説明

美容装置

【課題】 皮膚に温熱を与えるための機構を電気的な面でも伝熱の面でも他の機構部分と矛盾無く且つ簡略に構成でき、適切に温熱付与状態を生じさせて優れた美容効果を得られる美容装置を提供する。
【解決手段】 使用者の皮膚に当接させるヘッド部12が、本体部11内のヒータ13aから伝熱体13dを介して熱を伝えられる配置とされ、ヒータ13aを伝熱体13d側に押圧し、弾性変形する伝熱体13dが押圧で端子13b及びヘッド部12と密着して、ヒータ13aの熱が端子13b及び伝熱体13dを介してヘッド部12にロス無く最短距離で伝わることから、ヒータ13aへの通電のための電気的接続と、ヘッド部12とヒータ13aとの間の熱伝導構造とを矛盾無く両立させて、ヒータ13aで効率よくヘッド部12を加熱でき、皮膚に適切に温熱を与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の皮膚に対し所定の美容効果を与える美容装置、特に、温熱による美容効果を与える装置に関する。なお、本発明で美容効果を与える対象としての「皮膚」と共に用いる「肌」の語は、体表面のみでなく皮下脂肪等の皮下組織を含む体表層の「皮膚」と同義のものとして扱っている。
【背景技術】
【0002】
使用者の顔等の肌(皮膚)に対し所定の美容・美肌に係る各種動作を実行する美容機器は、家庭で用いられる簡易な単機能、低出力のものから、業務用として用いられる多機能、高出力のものまで、様々な種類のものが利用されている。こうした美容機器のうち、家庭等で用いられる簡易なものとしては、肌を冷したり加熱したりするもの、肌に対し吸引を行うもの、肌にスチームやミストを当てるもの、肌に光を照射するもの、肌に超音波による振動を伝えるもの、肌に微弱電流を流してイオン導入(イオントフォレーシス)を行うものなどが一般的に使用されている。
【0003】
この中で、肌にとっての各種有効成分を肌に深く浸透させるという優れた効果が得られるイオン導入法を用いた機器は近年注目を集めており、そうした従来の美容機器の一例として、特開2005−237545号公報や特開2005−245521号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−237545号公報
【特許文献2】特開2005−245521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の美容機器は前記各特許文献に示される構成となっており、こうしたイオン導入を行う機器の中には、イオン導入と組合わせて、肌を温めたり、肌へ超音波を発したり、光を照射したりする機能を有するものも提案されていたが、こうした他の美容動作とイオン導入との関係は明らかにされておらず、単純に同時に各機能を実行するものとされており、またイオン導入の機構と他の機能を実現する機構の組合わせ構造についても実現可能な程度に具体的に示されたものはなく、構想の段階にとどまっていた。
【0006】
特に、イオン導入と共に温熱を付与するものについては、家庭用に導入するにあたり低コストで効率のよい加熱を行うために、通電により発熱するヒータが欠かせないが、イオン導入用の電極の電気的な接続機構、及び、温熱付与のために前記電極を加熱するヒータの電気的な接続機構、並びにヒータと前記電極との伝熱構造を、短絡や誤動作等の矛盾を生じさせない実現可能な構成として具体的に示したものは未だ存在せず、簡略で低コストの加熱機構を備える美容機器を実用に供することができないという課題を有していた。
【0007】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、皮膚に温熱を与えるための機構を電気的な面でも伝熱の面でも他の機構部分と矛盾無く且つ簡略に構成でき、適切に温熱付与状態を生じさせて優れた美容効果を得られる美容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る美容装置は、使用者の皮膚に対し所定の美容動作を実行する美容装置において、使用者により保持される本体部と、当該本体部の一端部に配設され、熱伝導性を有する材料で形成されるヘッド部と、前記本体部内に配設され、通電により昇温するヒータ、及び当該ヒータと前記ヘッド部間に介在する伝熱体を有してヘッド部を人の体温以上に加熱する加熱部と、当該加熱部によるヘッド部の加熱状態を調整制御する制御部とを備え、前記加熱部のヒータが、略平行な二面を有し、当該二面で通電用の正負各端子とそれぞれ接触導通すると共に、前記二面の一方で端子を介して前記伝熱体と近接して配設され、所定の付勢手段により伝熱体側に押圧され、前記伝熱体が、良熱伝導性を有し弾性変形可能な略シート状体で形成されるものである。
【0009】
このように本発明によれば、本体部の一端部に配設されて使用者の皮膚に当接させるヘッド部が、本体部内の加熱部をなすヒータから伝熱体を介して熱を伝えられる配置とされ、ヒータを伝熱体側に押圧してヒータを端子に、端子を伝熱体にそれぞれ押付け、弾性変形する伝熱体が押圧で端子及びヘッド部と隙間無く密着して、ヒータの熱が端子及び伝熱体を介してヘッド部にロス無く最短距離で伝わることにより、ヒータへの通電のための電気的接続と、ヘッド部とヒータとの間の熱伝導構造とを矛盾無く両立させて、ヒータで効率よくヘッド部を加熱でき、ヘッド部にヒータの温度制御状態を無理なくスムーズに反映させて、皮膚に適切に温熱を与えられると共に、ヘッド部の昇温状態が簡略な機構で得られることとなり、温熱を皮膚に付与する構造を低コスト化できる。
【0010】
また、本発明に係る美容装置は必要に応じて、前記本体部の使用者による把持部分に配設されるイオン導入用の補助電極部と、前記本体部のヘッド部近傍に配設され、イオン導入用の液剤を含浸可能な多孔質被覆体をヘッド部上に着脱可能に保持する保持部とを備え、前記ヘッド部が、導電性を有する材料で形成されて、イオン導入用の電極とされ、前記伝熱体が、電気に対する絶縁性を有してなり、ヒータとヘッド部とを絶縁しつつヒータの熱をヘッド部へ伝え、前記制御部が、前記ヘッド部と補助電極部間で前記多孔質被覆体及び使用者を介して通電可能とし、前記加熱部によるヘッド部の加熱を実行させつつ、多孔質被覆体に含浸させた化粧料から皮膚へのイオン導入を生じさせるものである。
【0011】
