説明

美容用UVスクリーン組成物及びそのためのアミノブタジエンをもとにしたUV吸収複合体

本発明は、美容上及び皮膚科的に許容できる担体、並びにフラボノイドではなく、担体分子に共有結合しているUV吸収化合物を含む、紫外線放射及びその有害な影響から防御するための美容用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線放射(UV radiation)及びその有害な影響から防御するための新規な美容用組成物に関する。さらに、本発明は、サンスクリーン組成物等において特に有用なUV吸収複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
UV光に皮膚を曝すことによる有害な影響は、多種多様であり、先行技術に詳しく記載されている。290〜315nmの波長を有するUV−B放射線が紅斑や日焼けを引き起こすことは、長い間認識されてきた。315〜400nmの波長を有するUV−Aが、光毒性及び光化学の反応を引き起こすことは1980年頃まで発見されていなかった。
【0003】
約70%のUV−B放射線は外皮や角質層によって遮蔽されるが、UV−A放射線の場合は異なり、のちに皮膚の奥深くまで透過する。よく知られているUV−Aの有害な影響は、酸化ストレスである。UV−A放射線によって形成されるスーパーオキシドは、皮膚の線維芽細胞中に存在する鉄蓄積タンパク質であるフェリチンから鉄を放出する(Pourzand et al, Proc. Natl, Acad, Sci.USA, June 1999, Vol 96, p.6751-56)。極めて有害なヒドロキシル・ラジカルや過酸化水素の生成をもたらすフェントン反応やハーバー・ウェイス反応における鉄の役割はよく知られている。また、銅イオンのような他の金属イオンは、酸素ラジカルを形成する触媒になると報告されている。DNAを損傷するこれらの有害な生成物の役割は、例えばSestili et al により述べられているようによく知られている(Free Radical Bioligy & Medicine [US], July 15 1998, 25, [2] p.196-200)。
【0004】
スーパーオキシドジスムターゼのような酵素による典型的な生化学的防御は、UV−A放射線により引き起こされる反応を効果的に阻止するには充分ではない。従って、これらの有害な影響から皮膚を防御する必要性はいまだに欠かすことはできない。他の酸化ストレス現象は、例えば皮膚の老化や白斑の促進をもたらすコラーゲンの損傷であり、脂質過酸化反応による細胞壁の損傷である。
【0005】
サンスクリーン用の有機UV吸収剤の使用は広く知られている。
【0006】
有機UV吸収化合物の不利な点は、その水溶性が低いことである。よって、ヒドロゲルのような水性の化粧品における使用には不適当であり、一般的に好ましくない副作用を発現する有機溶媒の使用が必要となる。脂溶性のUV吸収化合物は、有機溶媒と組み合わせて使用する使用しないに拘わらず、血中に入る危険性を伴って、いわゆる角質層を通り抜けることが可能である。
【0007】
UV吸収化合物のさらに不利な点は、UV光の下で不安定なことである。UV照射は、光化学反応を引き起こしてUV吸収化合物を破壊し、その結果、紫外線放射に対する防御を低減させる。
【0008】
特許文献US4839160 には、C4〜C12のアルコキシ鎖を有するベンジリデンボルナノンユニット(benzylidenbornanone units)のポリマーからなる、紫外線放射から皮膚を防御するための化粧品の処方が開示されている。この方法では、複合体の親水性を高めることにはならない。皮膚を通り抜けた浸透の影響が記載されているが、疎水性を高めることは、その逆ではなく、角質層の脂質成分を介して流動性を高めることになるであろう。
【0009】
不溶性粒子を実質的に形成し、酸素原子や窒素原子を介してUV−A及びUV−B吸収化合物をポリアクリル酸にカップリングすることは、特許文献WO0108647に記載されており、a−極性化合物(a-polar compounds)を取り込んで屈折率を望ましい傾向に適合するように特異的に設計された分子複合体をもたらす。しかしながら、油性の化合物との混合では、不要な免疫原性反応を引き起こす可能性がある、より小さな分子量(MW)の複合体の場合に、皮膚浸透の危険性を伴う。
【0010】
生体ポリマーにカップリングする少なくとも1つのフラボノイドを含むUV吸収複合体の使用は、特許文献WO03004061に記載されている。しかしながら、これらの複合材料にはいくつかの不利な点がある。この特許文献に記載されたカップリング方法では、試薬として極めて有毒な物質であるホルムアルデヒドを使用しており、激しい皮膚炎症が引き起こされる。さらに、このホルムアルデヒドのカップリング法では、回避困難なポリペプチドの架橋がもたらされる。また、ホルムアルデヒドを介したフラボノイドのカップリングから得られる複合体の安定性については、キセノンの輻射条件の下での安定性実験により明らかになったように、改善の余地が残されている(実施例5参照)。最後に、フラボノイドUV吸収化合物は可視光線を吸収し、この吸収作用により、美容用に使用するサンスクリーンの材料にとっては好ましくない黄色に染まる。
【0011】
特許文献EP1172399 には、有機化合物を少なくとも1つの活性アミノ基を有するポリマーにカップリングする方法が開示されている。この特許では、サンスクリーン用の合成材料の使用については言及していない。
【0012】
特許文献US5403944には、UV吸収基を有する有機ポリシロキサンポリマーが開示されている。
【0013】
特許文献JP3161742 には、ゼラチンと結合したUV吸収剤が、写真感光材料で使用するために開示されている。美容用の使用には言及していない。
【0014】
上記のような試みにもかかわらず、アレルギー性や免疫原性の危険性を示さず、皮膚からの浸透も示さず、可視光放射線に対して充分に透明であるとはいうものの、放射線を遮蔽することにより日光に対し直接的で充分な防御を提供するUVフィルターの必要性はなおも存在する。
【特許文献1】WO0108647
【特許文献2】WO03004061
【特許文献3】EP1172399
【特許文献4】US5403944
【特許文献5】JP3161742
【非特許文献1】Pourzand et al, Proc. Natl, Acad, Sci.USA, June 1999, Vol 96, p.6751-56
【非特許文献2】Free Radical Bioligy & Medicine [US], July 15 1998, 25, [2] p.196-200
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、新規なUV吸収美容用組成物を提供することにある。
【0016】
さらに、本発明の目的は、UV光の下で破壊に対しての安定性が高く、高濃度で使用可能な、UV吸収高分子化合物を含む美容用組成物を提供することにある。
【0017】
また、本発明の目的は、新規で、極めて効果的なUV吸収高分子化合物を提供することにある。
【0018】
さらに、本発明の目的は、粘着性及び/又は安定性の問題が生じることなく、簡単にサンスクリーン組成物に製剤化可能なUV吸収高分子化合物を提供することにある。
【0019】
他に、本発明の目的は、可視光の領域において透明であるUV吸収高分子化合物を含む新規の美容用組成物を提供することにある。
【0020】
他に、本発明の目的は、皮膚からの浸透を防御し、少なくとも充分に防御し、その後に免疫原性又はアレルギー性副作用の危険性を低減するUV吸収高分子化合物を含む美容用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、美容上及び皮膚科的に許容できる担体及びUV吸収化合物を含む、フラボノイドではなく、担体分子としてポリペプチドに共有結合している、紫外線放射から防御するための美容用組成物によって、これらのすべての目的に到達し得るという驚くべき見識に基づくものである。
【0022】
UV吸収化合物は、好ましくは広帯域のUV吸収分子又はUV−A吸収分子であり、さらに好ましくは、UV吸収化合物が、ケイ皮酸、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール若しくはアミノブタジエン、又はこれらの組合せである。
【0023】
UV吸収複合体、すなわち担体分子に結合したUV吸収化合物のUV吸収作用は、例えば、その化合物の粘着性や(エマルジョンの)安定性に関連したサンスクリーン組成物の製剤に有害な影響を与えずに、UV−A放射線に対して充分な防御を提供するために、できるだけ高度にすべきであると理解されている。
【0024】
意外にも、化学式Aのアミノブタジエンを適当な担体にカップリングすることにより、予想外に高度で効果的なUV吸収作用有するUV吸収複合体が、得られるということを見い出した。
【0025】
よって、本発明はUV吸収複合体にも関連し、該複合体は、担体分子が一般式(A)で表されるアミノブタジエンに共有結合している。
【化1】

