説明

耐水性エマルジョン組成物

【課題】 粘度安定性および耐水性に優れ、さらに、安全性の点でも優れている耐水性エマルジョン組成物を提供する。
【解決手段】 ビニルアルコール単位を85モル%以上有するPVA(a)を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる少なくとも一種以上の単量体単位からなる重合体微粒子(b)を分散質とする水性エマルジョン(A)、およびアクリル酸とアセタール基含有エチレン性不飽和単量体との共重合により得られる、該アセタール基含有エチレン性不飽和単量体に由来する単位を5〜40モル%含むポリアクリル酸系共重合体(B)を含有し、(A)と(B)の比率(A):(B)が固形分重量比で100:1〜100:20である耐水性エマルジョン組成物によって、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性エマルジョン組成物に関する。更に詳しくは、特定のビニルアルコール系重合体を保護コロイドとする水性エマルジョンと、特定のアクリル酸とアセタール基含有エチレン性不飽和単量体との共重合体を主成分とする、粘度安定性および耐水性(耐煮沸性)に優れ、さらに安全性の点でも優れている耐水性エマルジョン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール系重合体(以下、PVAと略記することがある)は、エチレン性不飽和単量体、特に酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体の乳化重合用保護コロイドとして広く用いられている。PVAを保護コロイドとして用い、ビニルエステル系単量体を乳化重合して得られるビニルエステル系水性エマルジョンは、紙用、木工用およびプラスチック用などの各種接着剤、含浸紙用および不織製品用などの各種バインダー、混和剤、打継ぎ材、塗料、紙加工および繊維加工などの分野で広く用いられている。このような水性エマルジョンは、乾燥条件下においては強固な機械強度を有する皮膜を形成することで上記各種用途において有用な効果を発揮するものの、高湿度あるいは水湿潤条件においては、皮膜中で連続相を形成するPVAが水溶性であるためにPVAの溶出や吸水が大きく、機械強度が顕著に低下するという問題がある。
【0003】
このようなことから、PVAを保護コロイドとするエマルジョンから得られる皮膜の耐水性、耐熱水性を高めるために、これまでに種々の手段が試みられてきた。その代表例として、PVAを保護コロイドとするエマルジョンに多価イソシアネート化合物を配合する方法が知られている。この方法では、イソシアネート化合物がPVAの水酸基等と強固に反応するために顕著な耐水性が発現するが、一方で、イソシアネート化合物は水とも反応するため、エマルジョンのポットライフが非常に短く、作業性に問題がある。
以上の点から、PVAを保護コロイドとする水性エマルジョンを用いた接着剤について、種々の提案がなされている。例えば、(1)PVAを分散剤とした水性エマルジョン、およびグリオキザールなどの脂肪族アルデヒドからなる接着剤(特許文献1)、(2)PVA、水性エマルジョン、架橋剤、およびキトサンなどのアミノ化合物からなる接着剤(特許文献2)、(3)PVA、水性エマルジョン、塩化アルミニウムなどの架橋剤ならびに多価イソシアネート化合物からなる接着剤(特許文献3)、(4)炭素数4以下のα−オレフィン単位を有するPVAを分散剤とするエマルジョンを主成分とする接着剤(特許文献4)、(5)カルボキシル基変性PVA存在下に乳化重合して得られるエマルジョン、ポリアミドとエポキシ基含有化合物との反応物からなる組成物(特許文献5)、(6)分子内にα−オレフィン単位を有するPVA系重合体とカルボキシル基を有するPVA系重合体を分散剤とする水性エマルジョン、エポキシ化合物、アミノ基含有水性樹脂、アルミニウム化合物およびチタン化合物から選ばれる耐水化剤からなる組成物(特許文献6)などが知られている。
しかしながら、(1)、(2)、(4)、(5)および(6)の接着剤においては、耐水性の改善効果は認められるものの、耐煮沸性の点で必ずしも十分ではない。また(3)の接着剤は粘度放置安定性が悪く(つまりポットライフが短く)、作業性に問題がある。したがって、高度な耐水性、とくに耐煮沸性と、粘度放置安定性を両立する水性分散液、組成物、接着剤およびコーティング剤は現在の技術レベルでは存在しないといっても過言ではなく、なお一層の改良の余地がある。
【0004】
【特許文献1】特開昭55−094937号公報
【特許文献2】特開平03−045678号公報
【特許文献3】特公昭57−016150号公報
【特許文献4】特開平08−081664号公報
【特許文献5】特開平06−128495号公報
