説明

耐久性オキシ塩化マグネシウムセメントおよびそのための方法

−苛性焼成マグネシア −塩化マグネシウム −リン酸または対応する塩 −剥離バーミキュライト:を含むオキシ塩化マグネシウムセメント(MOC)組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシ塩化マグネシウムセメント(MOC)およびその製品を製造するための組成物および方法に関する。このMOCは、ボードに形成するかスプレーすることが可能であり、特に、防火およびビル建築に有用である。
【背景技術】
【0002】
オキシ塩化マグネシウムセメント(ソレルセメントとしても知られる)は、苛性焼成マグネシア(MgO)と塩化マグネシウム水溶液との反応によって形成される。これは、長年にわたり研究されてきた。硬化される際に、このセメントは一般的に、5Mg(OH)2.MgCl2.8H2O(以下、相5、またはF5)と3Mg(OH)2.MgCl2.8H2O(以下、相3、またはF3)との結晶相の存在を特徴とする。
【0003】
二つの化合物の相対的比率は、他の要素に加えて、反応の立体化学に左右される。通常のポルトランドセメント(OPC)系製品と比べて、MOC製品は、曲げ強度、表面硬度、耐霜性、耐菌性および高温での熱収縮の低さの点で、多くの利点がある。製品の最適性能のため、F5相の形成が好ましい(式1)。
5MgO + MgCl2 + 13H2O → 5Mg(OH)2.MgCl2.8H2O (1)
【0004】
しかし、三相系MgO-MgCl2-H2Oにおいて製造される従来のMOCには、二つの根本的な弱点がある:
【0005】
− F5は水との長時間の接触において不安定である。これらの条件下では、F5はブルース石(Mg(OH)2)およびF3相に変換し、MgOからブルース石(Mg(OH)2)への相変換に付随する体積の大幅な膨張のため、クラッキングが起きる。
【0006】
− 時効(ageing)の間、MOCの炭酸化が起き、F5およびF3は、塩化アルチーニ石(chlorartinite)(Mg(OH)2.MgCl2.2MgCO3.6H2O)およびハイドロマグネサイト(5MgO.4CO2.5H2O)に変換する。これらの変換により、機械的強度を低下させるクラックが進行する(P.マラヴェラキ(Maravelaki)ら、ソレルセメントモルタルの崩壊敏感受性およびペンテル産大理石への影響(Sorel's cement mortar Decay susceptibility and effect on Pentelic marble)、セメント・アンド・コンクリート・リサーチ(Cement and concrete research)、29(1999年)、1929-1935頁; M.D.デ・カステラー(de Castellar)ら、オキシ塩化マグネシウムの炭酸化の結果としての、ソレルセメントの研磨レンガにおけるクラック(Cracks in Sorel's cement polishing bricks as a result of magnesium oxychloride carbonation)、セメント・アンド・コンクリート・リサーチ、26(8)、1199-1202頁、1996年)。
【0007】
MOC製品の耐水性を向上させるため、ケイ酸エチル、有機カルボン酸および撥水剤等の添加剤を使用し、凝結前にセメント混合物と組み合わせるか、または硬化セメントに適用することによる、幾多の取り組みがなされてきた。最も有効な方法は、米国特許4,352,694号に開示された通り、リン酸またはその可溶性塩の添加により、F5(5Mg(OH)2.MgCl2.8H2O)を安定化し、建築材料用の耐水性MOC材料を得ることである。これらの添加により、MOC製品の湿/乾圧縮強度比は80%超になる場合があり、これはOPC系製品と同レベルである。
【0008】
しかし、MOCの炭酸化現象はなおも発生し、長期間の製品の耐久性についての問題が起こる。F5がCO2と反応するF3に変換することにより、塩化アルチーニ石の形成が始まる(式2)。MgCl2の浸出が発生する場合、MOCマトリックスの炭酸化の間にハイドロマグネサイトが生じる。
5Mg(OH)2.MgCl2.8H2O → 3Mg(OH)2.MgCl2.8H2O + 2 Mg(OH)2
