説明

翼振動計測装置

【課題】翼の通過タイミングを計測する替わりに翼の回転軸方向の変位を数百kHzオーダの応答周波数で精度良く直接測定することにより、計測に要する時間及びコストを低減する。
【解決手段】タービン動翼の周方向に複数配置され回転軸方向の変位を計測し変位計測信号を出力する非接触型変位計3a〜3d、変位計測信号に基づき先端位置を同定した翼先端位置同定信号を出力する翼先端位置同定装置4a〜4d、翼先端位置同定信号に基づき振動振幅と振動周波数を算出する翼振動算出装置5a〜5d、振動振幅と振動周波数に基づき振動モード次数を同定する振動モード同定装置6を備え、翼先端位置同定装置は複数の測定点の変位にカーブフィッティングを行って曲線を求めピーク位置から先端位置を同定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種タービンの動翼等において発生する振動を計測するための翼振動計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンやガスタービン等の各種タービンの設計開発、製造においては、性能を向上させると共に事故を防止し信頼性を確保するためにタービンの動翼に発生する振動を計測する必要がある。
【0003】
従来の翼の振動を計測する装置では、下記の特許文献1、2に記載された装置のように、近接センサを用いて翼の通過タイミングを計測し、通過タイミングの時間差に基づいて振動を求める手法を用いていた。
【0004】
しかし、上述した従来の翼振動計測装置では、翼の通過タイミングを数百MHz以上の高いサンプリング周波数により高精度で計測する必要があった。このため、高いサンプリング周波数と高い時間分解能を有するデータ集録装置を準備する必要があった。
【0005】
また、高い時刻計測精度を得るために、集録装置の性能のみならず、測定信号の伝送時間にも注意を払う必要があり、さらに、測定した位相差(時間差)を変位に変換しなければならなかった。このため、測定の準備や測定データの解析に多くの時間やコストを要するという課題があった。
【0006】
一方、近接センサの替わりに、非接触型変位計を用いて翼振動を直接計測する方法も下記の特許文献3において記載されている。
【0007】
この方法は、数百kHz程度のサンプリング周波数で測定を行うため、データ集録装置に要求される時間分解能も比較的低く、測定系の準備やデータ解析も比較的容易である。
【0008】
しかし、蒸気タービン等の最終段翼のような大型の回転翼を測定する際には、翼の回転速度にサンプリングが追いつかず、一定位置の変位を捉えることができないため高精度で翼振動の計測を行うことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3129406号公報
【特許文献2】特許第3530474号公報
【特許文献3】特開2003−177059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、非接触で翼振動を計測する装置は、近接センサを用いた場合には翼の通過タイミングを数百MHz以上の高いサンプリング周波数で計測すると共に、測定した位相差を変位に変換する必要があった。このため、測定の準備や測定データの解析に多くの時間やコストを要するという課題があった。
【0011】
変位を直接測定する場合は、用いる非接触型変位計の応答周波数が最高でも数百kHz程度であり、高速で回転する翼の一定位置の変位を正確に測定することが困難となるため、高精度で翼振動の計測を行うことが困難であるという課題があった。
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、翼の通過タイミングを計測する替わりに、翼の回転軸方向の変位を数百kHzオーダの応答周波数で精度良く直接測定することにより、計測に要する時間及びコストを低減することが可能な翼振動計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様による翼振動計測装置は、
タービン動翼の周方向に沿って複数配置され、前記タービン動翼の回転軸方向の変位をそれぞれ計測して変位計測信号を出力する非接触型変位計と、