式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、各々水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜20個の炭素原子を有するアリール基を表す。但し、R及びRは同時に水素原子ではなく、R及びRは一緒になって、環状アミノ基を形成してもよい。
及びRは各々、1又は複数のカルボン酸部分で置換されていてもよく、
は、カルボキシル基、−COOR、−COR又はSOを表し、Rは、カルボキシル基、−COOR又は−CORを表す。式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、各々1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜20個の炭素原子を有するアリール基を表す。R及びRは一緒になって、1,3−ジオキソシクロヘキサン核、バルビツール酸核、又は2, 4−ジアゾ−1−アルコキシ−3,5−ジオキソシクロヘキセン核を形成してもよい。
【0026】
さらに、本発明は、本発明によるUV吸収複合物の製造方法に関連し、その方法は、化学式Aのアミノブタジエンをイソニペコチン酸、又はその等価体に接触させ、得られた生成物を担体分子とカップリングさせることを含む。
【0027】
また、本発明は、そのような美容用組成物を含有する容器、及び紫外線放射に対し防御するための美容用組成物を調製するためのフラボノイドではなく、ポリペプチドに共有結合している、UV吸収化合物の使用に関連する。
【発明の効果】
【0028】
この新規のUV吸収ポリマーは、血流中に流れ出るという深刻な危険性を伴うことなく使用され、免疫反応の危険性や有害な影響を妨げる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明で使用する「UV吸収化合物」とは、紫外線放射の吸収が可能な分子に関連する。そのようなUV吸収化合物が担体分子に結合する場合は、「UV吸収複合体」又は「UV吸収高分子化合物」として言及する。
【0030】
本発明は、日光に曝されることによる有害な影響からヒトの皮膚や毛髪を防御するために使用できるUV放射線吸収組成物を対象とする。特に、本発明は、皮膚から血流中には侵入しない担体分子に結合した安定的なUV吸収化合物を含む美容用組成物を対象とする。前記UV吸収複合体の血流中への流出を妨げることで、免疫反応や有害な影響の危険性を低減させる。
【0031】
少なくとも1つのUV吸収化合物を含み、フラボノイドではなく、担体分子としてポリペプチドに結合しているUV放射線吸収複合体を含有する新規の美容用組成物が意外にも発見され、望ましい特性をすべて発現している。
【0032】
本発明で使用されているフラボノイド(flavonoid)という用語は、フラバン(flavanes)、フラバノン(flavanones)、及びフラボン(flavones)、並びにそれらの誘導体を含んで理解されることを意味する。
【0033】
本発明の内容において、ポリペプチドとは、ペプチド結合により結合した少なくとも15のアミノ酸、好ましくは少なくとも20のアミノ酸を有する分子を含むと理解され、天然タンパク質、変性タンパク質、合成及び組換えによるタンパク質、ペプチド、糖タンパク、プロテオグリカン、リポタンパク、並びに側鎖として又は鎖中において、生体オリゴマー基やポリペプチド基などの他の基を含むこともある分子を含有する。その最大長は、通常、2000のアミノ酸を有する。ある実施態様においては、ポリペプチドは、15〜1000のアミノ酸、好ましくは30〜1000又は15〜500のアミノ酸を有する。ポリペプチドは、特にゼラチンタイプにおいては、30〜500のアミノ酸を有しており、なるべくなら50〜500のアミノ酸又は30〜300のアミノ酸を有することが好ましい。
【0034】
ある実施態様においては、有機UV吸収化合物には400nmを超える波長の吸収作用がない。これは有機UV吸収化合物が可視光では透明であることを意味している。
【0035】
他の実施態様においては、有機UV吸収化合物は、315〜400nmのUV−A領域での吸収作用を有する。
【0036】
別の実施態様においては、UV吸収複合体の400nmを超える吸収作用は全吸収作用の10%未満である。これは、UV吸収複合体は可視光では実質的に透明であることを意味している。好ましい実施態様においては、UV吸収複合体の315〜400nmのUV−A領域での吸収作用は全吸収作用の75%以上である。よって、本発明は、UV吸収複合体の400nmを超える吸収作用は250〜600nmの全吸収作用の10%未満であることを特徴とする美容用組成物に関する。また、本発明は、UV吸収複合体の315〜400nmの吸収作用は250〜600nmの全吸収作用の少なくとも75%であることを特徴とする美容用組成物に関する。
【0037】
好ましい実施態様においては、UV吸収化合物を、ケイ皮酸(I)、ヒドロキシベンゾフェノン(II)、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール(III)、又はアミノブタジエン(IV)のファミリーから選択する。
【化2】

