説明

耐久防汚性繊維製品の製造方法

【課題】繊維製品に対する汚れが付着しにくく、且つ付着した汚れは洗濯によって落ちやすい耐久防汚性繊維製品を製造するための方法を提供する。
【解決手段】(A)スルホイソフタル酸又はその誘導体を重縮合成分として1〜40質量%含有する水性液(B)(a)フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(b)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、(c)3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び(d)グリセロールモノ(メタ)アクリレートから誘導される構成単位を含有するフッ素系アクリル共重合体を含む水性液、並びに(C)メラミン樹脂系架橋剤、イソシアネート系架橋剤及びグリオキザール樹脂系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を繊維製品に付与し、乾燥させることを特徴とする耐久防汚性繊維製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久防汚性繊維製品の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は繊維製品に付着した汚れ、特に油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れの脱離性に優れる耐久防汚性繊維製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より繊維製品等に対して、繊維に汚れを付着しにくくしたり、また繊維に付着した汚れを洗濯等によって除去しやすくする防汚加工が行われている。このような繊維製品の防汚加工方法として、ポリオキシアルキレングリコール等のジオール成分とジカルボン酸成分を重縮合して得られる親水性ポリエステル樹脂を含有する防汚加工剤による加工方法が開示されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかしながらこれらの防汚加工剤では、繊維製品の素材の種類や汚れの種類によっては、洗濯耐久性のみならず初期の汚れ脱離性においても必ずしも十分に満足できるものではなかった。例えば、これらの防汚加工剤は、水性汚れ(ソース、醤油、ジュース等)の離脱性や油成分汚れ(重油、サラダ油等)の洗濯再汚染防止性には優れるが、油成分汚れの離脱性に対しては必ずしも充分には満足できなかった。更には、油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れ(ダーティーモーターオイル、口紅等)の脱離性についてはほとんど効果がなかった。
【0004】
また、繊維製品等に対して撥水撥油性を付与することで、繊維に汚れを付着しにくくしたり、あるいは繊維に付着した汚れを洗濯等によって除去しやすくする防汚加工が行われている。この時用いられる防汚加工剤としては、パーフルオロアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルと、ポリオキシアルキレン基等の親水性基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルと、これらと共重合可能な他の単量体とを共重合させた共重合体が提案されている(特許文献3)。
【0005】
しかしながらこれらの防汚加工剤でも、繊維製品の素材の種類や汚れの種類によっては、洗濯耐久性のみならず初期の汚れ脱離性においても必ずしも充分に満足できるものではなかった。例えば、これらの防汚加工剤は、水性汚れの汚れ付着防止、汚れ離脱性や油成分汚れの汚れ付着防止、汚れ離脱性には優れるものの、洗濯再汚染防止性に対しては必ずしも充分には満足できなかった。更には、油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れの脱離性についても不十分であった。
【0006】
更に、繊維製品に親水性樹脂を処理した後に、親水性基を有する撥水撥油剤を処理するという防汚加工方法も提案されている(特許文献4、特許文献5)。
【0007】
しかしながら、この加工方法は親水性樹脂の処理によって親水性を付与し、撥水撥油剤によって撥水撥油性を付与するという背反的な技術である。この為、親水性樹脂による親水性を付与するという効果は、撥水撥油剤によって撥水性を付与するという効果によって低減され、他方、撥水撥油剤によって撥水性を付与するという効果は、親水性樹脂によって親水性を付与するという効果によって低減される。よって、繊維に汚れが付着しにくくなる効果や、付着した汚れが洗濯で落ちやすくなる効果は、親水性樹脂や撥水撥油剤をそれぞれ単独で用いた場合の効果に比べて劣るという現象が現れる。更に、親水性樹脂を処理した後に、親水性基を有する撥水撥油剤を処理するので、架橋剤を併用した場合でも洗濯耐久性が劣るという欠点も生じ、また、親水性樹脂の処理と撥水撥油剤の処理を同時に行った場合には、繊維の同一表面層に親水性樹脂と撥水撥油剤が混在するために、充分な防汚性が得られなかった。
【0008】
このように、特許文献4や特許文献5に記載された防汚加工方法であっても、繊維製品の素材の種類や汚れの種類によっては、洗濯耐久性のみならず初期の汚れ脱離性においても必ずしも充分に満足できるものではなかった。例えば、この防汚加工方法では、水性汚れ及び油成分汚れの汚れ付着防止、汚れ離脱性、洗濯再汚染防止性には優れるものの、油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れの脱離性については不十分であった。
【特許文献1】特開昭57−5983号公報
【特許文献2】特開平4−343766号公報
【特許文献3】特開平6−116340号公報
【特許文献4】特開昭64−6178号公報
【特許文献5】特開平9 −3771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、繊維製品に付着した汚れ、特にダーティーモーターオイルや口紅等の油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れに対して、汚れを付着しにくくし且つ付着した汚れは洗濯によって落ちやすくし、そしてこれらの効果の洗濯耐久性にも優れる耐久防汚性繊維製品を製造するための方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、繊維製品に特定の構造を有するポリエステル樹脂を含む水性液、特定の構造を有するフッ素系アクリル共重合体を含む水性液及び特定の架橋剤を付与し、乾燥させて得られた繊維製品が、水性汚れや油成分汚れに加えて、ダーティーモーターオイルや口紅等の油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れに対しても、汚れが付着しにくく、また付着した汚れは洗濯によって落ちやすいという防汚性に優れており、その効果が洗濯耐久性にも優れていることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法は、
(A)スルホイソフタル酸又はその誘導体を重縮合成分として1〜40質量%含有する下記一般式[1]:
【0012】
【化1】

【0013】
{式[1]中、R1はHO−又はHO(R2O)a−であり、R2は炭素数2〜4のアルキレン基であって、R2Oは1種のみであっても、2種以上のR2Oがランダム状又はブロック状に付加していてもよく、aは1〜200の整数であって、同一分子内において、aはすべて同一であっても、異なっていてもよく、bは2〜100の整数であり、R3は水素原子又は下記一般式[2]:
【0014】
【化2】

【0015】
(式[2]中、Rは水素原子、カルボキシル基又は−SOXであって、Xは水素原子又はアルカリ金属である。)
で表される基であり、Rは水素原子、カルボキシル基又は−SOXであって、Xは水素原子又はアルカリ金属である。}
で表されるポリエステル樹脂を含む水性液、
(B)(a)フルオロアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、(b)ポリアルキレングリコールアクリレート又はポリアルキレングリコールメタクリレート、(c)3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び(d)グリセロールモノアクリレート又はグリセロールモノメタクリレートから誘導される構成単位を含有するフッ素系アクリル共重合体を含む水性液、並びに、
(C)メラミン樹脂系架橋剤、イソシアネート系架橋剤及びグリオキザール樹脂系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋剤、
を繊維製品に付与し、乾燥させることを特徴とする方法である。