前記非接触型変位計に対応して複数設けられ、前記非接触型変位計から出力された対応する前記変位計測信号を与えられ、前記非接触型変位計と前記タービン動翼の先端位置との間のそれぞれの距離に基づいて前記先端位置を同定する翼先端位置同定信号を出力する翼先端位置同定装置と、
前記翼先端位置同定装置に対応して複数設けられ、前記翼先端位置同定装置から出力された前記翼先端位置同定信号を与えられ、前記非接触型変位計から前記タービン動翼の先端位置までの距離の時間的変化に基づき、前記タービン動翼の振動振幅と振動周波数とを算出する翼振動算出装置と、
前記翼振動算出装置のそれぞれから出力された前記タービン動翼の振動振幅と振動周波数とに基づいて、前記タービン動翼の振動モード次数を同定する振動モード同定装置と、
を備え、
前記翼先端位置同定装置のそれぞれは、与えられた前記変位計測信号に含まれる複数の測定点における変位にカーブフィッティングを行い相互間を補間して曲線を求め、この曲線のピーク位置から前記タービン動翼の先端位置を同定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様による翼振動計測装置は、
タービン動翼の回転数を変化させるための回転数調整装置と、
前記タービン動翼のそれぞれの翼が所定位置を通過する毎に回転同期パルスを出力する回転同期パルス生成装置と、
前記タービン動翼の周方向に沿って複数配置され、前記回転同期パルスを与えられた時点における前記タービン動翼の回転軸方向の変位をそれぞれ計測して変位計測信号を出力する非接触型変位計と、
前記非接触型変位計に対応して複数設けられ、前記非接触型変位計から出力された対応する前記変位計測信号を与えられ、前記非接触型変位計と前記タービン動翼における前記回転同期パルスに対応した同一点との間のそれぞれの距離を示す同一点変位信号を出力する翼同一点測定装置と、
前記翼同一点測定装置からそれぞれ出力された前記同一点測定信号を与えられ、前記タービン動翼のそれぞれの翼毎に対応して並び替えた時系列変位信号を出力する翼基準並び替え装置と、
前記翼基準並び替え装置から出力された前記時系列変位信号を与えられ、高速フーリエ変換を行って高速フーリエ変換結果信号を出力するFET演算装置と、
前記FET演算装置から出力された前記高速フーリエ変換結果信号を与えられ、キャンベル線図を作成して前記タービン動翼の振動特性を評価するキャンベル線図作成装置と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の翼振動計測装置によれば、翼の回転軸方向の変位を数百kHzオーダの応答周波数で高精度で直接測定することにより、計測に要する時間及びコストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態による翼振動計測装置の構成を示すブロック図及び正面図である。
【図2】同第1の実施の形態による翼振動計測装置の構成を示すブロック図及び側面図である。
【図3】同第1の実施の形態において翼先端位置を同定する手法を示す説明図である。
【図4】同第1の実施の形態において翼振動振幅及び振動周波数を算出する手法を示す説明図である。
【図5】同第1の実施形態において非接触型変位計の出力信号の複数の測定点に対してカーブフィットを行う手法を示した説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態による翼振動計測装置の構成を示すブロック図及び正面図である。
【図7】同第2の実施の形態による翼振動計測装置の構成を示すブロック図及び側面図である。
【図8】同第2の実施の形態において、翼先端位置を翼毎に並べ替えてカーブフィッティングを行う手法を示した説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態による翼振動計測装置の構成を示す説明図である。
【図10】同第3の実施の形態においてタービン動翼の同一点における変位を回転同期パルスを用いて計測する手法を示した説明図である。
【図11】同第3の実施の形態においてタービン動翼2の同一点における変位信号に高速フーリエ変換を行って得られた周波数に対する振動振幅の関係を示すグラフである。
【図12】同第3の実施の形態においてタービン動翼2の回転数毎に図11の結果を取得し横軸を回転数、縦軸を振動周波数としてプロットしたキャンベル線図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態による翼振動計測装置の構成を示す説明図である。
