耐応力腐食割れ性に優れた金属材料
【課題】
本発明では、耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた材料の製造を短時間の熱処理加工で行う技術を提供する
【解決手段】
NiあるいはFeを主体とする面心立方結晶からなる多結晶金属材料において、圧延率が1%以上10%未満の冷間圧延を施した後、1000〜1200℃の温度において0.1分以上120分以下の熱処理を施す。
本発明では、耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた材料の製造を短時間の熱処理加工で行う技術を提供する
【解決手段】
NiあるいはFeを主体とする面心立方結晶からなる多結晶金属材料において、圧延率が1%以上10%未満の冷間圧延を施した後、1000〜1200℃の温度において0.1分以上120分以下の熱処理を施す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さの薄い金属材料の製造を短時間の熱処理加工で行い、粒界腐食や応力腐食割れに対する抵抗を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉内の構成材料には、SUS304やSUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼や600合金等のNi基合金が使用され、これらの材料は一般的に耐食性に優れている。しかし、原子炉内のように高温高圧水中でさらに部位によっては、中性子やガンマ線照射環境で使用期間が長くなった場合、粒界腐食現象や応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking、以下SCCと略記する)現象を発生する。
【0003】
粒界腐食現象は、鋭敏化と呼ばれ、上記の金属材料の場合、粒界へCrが析出することに伴って、Cr欠乏層領域が発生し、その領域から集中的に腐食が進むことで起こる。粒界腐食現象は、粒界を伝って割れが発生するSCC現象の原因となる。
粒界腐食現象やSCC現象が発生すると、原子力発電プラントの健全性を損なうおそれがある。したがって、これまで耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ(耐SCC)性に優れた材料の開発が行われている。
【0004】
ところで、対応粒界頻度により耐粒界腐食性や耐SCC性を評価することができる。ここで、対応粒界頻度とは、全結晶粒界長さに占めるΣ値が29以下の粒界長さの割合を言う。
【0005】
Σ値については、ステンレス鋼便覧第3版(ステンレス協会編、日刊工業新聞社発行)p46〜48に記載されている。2つの結晶格子を仮想的に重ねると、特定の方位関係にある結晶では全体の格子の何割かが一致し、それ自体が超格子をつくる。この一致点格子の数と結晶格子点の数の比の逆数をΣ値という。
【0006】
特許文献1には、その対応粒界頻度が、所定の基準値以上となる耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた材料を製造する方法が記載されている。例えば、特許文献1に記載されている方法で、対応粒界頻度が86.5%のものを製造する場合には、900〜1000℃で5時間以上の熱処理が必要となる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−253401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1において行っている方法は、金属材料の対応粒界頻度を向上させるためには理想的な方法であるが、金属材料の製造に長時間の熱処理加工が必要となる。そのため、原子炉用制御棒のシース部分の作製に用いられる厚さの薄い金属材料を製造する場合には、熱処理時間が長くなると、金属材料にたわみが生じる。
【0009】
よって、本発明では、耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた材料の製造を短時間の熱処理加工で行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、NiあるいはFeを主体とする面心立方結晶からなる多結晶金属材料において、
少なくとも表面近傍の対応粒界頻度が70%以上であり、かつ、板厚中心に対する表面近傍の平均結晶粒径の比が1.0を超え5.0以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた材料の製造を短時間の熱処理加工で行う技術を提供することができる。よって、原子炉用制御棒のシース部分などの厚さの薄い材料においても、粒界腐食や応力腐食割れ(SCC)に対する抵抗を向上させた材料を作製することができ、原子力発電プラントの健全性劣化を抑制し、プラントを長寿命化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、以下に述べるようないくつかの観点で、熱処理を行う条件を変えた材料を作製し、対応粒界頻度を算出、および隙間付き定変位曲げ(CBB:Creviced Bent Beam、以下CBBと略記する)試験を行った。その粒界頻度算出結果およびCBB試験結果から、発明者らは70%以上で良好な耐粒界腐食性と耐SCC性を示すこと見出した。よって、対応粒界頻度が70%以上である金属材料を作製する熱処理の条件を、優れた耐SCC性を持つ材料の作製条件とした。
【0013】
以下の観点1〜5で行った実験結果を用いて、本発明をより具体的に説明する。
観点1:SUS316L(組成:表1)における圧延率と、対応粒界頻度と、の関係について
観点2:SUS316L(組成:表1)における熱処理時間と、対応粒界頻度と、の関係について
観点3:SUS316L(組成:表5)における圧延率と、対応粒界頻度と、の関係について
観点4:SUS316L(組成:表5)における熱処理時間と、対応粒界頻度と、の関係について
観点5:金属材料の組成と、対応粒界頻度と、の関係について
<観点1>(SUS316Lにおける圧延率との関係について)
観点1の実験では、まず、表1に示す組成の板厚2.5mmtの溶体化処理済板材を用い、0%(材料番号11)、2.2%(材料番号12)、4.1%(材料番号13)、6.2%(材料番号14)、8.0%(材料番号15)、10.1%(材料番号16)の条件の冷間圧延を施した。なお、表1に示す組成は、SUS316Lの組成である。次に、これらの圧延材を1000℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で1時間熱処理した。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が995℃に達してからの時間とした。
【0014】
【表1】
以上の手順により得られた材料番号11から16の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD:Electron Back Scatter Diffraction)のパターン観察を行った。材料番号11から材料番号16の結果をそれぞれ図1から図6に示す。図1から図6の黒い線がランダム粒界、白い線が対応粒界を示す。ここで、Σ3、Σ5、Σ9、Σ11、Σ13a、Σ17a、Σ29aは面心立方結晶(fcc)において、エネルギー極小値をもつことが知られている粒界であることから、本発明においてはΣ値が29以下の粒界を「対応粒界」と定義している。また、その他の粒界を「ランダム粒界」とする。
【0015】
また、対応粒界頻度は、以下の式から算出する。
【0016】
【数1】
ここで、「15°以下の粒界長さ」とは、隣り合う結晶粒の結晶方位角度が15°以下のものの粒界長さである。「15°を超える粒界長さ」は、隣り合う結晶粒の結晶方位角度が15°を超えるものの粒界長さである。「Σ≦29の粒界長さ」は、隣り合う結晶粒の結晶方位角度が15°を超えるもので、Σ値が29以上のものの粒界長さである。