このように本発明によれば、ヘッド部がイオン導入用の電極とされて、イオン導入の際に電流が流れる構造とされる一方、電気絶縁性を有する伝熱体を介してヒータ及び端子とヘッド部との間で熱が伝わるようにして、ヘッド部に通電するための電気配線とヒータに係る電気配線とを伝熱体で電気的に隔離した構造としつつ、ヒータからヘッド部への熱伝導を実現することにより、イオン導入に係るヘッド部への通電とヒータによるヘッド部の加熱を、互いに悪影響を及し合うこともなく適切に実行できることとなり、仮にヘッド部の極性をイオン導入内容に応じて変えたとしても、ヘッド部の電気配線と独立したヒータへの影響は無く、ヘッド部への通電と加熱を同時に行っても問題は生じず、ヘッド部による皮膚の加温と皮膚へのイオン導入を同期させて実施でき、皮膚やイオン導入用の化粧料を温めて浸透性を高めることでイオン導入の促進も図れ、皮膚に対し極めて効率よくイオン導入を実行して美容効果を発揮させられる。
【0012】
また、本発明に係る美容装置は必要に応じて、前記制御部が、前記加熱部によるヘッド部の加熱を行わない状態で、前記ヘッド部と補助電極部間でふき取り用の化粧料を含浸させた前記多孔質被覆体及び使用者を介して通電させ、皮膚における帯電した汚れ成分をヘッド部側へ移動させ、前記汚れ成分を多孔質被覆体に取込むクレンジングモードを備えるものである。
【0013】
このように本発明によれば、ヘッド部を電極として用いて使用者の皮膚に電流を流し、クレンジングとして皮膚における帯電した汚れ成分を電極であるヘッド部側へ引寄せて移動させ、汚れ成分を多孔質被覆体に取込んで皮膚から除去する動作を実行することにより、イオン導入の他にヘッド部への通電でヒータの動作等に影響を与えることなく新たな機能を実現でき、通常の方法では除去しにくい皮膚の汚れを確実に除去することができ、汚れによる皮膚への悪影響を排除すると共に、汚れが無くなる分、皮膚へのイオン導入の効果も一層向上することとなる。
【0014】
また、本発明に係る美容装置は必要に応じて、前記制御部が、加熱部によるヘッド部の加熱に際し、加熱部の加熱温度を所定の第一の温度に維持する第一の期間と、前記第一の温度より数度高い第二の温度に維持する第二の期間とがあり、且つ当該第二の期間を前記第一の期間の後に第一の期間より長くして設定する温度制御を、ヘッド部の加熱を一時停止する期間を間に挟みつつ繰返し実行するものである。
【0015】
このように本発明によれば、加熱部によるヘッド部の加熱に際し、加熱温度を第一の温度に少しの間維持した後、第二の温度に昇温させてしばらくこれを維持する温度制御を繰返し行い、加熱期間の全体で大部分は第二の温度としつつ、中間に第一の温度とする期間を時々生じさせ、使用者の皮膚に第一の温度と第二の温度との間の温度変化を感じさせることにより、体温より高い第二の温度による温熱刺激が皮膚に与えられていても、その温度が一定であれば、人の正常な反応として刺激を当初のように感じにくくなる、すなわち慣れを生じてしまうのに対し、時々第一の温度となる変化が加わることで、慣れが生じにくく、温熱刺激に対する反応としての皮膚の浸透を促す状態への変化や、血行の増進といった事象が、温熱を付与した当初と変ることなく発生し、皮膚がヘッド部で温められている間じゅう、これに伴う美容効果を確実に与えることができる。
【0016】
また、本発明に係る美容装置は必要に応じて、前記ヒータを挟んで配設される通電用の端子のうち、前記伝熱体に近接する側とは反対側に配置される端子が、他方の端子よりヒータとの接触面を小さくした板ばね状に形成され、前記付勢手段を兼ねるものである。
【0017】
このように本発明によれば、ヒータに接する通電用の端子のうち、伝熱体に近接する側の端子に対し、その反対側に配置される端子のヒータとの接触面を小さく形成し、ヒータの一面から伝熱体に近接する側の端子に伝わる熱量と、ヒータの他面から端子に伝わる熱量を異ならせることにより、ヒータと端子との接触面がより大きい伝熱体のある側にヒータの熱が伝わりやすく、ヒータの熱を端子及び伝熱体を介して効率よくヘッド部に伝えることができる一方、ヒータと端子との接触面が小さい他の端子側に伝わる熱を必要最小限にすることができ、ヒータからこの端子を経て本体部内部へ向う熱の移動を抑えて、本体部内部の熱による悪影響を特に断熱材等を配置することなく防止できることとなる。また、端子が板ばねの役割を果して付勢手段を兼ねることで構造を簡略化でき、本体部内にヒータからの熱を遮断する断熱材等を配置せずに済むことと合せて、装置のより一層の低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る美容装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る美容装置の正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る美容装置の背面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る美容装置の右側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る美容装置の平面図及び傾動腕部傾動状態平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る美容装置における多孔性被覆体固定状態の斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る美容装置における傾動腕部傾動状態の斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る美容装置におけるヘッド部及び加熱部の要部分解斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る美容装置におけるヘッド部及び加熱部の断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る美容装置のブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る美容装置におけるクレンジング動作状態の説明図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る美容装置におけるヘッド部加熱を併用するイオン導入動作状態の説明図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る美容装置におけるローラ通電及び光照射動作状態の概略説明図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る美容装置における加熱動作状態の説明図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る美容装置における加熱部のヘッド部加熱温度の時間的変化説明図である。
【図16】本発明の美容装置による水溶性(電解質)有効成分の浸透促進効果を示すグラフである。