【0016】
本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法においては、前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましく、また、前記フッ素系アクリル共重合体の重量平均分子量が1,000〜500,000であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法においては、前記フッ素系アクリル共重合体100質量部に対して、前記ポリエステル樹脂が10〜300質量部となるように前記水性液(A)及び前記水性液(B)を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法により得られる耐久防汚性繊維製品は、繊維製品に付着した汚れ、特にダーティモーターオイル、口紅等の油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れに対して、汚れが付着しにくく、また付着した汚れも洗濯によって落ちやすいという防汚性に優れており、そしてその性能は高水準の洗濯耐久性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0020】
本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法は、繊維製品に(A)特定のポリエステル樹脂を含む水性液、(B)特定のフッ素系アクリル共重合体を含む水性液、並びに(C)メラミン樹脂系架橋剤、イソシアネート系架橋剤及びグリオキザール樹脂系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を付与し、乾燥させることを特徴とする方法である。
【0021】
先ず、本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法で用いる特定のポリエステル樹脂を含む水性液(A)について説明する。
【0022】
本発明において用いられるポリエステル樹脂は、スルホイソフタル酸又はその誘導体を重縮合成分として1〜40質量%(より好ましくは2〜35質量%)含有しているものであり、下記一般式[1]で表されるものである。前記スルホイソフタル酸又はその誘導体の含有率が1質量%未満の場合には防汚性が劣り、他方、40質量%を超えると洗濯耐久性が低下して、防汚性が低下する。
【0023】
【化3】

【0024】
ここで、前記一般式[1]中、R1はHO−又はHO(R2O)a−であり、R2は炭素数2〜4のアルキレン基であって、R2Oは1種のみであっても、2種以上のR2Oがランダム状又はブロック状に付加していてもよく、aは1〜200の整数であって、同一分子内において、aはすべて同一であっても、異なっていてもよく、bは2〜100の整数であり、R3は水素原子又は下記一般式[2]で表される基であり、Rは水素原子、カルボキシル基又は−SOXであって、Xは水素原子又はアルカリ金属である。
【0025】
【化4】

【0026】
ここで、前記一般式[2]中、Rは水素原子、カルボキシル基又は−SOXであって、Xは水素原子又はアルカリ金属である。
【0027】
本発明に用いる前記一般式[1]で表されるポリエステル樹脂は、スルホイソフタル酸又はその誘導体を必須の重縮合成分として、その他の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体及び一般式
HO−(R2O)a−H で表されるグリコールを重縮合成分とし、従来公知の方法により製造することができる。そしてこれらの重縮合成分の全体量に対して、スルホイソフタル酸又はその誘導体を1〜40質量%含有することを特徴とするものである。
【0028】
本発明に用いるスルホイソフタル酸又はその誘導体としては、スルホイソフタル酸、スルホン基がアルカリ金属塩のスルホイソフタル酸塩、及びこれらスルホイソフタル酸又はスルホイソフタル酸塩の低級アルキルエステル化物、ヒドロキシエチルエステル化物、ヒドロキシプロピルエステル化物等が挙げられ、具体的には、スルホイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホイソフタル酸カリウム塩、スルホイソフタル酸ジメチルエステル、スルホイソフタル酸ジエチルエステル、スルホイソフタル酸ジプロピルエステル、スルホイソフタル酸ジブチルエステル、スルホイソフタル酸ジメチルエステルナトリウム塩、スルホイソフタル酸ジエチルエステルナトリウム塩、スルホイソフタル酸ジプロピルエステルナトリウム塩、スルホイソフタル酸ジブチルエステルナトリウム塩、スルホイソフタル酸ジメチルエステルカリウム塩、スルホイソフタル酸ジエチルエステルカリウム塩、スルホイソフタル酸ジプロピルエステルカリウム塩、スルホイソフタル酸ジブチルエステルカリウム塩、スルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルエステル、スルホイソフタル酸ジヒドロキシプロピルエステル、スルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルエステルナトリウム塩、スルホイソフタル酸ジヒドロキシプロピルエステルナトリウム塩、スルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルエステルカリウム塩、スルホイソフタル酸ジヒドロキシプロピルエステルカリウム塩等の重縮合可能誘導体を挙げることができる。これらのスルホイソフタル酸又はその誘導体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
本発明に用いるその他の芳香族多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。またその誘導体としては、前記芳香族多価カルボン酸の無水物、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル等の低級アルキルエステル化物、ジヒドロキシエチルエステル化物、ジヒドロキシプロピルエステル化物及び酸クロライド化物等の重縮合可能誘導体を挙げることができる。その他の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体としては、テレフタル酸又はその誘導体を使用することが好ましい。そしてこれらのその他の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
本発明に用いる一般式 HO−(R2O)a−H
で表されるグリコールには、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールが挙げられ、アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。これらのアルキレングリコールは、1種を単独で使用することができ、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、ポリアルキレングリコールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、両末端が水酸基であるエチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム状又はブロック状共重合体等を挙げることができ、これらのポリアルキレングリコールは、1種を単独で使用することができ、2種以上を組み合わせて使用することもできる。中でもポリエチレングリコールが好ましく、平均分子量1000〜6000のポリエチレングリコールがさらに好ましい。
【0031】
前記一般式[1]において、aは1〜200の整数であって、より好ましくは1〜150の整数である。aが200を超えると、一般式[1]で表されるポリエステル樹脂の粘度が高くなり過ぎて、取り扱いが容易でなくなる。一般式[1]で表されるポリエステル樹脂は、例えば、スルホイソフタル酸ナトリウム塩、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の多価カルボン酸のジメチルエステルと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルキレングリコール、さらには一定の分子量を有するポリエチレングリコール等を反応し、脱メタノール、脱アルキレングリコール等を伴うエステル交換反応を行って重縮合することにより製造することができる。
【0032】
