説明

義歯接着組成物

本発明は、改善された義歯接着組成物に向けられる。特に、本発明は、炭化水素ビヒクル、例えば、ペトロラタムまたは鉱油を含有しない義歯接着組成物に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、改善された義歯接着組成物に向けられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
義歯は、欠損歯の代替物であり、口腔にある歯の全てまたはいくつかの代替として働く。ぴったり合った義歯であっても、時間とともに、歯肉および粘膜組織における自然の収縮および変化が原因で不適合になる。したがって、義歯を口腔内で固定するために、接着クリーム、液、粉末、および「ライナー」がしばしば使用される。ライナーは、口腔液で膨張し、接着効果を提供する薄膜、ストリップまたはウエハーの形態の義歯接着剤であり、補綴と口蓋または顎との間にライナーが設置されるためのある種の望ましい強度および一体性(integrity)を有する。
【0003】
伝統的に、口腔内の義歯は、天然ゴム材料、例えば、カラヤゴム、アラビアゴムまたはトラガカントゴムから調製された粉末接着剤を用いることによって固定されていた。これらの材料は、水の添加によって元の容量の何倍にも膨張して、ゼラチン質または粘液質の塊を生じる特性を有する。ゴムを細かく破砕した粒子から調製されるクリーム形態の接着剤もまた、入手可能であり、粉末組成物の代わりに用いられた。
【0004】
何年にもわたり、上記の単純な義歯接着処方に多くの改良が施されてきた。米国特許第2,978,812号は、分子量50,000〜5,000,000を有するエチレンオキシドポリマーを含む義歯固定組成物であって、好ましくは少なくとも50%の該有効固定成分を含む組成物を開示する。
【0005】
英国特許第1,444,485号は、4〜44wt%のポリビニルピロリドン(PVP)の溶液を含む固定剤を開示する。米国特許第3,003,988号は、本質的に低級アルキルビニルエーテル無水マレイン酸コポリマーからなる40wt%以上の水不溶性水感受性ポリマー材料の混合塩の使用を開示する。米国特許第5,001,170号は、約20−40wt%のメチルビニルエーテルマレイン酸コポリマー、20−40wt%のPVP、および20−40wt%のエチレンオキシドポリマーの実質的に無水の混合物を開示する。
【0006】
近年の改良には、低級アルキルビニルエーテルマレイン酸、その無水物または塩ポリマーまたは混合物、およびカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、ナトリウム、カリウム、ジルコニウム、および亜鉛またはその混合物からなる群から選択される1以上の金属塩の使用を包含する。米国特許第5,073,604号は、低級アルキルビニルエーテルマレイン酸コポリマーの混合部分塩を有する義歯接着組成物であって、該部分塩がカチオン塩機能として(a)約10%〜約65%亜鉛またはストロンチウムカチオン、および(b)反応した全ての開始カルボキシ基の約10%〜約75%のカルシウムカチオンを含有する組成物を開示する。
【0007】
口腔粘膜および義歯の間に改善された接着または保持をもたらし、良好な感覚および舌触りを有し、義歯適用時の義歯床の下からの接着剤材料の浸出が最小限であり、口および義歯から残留接着剤材料を除去する煩雑性および困難性が低減され、義歯と義歯装着者の口腔との間に捕捉される食物粒子の封鎖が良好な義歯接着組成物の開発のために、長年、多くの努力されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2,978,812号
【特許文献2】英国特許第1,444,485号
【特許文献3】米国特許第3,003,988号
【特許文献4】米国特許第5,001,170号
【特許文献5】米国特許第5,073,604号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在市販されている義歯接着剤製品の多くは、油/ワックスベースの水溶性ポリマー懸濁またはクリームペーストである。これらの製品は、義歯の満足な保持を提供することができるが、過剰量の製品を義歯に塗布した場合、接着剤が広がり、または浸出する傾向がある。さらに、これらの製品の多くは、一旦口腔内に挿入すると、金属または薬品様風味を呈し、口腔内に油性の汚れをもたらす。クリーム製品は、水溶性ポリマー懸濁から製造されているので、それらはまた、該ポリマー粒子に起因するザラザラ感(grittiness)を有する。
【0010】
