説明

耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙

【課題】アニオン性のインクを使用したインクジェットプリンターで記録画像を形成した後に、雨水や水滴等の水濡れの影響により、得られた圧着葉書用紙が破れ、又は剥けを生じ、さらに水濡れの影響で記録画像部のインクの溶出、又はにじみが生じ記録情報が読み取れないなどといった種々の耐水性の問題を解決する。
【解決手段】接着剤基剤と微粒子充填剤とを主成分としてなる感圧接着剤層を基紙の少なくとも一方の最外層に設けてなる耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙であって、該基紙が、原紙に樹脂成分を主剤とする含浸液を含浸処理したものであることを特徴とする。また、該含浸液および該感圧接着剤層に特定量のカチオン性物質を含有する、あるいはカチオン性物質含有層を基紙と感圧接着剤層の間に設けることで、インクの耐水性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙に関するものである。さらに詳しくは、アニオン性のインクを使用したインクジェット記録方式で記録画像を形成した後に、得られた圧着葉書用紙が雨水や水滴等の水濡れの影響により破れや剥けを生じることがなく、さらにインクジェット記録画像部のインクが水濡れの影響により溶出又はにじみ出ることがない、圧着葉書用紙およびインクの両方の耐水性を兼ね備えた耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
郵送コストの低減を目的として、封書に替わり「圧着葉書」が多方面で利用されている。この構成の一例として、圧力により接着可能な再剥離型の感圧接着剤を基紙に塗工した用紙を用い、固定情報をフォーム印刷機で印刷し、次いで親展情報をレーザープリンターやインクジェットプリンターなどのノンインパクトプリンターで印字した後に、2つ折り若しくは3つ折りに折り畳んで葉書の大きさに切断し、最後に加圧ロール間に通して親展面同士を接着することで葉書を製造する方法がある。受取人は葉書を受け取った後に接着された親展面を剥離して親展情報を読み取ることができ、剥離した後は通常の方法では再接着できない工夫がなされており、親展性を有するハガキシステムとして実用化され、普及している。
【0003】
前記感圧接着剤は、特許文献1や特許文献2に提案されているように、接着剤基剤に特定粒径のシリカや澱粉粒子を適宜配合して得られ、その感圧接着剤層同士を対接させた状態で強圧をかけることにより、互いの高分子が自己拡散により密着するタイプのものであった。
【0004】
前記ハガキシステムにおいて、親展情報を印字するノンインパクトプリンターとして、近年、レーザープリンターに替わりインクジェットプリンターが多用されるようになり、親展情報の記録のみならず固定情報から親展情報に至るまでの全ての情報をインクジェットプリンターにより記録するシステムが指向されてきた。この理由は、高速記録が可能であり、且つカラー化に代表される高画質化も容易であるといったインクジェットプリンターの技術的な進歩が著しいことによる。
【0005】
しかしながら、従来の圧着葉書用紙の感圧接着剤層はインクジェットプリンターで記録を行うことについての配慮がなされていなかったため、インクジェット記録を行った際に画像記録部におけるインクの吸収が遅く、そのために該プリンターのロールをインクで汚してしまい、これが蓄積されて用紙を汚すといったトラブルや、圧着した後で剥離する際に画像記録部が対向面に転写してしまい、文字の判読を困難にしてしまうなどといった種々のトラブルが発生し指摘を受けていた。
【0006】
一方、従来の圧着葉書用紙は、郵送途中あるいは郵便受け等で雨水や水滴等によって濡れると、以下に示すような様々な問題が発生することが指摘されてきた。
【0007】
第一に、従来の圧着葉書用紙は上記のような水濡れ、あるいは高湿度下に長時間にさらされると、親展面を剥離して親展情報を読み取る際に、感圧接着剤の界面で剥離すべきところが紙層が剥離してしまい受取人に知らせるべき情報が読み取れなくなってしまうという問題があった。第二に、圧着葉書用紙が長時間水濡れ状態、あるいは高湿度下にさらされると、圧着葉書用紙が水分を吸収することによってその表面の強さが極度に弱くなってしまい、手指等で軽く擦っただけで用紙表面に紙剥けが発生したり、宛名面等の情報が消えてしまったり、甚だしい場合には圧着葉書自体が破れてしまい、圧着葉書としての機能を失ってしまうといった問題があった。
【0008】
上記のような問題は、水濡れや高湿度環境下による圧着葉書用紙の湿潤に対する紙力を考慮していない、従来の圧着葉書用基紙を使用した際に発生する現象である。かかる基紙が水に濡れた場合に紙破れ又は剥けが発生する原因として、水分の吸収により圧着葉書用紙の基紙自体の紙層間強さが低下し、尚且つ感圧接着剤の接着強さが上昇してしまうことが考えられる。このことから、剥離時に用紙の紙剥けあるいは破れといった「基紙の耐水性」の問題を解決する方法がいくつか提案されてきた。
【0009】
例えば特許文献3には湿潤紙力増強剤を使用することにより圧着葉書用紙の基紙自体の湿潤紙力強度を向上する手段が、特許文献4には用紙の所定面に耐水化剤とバインダーの混合物からなる耐水処理層を設けるか、もしくは基紙自体を例えば合成紙のような耐水性を有する部材から構成することで優れた耐水性を有する手段が、特許文献5には紙基材と接着剤層との間に撥水剤層を形成することで水濡れなどによる紙剥け、紙基材破れ等の問題を解決する提案が、特許文献6には感圧接着剤組成物に粒子径の異なる耐水性微粒状充填剤を特定量配合することにより、水濡れ又は高湿度の環境下で放置されても、接着力が大きく上昇せず、優れた耐水性を有することが提案されてきた。
【0010】