【図14】同第4の実施の形態による翼振動計測装置により計測が可能な2次の共振モード発生時の変位を示すグラフである。
【図15】同第4の実施の形態による翼振動計測装置により計測が可能な4次の共振モード発生時の変位を示すグラフである。
【図16】同第4の実施の形態による翼振動計測装置により計測が可能な8次の共振モード発生時の変位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態による翼振動計測装置について、図面を参照して説明する。
【0018】
(1)第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態の構成を示す図として、図1にタービン動翼2の正面図、図2に側面図を示す。
【0019】
回転軸1に取り付けられたタービン動翼2の回転軸方向の変位を計測するため、タービン動翼2の周方向に沿って所定間隔を開けて、同一半径上に複数の非接触型変位計3a、3b、3c、3dが配置されている。
【0020】
それぞれの非接触型変位計3a、3b、3c、3dから出力された変位計測信号が対応する翼先端位置同定装置4a、4b、4c、4dに入力され、タービン翼2の先端位置の同定が行われてその結果を示す翼先端位置同定信号が出力される。
【0021】
翼先端位置同定信号は、対応する翼振動算出装置5a、5b、5c、5dに与えられ、タービン動翼2の振動振幅及び振動周波数が算出され振動モード同定装置6に出力される。
【0022】
振動モード同定装置6において、非接触型変位計3a、3b、3c、3dの設置位置におけるそれぞれの振動振幅及び振動周波数に基づいて、振動モード次数が求められる。
【0023】
ここで、翼先端位置同定装置4a、4b、4c、4dにおいて翼先端位置を同定する手法について図3を用いて説明する。
【0024】
図3(a)に示されたように、タービン動翼2の翼列が回転し矢印で示された方向に移動する。非接触型変位計3a、3b、3c、3dのうち、一例として非接触型変位計3aの前をタービン動翼2の翼列が通過することで、非接触型変位計3aからは図3(b)に示されたような電圧波形を有する変位計測信号が出力される。ここで、図3(a)において四角で示された非接触型変位計3aによるタービン動翼2の検出位置が、図3(b)において出力電圧波形上で四角で示された位置に対応する。
【0025】
また、図3(a)においてドット2a1、2a2、2a3で示されたタービン動翼2の先端位置が、図3(b)においてドット101、102、103で示された出力電圧波形の最下端のピーク値に対応する。
【0026】
図4を用いて、翼振動算出装置5によるタービン翼2の振動振幅及び振動周波数を算出する手法について説明する。
【0027】
図4(a)に示されたように、タービン動翼2に振動が発生すると、ドット2a1、2a2、2a3、2a4、2a5、2a6、2a7で示されたタービン動翼2の先端位置と非接触型変位計3までの距離Xが変動する。この変動が、図4(b)を用いて説明したドット101、102、103、104、105、106、107で示された出力電圧波形の最下端のピーク値の変動となる。そこで、翼先端位置同定装置4aから出力された翼先端位置に対応した電圧が、翼振動算出装置5aにおいて、図4(b)に示されたように翼先端位置と非接触型変位計3aとの間の相対的な距離に換算され、得られた相対的な距離が時系列に記録される。このように記録された時系列データから、タービン動翼2の振動振幅と振動周波数を算出することができる。
【0028】
さらに第1の実施の形態では、翼先端位置同定装置4a、4b、4c、4dにおいてそれぞれタービン動翼2の先端位置を同定する際に、カーブフィッティングを行う点に特徴がある。
【0029】
図5(a)において、非接触型変位計3a、3b、3c、3d、3e、3fのうち、例えば非接触型変位計3aによりタービン動翼2までの距離が計測される。タービン動翼2が非接触型変位計3aの前を通過するときに、タービン動翼2におけるサンプリングのタイミングに対応した不連続な翼測定位置2a11、2a12、2a13、2a14、2a15との距離が計測され変位計測信号が出力される。
【0030】
このような変位計測信号が翼先端位置同定装置4aに入力されると、不連続な翼計測位置2a11、2a12、2a13、2a14、2a15における計測値がサンプリングされ記憶される。