さらに、一般に口腔乾燥症と称される持続性の口の乾燥は、罹患者にとって義歯の装着を非常に不快にさせる比較的一般的な苦情である。義歯が口腔内で心地よく安定するには、義歯とその下にある歯肉との間の密接な接触が達成され、咀嚼、嚥下および会話する間に維持されなければならない。義歯と歯肉との間に唾液が十分な量および稠度で存在することが必須である。唾液の潤滑効果がなければ、咀嚼、嚥下および会話する間に義歯が移動するにつれて、歯肉、頬および唇組織が刺激されるようになる。本明細書に記載される非炭化水素ベースの義歯接着剤は、義歯と歯肉組織との間に必要な潤滑を提供することができるだけでなく、粘膜組織を水和した状態に維持し、また、口の全体的な健康に有益な唾液の流れを刺激する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
現行の義歯接着処方の不利益を考慮すると、新世代の義歯接着材料、特に、クリーム処方に現在使用されているような炭化水素ベースのビヒクル、例えば、鉱油および他のワックス様材料を用いないものを開発するのが望ましい。該新世代の義歯接着剤は、水、グリセリン、プロピレングリコールまたは低分子量ポリエチレングリコール、またはその組み合わせを処方のポリマーデリバリーシステムまたは懸濁媒体として使用し、炭化水素ベースではない。これに関し、本発明者らは、適当なポリマー混合物を選択することによって、義歯接着効果のある透明または半透明のゲルおよび/またはペーストを、水、グリセリン、プロピレングリコール、または低分子量ポリエチレングリコールを単独または組み合わせて用いて製造できることを見出した。本発明者らは、これらの義歯接着剤が、現在市販されている炭化水素ベースのビヒクルを有する義歯接着剤製品と比べて、良好または等価の接着性および保持性を有することを見出した。有利なことに、本明細書に開示される義歯接着組成物は、透明または半透明のゲルとして均質な外観を有し、ザラザラ感がなく、口内におけるクッション効果のための弾性を有し、ワックスベースのビヒクルまたは鉱油ビヒクルを使用せず、かつ、浸出がわずかであるか、または浸出がない接着ネットワークの良好な粘着力を有する。さらに、これらの炭化水素を含まない義歯接着剤は、現在市販されている製品よりも、口の保湿性/潤滑性を提供し、良好な舌触り、改善された知覚的特性、および良好な風味プロフィールを義歯装着者に提供する。
【発明の効果】
【0012】
発明者らは、炭化水素を含まない義歯接着ビヒクルにおけるポリエチレンオキシド(PEO)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)ポリマーの組み合わせが驚くべきことに、炭化水素ベースのビヒクルを用いる義歯接着剤処方と比べて、有利な特性、改善された審美性および匹敵する接着力を有する義歯接着剤処方を生じることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の概要
一の態様において、本発明は、鉱油またはペトロラタムなどの炭化水素ビヒクルを含まない義歯接着組成物に関する。
【0014】
別の態様において、本発明は、炭化水素ビヒクルを含まず、かつ、1つが接着性(adhesive properties)を有し、他方が粘着性(cohesive properties)を有する少なくとも2つのポリマーの組み合わせを有する義歯接着組成物に関する。
【0015】
また別の態様において、本発明は、ポリエチレンオキシドおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの組み合わせを有する、炭化水素ビヒクルを含まない義歯接着組成物に関する。
【0016】
また別の態様において、本発明は、鉱油またはペトロラタムなどの炭化水素ビヒクルを含まない義歯接着組成物である本発明の新規な組成物の使用に由来する口腔粘膜に対して義歯を接着する方法に関する。
【0017】
また別の態様において、本発明は、本明細書に記載の義歯接着組成物を製造する方法に関する。
【0018】
本発明の詳細な説明
「接着性」なる語は、本明細書中で使用される場合、表面接着によって他の物質を一緒に結合することのできる無機、有機、天然または合成のいずれかの物質の特性をいう。本発明の状況において、該用語は、義歯および粘膜組織の表面を一緒に保持することのできる義歯接着製品の能力をいう。
【0019】
「粘着性」なる語は、本明細書中で使用される場合、物質がそれ自体の内部で互いに密着する性質をいう。本発明の場合、該用語は、適用の間にその一体性を維持することのできる義歯接着製品の能力をいう。
【0020】