【特許文献6】特開2001−040231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消して、粘度安定性および耐水性に優れ、さらに、安全性の点でも優れている耐水性エマルジョン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ビニルアルコール単位を85モル%以上有するPVA(a)を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる少なくとも一種以上の単量体単位からなる重合体微粒子(b)を分散質とする水性エマルジョン(A)、およびアクリル酸とアセタール基含有エチレン性不飽和単量体との共重合により得られる、該アセタール基含有エチレン性不飽和単量体に由来する単位を5〜40モル%含むポリアクリル酸系共重合体(B)を含有し、(A)と(B)の比率(A):(B)が固形分重量比で100:1〜100:20である耐水性エマルジョン組成物が上記本発明の課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明の耐水性エマルジョン組成物は、有害な成分を含んでいないことから安全性が高く、かつ、保存安定性に優れ、さらには極めて高い耐水性および耐煮沸性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いられるPVA(a)は、ビニルアルコール単位を85モル%以上有するものであれば特に制限されるものではないが、好適には86〜99.9モル%であり、86.5〜99.6モル%がより好ましく、87〜99.5モル%がさらに好ましい。ビニルアルコール単位が85モル%より小さい場合は、得られるエマルジョン組成物の耐水性が不十分となる。
【0009】
PVA(a)の重合度は本発明の特徴を損なわない限り特に制限されるものではないが、一般に200〜4000であり、より好ましくは300〜3500あり、特に好ましいのは350〜3000である。重合度が200未満のPVAを用いると、得られるエマルジョン組成物の粘度安定性が低下することがあり、また、重合度が4000を超えると、工業的な生産が困難になる上、水性エマルジョンの重合安定性が低下することがある。なお、ここでいう重合度とは、JIS−K6726に記載された方法で求められる平均重合度をいう。
【0010】
PVA(a)としては、通常は、酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体を各種方法(塊状重合、メタノール等を溶媒とする溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)で重合した後、常法によりけん化することによって得られるPVAが用いられる。なお、上記のビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル以外に、ギ酸ビニル,プロピオン酸ビニル,バーサチック酸ビニル,ピバリン酸ビニルなどを用いることも可能である。
【0011】
また、PVA(a)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ビニルエステル系単量体と共重合可能な単量体を共存させ、共重合することも可能である。共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類、メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル、メタクリロニトニル等のニトリル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメット酸または無水イタコン酸等のカルボキシル基含有化合物及びそのエステル、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有化合物、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート等のジアセトン基含有化合物、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン化合物、酢酸イソプロペニル、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
また、チオール酢酸,メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合し、それをけん化することによって得られる末端変性物を用いることもできる。
【0012】
また、PVA(a)は、水溶性を維持し、かつ、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のPVAを後反応により変性した変性PVAを用いることも可能である。後反応により変性したPVAとしては、例えば、ブチルアルデヒド等のアルデヒドで変性した各種アセタール化PVA、ジケテンで変性したアセトアセチル基変性PVA等が挙げられる。
【0013】
PVA(a)としては、上記のようにビニルアルコール単位を85モル%以上有する各種のものが使用できるが、特に、エチレン由来の単位を2〜8モル%含有するエチレン変性PVA、およびアセトアセチル基変性PVAを使用した場合に、本発明の目的である、粘度安定性、耐水接着性が特に優れる耐水性エマルジョン組成物が得られる。
【0014】
PVA(a)としてエチレン変性PVAを用いる場合、エチレンによる変性量は2〜8モル%であることが好ましく、2〜7.5モル%であることがより好ましい。変性量が2モル%未満の場合には、耐水性の顕著な向上が見られない場合があり、8モル%を超えると粘度安定性が低下する場合がある。
【0015】
PVA(a)としてアセトアセチル変性PVAを用いる場合の、アセトアセチル基による変性量は2〜8モル%であることが好ましく、2〜7.5モル%であることがより好ましい。変性量が2モル%未満の場合には、耐水性の顕著な向上が見られない場合があり、8モル%を超えると粘度安定性が低下する場合がある。