【0031】
そして、それぞれの翼測定位置2a11、2a12、2a13、2a14、2a15における測定値に対して、相互間を補間するように例えば最小二乗法等が用いられカーブフィッティングが行われることにより、点線で示されたような曲線Sが求まる。この曲線Sにおけるピーク値から、翼先端推定位置2a14が求められる。
【0032】
タービン動翼2の回転速度が高速になると、非接触型変位計を用いて翼先端位置の同定を行うことが困難になる。そこで、翼先端付近の複数の計測位置における非接触型変位計からの変位計測信号の電圧値がサンプリングされて取得され、これらの値に対してカーブフィッティングが行われる。このようにして得られた曲線Sのピーク値を翼先端位置と同定することで、翼先端位置同定の精度を向上させることができる。サンプリング周波数は高いほど翼先端位置同定の精度は高くなるが、処理量が増大するため処理時間及びコストを勘案し、例えば数百kHzオーダ程度の周波数に設定してもよい。
【0033】
第1の実施の形態によれば、翼の通過タイミングを計測する替わりに、翼の回転軸方向の変位を数百kHzオーダの応答周波数で精度良く直接測定することにより、計測に要する時間及びコストを低減することが可能である。
【0034】
尚、測定値にカーブフィッティングを行う際に、予めタービン動翼2の形状を示すデータを図示されていない記憶装置等に記憶しておき、このデータを用いてカーブフィッティングを行うことで、タービン動翼2の曲線形状を精度良く求めることができる。さらに、タービン動翼2は運転状態により変化するが、それぞれの運転状態における形状データを記憶しておくことで、より高精度で曲線形状を求めて翼先端位置の同定を行うことができる。
【0035】
(2)第2の実施の形態
本発明の第2の実施の形態の構成を示す図として、図6にタービン動翼2の正面図、図7に側面図を示す。
【0036】
第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態の構成において、回転軸1の回転数を変化させるための回転数調整装置8がさらに設けられた点が相違する。上記第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0037】
回転軸1を所定回転数で回転させたときに、翼先端位置同定装置4a、4b、4c、4dにおいてそれぞれタービン動翼2の翼先端位置の同定が行われ、翼先端位置同定信号が出力される。上記第1の実施の形態と同様に、翼先端位置同定信号が対応する翼振動算出装置5a、5b、5c、5dに与えられ、タービン動翼2の振動振幅及び振動周波数が算出されて振動モード同定装置6に出力される。
【0038】
振動モード同定装置6には、翼振動算出装置5a、5b、5c、5dから振動振幅、振動周波数が与えられると共に、非接触型変位計3a、3b、3c、3dから出力された変位計測信号が与えられる。
【0039】
振動モード同定装置6において、この変位計測信号に含まれる翼先端位置を示すデータが、タービン動翼2における翼毎に並び替えられて共振モード次数の判定が行われる。具体的には、非接触型変位計3a、3b、3c、3dのそれぞれの前を翼が順に通過して得られた変位計測値が、各翼毎に収集される。
【0040】
回転数調整装置8により回転軸1の回転数が変化し共振現象が発生すると、図8に示されるようなある一つの翼が1回転する間に変位が規則的に変化するグラフが得られる。この変位が変化する曲線をサイン曲線に近似する。サンプリングにより得られた不連続の変位計測値に対し、振動モード同定装置6においてカーブフィッティングが行われ、共振モードが同定される。
【0041】
このように、共振状態において不連続な変位計測値をサイン曲線にカーブフィッティングすることにより、非接触型変位計3の個数を減らすことができるため計測に要するコストを低減することができる。
【0042】
第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に、翼の通過タイミングを計測する替わりに、翼の回転軸方向の変位を数百kHzオーダの応答周波数で精度良く直接測定することにより、計測に要する時間及びコストを低減することができると共に、共振発生時における不連続な変位計測値をサイン曲線にカーブフィッティングすることで非接触型変位計3の個数を減らしコスト低減に寄与することができる。