当業者は、HPMCおよびPolyoxはどちらも接着性質および粘着性質を有することを理解するが、本発明の状況において、本発明の一の具体例において、HPMCは、適当には、接着性ポリマー成分であり、Polyoxは適当には、粘着性ポリマー成分である。
【0021】
「歯科装置」なる語は、本明細書中で使用される場合、義歯または部分義歯、人工歯、上部および下部の両タイプの取り外し可能な歯列矯正ブリッジおよび有床義歯、歯列矯正リテーナーおよび装置、保護マウスガード、歯ぎしりおよび/または顎関節(TMJ)障害の防止のためのナイトガードなどをいう。
【0022】
「親水性ポリマー」なる語は、本明細書中で使用される場合、水分子に対するある種のアフィニティーを有するポリマー、または水分子を引きつけることのできるポリマーをいう。
【0023】
「水溶性ポリマー」なる語は、本明細書中で使用される場合、水中で完全に溶解し、それにより、水と均質な混合物を形成することのできるポリマーをいう。
【0024】
「ポリエチレンオキシド」および「エチレンオキシドポリマー」なる語は、交換可能に本明細書中で使用される。
【0025】
「水混和性溶媒」なる語は、本明細書中で使用される場合、水と均質な混合物を形成することができる溶媒または媒体をいう。
【0026】
本発明は、ビヒクルとして、水、グリセリン、プロピレングリコール、または低分子量ポリエチレングリコールを単独または組み合わせて含有する新規な義歯接着組成物を開示する。唾液による水和時、または口腔環境における実際の使用の間に、本発明の物質は水和し、ねばねばになり、粘膜組織と義歯との間に接着性を発現させる。
【0027】
適当には、義歯接着剤ビヒクルは、単独または組み合わせた水、グリセリン、プロピレングリコール、または低分子量ポリエチレングリコールである。本発明の一の具体例において、義歯接着剤ビヒクルは、ビヒクルとして水だけを含む。本発明の一の具体例において、該組成物は、ビヒクルとして20〜80wt%の水を単独で含む。別の具体例において、該組成物は、水および1以上の水混和性溶媒を含む。該水混和性溶媒は、適当には、グリセリン、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール、エタノール、ソルビトールおよび他の多水酸基化合物から選択される。適当には、ポリエチレングリコール溶媒の分子量は、200〜800である。本発明の一の具体例において、該組成物は、20〜30wt%の水および35〜40wt%のグリセリンを含む。本発明の一の具体例において、該組成物は、組成物の45〜65wt%の量で、ビヒクルとしてグリセリンを単独で含む。本発明の一の具体例において、該組成物は、組成物の50〜60wt%の量で、ビヒクルとしてプロピレングリコールを単独で含む。
【0028】
炭化水素を含まないビヒクルは、適当には、親水性または水溶性ポリマーまたはポリマーの組み合わせと共に製造されて、ペーストまたはゲルを形成する。該組成物において使用されるポリマー材料は、限定するものではないが、ポリマーのある種のカテゴリーを包含する。
【0029】
第一の適当なポリマー材料は、水溶性または水分散性セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、メチルセルロース(MC)、メチルカルボキシメチルセルロース(MCMC)、ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース(HECMC)、ヒドロキシエチルメチルカルボキシメチルセルロース(HEMCMC)、スルホエチルカルボキシメチルセルロース(SECMC)、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(HEHPC)、ヒドロキシエチルエチルセルロース(HEEC)、ヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(HESEC)、またはその組み合わせから選択される。本発明の一の具体例において、ポリマー材料はHPMCである。
【0030】
第二の適当なポリマー材料は、水溶性または水分散性ポリエチレンオキシド(PEO)ホモポリマーまたはコポリマー、例えば、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、PolyOx(登録商標)ポリマー、水溶性または水分散性ポリプロピレンオキシドホモポリマーまたはコポリマー、例えば、Poloxamer、およびPluronicポリマーから選択される。本発明の一の具体例において、該ポリマーはPEOである。