また、一般式[1]で表されるポリエステル樹脂は、例えば、スルホイソフタル酸ナトリウム塩、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の多価カルボン酸のジヒドロキシエチルエステル又はジヒドロキシプロピルエステルと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルキレングリコール、さらには、一定の分子量を有するポリエチレングリコール等を反応し、脱エチレルングリコール又は脱プロピレングリコール等を伴うエステル交換反応を行って重縮合することにより製造することができる。一般式[1]において、bは2〜100の整数であり、より好ましくは2〜30の整数である。bが100を超えると、一般式[1]で表されるポリエステル樹脂の粘度が高くなり過ぎて、取り扱いが容易でなくなる。
【0033】
本発明において、前記一般式[1]で表されるポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1,000〜50,000であることが好ましく、5,000〜20,000であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の重量平均分子量が1,000未満であると、汚れ脱離効果が十分に発揮されなくなる傾向にある。他方、ポリエステル樹脂の重量平均分子量が50,000を超えると、ポリエステル樹脂の粘度が高くなり過ぎて、取り扱いが容易でなくなる傾向にある。なお、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、分子量既知の単分散のポリエチレングリコールを測定標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めることができる。
【0034】
本発明にかかる水性液(A)は、上述のポリエステル樹脂を含む水性液であり、このような水性液は水溶液であっても懸濁液(分散液)であってもよい。本発明にかかる水性液(A)における溶媒は、特に制限されないが、少なくとも50質量%以上の水を含有するものが好ましく、水以外の溶媒としては、DMF、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。また、本発明にかかる水性液(A)におけるポリエステル樹脂の含有量も特に制限されないが、5〜40質量%程度であることが好ましい。
【0035】
次に、本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法で用いる特定のフッ素系アクリル共重合体を含有する水性液(B)について説明する。
【0036】
本発明において用いるフッ素系アクリル共重合体は、(a)フルオロアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、(b)ポリアルキレングリコールアクリレート又はポリアルキレングリコールメタクリレート、(c)3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び(d)グリセロールモノアクリレート又はグリセロールモノメタクリレートから誘導される構成単位を含有するものであり、重量平均分子量が1,000〜500,000の共重合体であることが好ましい。
【0037】
単量体(a)に用いるフルオロアルキル基を含有するアクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルに特に制限はないが、フルオロアルキル基の炭素数が3〜20であることが好ましい。単量体(a)の具体例は以下の通りである。
CF(CFCHOCOC(CH)=CH
CF(CF(CHOCOC(CH)=CH
CF(CF(CHOCOCH=CH
(CFCF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CFSON(C)(CHOCOCH=CH
CF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CFSON(CH)(CHOCOC(CH)=CH
CF(CFSON(C)(CHOCOCH=CH
CF(CFCONH(CHOCOCH=CH
(CFCF(CF(CHOCOCH=CH
(CFCF(CFCHCH(OCOCH)OCOC(CH)=CH
(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH
CF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CF(CHOCOC(CH)=CH
CF(CFCONH(CHOCOC(CH)=CH
(CF)(CFCl)CF(CFCONH(CHOCOCH=CH
H(CF10CHOCOCH=CH
CFCl(CF10CHOCOC(CH)=CH
CF(CFCHCHOCHCHOCOCH=CH
(CF)(CFCl)CF(CF)CONH(CHOCOC(CH)=CH
CFCFCHCH(OH)CHOCHCHOCOCH=CH
【0038】
また、単量体(b)のポリアルキレングリコールアクリレート又はポリアルキレングリコールメタクリレートとしては、下記一般式[3]で表されるものが好ましい。
【0039】
C=CR−COO(RO) ・・・[3]
ここで、前記一般式[3]中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数2〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜21の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、nは3〜50の整数である。
【0040】
勿論一般式[3]中のR、R、Rの種類やnの異なる2種以上の混合物の形態でも構わない。一般式[3]中のRとしては、−CHCH−、−CH(CH)CH−が好ましく、これらを配合したものが更に好ましい。nは3〜50の整数であるが、6〜25の整数であることがより好ましい。単量体(b)の具体例は以下の通りである。
CH=C(CH)COO(CHCHO)3−9
CH=C(CH)COO(CHCHO)
CH=C(CH)COO(CHCHO)
CH=CHCOO(CHCH(CH)O)11CH
CH=C(CH)COO(CHCHO)(CHCH(CH)O)
CH=C(CH)COO(CHCHO)CH
CH=C(CH)COO(CHCHO)23CH
CH=C(CH)COO(CHCHO)40H 。
【0041】
更に、単量体(c)の3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとしては、下記一般式[4]で表されるものが好ましい。
【0042】
CH=C(R)COOCHCH(OH)CHCl ・・・[4]
ここで、前記一般式[4]中、Rは水素原子又はメチル基である。
【0043】
また、単量体(d)のグリセロールモノアクリレート又はグリセロールモノメタクリレートとしては、下記一般式[5]で表されるものが好ましい。
【0044】
CH=C(R10)COOCHCH(OH)CHOH ・・・[5]
ここで、前記一般式[5]中、R10は水素原子又はメチル基である。
【0045】
本発明に用いるフッ素系アクリル共重合体において、各単量体の共重合割合は以下のような割合であることが好ましい。すなわち、単量体(a)の共重合割合は、少なくとも25質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。25質量%未満では、撥水撥油性、防汚性が不充分となる傾向にある。また、単量体(b)の共重合割合は、少なくとも15質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。15質量%未満では、水に対する分散性がよくなく、洗濯耐久性、防汚性が不充分となる傾向にある。さらに、単量体(c)の共重合割合は、少なくとも0.5質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であることがより好ましい。また、単量体(d)の共重合割合は、少なくとも0.5質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であることがより好ましい。単量体(c)と単量体(d)の合計の共重合割合は、少なくとも5質量%、8〜30質量%であることが好ましい。5質量%未満では、汚れ脱離性および洗濯耐久性が不充分となる傾向にある。また、単量体(c)及び単量体(d)の合計に対する単量体(c)の割合は、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。10質量%未満、又は90質量%より多く含まれると、洗濯耐久性が不充分となる傾向にある。
【0046】