【0038】
これらの構造には、UV吸収剤を、ゼラチンのリジンアミノ酸の1級アミン基、又はグルタミン酸及びアスパラギン酸のカルボキシ基に、各々結合するために、少なくとも1つの1級アミン又はカルボン酸のアンカー基が含まれる。カップリング方法の例としては、特に、カルボン酸活性剤を使用してゼラチンのアミン基をカルボン酸で修飾する方法は、特許文献EP0576911に記載されている。
【0039】
さらに好ましい実施態様では、UV吸収化合物は、以下の1又は複数から選択される。
【化3】


【0040】
UV吸収化合物のカップリングは、ポリペプチド架橋の危険性を伴わない方法で行われ、制御されずにUV吸収複合体の分子量(MW)が増加することが好ましい。特に、UV吸収化合物のカルボキシ基をカルボジイミド活性剤と反応し、その反応中間体を、担体分子、特に生体ポリマーやポリペプチドにおいてアミノ基と反応するN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに変換し、その目的とする仕様のUV吸収複合体を得る。
【0041】
UV吸収化合物をポリペプチドにカップリングさせる方法として、カルボジイミド活性剤の使用は、その反応中間体をUV吸収剤のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに変換し、極めて便利である。この方法は、前記WO03/004061に記載されているワンポット反応であり、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを簡単に単離及び精製することができ、ゼラチン架橋の危険性が回避できるため、好ましい方法である。下記の反応スキームを参照。
【化4】

【0042】
ある実施態様においては、担体分子にカップリングしたUV吸収化合物の量は3〜30重量%である。
【0043】
他の実施態様においては、ポリペプチドはゼラチン様物質であり、ポリマーのゲル化機能が好ましくない場合には、このゼラチン様物質はアイシングラス(fish gelatin)のこともあり、より大きなポリペプチドが望まれる。
【0044】
別の実施態様においては、ポリペプチドは加水分解したゼラチンであり、50kD未満及び1.5kDを超えるMWを有しており、UV吸収ポリペプチド複合体の皮膚浸透を妨げるのに適切であり、極めて限られたゲル化特性を示すか、又はその特性が全く存在しないこともある。ポリペプチドは3〜30kDの分子量であることが望ましい。
【0045】
ポリペプチドに結合するUV吸収分子の数は、いくつかの要因により決定され、その負荷は、100アミノ酸あたり0.15〜15個のUV吸収分子となる。低負荷の場合には、ポリペプチドの量は、必要なUV防御を行なうために皮膚に塗るクリームや(ヒドロ)ゲルなどの形態で、組成物において処方され、過剰に大きな量となる。ポリマーから利用可能なアミン基やカルボキシル基などの遊離型の反応基の数は、主にその上限を決定する。例えば、好ましいポリペプチドであるゼラチンは、100アミノ酸あたり約5個のUV吸収分子の負荷を負うことができる。ゼラチンを修飾して、利用できる遊離型の反応基の数を増加することも可能である。過剰な負荷は、製剤化の問題を引き起こすこともある。ある実施態様においては、負荷として100アミノ酸あたり約1〜10個のUV吸収分子を負うこともできる。
【0046】
アミノブタジエンAを適当な担体分子にカップリングすることで、アミノブタジエンAの吸収作用は予想外に高くなることを見い出した。この担体分子は、375nmの波長において、少なくとも5.6a.u./g.L(=1リットルあたり1グラムのUV吸収複合体を含む水溶液の吸収単位)のUV吸収複合体のUV吸収作用を得るために、充分な量を負荷できることが発見されている。この最小限のUV吸収作用は、サンスクリーン製剤の安定性と粘着性におけるあらゆる有害な影響を回避するので、サンスクリーン組成物においてUV吸収複合体が適切に機能するためには好ましい。よって、ある実施態様においては、本発明のUV吸収複合体は、375nmで少なくとも5.6a.u./g.LのUV吸収作用を有する。本発明のUV吸収複合体は、少なくとも20a.u./g.L、さらに好ましくは、少なくとも25a.u./g.L、さらにより好ましくは、少なくとも30a.u./g.L、最も好ましくは、少なくとも40a.u./g.LのUV吸収作用を有することが好ましい。
【0047】
本発明のUV吸収複合体におけるアミノブタジエンの一般構造(A)は、修飾されるか又は置換されることもあるが、実質的に同じ基本構造を有し、適当な担体分子にカップリングする場合に高い吸収作用を保持する特性をなおも有する、化学式Aで表わされる分子に言及するアミノブタジエン(A)のあらゆる等価体を含むと考えられる。そのような等価体は、当業者にとっては簡単に想像することが可能である。アミノブタジエン(A)の等価体の例は米国特許4195999号から得ることができるが、そこに述べられている等価体には限定されない。
【0048】
化学式Aの化合物の内、以下の一般式(B)により表される化合物は特に好ましい。
【化5】

式中のR、R、R及びRは一般式(A)と同じ意味を有する。
【0049】
ある実施態様においては、アミノブタジエンの構造は、以下の構造式を有する。
【化6】

式中のRは一般式(A)と同じ意味を有する。好ましい実施態様においては、Rはエチルを表わす。以下、Rがエチルである化合物CはUV−C1と言及する。
【0050】
構造式(A)、(B)、(C)、又は(UV−C1)により、上記で表されたアミノブタジエンは、通常の技術を有する者にとって周知の方法を使用して、アミノブタジエンのカルボン酸基を介して適当な担体分子にカップリングすることもできる。アミノブタジエンがカルボン酸基を含まない場合には、そのような基は熟練した当業者にとって周知の方法により導入できる。ある具体的な実施態様においては、アミノブタジエン(A)は、付加的なカルボン酸の機能性を導入するアミノ基(NR)の修飾を介してカップリングしている。特にアミノ基は、イソニペコチン酸により置換される。この置換は、担体分子に付加的で効果的なカップリングをし、予想外の高い吸収作用を得るように思われる。よって、アミノブタジエンA、B、Cを、アミノブタジエンUV−C1の好ましい実施態様においては、塩基で処置し、及び得られる生成物をイソニペコチン酸(4−ピペリジンカルボン酸又はヘキサヒドロイソニコチン酸としても知られている)に接触させると、付加的なカルボン酸の機能性が導入され、この機能性は、それ自体周知のカルボン酸機能性を介した適当な担体へのカップリングを含む方法を介して、カップリングされることもある。カップリングの好ましい方法は、活性化エステル、好ましくはNHSエステルを介して、担体のアミン機能性にカップリングする方法である。
【0051】
付加的なカルボン酸基をアミノブタジエン分子に導入する限り、イソニペコチン酸の代わりに、その等価体が使用されることもある。そのような等価体は一般式(D)により例示される。
【化7】