【0017】
材料番号11から材料番号16までの各材料の対応粒界頻度の算出結果を表2に示す。
【0018】
また、材料番号11から材料番号16の各材料の耐SCC性を確認するために、CBB試験を行った。
【0019】
ここで、CBB試験方法を、図7を用いて説明する。まず、CBB試験に用いる試験片Sについて述べる。材料番号11から16の各材料に620℃、24時間の熱処理を行い、10%の冷間圧延を施し、10×50×2mmtのCBB試験片に加工を行った。そして、各材料とも3本ずつ用意した。
【0020】
CBB試験装置を図7に示す。CBB試験装置は、曲率100mmの凸部を有するステンレス製治具100aと、曲率100mmの凹部を有するステンレス製治具100bと、ステンレス製治具の間に位置するグラファイトウールGと、ステンレス製治具を締め付けるボルト(図示せず)と、を有する。
【0021】
材料番号11から材料番号16の各材料から作製した10×50×2mmtの試験片Sを曲率100mmの凸部を有するステンレス製治具100a上に設置し、その上にグラファイトウールGを乗せ、さらにその上に曲率100の凹部を有するステンレス製治具100bを設置する。試験片Sの曲率が100mmとなるまで治具100a、100bをボルトで締め付ける。試験片Sの曲率が100mmとなったとき、試験片Sの表面の歪量は1%となり、かつ、グラファイトウールGにより適度な隙間が付与される。これを所定の環境中に所定の時間浸漬し(温度288℃、溶存酸素濃度8ppm、導電率0.1μS/cm以下で2000時間)、試験片表面に発生した割れの本数、長さ、深さ等を計測し、応力腐食割れ(SCC)の感受性を相対的な評価を行った。
【0022】
材料番号11から材料番号16の各材料のCBB試験により発生した割れ本数比を表2に示す。表2では、材料番号11のCBB試験の割れ本数を1として、材料番号12から材料番号16の各材料の割れ本数比とした。
【0023】
【表2】
表2より、対応粒界頻度が上昇するとCBB試験での割れ発生が抑制され、耐SCC性が向上することがわかる。圧延率0%の材料(材料番号11)と、圧延率10.1%の材料(材料番号16)と、では、対応粒界頻度が70%以上得られなかった。また、CBB試験の結果である割れ本数比の値が高くなっていることがわかった。
【0024】
一方、圧延率2.2%〜8.0%の材料(材料番号12〜15)では、対応粒界頻度が70%以上得られた。また、割れ本数比の値が低くなっていることがわかり、
耐SCC性が大きく改善されていることがわかった。
【0025】
したがって、圧延率が1.0〜10%の材料では、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
【0026】
なお、表2の中では、圧延率4.1%の材料(材料番号13)が、対応粒界頻度87.5%と高く、割れ本数比が0.19と低いことがわかった。
<観点2>(SUS316Lおける熱処理時間との関係について)
観点2での実験では、観点1での実験と同様の組成(表1)の板厚2.5mmtの溶体化処理済板材で、4.1%の冷間圧延を施した材料を用いた。これらの圧延材を1000℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で、0.5分(材料番号21)、1分(材料番号22)、5分(材料番号23)、15分(材料番号24)、30分(材料番号25)、60分(材料番号26)、120分(材料番号27)の条件で熱処理を行った。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が995℃の温度に達してからの時間とした。
【0027】
以上の手順により得られた材料番号21から27の各材料の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD)のパターン観察を行い、対応粒界頻度を算出した。その結果を表3に示す。
【0028】
また、観点2での実験では、表面近傍と板厚中央との結晶粒径比を、EBSDの結果を用いて分析した。その結果を表3に示す。
【0029】
ここで、本発明の「表面近傍」とは、板厚が3.0mm以上の材料については表面から1mmの深さまでの領域と定義し、板厚が3.0mm未満のものは表面から板厚の1/3の深さまでの領域と定義する。さらに、「板厚中心」とは、板厚が3.0mm以上の材料については板厚中央を中心にした厚さ1mmの領域のことと定義する。
【0030】
そして、材料番号21から27の各材料についても耐SCC性を評価するために、材料番号21から27の各材料から試験片Sを作製し、CBB試験を実施した。材料番号21から27の各材料のCBB試験により発生した割れの本数比の結果を表3に示す。表3では、表1の材料番号11のCBB試験の割れ本数を1として、材料番号21〜27の材料の割れ本数比とした。
【0031】
【表3】
表3より、対応粒界頻度が上昇するとCBB試験での割れ発生が抑制され、耐SCC性が向上することがわかった。また、0.5分の熱処理を行った材料(材料番号21)と、1分の熱処理を行った材料(材料番号22)と、では対応粒界頻度が70%以上得られなかった。その為、CBB試験の結果である割れ本数比の値が高くなっていることがわかった。
【0032】
一方、熱処理を5〜120分間行った材料(材料番号23〜27)では、対応粒界頻度が70%以上得られた。また、割れ本数比の値が低くなっていることがわかり、耐SCC性が大きく改善されていることがわかった。また、熱処理を5〜120分間行った材料(材料番号23〜27)、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値は、1.08〜5.81であることがわかった。
【0033】
したがって、熱処理を1000℃の温度で、2〜120分間行った材料では、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。また、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値が、1.0〜5.0のとき、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
【0034】
また、観点2での実験では、熱処理温度1200℃においても、同様な加工および試験実施した。その結果を表4に示す。
【0035】
また、観点2での実験では、観点1での実験と同様の組成(表1)の板厚2.5mmtの溶体化処理済板材で、4.1%の冷間圧延を施した材料を、1200℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で、0.3分(材料番号31)、0.5分(材料番号32)、1分(材料番号33)、5分(材料番号34)、30分(材料番号35)、60分(材料番号36)、120分(材料番号37)の条件で熱処理を行った。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が1195℃の温度に達してからの時間とした。
【0036】
以上の手順により得られた材料番号31から37の各材料の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD)のパターン観察を行い、対応粒界頻度を算出した。その結果を表4に示す。
【0037】
また、EBSDの結果を用いて表面近傍と板厚中央との結晶粒径比を分析した結果を表4に示す。
【0038】
そして、材料番号31から37の各材料についても耐SCC性を評価するために、材料番号31から37の各材料から試験片Sを作製し、CBB試験を実施した。材料番号31から37の各材料のCBB試験により発生した割れの本数比の結果を表4に示す。表4では、表1の材料番号11のCBB試験の割れ本数を1として、材料番号31〜37の材料の割れ本数比とした。