3Mg(OH)2.MgCl2.8H2O + 2CO2 → Mg(OH)2.MgCl2.2MgCO3.6H2O + 2H2O
(2)
【0009】
両方の場合で、炭酸化の進行は結合相F5の安定性に影響し、従って、MOC材料の強度および寸法安定性は低下する。
【0010】
他方では、時効反応の間に形成し得るMgCl2の吸湿性のため、この相は、湿潤環境において製品の表面に移動し、白華(efflorescence)として現れる白色のMgCl2含水塩として沈殿するか、水を吸収して湿潤表面または発汗現象を見せるであろう。最悪の場合、材料の表面上に水滴が垂れる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許4,352,694号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】P.マラヴェラキ(Maravelaki)ら、ソレルセメントモルタルの崩壊敏感受性およびペンテル産大理石への影響(Sorel's cement mortar Decay susceptibility and effect on Pentelic marble)、セメント・アンド・コンクリート・リサーチ(Cement and concrete research)、29(1999年)、1929-1935頁
【非特許文献2】M.D.デ・カステラー(de Castellar)ら、オキシ塩化マグネシウムの炭酸化の結果としての、ソレルセメントの研磨レンガにおけるクラック(Cracks in Sorel's cement polishing bricks as a result of magnesium oxychloride carbonation)、セメント・アンド・コンクリート・リサーチ(Cement and concrete research)、26(8)、1199-1202頁、1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、特に炭酸化に対する耐性に関して、向上した特性を有するオキシ塩化マグネシウムセメント(MOC)組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この問題は、
− 苛性焼成マグネシア
− 塩化マグネシウム
− リン酸または対応する塩
− 剥離バーミキュライト
を含む、オキシ塩化マグネシウムセメント(MOC)組成物によって解決された。
【0015】
剥離バーミキュライトは、F5の炭酸化に対する驚くべき安定化効果を有する。従って、時効の間、塩化アルチーニ石およびハイドロマグネサイトを殆ど生じないことを特徴とする、安定で耐久性のあるMOC製品を得ることができる。
【0016】
よく知られたバーミキュライトは、加熱時に長く蠕虫状のらせん構造に膨張する能力が特徴の、層構造の含水ケイ酸マグネシウム鉱物の群に適用する。これらの条件での鉱物の膨張プロセスは、剥離と呼ばれる。天然鉱物として、バーミキュライトは、混合層粘土およびマイカ等の不純物を含有していてもよい。
【0017】
剥離バーミキュライトは、耐熱性弾力材として知られる。剥離バーミキュライトは、従来、熱ガスを用いて鉱物バーミキュライト(粗バーミュライト)を膨張させることによって形成され、この材料は、ここでは「ガス剥離バーミキュライト」と言う。ガスは熱的に生成される場合もあり、この場合、製品は「熱剥離バーミキュライト」(TEV)と呼ばれる。TEVは、鉱物バーミキュライトを750〜1000℃にフラッシュ加熱することによって製造してもよく、この温度で、鉱石鉱物構造内の水(遊離水および結合水)が急速に蒸発し、イオン反発力により原材料を形成するケイ酸塩シートが剥がれて、シートの平面に対して垂直に10〜20倍の膨張を引き起こす。形成された顆粒は、原材料と(水の損失以外)同一の化学的組成を有する。ガス剥離バーミキュライトは、原料バーミキュライトを、例えば過酸化水素等の液体化学物質で処理することによっても製造され、この化学物質は、ケイ酸塩シートの間に浸透した後、例えば酸素等のガスを放出し、剥離を引き起こす。
【0018】
別の剥離の方法は、マイクロ波加熱炉で生じた温度による。
【0019】