【0043】
(3)第3の実施の形態
本発明の第3の実施の形態による翼振動計測装置について、図9を参照して説明する。
【0044】
タービン動翼2の周方向に沿って、16個の非接触型変位計3a、3b、3c、…、3pが配置されている。
【0045】
さらに、タービン動翼2の所定位置に、回転同期パルス生成装置11が設置されており、タービン動翼2の任意の翼が所定位置を通過する毎に回転同期パルスが生成されて、各々の非接触型変位計3a、3b、3c、…、3pに与えられる。
【0046】
これにより、非接触型変位計3a、3b、3c、…、3pにおいて、回転同期パルスを与えられた時点における回転中のタービン動翼2までの距離(変位)を示す変位計測信号が生成され出力される。
【0047】
出力された変位計測信号が、非接触型変位計3a、3b、3c、…、3pに対応する同数の翼同一点測定装置12a、12b、12c、…、12pにそれぞれ与えられる。翼同一点測定装置12a、12b、12c、…、12pにおいて、変位計測信号に基づいて、回転するタービン動翼2の同一点までの距離が計測され、同一点変位信号が出力される。このようにして、翼同一点測定装置12a、12b、12c、…、12pからそれぞれ同一点変位信号が出力され、翼基準並び替え装置13に与えられる。
【0048】
翼基準並び替え装置13において、与えられた16個の同一点変位信号が、タービン動翼2の各々の翼毎に対応して並び替えられ、時系列変位信号として出力され、FET演算装置14に与えられる。
【0049】
FET演算装置14において、翼毎に対応して並び替えられた時系列変位信号に対して高速フーリエ変換が施され、得られた結果が高速フーリエ変換結果信号としてキャンベル線図作成装置15に与えられる。
【0050】
キャンベル線図作成装置15において、高速フーリエ変換結果信号に基づいて図12を用いて後述するようなキャンベル線図が作成され、タービン動翼2の振動特性が評価され、その結果が評価結果信号として外部に出力される。
【0051】
図10(a)に示されたように、タービン動翼2におけるそれぞれの翼の同一点2a1、2a2、2a3の変位を計測する必要がある。そこで、図10(b)に示されたような回転同期パルスを用いて、非接触型変位計3a、3b、3c、…、3pから出力される変位計測信号におけるそれぞれの翼の同一点2a1、2a2、2a3に対応した位置101、102、103の変位が特定される。これにより、各々の翼同一点測定装置12a〜12pにおいて、それぞれの翼の同一点の変位が計測される。
【0052】
そして回転数調整装置8により、回転数を徐々に上昇させながら計測を行い、共振点および共振モードを求めていく。
【0053】
一般に、N(Nは自然数)次の共振モードを計測したい場合、2*N個のセンサが必要となる。この第3の実施の形態では、16個の非接触型変位計3a〜3pを用いているので、8次の共振モードまで捉えることが可能である。
【0054】
図11に、所定の回転数において、翼基準並び替え装置13により生成されたタービン動翼2の同一点における変位計測信号に対し、FFT演算装置14により高速フーリエ変換が施されて得られた周波数に対する振動振幅の関係を示す。共振点は振動振幅が最大となる時点であり、この時の周波数が共振周波数となる。
【0055】
このような高速フーリエ変換を、タービン動翼2の回転数毎に行っていく。得られた結果を、横軸を回転数、縦軸を振動周波数としてグラフにプロットしたものを、図12のキャンベル線図に示す。
【0056】
このキャンベル線図において、それぞれの回転周波数の所定整数倍を繋いだ直線を示す。例えば、1H(Hは自然数)の直線は、回転周波数の1倍の周波数を繋いだ直線、2Hの直線は、回転周波数の2倍の周波数を繋いだ直線、…、8Hの直線は、回転周波数の8倍の周波数を繋いだ直線である。
【0057】
また、このキャンベル線図に示した白丸印の大きさは、振動振幅の大きさに比例するものとする。このため、図12における縦方向一列に配置された1組の白丸印の大きさが、所定回転数における1Hから8Hまでのそれぞれの振動振幅の大きさに対応し、この1組が図11のグラフに示された所定回転数における振動振幅に対応する。
【0058】
このようにしてキャンベル線図作成装置15により作成されたキャンベル線図において、回転数に関係なく振動振幅が大きくなる振動周波数が、共振点における共振周波数として見積もられる。