式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、各々1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表わす。Rはまた、水素原子を表わすことができる。R及びRは一緒になって、環状アミノ基を形成してもよい。アミノブタジエン(A)のアミノ基の3級アミノの特性(tertiary amino character)を損なわずに保持している等価体は、好ましい等価体である。
【0052】
アミノブタジエン(A)に結合するために使用される担体分子はどのような担体分子でもよく、特に、アミノブタジエン(A)又はその等価体にカップリング可能ならばどのようなポリマーでもよい。カップリングしているアミノブタジエン(A)又はその等価体の量は、少なくとも5.6a.u./g.LのUV吸収作用を有する複合体となることが好ましい。美容用組成物、特にサンスクリーン組成物に適当であり、その中に含むことができる担体分子を使用することは好ましい。そのような担体分子は当業者には周知である。
【0053】
ある実施態様においては、担体分子は高分子化合物、好ましくはアミノブタジエンAにカップリングするための遊離型のアミン基を有する高分子化合物である。
【0054】
他の実施態様においては、担体分子はポリペプチドである。
【0055】
ある好ましい実施態様においては、アミノブタジエンAは、担体100グラムあたり少なくとも7.6mmolの量で、好ましくは、担体100グラムあたり少なくとも15mmolの量で、前記担体分子にカップリングしている。
【0056】
他の好ましい実施態様においては、ポリペプチドにカップリングしているアミノブタジエンAの量は、3〜50重量%である。
【0057】
水溶性のポリペプチドとして使用することができるゼラチンは、酸若しくは石灰で処理した哺乳類又は冷血動物の皮あるいは骨ゼラチンである。そのようなゼラチンは先行技術においては一般的であり、文献に詳しく記載されている。
【0058】
また、化学的に修飾された多くのゼラチンは先行技術から周知であり、例えば、トリメリト化(trimellitated)、スクシニル化、アシル化、アルキル化、及びフタル化されたゼナチンなどが挙げられる。修飾されたゼラチンは、皮膚に適用された場合に免疫反応のような有害な反応を引き起こさない限り、有利に使用することができる。スクシニル化されたゼラチンは、例えば、血漿増量剤として適用され、医学的及び免疫学的に許容できるゼラチンである。アルキル化されたゼラチンは、例えばアルキルスクシニル化されたゼラチンについては特許文献DE19721238を参照し、皮膚とポリペプチドの相互作用を変更するために使用することができる。従って、UV吸収ポリマーの耐水性に影響を及ぼす。よって、本発明のUV吸収複合体と皮膚の相互作用を改善するために、例えばスクシニル基などのアルキル基をUV吸収複合体の担体に追加的にカップリングすることもできる。スクシニル基の代替基は、当業者に容易に知られているか、改善した耐水性を有するという観点においては簡単に同定することができる。よって、ある実施態様においては、上記で述べたように、本発明はUV吸収複合体に関連し、耐水性を改善するために、担体分子はアルキル基を、好ましくはスクシニル基をさらに含む。
【0059】
遊離型のアミン基の量が増加している修飾したゼラチンを、ゼラチンのUV吸収化合物の負荷を増やすために使用することができる。特許文献EP0487686には、カルボキシル基をアミンに変換する方法が記載されている。スペーサーは、ゼラチンのようなポリペプチドの遊離型反応基の量を増加させるために使用することができる。スペーサーは、カルボキシル基やゼラチンのアミン基などのポリペプチドの反応基に共有結合することができる分子であり、前記スペーサー分子はアミン基又はカルボキシル基などの反応基を少なくとも2個含んでおり、よって、利用可能な活性基の量を増加させる。スペーサー分子は、リジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸などのアミノ酸により例示されるが、このような構造に限定されない。例えば、よく知られているように、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の活性化エステルは、カルボキシル基や1級アミンなどの官能基のペプチド結合を形成するために使用できる(Anderson et al., 1964, J. Am. Chez. Soc. 86: 1839-1842, US 5,366, 958)。NHSは、ゼラチンのそれらに付加するNHSと官能基(例、ジヒドロキシ安息香酸又はその類似体)でエステル結合を形成することにより、活性化される。活性化したNHSエステルをゼラチンのアミノ基にカップリングすることは、N−ヒドロキシスクシンイミドが遊離する一方で、化学的に修飾されたゼラチンを生成する。他の実施態様としては、官能基はリジンにカップリングすることができ、修飾したリジンのカルボキシル基はその後NHSにより活性化し、ゼラチンにカップリングすることができる。あるいは、リジンは側鎖としてゼラチンに結合し、その2個のアミノ基は、フラボノイド分子ではないUV吸収分子を結合するために使用できる。
【0060】
その抗原性及び免疫原性が低いという理由により、ゼラチン又はコラーゲンが好ましいが、カゼイン、セリシン、可溶性コラーゲンなどの遊離型のアミノ基を有する他のポリペプチドも使用することができる。免疫反応をさらに避けたいならば、例えば、(自己)免疫疾患に苦しむ患者の場合、ヘリックス形成を不可能とするゼラチンは有利に使用できる。これは、ヘリックス形成を減少させるためには、化学的にゼラチンを修飾することにより、又は、好ましくは、特許文献EP1063665に記載されている組換え技術で生成されたゼラチンを使用することにより、達成が可能となる。そのような組換えゼラチンは、ペプチドバックボーンにおいてプロリンを欠失することもあり、又はヒドロキシプロリンの水酸化を低減するか、妨げるか、若しくは避けることができる。そのような組換えゼラチンは、免疫反応を誘発する可能性がほとんどないため修飾されたゼラチンとして好ましい。
【0061】
ヒドロキシプロリンを全く又はほとんど有していないゼラチンの更なる有利な点は、そのようなゼラチンはゲル化温度が低いか、又は全くゲル化しないということである。ゲル化がほとんどないか又は全くない場合には、その担体分子が美容用の使用におけるゼラチンポリマーであるUV吸収複合体を広い濃度領域で使用することができる。その観点から、また、冷水に生息する生物由来のゼラチンは、天然に低含有量のヒドロキシプロリンを有しているためゲル化温度、及び免疫原性又は抗原性が低く、有利に使用することができる。
【0062】
皮膚への浸透の深さは、血中へ入ることを妨げるゼラチンの分子量をコントロールすることにより、有利に調節することができる。先行技術としてのUV吸収化合物の使用では、皮膚浸透を調節する方法が含まれず、皮膚浸透は自由に行なわれる。本発明では、皮膚への浸透は妨げられる。
【0063】
200kDを超える高分子量のゼラチンはあまり好ましくない。従来の天然又は修飾されたゼラチンの分子量は、例えば、加水分解又はゼラチンの酵素による分解で調節することができる。目的とする平均分子量は充分に調節可能であるが、分子量分布の広さについては難しい。ゼラチンの分解後、過小なポリペプチド(<=3kD)又は過大なタンパク鎖は、限外濾過、透析、ヌードル洗浄(noodle washing)などの周知の技術により、取り除くことができる。組換え型のゼラチンには、分子量及び分布を正確に調節できるという更なる有利な点がある。皮膚浸透を調節する別の方法は、親水基又は疎水基をタンパク質又はポリペプチドに共有結合させ、そのタンパク質又はポリペプチドを化学的に修飾することにより、そのタンパク質又はポリペプチドの疎水性を調整することである。よって、本発明のある実施態様においては、ポリペプチドは、DNA組換え技術により生成されたコラーゲン又はゼラチンである。
【0064】
有利なことには、担体分子にカップリングした場合に、UV吸収化合物はさらに安定的であることが発見された。光に曝された場合、UV吸収化合物の劣化や分解の割合は減少する。
【0065】
UV吸収複合体は、紫外線放射から皮膚や毛髪を防御するための美容用組成物又はサンスクリーン組成物を調製するために有利に使用することができる。
【0066】
UV吸収化合物を含む皮膚防御のための美容用組成物は、ローション、エマルジョン、クリーム、乳液、ジェルなどの多様な形態で市販されている。これらには、オイル及び/又はアルコールが含まれることもある。また、エアロゾル又はスティックの使用も知られている。美容用組成物のそのようなあらゆる形態は、本発明のUV吸収複合体を使用するための手段として機能する。
【0067】
当業者は、本発明のサンスクリーン組成物で使用することができる、特にUV吸収化合物とポリペプチドとの組合せで、さらに特別にはアミノブタジエンAが結合している適当な美容上及び皮膚科的な担体を選択することができる。
【0068】
サンスクリーン組成物は、第二の従来型UV吸収化合物を含むこともある。これは、例えば特許文献EP1055412に記載されているように、UV−A、UV−B、又は広帯域のUV吸収化合物のことでもある。技術的に使用されるような他の添加剤もまた、使用することができる。
【0069】
担体分子、特に、ゼラチンのようなペプチドに結合する化合物の有利な点は、UV吸収化合物に限定されないということが、当業者には明らかである。例えば、ビタミンC及びビタミンEのようなビタミンは、酸化防止剤として、美容用の調製品中に通常添加される。それらは、人体に危険を及ぼすことはないが、そのようなビタミンが皮膚を通して拡散する場合にその機能は減少する。また、そのような化合物は、例えばゼラチンに有利に結合する。
【0070】
本発明の美容用組成物には、UV吸収ポリペプチドに加えて、通常、このタイプの美容用組成物に含まれる、例えば、水和剤(hydrating agents)、皮膚軟化剤又は増粘剤、界面活性剤、保存料、香料、染料などの多様なアジュバントを含むことができる。
【0071】
ある実施態様においては、担体分子は、ポリペプチドであることが好ましく、水溶性である。水溶性のUV吸収高分子化合物を使用することにより、有機溶媒の使用は避けることができるか又は最小限に抑えることができる。そのような溶媒は、皮膚過敏症のような免疫反応を誘発する他に、角質層の層状の細胞間脂質バリアを通して有害物質の運搬を促進することにより、皮膚浸透を増加させることもある。UV吸収ポリペプチド複合体を含む独創的な美容用組成物の使用は、オイル又はアルコールの使用を廃れさせ、そのような物質に対する又は低下した皮膚のバリア機能に対する免疫反応などの不要な影響を妨げるのに役立つことさえある。よって、UV吸収ポリペプチド複合体を含む独創的な美容用組成物は、これに限定されることはないが、ヒドロゲルなどの脂分のない組成物として、使用されることが好ましい。
【0072】
ある態様においては、本発明は、18重量%未満、好ましくは13重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満の本発明のUV吸収複合体を含むサンスクリーン組成物に関する。
【実施例1】
【0073】
ゼラチンに対するUV−3のカップリング。
【0074】
まず、UV−3のN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを、テトラヒドロフラン(THF)120ml中の4.07gのUV−3に、1.38gのNHS及び2.45gのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を混合することにより調製する。24時間後、形成されたDCUを濾過しTHFを蒸発する。得られた未精製のNHSエステルを、シクロヘキサン/トルエンから晶析により精製し、濾過し、乾燥する。最終収率は88%である。
【0075】
ゼラチンに対するカップリングは、DMSO中で行なわれる。2gの石灰骨ゼラチン(limed bone gelatin)を、50℃で40mlのDMSO中に溶解する。UV−3のNHSエステルを0.26g添加する。その混合液を10時間撹拌し、冷却した酢酸エチル中で沈殿させる。濾過後、酢酸エチルおよびアセトンで洗浄し、UV−ゼラチンを乾燥する。ゼラチン架橋及び非カップリングUV−3が存在しないことを、ゲル透過クロマトグラフィーで確認する。ゼラチンにカップリングしたUV−3の負荷は、紫外可視分光光度法(UV−vis spectrophotometry)で測定したように、0.26mmol/gゼラチンである。
【実施例2】
【0076】
ゼラチンに対するUV−10のカップリング。
【0077】
UV−10のNHSエステルは、THF120ml中の2.26gのUV−10、1.38gのNHS及び2.45gのDCCを混合することより調製した。DCUの濾過及びTHFの蒸発後、未精製のUV−3のNHSエステルを得る。生成物を、温tert-ブチルメチルエーテルで洗浄することによりさらに精製する。最終収率は95%である。
【0078】
ゼラチンに対するカップリング: 9gの石灰骨ゼラチンを、55℃で81gの水に溶解する。1Mの水酸化ナトリウムでpHを7に調整する。その後、THF10ml中に0.5gのUV−10のNHSエステルを溶解した水溶液を添加し、1Mの水酸化ナトリウムでpHを7に維持しながら、反応混合物を4時間撹拌する。濾過後、10kD透析膜を使用してUVゼラチンを水に対して40℃で48時間透析する。ゼラチン架橋及び非カップリングUV−10が存在しないことを、ゲル透過クロマトグラフィーで確認する。UV−10の負荷は、紫外可視分光光度法で測定したように、0.08mmol/gゼラチンである。
【実施例3】
【0079】
ゼラチンに対するUV−21のカップリング。
【0080】
UV−21のNHSエステルは、THF120ml中に3.71gのUV−21、1.38gのNHS及び2.45gのDCCを混合することより調製する。DCUの濾過及びTHFの蒸発後、未精製のUV−21のNHSエステルを得る。生成物を、トルエン/シクロヘキサン中で晶析により更に精製する。最終収率は76%である。
【0081】
ゼラチンに対するカップリング: 9gの石灰骨ゼラチンを、55℃で81gの水に溶解する。1Mの水酸化ナトリウムでpHを7に調整する。その後、THF10ml中に0.73gのUV−21のNHSエステルを添加し、1Mの水酸化ナトリウムでpHを7に維持しながら、反応混合物を4時間撹拌する。濾過後、10kD透析膜を使用してUVゼラチンを水に対して40℃で48時間透析する。ゼラチン架橋及び非カップリングUV−21が存在しないことを、ゲル透過クロマトグラフィーで確認する。カップリングしたUV−21の負荷は、紫外可視分光光度法で測定したように、0.10mmol/gゼラチンである。
【実施例4】
【0082】
ゼラチン1gあたり0.1ミリmolのUV−21の負荷を有するUV−21ゼラチン複合物によるUV−Aの防御。
【0083】
正常な皮膚III型(中程度の日焼け、徐々なる日焼け)又はIV型(最小の日焼け、上手な日焼け)を有するボランティアの被験者に対して実験を行う。被験者は、光過敏症(photo-sensitivity)の病歴がなく、計画的な薬物療法を受けておらず、実験の前の6週間は直射日光に曝されていない。
【0084】
5×10cmの2カ所の被験部位において、各被験部位を6つのサブ部位に分割し、被験者の背中のウエストライン及び肩甲骨の間に印を付ける。被験部位の1カ所では処理を行なわず、無防御の状態にする。別の1カ所の被験部位においては、100mgのサンスクリーン製品を皮膚に均一に塗布し、UV吸収化合物の量が1mあたり約1mgになるように使用する。UV−21ゼラチン化合物の場合、その使用量は、この場合も1mg/mの結合したUV−21が使用されている。塗布したサンスクリーンを15分間乾燥する。
【0085】
6線量のUV−A放射線を、エネルギーを増大させながらUV-A Sellas Sun 2000を用いて各被験部位に照射する(照射量は、30cmで、約50ミリワット/cm)。使用する線量は、33〜8ジュール/cmであり、各々の照射線量を25%ずつ減少させながら、ランダムに6つのサブ部位に照射した。
【0086】
各被験部位のMPD(最少色素量:minimal pigmenting dose)を、照射3時間後に視覚的に測定する。MPDは、最初の明白な色素反応を引き起こすのに必要な照射エネルギー量として定義する。
【0087】
SPF(日焼け防止指数)は、防御していない皮膚のMPD及び防御した皮膚のMPDの指数として算出する。
【0088】
結果を、下記の表にまとめた。
【0089】
【表1】