【0031】
第三の適当なポリマー材料は、水溶性または水分散性ポリ(メチルビニルエーテル−コ−マレイン酸)およびその誘導体、例えば、Gantrez酸、Gantrez塩(例えば、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛)、およびGantrez無水物から選択される。本明細書中で使用される場合、「Gantrez二重塩(double salt)または三重塩(triple salt)」なる語は、2以上のナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよび/または亜鉛イオンによって中和されたメチルビニルエーテル−コ−マレイン酸のコポリマーをいう。一の具体例において、該組成物は、0.5〜10wt%のGantrez塩ポリマーを含む。
【0032】
第四の適当なポリマー材料は、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸ホモポリマーおよびコポリマーおよびその誘導体、例えば、Carbopolポリマーから選択される。
【0033】
第五の適当なポリマー材料は、水溶性または水分散性天然ポリマーおよびその誘導体、例えば、アルギン酸ナトリウム、カラヤガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガムおよびその誘導体、ペクチンおよびその誘導体、キトサンおよびその誘導体、およびカラギーナンおよびその誘導体から選択される。
【0034】
さらに適当なポリマー材料は、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンのコポリマーおよびその誘導体、例えば、PlasdoneおよびPolyplasdoneまたはポリビニルアルコールおよびその誘導体、例えば、Kollicoatポリマー、またはその組み合わせから選択される。一の具体例において、該組成物は、5〜20wt%のPlasdoneポリマーを含む。
【0035】
本発明の一の具体例において、該ポリマーは、HPMCおよびPEOのポリマーの組み合わせである。本発明の第二の具体例において、該ポリマーは、HPMC、PEOおよびポリ(メチルビニルエーテル−コ−マレイン酸)コポリマーのポリマーの組み合わせである。本発明の別の具体例において、該ポリマーは、HPMC、PEO、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンのポリマーの組み合わせである。
【0036】
上記の成分は、安全かつ接着性が有効な量(本明細書中では、口腔に対する付着を提供するのに十分な量を意味する)で使用される。義歯接着クリーム処方の一の具体例において、該組成物は、約50〜80wt%の水、8〜20wt%のHPMCおよび5〜20wt%のポリエチレンオキシドポリマーを含む。義歯接着ライナー処方の一の具体例において、該組成物は、8〜50wt%のHPMCポリマーおよび5〜30wt%のポリエチレンオキシドポリマーを含む。
【0037】
適当には、本発明の一の具体例において、義歯接着ビヒクルが単独のグリセリンである場合、HPMCのPEOに対する比率は、グリセリン系中において1:1〜10:1である。
【0038】
上記の成分の他に、該組成物は、基剤成分の接着性質を増幅するのを助けるための他の成分を含有していてもよく、該成分には、接着剤分野において一般的に知られ、使用されるものが含まれる。例えば、限定するものではないが、リン酸二カルシウム、Gantrez酸およびナノクレー/モンモリロナイトが包含される。
【0039】
上記の材料の他に、該義歯接着組成物は、義歯接着剤の分野でよく知られた付加的な成分とともに処方されてもよく、該成分には、可塑剤、レオロジー調整剤、保存料、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、超崩壊剤または吸収剤、例えば、ポリビニルピロリドンのホモポリマーまたはビニルピロリドンのコポリマー、フレーバー剤、着色料、架橋剤、抗菌剤、徐放剤、消泡剤、甘味剤、粘度調整剤などが包含される。
【0040】