本発明に用いるフッ素系アクリル共重合体の重量平均分子量は、1,000〜500,000であることが好ましく、特に5,000〜200,000であることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満では洗濯耐久性が十分でなく、他方、500,000を超えると水性液の粘度が高すぎて作業性が低下する傾向にある。なお、フッ素系アクリル共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算により求めた値である。また、本発明に用いるフッ素系アクリル共重合体は、ランダム共重合であっても、ブロック共重合であってもよい。
【0047】
本発明のフッ素系アクリル共重合体には、単量体(a)、(b)、(c)及び(d)の他に、その他の単量体としてアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、エチレン、塩化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、スチレン、アクリル酸又はメタアクリル酸のアルキル(C〜C21)エステル、ベンジルメタクリレート、ビニルアルキルケトン、ビニルアルキルエーテル、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、グリシジルアクリレート、ポリオキシレンジアクリレート、トリメトキシシリルアクリレート、ブロック化イソシアネート基含有アクリレート、N−メチロールメタアクリルアミド、ジアセトンメタアクリルアミド、グリシジルメタアクリレート、ポリオキシレンジメタアクリレート、トリメトキシシリルメタアクリレート、ブロック化イソシアネート基含有メタアクリレート等のようなフルオロアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルと共重合可能なフッ素を含まない他の単量体を共重合することができる。これらフッ素を含まない他の単量体の量は、0〜40質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。
【0048】
本発明において、前記のフッ素系アクリル共重合体を得るための製造方法としては、従来公知の共重合法を適用することができる。
【0049】
本発明にかかる水性液(B)は、上述のフッ素系アクリル共重合体を含む水性液であり、このような水性液は水溶液であっても懸濁液(分散液)であってもよい。本発明にかかる水性液(B)における溶媒は、特に制限されないが、少なくとも1質量%以上の水を含有するものが好ましく、水以外の溶媒としては、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、アセトン、トリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール等が挙げられる。また、本発明にかかる水性液(B)におけるフッ素系アクリル共重合体の含有量も特に制限されないが、5〜50質量%程度であることが好ましい。
【0050】
本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法おいて、前記フッ素系アクリル共重合体と前記ポリエステル樹脂との使用割合は、フッ素系アクリル共重合体100質量部に対して、ポリエステル樹脂が10〜300質量部となるように使用することが好ましく、20〜200質量部となるように使用することが更に好ましく、30〜100質量部となるように使用することが最も好ましい。ポリエステル樹脂の使用量が10質量部未満の場合には、十分な汚れ脱離性及び洗濯耐久性を発現させることができない傾向にあり、他方、300質量部を超えて使用しても使用量に見合う効果は得られず、コスト的に不利となる傾向にある。
【0051】
また、フッ素系アクリル共重合体は樹脂成分で繊維製品に対して0.2〜2質量%付与することが好ましく、風合、性能、経済性を考慮して0.3〜1.5質量%付与することがさらに好ましい。
【0052】
本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法においては、前記ポリエステル樹脂、前記フッ素系アクリル共重合体に加えて、メラミン樹脂系架橋剤、イソシアネート系架橋剤及びグリオキザール樹脂系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を付与することで耐久性が向上する。これらの架橋剤の中でメラミン樹脂系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを併用することが、より耐久性を向上させる観点から好ましい。これら架橋剤の使用量は、メラミン樹脂系架橋剤、イソシアネート系架橋剤の場合には、有効成分で繊維製品に対して0.05〜1質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。架橋剤の使用量が0.05質量%未満では洗濯耐久性に劣り、1質量%より多いと風合いが硬くなる傾向にある。また、グリオキザール樹脂系架橋剤の場合の使用量は、有効成分で繊維製品に対して0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。架橋剤の使用量が0.5質量%未満では洗濯耐久性に劣り、10質量%より多いと風合いが硬くなる傾向にある。
【0053】
本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法においては、その他の架橋剤として、エポキシ樹脂系架橋剤、シランカップリング剤系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等を併用することも可能である。
【0054】
本発明に用いるメラミン樹脂系架橋剤としては、トリメチロール系メラミン、ヘキサメチロール系メラミン等が挙げられ、これらのメチロール系メラミンにはメチロール基の水素がアルキル基に置換された、アルコキシメチロール基を含んでいても良い。これらメラミン樹脂系架橋剤の中で、トリメチロール系メラミンを使用することが好ましい。
【0055】
また、これらのメラミン樹脂系架橋剤を使用する時には、有機アミン塩系触媒、第二リン酸アンモン、塩化アンモン等の触媒を併用することにより反応性を向上させることができ、更に耐久性が向上する。これら触媒の中で有機アミン塩系触媒の使用が好ましく、触媒の使用量は、メラミン樹脂系架橋剤に対して1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。触媒の使用量がメラミン樹脂系架橋剤に対して1質量%未満ではメラミン樹脂の反応性に劣り洗濯耐久性が低下し、また未反応のメラミン樹脂が残存すると臭気の問題が発生する傾向にある。他方、触媒の使用量がメラミン樹脂系架橋剤に対して10質量%より多いと、メラミン樹脂の反応性は良いが、特に有機アミン塩系触媒は防汚性を低下させる傾向にある。
【0056】
本発明に用いるイソシアネート系架橋剤としては、水に乳化分散できるものであればよく、特に制限はない。イソシアネート系架橋剤の製造に用いられる芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられ、脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられ、脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネートの中でも、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートを用いると、処理後の繊維製品の黄変が見られないので好ましい。
【0057】
また、前記のポリイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートもイソシアネート系架橋剤として用いることができ、2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビウレット構造、イソシアネレート構造、ウレタン構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、三量体構造等を有するポリイソシアネート、トリメチロールプロパンの脂肪族イソシアネートのアダクト体等が挙げられる。これらのポリイソシアネートは、従来公知の方法により製造することができる。
【0058】
また、本発明に用いるイソシアネート系架橋剤としては、イソシアネート基を遊離するいわゆるブロックドイソシアネート化合物であってもよい。ここで、ブロックドイソシアネート基のブロック化剤としては、アルキルケトオキシム類、フェノール類、アルコール類、β−ジケトン類、ラクタム類が好ましく、メチルエチルケトオキシム、ε−カプロラクタム、フェノール、クレゾール、アセチルアセトン、マロン酸ジエチル、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、マレイン酸イミド等が特に好ましく、とりわけ、メチルエチルケトオキシムからなるブロック化剤がより好ましい。
【0059】