【0090】
上記結果により、本発明のUV−21ゼラチン複合体は、UV−A放射線に対する優れた防御性を提供することを示している。ゼラチンに結合したUV−21のUV照射下での安定性が高いために、遊離型のUV−21よりも良い結果を示している。
【実施例5】
【0091】
キセノン実験状況下での色素安定性; キセノン照射後のUV吸収。
【0092】
測定は、アトラス・ウエザオメータCi4000(Atlas Electric Devices Company製のCi 4000 Xenon Weather-Ometer)で行う。吸光波長スペクトルは太陽光スペクトルを表わす。実験は、TAC基材に被膜したUV吸収複合体の薄層からなるサンプルで行なわれ、キセノン放射を行う前に空気中で乾燥する。
【0093】
TACシート材に被膜する液剤は、適当な溶媒(水とエタノール比率が50:50)中において、40℃で30分間UV−ゼラチンの5%ゼラチン溶液を作製することにより調製する。
【0094】
UV吸収複合体の固定濃度を、510−3Mol/Lとした。
【0095】
サンプルのUV吸収は、標準UV分光光度計システムで測定する。UV吸収は、キセノン処理後のサンプルにおける機能分子の数に直接的に相互関連する。その結果を以下の表2に記載する。
【0096】
キセノン放射後のUV吸収(放射時間)。
【0097】
【表2】