上記で述べたような「基紙の耐水性」に関する提案は、レーザープリンターを使用するシステム用に開発された圧着葉書用紙に関するものである。一方でインクジェットプリンターを使用するシステム用として開発された、親展性を有する圧着葉書用紙(本発明では、以下「インクジェット記録用圧着葉書用紙」という)は、特に上述したように用紙が水濡れ状態にさらされた場合において、「基紙の耐水性」の問題に加えて、水濡れにより用紙に固着していたアニオン性のインクが溶出またはにじみ出てしまい、親展情報が読み取れなくなってしまうといったインクジェットプリンター独特の「インクの耐水性」に関する新たな問題が発生することが十分に考えられるが、この問題に関してはこれまでに対応できていないのが現状であった。
【0011】
前記した「インクの耐水性」に関する問題を解決するために、以下に述べるような種々の提案がなされてきた。しかし、これらはいずれもアニオン性のインクをカチオン性物質により水に溶け難くするということを基本原理としている。
【0012】
例えば、特許文献7には弱カチオン性のポリアミド系樹脂を圧着葉書用接着剤に配合し、凝集を防いで安定した接着剤組成物を得、これを使用したインクジェット記録用擬似接着紙の提案が、特許文献8には、高pH域で電荷が零乃至負となるカチオン性ポリマーと、重合燐酸塩及び多価金属塩類を接着剤に配合することで、イオン的に安定な接着剤組成物を得、これを使用したインクジェット用圧着紙の提案が、特許文献9には、接着剤に特定の量のポリジメチルアミンエピクロルヒドリン系ポリカチオン(PDMAE)を加えてイオン返しを起こし、イオン的に安定な接着剤組成物を得、これを使用したインクジェット用圧着紙の提案が、特許文献10には、天然ゴム系エマルジョンにポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂あるいは水溶性変性ポリアミン系樹脂を配合し、インクジェット用インクの耐水性を確保し、また特定量の非イオン系界面活性剤を配合することで塗工液の安定性を確保し、これを使用した再剥離性圧着葉書用記録紙の提案が、特許文献11には、カチオン性単量体混合物及びアニオン性単量体混合物を含んで成る単量体を共重合した両性高分子と、従来の感圧接着剤の接着成分を含んでなる感圧接着剤によってインクジェットプリンターによる印字の耐水性及び接着剤の分散安定性にも優れるという提案が、さらには特許文献12には、接着剤成分にアセトアセチル化ポリビニルアルコール、両性高分子、カチオン性高分子を配合することで、分散安定性に優れインクジェット記録された印字の耐水性に優れる感圧接着剤が提案されてきた。
【0013】
上述したように「基紙の耐水性」という特性は、いずれもレーザープリンターを使用するシステムを想定して考案されたものであり、その一方で「インクの耐水性」という特性はインクジェット記録用圧着葉書用紙に限定される特性である。両者を組み合わせただけでは、基紙およびインクジェットプリンター用インクの耐水性の付与といった両方の特性を同時に満たすことはできず、且つ優れたインクジェット記録適性を有する圧着葉書用紙が求められていた。
【0014】
【特許文献1】特開平7−276858号公報
【特許文献2】特公平5−57118号公報
【特許文献3】特開平7−276858号公報
【特許文献4】特開平7−309086号公報
【特許文献5】特開2002−23643号公報
【特許文献6】特開2001−335761号公報
【特許文献7】特開平9−71758号公報
【特許文献8】特開平9−157611号公報
【特許文献9】特開平10−52985号公報
【特許文献10】特開平10−337980号公報
【特許文献11】特開2000−204339号公報
【特許文献12】特開2001−311065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はアニオン性のインクを使用したインクジェット記録方式で記録画像を形成した後に、雨水や水滴等の水濡れの影響により、得られた圧着葉書用紙が破れたり、あるいは紙剥けを生じ、さらに水濡れの影響で画像記録部のインクの溶出、またはにじみが生じることで記録情報が読み取れないなどといった「基紙の耐水性」と「インクの耐水性」を同時に解決し、さらに優れたインクジェット記録適性をも有する耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、接着剤基剤と微粒子充填剤とを主成分としてなる感圧接着剤層を基紙の少なくとも一方の面の最外層に設けてなる耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙であって、該基紙が、原紙に樹脂成分を主剤とする含浸液を含浸処理したものであることを特徴とする耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙である。
【0017】
本発明の請求項2に係る発明は、樹脂成分が、熱可塑性を有することを特徴とする請求項1に記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙である。
【0018】
本発明の請求項3に係る発明は、含浸液が、カチオン性物質を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙である。
【0019】
本発明の請求項4に係る発明は、含浸液が樹脂成分とカチオン性物質を含有し、その質量比が、樹脂成分100質量部に対して0.5〜40質量部であることを特徴とする請求項3に記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙である。
【0020】
本発明の請求項5に係る発明は、基紙の両面にカチオン性物質含有層を設け、さらにその少なくとも一方の面の上層に該感圧接着剤層を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙である。
