説明

美顔方法及び美顔器

【課題】肌表面の保湿効果を向上できる美顔方法及び美顔器を提供する。
【解決手段】大気中での放電により空気から正イオン及び負イオン発生するイオン発生装置10と、周囲から取り込まれた空気を加湿する加湿部23とを備え、加湿部23により加湿された空気中に正イオン及び負イオンを含み、吹出口6から肌表面に向けて照射した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌表面にイオンを照射する美顔方法及び美顔器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の美顔器は特許文献1に開示されている。この美顔器は筐体内に設けた送風通路内に送風機及びイオン発生装置が配される。イオン発生装置は送風通路内の空気中で放電して正イオン及び負イオンを発生する。送風機の駆動により送風通路内に気流が発生し、イオンを含む空気が送風通路の一端に設けられる吹出口から肌表面に向けて照射される。これにより、肌水分量が増加して真皮の水分保持機能が向上し、肌表面の保湿効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−98187号公報(第5頁−第11頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、老若男女を問わず、美容に対する関心がより高まってきている。また、冷暖房機等の使用や生活リズムの乱れ等によって肌への負担が増え、乾燥肌を気にする人が増えてきている。このため、より保湿効果の高い美顔方法や美顔器が求められる。
【0005】
本発明は、肌表面の保湿効果を向上できる美顔方法及び美顔器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の美顔方法は、大気中での放電により空気から発生する正イオン及び負イオンを加湿された空気とともに肌表面に照射することを特徴としている。
【0007】
この構成によると、大気中で放電して空気から正イオン及び負イオンが発生し、加湿された空気中に正イオン及び負イオンが含まれる。正イオン及び負イオンを含む空気は肌表面に照射され、肌表面が保湿される。
【0008】
また本発明は、上記構成の美顔方法において、前記正イオンがH(HO)m(mは0または任意の自然数)であり、前記負イオンがO(HO)n(nは0または任意の自然数)であることを特徴としている。
【0009】
また本発明は、上記構成の美顔方法において、加湿された空気中で放電して前記正イオン及び前記負イオンを発生したことを特徴としている。
【0010】
また本発明の美顔器は、大気中での放電により空気から正イオン及び負イオン発生するイオン発生装置と、周囲から取り込まれた空気を加湿する加湿部とを備え、前記加湿部により加湿された空気中に前記正イオン及び前記負イオンを含み、吹出口から肌表面に向けて照射することを特徴としている。
【0011】
この構成によると、イオン発生装置によって大気中で放電して空気から正イオン及び負イオンが発生し、加湿部により加湿された空気中に正イオン及び負イオンが含まれる。正イオン及び負イオンを含む空気は吹出口から肌表面に照射され、肌表面が保湿される。
【0012】
また本発明は、上記構成の美顔器において、前記正イオンがH(HO)m(mは0または任意の自然数)であり、前記負イオンがO(HO)n(nは0または任意の自然数)であることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成の美顔器において、前記加湿部で加湿された空気中で前記イオン発生装置によって放電して前記正イオン及び前記負イオンを発生したことを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の美顔器において、前記吹出口の相対湿度を70%以上にしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、放電により空気から発生する正イオン及び負イオンを加湿された空気とともに肌表面に照射するので、肌水分量が増加して肌表面の保湿効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態の美顔器を示す斜視図
【図2】本発明の第1実施形態の美顔器を示す側面断面図
【図3】本発明の第1実施形態の美顔器のイオン発生装置を示す側面断面図
【図4】本発明の第1実施形態の美顔器による肌水分量の変化率を示す図
【図5】本発明の第2実施形態の美顔器を示す斜視図