【0039】
【表4】
表4より、1000℃で熱処理を行った場合(表3)と同様に、対応粒界頻度が上昇するとCBB試験での割れ発生が抑制され、耐SCC性が向上することがわかった。また、1000℃、0.5分の熱処理を行った材料(材料番号21)と、1000℃、1分の熱処理を行った材料(材料番号22)と、では対応粒界頻度が70%以上得られなかったが、1200℃で熱処理を行った場合は、熱処理を行う時間が0.3分の短時間であっても対応粒界頻度を70%以上に上昇させることがわかった。また、熱処理を行う時間が0.3分の短時間であっても、割れ本数比の値が低くなっていることがわかり、耐SCC性が大きく改善されていることがわかった。
【0040】
そして、熱処理を、1200℃で、0.3〜120分間行った材料(材料番号31〜37)、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値は、1.13〜3.56であることがわかった。
【0041】
したがって、熱処理を1200℃の温度で、0.1〜120分間行った材料では、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。また、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値が、1.0〜5.0のとき、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
<観点3>(SUS316Lにおける圧延率との関係について)
観点での実験では、表5に示す組成の板厚50.8mmtの溶体化処理済板材を用い、0%(材料番号41)、3%(材料番号42)、5%(材料番号43)、10%(材料番号44)の条件で冷間圧延を施した。なお、表5に示す組成は、SUS316Lの組成である。次に、これらの圧延材を1100℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で1時間熱処理した。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が1095℃に達してからの時間とした。
【0042】
【表5】
以上の手順により得られた材料番号41から44の各材料の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD)のパターン観察を行い、対応粒界頻度を算出した。その結果を表6に示す。
【0043】
また、材料番号41から44の各材料についても耐SCC性を評価するために、材料番号41から44の各材料から試験片Sを作製し、CBB試験を実施した。材料番号41から44の各材料のCBB試験により発生した割れの本数比の結果を表5に示す。表5では、表1の材料番号11のCBB試験の割れ本数を1として、材料番号41〜44の各材料の割れ本数比とした。
【0044】
【表6】
表6から対応粒界頻度が上昇するとCBB試験での割れ発生が抑制され、耐SCC性が向上することがわかった。圧延率0%(材料番号41)と、圧延率10%(材料番号44)では、対応粒界頻度が70%以上得られていないことがわかった。また、CBB試験の結果である割れ本数比の値が高くなっていることがわかった。
【0045】
一方、圧延率3%の材料(材料番号42)と、圧延率5%の材料(材料番号43)と、では、対応粒界頻度が70%以上得られた。また、割れ本数比の値が低くなっていることがわかり、耐SCC性が大きく改善されていることがわかった。
【0046】
したがって、圧延率が1.0〜8.0%の材料では、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
【0047】
なお、表4の中では、圧延率3%の材料(材料番号42)が、対応粒界頻度82.0%と高く、割れ本数比が0.2と低いことがわかった。
<観点4>SUS316L(組成:表5)における熱処理時間との関係について
観点4での実験では、観点3での実験と同様の組成(表5)の板厚50.8mmtの溶体化処理済板材で、3%の冷間圧延を施した材料を用いた。これらの圧延材を1100℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で、0.5分(材料番号51)、1分(材料番号52)、5分(材料番号53)、15分(材料番号54)、30分(材料番号55)、60分(材料番号56)、120分(材料番号57)の条件で熱処理を行った。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が1095℃の温度に達してからの時間とした。
【0048】
以上の手順により得られた材料番号51から57の各材料の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD)のパターン観察を行い、対応粒界頻度を算出した。その結果を表7に示す。
【0049】
また、観点4での実験では、表面近傍と板厚中央との結晶粒径比を、EBSDの結果を用いて分析した。その結果を表7に示す。
【0050】
そして、材料番号51から57の各材料についても耐SCC性を評価するために、材料番号51から57の各材料から試験片Sを作製し、CBB試験を実施した。材料番号51から57の各材料のCBB試験により発生した割れの本数比の結果を表7に示す。表7では、表1の材料番号11のCBB試験の割れ本数を1として、材料番号51〜57の材料の割れ本数比とした。
【0051】
【表7】
表7より、対応粒界頻度が上昇するとCBB試験での割れ発生が抑制され、耐SCC性が向上することがわかった。また、0.5分の熱処理を行った材料(材料番号51)と、1分の熱処理を行った材料(材料番号52)と、では対応粒界頻度が70%以上得られなかった。その為、CBB試験の結果である割れ本数比の値が高くなっていることがわかった。
【0052】
一方、熱処理を5〜120分間行った材料(材料番号53〜57)では、対応粒界頻度が70%以上得られた。また、割れ本数比の値が低くなっていることがわかり、耐SCC性が大きく改善されていることがわかった。また、熱処理を5〜120分間行った材料(材料番号53〜57)、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値は、1.21〜2.53であることがわかった。
【0053】
したがって、熱処理を1100℃の温度で、2〜120分間行った材料では、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。また、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値が、1.0〜5.0のとき、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
<観点5>(組成との関係について)
観点での実験5では、表8に示す組成、材料記号a〜gの板厚2.5mmtの溶体化処理済板材を用い、5%の冷間圧延を施した。これらの圧延材を1200℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で1分間熱処理した。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が1195℃に達してからの時間とした。なお、材料記号a〜gの材料は、それぞれ、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS310S、600合金、690合金である。
【0054】
加工条件を、圧延率5%、熱処理温度1200℃、熱処理時間1分間としたのは、
観点1〜4の実験において、対応粒界頻度が70%以上得られている条件である為である。
【0055】
【表8】
以上の手順により得られた材料記号aからgの各材料の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD)のパターン観察を行い、対応粒界頻度を算出した。その結果を表9に示す。