【実施例6】
【0098】
UV−21の皮膚への浸透の深さ。
【0099】
A/呈色反応
必須条件は特異的検出法を用いることであり、特定のサンスクリーン成分の存在を視覚化するために使用することができる。UV−21の場合には、波長350nmの放射線下でその分子の蛍光機能の存在を有利に利用できる。
【0100】
B/皮膚浸透
皮膚浸透の調査を、以下に記載する調製物を使用して行った。
1.クレモラセトマクロゴールFNA(cremor cetomacrogolis FNA) (CMC)中、UV−21(1%)
2.CMC中、UV21ゼラチン(低分子量画分、<5kD)(10〜20%)
3.CMC中、UV21ゼラチン(高分子量画分、>5kD)(10〜20%)
4.CMC中、カテコール(1%)(浸透マーカーとして)
調製物を、3人のボランティア被験者の皮膚(臀部)に塗布した。浸透時間は、30分、1時間、3時間であった。各浸透時間の後、局部麻酔後に生検(4mm)を行った。生検材料は、液体窒素内で凍結し、更なる分析のために保存した。
【0101】
顕微鏡観察
生検材料を、連続した8μmの厚さに切断した。スライスは、標準の方法に適合するように切断した。浸透の深さは、蛍光光学顕微鏡下で視覚的に測定し、下記の表3に記載の通り、浸透した表皮の割合で示した。
【0102】
【表3】