【図17】本発明の美容装置による水溶性(非電解質)有効成分の浸透促進効果を示すグラフである。
【図18】本発明の美容装置による油溶性有効成分の浸透促進効果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る美容装置を図1ないし図15に基づいて説明する。
【0020】
前記各図において本実施形態に係る美容装置1は、使用者により保持される本体部11と、本体部11の先端に配設されて肌(皮膚)50に対するイオン導入等の美容動作に用いられるヘッド部12と、本体部11内に配設されてヘッド部12を温める加熱部13と、本体部11におけるヘッド部12近傍の所定部位に傾動可能に配設される傾動腕部14と、この傾動腕部14に取付けられて所定波長の光を照射する照射部15と、照射部15を挟む配置として傾動腕部14の先端部に回動可能に配設される一対のローラ電極16、17と、各電極への通電や照射部15における光の照射を制御する制御部18と、ヘッド部12に対して多孔質被覆体12aを保持する保持部19とを備える構成である。
【0021】
前記本体部11は、前記ヘッド部12が一端に配設される一方、他端側には使用者が使用時に手で握って保持する把持部11aを形成されてなり、把持部11aの長手方向とヘッド部12の正面方向とが所定角度分傾いた形状として形成され、内部には前記制御部18等の電気回路や電源としての電池(図示を省略)を配設される構成である。また、本体部11のヘッド部12の近傍に傾動腕部14を取付けられる構成である。
【0022】
また、ヘッド部12の正面側に近い把持部11a正面側には、使用者の入力操作を受けて美容動作のON、OFFや動作の種類、強弱等を切換える操作部11bが配設され、また把持部11a側面には導電性部材からなり制御部18と接続された補助電極部11cが配設される。
【0023】
さらに、本体部11におけるヘッド部12近傍部分は、多孔質被覆体12aを保持する保持部19を装着可能な形状として形成される。
【0024】
前記保持部19は、外力に対して復元性を有する素材で形成される環状体であり、本体部11におけるヘッド部12近傍部分の周囲に係合して本体部11と一体化する構成である。この保持部19を、多孔質被覆体12aが保持部19と本体部11との間に挟み込まれた状態で、そのまま本体部11と係合させると、保持部19と共に多孔質被覆体12aが本体部11から容易に離脱しない状態となり、多孔質被覆体12aをヘッド部12上に位置させた状態で保持できる仕組みである。この保持部19は、本体部11と別体として形成されているが、これに限られるものではなく、多孔質被覆体12aをヘッド部12に沿って押えるなどして保持できるものであれば、本体部11と当初から一体となった構造でもかまわない。
【0025】
前記ヘッド部12は、金属等の導電性及び良熱伝導性を有する材質からなり、肌50に直接又は多孔質被覆体12aを介して当接し、肌50に対しイオン導入をはじめとする美容動作を実行するものである。このヘッド部12は本体部11内でばね12b、ラグ端子12c及び導線12d等を介して制御部18と電気的に接続されており、把持部11aにある補助電極部11cとの間で使用者の体を介して通電可能とされる構成である。また、ヘッド部12には本体部11の内側から加熱部13が当接しており、この加熱部13により必要に応じ温められて体温以上の所定温度まで昇温する構成である。ただし、ヘッド部12と加熱部13との間での電気的な接続はなく、前記ばね12bをはじめとするヘッド部12への通電用配線と加熱部13への配線は独立したものとなっている。
【0026】
通電については、制御部18によりヘッド部12と補助電極部11c間に電圧が加えられて通電が起こり得る状態とされた上で、電解質成分を含む化粧水、乳液、ゲル剤、クリーム剤等の化粧料が含浸した多孔質被覆体12aを介して、又は直接、ヘッド部12が顔等の肌50に接触し、また補助電極部11cが把持部11aを持つ掌や手の指等と接触すると、ヘッド部12と補助電極部11cとが使用者の体を介して通電状態となる仕組みである。この場合、人体が導体をなすこととなる。
【0027】
このヘッド部12と補助電極部11cは十分離れており、補助電極部11cに触れた手等がヘッド部12に誤って接して、通電が生じるようなことはない。
【0028】
このヘッド部12の接する肌50への通電に伴って、あらかじめ肌表面に塗布したか、多孔質被覆体12aに染込ませたかした化粧水、乳液、ゲル剤、クリーム剤等の化粧料中に含まれるイオン性の有効成分を、制御部18からの電流に基づくイオン移動によって肌内部に導入するイオン導入(イオントフォレーシス)を実行できる仕組みである。このイオン導入の手法自体は公知のものであり、詳細な説明を省略する。
【0029】
また、クレンジングとして、帯電した老廃物等の汚れ成分を通電により肌側からヘッド部12側に移行させ、多孔質被覆体12aに取込む状態を得ることもできる。
【0030】
このヘッド部12の大きさは適度な大きさに形成されており、ヘッド部12を当接させる肌50のうち、鼻と頬の境界部分など凹部となっている箇所にヘッド部12を接触させようとする場合でも、適切な大きさの接触面をもって確実に当接させることができ、偏りなくイオン導入やクレンジング等を行うことができる。
【0031】
このヘッド部12は、イオン導入等を行う関係上、チタン等の通電に対し安定した材質を用いるのが望ましい。すなわち、仮にヘッド部12をクロム等のメッキ表面とした場合、イオン導入の際、電気分解によりヘッド部12の表面に金属イオンが溶出し、この溶出金属イオンが皮膚に対して悪影響を与えるという問題を生じるが、安定性の高いチタンを電極表面に用いれば、通電を経てもヘッド部12での電気分解によりチタンの金属イオンが溶出することはなく、安全に使用できる。この電極表面材料は、純チタンが望ましいものの、チタン化合物であってもよい。また、チタン以外に金を用いることもできる。
【0032】
なお、イオン導入で、ヘッド部12を化粧水等の化粧料を染みこませた状態の多孔質被覆体12aで覆った状態とする際には、傾動腕部14を傾動させて照射部15及びローラ電極16、17をヘッド部12正面からずらし、開放状態とされたヘッド部12に多孔質被覆体12aを被せ、保持部19を嵌合させて多孔質被覆体12aを固定状態とする。
【0033】
多孔質被覆体12aは、カット綿やコットンパフ等と同様の脱脂等加工した綿繊維を不織シート状に成形してヘッド部12を覆うカバーとして用いるものであり、化粧水、乳液、ゲル剤、クリーム剤等の化粧料を十分吸収してそのまま保持できる性質を備える。なお、この多孔質被覆体12aは、化粧料を含浸可能で可撓性を有する多孔質の軟質シート状のものであれば、コットン以外のものも利用できる。