【0016】
本発明の耐水性エマルジョン組成物を構成する水性エマルジョン(A)は、上記のビニルアルコール単位を85モル%以上有するPVA(a)を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる少なくとも一種以上の単量体単位からなる重合体微粒子(b)を分散質とする。ここで、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる少なくとも一種以上の単量体単位からなる重合体微粒子(b)は、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる少なくとも一種以上の単量体を各種の方法により重合し、場合によっては微粒子化することにより得られるが、一般的には、PVA(a)を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体およびジエン系単量体から選ばれる少なくとも一種の単量体を水性媒体中で乳化重合する方法が、一段階で本発明の水性エマルジョン(A)が工業的に得られるという点で好ましい。
【0017】
重合体微粒子(b)を構成するエチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオリドなどのハロゲン化オレフィン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの四級化物、さらには、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩などのアクリルアミド系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸およびナトリウム、カリウム塩などのスチレン系単量体、その他N−ビニルピロリドンなど、また、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体が挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマール酸、(無水)マレイン酸、(無水)フタル酸、ケイ皮酸などのカルボキシル基を有する単量体も、そのまま、あるいは、ナトリウム塩などの中和物、ハーフエステルなどの形態で用いることができる。N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのメチロール基あるいはアルコキシメチル基を有する単量体、ジアセトンアクリルアミド等のジアセトン基を有する単量体、アセトアセトキシエチルアクリレートおよびアセトアセトキシエチルメタクリレート等のアセトアセチル基を有する単量体、また、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン基を有する単量体、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を有する単量体、ビニルオキサゾリン、2−プロペニル−2−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有する単量体なども本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。上記不飽和単量体の中でも、ビニルエステル系単量体、エチレンとビニルエステル系単量体およびビニルエステルと(メタ)アクリル酸エステル系単量体の併用が好適であり、工業的な観点から、ビニルエステル系単量体としては酢酸ビニルが特に好ましい。
【0018】
上記のように本発明において水性エマルジョン(A)を得る方法としては、PVA(a)の存在下、水性媒体中で上記エチレン性不飽和単量体およびジエン系単量体から選ばれる一種以上の単量体単位を乳化重合する方法が好ましく、その場合、温度、圧力、攪拌速度等は、従来公知の乳化重合の条件が採用される。単量体の添加は、初期の一括添加、連続添加、単量体プレ乳化液添加(単量体を分散安定剤水溶液に乳化したものを連続添加)等で行われる。開始剤としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の従来公知の開始剤が用いられ、場合によっては、酒石酸、L-アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤との組合せによるレドックス系開始剤を用いることもできる。重合体微粒子(b)の平均粒子径は、一般的には0.05〜10μmであり、粘度安定性等を損なわない範囲としては0.1〜5μmが好ましい。
【0019】
本発明において用いられる水性エマルジョン(A)において、エマルジョンの水相中に存在するPVA(a)の量は、粘度安定性と耐水接着性が良好な耐水性エマルジョン組成物を得る観点から、8重量%以下であることが好ましく、2〜7重量%であるのがより好ましい。エマルジョン水相中に存在するPVAの量は、水性エマルジョンを遠心分離し、分散質を沈降させた後の上澄み液中のPVA濃度を、重量法、ヨード呈色法などの種々の方法により測定することで求めることができる。
【0020】
