説明

耐候光試験用ランプ

【課題】試料の耐候光性試験において500nmを中心とした可視域のエネルギーを含む太陽光による劣化と耐候光性試験の結果との乖離を低減することができること。
【解決手段】カーボン電極又は石英管に、発光体としてツリウム化合物を添加し、赤外部遮断フィルタ及び/又は紫外部遮断フィルタを組み合わせ、ランプから試料に照射される光を、500nmを中心とした分光分布を有し、太陽光に近似した分光エネルギーを有する光とする耐候光性試験用ランプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候光試験用ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐候光試験用ランプとしては、カーボン電極では、セリウムをコアとしたセリウムコアカーボン電極(サンシャインカーボン電極)や、紫外線カーボン電極が耐候試験用に用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭58−152768号公報(第1頁第1欄)
【0003】
カーボン電極では、カーボンの特徴である380〜390nm付近のシアンバンドと350nm付近の著しいピークがある。サンシャインカーボン電極では、セリウムの存在に可視域でも分光エネルギーがやや高い波長域帯を有する。カーボン電極は、太陽エネルギーに近似した光源として使用されている。太陽エネルギーに近似した光源として使用されているランプとしては、他にキセノンランプ等もあるが、使用時間によって各波長における分光エネルギーが低下する。一方、カーボン電極では、使用時間によって各波長における分光エネルギーが低下することがない。
【0004】
しかし、従来のカーボン電極の耐候光試験用ランプにおいては、400nm以上の波長域の分光エネルギー量が紫外線部に比べ低かった。したがって、500nmを中心とした可視域の光エネルギー量により劣化度合いが著しく変わる材料については、必ずしも適切な結果を得ることができないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、材料の性質によっては500nmを中心とした可視域のエネルギーを含む太陽光による劣化と結果が乖離するおそれがある点である。
【0006】
本発明は、かかる問題を鑑みてなされたものであり、したがって、本発明の目的は、500nmを中心とした可視域のエネルギーを含む太陽光による劣化と耐候光性試験の結果との乖離を低減できる耐候光試験用ランプを提供することにある。本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、試行錯誤の上、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の耐候光試験用ランプは、カーボン電極に、発光体としてツリウム化合物を添加することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の耐候光試験用ランプは、石英管に、発光体としてツリウム化合物、及び始動ガスとして水銀を封入したことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の耐候光試験用ランプは、前記ツリウム化合物が、ツリウムのハロゲン化物又は酸化物であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の耐候光試験用ランプは、ランプから試料に照射される光が、500nmを中心としたスペクトルピークを有し、太陽光に近似した分光分布を有することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の耐候光試験用ランプは、さらに、赤外部遮断フィルタを組み合わせることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の耐候光試験用ランプは、さらに、紫外部遮断フィルタを組み合わせることにより、太陽光には存在しない紫外部のエネルギーを遮断したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の耐候光試験用ランプは、上述したとおりであるので、500nmを中心とした分光分布を有する太陽光に、より近い分光エネルギーを有し、したがって、500nmを中心とした可視域のエネルギーを含む太陽光による劣化と耐候光性試験の結果との乖離を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の最良の実施例について、以下に図を用いて詳細に述べる。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1の耐候光試験用ランプは、ツリウムのハロゲン化物を添加したカーボン電極である。本発明の実施例1の耐候光試験用ランプでは、ツリウムのハロゲン化物をカーボン電極の芯材として添加した。ツリウムのハロゲン化物は、発光体としての役割を果たす。本発明の実施例1の耐候光試験用ランプのカーボン電極の芯材は、安定剤及び結合材に、ツリウムのハロゲン化物を添加したものである。本発明の実施例1の耐候光試験用ランプでは、ヨウ化ツリウムを用いる。カーボン電極は、カーボンを1150℃で焼成し、芯材は、温度850℃で焼成して作製した。例えば、135V16Aの条件で点灯させる。本発明の実施例1の耐候光試験用ランプは、400nm〜800nmの範囲でブロードなスペクトルピークを有し、太陽光に近似した分光分布を有する。カーボン電極では、キセノンランプ等と異なり、使用時間によって各波長における分光エネルギーが低下することがない。
【0016】
よって、本発明の実施例1の耐候光試験用ランプによれば、500nmを中心とした分光分布を有する太陽光に、より近い分光エネルギーを有し、500nmを中心とした可視域のエネルギーを含む太陽光による劣化と耐候光性試験の結果との乖離を低減できる。カーボンとツリウムの分光分布の相乗効果により、太陽光に近似した分光エネルギーを有するため、本発明の実施例1の耐候光試験用ランプは、従来の耐候光試験用ランプに比べ優れている。