【0034】
前記加熱部13は、前記ヘッド部12を所定温度に加熱してヘッド部12から肌50やシートに染込ませた化粧料に温熱を与えられるようにするものであり、詳細には、ヘッド部12の後方に配設され、通電により発熱するヒータ13aと、ヒータ13aのヘッド部12寄り表面に当接させて配設される大端子部13bと、ヒータ13aのヘッド部12と離れた表面側に当接させて配設される小端子部13cと、ヒータ13a及び大端子部13bとヘッド部12との間に介在させて配設され、ヒータ13a及び大端子部13bとヘッド部12間の絶縁を維持しつつヒータ13a側からヘッド部12側への熱伝導を可能とする伝熱体13dと、ヒータ13a近傍に配設されてヒータの温度を検知する感温体13eと、ヒータ13a及び各端子部を支えるホルダ部13fとを備える構成である。
【0035】
前記ヒータ13aは、いわゆるPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータであり、正の温度係数を持ち、温度が上昇すると、ある温度(キュリー温度)で抵抗値が急激に増加する抵抗変化特性を有するように調製されたセラミック又は有機体からなる薄い円板形状として形成され、各円形面に前記大端子部13bと小端子部13cをそれぞれ当接させて通電され、制御部18であらかじめ設定された温度まで昇温するものである。ヒータ自体が自己温度制御機能を持っており、信頼性が高く長寿命であり、また設定温度までヒータ容量が一定しているので、設定温度まで早く到達できる。
【0036】
このヒータ13aは、時間経過に伴って温度変化を生じるよう制御部18で制御されており、例えば通電開始から30秒程度で体温より高い所定温度、例えば44℃まで温度上昇し、その後しばらくこの44℃を維持し、通電から2分経過頃にさらに数度、例えば48℃に達するよう温度上昇し、さらに1分間この48℃を維持するよう制御される。そして、ヒータ13aによるヘッド部12の加熱が必要な間は、前記温度変化を生じさせる制御が繰返し実行される。
【0037】
前記大端子部13bは、金属薄板で形成され、ヒータ13aにおけるヘッド部12寄りの円形面のほぼ全体と接触し、通電可能とすると共に、伝熱体13dとも接触して、ヒータ13aで発生した熱をヘッド部12側に伝えるものである。
【0038】
前記小端子部13cは、金属薄板で一部を板ばね状として形成され、ヒータ13aにおけるヘッド部12と離れた円形面の一部と接触し、通電可能とすると共に、ばねによる弾性力でヒータ13aを大端子部13b側(ヘッド部12側)へ向けて押圧する構成である。詳細には、中心の略円形部分と、その外周部に等間隔で放射状となる三方向へ延出配置される板ばね部分とを備える構成である。
【0039】
この小端子部13cにおける三つの板ばね部分は、ヒータ13aに接触することなく浮いた状態で延出してホルダ13fにその端部のみが接することで、小端子部13c全体が支持される構造となっており、小端子部13cからホルダ13f側へ熱をできるだけ伝えないようにしている。
【0040】
一方、小端子部13cにおけるヒータ13aとの接触面となる中心の略円形部分は、大端子部13bより小さいため、ヒータ13aで発生した温熱は大端子部13b側に伝わりやすくなっており、温熱は主に大端子部13bを伝わって伝熱体13dを介しヘッド部12に達する仕組みである。
【0041】
また、この接触面積の差異によりヒータ13aから小端子部13cに伝わる熱は小さく、また、板ばね部分を有する小端子部13cがヒータ13aとホルダ13f間に空間を生じさせていることで、本体部11内部側に伝わる熱量を小さく抑えることができる。
【0042】
前記伝熱体13dは、弾性変形可能な電気絶縁性材で且つ熱伝導性に優れる素材で形成される円板状部材であり、大端子部13bとヘッド部12との間に介在してそれぞれと密着し、大端子部13b側からの熱を確実にヘッド部12側へ伝達するものである。小端子部13cがそのばね性でヒータ13aを大端子部13b側へ押付けることで、ヒータ13aが大端子部13bに密着すると共に、このヒータ13aに押される大端子部13bが伝熱体13d側に移動し、大端子部13bが伝熱体13dを押圧して一部弾性変形させることで、大端子部13bは伝熱体13dに密着することができ、また大端子部13bに押される伝熱体13dもヘッド部12に密着できることから、ヒータ13a表面からの熱が偏り無くヘッド部12側に伝わる仕組みである。
【0043】
一方、大端子部13bより広い伝熱体13dが絶縁性を有して大端子部13bをヘッド部12から隔離していることで、大端子部13bとヘッド部12との間での電気的な導通は起こり得ず、加熱用の回路とヘッド部12への通電用回路との間で短絡その他の悪影響の発生を防止できる。
【0044】
さらに、加熱部13のヒータ13a、大端子部13b、及び小端子部13cの周囲には、これらを取囲んだ状態で配設される立壁部11gが存在しており、電気絶縁性を有し且つ熱を伝えにくい材質からなるこの立壁部11gと、前記伝熱体13dにより区画された内側部分にヒータ13a、大端子部13b、及び小端子部13cが配置されることで、立壁部11gの外側でヘッド部12に接続されるばね12bやラグ端子12c等の通電用配線と加熱部13が電気的に隔離されることに加え、前記区画の外側となる本体部11側へ熱が逃げるのを抑制できる。そして、小端子部13cがこの区画の内側部分上部にヒータ13aを位置させていることで空間も生じており、ヒータ13aから本体部11内部側への熱の逃げをさらに抑制できる仕組みである。
【0045】
前記傾動腕部14は、本体部11におけるヘッド部12のある先端部に傾動可能に取付けられる略腕状部材であり、傾動の中心から離れた端部に前記照射部15及びローラ電極16、17を取付けられる構成である。この傾動腕部14については、照射部15として光の照射範囲の広い光源を用いる場合、ローラ電極16、17に挟まれた開口部分以外からの光の予期せぬ漏れを防ぐために、照射部15の側方を覆う形状とするのが好ましい。
【0046】
ローラ電極16、17による通電及び光照射を行う際は、この傾動腕部14を傾動させて照射部15及びローラ電極16、17をヘッド部12正面に位置させ、ローラ電極16、17を肌50に当接可能な状態とする。一方、イオン導入など、ローラ電極16、17による通電及び光照射を行わない場合には、傾動腕部14を傾動させて照射部15及びローラ電極16、17をヘッド部12正面からずらし、ヘッド部12を開放状態として肌50に当接可能な状態とすることとなる。
【0047】
前記照射部15は、肌50に所定の施療効果を生じさせる赤外光、可視光等の光を発する高輝度型の発光ダイオード(LED)を複数配置した公知の光源であり、詳細な説明を省略する。この照射部15は、傾動腕部14内に設けられた導線を介して本体部11内側の制御部18と電気的に接続されている。
【0048】
前記ローラ電極16、17は、傾動腕部14の傾動中心部分から離れた先端側に肌50と接触可能に、且つ照射部15を挟んで対向する配置で一対配設される導体であり、対をなす電極と肌50が接触している状態で、制御部18により対をなす電極間を通電状態とされる構成である。このローラ電極16、17は、金属等の導電体で形成するほか、ゴム等の弾性体表面に金属等の導体を貼付けたり導体の薄膜を配置して形成した構造とすることもできる。このローラ電極16、17も、照射部15同様、傾動腕部14内に設けられた導線を介して本体部11内側の制御部18と電気的に接続される。
【0049】
前記制御部18は、本体部11に内蔵され、使用者の操作部11bへの入力操作を受けて、ヘッド部12と補助電極部11c間の通電や、加熱部13によるヘッド部12の加熱、対をなすローラ電極16、17間の通電、及び照射部15の光照射を、それぞれ制御するものである。
【0050】
制御部18は美容用途ごとに動作モードを設定しており、本実施形態においては、皮膚に蓄積している有害成分や老廃物を除去するクレンジングモード、皮膚の深部に化粧料の有効成分を浸透させるイオン導入モード、皮膚を活性化して乳液やクリームの定着、浸透を図るローラ通電及び光照射モード、及び、皮膚に温熱刺激を与えてマッサージ効果の増進を図る加熱モード、の四つがある。
【0051】
クレンジングモードとローラ通電及び光照射モードでは、加熱部13によるヘッド部12の加熱は実施しない。クレンジングモードとイオン導入モードでは、ヘッド部12と補助電極部11c間を通電状態とする。ローラ通電及び光照射モードでは、対をなすローラ電極16、17間を通電状態とする。またローラ通電及び光照射モードのみ、照射部15による光照射を実行する。加熱モードでは加熱部13によるヘッド部12の加熱のみ実施し、各電極間の通電は行わない。
【0052】
この動作モードの切替えは、操作部11bのモード切替スイッチ11dや加熱スイッチ11eに対する使用者の入力操作に基づいて行われる。電源投入直後、使用者が最初にモード切替スイッチ11dを操作すると、制御部18はクレンジングモード、イオン導入モード、ローラ通電及び光照射モードのいずれかを実行可能な状態となり、また最初に加熱スイッチ11eを操作すると、加熱モードを実行する状態となる。モード切替スイッチ11dを操作して動作モードを選択した後に、加熱スイッチ11eを操作すると、イオン導入モードが選択されていた場合には、ヘッド部12が加熱されてイオン導入と並行して温熱も付加できる状態となるが、クレンジングモードとローラ通電及び光照射モードが選択されていた場合は、これらの動作とヘッド部12加熱の同時実施はなく、加熱スイッチ11eの操作は無効とされる。一方、加熱スイッチ11eの操作でヘッド部12の加熱を実行中に、再度加熱スイッチ11eを操作すると、ヘッド部12の加熱は停止される。
【0053】
また、制御部18は、加熱部13については、感温体13eによる検出温度に基づいてヒータ13aの発熱状態を制御し、ヘッド部12の温度を調整している。ヘッド部12の加熱に際しては、ヘッド部12からの温熱刺激に使用者が慣れることを防止するために、ヘッド部12に温度変化を生じさせるように加熱部13における加熱状態を制御する。すなわち、所定のタイミングで温度を変化させることで使用者の慣れを生じさせず、使用者は温熱を常に当初と変らない刺激として受取ることとなり、温熱の効果が損われることはない
具体的には、制御部18は、加熱の開始後短時間、例えば約30秒間でヘッド部12を加熱する加熱部13のヒータ温度を第一の温度、例えば44℃に昇温させ、この第一の温度を第一の期間、例えば30秒近く維持した後、さらに数度昇温させて第二の温度、例えば48℃とし、この第二の温度を前記第一の期間より長い第二の期間、例えば2分程度継続後、加熱状態を停止し、ヒータ13a及びヘッド部12を自然放熱状態とする、という一連の温度制御状態が、所定時間間隔で繰返し実行される。
【0054】
次に、本実施形態に係る美容装置の各美容動作状態について説明する。前提として、美容装置1が使用者による操作部11cの電源スイッチ11f操作により起動し、使用者が把持部11aを持ってヘッド部12又はローラ電極16、17を使用したい肌部位に向けられる状態にあるものとする。使用者により動作モードが選択入力されれば、制御部18が各動作モードの実行を開始可能な状態とする。
【0055】
クレンジングを行う場合には、使用者はあらかじめ傾動腕部14を傾動させて照射部15及びローラ電極16、17をヘッド部12正面からずらし、ヘッド部12を肌に当接可能な開放状態とし、電解質成分を含んだふき取り用化粧水等の化粧料を染みこませた多孔質被覆体12aをヘッド部12に被せ、さらに保持部19を本体部11に嵌合させて多孔質被覆体12aを固定する。
【0056】
使用者が操作部11bのモード切替スイッチ11dを操作してクレンジングモードを選択すると、制御部18はヘッド部12と補助電極部11c間に短い周期でパルス状の微弱電流を流す通電状態の開始を可能とする。ただし、ヘッド部12を肌から離している状態では、ヘッド部12と補助電極部11c間が体を介して閉じた回路となっていないため、通電はない。なお、このクレンジングモードでは、加熱部13によるヘッド部12の加熱は行われない。
【0057】
ヘッド部12を多孔質被覆体12aを介し肌50に密着させると、体及び多孔質被覆体12a中の化粧料を介した通電状態となり、皮膚表面や内部の帯電した微細な汚れ成分(落ちきれなかった化粧品の成分、タバコの煙の成分、老化角質等)がヘッド部12に引寄せられて肌側から多孔質被覆体12a側に移行し、多孔質被覆体12aに汚れ成分が取込まれる状態となることで、肌の汚れを吸引除去できる。
【0058】
多孔質被覆体12aを肌50に当接させたままヘッド部12を肌上で少しずつ移動させると、通電状態のまま汚れ除去の対象位置を変えられるが、この除去動作を中断したり除去位置を変えるために、ヘッド部12を肌50から離すと、直ちに通電は中断する。クレンジングを完全に終える場合は、使用者が操作部11bで動作モードを他に切替えるか電源をOFF状態とすればよい。
【0059】
このクレンジングの終了後は、嵌合させていた保持部19を外し、多孔質被覆体12aを取外してヘッド部12を清浄化する。また、使用者は洗顔等を行って肌上に浮いた状態で残った汚れを取除くこととなる。
【0060】