【図6】本発明の第2実施形態の美顔器を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の美顔器を示す斜視図である。美顔器1は卓上等に設置される本体部2の後部に着脱自在の水タンク21が配される。本体部2の後部の周面にはグリル状の吸込口5が開口し、上面には環状の吹出口6が開口する。吹出口6の後方には操作部3が設けられる。
【0018】
図2は美顔器1の側面断面図を示している。本体部2の後方の底部には上面を開放する貯水トレイ22が配される。貯水トレイ22には底面から突出する突出部22aが設けられる。水タンク21は一端に設けた開口部21aを塞ぐキャップ(不図示)が螺合し、キャップを取り外して開口部21aから給水される。
【0019】
キャップには注水口(不図示)及び注水口を開閉する止水弁21bが設けられる。開口部21aを下方に配して水タンク21が貯水トレイ22上に装着されると、突出部22aが止水弁21bを押圧して注水口から貯水トレイ22に注水される。これにより、貯水トレイ22に加湿用の水が貯水される。
【0020】
貯水トレイ22には吸水性の多孔質体等から成る加湿フィルタ23が下端を浸漬して立設される。これにより、加湿フィルタ23が貯水トレイ22から吸水し、加湿フィルタ23を通過する空気が加湿される。従って、加湿フィルタ23は吸込口5を介して周囲から取り込まれた空気を加湿する加湿部を構成する。
【0021】
本体部2内には吸込口5と吹出口6とを連通させる送風通路4が設けられる。加湿フィルタ23は送風通路4内に配置され、加湿フィルタ23と吹出口6との間には送風機7が配される。送風機7はシロッコファンにより形成され、送風機7の駆動によって吸込口5から周囲の空気が吸い込まれて吹出口6から送出される。送風機7をターボファンやプロペラファンにより形成してもよい。
【0022】
送風機7と吹出口6との間には送風通路4に面してイオン発生装置10が配される。図3はイオン発生装置10の斜視図を示している。イオン発生装置10は本体ケース14により覆われ、本体ケース14の上面には、例えば直径8mm程度に形成されたイオンの放出孔14a、14bが開口する。放出孔14a、14b内には針状の放電電極11a、11bが配される。また、放電電極11a、11bの周囲に対向配置される環状の対向電極12a、12bが放出孔14a、14bに沿って配される。
【0023】
対向電極12a、12bは接地され、放電電極11a、11bは本体ケース14内に配される高圧電源(不図示)に接続される。一方の放電電極11aには正の高圧パルス電圧(例えば、周波数60Hz、尖頭電圧約2kV)が印加される。他方の放電電極11bには負の高圧パルス電圧(例えば、周波数60Hz、尖頭電圧約2kV)が印加される。これにより、放電電極11a、11bの先端部と対向電極12a、12bとの間で放電が起こり、プラズマが発生する。生成されたプラズマによって空気中の酸素(O)や水(HO)等の分子がエネルギーを受ける。
【0024】
印加電圧が正電圧の場合は空気中の水分子が電離してオキソニウムイオン(H)を生成する。このオキソニウムイオンが溶媒和エネルギーにより空気中の水分子とクラスタリングしてH(HO)m(mは0または任意の自然数)から成る正イオンを主として発生する。そして、放電電極11aを配した放出孔14aから正イオンが放出される。
【0025】
印加電圧が負電圧の場合は空気中の酸素分子または水分子が電離して酸素イオンOを生成する。この酸素イオンが溶媒和エネルギーにより空気中の水分子とクラスタリングしてO(HO)n(nは任意の自然数)から成る負イオンを主として発生する。そして、放電電極11bを配した放出孔14bから負イオンが放出される。
【0026】
この時、放電電極11a、11bの印加電圧が高くなると、人体に有害なオゾン(O)の発生量が増加する。このため、オゾンの発生量が許容量(例えば、0.1PPM)以下となる電圧が放電電極11a、11bに印加される。
【0027】
上記構成の美顔器1は吹出口6を使用者の顔に向けて卓上等に設置され、操作部3の操作によって運転が開始されると送風機7及びイオン発生装置10が駆動される。送風機7の駆動によって室内の空気が周囲から吸込口5に吸い込まれ、送風通路4内を流通する。送風通路4を流通する空気は加湿フィルタ23を通過して加湿される。
【0028】
加湿フィルタ23を通過した空気にはイオン発生装置10で発生した正イオン及び負イオンが含まれる。そして、吹出口6から使用者の顔に向けて正イオン及び負イオンを含む空気が送出され、使用者の肌表面に照射される。
