説明

耐放射線ヘッド分離型撮像装置

【課題】十全な放射線遮蔽と利便性を両立した耐放射線ヘッド分離型撮像装置を提供する。
【解決手段】耐放斜線ヘッド分離型撮像装置であって、入光部から入射した光は、光学的光路変更手段で光路を変更し、着脱可能なカートリッジ式内子10内にある撮像素子4の撮像面に入射する。撮像素子4は交換可能なカートリッジ式内子10上に配置されているため、カートリッジ式内子のみを交換する。希少重金属を主成分とする放射線遮蔽部材を採用し、撮像素子撮像面及び背面が相対する壁面の肉厚が他の部分より厚い構造になっている。放射線遮蔽部材および精密な光学部品は外筐体を成し、繰り返して使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射雰囲気で使用される耐放射線ヘッド分離型撮像装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来放射線照射雰囲気で使用される耐放射線撮像装置としては、例えば特開平07−248396が公知である。(特許文献1参照)
【0003】
上記発明は、放射線遮蔽部材を備えた外側ケースと撮像素子を備えた着脱可能な内側ケースにより構成された筐体型カメラであり、入射光を光学的光路変更手段により導入している。放射線遮蔽部材は前方壁部を側方壁部よりも厚くしている。また光学的光路変更手段は角度調節可能である。この発明は放射線の放射方向が特定できる場合には、必要最低限の放射線遮蔽部材により撮像素子を保護するので、カメラの小型化、軽量化が可能となる。また光学的光路変更手段が調節可能なためカメラの向きを変えずに任意の被写体を撮像することが、場合により可能である。
【0004】
また、放射線が全方向から照射することを想定した耐放射線撮像装置としては特開平04−188098が公知である。(特許文献2参照)
【0005】
上記発明はフラスコ型の遮蔽体を有し、内部空洞にCCDカメラを配置し、全方向からの放射線照射に対しCCDを遮蔽している。
【特許文献1】特開平07−248396公報
【特許文献2】特開平04−188098公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1の発明では、放射線の放射方向が特定できない場合には、耐放射線耐用性が弱い撮像素子を十分に遮蔽できない場合がある。また特許文献2の発明では全方向からの放射線照射に対応するために遮蔽体が全ての方向に肉厚になり、カメラが重量化、大型化してしまう。
【0007】
本発明の目的は、放射線が全方向から照射することを想定しつつ、撮像素子に対する十全な放射線遮蔽を施し、カメラヘッド部の軽量化、小型化を可能とし、被検体自体の構造が複雑な場合や狭い空間での使用等の空間的制約が大きい場合等でもカメラの操作性を損なわず、コストの増加を抑制した耐放射線ヘッド分離型撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして本発明は上記目的を達成するために、放射線照射雰囲気で使用される、撮像素子からの映像信号を出力する機能を有するカメラヘッド部と該映像信号を処理する信号処理手段を有するカメラコントロールユニット部が分離した耐放射線ヘッド分離型撮像装置であって、該カメラヘッド部は、先端面に光学的部材よりなる入光部と、前記カメラヘッド部内部に形成された格納空間に、該入光部からの入射光を中央部方向に光路を変更する光学的手段と、該光学的手段により光路を変更された入射光を受光する撮像素子を備えており、前記カメラヘッド部は前期入光部以外の部分が放射線遮蔽部材の壁面で覆われていることを特徴とする耐放射線ヘッド分離型撮像装置に関するものである。
【0009】
また、第2の課題解決手段は、上記入光部が上記カメラヘッド部の先端面の中央部に対し偏芯の位置に配置されたことを特徴とする耐放射線ヘッド分離型撮像装置に関するものである。
【0010】
また、第3の課題解決手段は、放射線遮蔽部材は上記撮像素子の撮像面及び背面が相対する壁面が他の壁面より肉厚であることを特徴とする耐放射線ヘッド分離型撮像装置に関するものである。