イオン導入を行う場合には、使用者は前記同様あらかじめ傾動腕部14を傾動させて照射部15及びローラ電極16、17をヘッド部12正面からずらし、ヘッド部12を肌に当接可能な開放状態とすると共に、電解質成分を含んだ保護化粧水等の化粧料を染みこませた多孔質被覆体12aをヘッド部12に被せ、さらに保持部19を本体部11に嵌合させて多孔質被覆体12aを固定する。この場合、多孔質被覆体12aをヘッド部12に被せ、保持部19を嵌合させて固定した後、多孔質被覆体12aに化粧料を染みこませてもよい。
【0061】
使用者が操作部11bのモード切替スイッチ11dを操作してイオン導入モードを選択すると、制御部18はヘッド部12と補助電極部11c間に短い周期でパルス状の微弱電流を流す通電状態の開始を可能とする。また、使用者が必要に応じて加熱スイッチ11eを操作すると、制御部18は加熱部13によるヘッド部12の加熱を開始する。ただし、ヘッド部12を肌50から離している状態では、ヘッド部12と補助電極部11c間が閉じた回路となっていないため、通電はない。
【0062】
ヘッド部12を多孔質被覆体12aを介し肌50に密着させると、体及び多孔質被覆体12a中の化粧料を介した通電状態となり、多孔質被覆体12aを流れる電流で化粧料中のイオン性の有効成分(プロビタミンCなど)を肌側へ移行させ、電流によりイオンが浸透しやすい状態となっている肌内に、有効成分が速やかに浸透する。
【0063】
この時、ヘッド部12が加熱されている場合には、加熱部13で適度な温度に昇温したヘッド部12により、多孔質被覆体12a及び肌50が温められることで、多孔質被覆体12a中の化粧料の活性が高まると共に、肌50も有効成分が浸透しやすい状態に変化しており、イオン性有効成分の肌内への移行がさらに促進される他、化粧料中の非電解質の水溶性有効成分や油溶性の有効成分についても肌50に浸透しやすくなっており、こうした各種有効成分が肌50に深く浸透して確実に美容効果を与えられることとなる。
【0064】
ヘッド部12を多孔質被覆体12aと共に肌50に当接させたまま肌上で少しずつ移動させると、通電状態のままイオン導入の対象位置を変えられるが、イオン導入を中断したり導入位置を大きく変えるために、ヘッド部12を肌50から離すと、直ちに通電は中断する。イオン導入を完全に終える場合は、使用者が操作部11bで機能を他に切替えるか電源をOFF状態とすればよい。
【0065】
このイオン導入のモードの終了後、嵌合させていた保持部19を外し、多孔質被覆体12aをヘッド部12上から取外す。
【0066】
ローラ通電及び光照射を行う場合には、使用者は傾動腕部14を傾動させてヘッド部12の正面側にローラ電極16、17と照射部15が位置し、ローラ電極16、17が肌50に当接可能な状態とする。同時に、肌に乳液又はクリームを付けてなじませた状態とする。
【0067】
使用者が操作部11bのモード切替スイッチ11dを操作してローラ通電及び光照射モードを選択すると、制御部18は対をなすローラ電極16、17間に短い周期でパルス状の微弱電流を流す通電状態の開始を可能とし、また照射部15における光の照射も開始される。ただし、ローラ電極16、17を肌50から離している状態では、ローラ電極16、17間が体を介して閉じた回路となっていないため、通電はない。なお、このローラ通電及び光照射モードでは、加熱部13によるヘッド部12の加熱は行われず、加熱スイッチ11eの操作は無効である。
【0068】
ローラ電極16、17を肌50に密着させると、対をなすローラ電極16、17間において肌50を介した通電状態となり、肌50に通電による刺激が加わり、肌50を活性化して乳液やクリームの浸透を促すこととなる。また、肌50は照射部15からの適度な照射強度の光を受け、光による美容効果も生じることとなる。
【0069】
ローラ電極16、17を肌50に当接させたまま転動させて肌上で少しずつ移動させると、通電及び光照射の対象位置を変えられるが、通電を中断したり通電及び照射位置を変えるために、ローラ電極16、17を肌50から離すと、直ちにローラ電極間の通電が中断する。通電及び照射を完全に終える場合、使用者は操作部11bで機能を他に切替えるか電源をOFF状態とすれば、ローラ電極16、17間の通電と照射部15における光の照射が停止する。
【0070】
皮膚への温熱付与を伴うマッサージを行う場合には、使用者はあらかじめ傾動腕部14を傾動させて照射部15及びローラ電極16、17をヘッド部12正面からずらし、ヘッド部12を肌50に当接可能な開放状態とする。同時に、肌にマッサージ用のクリームを付けてなじませた状態とする。この場合、パック効果を有するクリームであればより好ましい。
【0071】
使用者が操作部11bの加熱スイッチ11eを操作して加熱モードを選択すると、制御部18は加熱部13によるヘッド部12の加熱を開始する。なお、この場合は、ヘッド部12と補助電極部11c間の通電は行われない。
【0072】
加熱部13により温度を高められたヘッド部12を肌50に密着させると、肌やクリームが温められる状態となり、使用者はヘッド部12を肌50に押し当てたまま本体部11を動かしてヘッド部12で肌50をマッサージするようにし、肌のクリーム塗布部分全体にわたりマッサージしながら肌を温める。
【0073】
加熱部13の制御によりヘッド部12は一定温度ではなく、所定の温度変化が生じていることから、肌50が温熱刺激に慣れて温熱への反応が鈍くなることはなく、確実に温熱が刺激として作用して肌を吸収しやすい状態に変化させることができる。
【0074】
パック効果を有するクリームの場合、温められ浸透しやすい状態となった肌50にクリーム中の有効成分がスムーズに浸透し、より一層美容効果を高められる。
【0075】
加熱部13からの熱と体温で十分にクリームが温まると共に、マッサージの刺激に伴うクリームの攪拌が進行すると、クリームの液性が変化してマッサージ終了を示す転相状態に移行するため、ヘッド部12を肌50から離し、使用者は操作部11bの加熱スイッチ11eを操作して加熱を停止させるか電源をOFF状態として、マッサージを完全に終える。そして、使用者は肌からクリームを洗い流すこととなる。
【0076】
このように、本実施形態に係る美容装置は、本体部11の一端部に配設されてイオン導入用の電極とされるヘッド部12が、本体部11内の加熱部13をなすヒータ13aから電気絶縁性を有する伝熱体13dを介して熱を伝えられる配置とされ、ヒータ13aを伝熱体13d側に押圧してヒータ13aを大端子部13bに、大端子部13bを伝熱体13dにそれぞれ押付け、弾性変形する伝熱体13dが押圧で大端子部13b及びヘッド部12内面と隙間無く密着して、ヒータ13aの熱が大端子部13b及び伝熱体13dを介してヘッド部12にロス無く最短距離で伝わることから、ヒータ13aへの通電のための電気的接続と、ヘッド部12とヒータ13aとの間の熱伝導構造とを矛盾無く両立させて、ヒータ13aで効率よくヘッド部12を加熱でき、ヘッド部12にヒータ13aの温度制御状態を無理なくスムーズに反映させて、皮膚に適切に温熱を与えられると共に、ヘッド部12の昇温状態が簡略な機構で得られることとなり、温熱を皮膚に付与する構造を低コスト化できる。
