説明

置換2,3−ベンゾジアゼピン類による過敏性腸症候群及び非潰瘍性消化不良の治療

過敏性腸症候群又は非潰瘍性消化不良を治療し予防するために投与される式I
【化1】


(ここで、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は明細書に定義する通りである。)
の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年12月3日付けの共に継続中の米国特許出願第10/309,526号の一部継続出願である。
発明の分野
本発明は、過敏性腸症候群及び非潰瘍性消化不良の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,3−ベンゾジアゼピン類
ある種の2,3−ベンゾジアゼピン類が、それらの潜在的なCNS調節活性のために広く探求されてきた。トフィソパム(Tofisopam)(グランダキシン(登録商標))(構造式をその原子の番号付けと共に以下に示す。)、ギリソパム(Girisopam)及びノリソパム(Norisopam)のような化合物が、相当な抗不安活性及び抗精神病活性を有することが証明された。
【化1】

【0003】
トフィソパムは、人間において、ジアゼパム(バリウム(登録商標))及びクロルジアゼペポキシド(リブリウム(登録商標))のような広く使用されている1,4−ベンゾジアゼピン(BZ)抗不安薬の活性プロフィルと有意に異なっている活性プロフィルを有することが示された。また、1,4−ベンゾジアゼピン類は、鎮静−催眠活性を有することに加えて、いくつかの疾病状態に治療上有用であるがそれでも潜在的に厄介な副作用のある筋弛緩性及び鎮痙性を持っている。従って、1,4−ベンゾジアゼピン類は、単独で投与されるときに安全であるが、アルコールを含めて他のCNS薬剤と併用する際には危険であり得る。
【0004】
これと対照的に、トフィソパムは、評価できる鎮静、筋弛緩又は鎮痙性を有しない非鎮静性の抗不安薬である。ホルバス他、Progress in Neurobiology、60(2000):309−342。その全ての開示を参照することによりここに含める。)を参照されたい。臨床研究では、トフィソパムは、精神運動性能を損なうよりもむしろ向上させ、エタノールとの相互作用を示さなかった(同上)。これらの観察は、トフィソパムが中枢BZ受容体と相互作用せずに末梢BZ受容体に弱く結合するだけであることを示すデータと符合する。
【0005】
トフィソパムと構造的に類似する他の2,3−ベンゾジアゼピン類が研究され、色々な活性プロフィルを有することが示された。例えば、GYKI−52466及びGYKI−53655(構造式を以下に示す。)は、AMPA(α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸)部位で非競合的グルタメート拮抗物質として作用し、神経保護、筋弛緩及び鎮痙活性を証明した(同上)。研究された2,3−ベンゾジアゼピン類の他のグループは、化合物GYKI−52895により代表され、選択的ドーパミン取り込み阻害剤として抗鬱及び抗パーキンソン療法に使用可能な活性を示す。
【化2】

【0006】
トフィソパムは、(R)−エナンチオマーと(S)−エナンチオマーとのラセミ混合物である。これは、ベンゾジアゼピン環の5−位置に不斉炭素、即ち、4個の異なった基が結合している炭素があるためである。
【0007】
トフィソパムの構造及び立体配座性がNMR、CD及びX線結晶学によって決定された。ビジー他、Chirality、1:271−275(1989)(その全ての開示を参照することによりここに含める。)を参照されたい。2,3−ジアゼピン環は、2個の異なった配座体として存在する。主要な配座体である(+)R及び(−)Sは準赤道結合位置に5−エチル基を有する。少数の配座体である(−)R及び(+)Sにおいては5−エチル基は準軸結合位置にある。従って、ラセミ体トフィソパムは、4個の分子種、即ち、2個のエナンチオマーであってそれぞれが二つの立体配座で存在するものとして存在できる。旋光性の符合は、ジアゼピン環を一方の配座体から他方の配座体に反転させると逆になる。結晶形では、トフィソパムは、主要な立体配座としてのみ存在し、右旋性のトフィソパムは(R)絶対配置である。トス他、J.Heterocyclic Chem.、20:709−713(1983);ホガシ他、Bioorganic Heterocycles、H.C.ファンデルプラス、L.エトボス、M.シモンギ編、ブダペスト アムステルダム:Akademia;Kiado−Elsevier、229:233(1984)(それらの全ての開示を参照することによりここに含める。)を参照されたい。
【0008】
トフィソパムのこれらの2個の立体配座体の結合差が、ヒトアルブミンによる結合研究において報告された。シモンギ他、Biochem.Pharm.、32(12):1917−1920(1983)(その全ての開示を参照することによりここに含める。)を参照されたい。また、2個の配座体は、平衡体で存在すると報告された。ジラ他、J.of Liquid Chromatograpy & Related Technologies、22(5):713−719(1999)並びにその中の参考文献(それらの全ての開示を参照することによりここに含める。)を参照されたい。
【0009】
トフィソパムの光学的に純粋な(R)−エナンチオマーである(R)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンが単離されて、ラセミ混合物の非鎮静性抗不安活性を持つことが示された。米国特許第6,080,736号(この全ての開示を参照することによってここに含める。)を参照されたい。
【0010】
トフィソパムの代謝
トフィソパムは、人間、ラット、犬、猿及び兎において、ホスト種に依存して、6種の主要代謝産物のうちの1種以上に代謝される。
【0011】
【表1】

トモリ他、J.of Chromatography、241(1982)、p89−99を参照されたい。
【0012】
上記の命名化合物のうちで、化合物1、3及び5は人間における代謝産物として同定された。これらの化合物は合成され、ある種の薬理学的アッセイ法で試験された。C.伊藤、“ベンゾジアゼピン誘導体の構造−活性の関係についての行動薬理学的研究、特に、2,3−ベンゾジアゼピンの活性に関して”、J.Tokyo Med.College、39:369−384(1981)を参照されたい。
【0013】
マウスにおける攻撃抑止率のアッセイ法において、化合物1及び3は0%の攻撃抑止率を示し、化合物5は28.6%の攻撃抑止率を示した。ラットにおけるムリサイド(muricide)(マウス殺し行動)のアッセイ法において、化合物3は0%のムリサイド抑止率を示したが、化合物1及び5はそれぞれ20%のムリサイド抑止率を示した。抗ノルアドレナリン効果を試験するためのアッセイ法において、化合物1は効果を示さなかったが、化合物3及び5は測定可能な活性を証明した。C.伊藤(同上)を参照されたい。
また、化合物1、3、5及び6が米国特許第4,322,346号(その全ての開示を参照することによってここに含める。)に開示された。化合物3はマウスにおいてナルコーシス−増強活性を証明したと報告されている。
【0014】
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(IBS)は、生活の質にはっきりした影響を及ぼし且つ健康管理コストの大きな割合を占める普通の障害である。IBSは、最近修正されたローマ基準を元にして、(A)直前の12ヶ月の少なくとも12週間にわたって構造的又は生化学的異常性により説明できない腹部の不快感又は痛みの存在、並びに(B)次の三つの痛み:(1)排便により和らげられる痛み、(2)その発症が腸の運動(下痢又は便秘)の回数の変化と関連しているときの痛み及び(3)その発症が便の形の変化(下痢、水っぽい、又はペレット様)と関連しているときの痛みのうちの少なくとも二つ痛みとして定義される。IBSは、支配的な徴候が腹痛、下痢、便秘又は下痢と交互の便秘であるかどうかによって、四つのカテゴリーに分けることができる。
【0015】
米国の成人のほぼ15%がIBSの診断と一致する徴候を記録していて、この疾病には男性よりも女性の方が3倍多く罹患する。この相違が女性の間で障害の真の優勢さを反映しているか又は女性が医療ケアを求めそうであるという事実だけを反映しているかどうかは決定されなかった。IBSは、米国において胃腸専門家によりなされるもっとも普通の診断であり、一時ケアの提供者を訪れる人の12%を占める。この状態の人の25%のみがそのための医療ケアを求めることが推定され、研究では、ケアを求める人はケアを求めない人よりも挙動的及び精神医学的な問題を有しているようであることが示唆された。更に、IBSの診断を受けた患者は、他の非胃腸性機能障害、例えば線維筋肉痛及び間質性膀胱炎の恐れが増える。過敏性腸症候群は、米国において年間、直接医療コストに概算で80億ドル、間接コストに250億ドルも要する。
【0016】
纏められている証拠は、IBSが胃腸の運動性及び上皮の機能の調節の変化並びに内臓事故の認識の変化から生じることを支持している。メイヤー他、Digestive Diseases、19:212−218(2001)(その全ての開示を参照することによりここに含める。)を参照されたい。
【0017】
腸の運動性の変化、内臓の過敏性、心理社会的因子、神経伝達物質の不均衡及び感染は、全て、過敏性腸症候群の発現に役割を果たすものであると提案された。B.ホルビッツ他、The New Engl. J.Medecine、344:24(2001)(その全ての開示を参照することによりここに含める。)を参照されたい。
【0018】
非潰瘍性消化不良
非潰瘍性消化不良(NUD)は、他の器質性原因なしで、3ヶ月以上の持続期間(徴候がその期間の25%以上存在する。)にわたって慢性又は再発性の上部腹部の痛み又は不快感として定義される。R.S.フィッシャー、H.P.パークマン、“非潰瘍性消化不良の管理”、New Engl.J.Med.、339:1376−1381(1998)(その全ての開示を参照することによりここに含める。)を参照されたい。より簡単な定義は、ロックにより提供されたもの:“患者の徴候について構造的な又は生化学的な説明のない持続性又は再発性の上部腹部の痛み又は不快感”である。G.R.ロック、“非潰瘍性消化不良”、Mayo Clin.Proc.、74:1011−15(1999)(その全ての開示を参照することによりここに含める。)を参照されたい。
【0019】
NUDは、鼓張、悪心、早期満腹感、げっぷ及び胸焼けを包含し得る。それは、特定の状態よりもむしろ複雑な徴候である。器質性原因は、消化不良の患者の40%だけに見られる。最も普通の原因は、十二指腸潰瘍、GERD、胃不全麻痺及び胃癌である。その他の原因には、胆石症又は総胆管結石症、膵臓炎、炭水化物吸収不良、腸寄生虫、NSAID又はその他の薬物損傷、糖尿病、甲状腺異常又は結合組織障害、虚血性の腸、腹部の癌がある。器質性原因のない患者の60%は、“非潰瘍性消化不良”を有するものと思われ、刺激性腸症候群、機能性胸焼け及び非心性胸部痛を含めて、一連の機能性胃腸障害に入る。L.S.フリードマン、“ヘリコバクターピロリ菌及び非潰瘍性消化不良”、New Engl.J.Med.、339:1928−30(1998)(その全ての開示を参照することによりここに含める。)を参照されたい。
【0020】
NUDはIBSと多くの類似性を有する。NUDとIBSは、通常は、腹痛が異常な腸の習癖と関連しているかどうかの差である。このような関連が存在するならば、この状態は、NUDよりもむしろIBSであると認められる。
【0021】
IBSと同じように、NUDの原因は十分に理解されていない。NUDは、腸から生じる感覚の認識の変化が最も原因となるようである。NUDの他の可能な原因が研究され、ヘリコバクターピロリ菌の感染(潰瘍疾患と関連する胃における細菌感染)並びに遅れた胃内容物の空腹を生じさせる胃機能の変化が含まれる。NUDの患者の約25〜50%は、一部は、食後の増大した徴候を説明できる胃からの空腹を示した。
【0022】
しかして、IBS及びNUDの治療に有用である新しい薬剤が必要とされる。特に、これらの慢性障害の治療及び予防に常習的に長期間使用するのに適切である薬剤が必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の解決しようとする課題は、前記の各項に記載した通りである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一具体例では、IBS又はNUDを治療し又は予防する方法であって、そのような治療の必要な場合に個体に有効量の次式I:
【化3】