義歯接着剤分野でよく知られたフレーバー剤を本発明の組成物に加えてもよい。これらのフレーバー剤は、限定するものではないが、合成フレーバー油および/または植物、葉、果実などから由来する油、およびその組み合わせを包含する。代表的なフレーバー油は、スアペアミント油、シナモン油、冬緑油(メチルサリチル酸塩)およびペパーミント油を包含する。また、人工、天然または合成フルーツフレーバー、例えば、レモン、オレンジ、グレープ、ライムおよびグレープフルーツを包含する柑橘油、およびリンゴ、イチゴ、サクランボ、パイナップルなどを包含する果実精も有用である。フレーバー剤は、液体であっても、スプレー乾燥されていても、カプセル化されていても、または担体上に吸収されていてもよく、またはその混合物であってもよい。本発明の一の具体例は、フレーバー剤として、ペパーミント油を含有する。使用されるフレーバー剤の量は、フレーバーの種類、接着剤処方および所望の強度などに依存して変化する。一般に、義歯接着組成物全体に対し約0.01〜約5.0wt%の量が適当である。本発明の一の具体例において、約0.05〜0.15wt%の量が使用される。別の具体例において、約0.0〜約0.1wt%の量が使用される。
【0041】
本発明の義歯接着組成物に使用されてもよい保存料は、当該分野で従来使用される既知の抗菌剤、例えば、安息香酸および安息香酸ナトリウム、パラベン、ソルビン酸およびソルビン酸塩、プロピオン酸およびプロピオン酸塩、酢酸および酢酸塩、硝酸塩よび亜硝酸塩、二酸化硫黄および亜硫酸塩、抗生物質、ピロ炭酸ジエチル、エポキシド、過酸化水素、およびリン酸塩を包含する。パラベンには、パラヒドロキシ安息香酸のメチル、エチル、プロピルおよびブチルエステルが包含される。メチルパラベンおよびプロピルパラベンは、本発明の1以上の具体例において有用であり、義歯接着組成物全体に対し約0.03〜約0.06wt%の量で使用される。
【0042】
義歯接着組成物は、また、当該分野でよく知られた甘味料の使用を包含しうる。該甘味剤は、水溶性剤、水溶性人工甘味料、およびペプチドベースの甘味料、およびその混合物を包含する幅広い材料から選択されうる。代表的な甘味料は、限定するものではないが、(a)水溶性甘味剤、例えば、単糖類、二糖類および多糖類、例えば、キシロース、リボース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、デキストロース、シュークロース、砂糖、マルトース、部分的に加水分解されたデンプン、またはコーンシロップ固体および糖アルコール、例えば、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、水素化デンプン水解物、およびその混合物、(b)水溶性人工甘味料、例えば、溶性サッカリン塩、すなわち、ナトリウムまたはカルシウムサッカリン塩、シクラメート塩、アセスルファム−K、スクラロースなど、およびサッカリンの遊離酸形態、および(c)ジペプチドベースの甘味料、例えば、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルなどを包含する。一般に、甘味料の量は、義歯接着組成物全体に対し約0.001〜約5wt%であってもよい。
【0043】
本発明において有用な着色料は、二酸化チタンなどの色素を包含し、また、食物、薬および化粧品に適用するのに適当な染料を包含しうる。これらの着色料は、FD&C染料として知られている。説明のための例は、限定するものではないが、FD&C Blue No.2として知られるインジゴ染料(5,5’−インジゴチンジスルホン酸の二ナトリウム塩)、トリフェニルメチレン染料を含むFD&C Green No.1(4−[4−N−エチル−p−スルホベンジルアミノ)ジフェニルメチレン]−[1−(N−エチル−N−P−スルホベンジル)−2,5−シクロヘキサジエンイミン]の一ナトリウム塩)を包含する。本発明の一の具体例は、FD&C Red No.3を着色料として使用する。
【0044】
本明細書中で有用な粘度調整剤は、限定するものではないが、第四アンモニウム化合物および類似物質、デンプン、ゴム、カゼイン、ゼラチンおよび半合成セルロースを包含する。
【0045】
本発明の化合物は、また、義歯接着剤および/または生体接着剤として使用してもよく、粘膜または局所投与に適当な1以上の治療活性物質を含んでいてもよい。「粘膜または局所投与に適当」なる語は、本明細書中で使用される場合、体の内部粘膜表面、例えば、口腔を介して吸収されたときに、または皮膚表面に塗布したときに薬理学上活性である薬剤を表す。治療活性物質は、該組成物の約0〜約40wt%のレベルで存在していてもよい。
【0046】