【0021】
本発明の請求項6に係る発明は、感圧接着剤層がカチオン性物質を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙である。
【0022】
本発明の請求項7に係る発明は、基紙が古紙処理装置でリサイクル可能な離解性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、圧着葉書用紙としての基本的な接着特性を満たし、オフセット印刷およびインクジェット適性に優れ、且つ得られた圧着葉書用紙が雨水や水滴等の水濡れにさらされた場合に破れや剥けがなく、又水濡れの影響でインクジェット記録画像部のインクの溶出やにじみにより画像が読み取れないなどといった種々の問題を解消する耐水性に優れ、さらに基紙が古紙処理装置でリサイクル可能な離解性を有する耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の基紙は、原紙に樹脂成分を主剤とする含浸液を含浸処理したものである。
【0025】
本発明の含浸液が含浸される原紙は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの木材パルプ、藁パルプ、麻パルプ、ケナフパルプ、コットン、コットンリンター、コットンラグなどのような非木材パルプ、マーセル化パルプのような変成パルプ、ナイロン繊維やレーヨン繊維等の合成繊維や半合成繊維、フィブリル化したポリエチレンに代表される合成パルプ等、製紙用パルプ単独あるいは2種類以上を併用することができる。なお、得られる原紙の密度が含浸液の含浸性に大きな影響を及ぼすためパルプの選択にあたっては密度がつき難いものを選択する必要がある。
【0026】
本発明で使用する原紙は、含浸液を容易に含浸処理できる必要がある。本発明で使用する原紙の密度は0.50g/cm3以下であることが好ましい。原紙の密度が0.50g/cm3を超えると、空隙が少なくなるため含浸性は悪くなるので好ましくない。原紙の密度が0.45g/cm3以下になると含浸性がさらに向上するので、より好ましい。
【0027】
また、含浸性を損なわない範囲であれば、一般的な抄紙薬品はどれでも使用することができる。例えば紙力増強剤としてポリアクリルアミド、糊化澱粉、糊化変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ホルマリン系紙力剤、エピクロルヒドリン系紙力剤、スチレンアクリル等が必要に応じて1種類以上使用出来る。紙力増強剤の添加量については、含浸時に紙切れを起こさない強度を保つことが可能な量を添加することが望ましい。また、含浸性の調整用としてサイズ剤、例えばロジン系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤、AKD、ASA等が必要に応じて1種類以上使用することができる。また染料、着色顔料やクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の填料、定着剤などを必要に応じて適宜併用してもよい。
【0028】
本発明における含浸液の主剤である樹脂成分としては、例えば、ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体、アクリル酸及びメタクリル酸の重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体ラテックス、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−エチレン−スチレン共重合体等のビニル系重合体ラテックス;あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による変性重合体ラテックス、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂等の合成樹脂系接着剤、メラミン樹脂、ユリア樹脂等などの熱硬化性樹脂等が挙げられ、この中から少なくとも1種類以上の樹脂成分で構成される。また、特にアクリル酸エステル共重合体やスチレン−アクリル酸エステル共重合体などの熱可塑性を有する樹脂は、含浸時の目止め効果に優れるので好ましい。なお、含浸時の目止め効果を補助する役割として、例えば、ポリビニルアルコールとその変性物やポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、各種デンプンとその変性物、ゼラチン、カゼインなどの水溶性バインダーを必要に応じて適宜添加してもよい。
【0029】
本発明で用いられる含浸液には、主剤となる樹脂成分以外の添加剤として、無機、有機等の各種顔料、顔料分散剤、サイズ剤、ワックス、着色剤、増粘剤、流動性調整剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、防腐剤、消臭剤、消泡剤、抑泡剤、発泡剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤等を必要に応じて適宜加えてもよい。また、後述するように、インクの耐水性を付与する目的でカチオン性物質を適宜添加することもできる。
【0030】
また、本発明において使用される基紙は古紙処理装置でリサイクル可能な離解性を有することが好ましい。古紙処理装置でリサイクル可能な離解性を有するとは、再生紙の製造が可能な程度の離解性を有することを示す。古紙処理方法としては、新聞古紙や段ボール古紙等からの製紙用繊維の回収におけるフローテーション法や洗浄法、また、紙の製造工程で発生する古紙におけるビーターやパルパー等により、離解して繊維を回収するなどの周知の方法が適用できる。
【0031】