【0056】
また、EBSDのパターン観察結果を用いて、表面近傍と板厚中央との結晶粒径比および表面近傍と板厚中央との対応粒界頻度比を分析した結果を表9に示す。
【0057】
【表9】
表9より、加工条件が圧延率5%、熱処理温度1200℃、熱処理時間1分間のとき、を材料記号a〜gのいずれの材料でも、対応粒界頻度が78%以上得られていることがわかった。また、このとき、材料記号a〜gの材料における板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値は、1.25〜1.64であることがわかった。そして、材料記号a〜gの材料における板圧中心に対する表面近傍の対応粒界頻度の比の値は1.08〜1.16であった。よって、表面近傍と板厚中央の対応粒界頻度比の値が1.2以下であることがわかる。
【0058】
したがって、本発明の加工条件では、材料記号a〜gの材料において、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。また、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値が、1.0〜5.0のとき、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
【0059】
これまで述べた、観点1〜5での実験結果から得られた、対応粒界頻度とCBB試験による割れ発生数比の関係を図9に示す。図9から対応粒界頻度が増加するに従い、割れ発生数が減少していくことがわかる。特に、対応粒界頻度が70%を超えると通常材の対応粒界頻度60%に比べ割れ発生数は1/2に低減でき、耐SCC性に優れることがわかる。このことから、材料加工条件として、対応粒界頻度を70%以上とすることは耐SCC性向上に有効であることがわかった。
【0060】
また、観点1〜5での実験結果から得られた、対応粒界頻度と、Σ3粒界頻度の関係を図10に示す。図10から対応粒界頻度が増加するに従い、Σ3粒界頻度が増加することがわかる。また、対応粒界頻度70%以上ではΣ3粒界頻度60%以上であることがわかった。よって、材料加工条件として、Σ3粒界頻度60%以上とすることは耐SCC性向上に有効であることがわかった。
【0061】
次に、上で述べた対応粒界頻度が70%以上得られる加工条件で加工を行った材料を用いて原子炉制御棒の模擬体の試作を行ったので、そのことについて述べる。
【0062】
まず、表10に示す組成の板厚1.4mmtの溶体化処理済の薄板を用いて、6%の条件で冷間圧延を行った。次に、この圧延材を1180℃に保持されたマッフル炉に投入し、大気中で1分間熱処理を行った。熱処理後は水冷し、表面の酸化スケール除去のために酸洗を行った。
【0063】
以上の手順により、得られた薄板の表面近傍の対応粒界頻度は、EBSD測定より、79.7%であった。また、表面近傍と板厚中央の結晶粒径比は1.56であった。
【0064】
原子炉制御棒は、特に沸騰水型原子炉用制御棒1は、図8に示すように制御棒支持構造体2と、この制御棒支持構造体2の軸心より四方に延びるように配設された4つのブレード3と、ブレード3が全体として横断面が十字型形状に取り付けられるタイロッド4と、により構成されている。この中のブレード3は、それぞれが中性子吸収材としてのハフニウムフラットチューブ7と、シース8から構成され、このハフニウムフラットチューブ7はシース8によって覆われた構造となっている。シース8は、所定の寸法に切断した後、パンチングにより冷却孔を設け、さらに曲げ加工により作製される。
【0065】
本実施例では、このシース8を、本発明の対応粒界頻度が70%以上得られる加工条件で加工を行った材料を用いて、原子炉制御棒の模擬体を試作した。その結果、製造の過程でシース材に欠陥は発生していなかったことがわかった。
【0066】
【表10】
以上述べたように、本発明により、対応粒界頻度が70%を越える、耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた材料の製造を短時間の熱処理加工で行う技術を提供することができることがわかった。よって、原子炉用制御棒のシース部分などの厚さの薄い材料においても、粒界腐食や応力腐食割れ(SCC)に対する抵抗を向上させた材料を作製することができ、原子力発電プラントの健全性劣化を抑制し、プラントを長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】圧延率0%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図2】圧延率2.2%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図3】圧延率4.1%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図4】圧延率6.2%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図5】圧延率8.0%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図6】圧延率10.1%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図7】CBB試験治具および試験片の配置を示す図。
【図8】本発明による薄板材の原子炉制御棒シースへの適用を示す図。
【図9】対応粒界頻度とCBB試験による割れ発生数比の関係を示す図。
【図10】対応粒界頻度とΣ3粒界頻度の関係を示す図。
【符号の説明】
【0068】
100a:ステンレス製治具、100b:ステンレス製治具、G:グラファイトウール、S:試験片、2:制御棒構造体、3:ブレード、4:タイロッド、7:ハフニウムフラットチューブ、8:シース
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さの薄い金属材料の製造を短時間の熱処理加工で行い、粒界腐食や応力腐食割れに対する抵抗を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉内の構成材料には、SUS304やSUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼や600合金等のNi基合金が使用され、これらの材料は一般的に耐食性に優れている。しかし、原子炉内のように高温高圧水中でさらに部位によっては、中性子やガンマ線照射環境で使用期間が長くなった場合、粒界腐食現象や応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking、以下SCCと略記する)現象を発生する。
【0003】
粒界腐食現象は、鋭敏化と呼ばれ、上記の金属材料の場合、粒界へCrが析出することに伴って、Cr欠乏層領域が発生し、その領域から集中的に腐食が進むことで起こる。粒界腐食現象は、粒界を伝って割れが発生するSCC現象の原因となる。
粒界腐食現象やSCC現象が発生すると、原子力発電プラントの健全性を損なうおそれがある。したがって、これまで耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ(耐SCC)性に優れた材料の開発が行われている。
【0004】
ところで、対応粒界頻度により耐粒界腐食性や耐SCC性を評価することができる。ここで、対応粒界頻度とは、全結晶粒界長さに占めるΣ値が29以下の粒界長さの割合を言う。
【0005】
Σ値については、ステンレス鋼便覧第3版(ステンレス協会編、日刊工業新聞社発行)p46〜48に記載されている。2つの結晶格子を仮想的に重ねると、特定の方位関係にある結晶では全体の格子の何割かが一致し、それ自体が超格子をつくる。この一致点格子の数と結晶格子点の数の比の逆数をΣ値という。