剥離バーミキュライトの別の形態は、「化学的剥離バーミキュライト」(CEV)として知られており、これは鉱石を処理し、それを水中で膨張させることによって形成される。一つの可能な製造方法において、鉱石は、飽和塩化ナトリウム溶液で処理して、マグネシウムイオンをナトリウムイオンに交換し、その後、塩化n−ブチルアンモニウムで処理して、ナトリウムイオンをn-C4H9NH3+イオンで置換する。水洗時に、膨張が起きる。その後、膨張した材料を高せん断に付して、非常に微細な(直径50μm未満)バーミキュライト粒子の水性懸濁液を製造する。
【0020】
本発明では、TEVとCEVの両者を使用し得る。
【0021】
典型的には、剥離バーミキュライトは、かさ密度が0.300g/cm3未満であり、好ましくは0.050〜0.200g/cm3の間であり、より好ましくは0.100〜0.150g/cm3の間である。粗バーミキュライトのかさ密度は、0.500〜1.000g/cm3の間である。
【0022】
剥離バーミキュライトの好適なサイズは、0〜10mmの間であり、好ましくは0〜2mmの間である。通常は軽量で不燃性であり、高温耐性があり、熱伝導性が低い。
【0023】
好ましい態様において、MOCは、全重量の1〜80%、好ましくは1〜30%、より好ましくは全重量の5〜20%の量の、剥離バーミキュライトを含む。
【0024】
驚くべきことに、剥離バーミキュライトは、MgO-MgCl2-H2O系において、MOC反応に何らかの形で関与することが見出される。本発明のMOC材料の走査電子顕微鏡法(SEM)での分析により、バーミキュライトとMOC間の反応産物として、剥離バーミキュライトのラメラ上で成長する、ファイバー結晶が形成されることが実証される。EDAXスペクトルより、結晶がMg、Si、AlおよびClを含有することが示される。正確なメカニズムは未だに解らないが、この相互作用が湿潤条件でF5をさらに安定化するようであり、時効間の炭酸化を減じている。
【0025】
混合物の均一性に関して、剥離バーミキュライトの使用が、膨張パーライト等のMOCのための他の軽量材料にも有利であることが見出される。剥離バーミキュライトは容易に混合され、混合の間、MgO-MgCl2-H2Oスラリーの全容量にわたって均一に分散され得る。他方で、膨張パーライトは、混合の間、MOCスラリーの頂部に浮かぶ傾向があり、結果として、頂部にはより多くの膨張パーライトがあり、底部はほぼMOCペーストのみの、均一性が劣る製品が生じる。例えば種々の粒子サイズ分布の膨張パーライト類を使用することによって、この分離現象を是正するための、様々な取り組みがなされなければならない。しかし、膨張パーライトの品質がバッチ間で差があるため、制御することは実際には困難である。結果として、軽量化剤として膨張パーライトを用いて製造したMOC製品は、物理的性質に大きなばらつきがある。最悪の場合、硬化工程の間に種々の凝結収縮や乾燥収縮を誘発し、ひいては変形やクラッキングを生じる。
【0026】
本発明のMOCは、リン酸または対応する塩を含む。いくつかの態様では、耐水性を向上させるため、少なくとも一つのさらなる安定化剤、特に、有機酸、アルキルケイ酸塩、疎水性シリコンおよびシロキサン化合物、およびそれらの混合物の群から選択される安定化剤を含んでもよい。
【0027】
本発明のMOCは、例えば、
− 7〜50重量%、好ましくは20重量%以上の反応性MgO
− 3〜20重量%、好ましくは8重量%以上のMgCl2
− 9〜50重量%、好ましくは28重量%以上のH2
− P25として計算して、0.05〜5重量%のリン酸または対応する塩
− 1〜80重量%の剥離バーミキュライト、および
− 0〜20重量%の機能性添加剤またはフィラー
を混合することによって得られる。
【0028】
リン酸または対応する塩の好適な量は、P25として計算して、0.05〜5重量%であり、好ましくは0.05〜1重量%である。好ましい塩は、オルトリン酸、リン酸三ナトリウムおよびその水和物、ポリリン酸ナトリウムおよびその水和物、リン酸アルミニウムおよびその水和物、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
好適な機能性添加剤またはフィラーは、CaCO3、火力発電所からのフライアッシュ、火力発電所からのボトムアッシュ、製材粉塵(saw dust)、シリカ・フューム、マイカおよび膨張パーライト、発泡剤および/または空気連行剤、セルロースファイバー、短グラスファイバー、グラスファイバーマットおよびそれらの混合物の群から選択される。