古紙から繊維を回収処理する系の中には、一般的に印刷インキ中に含まれるベヒクルや古紙に含まれるロジンサイズ剤を鹸化させ、その除去を助長する目的でアルカリ性物質、たとえば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、消石灰等を添加することは公知である。通常、この系のアルカリ濃度は0.01〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲である。また、古紙処理装置では、スラリーを80℃以上の温度にすることはきわめて困難かつ危険となる。以上の観点からインクジェット記録用圧着葉書用紙の古紙処理を考える際には、ここで使用される樹脂成分は80℃以下の温度で、尚且つ上記アルカリ濃度で溶解する樹脂を使用することが好ましい。
【0032】
本発明において使用される基紙は、原紙に樹脂成分を主剤とした含浸液を公知の方法を用いて含浸し、その後乾燥処理することで得ることができる。含浸液の含浸量は、原紙に対して5〜50質量%(乾燥質量比で)、好ましくは10〜45質量%の範囲である。本発明における原紙の含浸処理は、最終的に「基紙の耐水性」を発現することになるが、この理由は樹脂成分がパルプ繊維間の接合部を覆う目止めの役割を果たし、パルプの水素結合による強度に加えてさらに樹脂成分に由来する強度が加わるからであると推定される。含浸量が5質量%より少ないと目止めの効果が得にくく、目的とする「基紙の耐水性」が得られない場合があるので好ましくない。また、50質量%を超えると不必要に基紙のバリア性が高くなり、その結果インクジェットプリンターのインクの吸収性を阻害したり、あるいは古紙処理の際に容易に離解が進まずコストアップにつながったりすることで古紙として再利用できず分別が必要になるので好ましくない。
【0033】
次に本発明の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙の構成例を説明する。
(1)原紙に樹脂成分を主剤とする含浸液を含浸処理して得た基紙の少なくとも一方の面に、カチオン性物質を含有した配合の感圧接着剤層を設ける構成。
(2)原紙に樹脂成分を主剤とする含浸液を含浸処理して得た基紙の両面にカチオン性物質含有層を設け、さらにその少なくとも一方の上層にカチオン性物質を除外した配合の感圧接着剤層を設ける構成。
(3)原紙に樹脂成分を主剤とし、且つカチオン性物質を含有する含浸液を含浸処理して得た基紙の少なくとも一方の面に、カチオン性物質を除外した配合の感圧接着剤層を設ける構成。
【0034】
本発明による耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙においては、前記した構成のようにインクジェットプリンターのアニオン性インクに耐水性を付与するために、さらに詳しくは、インクジェットプリンターを使用して記録した画像部に水が付着してもアニオン性インクが溶出することがないようにするために、カチオン性物質を感圧接着剤に含有するか、あるいは基紙と感圧接着剤層との間にカチオン性物質を含有する塗工層を設けるか、あるいはカチオン性物質を基紙に含有する必要がある。これらはいずれもアニオン性のインクをカチオン性物質により水に溶け難くするということを基本原理としている。
【0035】
本発明で使用する感圧接着剤、またはカチオン性物質含有層、または基紙に含有されるカチオン性物質としては、いずれも公知のものを使用することができる。すなわち、ポリエチレンイミン、金属の水溶性塩、ポリビニルピリジウムブロマイド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン有機酸塩、カチオン性コロイダルシリカ、第4級アンモニウム塩型高分子電解質、ジアルカノールアミノ変性アルキレングリコール誘導体、アクリルアミド・ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合体、2級アミンとエピハロヒドリンとを反応させて得られるカチオン性樹脂、ジシアンジアミド系カチオン樹脂等であり、これらの1種類以上を使用することができる。
【0036】
本発明者らが検討した結果では、その中でもカチオン性のエピハロヒドリン系樹脂が耐水性を発現する効果に優れ、また耐光性にも優れることを見いだした。本発明で使用するカチオン性のエピハロヒドリン系樹脂としては、アンモニアおよび/またはポリアミン類および/またはポリアミド類とエピハロヒドリンを反応させて得られるカチオン性の樹脂が耐光性に優れるので、特に好適に使用できる。例えばポリアミン類としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルオクチルアミン、メチルラウリルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン、ピペリジン、ピロール、カルバゾール等の1種類以上を使用し、ポリアミド類としては、ポリアルキレンポリアミンと二塩基性カルボン酸を脱水縮合させたポリアルキレンポリアミドや、ポリアルキレンポリアミンと尿素を脱アンモニア縮合させたポリアミドポリ尿素、N−ビニルアミド系モノマー、エチレン−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド共重合体と塩酸を反応させた4級塩等の1種類以上を使用し、エピハロヒドリンとしてはエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン等の1種類以上を使用し、公知の手段を用いて重合してエピハロヒドリン系のカチオン樹脂を得る。
【0037】
本発明者が検討した結果、エピハロヒドリン系樹脂の中でも、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミン・エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミドポリアミン・エピクロルヒドリン樹脂からなる群のいずれか1種類以上であると特に好ましい。