【0006】
特許文献1には、その対応粒界頻度が、所定の基準値以上となる耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた材料を製造する方法が記載されている。例えば、特許文献1に記載されている方法で、対応粒界頻度が86.5%のものを製造する場合には、900〜1000℃で5時間以上の熱処理が必要となる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−253401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1において行っている方法は、金属材料の対応粒界頻度を向上させるためには理想的な方法であるが、金属材料の製造に長時間の熱処理加工が必要となる。そのため、原子炉用制御棒のシース部分の作製に用いられる厚さの薄い金属材料を製造する場合には、熱処理時間が長くなると、金属材料にたわみが生じる。
【0009】
よって、本発明では、耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた材料の製造を短時間の熱処理加工で行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、NiあるいはFeを主体とする面心立方結晶からなる多結晶金属材料において、
少なくとも表面近傍の対応粒界頻度が70%以上であり、かつ、板厚中心に対する表面近傍の平均結晶粒径の比が1.0を超え5.0以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた材料の製造を短時間の熱処理加工で行う技術を提供することができる。よって、原子炉用制御棒のシース部分などの厚さの薄い材料においても、粒界腐食や応力腐食割れ(SCC)に対する抵抗を向上させた材料を作製することができ、原子力発電プラントの健全性劣化を抑制し、プラントを長寿命化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、以下に述べるようないくつかの観点で、熱処理を行う条件を変えた材料を作製し、対応粒界頻度を算出、および隙間付き定変位曲げ(CBB:Creviced Bent Beam、以下CBBと略記する)試験を行った。その粒界頻度算出結果およびCBB試験結果から、発明者らは70%以上で良好な耐粒界腐食性と耐SCC性を示すこと見出した。よって、対応粒界頻度が70%以上である金属材料を作製する熱処理の条件を、優れた耐SCC性を持つ材料の作製条件とした。
【0013】
以下の観点1〜5で行った実験結果を用いて、本発明をより具体的に説明する。
観点1:SUS316L(組成:表1)における圧延率と、対応粒界頻度と、の関係について
観点2:SUS316L(組成:表1)における熱処理時間と、対応粒界頻度と、の関係について
観点3:SUS316L(組成:表5)における圧延率と、対応粒界頻度と、の関係について
観点4:SUS316L(組成:表5)における熱処理時間と、対応粒界頻度と、の関係について
観点5:金属材料の組成と、対応粒界頻度と、の関係について
<観点1>(SUS316Lにおける圧延率との関係について)
観点1の実験では、まず、表1に示す組成の板厚2.5mmtの溶体化処理済板材を用い、0%(材料番号11)、2.2%(材料番号12)、4.1%(材料番号13)、6.2%(材料番号14)、8.0%(材料番号15)、10.1%(材料番号16)の条件の冷間圧延を施した。なお、表1に示す組成は、SUS316Lの組成である。次に、これらの圧延材を1000℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で1時間熱処理した。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が995℃に達してからの時間とした。
【0014】
【表1】
以上の手順により得られた材料番号11から16の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD:Electron Back Scatter Diffraction)のパターン観察を行った。材料番号11から材料番号16の結果をそれぞれ図1から図6に示す。図1から図6の黒い線がランダム粒界、白い線が対応粒界を示す。ここで、Σ3、Σ5、Σ9、Σ11、Σ13a、Σ17a、Σ29aは面心立方結晶(fcc)において、エネルギー極小値をもつことが知られている粒界であることから、本発明においてはΣ値が29以下の粒界を「対応粒界」と定義している。また、その他の粒界を「ランダム粒界」とする。
【0015】
また、対応粒界頻度は、以下の式から算出する。
【0016】
【数1】
ここで、「15°以下の粒界長さ」とは、隣り合う結晶粒の結晶方位角度が15°以下のものの粒界長さである。「15°を超える粒界長さ」は、隣り合う結晶粒の結晶方位角度が15°を超えるものの粒界長さである。「Σ≦29の粒界長さ」は、隣り合う結晶粒の結晶方位角度が15°を超えるもので、Σ値が29以上のものの粒界長さである。
【0017】
材料番号11から材料番号16までの各材料の対応粒界頻度の算出結果を表2に示す。
【0018】
また、材料番号11から材料番号16の各材料の耐SCC性を確認するために、CBB試験を行った。
【0019】
ここで、CBB試験方法を、図7を用いて説明する。まず、CBB試験に用いる試験片Sについて述べる。材料番号11から16の各材料に620℃、24時間の熱処理を行い、10%の冷間圧延を施し、10×50×2mmtのCBB試験片に加工を行った。そして、各材料とも3本ずつ用意した。
【0020】
CBB試験装置を図7に示す。CBB試験装置は、曲率100mmの凸部を有するステンレス製治具100aと、曲率100mmの凹部を有するステンレス製治具100bと、ステンレス製治具の間に位置するグラファイトウールGと、ステンレス製治具を締め付けるボルト(図示せず)と、を有する。
【0021】
材料番号11から材料番号16の各材料から作製した10×50×2mmtの試験片Sを曲率100mmの凸部を有するステンレス製治具100a上に設置し、その上にグラファイトウールGを乗せ、さらにその上に曲率100の凹部を有するステンレス製治具100bを設置する。試験片Sの曲率が100mmとなるまで治具100a、100bをボルトで締め付ける。試験片Sの曲率が100mmとなったとき、試験片Sの表面の歪量は1%となり、かつ、グラファイトウールGにより適度な隙間が付与される。これを所定の環境中に所定の時間浸漬し(温度288℃、溶存酸素濃度8ppm、導電率0.1μS/cm以下で2000時間)、試験片表面に発生した割れの本数、長さ、深さ等を計測し、応力腐食割れ(SCC)の感受性を相対的な評価を行った。
【0022】
材料番号11から材料番号16の各材料のCBB試験により発生した割れ本数比を表2に示す。表2では、材料番号11のCBB試験の割れ本数を1として、材料番号12から材料番号16の各材料の割れ本数比とした。
【0023】
【表2】
表2より、対応粒界頻度が上昇するとCBB試験での割れ発生が抑制され、耐SCC性が向上することがわかる。圧延率0%の材料(材料番号11)と、圧延率10.1%の材料(材料番号16)と、では、対応粒界頻度が70%以上得られなかった。また、CBB試験の結果である割れ本数比の値が高くなっていることがわかった。
【0024】
一方、圧延率2.2%〜8.0%の材料(材料番号12〜15)では、対応粒界頻度が70%以上得られた。また、割れ本数比の値が低くなっていることがわかり、
耐SCC性が大きく改善されていることがわかった。
【0025】
したがって、圧延率が1.0〜10%の材料では、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
【0026】
なお、表2の中では、圧延率4.1%の材料(材料番号13)が、対応粒界頻度87.5%と高く、割れ本数比が0.19と低いことがわかった。