本発明の耐水性エマルジョン組成物は、上記の水性エマルジョン(A)とアクリル酸とアセタール基含有エチレン性不飽和単量体との共重合により得られる、該アセタール基含有エチレン性不飽和単量体に由来する単位を5〜40モル%含むポリアクリル酸系共重合体(以下、PAAと略称することがある)(B)を含有する。PAA(B)は、アセタール基含有エチレン性不飽和単量体に由来する単位(アセタール変性量と略称することがある)を5〜40モル%含むことが必要であり、好ましくは5〜35モル%、より好ましくは5〜30モル%である。アセタール変性量が5モル%未満の場合、アセタール基含有エチレン性不飽和単量体を用いたことによる効果が十分現われない場合があり、アセタール変性量が40モル%を超える場合、PAA(B)と水性エマルジョン(A)の相溶性の低下や、組成物の粘度安定性の低下がおこることがある。
【0021】
PAA(B)のアセタール変性量は、プロトンNMRから求めることができる。アセタール基含有エチレン性不飽和単量体として、N−2,2−ジメトキシエチル(メタ)アクリルアミドを用いた場合に得られるPAAを例にとってアセタール変性量の求め方を説明すると、該PAAをDOに溶解させ、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて室温でプロトンNMRを測定する。その測定の結果得られるアクリル酸の主鎖メチンに由来するピークα(2.0〜2.4ppm)と−CH−(OCHのメチンに由来するピークβ(4.1〜4.5ppm)から、下記式を用いてアセタール変性量を算出する。
アセタール変性量(モル%)={βのプロトン数/(αのプロトン数+βのプロトン数)}×100
【0022】
PAA(B)の分子量は、1000〜100万であることが好ましい。分子量が100万を超える場合、PAA系共重合体の水溶性が低下する場合がある。
【0023】
PAA(B)の製造に用いられるアセタール含有エチレン性不飽和単量体は、アセタール基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば使用可能であるが、なかでも、式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体が好適に用いられる。
【0024】
【化1】

(式中、R1は水素原子または−COOMであり、ここでMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を意味し、R2は水素原子、メチル基または−CH−COOMであり、ここでMは前記定義のとおりであり、R3およびR4は同一または異なりそれぞれ炭素数1〜4の飽和アルキル基であり、Xは−CO−、−CO−O−または−CO−NR5であり、ここでR5は水素原子または炭素数1〜4の飽和アルキル基を意味し、nは1〜8の整数である。)
【0025】
アセタール含有エチレン性不飽和単量体の具体例としては、N−2,2−ジメトキシエチルアクリルアミド、N−2,2−ジエトキシエチルアクリルアミド、N−2,2−ジイソプロポキシエチルアクリルアミド、N−2,2−ジブトキシエチルアクリルアミド、N−2,2−ジ−t−ブトキシエチルアクリルアミド、N−2,2−ジメトキシエチルメタクリルアミド、N−2,2―ジエトキシエチルメタクリルアミド、N−2,2−ジイソプロポキシエチルメタクリルアミド、N−2,2−ジブトキシエチルメタクリルアミド、N−2,2−ジ−t−ブトキシエチルメタクリルアミド、N−3,3−ジメトキシプロピルアクリルアミド、N−3,3−ジエトキシプロピルアクリルアミド、N−3,3−ジイソプロポキシプロピルアクリルアミド、N−3,3−ジブトキシプロピルアクリルアミド、N−3,3−ジ−t−ブトキシプロピルアクリルアミド、N−3,3−ジメトキシプロピルメタクリルアミド、N−3,3−ジエトキシプロピルメタクリルアミド、N−3,3−ジイソプロポキシプロピルメタクリルアミド、N−3,3−ジブトキシプロピルメタクリルアミド、N−3,3−ジ−t−ブトキシプロピルメタクリルアミド、N−4,4−ジメトキシブチルアクリルアミド、N−4,4−ジエトキシブチルアクリルアミド、N−4,4−ジイソプロポキシブチルアクリルアミド、N−4,4−ジブトキシブチルアクリルアミド、N−4,4−ジ−t−ブトキシブチルアクリルアミド、N−4,4−ジメトキシブチルメタクリルアミド、N−4,4−ジエトキシブチルメタクリルアミド、N−4,4−ジイソプロポキシブチルメタクリルアミド、N−4,4−ジブトキシブチルメタクリルアミド、N−4,4−ジ−t−ブトキシブチルメタクリルアミド、N−メチル−N−2,2−ジメトキシエチルアクリルアミド、N−メチル−N−2,2−ジエトキシエチルアクリルアミド、N−メチル−N−2,2−ジイソプロポキシエチルアクリルアミド、N−メチル−N−2,2−ジブトキシエチルアクリルアミド、N−メチル−N−2,2−ジ−t−ブトキシエチルアクリルアミド、N−メチル−N−2,2−ジメトキシエチルメタクリルアミド、N−メチル−N−2,2−ジエトキシエチルメタクリルアミド、N−メチル−N−2,2−ジイソプロポキシエチルメタクリルアミド、N−メチル−N−2,2−ジブトキシエチルメタクリルアミド、N−メチル−N−2,2−ジ−t−ブトキシエチルメタクリルアミド、4−{(2,2−ジメトキシエチル)アミノ}−4−オキソ−2−ブテン酸、4−{(2,2−ジエトキシエチル)アミノ}−4−オキソ−2−ブテン酸、4−{(2,2−ジイソプロポキシエチル)アミノ}−4−オキソ−2−ブテン酸、4−{(2,2−ジブトキシエチル)アミノ}−4−オキソ−2−ブテン酸、5,5−ジメトキシ−3−オキソ−ペンテン、5,5−ジエトキシ−3−オキソ−ペンテン、5,5−ジイソプロポキシ−3−オキソ−ペンテン、5,5−ジブトキシ−3−オキソ−ペンテン、4−{(2,2−ジメトキシエチル)アミノ}−4−オキソ−3−メチレン−ブタン酸、4−{(2,2−ジエトキシエチル)アミノ}−4−オキソ−3−メチレン−ブタン酸、4−{(2,2−ジイソプロポキシエチル)アミノ}−4−オキソ−3−メチレン−ブタン酸、4−{(2,2−ジブトキシエチル)アミノ}−4−オキソ−3−メチレン−ブタン酸、2,2−ジメトキシエチルアクリレート、2,2−ジエトキシエチルアクリレート、2,2−ジイソプロポキシエチルアクリレート、2,2−ジブトキシエチルアクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記式(1)において、R1は水素原子であることが好ましく、R2は水素原子またはメチル基であることが好ましく、R3およびR4はともにメチル基であることが好ましく、Xは−CO−N(H)−または−CO−N(CH3)−であることが好ましい。また、nは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
さらには、上記式(1)において、R1が水素原子であり、R2が水素原子またはメチル基であり、R3およびR4がともにメチル基であり、Xが−CO−N(H)−または−CO−N(CH3)−であり、nが1であることがより好ましい。
【0026】
アクリル酸とアセタール基含有エチレン性不飽和単量体とを共重合させるのに用いられる重合方式としては、回分重合法、半回分重合法、連続重合法および半連続重合法のうちいずれの方法を採用してもよい。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法などの公知の任意の方法を用いることができる。その中でも、溶液重合法が好適に採用される。共重合に使用される開始剤としては、重合方法に応じて従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などが適宜選ばれる。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられ、過酸化物系開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。さらには、上記の開始剤に、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて開始剤とすることもできる。また、レドックス系開始剤としては、上記の過酸化物と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
【0027】
また、本発明の耐水性エマルジョン組成物が目的である粘度安定性と耐水性を発現するためには、水性エマルジョン(A)とPAA(B)との固形分重量比(A):(B)が100:1〜100:20の範囲であることが重要である。(A)成分と(B)成分の重量比は、100:1.5〜100:18であることが好ましく、100:2〜100:15であることがさらに好ましい。(A):(B)=100:1よりも(B)成分が少ない場合、耐水性が十分に発現せず、(A):(B)=100:20よりも(B)成分が多い場合、粘度安定性が低下する。
【0028】
本発明の耐水性エマルジョン組成物は、水溶性多価金属塩を併用した場合に、特に耐水接着性が改善される。多価金属塩としては各種のものが使用可能であり、塩化アルミニウムや硝酸アルミニウムなどの水溶性アルミニウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム等の水溶性ジルコニウム塩、水溶性チタン化合物などが用いられる。中でも、水溶性アルミニウム塩が耐水性の点で優れている。多価金属塩の配合量は、耐水性エマルジョン組成物の固形分あたり5重量%以下が好ましく、5重量%を超える場合には組成物の粘度安定性が低下する。
【0029】
本発明の耐水性エマルジョン組成物は、必要に応じて、各種の添加剤を添加することができる。その代表例としては、トルエン、パークレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどの各種有機溶剤、フタル酸ジブチルなどの各種可塑剤、グリコールエーテル類などの各種造膜助剤、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフェライト、セリサイトなどのクレー、重質、軽質、または表面処理された炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、石膏類、タルク、酸化チタンなどの無機充填剤、澱粉、酸化澱粉、小麦粉、木紛などの有機充填剤、ポリリン酸ソーダやヘキサメタリン酸ソーダなどのリン酸化合物の金属塩や水ガラスなどの無機物の分散剤、ポリアクリル酸およびその塩、アルギン酸ソーダ、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合物などのアニオン性高分子化合物とその金属塩、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体などのノニオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、各種消泡剤、防腐剤、防黴剤、着色顔料、消臭剤、香料などを挙げることができる。また、水性エマルジョン(A)以外のエマルジョン、例えば、従来公知のアクリルエマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、SBRラテックスなどの合成樹脂系エマルジョンや各種ゴムラテックスなども併用することができる。