本発明の組成物において有用な治療活性物質は、抗菌剤、例えば、ヨウ素、スルホンアミド類、ビスビグアニド類、トリクロサンまたはフェノール類、抗生物質、例えば、テトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、メトロニダゾール、またはクリンダマイシン、抗炎症剤、例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、ナプロキセンおよびその塩、イブプロフェン、ケトロラク、フルルビプロフェン、インドメタシン、オイゲノール、またはヒドロコルチゾン、象牙質脱感作剤、例えば、硝酸カリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウムまたはフッ化ナトリウム、麻酔剤、例えば、リドカインまたはベンゾカイン、抗真菌剤、芳香族、例えば、カンファー、ユーカリ油、およびアルデヒド誘導体、例えば、ベンズアルデヒド、インスリン、ステロイド類、および抗新生物剤を包含する。ある種の形態の治療において、同一のデリバリーシステムにおけるこれらの薬剤の組み合わせが最適な効果を得るために有用であることが認められる。かくして、複合効果を提供するために、例えば、抗菌剤および抗炎症剤を単一のデリバリーシステムにおいて組み合わせてもよい。
【0047】
該義歯接着組成物は、粉末、ペースト、クリーム、ゲルまたはライナーの形態であってもよい。これらのペーストまたはゲルは、容器、例えば、チューブ、ブラシペン、スプレー瓶、スティックのり、または消費者に使いやすい塗布具を伴ったいずれか他の特別にデザインされた容器から、消費者によって塗布することができるか、または、ヒドロゲルフィルムまたはヒドロゲルシート、ヒドロゲルストリップまたはヒドロゲルウエハーに加工することができる。これらのフィルムまたはストリップは、その適用の間、ある種の所望の厚さ、強度および一体性を有する。
【0048】
かかる処方を調製する手段は、義歯接着剤の分野においてよく知られており、固体および液体をブレンド、加熱および冷却するための従来タイプの混合装置を用いる。一の具体例において、ゲルまたはペースト処方を製造する方法は、乾燥ポリマー粉末混合物を調製し、水、グリセリンまたは水/グリセリンの混合物などの媒体を調製し、予め作製したポリマー粉末混合物を該液体媒体中に添加し、均一なゲルまたはペーストが形成されるまで混合する工程を含み、混合の最後に、所望により、製品中に捕捉された空気を真空下で除去するなどの工程を適用することができる。
【0049】
粉末形態において、成分をフレーバー剤および着色料と共に、非毒性アンチケーキング剤(シリカ、ステアリン酸マグネシウム、滑石粉など)などの他の材料と一緒に混合する。該材料混合物をよくかき混ぜ、または攪拌して、全成分のほとんど均質の混合をもたらす。
【0050】
ライナーまたは層形態において、成分を均一に混合し、次いで、いずれかの従来のコーティング技術により、例えば、スプレーにより(材料が液体またはスラリーあるいは水などの液体中に溶解または懸濁されている場合)、または篩にかけることにより(義歯接着剤が粉末形態の場合)、非接着性の独立コーティング層上に被覆する。別の具体例において、成分を上記の保存料、フレーバー剤、着色料、甘味剤、粘度調整剤等と共に混合する。次いで、キャスティング、カレンダリング、コーティングおよび押出成形を包含するポリマーフィルム形成分野において既知のいずれかの種類の技術によって、ライナーを形成する。ライナーを形成するための一の具体例において、成分をまず、リングローラーによって機械的に軟化し、液圧プレス上で平滑にし、所望により、義歯ライナー形状または他の所望の形状に打ち抜きする。
【実施例】
【0051】
本発明をさらに説明するために、実施例を下記に示す。これらにおいて、明細書および請求の範囲を通して、別記しない限り、全ての部およびパーセンテージは重量基準であり、全ての温度は摂氏である。
【0052】
実施例1
ウォータージャケットを有するガラス攪拌反応容器中、2134.4グラムの蒸留水を90℃に加熱した。次いで、予め作製した427グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名Benecel、Aqualon Inc,Grade MP874)、214グラムのポリエチレンオキシド(商品名PolyOx、Dow Inc.,Grade NF303)、171グラムのメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーのナトリウム/カルシウム部分混合塩(Gantrez二重塩)、43グラムのメチルビニルエーテル/マレイン酸コポリマー(Gantrez酸)、2.8グラムのソルビン酸カリウムおよび2.8グラムの安息香酸ナトリウムの粉末混合物を該水中にゆっくりと加え、均一なゲルペーストが得られるまで混合し続けた。次いで、反応物を40℃に冷却後、真空にして、生成物中に捕捉された空気を除去した。最後に、生成物を室温に冷却し、清潔な滅菌ガラスジャーに入れた。(下記の表を参照)