【0030】
さらなる機能性添加剤は、塩酸等の凝結促進剤、硫酸等の凝結遅延剤、発泡剤、空気連行剤、撥水剤、超可塑剤、およびそれらの混合物である。
【0031】
本発明の材料において、PVC、PVAおよび/またはEVA等の有機ポリマーは、さらに一層水分の移動(hydric movement)を向上させ、白華および発汗を制限するために使用され得る。
【0032】
本発明の材料では、MOC材料のアルカリ度が低いことから、強化のために、E−グラスファイバーを使用し得る。例えば、グラスファイバーマットで強化された2つのトップスキンと、本発明のMOC材料に基づいた軽量混合物を用いたコアとのサンドイッチ構造は、ビル建築および防火システムに、特に有利に適用される。
【0033】
膨張パーライトは、遮音性を向上するために本発明の組成物に追加的に添加され得る。
【0034】
本発明の材料に、従来の発泡剤および空気連行剤を適用して、300〜800kg/m3の密度を有する超軽量構造を製造し得る。好適な発泡剤は、例えばH22である。
【0035】
ビル建設のための他の従来のフィラーは、本発明のMOC材料に使用され得る。それらのフィラーは一般的に機械的強度を向上させ、同時に本発明のMOC材料の総費用を削減する。
【0036】
本発明のMOC製品は、膨張パーライトに基づく製品より良好な均一性を有する。剥離バーミキュライトとMgCl2水溶液との間の良好な親和性の結果、MOCスラリー中のバーミキュライトの分布は、加工の間、混合物の容量全体にわたって均一である。
【0037】
本発明のMOC製品は、曲げ強度、表面硬度が高く、耐水性が良好で、熱収縮が少なく、高温耐性がある。
【0038】
本材料は、従来のMOC材料よりも良好な炭酸化に対する耐性を有する、より均一な構造を有する。このことは、剥離バーミキュライトにおいて相との相互作用によって、残余MgCl2が結合することにより可能となる。
【0039】
本材料は、天井、パーテーション、エアダクト等の、ビルおよび防火適用に、特に好適である。火を適用した際のHClの放出は、腐食性のため不利である。従って、加熱の間のHCl放出が低減されたMOC材料を提供することも、本発明の目的である。
【0040】
本発明のCCM(MgO)は、マグネサイト鉱石(MgCO3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)または海水(食塩水(braine))の焼成によって得ることができる。焼成マグネサイトは好ましい原料であり、CCMの好適な焼成温度は600〜1000℃の範囲であり、好ましくは700〜900℃の間である。好適な粒径は100〜200メッシュの範囲である。
【0041】
MgCl2水溶液は、MgCl2またはその水和物を水に溶解することによって調製することができる。MgCl2.6H2Oが好ましい形態である。これは全世界で販売されており、使用し易い。MgCl2水溶液の好適な濃度は、以下の式で計算して、18〜30ボーメの間であり、好ましくは20〜25ボーメの間である。
d=m−m/s (3)
ここで、dはボーメ度であり、m=145であり、sは溶液の比重である。
【0042】
本発明の第二の態様は、0.1〜20重量%の量のカルサイト(CaCO3)を含むオキシ塩化マグネシウムセメント(MOC)組成物である。
【0043】
驚くべきことに、カルサイトの存在により、火災の際の材料からのHClの放出が減少する。HClは腐食性であり、例えば電気設備を損傷する可能性がある。また、火の近くの人に危険な場合もある。
【0044】
好ましくは、カルサイトの粒子サイズは0〜200μmであり、好ましくは5〜100μmである。
【0045】
本発明の第三の態様は、本発明のMOCを鋳造またはスプレーすることによって得られる製品である。
【0046】
本発明の第四の態様は、7〜50重量%の反応性MgO、3〜20重量%のMgCl2、9〜50重量%のH2O、0.05〜5重量%のF5安定化剤、1〜80重量%の剥離バーミキュライトおよび/または0.1〜20重量%のカルサイト、および0〜20重量%の機能性添加剤またはフィラーを混合する工程を含む、オキシ塩化マグネシウムセメント(MOC)の製造方法である。