[ここで、
1は−(C1〜C7)ヒドロカルビル又は−(C2〜C6)ヘテロアルキルであり、
2は−H又は−(C1〜C7)ヒドロカルビルであり、ここにR1とR2は一緒になって炭素環式又は複素環式の5又は6員環を形成でき、
3、R4、R5又はR6(以下では纏めて“フェニル環置換基”)の一つは−OHであり、残りのフェニル環置換基は−(C1〜C7)ヒドロカルビル、−CF3、−O(C1〜C7)ヒドロカルビル、−O−アシル、−NH2、−NH(C1〜C6)アルキル、−N((C1〜C6)アルキル)2、−NH−アシル及びハロゲンよりなる群から独立して選ばれ、R5とR6は一緒になって5、6又は7員の複素環式環を形成でき、
波線により示される炭素−炭素単結合はC*の周囲の絶対立体配座が(R)又は(S)のいずれかであり得ることを示す。]
に従う化合物の少なくとも1種又はその製薬上許容できる塩を投与することからなる、IBS又はNUDの治療又は予防方法が提供される。
【0025】
本発明の他の観点によれば、式Iに従う少なくとも1種の化合物がIBS又はNUDを治療し又は予防するための薬剤の製造に使用される。
【0026】
式Iの化合物の第一の下位の具体例によれば、R3又はR4の一つが−OHであり、他のフェニル環置換基が−(C1〜C7)ヒドロカルビル、−CF3、−O(C1〜C7)ヒドロカルビル、−O−アシル、−NH2、−NH(C1〜C6)アルキル、−N((C1〜C6)アルキル)2、−NH−アシル及びハロゲンよりなる群から独立して選ばれる。
【0027】
式Iの化合物の第二の下位の具体例によれば、R3又はR4の一つが−OHであり、他のフェニル環置換基の1個又は2個が−OCH3であり、他のフェニル環置換基が−(C1〜C7)ヒドロカルビル、−CF3、−O(C1〜C7)ヒドロカルビル、−O−アシル、−NH2、−NH(C1〜C6)アルキル、−N((C1〜C6)アルキル)2、−NH−アシル及びハロゲンよりなる群から独立して選ばれる。
【0028】
式Iの化合物の第三の下位の具体例によれば、1個のフェニル環置換基が−OHであり、他のフェニル環置換基が−O(C1〜C7)ヒドロカルビルから独立して選ばれる。
【0029】
式Iの化合物の第四の下位の具体例によれば、1個のフェニル環置換基が−OHであり、他のフェニル環置換基が−O(C1〜C7)アルキルから独立して選ばれる。
【0030】
式Iの化合物の第五の下位の具体例によれば、1個のフェニル環置換基が−OHであり、他のフェニル環置換基が−OCH3である。
【0031】
好ましくは、第三、第四及び第五の下位の具体例において−OHであるフェニル環置換基は、R3又はR4である。
【0032】
本発明のある具体例においては、R1及びR2は、−(C1〜C7)アルキル、好ましくは−(C1〜C3)アルキルから独立して選ばれる。好ましい具体例では、R1は−CH2CH3であり、R2は−CH3である。
【0033】
本発明の実施に使用するのに好ましい化合物は下記のものから選ばれる。
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
又はこれらの製薬上許容できる塩類。
【0034】
本発明の実施に使用するのに更に好ましい化合物は下記のものから選ばれる。
1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
又はこれらの製薬上許容できる塩類。
【0035】
本発明のある具体例によれば、該化合物が実質上単離された(R)−エナンチオマーの形態にある前記した方法が提供される。
本発明の他の具体例によれば、該化合物が実質上単離された(S)−エナンチオマーの形態にある前記した方法が提供される。
【0036】
定義
用語“過敏性腸症候群”とは、小腸及び大腸の運動性が異常に増大して、腹痛、便秘又は下痢を生じさせることが特徴であるしばしば再発性の障害をいう。
【0037】
用語“非潰瘍性消化不良”は、他の器質性原因なしで、3ヶ月以上の持続期間(徴候がその期間の25%以上存在する。)にわたって慢性又は再発性の上部腹部の痛み又は不快感をいう。
【0038】
用語“アシル”は、一般式:−C(=O)−R(ここに、−Rは水素、ヒドロカルビル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシ又はアルコキシである。)の基を意味する。それらの例には、例えば、アセチル(−C(=O)CH3)、プロピオニル(−C(=O)CH2CH3)、ベンゾイル(−C(=O)C65)、フェニルアセチル(−C(=O)CH265)、カルボエトキシ(−CO2CH2CH3)及びジメチルカルバモイル(−C(=O)N(CH32)がある。アシル基におけるR基がアルコキシ、アルキルアミノ又はジアルキルアミノであるときは、このアルキル部分は好ましくは−(C1〜C6)アルキル、更に好ましくは−(C1〜C3)アルキルである。Rがヒドロカルビルであるときは、それは好ましくは−(C1〜C7)ヒドロカルビルである。Rがヒドロカルビルであるときは、それは好ましくはアルキル、更に好ましくは(C1〜C6)アルキルである。
【0039】
用語“アルキル”は、それ自体で又は他の置換基の意味の一部として、別に示してなければ、指示した炭素原子数(即ち、C1〜C6は1〜6個の炭素を意味する。)を有する直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基(二基及び多基も含む。)を意味する。アルキル基には、直鎖状、分岐鎖状又は環状の基が含まれ、直鎖状が好ましい。それらの例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチルがある。(C1〜C6)アルキルが好ましい。最も好ましいのは(C1〜C3)アルキル、特に、エチル、メチル及びイソプロピルである。
【0040】
用語“アルコキシ”は、単独で使用され又は他の用語の意味と組み合わせて使用され、別に述べてなければ、酸素原子を介して分子の残部に結合した前記のような指示した炭素原子数を有するアルキル基、例えば、メトキシ、エトキシ、1−プロポキシ、2−プロポキシ(イソプロポキシ)並びにこれらの高級同族体及び異性体を意味する。好ましいのは(C1〜C6)アルコキシである。更に好ましいのは(C1〜C3)アルコキシ、特にエトキシ及びメトキシである。
【0041】
用語“アミン”又は“アミノ”は、一般式:−NRR’(ここで、R及びR’は水素又はヒドロカルビル基から独立して選ばれるか、又は一緒になって複素環を形成する。)の基をいう。アミノ基の例としては、−NH2、メチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ、ベンジルアミノ、ピペリジニル、ピペラジニル、インドリニルがある。好ましいヒドロカルビル基は(C1〜C7)ヒドロカルビル基である。好ましいのは、アルキル基であるヒドロカルビル基である。更に好ましいのは(C1〜C6)アルキルである。
【0042】
用語“芳香族”は、芳香族性(4n+2個の局在化したπ電子)を有する1個以上の多価不飽和環を有する炭素環又は複素環をいう。
【0043】
用語“アリール”は、単独で使用され又は他の用語の意味と組み合わせて使用され、別に述べてなければ、1個以上の環(典型的には、1個、2個又は3個の環)を含有する炭素環式芳香族系を意味し、このような環はジフェニルのようなぶら下がった態様で互いに結合してよく、又はナフタリンのように縮合してもよい。それらの例にはフェニル、アントラシル及びナフチルがある。
【0044】
用語“ヒドロカルビル”は、水素原子と炭素原子のみからなる任意の部分をいう。この定義は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びベンジル基を包含する。好ましいのは(C1〜C7)ヒドロカルビルである。
【0045】
用語“ヘテロアルキル”は、それ自体で又は他の用語の意味と組合わさって、別に述べてなければ、指定した数の炭素原子と、O、N及びSよりなる群から選ばれる1個又は2個の複素原子とからなる安定な直鎖状又は分岐鎖状の基を意味する。窒素及び硫黄原子は、それぞれN−オキシド及びスルホキシド又はスルホンに酸化されていてもよい。更に、窒素原子は4級化されていてもよい。窒素原子は、ヘテロアルキル基の残部とそれが結合している断片との間を含めてヘテロアルキル基の任意の位置に配置でき、またヘテロアルキル基の最も遠位の炭素原子に結合することもできる。好ましいのは(C2〜C6)ヘテロアルキルである。更に好ましいのは(C2〜C4)ヘテロアルキルである。これらの例には、−O−CH2−CH2−CH3、−CH2−CH2−CH2−OH、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−C(=O)−CH3、−CH2−N=N−CH2−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2−S(=O)−CH3及び−CH2−CH2−NH−SO2−CH3がある。2個までの複素原子が連なっていてよく、例えば−CH2−NH−O−CH3又は−CH2−CH2−S−S−CH3のようなものである。更に好ましいのは、1個又は2個の酸素原子を含有するヘテロアルキル基である。
【0046】
2個の基が“一緒になって炭素環式又は複素環式の5又は6員環を形成”できるときは、炭素環式環は好ましくは飽和である。好ましい複素環式環は、N、O及びSから選ばれる1個又は2個の複素原子を含有する飽和環である。この仕方でベンゾジアゼピンの7員環に環化される複素環式環には、例えば、フラン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、チオフェン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、ジヒドロピロール、ピロリジン、ピリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジンがある。
【0047】
2個の基が“一緒になって5、6又は7員の複素環式環を形成”できるときは、好ましい複素環式環は、N、O及びSから選ばれる1個又は2個の複素原子を含有する5又は6員環である。更に好ましいのは、N、O及びSから選ばれる1個の複素原子を含有する複素環式環である。この仕方でベンゾジアゼピンのフェニル環に環化される複素環式環には、例えば、フラン、ジヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、チオフェン、ジヒドロチオフェン、ピリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ピロール、ジヒドロピロール、イミダゾール、ジヒドロイミダゾール、チアゾール、ジヒドロチアゾール、オキサゾール、ジヒドロオキサゾールがある。
【0048】
用語“置換”は、ある原子又は原子の基が他の基に結合した置換基として水素を置き換えたことを意味する。アリール及びヘテロアリール基については、用語“置換”は、任意の置換レベル、即ち、一、二、三、四又は五置換(このような置換が許容される場合)をいう。置換基は独立して選ばれ、また置換は任意の化学的に接近できる位置において可能である。
【0049】
語句“光学活性”は、物質が面偏光の面を回転させる性質をいう。光学活性である化合物は、その鏡像上で重なることはできない。ある物体のその鏡像上の非重複性の性質はキラリティと呼ばれる。
ある分子における“キラリティ”の性質は、その分子をその鏡像上で非重複性にさせる任意の構造的特色から生じ得る。キラリティを生じさせる最も普通の構造的特色は、不斉炭素原子、即ち、4個の均等でない基が結合している炭素原子である。
【0050】
用語“エナンチオマー”は、光学活性である純粋な化合物の2個の非重複性異性体のそれぞれをいう。単独エナンチオマーは、不斉炭素原子に結合した4個の基を順位づける一連の優先規則であるカーン・インゴールド・プレログ方式に従って示される。マーチ、“Advanced Organic Chemistry、第4版、p109(1992)”を参照されたい。4個の基の優先順位が決定されたならば、分子は、最低の順位の基が観察者から離れて指示されるように配向される。次いで、他の基の下がる順位の順序が時計方向に進むならば、その分子は(R)で示され、また他の基の下がる順位が時計と逆方向に進むならば、その分子は(S)で示される。下記の例では、カーン・インゴールド・プレログの順位則はA>B>C>Dである。最低の順位の原子Dは観察者から離れて配向される。
【化4】