【0053】
【表1】

【0054】
実施例2
150グラムの蒸留水および250グラムのグリセリンをステンレス製ボウル中、KitchenAidミキサーを用いて混合した。次いで、予め作製した100グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名Benecel、Aqualon Inc,Grade MP874)、50グラムのポリエチレンオキシド(商品名PolyOx、Dow Inc.,Grade NF303)、100グラムの酢酸ビニル/ビニルピロリドンコポリマー(商品名Plasdone S630、ISP Inc.)、0.6グラムのソルビン酸カリウムおよび0.6グラムの安息香酸ナトリウムの粉末混合物を該水/グリセリン混合物中にゆっくりと加え、均一なペーストが得られるまで混合し続けた。次いで、真空にして、生成物中に捕捉された空気を除去した。最後に、生成物を室温に冷却し、清潔な滅菌ガラスジャーに入れた。(下記の表を参照)
【0055】
【表2】

【0056】
実施例3
229.8グラムの蒸留水を、KitchenAidミキサーを用いてステンレスボウル中に加えた。次いで、予め作製した66グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名Benecel、Aqualon Inc、Grade MP874)、33グラムのポリエチレンオキシド(商品名PolyOx、Dow Inc.、Grade NF303)および0.2グラムの安息香酸ナトリウムの粉末混合物をゆっくりと該水中に加え、均一なペーストが得られるまで混合をし続けた。次いで、真空にして、生成物中に捕捉された空気を除去した。最後に、生成物を清潔な滅菌ガラスジャーに入れた。(下記の表を参照)
【0057】
【表3】

【0058】
実施例4
150グラムの蒸留水および250グラムのグリセリンをステンレスボウル中、KitchenAidミキサーを用いて混合した。0.6グラムのペパーミント油および0.6グラムのスペアミント油を上記の混合物中に加え、混合した。次いで、予め作製した100グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名Benecel、Aqualon Inc、Grade MP874)、50グラムのポリエチレンオキシド(商品名PolyOx、Dow Inc.、Grade NF303)、100グラムの酢酸ビニル/ビニルピロリドンコポリマー(商品名Plasdone S630、ISP Inc.)の粉末混合物をゆっくりと該水/グリセリン混合物中に加え、均一なペーストが得られるまで混合し続けた。次いで、真空にして、生成物中に捕捉された空気を除去した。最後に、生成物を清潔な滅菌ガラスジャーに入れた。(下記の表を参照)
【0059】
【表4】

【0060】
実施例5
155.2グラムのグリセリンを、KitchenAidミキサーを用いてステンレスボウル中に加えた。5.2グラムのヒュームドシリカを上記の混合物中に加え、混合した。次いで、予め作製した40グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名Benecel、Aqualon Inc、Grade MP874)、20グラムのポリエチレンオキシド(商品名PolyOx、Dow Inc.、Grade NF303)、20グラムの酢酸ビニル/ビニルピロリドンコポリマー(商品名Plasdone S630、ISP Inc.)、20グラムのメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーのナトリウム/カルシウム部分混合塩(Gantrez二重塩)、0.24グラムのソルビン酸カリウム、0.24グラムの安息香酸ナトリウムおよび0.04グラムの安息香酸の粉末混合物をゆっくりと、該グリセリン/ヒュームドシリカ混合物中に加え、均一なペーストが得られるまで混合し続けた。次いで、真空にして、生成物中に捕捉された空気を除去した。最後に、生成物を清潔な滅菌ガラスジャーに入れた。(下記の表を参照)
【0061】
【表5】

【0062】
実施例6