【0030】
本発明の耐水性エマルジョン組成物は、水が蒸発・乾燥することにより皮膜が形成される。室温程度の穏やかな乾燥条件において形成された皮膜の場合でも、十分な耐水性を発現するが、皮膜に熱処理を施すことにより、耐水性が飛躍的に向上する。また、組成物のpHを酸性にすることによっても、その皮膜は極めて優れた耐水性を発現する。さらに、組成物のpHをアンモニアなどを用いて調整し、乾燥時にアンモニアが蒸発して組成物のpHが下がるような処理を行った場合にも、その皮膜は優れた耐水性を発現する。
【0031】
本発明の耐水性エマルジョン組成物は、一般的に、水性エマルジョン(A)にPAA(B)を固体のまま、あるいは、水溶液とした後に投入することにより調製される。また、該組成物の調製はバッチ方式および連続方式のどちらでもよい。
【0032】
本発明の耐水性エマルジョン組成物の粘度は各用途によって任意に選ぶことができるが、一般的に、B型粘度計を用いて測定した粘度がで100〜500000mPa・Sの範囲にあれば、多くの用途に適用することができる。
【0033】
本発明の耐水性エマルジョン組成物は、粘度安定性および耐水性に優れており、さらに、有害な成分を含んでいないことから安全性の点でも優れていることから、紙工用、木工用、フィルム用をはじめとする各種接着剤やコーティング剤、各種塗料用のバインダー等に好適に使用されるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準を意味する。
【0035】
[水性エマルジョンの製造]
水性エマルジョンの製造例1
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルのガラス製重合容器に、イオン交換水350g、PVA−1(重合度1750、ビニルアルコール(VA)単位88.3モル%)29.6gを仕込み95℃で完全に溶解した。次に、このPVA水溶液を冷却し、窒素置換後、200rpmで撹拌しながら酢酸ビニル37gを仕込み、60℃に昇温した後、過酸化水素/酒石酸系のレドックス開始剤を用いて重合を開始した。重合開始15分後から酢酸ビニル333gを3時間にわたって連続的に添加し、重合を完結させた。固形分濃度50.0%、粒径0.9μのポリ酢酸ビニルエマルジョンが得られた。このエマルジョンの固形分100重量部に対して可塑剤としてジブチルフタレート5部を添加混合し、水性エマルジョン−1(EM−1)を得た。
【0036】
水性エマルジョンの製造例2
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルのガラス製重合容器に、イオン交換水350g、PVA−2(重合度1100、ビニルアルコール単位93.6モル%、エチレン単位の含量4.5モル%)29.6gを仕込み95℃で完全に溶解した。次に、このPVA水溶液を冷却し、窒素置換後、200rpmで撹拌しながら酢酸ビニル36.6gとアクリル酸0.4gを仕込み、60℃に昇温した後、過酸化水素/酒石酸系のレドックス開始剤を用いて重合を開始した。重合開始15分後から酢酸ビニル329.7gとアクリル酸3.3gを混合したものを3時間にわたって連続的に添加し、重合を完結させた。固形分濃度50.1%、粒径1.0μの酢酸ビニル−アクリル酸共重合体エマルジョンが得られた。このエマルジョンの固形分100重量部に対して可塑剤としてジブチルフタレート5部を添加混合し、水性エマルジョン−2(EM−2)を得た。
【0037】
水性エマルジョンの製造例3
水性エマルジョンの製造例2において、PVA−2の代わりにPVA−3(重合度1300、ビニルアルコール単位93.1モル%、アセトアセチル基3.0モル%)を用いる以外は水性エマルジョンの製造例2と同様にして、固形分濃度49.8%、粒径0.9μの酢酸ビニル−アクリル酸共重合体エマルジョンを得た。このエマルジョンの固形分100重量部に対して可塑剤としてジブチルフタレート5部を添加混合し、水性エマルジョン−3(EM−3)を得た。
【0038】
水性エマルジョンの製造例4
水性エマルジョンの製造例2において、PVA−2の代わりにPVA−4(重合度400、ビニルアルコール単位88.3モル%、エチレン単位9.0モル%)用いる以外は水性エマルジョンの製造例2と同様にして、固形分濃度50.0%、粒径0.8μの酢酸ビニル−アクリル酸共重合体エマルジョンを得た。このエマルジョンの固形分100重量部に対して可塑剤としてジブチルフタレート5部を添加混合し、水性エマルジョン−4(EM−4)を得た。
【0039】
水性エマルジョンの製造例5
水性エマルジョンの製造例1において、PVA−1の代わりにPVA−5(重合度550、ビニルアルコール単位84.5モル%)を用いる以外は水性エマルジョンの製造例1と同様にして、固形分濃度50.3%、粒径1.2μのポリ酢酸ビニルエマルジョンを得た。このエマルジョンの固形分100重量部に対して可塑剤としてジブチルフタレート5部を添加混合し、水性エマルジョン−5(EM−5)を得た。