また、本発明に用いるイソシアネート系架橋剤は、水性ポリイソシアネート化合物であってもよい。用いられる水性ポリイソシアネート化合物は、水に乳化分散できるものであれば特に制限はないが、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート及びこれらから誘導されるポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種に、アルキレンオキサイド鎖を結合させた化合物であることが好ましく、さらに必要に応じて親油性鎖を結合させても良い。このような水性ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基の高い反応性を有するまま水溶液中でも長時間使用でき、また水への自己乳化性に優れるために、前記ポリエステル樹脂と前記フッ素系アクリル共重合体を繊維製品に付与するにあたり、その処理液中に使用することもできる。
【0060】
本発明に用いるグリオキザール樹脂系架橋剤とは、ジメチロールジヒドロキシエチレンウリア系樹脂で、メチロール基の水素がアルキル基に置換されたアルコキシメチロール基を含んでいても良い。また、これらのグリオキザール樹脂系架橋剤の使用時には、塩化マグネシウム、硝酸亜鉛等の金属塩系の触媒を併用することにより反応性が向上でき、洗濯耐久性をさらに向上することができる。これら触媒の使用量は、グリオキザール樹脂系架橋剤に対して5〜15質量%が好ましい。触媒の使用量がグリオキザール樹脂系架橋剤に対して5質量%未満ではグリオキザール樹脂の反応性に劣り洗濯耐久性が低下する傾向にあり、他方、15質量%より多いとグリオキザール樹脂の反応性は良いが触媒量が増えて風合いが硬くなる傾向にある。
【0061】
本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法において、前記ポリエステル樹脂を含む水性液と、前記フッ素系アクリル共重合体を含む水性液と、前記架橋剤とを繊維製品に付与する方法としては、特に制限されず、従来より行われている方法を適宜用いることができる。例えば、パッド法、浸漬法、噴霧法、泡加工法、コーティング法等により、前記ポリエステル樹脂を含む水性液と前記フッ素系アクリル共重合体を含む水性液と前記架橋剤とを繊維製品に付与し、その後乾燥させることが可能である。
【0062】
なお、本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法において、前記ポリエステル樹脂を含む水性液と前記フッ素系アクリル共重合体を含む水性液と前記架橋剤とを繊維製品に付与する具体的な順番等は特に制限されず、好適な方法として以下の(i)〜(iii)の方法が挙げられる。
【0063】
(i)前記ポリエステル樹脂、前記フッ素系アクリル共重合体及び前記架橋剤を含む水性液を繊維製品に付与し、乾燥させて本発明の耐久防汚性繊維製品を製造する、いわゆる一浴処理による方法。
【0064】
(ii)繊維製品に前記ポリエステル樹脂を含む水性液を付与したのちに乾燥させ、次いで前記フッ素系アクリル共重合体及び前記架橋剤を含む水性液を付与し、乾燥させて本発明の耐久防汚性繊維製品を製造する、いわゆる二浴処理による方法。
【0065】
(iii)繊維製品に前記ポリエステル樹脂を含む水性液を付与したのち、次いで前記フッ素系アクリル共重合体及び前記架橋剤を含む水性液を付与し、乾燥させて本発明の耐久防汚性繊維製品を製造する、いわゆる二浴処理による方法。
【0066】
このように、本発明においてはその具体的な製造方法は特に制限されないが、前記ポリエステル樹脂、前記フッ素系アクリル共重合体及び前記架橋剤を含む水性液を繊維製品に付与し、乾燥させて本発明の耐久防汚性繊維製品を製造する、いわゆる一浴処理による方法が、初期の汚れ脱離性の効果の点で好ましい。また、乾燥ののち、必要に応じてキュアリング(熱処理)工程を組み込んでもよい。乾燥方法については、従来より用いられている方法を制限なく用いることができ、乾熱法でも湿熱法のいずれでもよい。このような乾燥工程の際の温度も特に制限されないが、80〜140℃程度が好ましい。また、必要に応じて実施されるキュアリング(熱処理)工程の際の温度も特に制限されないが、150〜200℃程度が好ましい。
【0067】
本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法によれば、スルホイソフタル酸又はその誘導体を重縮合成分として1〜40質量%含有させてアニオン性を強くしたポリエステル樹脂を繊維製品に付与することで、前記フッ素系アクリル共重合体を付与しても、ポリエステル樹脂が有する親水性を付与する効果が低減されないため、付着した汚れを洗濯で落ちやすくするというポリエステル樹脂による優れた効果が効率良く且つ確実に発現される。また、前記フッ素系アクリル共重合体が有する汚れを付着しにくくする効果が低減されることなく、一旦付着した汚れも、前記フッ素アクリル共重合体が有する親水性基による洗濯液を取り込みやすくする能力が、前記のアニオン性を強くしたポリエステル樹脂によって助長されて、付着した汚れは洗濯により落ちやすくなる。よって、前記ポリエステル樹脂と前記のフッ素系アクリル共重合体とを繊維製品に付与しても、お互いの効果である、汚れの付着しにくさ、汚れ脱離性が低減されることなく、むしろ相乗効果が発揮されて、従来にない優れた防汚性繊維製品を得ることができるようになる。そのため、本発明によれば、従来においては防汚性の効果が不十分であったダーティーモーターオイルや口紅等の油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れに対しても十分な効果が達成される。
【0068】
また、本発明では、スルホイソフタル酸又はその誘導体を重縮合成分として1〜40質量%含有させてアニオン性を強くしたポリエステル樹脂を使用することによって、特許文献4や特許文献5に開示されているような、繊維製品に親水性樹脂を先に付与し、その後フッ素系アクリル共重合体を付与するという加工方法に限定されることはなく、本発明の製造方法においては、前記ポリエステル樹脂、前記フッ素系アクリル共重合体及び前記架橋剤を同時に処理することによってより優れた防汚性の効果が得られる。
【0069】
また、本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法では、スルホイソフタル酸又はその誘導体を重縮合成分として1〜40質量%含有させてアニオン性を強くした上記一般式[1]で表されるポリエステル樹脂を含む水性液、並びに(a)フルオロアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、(b)ポリアルキレングリコールアクリレート又はポリアルキレングリコールメタクリレート、(c)3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び(d)グリセロールモノアクリレート又はグリセロールモノメタクリレートから誘導される構成単位を含有するフッ素系アクリル共重合体を含む水性液に加えて、メラミン樹脂系架橋剤、イソシアネート系架橋剤及びグリオキザール樹脂系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を繊維製品に付与することによって、ダーティーモーターオイルや口紅等の油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れに対する防汚性についても洗濯耐久性を向上させることができ、従来得ることのできなかった防汚性能の洗濯耐久性に優れた繊維製品を製造することができる。
【0070】
また、本発明の耐久防汚性繊維製品の製造方法においては、難燃剤、帯電防止剤、染料安定剤、防縮剤、抗菌剤、防虫剤等の通常繊維製品に用いられている加工薬剤を併用してもよい。
【0071】
本発明の製造方法を適用し得る繊維製品の素材には特に制限はなく、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン等の合成繊維、これらの複合繊維、混紡繊維等が挙げられる。また、繊維製品の形態も織物、編物、糸、不織布、紙等のいずれの形態であってもよい。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0073】
なお、後述する実施例及び比較例により得られた加工布について、下記の方法により汚れ脱離性を評価した。
【0074】
(1)ダイヤペースト法(日本化学繊維協会規格 JCFA TM−104)
水平に敷いたろ紙の上に、実施例又は比較例により得られた加工布を広げる。これに、下記の配合比の汚れ成分を一定量付着させて、室温で一時間放置した後、洗濯(浴比1:30、液温40℃、洗剤アタック(商品名、花王(株)製)25g、2槽式電気洗濯機)を15分間行う。その後、濯ぎ、脱水し、風乾する。乾燥した加工布に残存するシミの状態を汚染用グレースケール(JIS L 0805)にて判定した。