【0051】
用語“ラセミ体”又は語句“ラセミ混合物”は、2個のエナンチオマーの50−50混合物であって、その混合物が面偏光を回転させないようなものをいう。
【0052】
“(S)−エナンチオマーを実質上含まない(R)−エナンチオマー”とは、80重量%以上の(R)−エナンチオマーを含み且つ不純物として重量で20%以下の(S)−エナンチオマーを含有する式Iの化合物を意味する。同様に、“(R)−エナンチオマーを実質上含まない(S)−エナンチオマー”とは、80重量%以上の(S)−エナンチオマーを含み且つ重量で20%以下の(R)−エナンチオマーを含有する式Iの化合物を意味する。
【0053】
過敏性腸症候群を患っている患者に投与される薬剤の量を説明するのに使用されるときの用語“有効量”とは、IBSの慢性又は急性の徴候を示す障害を患っている患者に投与されるときに、IBSの徴候を防止し又は軽減させるような化合物の量をいう。
【0054】
非潰瘍性消化不良を患っている患者に投与される薬剤の量を説明するのに使用されるときの化合物の“有効量”とは、NUDの慢性又は急性の徴候を示す障害を患っている患者に投与されるときに、NUDの徴候を防止し又は軽減させるような化合物の量をいう。
【0055】
用語“個体”又は“主体”は、人間及び人間以外の動物を包含する。IBS及びNUDを治療するための開示した方法に関しては、これらの用語は、その前後で別に示してなければ、このような障害に苦しめられているか又はそのような診断がなされた生体をいう。
【0056】
IBS又はNUDの“発症”を“予防し”又は“遅延させる”ための開示した方法に関しては、これらの用語は、その前後で別に示してなければ、再発性の障害として現われるIBS又はNUDの医療履歴を有する生体についていう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明によれば、式Iの化合物及びその製薬上許容できる塩類は、過敏性腸症候群又は非潰瘍性消化不良の治療又は予防方法に有用である。
【0058】
実質上単離されたエナンチオマーからなる本発明の方法に使用される化合物は、85重量%以上の所望のエナンチオマー及び15重量%以下の他のエナンチオマーである組成を有する。更に好ましくは、本発明の方法に使用される化合物は、90重量%以上の所望のエナンチオマー及び10重量%以下の他のエナンチオマーである組成を有する。更に好ましくは、本発明の方法に使用される化合物は、95重量%以上の所望のエナンチオマー及び5重量%以下の他のエナンチオマーである組成を有する。最も好ましくは、本発明の方法に使用される化合物は、99重量%以上の所望のエナンチオマー及び1重量%以下の他のエナンチオマーである組成を有する。
【0059】
本発明の方法で有用な式Iの化合物は、いくつかの方法のいずれか一つで製造することができる。これらの方法は、一般的には、トフィソパム及びトフィソパム類似体のような2,3−ベンゾジアゼピン類の合成に使用される合成戦略及び手順に従う。米国特許第3,736,315号及び同4,423,044号(トフィソパムの合成)並びにホーバス他、Progress in Neurobiology、60(2000):309−342及びその中の参照文献(トフィソパム及びその類似体の製造)(これらの全ての開示は参照することによってここに含める。)を参照されたい。以下に説明する合成方法において、化学合成の生成物は式Iのラセミ体化合物である。このラセミ混合物は、続いて、既知の分割方法を使用して、相当する(S)−エナンチオマーを実質上含まない(R)−エナンチオマー並びに相当する(R)−エナンチオマーを実質上含まない(S)−エナンチオマーに分離することができる。
【0060】
式Iのベンゾジアゼピン類は、相当する2−ベンゾピリリウム塩Hから、ヒドラジン水和物との反応により合成することができる。ここに、X-は、例えば過塩素酸イオンのような対イオンである。
【化5】