【0040】
水性エマルジョンの製造例6
PVA−6(重合度700、ビニルアルコール単位88.7モル%)10.8gをイオン交換水290gに加熱溶解し、それを窒素吹込口および温度計を備えた耐圧オートクレーブに仕込んだ。希硫酸でpH4.0に調整後、酢酸ビニル288gを仕込み、次いで、エチレンを42kg/cm2 Gまで昇圧した(エチレンの仕込量は72gに相当する)。温度を60℃まで昇温後、過酸化水素−ロンガリット系レドックス開始剤を用いて重合を開始した。2時間後、残存酢酸ビニル濃度が0.7%となったところで重合を終了し、固形分濃度53.3%、粒径0.8μの酢酸ビニル−エチレン共重合体エマルジョン(EM−6)を得た。
【0041】
水性エマルジョンの製造例7
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルのガラス製重合容器に、イオン交換水350g、PVA−7(重合度600、ビニルアルコール単位92.5モル%)33.3gを仕込み95℃で完全に溶解した。次に、このPVA水溶液を冷却し、窒素置換後、200rpmで撹拌しながら酢酸ビニル25.9g、N−ブチルアクリレート10.4gを仕込み、60℃に昇温した後、2%過硫酸カリウム水溶液10gを添加し、重合を開始した。重合開始15分後から酢酸ビニル233.1g、N−ブチルアクリレート93.2gとN−イソブトキシメチルメタクリルアミド7.4gを混合したものを4時間にわたって連続的に添加し、重合を完結させた。固形分濃度49.6%、粒径0.8μの酢酸ビニル−ブチルアクリレート系共重合エマルジョン(EM−7)が得られた。
【0042】
水性エマルジョンの製造例8
PVA−7(重合度600、ビニルアルコール単位92.5モル%)18gと非イオン性界面活性剤(ノニポール200:三洋化成製)3.0gをイオン交換水290g中で加熱溶解し、それを窒素吹込口および温度計を備えた耐圧オートクレーブに仕込んだ。希硫酸でpH4.0に調整した後、スチレン120gとメタクリル酸3.0gを仕込み、次いで耐圧計量器よりブタジエン177gを仕込み、70℃に昇温後、2%過硫酸カリウム水溶液10gを圧入して重合を開始した。内圧は4.8kg/cm2 Gから重合の進行とともに低下し、15時間後に0.4kg/cm2 Gに低下したところで重合を終了した。得られたエマルジョンをアンモニア水でpH6.0とし、固形分濃度49.5%、粒径0.6μのスチレン−ブタジエン系共重合体エマルジョン(EM−8)を得た。
【0043】
[PAAの製造]
PAAの製造例1
撹拌機およびリフラックスコンデンサーを備えた2リットルの反応容器に、アクリル酸90g、N−2,2−ジメトキシエチルメタクリルアミド10gおよびメタノール400gを仕込み、内容物を65℃に昇温した。次に30分間窒素バブリングし、十分に脱気を行った後に、開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0gを添加した。開始剤を添加して3時間後に、さらに開始剤0.5gを追加して添加し、1時間追い込みを行った。その後メタノール500gを加えて冷却し、重合を停止した。このメタノール溶液を減圧条件下60℃において、乾燥させたところ90gの白色固体であるPAA系共重合体(PAA−1)を得た。PAA−1をDOに溶解させ、H−NMRを測定したところ、σ=1.5ppmおよびσ=2.1ppm付近にポリアクリル酸の存在を示唆するピークを確認し、σ=3.0〜3.3ppm付近にジメチルアセタールのメトキシ基(−OCH)の存在を示すピークを認めた。また、このNMRスペクトルから算出したアセタールの変性量は5.5モル%であった。また、PAA−1の重量平均分子量(Mw)をGPC[装置:150C−2(Waters社製)、カラム:GMPWXL(東ソー社製)、移動相:0.2Mリン酸Buffer、標品:PEO/PEG]を用いて測定したところ、Mwは42万であった。
【0044】
PAAの製造例2〜4
アクリル酸およびアセタール含有エチレン性不飽和単量体の種類および仕込み量を表2に示す内容に変更した以外は、PAA1と同様の方法により各種のPAA系共重合体(PAA−2〜PAA−4)を製造した。
【0045】
無変性のPAA系重合体として、Aldrich Chemical Company,Inc.製ポリアクリル酸(Mw=2000)を使用した(PAA−5)。
【0046】
実施例1
EM−1の固形分100重量部に対し、PAA−1を10重量部添加し、80℃まで昇温してPAA−1を溶解させ、耐水性エマルジョン組成物を調製した。この耐水性エマルジョン組成物を用い、以下の評価を実施した。結果を表3に示す。
【0047】
[耐水性エマルジョン組成物の評価]
(1)皮膜耐水性
耐水性エマルジョン組成物を20℃、65%RH下で、PETフィルム上に流延し、7日間乾燥させて500μmの乾燥皮膜を得た。この皮膜を直径2.5cmに打ち抜き、それを試料として20℃の水に24時間浸漬した場合の、皮膜の吸水率(%)[{(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量}×100]を求めた。
(2)耐水接着力(耐煮沸接着力)