【0029】
図4は美顔器1による肌水分量の変化量を測定した結果を示す図である。縦軸は肌水分量の変化率(単位:%)を示し、横軸は経過時間(単位:分)を示している。肌水分量の変化を測定する試験はランダム化6試験区クロスオーバー試験とし、24名の被験者を4名ずつの6グループに分けて各グループ毎に以下の4つの試験区で実施した。
【0030】
試験区1ではイオン発生装置10を停止し、貯水トレイ22に無給水の状態で送風機7を駆動して送風のみを行っている。試験区1の結果は図中、A(×のマーカー)で示している。
【0031】
試験区2ではイオン発生装置10を停止し、貯水トレイ22に給水した状態で送風機7を駆動して加湿した空気を送出している。試験区2の結果は図中、B(正方形のマーカー)で示している。
【0032】
試験区3ではイオン発生装置10を駆動し、貯水トレイ22に無給水の状態で送風機7を駆動してイオンを送出している。試験区3の結果は図中、C(三角形のマーカー)で示している。
【0033】
試験区4ではイオン発生装置10を駆動し、貯水トレイ22に給水した状態で送風機7を駆動してイオンを含む加湿した空気を送出している。試験区4の結果は図中、D(白丸のマーカー)で示している。
【0034】
また、図中、E(黒丸のマーカー)は、試験区2(B)及び試験区3(C)における肌水分量の変化量の積を示している。
【0035】
各試験室の温度は26℃を目標に空気調和機により調節し、湿度はデシカント式除湿機により40%を目標に調節している。被験者はクレンジングミルクと洗顔フォームで洗顔した後、試験室に入室させている。試験室内で被験者は椅子に座った状態で、試験機の運転前80分間、試験機の運転後60分間、停止後60分間の計200分間安静に過ごさせた。これを午前、午後で各1回ずつ実施した。
【0036】
また、被験者の顔に吹出口6からの風が当たるように正面に美顔器1を配置し、顔面と吹出口6との距離を80cm、試験区3、4の顔面のイオン濃度を25,000個/cmとした。試験区2〜4における美顔器1の加湿量は30mL/時とし、吹出口6での相対湿度を70%以上にしている。
【0037】
肌水分量の測定は美顔器1の運転開始から10分毎に1時間行っている。また、(株)インテグラル社製コルネオメーターCM825を用いて左目の横1cmのこめかみ部分の同一箇所を測定した。
【0038】
図4によると、試験区1(A:送風のみ)、試験区2(B:加湿)、試験区3(C:イオン)に比して、試験区4(D:加湿+イオン)での肌水分量が増加する。また、試験区2及び試験区3においても肌水分量が微増するが、これらを個別に組み合わせても図中、Eに示すように試験区4での肌水分量よりも少ない。
【0039】
従って、加湿した空気にイオンを含んで肌表面に照射することにより、肌表面の保湿効果を向上させることができる。また、試験区4での肌水分量は試験区2、3に比して試験開始10分後から肌水分量の増加量が大きく、保湿効果を急速に得ることができる。
【0040】
尚、吹出口6から送出されるH(HO)mから成る正イオン及びO(HO)nから成る負イオンにより、式(1)〜(3)で示されるナノサイズの水分子が生成される。この時、肌表面に−OH基が付着して局所的に親水化されて水分子が肌に浸透しやすくなる。このため、正イオン及び負イオンにより生成される水分子及びクラスタリングされた水分子が肌に効率よく吸着して保湿されると考えられる。
【0041】
(1) H+O→・OH+H
(2) H+O→・OH+H
(3) 2H→2HO+O
【0042】
本実施形態によると、放電により空気から発生する正イオン及び負イオンを加湿された空気とともに吹出口6から肌表面に照射するので、肌水分量が増加して肌表面の保湿効果を向上させることができる。
【0043】
また、大気中での放電により空気から正イオン及び負イオン発生するイオン発生装置10と、周囲から取り込まれた空気を加湿する加湿フィルタ23(加湿部)とを備えるので、加湿した空気にイオンを含んで肌表面に照射する美顔器1を容易に実現することができる。
【0044】
また、正イオンがH(HO)mであり、負イオンがO(HO)nであるので、容易に肌水分量を増加させることができる。
【0045】
また、吹出口6の相対湿度を70%以上にしているので、保湿効果を確実に向上させることができる。
【0046】
本実施形態において、送風通路4を分岐してイオン発生装置10と加湿フィルタ23とを別の通路に配置し、吹出口6近傍で合流させてもよい。これにより、加湿された空気中にイオンを含み、吹出口6から送出することができる。しかしながら、本実施形態のように、加湿フィルタ23により加湿された空気中にイオン発生装置10によってイオンを発生すると、構造を簡素化できるためより望ましい。