【0077】
また、伝熱体13dを介してヒータ13a及び大端子部13bとヘッド部12との間で熱が伝わるようにし、ヘッド部12に通電するための電気配線とヒータ13aに係る電気配線とを伝熱体13dで電気的に隔離した構造としていることで、イオン導入に係るヘッド部12への通電とヒータ13aによるヘッド部12の加熱を、互いに悪影響を及し合うこともなく適切に実行できることとなり、ヘッド部12への通電と加熱を同時に行っても問題は生じず、ヘッド部12による皮膚の加温と皮膚へのイオン導入を同期させて実施でき、皮膚やイオン導入用の化粧料を温めて浸透性を高めることでイオン導入の促進も図れ、皮膚に対し極めて効率よくイオン導入を実行して美容効果を発揮させられる。さらに、加熱部13を立壁部11gに囲まれる配置としていることで、伝熱体13dと立壁部11gにより、加熱部13がヘッド部12やその通電用配線と電気的に絶縁されるだけでなく、ヒータ13aから本体部11側への熱の伝わりについても抑えられることとなる。
【0078】
なお、前記実施形態に係る美容装置において、傾動腕部14は本体部11に対し傾動可能に取付けられ一体で取扱われる構成としているが、これに限らず、傾動腕部を本体部と別体とし、ローラ電極及び照射部を用いる場合のみ本体部に取付けて所望の機能を利用可能にする構成とすることもできる。
【0079】
また、前記実施形態に係る美容装置においては、イオン導入を行う場合に、保護化粧水等の化粧料を染みこませた多孔質被覆体12aをヘッド部12に被せて保持し、多孔質被覆体12a中の化粧料に含まれる有効成分を肌側へ移行させ、肌内に有効成分を浸透させる構成としているが、この他、化粧料を付けてなじませた状態とした肌に直接ヘッド部を密着させ、体を介した通電状態として、ヘッド部から肌へ流れる電流で肌表面の化粧水に含まれる有効成分を肌内に浸透させるようにすることもでき、前記同様、加熱部で適度な温度に昇温したヘッド部により、肌が温められることで、肌表面の化粧料の活性が高まると共に、肌も有効成分が浸透しやすい状態に変化し、イオン性有効成分の肌内への移行が促進され、有効成分が肌に深く浸透して確実に美容効果を与えられる。
【0080】
また、前記実施形態に係る美容装置においては、ヘッド部12と補助電極部11c間、また対をなすローラ電極16、17間をそれぞれ通電状態とする場合に特に使用者による調整等を要しない構成としているが、この他、操作部にスイッチを設け、使用者の入力操作に基づいて、制御部が皮膚を流れる電流の強さの調整を実行する構成とすることもでき、使用者によって異なる通電への感受性に対応して使用者ごとに適した通電状態を得ることができ、使用感や美容効果の向上を図れる。さらに、加熱モードの場合にも、使用者の入力操作に基づいて、加熱部でヘッド部を加熱する温度を制御部が調整する構成とすることもでき、使用者によって異なる温度への感受性に対応してヘッド部を適切な温度にでき、快適な使用感が得られることとなる。
【0081】
また、前記実施形態に係る美容装置においては、照射部15としてLEDを用いる構成としているが、これに限らず、ストロボライトや赤外ヒータ等の他の光源を用いるようにしてもよい。また、照射部15は光源となるLEDがローラ電極16、17間に配置されて肌50に面する構成としているが、これに限らず、光源を傾動腕部内や本体部内に設けて、内蔵された光源から光ファイバ等の光伝達手段を介して外部に光を到達させ、肌に対し光を照射する構成とするようにしてもよい。
【実施例】
【0082】
本発明の美容装置で、加熱部によるヘッド部加熱に基づく温熱付与を行った場合の肌への有効成分の浸透度合等を実際に測定し、温熱の付与が、美容動作により得られる美容効果の差異を生じるか否かについて評価した。
【0083】
肌(皮膚)のうち、最外層に位置する角層は、人間の生体としての活動を維持するために、内外の物質移動に対するバリアの役割を果しているが、これは美容面において化粧水等の有効成分浸透の最大の障壁となることも意味する。この角層において、角層間脂質は、体温等の通常の温度領域では、短周期ラメラ構造となっており、高いバリア性を示すことが知られているが、この角層間脂質を温めて温度上昇させると、長周期ラメラ構造に移行し、バリア性が低くなることもわかっている。
【0084】
このため、水溶性の有効成分のうち特に電解質成分を肌に浸透させる技術であるイオン導入と加温を併用すれば、浸透の促進が期待でき、また、油性成分等他の有効成分の肌への浸透も加温による促進が期待できることとなる。
【0085】
測定としては、肌サンプルに各種有効成分を付けたものに対し、本発明の美容装置を適用し、15分間の動作で、加温のみ行った場合、イオン導入のみ行った場合、加温とイオン導入を行った場合の各例について、4時間経過後に各肌サンプルをホモジネートし、有効成分の抽出、定量を実施する手順で行う。また比較例として、肌サンプルに有効成分を付けたのみのものについても、同様に4時間経過後の肌サンプルのホモジネート、有効成分の抽出、定量を実施する。
【0086】
はじめに、水溶性有効成分のうち電解質成分の浸透促進性について測定を行った。この水溶性有効成分(電解質成分)としては、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩を使用した。測定は加温のみ行った第1実施例と、イオン導入のみ行った第2実施例と、加温とイオン導入を行った第3実施例と、比較例の各場合についてそれぞれ行い、測定結果である有効成分検出量を、比較例を100%とした場合のこれに対する割合で記したグラフとして、図16に示す。よって、グラフ縦軸の値は、(測定された有効成分検出量)/(比較例の有効成分検出量)×100となっている。
【0087】
図16より、各実施例は、比較例に対し第1、第2、第3の順でそれぞれ187%、362%、674%の検出量が得られており、単に加温を行った第1実施例の場合でも比較例に対し良好な効果が得られているほか、第2実施例と第3実施例との結果比較から、イオン導入による浸透促進効果が加温により著しく強まることが見て取れ、加温により電解質成分の肌への浸透促進効果が得られたことがわかる。
【0088】