【実施例7】
【0103】
ジエチルアミノ基で修飾したカルボン酸を介した、ゼラチンに対するUV−C1のカップリング。
【0104】
UV−C1のNHSエステルを、次に記載の方法により調製する。
【0105】
水100ml及びアセトニトリル300ml中における20gのUV−C1に、10.2gの水酸化ナトリウムを添加した。70℃に加熱後、反応混合物を2時間撹拌した。溶媒を真空蒸発後、水300mlを添加し、続いて15.4gのイソニペコチン酸を添加した。反応混合物は80℃で6時間加熱した。室温に冷却後、1MのHClをpH2になるまで添加した。その後、混合物を酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。この中間体は、溶媒の蒸発及びそれに続くヘプタンによる共蒸発で単離した。
【0106】
以下のように、NHSエステルを中間体から調製した。THF120ml中に溶解した12gの中間体に、3.51gのN−ヒドロキシサクシンイミドを添加した。この混合液に、THF50ml中に6.28gのジシクロヘキシルカルボジイミドが溶解した溶液を滴下により添加した。2時間後、生成した沈殿物を濾過し、母液を蒸発させた。粗生成物を酢酸エチルに溶解し、水及びブラインで洗浄した。溶媒を蒸発後、乾燥したNHSエステルを単離した。状況に応じて、温エタノール中で撹拌することにより生成物をさらに精製できる。
【0107】
ゼラチンに対するカップリング
その後、ジメチルスルホキシド(DMSO)中、単離したNHSエステルを加水分解した石灰骨ゼラチン(ゲル透過クロマトグラフィーで測定した平均分子量は21kD)に添加する。55℃で12時間撹拌後、それに続く酢酸エチル中の沈殿物によりゼラチンを単離し、濾過し、アセトンで洗浄し、乾燥する。得られたゼラチンは、37mmol/100gの負荷を有し、375nmで28a.u./gLのUV吸収作用を有する。
【実施例8】
【0108】
ジエチルアミノ基で修飾したカルボン酸を介したUV−C1のゼラチンに対するカップリング。
【0109】
UV−C1で修飾したゼラチンを、最終の負荷が4mmol/100gのゼラチン及び375nmで3a.u./gLのUV吸収作用を有するように実施例7に記載した方法で調製する。
【実施例9】
【0110】
ジエチルアミノ基で修飾したカルボン酸を介したUV−C1のリジンスペーサを介したゼラチンに対するカップリング。
【0111】
UV−C1のNHSエステルを実施例7に記載した方法により調製する。以後、2つのUV−C1のNHSエステルを、以下の反応により、リジンにカップリングする。
【0112】
DMSO70ml中の1.17gのリジン・HOに、DMSO20ml中の7gのUV−C1のNHSエステルを添加した。混合液を周辺温度で10時間、続いて50℃で2時間撹拌し、ジクロロメタン200mlを添加し、混合液を水で3回洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発後、リジンに対する6.5gの二重付加物を得た。得られた生成物の遊離型のカルボン酸基を、以下の反応を用いて、NHSエステルに変換した。
【0113】
ジクロロメタン120ml中のリジンに対する6.5gの二重UV−C1付加物を、1.2gのN−ヒドロキシサクシンイミド及びゼラチンにカップリングした2.1gのEDCIに添加した。反応混合液を室温で4時間撹拌した。その生成物を精製し、その後続いて水で洗浄し、乾燥し、溶媒蒸発により単離した。
【0114】
リジンに対する二重UV−C1付加物のNHSエステルをゼラチンにカップリングすることは、実施例7に記載した方法と同じ方法で起こる。
【0115】
得られたUV吸収ゼラチンは、実施例7で得られたサンプルよりもさらに高い吸収作用さえ示す(58mmol/100g、375nmで44a.u./g.L)。
【実施例10】
【0116】
アミノブタジエンゼラチンの皮膚への浸透の深さ。
【0117】
A/呈色反応
必須条件は特異的検出法を用いることであり、特定のサンスクリーン成分の存在を視覚化するために使用することができる。アミノブタジエンUV−C1の場合には、波長350nmの放射線下でその分子の蛍光機能の存在を有利に利用できる。
【0118】
B/皮膚浸透
皮膚浸透の調査を、以下に記載する調製物を使用して行った。
1.クレモラセトマクロゴールFNA(cremor cetomacrogolis FNA) (CMC)中、アミノブタジエンUV−C1(1%)
2.CMC中、アミノブタジエン(UV−C1)ゼラチン(低分子量画分)(10〜20%)
3.CMC中、アミノブタジエン(UV−C1)ゼラチン(高分子量画分)(10〜20%)
4.CMC中、カテコール(1%)(浸透マーカーとして)
調製物を、3人のボランティア被験者の皮膚(臀部)に塗布した。浸透時間は10時間であった。10時間後、局部麻酔後に生検(4mm)を行った。生検材料は、液体窒素内で凍結し、更なる分析のために保存した。
【0119】
顕微鏡観察
生検材料は、連続した8μmの厚さに切断した。スライスは、標準の方法に適合するように切断した。浸透の深さは、蛍光光学顕微鏡下で視覚的に測定し、下記の通り示した。
【0120】
【表4】