【0011】
また、第4の課題解決手段は、上記撮像素子がカートリッジ式内子形状を成し、上記カメラヘッド部内部に形成された格納空間に挿入及び着脱自在な入れ子構造であることを特徴とする耐放射線ヘッド分離型撮像装置に関するものである。
【0012】
また、第5の課題解決手段は、上記放射線遮蔽部材が希少重金属を含有することを特徴とする耐放射線ヘッド分離型撮像装置に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放射線が全方向から照射することを想定しつつ、撮像素子に対する十全な放射線遮蔽を施し、かつカメラヘッド部の軽量化、小型化を可能とし、被検体自体の構造が複雑な場合や狭い空間での使用等の空間的制約が大きい場合等でもカメラの操作性を損なわず、コストの増加を抑制可能な耐放射線ヘッド分離型撮像装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例を示す。
【実施例】
【0015】
図1は本発明の実施例を示す概念図である。実施例は、カメラヘッド部13と、カメラコントロールユニット部16及びこれらを接続するカメラケーブル11より構成される耐放射線ヘッド分離型撮像装置19である。
【0016】
本実施例の断面図を図2に示す。図2は図1のX−X断面図で、図1及び図2のYは入射光の光路を示す。光学的部材であるカバーガラス1を通して入射した光は、レンズ2aで屈折した後、光学的光路変更手段3で光路を略90度変更し、再度レンズ2bで屈折した後、着脱可能なカートリッジ式内子10内にある撮像素子4の撮像面17に入射する。撮像素子4としては、CCD、CMOS、その他入手可能な素子が適宜使用可能である。また光学的光路変更手段3としては、ミラー、プリズムなどが使用可能であり、レンズ2a及び2bは耐放射線ノンブラウニングレンズを使用することが可能である。
【0017】
本実施例では、光学的部材であるカバーガラス1を通して入射した光は、レンズ2aで屈折した後、光学的光路変更手段3で光路を略90度変更されているが、カメラヘッド部の形状、大きさなどにより、適切な光路変更角度を取ることが出来る。
【0018】
本実施例では、光路変更を1回行う構造となっているが、カメラヘッド部の形状、大きさ
などにより、複数回の光路変更を行うことが出来る。また光路変更を奇数回行った場合
は、使用上の便宜を考慮して、撮像素子14からの映像を電気的に反転する手段をカメ
ラコントロールユニット部16に備えることも出来る。
【0019】
本実施例の特徴である、撮像素子からの映像信号を出力する機能を有するカメラヘッド部と該映像信号を処理する信号処理手段を有するカメラコントロールユニット部が分離したヘッド分離型について説明する。カメラヘッド部13は撮像素子4および必要最小限の撮像素子周辺回路9のみで構成されており、その他の回路たとえば信号処理回路や撮像素子駆動回路などはカメラコントロール部16に格納されているので、これらの回路部品が放射線に暴露されることはない。これによりカメラヘッド部13の小型化、軽量化が可能になり、被検体自体の構造が複雑な場合や狭い空間での使用等の空間的制約が大きい場合等でもカメラの操作性を損なわず、かつカメラヘッド部13の交換頻度も低減しコスト上昇も抑制できる。
【0020】
本実施例では、光の入射する入光部14がカメラヘッド中心18に対して偏芯した位置に配置しており、かつ光学的光路変更手段3により入射光の光路を略90度中心部方向に屈折しているので、撮像素子4の撮像面は入射光に対して直角の方向を向いている。本実施例では図3の入光部からの直射光の範囲Cに示すように、放射線が放射線遮蔽部材5を経ずに撮像素子4の撮像面17及び背面に直接入射しない位置に撮像素子を配置としている。撮像素子等の撮像素子は撮像面の対放射線耐用性が著しく劣るので、放射線の撮像面への直接照射を避けることにより撮像素子の耐放射線耐用性が向上する。又撮像素子4の撮像面の背面の相対する壁面は全て放射線遮蔽部材5に覆われている。