【0038】
本発明において、カチオン性物質を感圧接着剤に含有する場合、カチオン性物質の使用量は、接着剤基剤100質量部に対して0.5〜50質量部、好ましくは1〜30質量部である。カチオン性物質の使用量が0.5質量部より少ないとインクジェットプリンターによる画像記録部におけるインクの耐水性が不十分となるので好ましくない。また、50質量部を超えると、重ね合わせ面における接着層同士の接着力が低下し、適切な剥離性能が得られ難くなるので好ましくない。
【0039】
一方、カチオン性物質含有層を基紙と感圧接着剤層との間に設ける場合、このカチオン性物質の塗工層を形成する手段としては、基紙を製造後にエアーナイフコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター等の公知の塗工方法を使用して塗工することができる。塗工量は、通常固形分で0.1〜10g/m、好ましくは2〜4g/mである。塗工量が0.1g/m未満であるとインクジェットプリンターによる画像記録部におけるインクの耐水性が不足し、10g/mを超えると効果がそれ以上期待できず、コスト高となるので好ましくない。
【0040】
また、本発明におけるカチオン性物質含有層は、カチオン性物質以外の添加剤として、無機、有機等の各種顔料、水溶性バインダー、着色剤、消泡剤、増粘剤、流動性調整剤、老化防止剤、pH調整剤、防腐剤、消臭剤、消泡剤等の一般的な塗工薬品を必要に応じて適宜加えてもよい。
【0041】
また、本発明者が検討した結果、カチオン性物質を含浸液に含有する場合、カチオン性物質の使用量は、樹脂成分100質量部に対して0.5〜40質量部、好ましくは1〜30質量部である。カチオン性物質の使用量が0.5質量部より少ないとインクジェットプリンターの画像記録部におけるインクの耐水性が不十分となり、40質量部を超えると効果がそれ以上期待できず、またコスト高となったり、さらには古紙処理の際に容易に離解が進まない場合があるので好ましくない。
【0042】
なお、カチオン性物質を感圧接着剤および含浸液に含有させる場合、該感圧接着剤または該含浸液にジルコニウム化合物、特に炭酸ジルコニウムアンモニウムを含有すると、該感圧接着剤または該含浸液が経時で増粘したり凝集したりすることなく、保存中の分散状態が安定であり、且つ塗工または含浸時にも分散状態が安定するので好ましい。
【0043】
本発明で使用する感圧接着剤は、通常状態では接着することがなく加圧により接着し且つ必要時に剥離し得る接着剤、いわゆる粘着層を形成するものであって、接着剤基剤と微粒子充填剤とを主成分としてなり、これを基紙の少なくとも一方の最外層に設けることで耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙が得られる。
【0044】
感圧接着剤の基剤は接着剤主剤と補助接着剤とからなる。接着剤主剤としては、水性高分子である天然ゴムラテックスやMGラテックスと呼ばれるメタクリル酸メチルグラフト重合天然ゴム系ラテックス、アクリル系ラテックス等が使用できる。これらはカチオン変性されているものも使用できる。また、補助接着剤として、SBRラテックスとその(カチオン又は両性)変性物やNBRラテックス、ウレタンエマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン、ポリビニルアルコールとその変性物やポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、各種デンプンとその変性物、ゼラチン、カゼイン、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ウレタン、ポリアクリルアミド等が使用できる。
【0045】
上記の接着剤主剤(天然ゴムラテックス、MGラテックス、アクリル系ラテックス等)と補助接着剤(SBRラテックス、NBRラテックス、PVA等の水溶性バインダー等)との配合割合は、感圧接着剤の接着力と、基紙への定着性や接着層皮膜の凝集力とのバランスに影響するため適度に調整する必要があり、接着剤主剤と補助接着剤とは質量比で97:3〜50:50であることが好ましい。補助接着剤が3質量部未満の場合は、感圧接着剤の基紙への定着性が低下し、逆に補助接着剤が50質量部を超える場合は、重ね合わせ面における接着層同士の接着力が低下するため適切な剥離性能が得られないので好ましくない。
【0046】
本発明で使用される感圧接着剤組成物においては微粒子充填剤を配合する必要がある。微粒子充填剤としては、接着剤との親和力が小さいものであって且つ粒子形状が規則的に整ったものを用いるのが好ましい。このようなものとしては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、サチンホワイト、珪藻土、ガラス粉末、シラスバルーン、活性白土、穀物デンプン粒子及びその変性物、ゼオライト、微球状アクリル樹脂、微球状メタクリル樹脂、微球状ポリエチレン、プラスチックピグメント等が挙げられる。これらの微粒子充填剤は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0047】
また、本発明で使用される接着剤においては、接着剤基剤100質量部に対して、微粒子充填剤を30〜300質量部、好ましくは60〜250質量部の範囲で配合するのが好ましい。30質量部未満ではインクジェットプリンター適性が劣るため、耐ブロッキング性が低下したり接着力が強すぎて剥離しにくくなるので好ましくない。また、300質量部を超えると接着力が低くなりすぎたり、オフセット印刷機で印刷しフォーム加工する際に、感圧接着剤層が摩耗したり脱落し、その結果ブランケット等を汚すという問題を発生する危険があるので好ましくない。