<観点2>(SUS316Lおける熱処理時間との関係について)
観点2での実験では、観点1での実験と同様の組成(表1)の板厚2.5mmtの溶体化処理済板材で、4.1%の冷間圧延を施した材料を用いた。これらの圧延材を1000℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で、0.5分(材料番号21)、1分(材料番号22)、5分(材料番号23)、15分(材料番号24)、30分(材料番号25)、60分(材料番号26)、120分(材料番号27)の条件で熱処理を行った。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が995℃の温度に達してからの時間とした。
【0027】
以上の手順により得られた材料番号21から27の各材料の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD)のパターン観察を行い、対応粒界頻度を算出した。その結果を表3に示す。
【0028】
また、観点2での実験では、表面近傍と板厚中央との結晶粒径比を、EBSDの結果を用いて分析した。その結果を表3に示す。
【0029】
ここで、本発明の「表面近傍」とは、板厚が3.0mm以上の材料については表面から1mmの深さまでの領域と定義し、板厚が3.0mm未満のものは表面から板厚の1/3の深さまでの領域と定義する。さらに、「板厚中心」とは、板厚が3.0mm以上の材料については板厚中央を中心にした厚さ1mmの領域のことと定義する。
【0030】
そして、材料番号21から27の各材料についても耐SCC性を評価するために、材料番号21から27の各材料から試験片Sを作製し、CBB試験を実施した。材料番号21から27の各材料のCBB試験により発生した割れの本数比の結果を表3に示す。表3では、表1の材料番号11のCBB試験の割れ本数を1として、材料番号21〜27の材料の割れ本数比とした。
【0031】
【表3】
表3より、対応粒界頻度が上昇するとCBB試験での割れ発生が抑制され、耐SCC性が向上することがわかった。また、0.5分の熱処理を行った材料(材料番号21)と、1分の熱処理を行った材料(材料番号22)と、では対応粒界頻度が70%以上得られなかった。その為、CBB試験の結果である割れ本数比の値が高くなっていることがわかった。
【0032】
一方、熱処理を5〜120分間行った材料(材料番号23〜27)では、対応粒界頻度が70%以上得られた。また、割れ本数比の値が低くなっていることがわかり、耐SCC性が大きく改善されていることがわかった。また、熱処理を5〜120分間行った材料(材料番号23〜27)、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値は、1.08〜5.81であることがわかった。
【0033】
したがって、熱処理を1000℃の温度で、2〜120分間行った材料では、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。また、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値が、1.0〜5.0のとき、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
【0034】
また、観点2での実験では、熱処理温度1200℃においても、同様な加工および試験実施した。その結果を表4に示す。
【0035】
また、観点2での実験では、観点1での実験と同様の組成(表1)の板厚2.5mmtの溶体化処理済板材で、4.1%の冷間圧延を施した材料を、1200℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で、0.3分(材料番号31)、0.5分(材料番号32)、1分(材料番号33)、5分(材料番号34)、30分(材料番号35)、60分(材料番号36)、120分(材料番号37)の条件で熱処理を行った。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が1195℃の温度に達してからの時間とした。
【0036】
以上の手順により得られた材料番号31から37の各材料の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD)のパターン観察を行い、対応粒界頻度を算出した。その結果を表4に示す。
【0037】
また、EBSDの結果を用いて表面近傍と板厚中央との結晶粒径比を分析した結果を表4に示す。
【0038】
そして、材料番号31から37の各材料についても耐SCC性を評価するために、材料番号31から37の各材料から試験片Sを作製し、CBB試験を実施した。材料番号31から37の各材料のCBB試験により発生した割れの本数比の結果を表4に示す。表4では、表1の材料番号11のCBB試験の割れ本数を1として、材料番号31〜37の材料の割れ本数比とした。
【0039】
【表4】
表4より、1000℃で熱処理を行った場合(表3)と同様に、対応粒界頻度が上昇するとCBB試験での割れ発生が抑制され、耐SCC性が向上することがわかった。また、1000℃、0.5分の熱処理を行った材料(材料番号21)と、1000℃、1分の熱処理を行った材料(材料番号22)と、では対応粒界頻度が70%以上得られなかったが、1200℃で熱処理を行った場合は、熱処理を行う時間が0.3分の短時間であっても対応粒界頻度を70%以上に上昇させることがわかった。また、熱処理を行う時間が0.3分の短時間であっても、割れ本数比の値が低くなっていることがわかり、耐SCC性が大きく改善されていることがわかった。
【0040】
そして、熱処理を、1200℃で、0.3〜120分間行った材料(材料番号31〜37)、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値は、1.13〜3.56であることがわかった。
【0041】
したがって、熱処理を1200℃の温度で、0.1〜120分間行った材料では、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。また、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値が、1.0〜5.0のとき、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
<観点3>(SUS316Lにおける圧延率との関係について)
観点での実験では、表5に示す組成の板厚50.8mmtの溶体化処理済板材を用い、0%(材料番号41)、3%(材料番号42)、5%(材料番号43)、10%(材料番号44)の条件で冷間圧延を施した。なお、表5に示す組成は、SUS316Lの組成である。次に、これらの圧延材を1100℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で1時間熱処理した。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が1095℃に達してからの時間とした。
【0042】
【表5】
以上の手順により得られた材料番号41から44の各材料の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD)のパターン観察を行い、対応粒界頻度を算出した。その結果を表6に示す。
【0043】
また、材料番号41から44の各材料についても耐SCC性を評価するために、材料番号41から44の各材料から試験片Sを作製し、CBB試験を実施した。材料番号41から44の各材料のCBB試験により発生した割れの本数比の結果を表5に示す。表5では、表1の材料番号11のCBB試験の割れ本数を1として、材料番号41〜44の各材料の割れ本数比とした。
【0044】
【表6】
