以下、図9を参照しつつ、図10を用いて、第二発明例の置換換気システム及び第一発明例の換気システムを用いて、空調空間2内の温度分布及び空調空間2内のトレーサーガス濃度を測定した結果について説明する。
【0112】
・温度分布
図9及び図10中に示されているように、第二発明例の置換換気システム1による換気においては、第一発明例の換気システムによる換気と比較して、特に、空調空間2上部において、高温の領域が減少している。
・トレーサーガス濃度
図10中に示す第二発明例においては、図9中に示す第一発明例と比較して、特に、床板4の上面から1850[mm]以上の高さにおいて、トレーサーガス濃度が低下している。
【0113】
以上の測定結果から、第二発明例は、第一発明例と比較して、特に、空調空間2上部において、高温の領域が減少しているとともに、トレーサーガス濃度が低下していることを確認した。これにより、第二発明例は、第一発明例と比較して、空調空間2内の温熱・空気環境を、安定して良好な状態とすることが可能となることを確認した。
これは、天井板10のうち給気口16と排気フードとの間の位置に従排気口20を開口することにより、主排気口18から空調空間2外へ排気されず、排気フード32の外側へ移動して天井板10へ向けて上昇した高温空気を、従排気口20から空調空間外へ排気することが可能となるためである。
【0114】
(第三実施例)
上述した第一実施形態の置換換気システムと構成が一部異なる置換換気システム(以下、「第三発明例」と記載する)により空調空間内の置換換気を行った場合と、上述した第一実施例で説明した比較例により空調空間内の置換換気を行った場合に対し、空調空間内の温度分布及び空気濃度を測定した。
第三発明例の置換換気システムにより空調空間内の置換換気を行った際の、空調空間内の温度分布及びトレーサーガス濃度の測定に用いる、測定装置の構成は、上述した第一実施例で説明した、第一発明例の置換換気システムにより空調空間内の置換換気を行った際の測定装置と同様であるため、その説明は省略する(図6及び図7参照)。
【0115】
また、第三発明例の置換換気システム1は、従排気口を備えていない点を除き、上述した第一実施形態の置換換気システムと同様の構成であるため、その説明は省略する(図1から図3参照)。
なお、空調空間2の広さ、空調空間2を形成する床板4、側壁6及び天井板10、天井板10の下面に取り付ける照明12は、上述した第一実施例と同様であるため、その説明は省略する。
【0116】
以下、図9を参照しつつ、図11を用いて、第三発明例の置換換気システム及び第一発明例の換気システムを用いて、空調空間内の温度分布及びトレーサーガス濃度を測定する際の測定環境及び測定条件について説明する。
なお、第三実施例における測定条件は、上述した第一実施例と同様であるため、その説明は省略する。
【0117】
図11は、第三発明例の置換換気システム1により空調空間2内の換気を行った際の、空調空間2内の温度分布及びトレーサーガス濃度の測定結果を示す図である。なお、図11中では、図8中と同様、空調空間2内の温度分布を、複数種類のハッチングによって示す。また、図11中では、図8中と同様、空調空間2内の空気濃度を、完全混合濃度で無次元化[%]した値を枠内に記載した( )外の数字によって示し、空調空間2内のトレーサーガス濃度[ppm]を、枠内に記載した( )内の数字によって示している。
【0118】
また、図11中では、図8と同様、給気口16から空調空間2内へ供給される低温空気を、矢印「SA」により示し、主排気口18からの排気を、矢印「EA」により示している。
また、第三発明例の置換換気システムにより空調空間2内の置換換気を行う際の、空調空間2内の温度分布及びトレーサーガス濃度の測定は、以下の表7及び表8に示す条件下で行う。
【0119】
【表7】

【0120】
【表8】

【0121】
なお、第三発明例の換気システム及び第一発明例の置換換気システムにより空調空間2内の置換換気を行う際には、共に、空調空間2内の設定温度を25.0[℃]とし、各ケースにおいて給気による投入顕熱量が同じになるような給気温度とする。
以下、図9を参照しつつ、図11を用いて、第三発明例の置換換気システム及び第一発明例の換気システムを用いて、空調空間2内の温度分布及びトレーサーガス濃度を測定した結果について説明する。
【0122】
・温度分布
図9及び図11中に示されているように、第一発明例の換気システムによる換気と、第三発明例の置換換気システム1による換気においては、作業域における温度分布には、大きな差異は見られない。しかしながら、第三発明例の置換換気システム1による換気は、第一発明例の換気システムによる換気と比較して、特に、排気フード32近辺における温度分布において、高温の領域が減少している。
【0123】
・トレーサーガス濃度
図11中に示す第三発明例においては、図9中に示す第一発明例と比較して、特に、天井板10付近の高さにおいて、空気濃度が低下している。
また、第三発明例においては、床板4の上面から2050[mm]の高さにおけるトレーサーガス濃度が、床板4の上面から2450[mm]の高さにおけるトレーサーガス濃度よりも高い。これは、天井板10付近の熱溜まりは、その大部分が照明12の発熱によるものであり、排気フード32から漏れた高温空気の上昇流が、袖壁66により、床板4の上面から2050[mm]の高さにおいて停滞すると考えられるためである。