【0048】
このようにして得られる接着剤基剤には、必要に応じて粘着剤に慣用されている添加剤、例えば粘着付与剤、粘度調整剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、着色剤、防腐剤、消臭剤、消泡剤などを必要に応じて適宜添加することができる。
【0049】
本発明において使用される感圧接着剤は、グラビアコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、バーコーターなどの公知の塗工手段により基紙に塗工される。基紙への感圧接着剤の塗工量は、感圧接着剤層の接着性、剥離性などを考慮し、1〜30g/m、好ましくは3〜15g/m、さらに好ましくは5〜10g/mとするのがよい。
【0050】
本発明による耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を使用した三つ折り葉書を製造する一例を図に基づいて説明する。図1は本発明の三つ折り葉書の表面展開図、図2はこの葉書の裏面展開図、図3はこの葉書を折り込む際の状態説明図である。本発明の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙は、先ず所定巾にスリットされ、ロール状に巻き取られ、その表裏面に所定情報がフォーム印刷機(オフセット輪転印刷機がほとんどである)で印刷される。ついでその両端にノンインパクトプリンターでの紙送りを正確にするためのスプロケット穴1が開けられる。次いで、コンピューターに蓄積された各種データより、宛名A、秘匿すべき情報B、C、E、Fがノンインパクトプリンターにより印字される。次いで用紙は、B面とC面が接するように、且つE面とF面が接するように、折り線部2a、2bで連続的に折り込まれ、シーラーのロール間を通過する際に高い圧力(通常は線圧で40kgf/cm以上)を掛けられることにより貼合され、次いで1枚ずつ葉書の形に切断される。これにより受取人は該圧着葉書を剥離することにより印字された秘匿情報を読むことができる。この際剥離を容易にするために端部に剥離剤を印刷しておく等の公知の方法を適宜施すこともできる。
【0051】
次に本発明の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を使用した二つ折り葉書を製造する一例を図に基づいて説明する。図4は本発明の二つ折り葉書の表面展開図、図5はこの葉書の裏面展開図、図6は葉書を折り込む際の状態説明図である。本発明の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙は、先ず所定巾にスリットされ、ロール状に巻き取られ、その表裏面に所定情報がフォーム印刷機(オフセット輪転印刷機がほとんどである)で印刷される。ついでその両端にノンインパクトプリンターでの紙送りを正確にするためのスプロケット穴3が開けられる。次いで、コンピューターに蓄積された各種データより、宛名G、秘匿すべき情報I、Jがノンインパクトプリンターにより印字される。次いで用紙は、I面とJ面が接するように、折り線部2a、2bで連続的に折り込まれ、シーラーのロール間を通過する際に高い圧力(通常は線圧で40kgf/cm以上)を掛けられることにより貼合され、次いで1枚ずつ葉書の形に切断される。これにより受取人は該圧着葉書を剥離することにより印字された秘匿情報を読むことができる。この際剥離を容易にするために端部に剥離剤を印刷しておく等の公知の方法を適宜施すこともできる。なお、二つ折り葉書の場合、感圧接着剤は基紙の片面(I−J面)に設ければよい。
【0052】
本発明によって得られる耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙の用途として、二つ折り、三つ折り、切り重ね、あるいは別体同士の重ね合わせなど、各種の重ね合わせの形で、一時的には接着するが、必要に応じて容易に剥離できる見開き面を有する葉書、各種帳票、通知書、各種カードなどを挙げることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。また、以下の質量部は、固形分換算を意味する。
【0054】
(実施例1)
[原紙の製造]
針葉樹晒クラフトパルプ20質量部、広葉樹晒クラフトパルプ80質量部を430mlC.S.F.に叩解し、ポリアクリルアミド系紙力剤(商品名「アラフィックス100」、荒川化学工業(株)製造)0.2質量部、硫酸バンド3.0質量部を添加して紙料を調整し、長網抄紙機を使用して坪量85g/m(乾燥質量、以下同じ)の紙を抄造し、カレンダーで厚さ調整して密度0.45g/cm3の原紙を得た。
【0055】
[基紙の製造]
上記原紙に、熱可塑性を有する樹脂成分としてアクリル酸エステル共重合体(商品名「NIPOL SX1705」、日本ゼオン(株)製造)を含浸液として、20g/m含浸処理し基紙を得た。
【0056】
[感圧接着剤の塗工]
上記のようにして得られた基紙の両面に、下記のような処方の感圧接着剤をエアーナイフコーターを使用して、6g/m 塗工し耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0057】
[感圧接着剤の処方]
メタクリル酸メチル(MMA)グラフト共重合天然ゴム系ラテックスとして、天然ゴム(NR)100質量部とMMA17.6重量部とを混合してグラフト共重合して得たMMAグラフト共重合天然ゴムエマルジョン100質量部に対して、SBRラテックス(商品名「Nipol LX430」、日本ゼオン(株)製)を10質量部となるように配合した接着剤基剤100質量部に対し、シリカゲル(商品名「ファインシールX37B」、トクヤマ(株)製)120質量部、スターチ(商品名「AS−225」、千葉製粉(株)製)30質量部、ポリビニルアルコール(商品名「PVA117」、(株)クラレ製)3質量部、炭酸ジルコニウムアンモニウム(商品名「ベイコート20」、日本軽金属(株)製)15質量部、カチオン性物質としてジメチルアミン・エピクロルヒドリン共重合体(商品名「ポリフィックス700」、昭和高分子(株)製造)15質量部を配合し、本発明に使用する感圧接着剤を調製した。