【0061】
しかして、ヒドラジン水和物(98%、2−ベンゾピリリウム塩に基づいてほぼ3当量)を、2−ベンゾピリリウム塩Hを氷酢酸に溶解して撹拌した溶液(ほぼ1mL/3ミリモルの2−ベンゾピリリウム塩)に滴下する。この操作中、溶液は高められた温度、好ましくは80〜100℃に保持する。次いで、この溶液を更に高い温度、好ましくは95〜100℃で約1時間保持する。次いで、反応混合物を2%の水酸化ナトリウム水溶液(2−ベンゾピリリウム塩に基づいてほぼ3当量)で希釈し、冷却する。生成物の2,3−ベンゾジアゼピンが固体として分離するので、ろ過により取出し、水洗し、乾燥する。粗生成物をジメチルホルムアミド(DMF)のような極性の非プロトン溶媒に高められた温度、好ましくは100〜130℃で溶解させ、その溶液を活性炭で脱色させることにより精製することができる。活性炭をろ過により除去し、ろ過された溶液を水で希釈する。溶液から精製された生成物が沈澱するので、ろ過により集める。
【0062】
先駆物質ベンゾピリリウム塩から置換2,3−ベンゾジアゼピンを製造するための反応プロトコルの三つの変法を開示するコロシ他の米国特許第4,322,346号(この全ての開示は参照することによってここに含める。)も参照されたい。
【0063】
逆合成的に、中間体ベンゾピリリウム塩Hは、いくつかの出発物質の一つから製造することができる。反応式1に例示するこのような方法の一つによれば、中間体Hは、相当するアリールエタノール誘導体Dからイソクロマン中間体Fを経て製造される。ここに、X-は、例えば過塩素酸イオンのような対イオンである。
【化6】

【0064】
反応式1に従い、3,4−二置換安息香酸エチルAを好適な溶媒、好ましくはエーテルに溶解し、0℃に冷却する。2当量の選定されたグリニャール試薬を滴下し、反応を室温まで加温し、出発物質の消失についてモニターする。反応が完了したときに、反応を酢酸のようなプロトン源により終わらせる。揮発物を真空下に除去し、生成物Bは精製することなく次の工程に使用する。
【0065】
α−置換ベンジルアルコールBをトルエンのような高沸点溶媒及び触媒量のp−トルエンスルホン酸(p−TsOH)に溶解する。この混合物を加温還流し、出発物質の消失についてモニターする。反応が完了したときに、揮発物を真空下に除去し、粗生成物Cをカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0066】
置換スチレンCを抗マルコウニコフ条件下でヒドロキシル化して中間体フェニルエチルアルコールDを得る。Dの溶液と置換ベンズアルデヒドE(1.2当量)の溶液を無水ジオキサンに溶解する。次いで、生じた溶液にガス状HClを飽和させ、好ましくは還流温度に約1時間加温する。次いで、この混合物を室温に冷却し、水に注入し、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液により塩基性にし、有機溶媒、好ましくは酢酸エチルにより抽出する。抽出物を乾燥し、ろ過し、真空下に濃縮する。生じた残留物を、好ましくは結晶化により精製してFを得る。
【0067】
F(2g)をアセトン(30mL)に溶解して撹拌し、冷却した(好ましくは0〜5℃)の溶液に、三酸化クロム(2g)を35%硫酸(20mL)に溶解してなる溶液を滴下する。滴下は、反応温度が5℃以下となるような速度で行なう。滴下が完了したときに、反応混合物を室温まで上昇させ、室温で2時間撹拌する。次いで、反応混合物を水に注入し、有機溶媒、好ましくは酢酸エチルで抽出する。有機抽出物を水洗し、次いで氷冷10%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄する。次いで、水性塩基性画分を、好ましくは希塩酸水溶液により酸性化し、有機溶媒、好ましくはクロロホルムにより抽出する。クロロホルム抽出物を乾燥し、ろ過し、真空下に濃縮してGを得る。粗製の残留物はカラムクロマトグラフィーにより更に精製することができる。
【0068】
2−α−アシルヒドロカルビルベンゾフェノンG(5g)を氷酢酸(15mL)に溶解する。この混合物に60%過塩素酸(7.5mL)を添加する。生じた混合物を100℃(水蒸気浴)に3分間加温する。この混合物を室温まで冷却させる。粗生成物の結晶化は、この時点で直ぐに始まる場合があり、或いは反応混合物にエーテル若しくは酢酸エチルを添加することによって誘発させることができる。生成物の2−ベンゾピリリウム塩Hをろ過により取出し、好ましくはエタノール又は氷酢酸/酢酸エチルから再結晶することにより精製する。
【0069】
2,3−ベンゾジアゼピン類を製造するための、上で概説したものと類似する合成順序が米国特許第3,736,315号(この全ての開示は参照することによってここに含める。)に開示されている。また、2,3−ベンゾジアゼピン類を製造するための合成戦略がホーバス他、Progress in Neurobiology、60(2000):309−342及びその中の参照文献(これらの全ての開示は参照することによってここに含める。)に開示されている。
【0070】
中間体Hの製造のための別法は、アリールアセトニド又はインダノン出発物質を使用して出発する。E.V.クネツゥフ及びG.N.ドロフェンコ、Zh.Org.Khim.、6:578−581並びにM.バジュダ、ActaChem.Acad.Sci.Hung.、40:295−307(1964)をそれぞれ参照されたい。2,3−ベンゾジアゼピン類を製造するための別法を反応式2及び3(例1及び2)に例示する。合成は、中間体Gから、中間体ベンゾピリリウム塩Hを単離することなく、進める。
【0071】
式Iの5置換−2,3−ベンゾジアゼピンの分割
上で示した(又は参照した)合成手順は、式Iのラセミ−2,3−ベンゾジアゼピン類を生じさせる。このラセミ体は、個々の(R)−エナンチオマー及び(S)−エナンチオマーを単離するために分割さればならない。エナンチオマーの分割は、式Iのラセミ体組成物を、光学活性部分への共有結合によるか又は光学活性塩基若しくは酸による塩形成によって対のジアステレオマーに転化させることにより達成される。これらの二つの方法の何れも、第二のキラル中心を持った分子を与え、しかして対のジアステレオマーを生じさせる。このジアステレオマー対は、次いで、慣用の方法、例えば結晶化又はクロマトグラフィーにより分離される。
【0072】
式Iのラセミ化合物は、(S)−ジベンゾイル酒石酸塩に転化することができ、これはSS立体配置とRS立体配置のジアステレオマー混合物である。対のジアステレオマー(R,S)及び(S,S)は、慣用の分離方法の使用を可能ならしめる異なった性質、例えば溶解度差を持っている。好適な溶媒からのジアステレオマー塩の分別結晶化は、このような方法の一つである。この分割は、ラセミ体トフィソパムの分割に首尾良く適用された。ハンガリー特許第178516号並びにトス他、J.Heterocyclic Chem.、20:09−713(1983)(これらの全ての開示は参照することによってここに含める。)を参照されたい。
【0073】
別法として、式Iのラセミ化合物は、例えば、キラルなアシル化剤、例えば(S)−マンデル酸による芳香族ヒドロキシ部分のアシル化を経て誘導体化することができる。生じたエステルは、第二のキラル中心を有し、従って結晶化又はクロマトグラフィーのような慣用の方法を使用して分離可能なジアステレオマー対として存在する。分離の後、該化合物を誘導体化したキラルな部分は除去することができる。
【0074】
式Iのラセミ化合物は、クロマトグラフィーカラム、特に調整HPLCカラムのキラル固定相上での吸収差によって、ジアステレオマーの形成なしに分離することができる。キラルHPLCカラムは、広範囲の分離用途に適合するように種々の充填材料と共に商業的に入手できる。ラセミ体2,3−ベンゾジアゼピン類を分割するのに好適である固定相の例には、下記のものが包含される。
(i)マクロ環状グリコペプチド、例えば、3個のポケット又は空隙を包囲する18個のキラル中心を含有するシリカ結合バンコマイシン、
(ii)キラルなα1−酸糖タンパク質、
(iii)ヒト血清アルブミン、
(iv)セロビオヒドロラーゼ(CBH)。
【0075】
キラルなα1−酸糖タンパク質は、高濃度の有機溶媒、高いpHと低いpH及び高温度に耐える球形シリカ粒子上で不動化された高安定性の蛋白質である。ヒト血清アルブミンは、弱酸や強酸、双性イオン化合物及び非プロトリシス性化合物の分割に特に好適であるが、塩基性化合物を分割するのに使用された。CBHは、球形シリカ粒子上に不動化された非常に安定な酵素であって、多くの化合物類から塩基性薬剤のエナンチオマーを分離するために優先的に使用される。
【0076】
キロバイオテックV(登録商標)カラム(ASTEAC社、ホイッパニー、NJ)上で固定相としてマクロ環状グリコペプチドを使用するキラルクロマトグラフィーによるトフィソパムの分割が、米国特許第6,080,736号に開示されている。フィトス他(J.Chromatogr.、709:265(1995)(この全ての開示は参照することによってここに含める。))が、CHIRAL−AGP(登録商標)カラム(クロムテク社、チェシア、UK)上の固定相としてキラルなα1−酸糖タンパク質を使用するキラルクロマトグラフィーによるラセミトフィソパムを分割するための他の方法を開示している。この方法は、(R)−エナンチオマーと(S)−エナンチオマーを分離し、またそれぞれのエナンチオマーの2個の配座体(以下に検討する。)を分割する。これらの方法は、式Iのラセミ体2,3−ベンゾジアゼピン類を個々の(R)−エナンチオマーと(S)−エナンチオマーに分離するために使用することができる。キロバイオテックV(登録商標)カラムは、上記の分離のために使用するものとして半調整サイズ(500mm×10mm)で入手できる。更に、キロバイオテックV(登録商標)カラムの固定相は、大きい試料容量の調整クロマトグラフィーカラムを充填するためにばらで商業的に入手できる。
【0077】
また、式Iの2,3−ベンゾジアゼピン類は、(R)−及び(S)−エナンチオマーとして存在することに加えて、一般的に下記するように、ベンゾジアゼピン環によって想定できる2個の安定な立体配座で存在できる。
【化7】