【0047】
次に、図5、図6は第2実施形態の美顔器を示す斜視図及び正面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図3に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。美顔器41は一面に開口面42aを開口した有底筒状のカップ状に形成された容器42を有している。開口面42aの周縁にはシリコンゴム等の弾性体から成るパッキン44が設けられる。パッキン44を肌表面に密着して開口面42aを塞ぐことにより、容器42内が密閉されるようになっている。
【0048】
容器42の内周面には環状の加湿フィルタ23が着脱自在に設けられる。加湿フィルタ23は吸水性を有するスポンジ状に形成され、容器42内の空気を加湿する加湿部を構成する。容器42内には電源コード5を介して電力供給されるイオン発生装置10が取り付けられる。イオン発生装置10の放電電極11a、11bから正イオン及び負イオンが放出される。
【0049】
上記構成の美顔器41において、吸水した加湿フィルタ23を装着した容器42を使用者の顔面に接触して運転を開始させると、イオン発生装置10が駆動される。これにより、容器42内に加湿された空気が充満し、正イオン及び負イオンが加湿された空気に自然拡散して含まれる。そして、開口部42aを介して使用者の肌表面には正イオン及び負イオンが加湿された空気とともに照射される。
【0050】
従って、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、容器42がカップ状に形成され、容器42を把持して肌表面に開口面42aの周縁が押し当てられるので、簡単に肌表面にイオンを接触して保湿効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によると、肌表面にイオンを照射する美顔器に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1、41 美顔器
2 本体部
3 操作部
4 送風通路
5 吸込口
6 吹出口
10 イオン発生装置
11a、11b 放電電極
12a、12b 対抗電極
21 水タンク
22 貯水トレイ
23 加湿フィルタ
42 容器
44 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中での放電により空気から発生する正イオン及び負イオンを加湿された空気とともに肌表面に照射することを特徴とする美顔方法。
【請求項2】
前記正イオンがH(HO)m(mは0または任意の自然数)であり、前記負イオンがO(HO)n(nは0または任意の自然数)であることを特徴とする請求項1に記載の美顔方法。
【請求項3】
加湿された空気中で放電して前記正イオン及び前記負イオンを発生したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の美顔方法。
【請求項4】
大気中での放電により空気から正イオン及び負イオン発生するイオン発生装置と、周囲から取り込まれた空気を加湿する加湿部とを備え、前記加湿部により加湿された空気中に前記正イオン及び前記負イオンを含み、吹出口から肌表面に向けて照射することを特徴とする美顔器。
【請求項5】
前記正イオンがH(HO)m(mは0または任意の自然数)であり、前記負イオンがO(HO)n(nは0または任意の自然数)であることを特徴とする請求項4に記載の美顔器。
【請求項6】
前記加湿部で加湿された空気中で前記イオン発生装置によって放電して前記正イオン及び前記負イオンを発生したことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の美顔器。
【請求項7】
前記吹出口の相対湿度を70%以上にしたことを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の美顔器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−78481(P2013−78481A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220300(P2011−220300)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】