【0047】
本発明の第五の態様は、時効安定性を向上させるための、添加剤としてのリン酸または対応する塩と併せた剥離バーミキュライトの使用である。
【0048】
本発明のさらなる態様は、火事の際のHClの放出を減少させるための、MOCマトリックスにおける添加剤としてのカルサイト(CaCO3)の使用である。
【実施例】
【0049】
以下の非限定的な実施例により、本発明を例示する。
【0050】
実施例1
粒子サイズ100メッシュの焼成苛性マグネシア、MgCl2水溶液、リン酸および剥離バーミキュライトを混合することにより、MgO 32.2%、MgCl2 12.6%、P25 0.3%、H20 41.0%、および剥離バーミキュライト13.9%と表される混合処方のMOC組成物を製造する。
【0051】
他方では、上述と同様であるが、剥離バーミキュライトの量を、剥離バーミキュライトと同等の粒子サイズ分布を有する膨張パーライトで置換した、従来のMOC組成物を製造する。
【0052】
平床式ミキサーで10分間混合した後、得られる混合物を鋳型に流し込む。遮蔽条件下、20℃で1日間、硬化を実施し、その後サンプルを型から外し、開放条件下、20℃で7日間放置する。
【0053】
気候室において、100%CO2環境中、7日間、40℃、相対湿度95%に材料を置くことによって、サンプルの促進時効試験を実施した。
【0054】
時効試験前後の結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例2
粒子サイズ100メッシュの焼成苛性マグネシア、MgCl2水溶液、リン酸および剥離バーミキュライトを混合することにより、MgO 28.8%、MgCl2 13.3%、P25 0.4%、H20 43.4%、および剥離バーミキュライト14.1%と表される混合処方の本発明のMOC組成物を製造する。
【0057】
硬化条件は、実施例1と同様であった。
【0058】
400mm×400mm×15mmのサンプルを作る。硬化後、400mm×40mm×15mmの10個のより小さいサンプルにカットし、曲げ強度、密度およびそれらの標準偏差について、混合物の均一性を試験する。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

* SDTEV = 標準偏差
【0060】
本発明のサンプルは、強度が高く、かつ、かさ密度におけるデータの拡散が1.2%と非常に小さいことが測定される均一な混合物である。950℃での熱収縮は非常に小さい。
【0061】
対照的に、従来のMOCのサンプルは、曲げ強度がより小さく、かさ密度における変動が5.1%とより大きい(厚さにおける材料分離に加えて)。最終的に950℃で膨張し、温度処理の後、構造が緩み、壊れたように見える。
【0062】
実施例3
粒子サイズ100メッシュの焼成苛性マグネシア、MgCl2水溶液、リン酸および剥離バーミキュライトを混合することにより、MgO 25.9%、MgCl2 12.0%、P25 0.3%、H20 39.1%、剥離バーミキュライト12.7%、およびCaCO3(カルサイト)10.0%と表される混合処方の、向上した性能を有する本発明のMOCボードを製造する。
【0063】
他方では、上述と同様であるが、剥離バーミキュライトの量を、剥離バーミキュライトと同等の粒子サイズ分布を有する膨張パーライトで置換した、従来のMOC組成物を製造する。
【0064】
サンプルの硬化および乾燥は、実施例2に示す。
【0065】
燃焼試験を実施する。ボードの熱面を、ISO834基準に従い温度が上昇する炎に曝し;一方、冷面は20℃の空気に曝す。
【0066】
燃焼試験20分で炎の温度は780℃であり、冷面のサンプルから1mのところでの、参照ボードと改良されたボードのHCl放出は、それぞれ10ppmおよび0ppmと測定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 苛性焼成マグネシア
− 塩化マグネシウム
− リン酸または対応する塩
− 剥離バーミキュライト
を含む、オキシ塩化マグネシウムセメント(MOC)組成物。
【請求項2】
機能性添加剤またはフィラーおよび/または更なる安定化剤を更に含む、請求項1に記載のMOC。