次に、水溶性有効成分のうち非電解質成分の浸透促進性について測定を行った。この水溶性有効成分(非電解質成分)としては、アルブチンを使用した。測定は加温のみ行った第4実施例と、加温とイオン導入を行った第5実施例と、比較例の各場合についてそれぞれ行い、測定結果である有効成分検出量を、前記同様に比較例を100%とした場合のこれに対する割合で記したグラフとして、図17に示す。
【0089】
図17より、各実施例は、比較例に対し第4、第5の順でそれぞれ429%、835%の検出量が得られており、単に加温を行った第4実施例の場合でも比較例に対し良好な効果が得られているほか、第5実施例の結果から、イオン導入も併用するとさらに浸透促進効果が向上しており、加温により非電解質成分についても肌への浸透促進効果が得られたことがわかる。
【0090】
さらに、イオン導入による効果が望みにくい油溶性有効成分の浸透促進性についても測定を行った。この油溶性有効成分としては、ビタミンE酢酸エステルを使用した。測定は加温のみ行った第6実施例と比較例の各場合についてそれぞれ行い、測定結果である有効成分検出量を、前記同様に比較例を100%とした場合のこれに対する割合で記したグラフとして、図18に示す。
【0091】
図18より、加温した第6実施例は、比較例に対し115%の検出量が得られ、加温により油溶性有効成分についても肌への浸透促進効果を得られたことがわかる。
【0092】
このように、各測定結果から、本発明の美容装置を用いて、加温を行った場合とそうでない場合とで明らかな有効成分検出量の差異が見られ、加温のもたらす角層の変化や有効成分の変化により、有効成分の浸透促進性も増大する方向に変化したといえる。こうして、本発明の美容装置で、イオン導入の際の加温や、加温を単独で実行することによって、肌に各種有効成分をより確実に浸透させられ、美容効果を高められることは明らかである。
【符号の説明】
【0093】
1 美容装置
11 本体部
11a 把持部
11b 操作部
11c 補助電極部
11d モード切替スイッチ
11e 加熱スイッチ
11f 電源スイッチ
11g 立壁部
12 ヘッド部
12a 多孔質被覆体
12b ばね
12c ラグ端子
12d 導線
13 加熱部
13a ヒータ
13b 大端子部
13c 小端子部
13d 伝熱体
13e 感温体
13f ホルダ部
14 傾動腕部
15 照射部
16、17 ローラ電極
18 制御部
19 保持部
50 肌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の皮膚に対し所定の美容動作を実行する美容装置において、
使用者により保持される本体部と、
当該本体部の一端部に配設され、熱伝導性を有する材料で形成されるヘッド部と、
前記本体部内に配設され、通電により昇温するヒータ、及び当該ヒータと前記ヘッド部間に介在する伝熱体を有してヘッド部を人の体温以上に加熱する加熱部と、
当該加熱部によるヘッド部の加熱状態を調整制御する制御部とを備え、
前記加熱部のヒータが、略平行な二面を有し、当該二面で通電用の正負各端子とそれぞれ接触導通すると共に、前記二面の一方で端子を介して前記伝熱体と近接して配設され、所定の付勢手段により伝熱体側に押圧され、
前記伝熱体が、良熱伝導性を有し弾性変形可能な略シート状体で形成されることを
特徴とする美容装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の美容装置において、
前記本体部の使用者による把持部分に配設されるイオン導入用の補助電極部を備え、
前記ヘッド部が、導電性を有する材料で形成されて、イオン導入用の電極とされ、
前記伝熱体が、電気に対する絶縁性を有してなり、ヒータとヘッド部とを絶縁しつつヒータの熱をヘッド部へ伝え、
前記制御部が、前記ヘッド部と補助電極部間で使用者を介して通電可能とし、前記加熱部によるヘッド部の加熱を実行させつつ、皮膚表面に塗布されたイオン導入用の化粧料から皮膚へのイオン導入を生じさせることを
特徴とする美容装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載の美容装置において、
前記本体部の使用者による把持部分に配設されるイオン導入用の補助電極部と、
前記本体部のヘッド部近傍に配設され、イオン導入用の液剤を含浸可能な多孔質被覆体をヘッド部上に着脱可能に保持する保持部とを備え、
前記ヘッド部が、導電性を有する材料で形成されて、イオン導入用の電極とされ、
前記伝熱体が、電気に対する絶縁性を有してなり、ヒータとヘッド部とを絶縁しつつヒータの熱をヘッド部へ伝え、
前記制御部が、前記ヘッド部と補助電極部間で前記多孔質被覆体及び使用者を介して通電可能とし、前記加熱部によるヘッド部の加熱を実行させつつ、多孔質被覆体に含浸させた化粧料から皮膚へのイオン導入を生じさせることを
特徴とする美容装置。
【請求項4】
前記請求項2又は3に記載の美容装置において、
前記加熱部のヒータ及び各端子の周囲を取囲んで配設され、電気絶縁性を有し且つ熱を伝えにくい材質からなる立壁部を備え、
前記ヒータ及び端子が、前記立壁部と前記伝熱体により区画された内側部分に配置され、立壁部の外側で前記本体部内部からヘッド部に接続される通電用配線材と隔離されることを
特徴とする美容装置。
【請求項5】
前記請求項3に記載の美容装置において、
前記制御部が、前記加熱部によるヘッド部の加熱を行わない状態で、前記ヘッド部と補助電極部間でふき取り用の化粧料を含浸させた前記多孔質被覆体及び使用者を介して通電させ、皮膚における帯電した汚れ成分をヘッド部側へ移動させ、前記汚れ成分を多孔質被覆体に取込むクレンジングモードを備えることを
特徴とする美容装置。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載の美容装置において、
前記制御部が、加熱部によるヘッド部の加熱に際し、加熱部の加熱温度を所定の第一の温度に維持する第一の期間と、前記第一の温度より数度高い第二の温度に維持する第二の期間とがあり、且つ当該第二の期間を前記第一の期間の後に第一の期間より長くして設定する温度制御を、ヘッド部の加熱を一時停止する期間を間に挟みつつ繰返し実行することを
特徴とする美容装置。
【請求項7】
前記請求項1ないし6のいずれかに記載の美容装置において、
前記ヒータを挟んで配設される通電用の端子のうち、前記伝熱体に近接する側とは反対側に配置される端子が、他方の端子よりヒータとの接触面を小さくした板ばね状に形成され、前記付勢手段を兼ねることを
特徴とする美容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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