【0058】
(実施例2)
実施例1における含浸液中の熱可塑性を有する樹脂成分として、スチレン−ブタジエン共重合体(商品名「Nipol LX407S」、日本ゼオン(株)製造)とした以外は実施例1と同様にして、耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0059】
(実施例3)
実施例1における含浸液中の熱可塑性を有する樹脂成分として、メラミン樹脂(商品名「Sumirez Resin 8% AC」、住友化学(株)製造)とした以外は実施例1と同様にして、耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0060】
(実施例4)
感圧接着剤を基紙の片面に塗工した以外は実施例1と同様にして、耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0061】
(実施例5)
実施例1において含浸処理された原紙を基紙として、その両面にジメチルアミン・エピクロルヒドリン共重合体(商品名「ポリフィックス700」、昭和高分子(株)製造)を2g/mずつブレードコーターを使用して塗工してカチオン性物質含有層を設け、その片面にジメチルアミン・エピクロルヒドリン共重合体を除外した以外は実施例1と同一となる感圧接着剤を塗工して、耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0062】
(実施例6)
ジメチルアミン・エピクロルヒドリン共重合体(商品名「ポリフィックス700」、昭和高分子(株)製造)を樹脂成分100質量部に対して10質量部加えた以外は実施例1と同一となる含浸液を、実施例1と同一の原紙に含浸して基紙を得た後、更にその片面にジメチルアミン・エピクロルヒドリン共重合体を除外した以外は実施例1と同一となる感圧接着剤を塗工して、耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0063】
(比較例1)
含浸処理を施さない以外は実施例1と同様にして、耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0064】
(比較例2)
ジメチルアミン・エピクロルヒドリン共重合体を除外した以外は実施例1と同一となる感圧接着剤を塗工する以外は実施例1と同様にして、耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0065】
(比較例3)
アクリル酸エステル共重合体(商品名「NIPOL SX1705」、日本ゼオン(株)製造)を、55g/m含浸処理して基紙を得た以外は実施例1と同様にして、耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0066】
(比較例4)
ジメチルアミン・エピクロルヒドリン共重合体を樹脂成分100質量部に対して0.45質量部加えた以外は実施例6と同様にして、耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0067】
このようにして得られた実施例1〜6および比較例1〜4の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙の製造直後におけるT型剥離接着力、印刷試験による表面強度、用紙の耐水性等を下記の方法により評価し、評価結果を表1に示した。
【0068】
[T型剥離接着力の測定方法]
実施例1〜6および比較例1〜4で得られた耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙を、幅25mm、長さ100mmに裁断して試料を作成し、この試料2枚を25mmの長さで重ね合わせ7MPaの荷重を加えて圧着した。接着剤の剥離接着強さ試験方法JIS
K 6854に準じて、万能試験機(商品名「テンシロン」、(株)オリエンテック製)を用いてT型剥離接着力を測定した。単位はgf/25mmとし、以下のように4段階評価して、△以上を合格とした。
◎:100〜150、
○:150〜200あるいは50〜100、
△:200〜300あるいは30〜50、
×:300以上あるいは30以下
【0069】
[印刷試験による表面強度]
RIテスターを使用し、上記実施例1〜6および比較例1〜4で得られた耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙をインキタック20で印刷した際に、感圧接着剤層が転写ロールに付着するか否かを観察した。また、該転写ロールをA2コート紙に転写させ、その発色濃度を測定した。なお、前記耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙の代わりにA2コート紙を使用して印刷し、このときの転写ロールをさらに別のA2コート紙に転写した際の発色濃度が1.5になるようにインキの盛り量を調整した。以下の通りに評価して採点し、転写ロールにおける付着物の評価結果の点数と、発色濃度の評価結果の点数との合計が、4点:◎、 3点:○、 2点:△、 1〜0点:×として印刷試験による表面強度を評価した。△以上を合格とした。
転写ロールに塗工層が全く付着しない :2点
転写ロールに塗工層がルーペで見て付着:1点
転写ロールに塗工層が肉眼で見て付着 :0点
転写部の発色濃度が1.4を超える :2点
転写部の発色濃度が1.0〜1.4 :1点
転写部の発色濃度が1.0未満 :0点