以上の測定結果から、第三発明例は、第一発明例と比較して、特に、排気フード32近辺における温度分布において、高温の領域が減少していることを確認した。これにより、第三発明例は、第一発明例と比較して、作業域に近い空間の温度を低下させることが可能となることを確認した。
【符号の説明】
【0124】
1 置換換気システム
2 空調空間
4 床板
6 側壁
8 躯体天井
10 天井板
12 照明
14 加熱源
14a IHレンジ
14b 電気グリドル
14c IHフライヤ
16 給気口
18 主排気口
20 従排気口
22 排気量制御手段
24 排気状態制御手段
26 給気チャンバ
28 垂下部
30 天井空間
32 排気フード(板材32a〜32c)
34 外気取り入れダクト
36 空調機
38 給気ダクト
40 外気量制御ダンパ
42 外気状態制御手段
44 外気取り入れ量制御装置
46 外気ガラリ
48 給気送風機
50 主排気ダクト
52 主排気風量制御ダンパ
54 主排気送風機
56 主排気状態制御手段
58 主排気量制御装置
60 主排気ガラリ
62 主排気口側フィルタ
64 グリスフィルタ
66 袖壁
68 従排気ダクト
70 従排気風量制御ダンパ
72 従排気送風機
74 従排気状態制御手段
76 従排気量制御装置
78 従排気ガラリ
80 従排気口側フィルタ
82 垂壁
84 供給口
86 空間温度センサ
88 表面温度センサ
90 トレーサーガス(SF)発生装置
92 擾乱発生装置
94 ポール
96 トレーサーガス(SF)濃度測定点
SA 給気口から空調空間内へ供給される低温空気
EA 排気口からの排気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板と、側壁と、躯体天井から下方へ離間させて配置した天井板と、により囲まれた空調空間内に、当該空調空間内の温度よりも低い低温空気を供給し、当該低温空気よりも高い高温空気を前記空調空間内で上昇させて空調空間外へ排気して、前記空調空間内の換気を行う置換換気システムであって、
前記空調空間内に前記低温空気を供給する給気口と、前記高温空気を前記空調空間外へ排気する主排気口と、を備え、
前記給気口は、前記天井板から垂下した垂下部に開口することを特徴とする置換換気システム。
【請求項2】
前記主排気口は、前記天井板から前記床板へ向けて張り出して床板との間に空間を形成する排気フードにより周囲を覆われ、
前記天井板のうち前記給気口と前記排気フードとの間の位置に開口し、且つ前記高温空気を前記空調空間外へ排気する従排気口を備えることを特徴とする請求項1に記載した置換換気システム。
【請求項3】
前記主排気口からの排気量と前記従排気口からの排気量との割合を制御する排気量制御手段を備え、
前記排気量制御手段は、前記従排気口からの単位時間当たりの排気量が、前記主排気口からの単位時間当たりの排気量よりも少なくなるように、前記主排気口からの排気量と前記従排気口からの排気量との割合を制御することを特徴とする請求項2に記載した置換換気システム。
【請求項4】
前記排気量制御手段は、前記主排気口からの排気量をEA1とし、前記従排気口からの排気量をEA2とした場合に、EA1:EA2が19:1〜4:1の範囲内となるように前記主排気口からの排気量と前記従排気口からの排気量との割合を制御することを特徴とする請求項3に記載した置換換気システム。
【請求項5】
前記空調空間内には、当該空調空間内の空気の温度を高くする加熱源が配置されており、
前記加熱源の作動状態に応じて、前記主排気口及び前記従排気口からの排気状態を制御する排気状態制御手段を備え、
前記排気状態制御手段は、前記加熱源の作動中は、前記主排気口及び前記従排気口からの排気を行うように前記排気状態を制御し、作動している前記加熱源が停止してから所定の時間が経過すると、前記主排気口からの排気を停止するとともに前記従排気口からの排気が継続されるように前記排気状態を制御することを特徴とする請求項2から4のうちいずれか1項に記載した置換換気システム。
【請求項6】
前記給気口は、前記垂下部のうち前記排気フードの下端よりも上方で開口することを特徴とする請求項2から5のうちいずれか1項に記載した置換換気システム。
【請求項7】
前記給気口は、前記垂下部の前記床板と対向する下面に開口することを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項に記載した置換換気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−33258(P2011−33258A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179109(P2009−179109)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本建築学会,2009年度大会(東北)学術講演梗概集 D−2分冊,2009年7月20日発行
【出願人】(000222956)東洋熱工業株式会社 (35)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(591059445)ホーコス株式会社 (39)
【出願人】(592254526)学校法人五島育英会 (28)
【Fターム(参考)】