【0075】
汚れ成分配合比(質量)
カーボンブラック 0.167
流動パラフィン 0.625
牛脂硬化油 0.208
モーターオイル(Shell製) 100。
【0076】
(2)口紅脱離性試験
水平に置いた硝子板の上に、実施例又は比較例により得られた加工布を広げる。これに一定量の口紅(化粧惑星リップカラーRD1(商品名、(株)資生堂))を付着させて、室温で20時間放置した後、洗濯(浴比1:30、液温40℃、洗剤アタック(商品名、花王(株)製)25g、2槽式電気洗濯機)を15分間行う。その後、濯ぎ、脱水し、風乾する。乾燥した加工布に残存するシミの状態を汚染用グレースケール(JIS L 0805)にて判定した。
【0077】
合成例1(フッ素系アクリル共重合体Aの水性液)
四ツ口フラスコに、C2n+1CHCHCOOCH=CH(n=6、8、10、12、14;平均8)を20g、CH=C(CH)COO(CHCHO)CHを10g、CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hを5g、CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHClを4g、CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOHを1g、イソプロピルアルコール60gを入れ、窒素にて系内を充分に置換した後、アゾビスイソブチロニトリル0.1gを添加し、70℃にて10時間攪拌反応させた。反応終了後、40℃以下に冷却し、イソプロピルアルコール40gとイオン交換水60gを加え攪拌希釈した。得られた共重合体は、20.0質量%の固形分であった。また、共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定の結果、12,000(スチレン換算)であった。
【0078】
合成例2(フッ素系アクリル共重合体Bの水性液)
合成例1と同様にして、C2n+1CHCHCOOCH=CH(n=6、8、10、12、14;平均8)を20g、CH=C(CH)COO(CHCHO)Hを8g、CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hを7g、CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHClを4g、CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOHを1g、イソプロピルアルコール60gを入れ、窒素にて系内を充分に置換した後、アゾビスイソブチロニトリル0.1gを添加し、70℃にて10時間攪拌反応させた。反応終了後、40℃以下に冷却し、イソプロピルアルコール40gとイオン交換水60gを加え攪拌希釈した。得られた共重合体は、19.8質量%の固形分であった。また、共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定の結果、15,000(スチレン換算)であった。
【0079】
比較合成例1(フッ素系アクリル共重合体Cの水性液)
合成例1と同様にして、C2n+1CHCHCOOCH=CH(n=6、8、10、12、14;平均8)を20g、CH=C(CH)COO(CHCHO)CHを15g、CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hを5g、イソプロピルアルコール60gを入れ、窒素にて系内を充分に置換した後、アゾビスイソブチロニトリル0.1gを添加し、70℃にて10時間攪拌反応させた。反応終了後、40℃以下に冷却し、イソプロピルアルコール40gとイオン交換水60gを加え攪拌希釈した。得られた共重合体は、20.0質量%の固形分であった。また、共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定の結果、12,000(スチレン換算)であった。
【0080】
比較合成例2(フッ素系アクリル共重合体Dの水性液)
合成例1と同様にして、C2n+1CHCHCOOCH=CH(n=6、8、10、12、14;平均8)を20g、CH=C(CH)COO(CHCHO)CHを10g、CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hを5g、CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOHを5g、イソプロピルアルコール60gを入れ、窒素にて系内を充分に置換した後、アゾビスイソブチロニトリル0.1gを添加し、70℃にて10時間攪拌反応させた。反応終了後、40℃以下に冷却し、イソプロピルアルコール40gとイオン交換水60gを加え攪拌希釈した。得られた共重合体は、19.9質量%の固形分であった。また、共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定の結果、11,000(スチレン換算)であった。
【0081】
比較合成例3(フッ素系アクリル共重合体Eの水性液)
合成例1と同様にして、C2n+1CHCHCOOCH=CH(n=6、8、10、12、14;平均8)を20g、CH=C(CH)COO(CHCHO)CHを10g、CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hを5g、CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHClを5g、イソプロピルアルコール60gを入れ、窒素にて系内を充分に置換した後、アゾビスイソブチロニトリル0.1gを添加し、70℃にて10時間攪拌反応させた。反応終了後、40℃以下に冷却し、イソプロピルアルコール40gとイオン交換水60gを加え攪拌希釈した。得られた共重合体は、20.0質量%の固形分であった。また、共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定の結果、10,000(スチレン換算)であった。
【0082】
比較合成例4(フッ素系アクリル共重合体Fの水性液)
合成例1と同様にして、C2n+1CHCHCOOCH=CH(n=6、8、10、12、14;平均8)を20g、CH=C(CH)COO(CHCHO)Hを10g、CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hを5g、CH=CHCONHCHOHを5g、イソプロピルアルコール60gを入れ、窒素にて系内を充分に置換した後、アゾビスイソブチロニトリル0.1gを添加し、70℃にて10時間攪拌反応させた。反応終了後、40℃以下に冷却し、イソプロピルアルコール40gとイオン交換水60gを加え攪拌希釈した。得られた共重合体は、20.1質量%の固形分であった。また、共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定の結果、11,000(スチレン換算)であった。
【0083】
合成例3(ポリエステル樹脂Aの水性液)
攪拌機、温度計、メタノール流出管、精留管を備えた反応容器に、ジメチルテレフタル酸77.6g(0.4モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルナトリウム塩29.6g(0.1モル)、ポリエチレングリコール(PEG4000、三洋化成工業(株)製、商品名、平均分子量:約3100)279g(0.09モル)、モノエチレングリコール68.2g(1.1モル)及び三酸化アンチモン0.1g、酢酸亜鉛0.1gを仕込み、Nガスを通入する。加熱昇温し、130〜180℃まで2時間かけてゆっくり昇温しエステル交換反応を行う。140℃よりメタノールの流出が始まる。さらに180℃〜250℃まで2時間かけてゆっくり昇温後、Nガス通入を停止し、250〜260℃、約5mmHgの減圧下で2時間反応したのち、さらに260℃、約2mmHgの減圧下で30分間反応し、ポリエステル樹脂400gを得た。このポリエステル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[東ソー(株)製高速GPC、HLC−8120型、測定標準物質:ポリエチレングリコール]で測定の結果、約14,000であった。このポリエステル樹脂100gを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50gに溶解し、熱水850gに乳化してポリエステル樹脂Aの水性液を得た。
【0084】
合成例4(ポリエステル樹脂Bの水性液)