【0078】
本発明は、式Iの化合物の任意の及び全ての認識可能な立体配座体を使用する前記した組成物及び方法を包含する。
【0079】
本発明の組成物及び方法に使用される化合物は、製薬上許容できる塩の形を取ることができる。用語“塩”は、アルカリ金属塩を形成するように及び遊離酸若しくは遊離塩基の付加塩を形成するように普通に使用される塩類を包含する。用語“製薬上許容できる塩”は、製薬上の用途に有効性を有するようにある範囲内に毒性プロフィルを持つ塩類をいう。それでも、製薬上許容できる塩類は、本発明の実施に当たって有効性を、例えば、合成方法において又はラセミ混合物からエナンチオマーを分割する方法において有効性を有する、例えば高い結晶性のような性質を有する。好適な製薬上許容できる酸付加塩は、無機酸から又は有機酸から製造することができる。このような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸及び燐酸である。適切な有機酸は、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、芳香族脂肪族、複素環式のカルボン酸及びスルホン酸クラスの有機酸から選ぶことができ、その例はぎ酸、酢酸、プロピオン酸、こはく酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、りんご酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、サリチル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルゲン酸、β−ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸である。
【0080】
式Iの化合物の好適な製薬上許容できる塩基付加塩は、例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び亜鉛から作られる金属塩、又はN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロルプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインから作られる有機塩を包含する。これらの塩類の全ては、慣用の方法により、相当する式Iの化合物から、例えば適当な酸又は塩基を式Iの化合物と反応させることによって製造することができる。
【0081】
本発明の方法に有用な化合物は、IBS又はNUDに苦しめられた個体(動物及び人間を含めて哺乳動物)に投与することができる。
【0082】
過敏性腸症候群又は非潰瘍性消化不良を治療し又は予防するためには、式Iの化合物又はその実質上単離されたエナンチオマーの治療上の利益を得るための特定の薬量は、勿論、患者の身長、体重、年齢及び性別を含めて個々の患者の特別の環境によって決定される。また、疾病の種類と状態及び投与経路も決定的なことである。例えば、毎日約100〜1500mg/kg/日の投薬量を用いることができる。好ましくは、毎日約100〜1000mg/kg/日の投薬量を用いることができる。更に好ましくは、毎日約100〜500mg/kg/日の投薬量を用いることができる。これらよりも多く又は少ない薬量も意図される。
【0083】
予防的投与のためには、該化合物は、徴候の再発よりも遙かに先立って、この化合物が治療効果を発揮するのに十分な濃度で作用部位に到達できるように、投与されるべきである。特定の化合物の薬物速度は斯界で知られた手段によって決定でき、また特定の個体における化合物の組織レベルは慣用の分析により決定することができる。
【0084】
該化合物は、少なくとも1種の式Iの化合物を製薬上許容できるキャリアーと共に含む製薬組成物として投与することができる。このような処方物中の活性成分は0.1〜99.99重量%であり得る。“製薬上許容できるキャリアー”とは、処方物の他の成分と相溶性であり且つ受容者に有害ではない任意のキャリアー、希釈剤又は補助剤を意味する。
【0085】
該化合物は、治療効果を得るために、任意の経路、例えば、経腸的(例えば、経口、直腸、鼻内など)及び非経腸的投与により投与することができる。非経腸的投与には、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、膣内、嚢内(例えば、膀胱に)、皮内、局所又は皮下投与がある。また、本発明の範囲内で、薬剤の全身又は局所的な放出をその後の時点で起こさせるように、患者の身体に制御された処方物で薬剤を滴注することも意図される。慢性障害の治療法に使用するためには、該化合物は、循環系に徐放のための又は局部に、例えば胃腸器官若しくはその一部分に徐放のための貯蔵所に局部化させることができる。
【0086】
製薬上許容できるキャリアーは、選定された投与経路及び標準的な製薬実施に基づいて選定される。活性剤は、製薬製剤分野における標準的な実施に従う投薬形態に処方することができる。アルホンソ・ゲナロ編“レミントンの製薬科学、18版(1990)”(マークパブリッシング社、イーストン、PA)を参照されたい。好適な投薬形態は、例えば、錠剤、カプセル、溶液、非経腸用溶液、トローチ、座薬又は懸濁液からなろう。
【0087】
非経腸的投与のためには、活性剤は、好適なキャリアー又は希釈剤、例えば水、油(特に、植物油)、エタノール、塩水溶液、水性デキストロース(グルコース)及び関連糖溶液、グリセリン、又はプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールのようなグリコールと混合することができる。非経腸的投与のための溶液は、好ましくは、活性剤の水溶性塩を含有する。安定剤、酸化防止剤及び保存剤も添加できる。好適な酸化防止剤には、亜硫酸塩、アスコルビン酸、くえん酸及びその塩類、ナトリウムEDTAがある。好適な保存剤には、塩化ベンザルコニウム、メチル−又はプロピルパラバン、クロルブタノールがある。非経腸的投与のための組成物は、水性又は非水性の溶液、分散体、懸濁液又はエマルジョンの形を取ることができる。
【0088】
経口投与のためには、活性剤は、錠剤、カプセル、ピル、粉末、顆粒又はその他の好適な経口用投薬形態の製造のために1種以上の固体不活性成分と混合することができる。例えば、活性剤は、少なくとも1種の補助剤、例えば、充填剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤又は滑剤と混合することができる。錠剤の一具体例によれば、活性剤は、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアリン酸マグネシウム、マンニット及びでんぷんと混合し、次いで慣用の錠剤化方法により錠剤に賦形することができる。
【0089】
また、本発明の方法に有用な組成物は、その中の活性成分の遅放性又は徐放性を与えるように処方することができる。一般に、徐放性製剤は、所望の期間にわたり一定の薬理学的活性を保持するのに要求される速度で活性成分を放出させることができる組成物である。このような投薬形態は、薬剤を身体に所定の期間の間供給し、しかして他の徐放性でない処方物よりも長い期間にわたって薬剤レベルを治療範囲に保持させることができる。
【0090】
例えば、米国特許第5,674,533号は、潜在的な末梢鎮咳剤であるモグイステインを投与するための液状投薬形態の徐放性組成物を開示している。米国特許第5,059,595号は、器質性精神障害の治療法のため胃耐性の錠剤を使用することによって活性剤の徐放を記載している。米国特許第5,591,767号は、潜在的な鎮痛性を有する非ステロイド系抗炎症剤であるケトロラックの制御された投与のための液状の受容者経皮パッチを開示している。米国特許第5,120,548号は、膨潤性重合体からなる徐放性薬剤送出具を開示している。米国特許第5,073,543号は、ガングリオシド−リポソーム賦形剤により閉じ込められた栄養因子を含有する徐放性処方物を開示している。米国特許第5,639,476号は、疎水性アクリル重合体の水性分散体から得られた被覆を有する安定な固体状徐放性処方物を開示している。これらの特許は、参照することによってここに含める。
【0091】
生分解性ミクロ粒子を本発明の徐放性処方物に使用することができる。例えば、米国特許第5,354,566号は、活性成分を含有する徐放性粉末を開示している。米国特許第5,733,566号は、駆虫性組成物を放出させる重合体ミクロ粒子の使用を記載する。これらの特許は、参照することによってここに含める。
【0092】
活性成分の徐放は、種々の誘発因子、例えば、pH、温度、酵素、水又はその他の生理学的条件若しくは化合物によって刺激させることができる。薬剤の放出について種々の機序が存在する。例えば、一具体例では、患者に投与した後に、徐放性成分が膨潤し、活性成分を放出させるのに十分に大きい多孔質の開口を形成することができる。本発明との関係で、用語“徐放性成分”とは、製薬組成物中の式Iの化合物の徐放を容易にさせる化合物、例えば、重合体、重合体マトリックス、ゲル、透過膜、リポソーム及び(又は)ミクロ球体と定義される。他の具体例では、徐放性成分は生分解性であってよく、これは体内の水性環境、pH、温度又は酵素に露出することによって誘発される。他の具体例では、ゾル−ゲルを使用することができる。この場合に、活性成分は、室温で固体であるゾル−ゲルマトリックス中に組み入れられる。このマトリックスは、ゾル−ゲルマトリックスのゲル形成を誘発させるのに十分に高い体温を有する患者に、好ましくは哺乳動物に移植され、これによって活性成分を患者に放出させる。
【実施例】
【0093】
本発明の実施を下記の例によって例示するが、これらは本発明を制限するものではない。
【0094】
例1ラセミ−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンの合成
反応式2の経路に従ってラセミ−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンを合成した。
【化8】