【0059】
第3の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に、翼の通過タイミングを計測する替わりに、翼の回転軸方向の変位を数百kHzオーダの応答周波数で精度良く直接測定することにより、計測に要する時間及びコストを低減することが可能であると共に、キャンベル線図を作成することで共振周波数を求めることができる。
【0060】
(4)第4の実施の形態
本発明の第4の実施の形態による翼振動計測装置について、図13〜図16を参照して説明する。
【0061】
第4の実施の形態は、図13に示された構成を備えている。タービン動翼2の周方向に沿って、1番目の非接触型変位計3aが配置され、この非接触型変位計3aから、22.5度の角度の間隔を開けて2番目の非接触型変位計3bが配置され、1番目の非接触型変位計3aから45度の間隔を開けて3番目の非接触型変位計3cが配置され、さらに1番目の非接触型変位計3aから90度の間隔を開けて4番目の非接触型変位計3dが配置されている。
【0062】
非接触型変位計3a、3b、3c、3dから出力された変位計測信号が、それぞれに対応して設けられた翼先端位置同定装置4a、4b、4c、4dに与えられてそれぞれにおいて翼の先端位置の同定が行われ、その結果が翼先端位置同定信号として出力され翼振動算出装置5a、5b、5c、5dに与えられる。
【0063】
翼振動算出装置5a、5b、5c、5dにおいて、翼先端位置同定信号に基づいてタービン動翼2の振動振幅及び振動周波数が算出され、その結果が翼振動信号として振動モード同定装置6に与えられる。
【0064】
振動モード同定装置6において、非接触型変位計3a〜3dが配置された位置における振動振幅及び振動周波数に基づいて、振動モードが同定される。
【0065】
図14に、2次の共振モードが発生した場合に、タービン動翼2の周方向に沿って上述の角度の間隔を開けて順に配置された非接触型変位計3a〜3dにより、それぞれ計測された変位を黒丸印で示す。同様に、図15に4次の共振モードが発生した場合、図16に8次の共振モードが発生した場合に、非接触型変位計3a〜3dによりそれぞれ計測された変位を示す。
【0066】
図14に示された2次の共振モードでは、非接触型変位計3a〜3dの配置位置に対応する測定点201、202、203の変位がプラス側、測定点204の変位がマイナス側に位置する。
【0067】
図15に示された4次の共振モードでは、非接触型変位計3a〜3dの配置位置に対応する測定点201、202の変位がプラス側、測定点203の変位がマイナス側、さらに測定点204の変位がプラス側に位置する。
【0068】
図16に示された8次の共振モードでは、非接触型変位計3a〜3dの配置位置に対応する測定点201の変位がプラス側、測定点202の変位がマイナス側、測定点203の変位がプラス側、さらに測定点204の変位がプラス側に位置する。
【0069】
このようにして、いずれの共振モードが発生したか容易に判別することができる。
【0070】
尚、ここでは8次の共振モードまで捉えるために、非接触型変位計3a〜3dの配置の最小間隔が22.5度、即ち8次の振動モードの半周期分となっている。このような間隔で配置することにより、8次の振動モードにおける節を必ず捉えることができる。
【0071】
さらに、この最小間隔22.5度の偶数倍の間隔で非接触型変位計を配置することにより、より低次の振動モードの節を捉えることができる。
【0072】
従って、第4の実施の形態によれば、等間隔で周方向に非接触型変位計を配置していた場合と比較し、非接触型変位計の個数を低減させて共振モードの次数を効率よくとらえることができるので、コスト低減に寄与することが可能である。
【0073】
本発明の幾つかの実施の形態について説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 回転軸
2 タービン動翼
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f 非接触型変位計
4、4a、4b、4c、4d、4e、4f 翼先端位置同定装置
5、5a、5b、5c、5d、5e、5f 翼振動算出装置
6 振動モード同定装置
7 回転冶具
8 回転数調整装置