攪拌機、温度計、メタノール流出管、精留管を備えた反応容器に、ジメチルテレフタル酸87.3g(0.45モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルナトリウム塩14.8g(0.05モル)、ポリエチレングリコール(PEG4000、三洋化成工業(株)製、商品名、平均分子量:約3100)310g(0.1モル)、モノエチレングリコール 68.2g(1.1モル)及び三酸化アンチモン0.1g、酢酸亜鉛0.1gを仕込み、合成例3と同様の条件でエステル交換反応を行い、ポリエステル樹脂425gを得た。このポリエステル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[東ソー(株)製高速GPC、HLC−8120型、測定標準物質:ポリエチレングリコール]で測定の結果、約15,000であった。このポリエステル樹脂100gを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50gに溶解し、熱水850gに乳化してポリエステル樹脂Bの水性液を得た。
【0085】
合成例5(ポリエステル樹脂Cの水性液)
攪拌機、温度計、メタノール流出管、精留管を備えた反応容器に、ジメチルテレフタル酸116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルナトリウム塩118.4g(0.4モル)、ポリエチレングリコール(PEG2000、三洋化成工業(株)製、商品名、平均分子量:約2000)60g(0.03モル)、モノエチレングリコール 136.4g(2.2モル)及び三酸化アンチモン0.1g、酢酸亜鉛0.1gを仕込み、合成例3と同様の条件でエステル交換反応を行い、ポリエステル樹脂380gを得た。このポリエステル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[東ソー(株)製高速GPC、HLC−8120型、測定標準物質:ポリエチレングリコール]で測定の結果、約5,000であった。このポリエステル樹脂100gを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50gに溶解し、熱水850gに乳化してポリエステル樹脂Cの水性液を得た。
【0086】
比較合成例5(比較用ポリエステル樹脂Dの水性液)
攪拌機、温度計、メタノール流出管、精留管を備えた反応容器に、ジメチルテレフタル酸67.9g(0.35モル)、ジメチルイソフタル酸29.1g(0.15モル)、ポリエチレングリコール(PEG4000、三洋化成工業(株)製、商品名、平均分子量:約3100)310g(0.1モル)、モノエチレングリコール68.2g(1.1モル)及び三酸化アンチモン0.1g、酢酸亜鉛0.1gを仕込み、合成例3と同様の条件でエステル交換反応を行い、ポリエステル樹脂420gを得た。このポリエステル樹脂の重量平均分子量は、合成例3と同様にしてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定の結果、約10,000であった。このポリエステル樹脂100gを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50gに溶解し、熱水850gに乳化して比較用ポリエステル樹脂Dの水性液を得た。
【0087】
比較合成例6(比較用ポリエステル樹脂Eの水性液)
攪拌機、温度計、メタノール流出管、精留管を備えた反応容器に、ジメチルテレフタル酸77.6g(0.4モル)、ジメチルイソフタル酸19.4g(0.1モル)、ポリエチレングリコール(PEG4000、三洋化成工業(株)製、商品名、平均分子量:約3100)387.5g(0.125モル)、モノエチレングリコール68.2g(1.1モル)及び三酸化アンチモン0.1g、酢酸亜鉛0.1gを仕込み、合成例3と同様の条件でエステル交換反応を行い、ポリエステル樹脂500gを得た。このポリエステル樹脂の重量平均分子量は、合成例3と同様にしてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定の結果、約12,000であった。このポリエステル樹脂100gを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50gに溶解し、熱水850gに乳化して比較用ポリエステル樹脂Eの水性液を得た。
【0088】
実施例1(一浴処理)
合成例1で得られたフッ素系アクリル共重合体Aの水性液5質量%、合成例3で得られたポリエステル樹脂Aの水性液5質量%、メラミン樹脂系架橋剤である「SumitexResin M−3(S/R M−3)」(住友化学工業(株)製 商品名)0.3質量%、メラミン樹脂の架橋反応促進の為に有機アミン系触媒である「SumitexAccelerator ACX(S/Acc ACX)」(住友化学工業(株)製 商品名)0.03質量%及びイソシアネート系架橋剤として脂肪族ポリイソシアネート誘導体のブロック付加物の分散物であるNKアシストNY(商品名、日華化学(株)製)1質量%を含有する処理液を作製した。
【0089】
この処理液にポリエステル100%織物を浸漬して、その後マングルで絞ってウェットピックアップ60質量%としたのち、120℃で1分間乾燥し、さらに180℃で1分間熱処理した。得られた加工布について、初期及び洗濯20回後の汚れ脱離性を評価した。なお、洗濯は、2槽式電気洗濯機を用いて、浴比1:30、液温40℃、洗剤アタック25gを加えて、5分間行い、濯ぎ、脱水の工程を20回繰り返し、その後風乾したものを洗濯20回として評価した。結果を表1に示す。
【0090】
実施例2〜6(一浴処理)
表1に示したフッ素系アクリル共重合体の水性液5質量%、ポリエステル樹脂の水性液5質量%及び架橋剤を含有する処理液を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行い、評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
実施例7(二浴処理)
合成例3で得られたポリエステル樹脂Aの水性液5質量%を含有する処理液で、ポリエステル100%織物を、ミニカラー染色機[テクサム技研社製]を使用して、浴比1:15、温度130℃の条件で、30分処理した。その後絞り率60質量%で脱液後、120℃で1分間乾燥した。次いで、合成例1で得られたフッ素系アクリル共重合体Aの水性液の5質量%、メラミン樹脂系架橋剤である「SumitexResin M−3」(住友化学工業(株)製 商品名)0.3質量%、メラミン樹脂の架橋反応促進の為に有機アミン系触媒である「SumitexAccelerator ACX」(住友化学工業(株)製 商品名)0.03質量%及びイソシアネート系架橋剤として脂肪族ポリイソシアネート誘導体のブロック付加物の分散物であるNKアシストNY(商品名、日華化学(株)製)1質量%を含有する処理液に浸漬し、その後マングルで絞ってウェットピックアップ60質量%としたのち、120℃で1分間乾燥し、さらに180℃で1分間熱処理した。得られた加工布について、初期及び洗濯20回後の汚れ脱離性を評価した。なお、洗濯は、2槽式電気洗濯機を用いて、浴比1:30、液温40℃、洗剤アタック25gを加えて、5分間行い、濯ぎ、脱水の工程を20回繰り返し、その後風乾したものを洗濯20回として評価した。結果を表1に示す。
【0092】
実施例8(二浴処理)
合成例4で得られたポリエステル樹脂Bの水性液5質量%を含有する処理液で、ポリエステル100%織物を、ミニカラー染色機[テクサム技研社製]を使用して、浴比1:15、温度130℃の条件で、30分処理した。その後絞り率60質量%で脱液後、120℃で1分間乾燥した。次いで、合成例1で得られたフッ素系アクリル共重合体Aの水性液の5質量%、メラミン樹脂系架橋剤である「SumitexResin M−3」(住友化学工業(株)製 商品名)0.3質量%、メラミン樹脂の架橋反応促進の為に有機アミン系触媒である「SumitexAccelerator ACX」(住友化学工業(株)製 商品名)0.03質量%及びイソシアネート系架橋剤として脂肪族ポリイソシアネート誘導体のブロック付加物の分散物であるNKアシストNY(商品名、日華化学(株)製)1質量%を含有する処理液に浸漬し、その後マングルで絞ってウェットピックアップ60質量%としたのち、120℃で1分間乾燥し、さらに180℃で1分間熱処理した。得られた加工布について、初期及び洗濯20回後の汚れ脱離性を評価した。なお、洗濯は、2槽式電気洗濯機を用いて、浴比1:30、液温40℃、洗剤アタック25gを加えて、5分間行い、濯ぎ、脱水の工程を20回繰り返し、その後風乾したものを洗濯20回として評価した。結果を表1に示す。
【0093】
比較例1〜12(一浴処理)
表1に示したフッ素系アクリル共重合体の水性液5質量%、ポリエステル樹脂の水性液5質量%及び架橋剤を含有する処理液を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行い、評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