【0095】
A.3,4−ジメトキシ安息香酸のエステル化で3,4−ジメトキシ安息香酸エチル[(3943−77−9)]の生成
200gの3,4−ジメトキシ安息香酸と35gの濃硫酸を600mLの無水エタノールに溶解してなる溶液を終夜加熱還流した。この混合物を濃縮し、残留物を水に注入した。塩化メチレンを添加し、その溶液を水、希重炭酸ナトリウム液及び水で続けて洗浄し、次いで乾燥し、濃縮した。残留物をアセトン/ヘキサンから再結晶した。
【0096】
B.沃化エチルマグネシウムを3,4−ジメトキシ安息香酸エチルに付加させて3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−3−オールの生成
4.8mLのヨードエタンを20mLのエーテルに溶解してなる溶液を、1.5gのマグネシウム片を10mLのエーテルに加えてなる懸濁液に滴下した。5mLのヨードエタン溶液を添加した後、数個の沃素粒子を添加し、この混合物を加熱してグリニャール試薬の形成を誘発させた。次いで、残りのヨードエタン溶液を添加した。グリニャール試薬の形成が完了した後、5gの3,4−ジメトキシ安息香酸エチルをエーテルに溶解してなる溶液を添加し、この混合物を終夜室温で撹拌した。飽和塩化アンモニウム液を添加することにより反応を終わらせた。この混合物をエーテルで抽出した。一緒にしたエーテル抽出物を乾燥し、油状残留物まで濃縮した。収量は5g。
【0097】
C.3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−3−オールからH2Oを除去して4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1,2−ジメトキシベンゼンの生成
5gの粗製3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−3−オールと0.25gのp−トルエンスルホン酸を80mLのベンゼンに溶解してなる溶液を1時間加熱還流すると共に水を共沸除去した。次いで、この混合物を重炭酸ナトリウムパッドを通してろ過し、ろ液を濃縮した。その残留物を減圧蒸留により精製した。収量は2.9g。
【0098】
D.4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1,2−ジメトキシベンゼンにH2Oを付加させて3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−2−オールの生成
26gの4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1,2−ジメトキシベンゼンをテトラヒドロフランに0℃で溶解してなる溶液に、189mLのボラン−テトラヒドロフラン錯体の1.0Mテトラヒドロフラン溶液を添加した。この混合物を0℃で3時間撹拌し、次いで35.6mLの50%過酸化水素を添加すると同時に、混合物をpH8に保持するように、5M水酸化ナトリウム液を添加した。この混合物をエーテルで抽出した。一緒にしたエーテル抽出物を乾燥し、濃縮した。
【0099】
E.3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒドのベンジル化で4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)ベンズアルデヒド[(6346−05−0)]の生成
137gの炭酸カリウム懸濁液を含有する500mLのアセトンに、100gの3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒドと135gの臭化ベンジルを溶解してなる溶液を終夜加熱還流した。この混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、その残留物をトルエン/ヘキサンから再結晶した。収量は65g。
【0100】
F.3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−2−オールと4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)ベンズアルデヒドとの反応で4−(4−エチル−6,7−ジメトキシ−3−メチルイソクロマニル)−1−メトキシ−2−(フェニルメトキシ)ベンゼンの生成
14gの4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)ベンズアルデヒドと3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−2−オールを0.3Lのジオキサンに溶解してなる溶液に塩化水素ガスを飽和させた。この混合物を3時間加熱還流し、再度塩化水素ガスを飽和させ、室温で終夜撹拌した。次いで、それを水に注入し、希水酸化ナトリウム液で塩基性にし、塩化メチレンで抽出した。一緒にした塩化メチレン抽出物を乾燥し、濃縮した。
【0101】
G.4−(4−エチル−6,7−ジメトキシ−3−メチルイソクロマニル)−1−メトキシ−2−(フェニルメトキシ)ベンゼンの開環で3−(4,5−ジメトキシ−2−{[4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)フェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンの生成
30gの粗製4−(4−エチル−6,7−ジメトキシ−3−メチルイソクロマニル)−1−メトキシ−2−(フェニルメトキシ)ベンゼンを450mLのアセトンに5℃で溶解してなる溶液に、30gの酸化クロムを300mLの35%硫酸に溶解してなる溶液を添加した。この混合物を室温で2時間撹拌し、冷10%水酸化ナトリウム液を添加して中和し、濃縮してアセトンを除去した。次いで、水を添加し、その混合物を塩化メチレンで抽出した。一緒にした塩化メチレン抽出物を乾燥し、濃縮した。その残留物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製した。収量は10g。
【0102】
H.3−(4,5−ジメトキシ−2−{[4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)フェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンの脱ベンジルで3−{2−[(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)カルボニル]−4,5−ジメトキシフェニル}ペンタン−2−オンの生成
0.9gの10%パラジウム炭懸濁液を含有する塩化メチレンに10gの3−(4,5−ジメトキシ−2−{[4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)フェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンを溶解してなる溶液を80psiで1時間水素化した。この混合物を珪藻土を通してろ過し、ろ液を濃縮した。収量は6.5g。
【0103】
I.3−{2−[(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)カルボニル]−4,5−ジメトキシフェニル}ペンタン−2−オンをヒドラジンとの反応により環化させて1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンの生成
6.5gの3−{2−[(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)カルボニル]−4,5−ジメトキシフェニル}ペンタン−2−オンと2.2mLのヒドラジンを130mlのエタノールに溶解してなる溶液を0.5時間加熱還流した。この溶液を室温まで冷却した後、HClガスを飽和させた。次いで、この混合物を約5mLの容積まで濃縮させ、濃水酸化アンモニウム液で塩基性にし、塩化メチレンで抽出した。一緒にした塩化メチレン抽出物を乾燥し、濃縮し、残留物を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶した。収量は0.97g。
【0104】
生成物である1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンをHPLC、元素分析、GC/MS、プロトンNMR及び示差走査熱量法(DSC)によって分析した。データは以下の通りである。
純度:HPLCにより99.29%(面積%);カラム:ベタシル・フェニル、4.6×150mm;移動相:アセトニトリル/0.01M燐酸塩緩衝液(70/30);流量:0.5mL/分;波長:254nm。
GC−MS:M/e=358;断片化のパターンは提案した構造と一致している。
DSC:温度プログラムは5℃/分で100℃から300℃まで;示されたモル純度=99.75%;158.6℃の融点。
元素分析(計算/分析):C%−68.09/68.08;H%−6.61/6.57;N%−7.53/7.35;計算された値は0.02当量の酢酸エチル及び0.09当量の残留水を含む。
NMR(DCCl3)(GE QE300で達成。)ppm:1.08(t、3H);1.99(s、3H);2.11(m、2H);2.75(m、1H);3.75(s、3H);3.93(s、3H);3.97(s、3H);6.46(bs、1H);6.72(s、1H);6.86(m、2H);7.18(d、1H);7.48(s、1H)
【0105】
例21−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンの合成
反応式3に従ってラセミ−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンを合成した。
【化9】