【請求項3】
バーミキュライト量が1〜80重量%であり、好ましくは1〜30重量%であり、より好ましくは1〜20重量%または5〜20重量%である、請求項1または2に記載のMOC。
【請求項4】
MOCが、耐水性を向上するための少なくとも1つの更なる安定化剤、特に、有機酸、アルキルケイ酸塩、疎水性シリコンおよびシロキサン化合物、およびそれらの混合物の群から選択される安定化剤、を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のMOC。
【請求項5】
MOCが、
− 7〜50重量%の反応性MgO
− 3〜20重量%のMgCl2
− 9〜50重量%のH2
− P25として計算して、0.05〜5重量%のリン酸または対応する塩
− 1〜80重量%の剥離バーミキュライト、および
− 0〜20重量%の機能性添加剤またはフィラー
を混合することによって得られる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のMOC。
【請求項6】
対応する塩が、オルトリン酸、リン酸三ナトリウムおよびその水和物、ポリリン酸ナトリウムおよびその水和物、リン酸アルミニウムおよびその水和物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のMOC。
【請求項7】
機能性添加剤が、塩酸等の凝結促進剤、硫酸等の凝結遅延剤、発泡剤、空気連行剤、撥水剤、超可塑剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のMOC。
【請求項8】
剥離バーミキュライトが、0.300g/cm3未満、好ましくは0.050〜0.200g/cm3の間の、好ましくは0.100〜0.150g/cm3の間のかさ密度を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のMOC。
【請求項9】
機能性添加剤またはフィラーが、CaCO3、火力発電所からのフライアッシュ、火力発電所からのボトムアッシュ、製材粉塵、膨張パーライト、発泡剤および/または空気連行剤、セルロースファイバー、短グラスファイバー、グラスファイバーマット、シリカ・フューム、タルク、製材粉塵、マイカ、およびそれらの混合物の群からなる群から選択される、請求項5〜8のいずれか1項に記載のMOC.
【請求項10】
0.1〜20重量%の量のカルサイト(CaCO3)を含むオキシ塩化マグネシウムセメント(MOC)組成物。
【請求項11】
カルサイトが、0〜200μm、好ましくは5〜100μmの粒子サイズを有する、請求項9または10のMOC。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項のMOCを鋳造またはスプレーすることによって得られる製品。
【請求項13】
7〜50重量%の反応性MgO、3〜20重量%のMgCl2、9〜50重量%のH2O、P25として計算して0.05〜5重量%のリン酸または対応する塩、1〜80重量%の剥離バーミキュライトおよび/または0.1〜20重量%のカルサイト、および0〜20重量%の機能性添加剤またはフィラーを混合する工程を含む、オキシ塩化マグネシウムセメント(MOC)の製造方法。
【請求項14】
時効安定性を向上させるための、MOCにおける添加剤としてのリン酸または対応する塩と併せた剥離バーミキュライトの使用。
【請求項15】
火事の際のHCl放出を減少させるための、MOCマトリックスにおける添加剤としてのカルサイト(CaCO3)の使用。

【公表番号】特表2011−520753(P2011−520753A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509951(P2011−509951)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056038
【国際公開番号】WO2009/141325
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510306948)プロマト リサーチ アンド テクノロジー センター ナムローゼ フェンノートシャップ (1)
【Fターム(参考)】