実施例9(一浴処理)
合成例1で得られたフッ素系アクリル共重合体Aの水性液5質量%、合成例3で得られたポリエステル樹脂Aの水性液5質量%、メラミン樹脂系架橋剤である「SumitexResin M−3」(住友化学工業(株)製 商品名)0.3質量%、メラミン樹脂の架橋反応促進の為に有機アミン系触媒である「SumitexAccelerator ACX」(住友化学工業(株)製 商品名)0.03質量%及びイソシアネート系架橋剤として脂肪族ポリイソシアネート誘導体のブロック付加物の分散物であるNKアシストNY(商品名、日華化学(株)製) 1質量%を含有する処理液を作製した。
【0095】
この処理液に綿35%、ポリエステル65%混紡織物を浸漬して、その後マングルで絞ってウェットピックアップ60質量%としたのち、120℃で1分間乾燥し、さらに160℃で1分間熱処理した。得られた加工布について、初期及び洗濯20回後の汚れ脱離性を評価した。なお、洗濯は、2槽式電気洗濯機を用いて、浴比1:30、液温40℃、洗剤アタック25gを加えて、5分間行い、濯ぎ、脱水の工程を20回繰り返し、その後風乾したものを洗濯20回として評価した。結果を表2に示す。
【0096】
実施例10〜14(一浴処理)
表2に示したフッ素系アクリル共重合体の水性液5質量%、ポリエステル樹脂の水性液5質量%及び架橋剤を含有する処理液を用いた以外は、実施例9と同様の処理を行い、評価を行った。結果を表2に示す。
【0097】
実施例15(二浴処理)
合成例3で得られたポリエステル樹脂Aの水性液5質量%を含有する処理液で、綿35%、ポリエステル65%混紡織物を、ミニカラー染色機[テクサム技研社製]を使用して、浴比1:15、温度130℃の条件で、30分処理した。その後絞り率60質量%で脱液後、120℃で1分間乾燥した。次いで、合成例1で得られたフッ素系アクリル共重合体Aの水性液5質量%、メラミン樹脂系架橋剤である「SumitexResin M−3」(住友化学工業(株)製 商品名)0.3質量%、メラミン樹脂の架橋反応促進の為に有機アミン系触媒である「SumitexAccelerator ACX」(住友化学工業(株)製 商品名)0.03質量%及びイソシアネート系架橋剤として脂肪族ポリイソシアネート誘導体のブロック付加物の分散物であるNKアシストNY(商品名、日華化学(株)製)1質量%を含有する処理液に浸漬し、その後マングルで絞ってウェットピックアップ60質量%としたのち、120℃で1分間乾燥し、さらに180℃で1分間熱処理した。得られた加工布について、初期及び洗濯20回後の汚れ脱離性を評価した。なお、洗濯は、2槽式電気洗濯機を用いて、浴比1:30、液温40℃、洗剤アタック25gを加えて、5分間行い、濯ぎ、脱水の工程を20回繰り返し、その後風乾したものを洗濯20回として評価した。結果を表2に示す。
【0098】
実施例16(二浴処理)
合成例4で得られたポリエステル樹脂Aの水性液5質量%を含有する処理液で、綿35%、ポリエステル65%混紡織物を、ミニカラー染色機[テクサム技研社製]を使用して、浴比1:15、温度130℃の条件で、30分処理した。その後絞り率60質量%で脱液後、120℃で1分間乾燥した。次いで、合成例1で得られたフッ素系アクリル共重合体Aの水性液5質量%、メラミン樹脂系架橋剤である「SumitexResin M−3」(住友化学工業(株)製 商品名)0.3質量%、メラミン樹脂の架橋反応促進の為に有機アミン系触媒である「SumitexAccelerator ACX」(住友化学工業(株)製 商品名)0.03質量%及びイソシアネート系架橋剤として脂肪族ポリイソシアネート誘導体のブロック付加物の分散物であるNKアシストNY(商品名、日華化学(株)製)1質量%を含有する処理液に浸漬し、その後マングルで絞ってウェットピックアップ60質量%としたのち、120℃で1分間乾燥し、さらに180℃で1分間熱処理した。得られた加工布について、初期及び洗濯20回後の汚れ脱離性を評価した。なお、洗濯は、2漕式電気洗濯機を用いて、浴比1:30、液温40℃、洗剤アタック25gを加えて、5分間行い、濯ぎ、脱水の工程を20回繰り返し、その後風乾したものを洗濯20回として評価した。結果を表2に示す。
【0099】
比較例13〜24(一浴処理)
表2に示したフッ素系アクリル共重合体の水性液5質量%、ポリエステル樹脂の水性液5質量%及び架橋剤を含有する処理液を用いた以外は、実施例9と同様の処理を行い、評価を行った。結果を表2に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
実施例1〜16の結果からも分かるように、本発明の製造方法で製造された繊維製品は、油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れに対して、耐久性に非常に優れた汚れ脱離性を示した。しかしながら、比較例1〜24のように、本発明に用いた特定のポリエステル樹脂、特定のフッ素系アクリレート共重合体及び架橋剤のいずれかを欠いて製造した繊維製品は、油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れに対して、耐久性に優れた脱離性を示す効果は得られなかった。また、実施例において、一浴処理したものは、二浴処理したものに比べて、特に初期の汚れ脱離性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、本発明によれば、繊維製品に付着した汚れ、特にダーティモーターオイル、口紅等の油成分と無機物及び/又は顔料を含有する汚れに対して、汚れが付着しにくく、また付着した汚れも洗濯によって落ちやすいという防汚性に優れており、そしてその性能は高水準の洗濯耐久性を有する耐久防汚性繊維製品を効率良く且つ確実に得ることが可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スルホイソフタル酸又はその誘導体を重縮合成分として1〜40質量%含有する下記一般式[1]:
【化1】

{式[1]中、R1はHO−又はHO(R2O)a−であり、R2は炭素数2〜4のアルキレン基であって、R2Oは1種のみであっても、2種以上のR2Oがランダム状又はブロック状に付加していてもよく、aは1〜200の整数であって、同一分子内において、aはすべて同一であっても、異なっていてもよく、bは2〜100の整数であり、R3は水素原子又は下記一般式[2]:
【化2】

(式[2]中、Rは水素原子、カルボキシル基又は−SOXであって、Xは水素原子又はアルカリ金属である。)
で表される基であり、Rは水素原子、カルボキシル基又は−SOXであって、Xは水素原子又はアルカリ金属である。}
で表されるポリエステル樹脂を含む水性液、
(B)(a)フルオロアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、(b)ポリアルキレングリコールアクリレート又はポリアルキレングリコールメタクリレート、(c)3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び(d)グリセロールモノアクリレート又はグリセロールモノメタクリレートから誘導される構成単位を含有するフッ素系アクリル共重合体を含む水性液、並びに、
(C)メラミン樹脂系架橋剤、イソシアネート系架橋剤及びグリオキザール樹脂系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋剤、
を繊維製品に付与し、乾燥させることを特徴とする耐久防汚性繊維製品の製造方法。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、1,000〜50,000であることを特徴とする請求項1に記載の耐久防汚性繊維製品の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素系アクリル共重合体の重量平均分子量が、1,000〜500,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐久防汚性繊維製品の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素系アクリル共重合体100質量部に対して、前記ポリエステル樹脂が10〜300質量部となるように前記水性液(A)及び前記水性液(B)を使用することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の耐久防汚性繊維製品の製造方法。

【公開番号】特開2006−152487(P2006−152487A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344990(P2004−344990)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】