【0106】
A.3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸のエステル化で3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸エチルの生成
100gの3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸と17gの濃硫酸を300mLの無水エタノールに溶解してなる溶液を終夜加熱還流した。この混合物を濃縮し、その残留物を水に注入した。塩化メチレンを添加し、その溶液を水、希重炭酸ナトリウム液及び水で続けて洗浄し、次いで乾燥し、濃縮した。収量は118g。
【0107】
B.3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸エチルのベンジル化で3−メトキシ−4−ベンジルオキシ安息香酸エチルの生成
124gの炭酸カリウム懸濁液を含有する600mLのアセトンに118gの3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸エチルと86mLの臭化ベンジルを溶解してなる溶液を終夜加熱還流した。この混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、その残留物をアセトンから再結晶した。
C.沃化エチルマグネシウムを3−メトキシ−4−ベンジルオキシ安息香酸エチルに付加させて3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−3−オールの生成
35gのマグネシウム片を160mLのエーテルに加えてなる懸濁液にヨードエタン(112mL)を添加した。沃化エチルマグネシウムの形成が完了した後、142gの3−メトキシ−4−ベンジルオキシ安息香酸エチルをエーテルに溶解してなる溶液を添加し、この混合物を室温で3日間撹拌した。飽和塩化アンモニウム液を添加することにより反応を終わらせた。層を分離し、エーテル層を乾燥し、油状残留物まで濃縮した。収量は110g。
【0108】
D.3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−3−オールからH2Oを除去して4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1−ベンジルオキシ−2−メトキシベンゼンの生成
110gの粗製3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−3−オールと7gのp−トルエンスルホン酸を2Lのベンゼンに溶解してなる溶液を4時間加熱還流すると共に水を共沸除去した。次いで、この混合物を重炭酸ナトリウムパッドを通してろ過し、ろ液を濃縮した。その残留物を中性アルミナでのカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0109】
E.4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1−ベンジルオキシ−2−メトキシベンゼンにH2Oを付加させて3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−2−オールの生成
96gの4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1−ベンジルオキシ−2−メトキシベンゼンをテトラヒドロフランに0℃で溶解してなる溶液に、510mLのボラン−テトラヒドロフラン錯体の1.0Mテトラヒドロフラン溶液を添加した。この混合物を0℃で3時間撹拌し、次いで204mLの25%過酸化水素を添加した。混合物に5M水酸化ナトリウム液を添加してpH8に調節し、エーテルで抽出した。一緒にしたエーテル抽出物を乾燥し、濃縮した。臭化収量は102g。
【0110】
F.3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−2−オールと3,4−ジメトキシベンズアルデヒドとの反応で4−(4−エチル−6−メトキシ−7−ベンジルオキシ−3−メチルイソクロマニル)−1,2−ジメトキシベンゼンの生成
46gの3,4−ジメトキシベンズアルデヒドと100gの粗製3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−2−オールを0.3Lのジオキサンに溶解してなる溶液に塩化水素ガスを飽和させた。この混合物を3時間加熱還流し、次いで水に注入し、希水酸化ナトリウム液で塩基性にし、塩化メチレンで抽出した。一緒にした塩化メチレン抽出物を乾燥し、濃縮した。
【0111】
G.4−(4−エチル−6−メトキシ−7−ベンジルオキシ−3−メチルイソクロマニル)−1,2−ジメトキシベンゼンの開環で3−(4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−{[3,4−ジメトキシフェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンの生成
50gの粗製4−(4−エチル−6−メトキシ−7−ベンジルオキシ−3−メチルイソクロマニル)−1,2−ジメトキシベンゼンをアセトンに5℃で溶解してなる溶液に、50gの酸化クロムを500mLの35%硫酸に溶解してなる溶液を添加した。この混合物を室温で2時間撹拌し、冷10%水酸化ナトリウム液を添加して中和し、濃縮してアセトンを除去した。次いで、水を添加し、その混合物を塩化メチレンで抽出した。一緒にした塩化メチレン抽出物を乾燥し、濃縮した。その残留物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製した。収量は18g。
【0112】
H.3−(4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−{[3,4−ジメトキシフェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンの脱ベンジルで3−{2−[(3,4−ジメトキシフェニル)カルボニル]−4−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル}ペンタン−2−オンの生成
2gの10%パラジウム炭懸濁液を含有する塩化メチレンに18gの3−(4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−{[3,4−ジメトキシフェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンを溶解してなる溶液を80psiで1時間水素化した。この混合物を珪藻土を通してろ過し、ろ液を濃縮した。収量は15g。
【0113】
I.3−{2−[(3,4−ジメトキシフェニル)カルボニル]−4−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル}ペンタン−2−オンをヒドラジンとの反応により環化させて1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンの生成
14gの3−{2−[(3,4−ジメトキシフェニル)カルボニル]−4−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル}ペンタン−2−オンと4.7mLのヒドラジンを280mlのエタノールに溶解してなる溶液を0.5時間加熱還流した。この溶液を室温まで冷却した後、HClガスを飽和させた。次いで、この混合物を約5mLの容積まで濃縮させ、濃水酸化アンモニウム液で塩基性にし、塩化メチレンで抽出した。一緒にした塩化メチレン抽出物を乾燥し、濃縮し、残留物を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶した。収量は1.5g。
【0114】
生成物である1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンをHPLC、元素分析、GC/MS、プロトンNMR及び示差走査熱量法(DSC)によって分析した。データは以下の通りである。
純度:HPLCにより98.36%(面積%);カラム:ベタシル・フェニル、4.6×150mm;移動相:アセトニトリル/0.01M燐酸塩緩衝液(70/30);流量:0.5mL/分;波長:254nm。
GC−MS:M/e=358;断片化のパターンは提案した構造と一致している。
示差走査熱量法(DSC):温度プログラムは5℃/分で100℃から300℃まで;示されたモル純度=99.14%;146.2℃の融点。
元素分析(計算/分析):C%−68.14/68.12;H%−6.63/6.63;N%−7.43/7.20;計算された値は0.1Mの残留酢酸エチルを含む。
NMR(DCCl3)(GE QE300で達成。)ppm:1.08(t、3H);1.96(s、3H);2.10(m、2H);2.77(m、1H);3.91(s、3H);3.93(s、3H);3.98(s、3H);5.73(bs、1H);6.70(s、1H);6.80(d、1H);6.95(s、1H);7.00(d、1H);7.58(s、1H)
【0115】
例31−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンの分割
ラセミ−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンのエナンチオマーを以下のようにしてキラルクロマトグラフィーにより分割する。
ラセミ−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンを、半調整(500mm×10mm)キロバイオテックVカラム(ASTEC社、ホイッパニー、NJ)に装入する。メチル・t−ブチルエーテル/アセトニトリル(90/10v/v)によるエナンチオマー混合物の溶離を40mL/分の流量で310nmでモニターする。分画サイズは10〜20mLであり、画分を分析用(150×4.6mm)キロバイオテックVカラム上で同じ溶媒組成物を使用して分析クロマトグラフィーに付する。それぞれ単離されたエナンチオマーを含有する画分を、溶離溶媒を真空下に除去することにより処理する。
【0116】
例4マウスでの結腸の推進研究
このモデルは、IBSと診断された個体に起こる腸内内容物の推進の変化を治療するのに使用できる薬剤を予言するものである。このモデルは、推進運動活性に対して抑止効果を生じさせる試験化合物に対して非常に敏感であるが、結腸の推進運動性を増大させる試験物体に対して敏感ではない。このモデルは、結腸推進の直接的な測定値を与える。従って、ガラスビーズが排出される速度を遅くさせる試験化合物は、IBSの治療に有効性を有することを予言する。
また、この試験は、過敏性腸症候群のための動物モデルに使用できることに加えて、便秘、下痢活性を生じさせ、又は選択的な内臓抗侵害受容活性を有する潜在能力を持つ試験物質を評価するのに使用される。
【0117】
この実施例のために、70頭の試験動物(雌、生後6週間のスイスウエブスターマウス、18〜30g)を6種の試験化合物及び対照例としてのビヒクル単独を投与するためにそれぞれ10頭の動物よりなる7グループに分けた。
各動物には、式Iの化合物、2個の関連2,3−ベンゾジアゼピン又はビヒクル単独のいずれかを投薬した(IP)。投薬の30分後に、ガラス棒を使用して、3mmのガラスビーズを肛門から遠位の結腸に2cmの深さまで挿入した。試験動物をビーズの排出について観察し、時間を記録した。30分の締め切り時間内にビーズを排出しなかったどの試験動物も犠牲にし、結腸の内腔内のビーズの位置を検証した。
【0118】
試験動物を、投薬後60〜90分間の期間中の総体的な毒性及び(又は)挙動の変化の症候について観察した。このような観察には、皮膚及び柔毛、目及び粘膜、呼吸系、循環系、自律神経系及び中枢神経系、身体運動活性及び挙動パターンの総合的評価を含む。震え、痙攣、唾液過多、下痢、睡眠及び昏睡に対して特に注意が払われた。総合的毒性の症候は観察されなかった。各グループの排出時間について平均値の平均誤差及び標準誤差を計算した。データを下記の表1に要約する。
【0119】
【表2】