【0121】
5kDwを超えるMWを有するゼラチンにカップリングしたアミノブタジエンは、表皮に浸透しないが、一方5kDw未満の分子量を有するゼラチンにカップリングしたアミノブタジエンは、限られた範囲内で浸透する、ということはこれらのデータから明らかである。非カップリングのアミノブタジエンは、最強度の表皮浸透を示した。
【実施例11】
【0122】
サンスクリーン製剤(formulation)に使用するUVゼラチンの安定性及び粘着性。
【0123】
実施例7〜9で得られたアミノブタジエンゼラチンを、375nmでの吸収作用が各サンスクリーン製剤と同じ値になる濃度で、許容できるサンスクリーン製剤に使用した。
各サンプルの安定性を観察し、粘着性を測定した。サンプルの安定性及び粘着性を、コントロールサンスクリーン製剤と比較した。
【0124】
【表5】

【0125】
本実施例では、本発明のUV吸収複合体は、充分なUV吸収作用を提供し、そのエマルジョンの粘着性に有害な影響がない安定的なサンスクリーン製剤を提供するということを明瞭に示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容上及び皮膚科的に許容できる担体、並びにフラボノイドではなく、担体分子としてのポリペプチドに共有結合しているUV吸収化合物を含む、紫外線放射から防御するための美容用組成物。
【請求項2】
担体分子に結合した前記UV吸収化合物の内、該UV吸収化合物の250nm〜600nmにおける全吸収作用の10%未満が、400nmを超えることを特徴とする請求項1記載の美容用組成物。
【請求項3】
担体分子に結合した前記UV吸収化合物の内、250nm〜600nmにおける全吸収作用の少なくとも75%が、315nm〜400nmであることを特徴とする請求項1又は2記載の美容用組成物。
【請求項4】
前記UV吸収化合物が、ケイ皮酸(I)、ヒドロキシベンゾフェノン(II)、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール(III)及びアミノ−ブタジエン(IV)のファミリー、又はこれらの組合せから選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の美容用組成物。
【化1】

【請求項5】
前記UV吸収化合物が、UV−1、UV−2、UV−3、UV−4、UV−5、UV−6、UV−7、UV−8、UV−9、UV−10、UV−11、UV−12、UV−13、UV−14、UV−15、UV−16、UV−17、UV−18、UV−19、UV−20、UV−21、UV−22、UV−23、UV−24、UV−25及びUV−26の1又は複数から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項6】
前記UV吸収化合物の量が、前記担体分子の3〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項7】
担体分子に結合した前記UV吸収化合物分子の数が、100アミノ酸あたり0.15〜15UV吸収化合物分子、好ましくは、100アミノ酸あたり1〜10吸収化合物分子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項8】
前記UV吸収化合物が、一般式(A)で表されるアミノブタジエンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の美容用組成物。
【化2】

(式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、各々水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜20個の炭素原子を有するアリール基を表す。但し、R及びRは同時に水素原子ではなく、R及びRは一緒になって、環状アミノ基を形成してもよい。
及びRは各々、1又は複数のカルボン酸部分で置換されていてもよく、
は、カルボキシル基、−COOR、−COR又はSOを表し、
は、カルボキシル基、−COOR又は−CORを表す。
及びRは、同一又は異なっていてもよく、各々1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜20個の炭素原子を有するアリール基を表す。R及びRは一緒になって、1,3−ジオキソシクロヘキサン核、バルビツール酸核、又は2, 4−ジアゾ−1−アルコキシ−3,5−ジオキソシクロヘキセン核を形成してもよい。)
【請求項9】
前記UV吸収化合物が、以下の一般式(B)で表されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の美容用組成物。
【化3】

(式中、R、R、R及びRは、請求項1で定義されたとおりである。)
【請求項10】
前記担体分子がアミノブタジエン(A)とカップリングすることができるポリマーであることを特徴とする請求項8又は9記載の美容用組成物。
【請求項11】
担体分子に結合した前記UV吸収化合物が、375nmで少なくとも5.6a.u./g.LのUV吸収作用を有することを特徴とする請求項8〜10のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項12】
担体分子に結合した前記UV吸収化合物が、375nmでUV吸収作用を少なくとも20a.u./g.L、好ましくは少なくとも25a.u./g.L、さらに好ましくは少なくとも30a.u./g.L、最も好ましくは少なくとも40a.u./g.L有することを特徴とする請求項8〜10記載の美容用組成物。
【請求項13】
前記担体分子100グラムあたり少なくとも7.6mmolのアミノブタジエン(A)がカップリングしている、好ましくは、該担体分子100グラムあたり少なくとも15mmolのアミノブタジエンがカップリングしていることを特徴とする請求項8〜10記載の美容用組成物。
【請求項14】
担体分子が、さらに、アルキル基、好ましくはスクシニル基を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項15】
前記担体分子が1,500〜50,000ダルトン、好ましくは3,000〜30,000ドルトンの分子量を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項16】
前記担体分子が、カゼイン、セリシン、可溶性コラーゲン及びゼラチンから選択されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項17】
前記担体分子が、ヘリックス構造を有さないコラーゲン又はゼラチンであることを特徴とする請求項1〜16のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項18】
ビタミンC及び/又はビタミンEが前記担体分子に共有結合していることを特徴とする請求項1〜17のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項19】
前記担体分子が水溶性であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項20】
ヒドロゲルの形態であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか記載の美容用組成物。
【請求項21】
請求項4〜13のいずれかで定義した担体分子に結合したUV吸収化合物。
【請求項22】
アミノブタジエンAをイソニペコチン酸、又はその等価体に接触させ、そして前記担体分子より得られる付加物とカップリングさせることを含むことを特徴とする請求項21記載の担体分子に結合したUV吸収化合物の製造方法。
【請求項23】
紫外線放射に対し防御するための美容用組成物を調製するためのフラボノイドではなく、担体分子に共有結合している、UV吸収化合物の使用。
【請求項24】
請求項1〜20のいずれかで定義した担体分子に結合したUV吸収化合物を、18重量%未満、好ましくは13重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満含むことを特徴とするサンスクリーン組成物。

【公表番号】特表2006−519227(P2006−519227A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502754(P2006−502754)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000139
【国際公開番号】WO2004/075871
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505232782)フジ フォト フィルム ビー.ブイ. (50)
【Fターム(参考)】