【0070】
[印字特性]
インクジェットプリンター(商品名:BJC−820、キャノン(株)製)にサイテックス社製黒インク#1007を注入し、画像面積率が10〜100%の所定のパターンを印字し、インクの吸収性とインクの耐水性について評価した。
【0071】
[インク吸収性]
印字直後におけるインクの吸収性を目視評価した。△以上を合格とした。
面積率100%が完全に吸収:◎
面積率90%が完全に吸収:○
面積率80%が完全に吸収:△
それ以下:×
【0072】
[インクの耐水性]
印字1時間後に1分間サンプルを水中に浸漬し、インクが水中へにじみ出る状態を目視
観察した。○以上を合格とした。
面積率100%が流れ出ない:◎
面積率90%が流れ出ない:○
それ以下:×
【0073】
[基紙の耐水性(紙層破壊)]
印字1時間後に、サンプルを接着力が100gf/25mm(JIS K 6854に準じる)となるように圧着し、それぞれを水中に24時間浸漬処理した。次いで、接着された面を指で剥離し、基紙の紙層破壊が起こるか否かを目視評価した。○以上を合格とした。
紙層破壊が全く無い:○
エッヂ部分のみで紙層破壊が発生:○
エッヂ部分以外で、一部に紙層破壊が発生:△
全面で紙層破壊が発生:×
【0074】
【表1】

【0075】
表1の結果より、以下のことがわかる。
(1)実施例1〜6のいずれも印刷試験、インク吸収性、インク耐水性、基紙の耐水性において実用的に十分な性能を有していることがわかる。
(2)実施例1、2と実施例3の対比から、熱可塑性を有する樹脂成分を含浸すると、基紙の耐水性に一層優れる。
(3)原紙に含浸処理を施した実施例と、施さない比較例1との対比から、原紙に含浸処理を施すと基紙の耐水性が格段に向上することがわかる。
(4)カチオン性物質を含有した層を設けるか、又はカチオン性物質を感圧接着剤層に含有するか、又はカチオン性物質を基紙に含有させた実施例1〜5と、カチオン性物質を含有しない比較例2との対比から、カチオン性物質を含有するとインクの耐水性は格段に向上することがわかる。
(5)実施例6と比較例4の対比からわかるように、含浸液にカチオン性物質を特定量含有することで、インク耐水性が優れることがわかる。
(6)比較例3から、樹脂の含浸率が多いとインク吸収に対するバリア性が高くなりすぎて、インク吸収性が不良となり、実用的に問題があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明による耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙は、二つ折り、三つ折り、切り重ね、あるいは別体同士の重ね合わせなど、各種の重ね合わせの形で、一時的には接着するが、必要に応じて容易に剥離できる見開き面を有する葉書、各種帳票、通知書、各種カードなどに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の三つ折り葉書の表面展開図
【図2】図1の葉書の裏面展開図
【図3】図1の葉書を折り込む際の状態説明図
【図4】本発明の二つ折り葉書の表面展開図
【図5】図4の葉書の裏面展開図
【図6】図4の葉書を折り込む際の状態説明図
【符号の説明】
【0078】
1、3: スプロケット穴
2a、2b、4: 折り線
A、G: 宛名
B、C、E、F、I、J: 秘匿すべき情報
D、H :折り畳んだあとの葉書裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤基剤と微粒子充填剤とを主成分としてなる感圧接着剤層を基紙の少なくとも一方の面の最外層に設けてなる耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙であって、該基紙が、原紙に樹脂成分を主剤とする含浸液を含浸処理したものであることを特徴とする耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙。
【請求項2】
樹脂成分が、熱可塑性を有することを特徴とする請求項1に記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙。
【請求項3】
含浸液が、カチオン性物質を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙。
【請求項4】
含浸液が樹脂成分とカチオン性物質を含有し、その質量比が、樹脂成分100質量部に対して0.5〜40質量部であることを特徴とする請求項3に記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙。
【請求項5】
基紙の両面にカチオン性物質含有層を設け、さらにその少なくとも一方の面の上層に該感圧接着剤層を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙。
【請求項6】
感圧接着剤層がカチオン性物質を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙。
【請求項7】
基紙が古紙処理装置でリサイクル可能な離解性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐水性インクジェット記録用圧着葉書用紙。





























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−272800(P2006−272800A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96681(P2005−96681)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【Fターム(参考)】