【0120】
これらのデータは、本発明の化合物、特に1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン及び1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンが結腸の推進の相当な抑止を表わすことを示している。従って、式Iの化合物は、このモデルによりIBSと関連した結腸の推進の変化を治療するのに有用であることが予言される。
【0121】
ここに引用した参考文献の全ては、参照することによりここに含めるものとする。本発明は、その精神又は必須の特質から離れることなく他の特定の形態で具体化できるであろう。従って、本発明の範囲を指示するものとしては、前記した明細書の説明よりも請求の範囲が参照されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式I:
【化1】

[ここで、
1は−(C1〜C7)ヒドロカルビル又は−(C2〜C6)ヘテロアルキルであり、
2は−H又は−(C1〜C7)ヒドロカルビルであり、
ここに、R1とR2は一緒になって炭素環式又は複素環式の5又は6員環を形成でき、またR5とR6は一緒になって5、6又は7員の複素環式環を形成でき、
フェニル環置換基R3、R4、R5又はR6の一つは−OHであり、残りのフェニル置換基R3、R4、R5又はR6は−(C1〜C7)ヒドロカルビル、−CF3、−O(C1〜C7)ヒドロカルビル、−O−アシル、−NH2、−NH(C1〜C6)アルキル、−N((C1〜C6)アルキル)2、−NH−アシル及びハロゲンよりなる群から独立して選ばれ、
*はキラルな炭素原子を示し、
波線により示される結合はキラルな炭素原子の周囲の絶対立体配座が(R)又は(S)のいずれかであり得ることを示す。]
に従う化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる過敏性腸症候群又は非潰瘍性消化不良の治療又は予防用薬剤。
【請求項2】
−OHである1個のフェニル置換基がR3又はR4である請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
フェニル置換基R3、R4、R5又はR6の一つが−OHであり、残りのフェニル置換基が−O(C1〜C7)ヒドロカルビルよりなる群から独立して選ばれる式Iの化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
−OHである1個のフェニル置換基がR3又はR4である請求項3に記載の薬剤。
【請求項5】
該残りのフェニル置換基R3、R4、R5又はR6が−O(C1〜C7)アルキルよりなる群から独立して選ばれる式Iの化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項1に記載の薬剤。
【請求項6】
−OHである1個のフェニル置換基がR3又はR4である請求項5に記載の薬剤。
【請求項7】
フェニル置換基R3、R4、R5又はR6の一つが−OHであり、残りのフェニル置換基R3、R4、R5又はR6が−OCH3である式Iの化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項1に記載の薬剤。
【請求項8】
−OHである1個のフェニル置換基がR3又はR4である請求項7に記載の薬剤。
【請求項9】
1及びR2が(C1〜C7)アルキルから独立して選ばれる化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項1、3、5又は7のいずれかに記載の薬剤。
【請求項10】
1及びR2が(C1〜C3)アルキルから独立して選ばれる化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項9に記載の薬剤。
【請求項11】
1が−CH2CH3であり、R2が−CH3である化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項10に記載の薬剤。
【請求項12】
式Iの化合物が
・1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
・1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
・1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
・1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
又はこれらの化合物の製薬上許容できる塩類
よりなる群から選ばれる請求項1に記載の薬剤。
【請求項13】
該化合物が実質上単離された(R)−エナンチオマーの形である請求項1〜12のいずれかに記載の薬剤。
【請求項14】
該化合物が実質上単離された(S)−エナンチオマーの形である請求項1〜12のいずれかに記載の薬剤。
【請求項15】
過敏性腸症候群を治療又は予防するための請求項1〜14のいずれかに記載の薬剤。
【請求項16】
非潰瘍性消化不良を治療又は予防するための請求項1〜14のいずれかに記載の薬剤。
【請求項17】
個体おける過敏性腸症候群又は非潰瘍性消化不良を治療し又は予防する方法において、そのような治療の必要な場合に該個体に有効量の次式I:
【化2】

[ここで、
1は−(C1〜C7)ヒドロカルビル又は−(C2〜C6)ヘテロアルキルであり、
2は−H又は−(C1〜C7)ヒドロカルビルであり、
ここに、R1とR2は一緒になって炭素環式又は複素環式の5又は6員環を形成でき、またR5とR6は一緒になって5、6又は7員の複素環式環を形成でき、
フェニル環置換基R3、R4、R5又はR6の一つは−OHであり、残りのフェニル置換基R3、R4、R5又はR6は−(C1〜C7)ヒドロカルビル、−CF3、−O(C1〜C7)ヒドロカルビル、−O−アシル、−NH2、−NH(C1〜C6)アルキル、−N((C1〜C6)アルキル)2、−NH−アシル及びハロゲンよりなる群から独立して選ばれ、
*はキラルな炭素原子を示し、
波線により示される結合はキラルな炭素原子の周囲の絶対立体配座が(R)又は(S)のいずれかであり得ることを示す。]
に従う化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩を投与することからなる、過敏性腸症候群又は非潰瘍性消化不良の治療又は予防方法。
【請求項18】
−OHである1個のフェニル置換基がR3又はR4である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
フェニル置換基R3、R4、R5又はR6の一つが−OHであり、残りのフェニル置換基が−O(C1〜C7)ヒドロカルビルよりなる群から独立して選ばれる式Iの化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項17に記載の方法。
【請求項20】
−OHである1個のフェニル置換基がR3又はR4である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該残りのフェニル置換基R3、R4、R5又はR6が−O(C1〜C7)アルキルよりなる群から独立して選ばれる式Iの化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項19に記載の方法。
【請求項22】
−OHである1個のフェニル置換基がR3又はR4である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
フェニル置換基R3、R4、R5又はR6の一つが−OHであり、残りのフェニル置換基R3、R4、R5又はR6が−OCH3である式Iの化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項17に記載の方法。
【請求項24】
−OHである1個のフェニル置換基がR3又はR4である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
1及びR2が(C1〜C7)アルキルから独立して選ばれる化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項17、19、21又は23のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
1及びR2が(C1〜C3)アルキルから独立して選ばれる化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1が−CH2CH3であり、R2が−CH3である化合物又はそのような化合物の製薬上許容できる塩からなる請求項26に記載の方法。
【請求項28】
式Iの化合物が
・1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
・1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
・1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
・1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン、
又はこれらの化合物の製薬上許容できる塩類
よりなる群から選ばれる請求項17に記載の方法。
【請求項29】
該化合物が実質上単離された(R)−エナンチオマーの形である請求項17〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
該化合物が実質上単離された(S)−エナンチオマーの形である請求項17〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
過敏性腸症候群を治療又は予防するための請求項17〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
非潰瘍性消化不良を治療又は予防するための請求項17〜30のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2006−510632(P2006−510632A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557604(P2004−557604)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/038637
【国際公開番号】WO2004/050616
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505205384)ヴェラ ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】