表6から対応粒界頻度が上昇するとCBB試験での割れ発生が抑制され、耐SCC性が向上することがわかった。圧延率0%(材料番号41)と、圧延率10%(材料番号44)では、対応粒界頻度が70%以上得られていないことがわかった。また、CBB試験の結果である割れ本数比の値が高くなっていることがわかった。
【0045】
一方、圧延率3%の材料(材料番号42)と、圧延率5%の材料(材料番号43)と、では、対応粒界頻度が70%以上得られた。また、割れ本数比の値が低くなっていることがわかり、耐SCC性が大きく改善されていることがわかった。
【0046】
したがって、圧延率が1.0〜8.0%の材料では、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
【0047】
なお、表4の中では、圧延率3%の材料(材料番号42)が、対応粒界頻度82.0%と高く、割れ本数比が0.2と低いことがわかった。
<観点4>SUS316L(組成:表5)における熱処理時間との関係について
観点4での実験では、観点3での実験と同様の組成(表5)の板厚50.8mmtの溶体化処理済板材で、3%の冷間圧延を施した材料を用いた。これらの圧延材を1100℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で、0.5分(材料番号51)、1分(材料番号52)、5分(材料番号53)、15分(材料番号54)、30分(材料番号55)、60分(材料番号56)、120分(材料番号57)の条件で熱処理を行った。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が1095℃の温度に達してからの時間とした。
【0048】
以上の手順により得られた材料番号51から57の各材料の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD)のパターン観察を行い、対応粒界頻度を算出した。その結果を表7に示す。
【0049】
また、観点4での実験では、表面近傍と板厚中央との結晶粒径比を、EBSDの結果を用いて分析した。その結果を表7に示す。
【0050】
そして、材料番号51から57の各材料についても耐SCC性を評価するために、材料番号51から57の各材料から試験片Sを作製し、CBB試験を実施した。材料番号51から57の各材料のCBB試験により発生した割れの本数比の結果を表7に示す。表7では、表1の材料番号11のCBB試験の割れ本数を1として、材料番号51〜57の材料の割れ本数比とした。
【0051】
【表7】
表7より、対応粒界頻度が上昇するとCBB試験での割れ発生が抑制され、耐SCC性が向上することがわかった。また、0.5分の熱処理を行った材料(材料番号51)と、1分の熱処理を行った材料(材料番号52)と、では対応粒界頻度が70%以上得られなかった。その為、CBB試験の結果である割れ本数比の値が高くなっていることがわかった。
【0052】
一方、熱処理を5〜120分間行った材料(材料番号53〜57)では、対応粒界頻度が70%以上得られた。また、割れ本数比の値が低くなっていることがわかり、耐SCC性が大きく改善されていることがわかった。また、熱処理を5〜120分間行った材料(材料番号53〜57)、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値は、1.21〜2.53であることがわかった。
【0053】
したがって、熱処理を1100℃の温度で、2〜120分間行った材料では、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。また、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値が、1.0〜5.0のとき、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
<観点5>(組成との関係について)
観点での実験5では、表8に示す組成、材料記号a〜gの板厚2.5mmtの溶体化処理済板材を用い、5%の冷間圧延を施した。これらの圧延材を1200℃に保持したマッフル炉に熱電対をガラス糸で結びつけ投入し、大気中で1分間熱処理した。熱処理後は水冷した。熱処理時間は熱電対の測定温度が1195℃に達してからの時間とした。なお、材料記号a〜gの材料は、それぞれ、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS310S、600合金、690合金である。
【0054】
加工条件を、圧延率5%、熱処理温度1200℃、熱処理時間1分間としたのは、
観点1〜4の実験において、対応粒界頻度が70%以上得られている条件である為である。
【0055】
【表8】
以上の手順により得られた材料記号aからgの各材料の表面近傍の対応粒界頻度算出するために電子後方散乱回折(EBSD)のパターン観察を行い、対応粒界頻度を算出した。その結果を表9に示す。
【0056】
また、EBSDのパターン観察結果を用いて、表面近傍と板厚中央との結晶粒径比および表面近傍と板厚中央との対応粒界頻度比を分析した結果を表9に示す。
【0057】
【表9】
表9より、加工条件が圧延率5%、熱処理温度1200℃、熱処理時間1分間のとき、を材料記号a〜gのいずれの材料でも、対応粒界頻度が78%以上得られていることがわかった。また、このとき、材料記号a〜gの材料における板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値は、1.25〜1.64であることがわかった。そして、材料記号a〜gの材料における板圧中心に対する表面近傍の対応粒界頻度の比の値は1.08〜1.16であった。よって、表面近傍と板厚中央の対応粒界頻度比の値が1.2以下であることがわかる。
【0058】
したがって、本発明の加工条件では、材料記号a〜gの材料において、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。また、板圧中心に対する表面近傍の平均粒子径の比の値が、1.0〜5.0のとき、対応粒界頻度が70%以上の値を得られ、耐SCC性が大きく改善されていることがわかる。
【0059】
これまで述べた、観点1〜5での実験結果から得られた、対応粒界頻度とCBB試験による割れ発生数比の関係を図9に示す。図9から対応粒界頻度が増加するに従い、割れ発生数が減少していくことがわかる。特に、対応粒界頻度が70%を超えると通常材の対応粒界頻度60%に比べ割れ発生数は1/2に低減でき、耐SCC性に優れることがわかる。このことから、材料加工条件として、対応粒界頻度を70%以上とすることは耐SCC性向上に有効であることがわかった。
【0060】
また、観点1〜5での実験結果から得られた、対応粒界頻度と、Σ3粒界頻度の関係を図10に示す。図10から対応粒界頻度が増加するに従い、Σ3粒界頻度が増加することがわかる。また、対応粒界頻度70%以上ではΣ3粒界頻度60%以上であることがわかった。よって、材料加工条件として、Σ3粒界頻度60%以上とすることは耐SCC性向上に有効であることがわかった。
【0061】
次に、上で述べた対応粒界頻度が70%以上得られる加工条件で加工を行った材料を用いて原子炉制御棒の模擬体の試作を行ったので、そのことについて述べる。
【0062】
まず、表10に示す組成の板厚1.4mmtの溶体化処理済の薄板を用いて、6%の条件で冷間圧延を行った。次に、この圧延材を1180℃に保持されたマッフル炉に投入し、大気中で1分間熱処理を行った。熱処理後は水冷し、表面の酸化スケール除去のために酸洗を行った。
【0063】
以上の手順により、得られた薄板の表面近傍の対応粒界頻度は、EBSD測定より、79.7%であった。また、表面近傍と板厚中央の結晶粒径比は1.56であった。
【0064】