9 渦電流変位計
10 回転基準
11 回転同期パルス生成装置
12 翼同一点測定装置
13 翼基準並び替え装置
14 FFT演算装置
15 キャンベル線図作成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン動翼の周方向に沿って複数配置され、前記タービン動翼の回転軸方向の変位をそれぞれ計測して変位計測信号を出力する非接触型変位計と、
前記非接触型変位計に対応して複数設けられ、前記非接触型変位計から出力された対応する前記変位計測信号を与えられ、前記非接触型変位計と前記タービン動翼の先端位置との間のそれぞれの距離に基づいて前記先端位置を同定する翼先端位置同定信号を出力する翼先端位置同定装置と、
前記翼先端位置同定装置に対応して複数設けられ、前記翼先端位置同定装置から出力された前記翼先端位置同定信号を与えられ、前記非接触型変位計から前記タービン動翼の先端位置までの距離の時間的変化に基づき、前記タービン動翼の振動振幅と振動周波数とを算出する翼振動算出装置と、
前記翼振動算出装置のそれぞれから出力された前記タービン動翼の振動振幅と振動周波数とに基づいて、前記タービン動翼の振動モード次数を同定する振動モード同定装置と、
を備え、
前記翼先端位置同定装置のそれぞれは、与えられた前記変位計測信号に含まれる複数の測定点における変位にカーブフィッティングを行い相互間を補間して曲線を求め、この曲線のピーク位置から前記タービン動翼の先端位置を同定することを特徴とする翼振動計測装置。
【請求項2】
前記タービン動翼の回転数を変化させるための回転数調整装置をさらに備え、
前記回転数調整装置により前記タービン動翼の回転数が変化して前記タービン動翼に共振現象が発生した時に、前記翼先端位置同定装置により同定された翼先端位置同定信号を、前記振動モード同定装置が前記タービン動翼の翼毎に並び替えて収集し、共振モード次数を同定することを特徴とする請求項1に記載の翼振動計測装置。
【請求項3】
前記タービン動翼の周方向に沿って複数配置された前記非接触型変位計は、第1、第2、第3、第4の非接触型変位計を少なくとも含み、
前記第2の非接触型変位計は前記第1の非接触型変位計に対して所定次数の共振モードの半周期分の間隔を開けた位置に配置され、前記第3の非接触型変位計は前記第1の非接触型変位計に対して前記間隔の2倍の間隔を開けた位置に配置され、前記第4の非接触型変位計は前記第1の非接触型変位計に対して前記間隔の4倍の間隔を開けた位置に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の翼振動計測装置。
【請求項4】
タービン動翼の回転数を変化させるための回転数調整装置と、
前記タービン動翼のそれぞれの翼が所定位置を通過する毎に回転同期パルスを出力する回転同期パルス生成装置と、
前記タービン動翼の周方向に沿って複数配置され、前記回転同期パルスを与えられた時点における前記タービン動翼の回転軸方向の変位をそれぞれ計測して変位計測信号を出力する非接触型変位計と、
前記非接触型変位計に対応して複数設けられ、前記非接触型変位計から出力された対応する前記変位計測信号を与えられ、前記非接触型変位計と前記タービン動翼における前記回転同期パルスに対応した同一点との間のそれぞれの距離を示す同一点変位信号を出力する翼同一点測定装置と、
前記翼同一点測定装置からそれぞれ出力された前記同一点測定信号を与えられ、前記タービン動翼のそれぞれの翼毎に対応して並び替えた時系列変位信号を出力する翼基準並び替え装置と、
前記翼基準並び替え装置から出力された前記時系列変位信号を与えられ、高速フーリエ変換を行って高速フーリエ変換結果信号を出力するFET演算装置と、
前記FET演算装置から出力された前記高速フーリエ変換結果信号を与えられ、キャンベル線図を作成して前記タービン動翼の振動特性を評価するキャンベル線図作成装置と、
を備えることを特徴とする翼振動計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−83568(P2013−83568A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224050(P2011−224050)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】