縦2.5cm、横2.5cm、厚み1.0cmの一対のツガ材(柾目)を試験片とし、これに塗布量が150g/m2となるように耐水性エマルジョン組成物を塗布し、貼り合わせて7kg/m2の荷重で16時間圧締した。その後、解圧し、20℃、65%RH下で5日間養生した後、4時間沸騰水中に浸漬し、60℃で20時間乾燥、さらに4時間沸騰水中に浸漬した後、ぬれたままの状態で圧縮せん断強度を測定した。
(3)粘度安定性(ポットライフ)
耐水性エマルジョン組成物を、30℃に放置した場合の30日後の粘度変化を観察した。
【0048】
実施例2〜3、比較例1〜2
EM−1の固形分100重量部に対するPAA−1の添加量を変える以外は実施例1と同様にして、耐水性エマルジョン組成物を調製した。これらの耐水性エマルジョン組成物を用い、実施例1と同様に評価を実施した。結果を表3に示す。
【0049】
比較例3
EM−1だけを用い実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0050】
実施例4〜5、比較例4〜5
実施例1において、PAA−1の代わりにPAA−2〜PAA−5を用いる以外は実施例1と同様にして耐水性エマルジョン組成物を調製した。これらの耐水性エマルジョン組成物を用い、実施例1と同様に評価を実施した。結果を表3に示す。
【0051】
実施例6〜11、比較例6
実施例1において、EM−1の代わりにEM−2〜EM−8を用いる以外は実施例1と同様にして耐水性エマルジョン組成物を調製した。これらの耐水性エマルジョン組成物を用い、実施例1と同様に評価を実施した。結果を表3に示す。
【0052】
実施例12〜13
実施例6で得られた耐水性エマルジョン組成物の固形分100重量部あたり、硝酸アルミニウムおよび炭酸ジルコニウムアンモニウムを1重量%添加して耐水性エマルジョン組成物を調製する以外は実施例1と同様にした。これらの耐水性エマルジョン組成物を用い、実施例1と同様に評価を実施した。結果を表3に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
表3の結果から分かるように、本発明の耐水性エマルジョン組成物は、粘度安定性および耐水性のいずれも同時に高いレベルで満足するものである。従って、作業性に優れるほか、水周りや高湿度下での耐久性が優れる。また、本発明の耐水性エマルジョン組成物は、有害な成分を含んでいないことから安全性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の耐水性エマルジョン組成物は、粘度安定性および耐水性に優れ、さらに、安全性の点でも優れていることから、紙工用、木工用、フィルム用(PVAフィルム、トリアセテートフィルム等)の各種接着剤やコーティング剤、各種塗料用のバインダーなどに好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルアルコール単位を85モル%以上有するポリビニルアルコール系重合体(a)を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる少なくとも一種以上の単量体単位からなる重合体微粒子(b)を分散質とする水性エマルジョン(A)、およびアクリル酸とアセタール基含有エチレン性不飽和単量体との共重合により得られる、該アセタール基含有エチレン性不飽和単量体に由来する単位を5〜40モル%含むポリアクリル酸系共重合体(B)を含有し、(A)と(B)の比率(A):(B)が固形分重量比で100:1〜100:20である耐水性エマルジョン組成物。
【請求項2】
アセタール基含有エチレン性不飽和単量体が式(1)で表される請求項1に記載の耐水性エマルジョン組成物。
【化1】

(式中、R1は水素原子または−COOMであり、ここでMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を意味し、R2は水素原子、メチル基または−CH−COOMであり、ここでMは前記定義のとおりであり、R3およびR4は同一または異なりそれぞれ炭素数1〜4の飽和アルキル基であり、Xは−CO−、−CO−O−または−CO−NR5であり、ここでR5は水素原子または炭素数1〜4の飽和アルキル基を意味し、nは1〜8の整数である。)
【請求項3】
さらに水溶性多価金属塩を含む請求項1または2に1項記載の耐水性エマルジョン組成物。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系重合体(a)がエチレン由来の単位を2〜8モル%含有するエチレン変性ポリビニルアルコール系重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐水性エマルジョン組成物。
【請求項5】
ポリビニルアルコール系重合体(a)がアセトアセチル変性ポリビニルアルコール系重合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐水性エマルジョン組成物。

【公開番号】特開2008−280469(P2008−280469A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127484(P2007−127484)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】