【実施例2】
【0017】
本発明の実施例2の耐候光試験用ランプは、実施例1のランプに、さらに、赤外部の光をカットするフィルタを組み合わせたものである。図1は、本発明の耐候光試験用ランプの実施例2のフィルタの透過率を示す特性図である。本発明の実施例1の耐候光試験用ランプは、500nmを中心とした可視域でスペクトルピークを有し、太陽光に近似した分光分布を有する。
【0018】
本発明の実施例2の耐候光試験用ランプによれば、500nmを中心とした分光分布を有する太陽光に、より近い分光エネルギーを有し、500nmを中心とした可視域のエネルギーを含む太陽光による劣化と耐候光性試験の結果との乖離を低減できる。
【実施例3】
【0019】
本発明の実施例3の耐候光試験用ランプは、石英管に発光体としてツリウムのハロゲン化物及び始動ガスとして水銀を封入したものである。本発明の実施例3の耐候光試験用ランプでは、ヨウ化ツリウムを用いる。図2は、本発明の耐候光試験用ランプの実施例3の分光分布図である。他の金属化合物は封入しない。本発明の実施例3の耐候光試験用ランプは、例えば、250V14Aの条件で点灯させる。
【0020】
本発明の実施例3の耐候光試験用ランプによれば、色温度として6500Kであり、500nmを中心とした分光分布を有する太陽光に、より近い分光エネルギーを有し、500nmを中心とした可視域のエネルギーを含む太陽光による劣化と耐候光性試験の結果との乖離を低減できる。
【実施例4】
【0021】
本発明の実施例4の耐候光試験用ランプは、ツリウムの酸化物を添加したカーボン電極である。本発明の実施例4の耐候光試験用ランプでは、ツリウムの酸化物をカーボン電極の芯材として添加した。ツリウムの酸化物は、発光体としての役割を果たす。本発明の実施例4の耐候光試験用ランプのカーボン電極の芯材は、安定剤及び結合材に、ツリウムの酸化物を添加したものである。本発明の実施例4の耐候光試験用ランプでは、酸化ツリウムを用いる。カーボン電極は、カーボンを1150℃で焼成し、芯材は、温度850℃で焼成して作製した。例えば、135V16Aの条件で点灯させる。本発明の実施例1の耐候光試験用ランプは、400nm〜800nmの範囲でブロードなスペクトルピークを有し、太陽光に近似した分光分布を有する。カーボン電極では、キセノンランプ等と異なり、使用時間によって各波長における分光エネルギーが低下することがない。
【0022】
よって、本発明の実施例4の耐候光試験用ランプによれば、500nmを中心とした分光分布を有する太陽光に、より近い分光エネルギーを有し、500nmを中心とした可視域のエネルギーを含む太陽光による劣化と耐候光性試験の結果との乖離を低減できる。カーボンとツリウムの分光分布の相乗効果により、太陽光に近似した分光エネルギーを有するため、本発明の実施例4の耐候光試験用ランプは、従来の耐候光試験用ランプに比べ優れている。
【実施例5】
【0023】
本発明の実施例5の耐候光試験用ランプは、本発明の実施例3と同様に、石英管に発光体としてツリウムのハロゲン化物及び始動ガスとして水銀を封入したものである。本発明の実施例5の耐候光試験用ランプでは、臭化ツリウムを用いる。他の金属化合物は封入しない。本発明の実施例5の耐候光試験用ランプは、例えば、250V14Aの条件で点灯させる。
【0024】
本発明の実施例5の耐候光試験用ランプによれば、色温度として6500Kであり、500nmを中心とした分光分布を有する太陽光に、より近い分光エネルギーを有し、500nmを中心とした可視域のエネルギーを含む太陽光による劣化と耐候光性試験の結果との乖離を低減できる。
【0025】
したがって、本発明の耐候光試験用ランプによれば、500nmを中心とした分光分布を有する太陽光に、より近い分光エネルギーを有し、500nmを中心とした可視域のエネルギーを含む太陽光による劣化と耐候光性試験の結果との乖離を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の耐候光試験用ランプの実施例2のフィルタの透過率を示す特性図である。
【図2】本発明の耐候光試験用ランプの実施例3の分光分布図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン電極に、発光体としてツリウム化合物を添加することを特徴とする耐候光試験用ランプ。
【請求項2】
石英管に、発光体としてツリウム化合物、及び始動ガスとして水銀を封入したことを特徴とする耐候光試験用ランプ。
【請求項3】
前記ツリウム化合物が、ツリウムのハロゲン化物又は酸化物であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の耐候光試験用ランプ。
【請求項4】
ランプから試料に照射される光が、500nmを中心としたスペクトルピークを有し、太陽光に近似した分光分布を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐候光試験用ランプ。
【請求項5】
さらに、赤外部遮断フィルタを組み合わせることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐候光試験用ランプ。
【請求項6】
さらに、紫外部遮断フィルタを組み合わせることにより、太陽光には存在しない紫外部のエネルギーを遮断したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐候光試験用ランプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−49284(P2006−49284A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178755(P2005−178755)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000107583)スガ試験機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】