原子炉制御棒は、特に沸騰水型原子炉用制御棒1は、図8に示すように制御棒支持構造体2と、この制御棒支持構造体2の軸心より四方に延びるように配設された4つのブレード3と、ブレード3が全体として横断面が十字型形状に取り付けられるタイロッド4と、により構成されている。この中のブレード3は、それぞれが中性子吸収材としてのハフニウムフラットチューブ7と、シース8から構成され、このハフニウムフラットチューブ7はシース8によって覆われた構造となっている。シース8は、所定の寸法に切断した後、パンチングにより冷却孔を設け、さらに曲げ加工により作製される。
【0065】
本実施例では、このシース8を、本発明の対応粒界頻度が70%以上得られる加工条件で加工を行った材料を用いて、原子炉制御棒の模擬体を試作した。その結果、製造の過程でシース材に欠陥は発生していなかったことがわかった。
【0066】
【表10】
以上述べたように、本発明により、対応粒界頻度が70%を越える、耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた材料の製造を短時間の熱処理加工で行う技術を提供することができることがわかった。よって、原子炉用制御棒のシース部分などの厚さの薄い材料においても、粒界腐食や応力腐食割れ(SCC)に対する抵抗を向上させた材料を作製することができ、原子力発電プラントの健全性劣化を抑制し、プラントを長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】圧延率0%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図2】圧延率2.2%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図3】圧延率4.1%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図4】圧延率6.2%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図5】圧延率8.0%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図6】圧延率10.1%、熱処理温度1000℃、熱処理時間1時間で加工熱処理した材料のEBSDによる粒界性格分析結果を示す図。
【図7】CBB試験治具および試験片の配置を示す図。
【図8】本発明による薄板材の原子炉制御棒シースへの適用を示す図。
【図9】対応粒界頻度とCBB試験による割れ発生数比の関係を示す図。
【図10】対応粒界頻度とΣ3粒界頻度の関係を示す図。
【符号の説明】
【0068】
100a:ステンレス製治具、100b:ステンレス製治具、G:グラファイトウール、S:試験片、2:制御棒構造体、3:ブレード、4:タイロッド、7:ハフニウムフラットチューブ、8:シース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NiあるいはFeを主体とする面心立方結晶からなる多結晶金属材料において、
少なくとも表面近傍の対応粒界頻度が70%以上であり、かつ、板厚中心に対する表面近傍の平均結晶粒径の比が1.0以上5.0以下である
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料。
【請求項2】
Cr:16.0〜26.0重量%、Ni:6.0〜22.0重量%を含有するFe基面心立方晶合金からなる多結晶金属材料において、
少なくとも表面近傍の対応粒界頻度が70%以上であり、かつ板厚中心に対する表面近傍の平均結晶粒径の比が1.0以上5.0以下である
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料。
【請求項3】
Cr:14.0〜31.0重量%、Fe:6.0〜11.0重量%を含有するNi基面心立方晶合金からなる多結晶金属材料において、
少なくとも表面近傍の対応粒界頻度が70%以上で、かつ、板厚中心に対する表面近傍の平均結晶粒径の比が1.0以上5.0以下である
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多結晶金属材料であって、
少なくとも表面近傍のΣ3粒界の割合が60%以上である
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の多結晶金属材料において、
板厚中心の対応粒界頻度に対し表面近傍の対応粒界頻度が1.2倍以下である
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の多結晶金属材料において、
圧延率が1%以上10%未満の冷間圧延を施した後、1000〜1200℃の温度で0.1分以上120分以下の熱処理を施す
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の厚さ2.5mmt以下の多結晶金属材料において、
圧延率が1%以上10%未満の冷間圧延を施した後、1000〜1200℃の温度で0.1分以上120分以下の熱処理を施す
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料の製造方法。
【請求項1】
NiあるいはFeを主体とする面心立方結晶からなる多結晶金属材料において、
少なくとも表面近傍の対応粒界頻度が70%以上であり、かつ、板厚中心に対する表面近傍の平均結晶粒径の比が1.0以上5.0以下である
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料。
【請求項2】
Cr:16.0〜26.0重量%、Ni:6.0〜22.0重量%を含有するFe基面心立方晶合金からなる多結晶金属材料において、
少なくとも表面近傍の対応粒界頻度が70%以上であり、かつ板厚中心に対する表面近傍の平均結晶粒径の比が1.0以上5.0以下である
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料。
【請求項3】
Cr:14.0〜31.0重量%、Fe:6.0〜11.0重量%を含有するNi基面心立方晶合金からなる多結晶金属材料において、
少なくとも表面近傍の対応粒界頻度が70%以上で、かつ、板厚中心に対する表面近傍の平均結晶粒径の比が1.0以上5.0以下である
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多結晶金属材料であって、
少なくとも表面近傍のΣ3粒界の割合が60%以上である
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の多結晶金属材料において、
板厚中心の対応粒界頻度に対し表面近傍の対応粒界頻度が1.2倍以下である
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の多結晶金属材料において、
圧延率が1%以上10%未満の冷間圧延を施した後、1000〜1200℃の温度で0.1分以上120分以下の熱処理を施す
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の厚さ2.5mmt以下の多結晶金属材料において、
圧延率が1%以上10%未満の冷間圧延を施した後、1000〜1200℃の温度で0.1分以上120分以下の熱処理を施す
ことを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた金属材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−84650(P2009−84650A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257247(P2007−257247)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
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