125グラムのグリセリンを、KitchenAidミキサーを用いてステンレスボウル中に加えた。次いで、予め作製した50グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名Benecel、Aqualon Inc、Grade MP874)、25グラムのポリエチレンオキシド(商品名PolyOx、Dow Inc.、Grade NF303)、50グラムの酢酸ビニル/ビニルピロリドンコポリマー(商品名Plasdone S630、ISP Inc.)、2.5グラムのモンモリロナイト(商品名NanoClayPGV、Nanocor Inc,)、0.24グラムのソルビン酸カリウム、0.24グラムの安息香酸ナトリウムおよび0.04グラムの安息香酸の粉末混合物をゆっくりと該グリセリン中に加え、均一なペーストが得られるまで混合し続けた。次いで、真空にして、生成物中に捕捉された空気を除去した。最後に、生成物を清潔な滅菌ガラスジャーに入れた。(下記の表を参照)
【0063】
【表6】

【0064】
実施例7
298.7グラムのプロピレングリコールを、KitchenAidミキサーを用いてステンレスボウル中に加えた。次いで、予め作製した74.55グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名Benecel、Aqualon Inc、Grade MP874)、59.65グラムのポリエチレンオキシド(商品名PolyOx、Dow Inc.、Grade NF303)、67.1グラムの酢酸ビニル/ビニルピロリドンコポリマー(商品名Plasdone S630、ISP Inc.)、15グラムのモンモリロナイト(商品名NanoClayPGV、Nanocor Inc.)、0.24グラムのソルビン酸カリウム、0.24グラムの安息香酸ナトリウムおよび0.04グラムの安息香酸の粉末混合物をゆっくりと該プロピレングリコール中に加え、均一なペーストが得られるまで混合し続けた。次いで、真空にして、生成物中に捕捉された空気を除去した。最後に、生成物を清潔な滅菌ガラスジャーに入れた。(下記の表を参照)
【0065】
【表7】

【0066】
実施例8〜12
実施例1〜7と同様にして、下記の処方が作製され、本発明の範囲内に包含される。
【0067】
【表8】

【0068】
上記の記載は、本発明をその好ましい具体例を含め、十分に開示する。本明細書中に特に開示された具体例の修飾および改良は、添付の請求の範囲の範囲内である。さらに工夫することなく、上記の記載により、当業者が本発明をその完全な程度まで利用できると確信する。したがって、いずれの実施例も単なる例示として解釈されるべきであり、如何なる方法においても、本発明の範囲を限定するものではない。排他的財産または権利が請求される本発明の具体例を添付の請求の範囲のとおりに定義する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油およびペトロラタムを包含する炭化水素ビヒクルを含有しない義歯接着組成物。
【請求項2】
ビヒクルが単独の水、グリセリン、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール、およびその組み合わせから選択される請求項1記載の義歯接着組成物。
【請求項3】
1つが接着性を有し、他方が粘着性を有する少なくとも2つのポリマーの組み合わせを有する請求項1記載の義歯接着組成物。
【請求項4】
ポリマーの組み合わせがポリエチレンオキシドおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項3記載の義歯接着組成物。
【請求項5】
ビヒクルがグリセリンである請求項2記載の義歯接着組成物。
【請求項6】
ポリマーの組み合わせがポリエチレンオキシドおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項5記載の義歯接着組成物。
【請求項7】
ポリマーにおけるヒドロキシプロピルメチルセルロース対ポリオキシエチレンの比率が1:1〜10:1である請求項6記載の義歯接着組成物。
【請求項8】
ビヒクルが水である請求項2記載の義歯接着組成物。
【請求項9】
ビヒクルが水およびグリセリンの組み合わせである請求項2記載の義歯接着組成物。
【請求項10】
ビヒクルがプロピレングリコールである請求項2記載の義歯接着組成物。

【公表番号】特表2009−545610(P2009−545610A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522986(P2009−522986)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/074699
【国際公開番号】WO2008/016869
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【Fターム(参考)】