【0021】
本実施例の特徴である放射線遮蔽部材について説明する。例えば撮像素子の代表的なものとしてCCDを例にとって説明すると、CCDではシリコン基板表面に入射した光を電荷に変換し(光電変換)、シリコン基板表面の電気的ポテンシャルの変化によりその電荷を転送する表面素子であるので、光電変換および電荷転送を行うシリコン基板表面の放射線暴露を極力小さくすることが肝要である。またCCD以外の撮像素子についても同様のことが言える。本実施例では、撮像素子4の撮像面17および背面の放射線遮蔽部材5を他の部分より厚くし(図2.の厚みA)、その他の部分の放射線遮蔽部材5を厚くせずに(図2.の厚みB)、効率的に放射線を遮蔽する。
【0022】
放射線の撮像素子に対する損傷度は、撮像素子の撮像面に垂直に照射される場合が最大で、撮像面の側面、すなわち水平に照射される場合が最小である。全方向からの放射線照射が均一であると想定されるので、撮像面に対し45度で入射することが平均値として想定される。本実施例で、例えば図4に示すように撮像素子4の撮像面17に対し45度の角度で入射する放射線Zを想定すると、撮像面17に達するまでに放射線Zが通過する放射線遮蔽部材5の放射線遮蔽の実効的な厚さはB×√2となる。図4に示した例は最も効果的に放射線を遮蔽している例であるが、例え一部でも直接照射する放射線を遮蔽することにより撮像素子の損傷度を低減可能である。
【0023】
本実施例の特徴であるカートリッジ式内子10について説明する。撮像素子4は交換可能なカートリッジ式内子10上に配置されているため、放射線により撮像素子4の寿命がきたときは、カートリッジ式内子10のみを交換する。放射線遮蔽部材5、および精密な光学部品、例えばカバーガラス1、レンズ2a及び2b、光学的光路変更手段3等は外筐体12を成し、繰り返して使用できる。
【0024】
本実施例の特徴であるまた放射線遮蔽部材に希少重金属を含有していることについて説明する。従来放射線遮蔽部材5には鉛が汎用されていたが、環境影響を考慮し、放射線遮蔽部材5としては、タングステン、モリブデン、ビスマスなどの希少重金属を主成分として用いることも可能である。タングステン、モリブデン、ビスマスなどの希少重金属は一般に効果であるが、本発明によりコストの上昇が抑制可能である。
【0025】
タングステン、モリブデン、ビスマスなどの希少重金属は脆性が比較的劣るので、本実施例では、カメラヘッド部13の脆性を向上するために放射線遮蔽部材5の外側を脆性、加工性及び耐蝕性が比較的優れた金属製外殻20で被覆している。金属製外殻20にはステンレスなど脆性、加工性及び耐蝕性が比較的優れた材質の金属が使用可能である。
【0026】
また本実施例ではカメラヘッド部13が水中で使用できるように、光の入射するカバーガラス1と外筺体12、及びカートリッジ式内子10と外筺体12の係合は、いずれもOリング7などにより原子炉検査用水中カメラとして使用可能な密閉防水構造をとっている。本実施例は、ヘッド分離型を採用しているので、カメラヘッド部13は撮像素子4および必要最小限の撮像素子周辺回路9から構成されており、発熱量の多い信号処理回路や撮像素子駆動回路などの回路はカメラコントロール部16に配置されているので、カメラヘッド部13を防水のために密閉防水構造にしてもカメラヘッド部13の温度上昇はわずかであり、温度上昇によるカメラ動作の不具合は生じない。また脆性、加工性及び耐蝕性が優れた金属製外殻20によりカメラヘッド部13の脆性を向上させているので、密閉防水構造の耐久性が優れている。
【0027】
また本実施例では、原子炉内構造物の遠隔目視検査で使用することも想定し、カメラヘッド部13とカメラコントロールユニット部16を接続するカメラケーブル11の長さを30m以上が好ましい。ケーブル長については適宜採用できる。
【0028】
また本実施例では、放射線遮蔽構造の効率化によりカメラヘッド部13の小型化、軽量化されカメラヘッド部13の潜在的利用可能な内部空間が増大するので、検査での操作性の向上のため、カメラヘッド部13にリモートフォーカスレンズ用駆動手段9を配置している。
【0029】
また本実施例では、放射線遮蔽構造の効率化によりカメラヘッド部13の小型化、軽量化されカメラヘッド部13の潜在的利用可能な内部空間が増大するので、カメラヘッド部13に照明手段を配置することが可能である。照明手段としては対放射線耐用性が優れた発光ダイオードなどを使用することができる。また同様の理由により被写体への照準指示機能、例えばレーザーマーカーなどをカメラヘッド部13に配置することが可能である。
【0030】
カメラヘッド部13の正面からの形状は、カメラヘッド部13の内部構造に応じて放射線遮蔽構造の効率が最適化される形状、例えば楕円形、小判型、円形などを取ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、原子力発電所等における対放射線耐用性が優れた目視検査用撮像装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明実施例の外観図である。
【図2】本発明実施例のカメラヘッド部側面の断面図である。
【図3】本発明実施例の撮像素子と入光部の配置関係を示すカメラヘッド部側面の断面図である。
【図4】本発明実施例の撮像素子の撮像面に対し、45度の角度で入射する放射線の光路を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1、カバーガラス
2a、2b レンズ
3、 光学的光路変更手段
4、撮像素子
5、15 放射線遮蔽部材
6、フランジ
7a、7b Oリング
8、リモートフォーカスレンズ用駆動手段
9、撮像素子周辺回路
10、カートリッジ式内子
11、カメラケーブル
12、外筐体
13、カメラヘッド部
14、入光部
16、 カメラコントロールユニット部
17、 撮像素子撮像面
18、 カメラヘッド中心部
19、 耐放射線ヘッド分離型撮像装置
20、 金属製外殻
A、 撮像素子撮像面及び背面が相対する放射線遮蔽部材の厚さ
B、 撮像素子撮像面及び背面が相対さない部分の放射線遮蔽部材の厚さ
C、 入光部からの直射光に曝される範囲
X−X、 断面図2の切断線
Y、 入射光の光路
Z、 45度で入射した放射線の光路

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線照射雰囲気で使用される、撮像素子からの映像信号を出力する機能を有するカメラヘッド部と該映像信号を処理する信号処理手段を有するカメラコントロールユニット部が分離した耐放射線ヘッド分離型撮像装置であって、該カメラヘッド部は、先端面に光学的部材よりなる入光部と、前記カメラヘッド部内部に形成された格納空間に、該入光部からの入射光を中央部方向に光路を変更する光学的手段と、該光学的手段により光路を変更された入射光を受光する撮像素子を備えており、前記カメラヘッド部は前期入光部以外の部分が放射線遮蔽部材の壁面で覆われていることを特徴とする耐放射線ヘッド分離型撮像装置。
【請求項2】
上記入光部が上記カメラヘッド部の先端面の中央部に対し偏芯の位置に配置されたことを特徴とする請求項1記載の耐放射線ヘッド分離型撮像装置。
【請求項3】
上記放射線遮蔽部材は上記撮像素子の撮像面及び背面が相対する壁面が他の壁面より肉厚であることを特徴とする請求項1または2記載の耐放射線ヘッド分離型撮像装置。
【請求項4】
上記撮像素子がカートリッジ式内子形状を成し、上記カメラヘッド部内部に形成された格納空間に挿入及び着脱自在な入れ子構造であることを特徴とする請求項1〜3記載の耐放射線ヘッド分離型撮像装置。
【請求項5】
上記放射線遮蔽部材が希少重金属を含有することを特徴とする請求項1〜4記載の耐放射線ヘッド分離型撮像装置。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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