説明

耐水性・耐候性に優れるゲルコート用不飽和ポリエステル樹脂、その製造方法及びその利用

【課題】 低臭気性及び硬化性の作業性に優れた不飽和ポリエステル樹脂、さらには硬化物の耐水性及び耐候性、機械的特性に高度の要求がなされているゲルコート、トップコートに適した不飽和ポリエステル樹脂のための不飽和ポリエステルの開発、該樹脂を利用した成形物及びまたはライニング構造物、更に該樹脂及び樹脂組成物、成形物、ライニング構造物の製造方法の提供
【解決手段】 (A)エーテル基を含まない炭素数4以上のアルキレングリコールからなる多価アルコール成分、(B)末端封鎖成分、(C)α、β−不飽和多価カルボン酸から選ばれる不飽和多価酸成分及び(D)イソフタル酸またはテレフタル酸を含有する飽和多価カルボン酸とをエステル化反応して得られる不飽和ポリエステルであり、そのポリスチレン換算の重量平均分子量が4000〜10000である不飽和ポリエステル、その製造方法並びにこれを用いた不飽和ポリエステル樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ポリエステル、その製造方法及び不飽和ポリエステル樹脂に関するものである。更に詳しくは、本発明は、不飽和ポリエステル樹脂を硬化させて得られる塗膜硬化物の耐水性、耐候性、機械的物性を改善でき且つ、不飽和ポリエステル樹脂に含有されるラジカル重合性モノマーの含有量を低減させることによりそのモノマーの揮散量を低減して作業環境の改善を可能としたポリエステル樹脂組成物に用いられる不飽和ポリエステル、その製造方法、該不飽和ポリエステルを用いてなる上記特性を有する不飽和ポリエステル樹脂、特に該不飽和ポリエステル樹脂を用いて得られるゲルコート樹脂組成物及びトップコート樹脂組成物に適した不飽和ポリエステルであり、これを用いた樹脂組成物を硬化させて得られる成形物及びまたはライニング構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂は、例えば建設資材、輸送機器、工業機材などに用いられるFRP(繊維強化プラスチック)の基材として、あるいは注型、塗料、接着剤、レジンコンクリート、化粧板用などとして幅広く用いられている。
この不飽和ポリエステル樹脂は、一般に多価アルコールからなるアルコール成分と、α、β−不飽和多価カルボン酸類及び飽和多価カルボン酸類や芳香族多価カルボン酸類からなる酸成分とを重縮合して得られる不飽和ポリエステルに、ラジカル重合性モノマー、一般的にはスチレンを配合して得られる液状樹脂である。そして上記不飽和ポリエステルの製造において用いられる多価アルコール、α、β−不飽和多価カルボン酸類及び飽和多価カルボン酸類や芳香族多価カルボン酸類の種類と使用量の比率を変えることによって、各種の使用目的に適した物性を有する、あるいは使用目的に適した成形方法により成形可能な不飽和ポリエステル樹脂組成物を製造することができる。
【0003】
ゲルコート樹脂やトップコート用樹脂に不飽和ポリエステル樹脂が使用される。ゲルコートやトップコートは、浴槽、舟艇関連製品で代表されるFRP成形品や、FRP防水材などで代表されるFRPライニング被覆体などの製品の美観及び保護などの役割として使用され、これらの材料には、優れた耐水性(耐煮沸性など)、耐候性(表面光沢の保持など)、機械的特性(伸びなど)などの特性が求められる。これらの高い要求特性から、一般的には耐水性などに優れるイソフタル酸又はテレフタル酸系の不飽和ポリエステル樹脂が利用されている。
イソフタル酸又はテレフタル酸系の不飽和ポリエステル樹脂は、耐熱水性を上げるために一般的に硬質タイプにし、更に不飽和ポリエステルの分子量を上げている。一般的なオルソフタル酸系の不飽和ポリエステルの重量平均分子量が、2000〜5000程度であるのに対して、例えばイソフタル酸系の不飽和ポリエステルでは10000〜20000程度であり、汎用グレードであるオルソフタル酸系に比較して分子量を大きくしている。そのため、配合される低沸点のラジカル重合性モノマーの含有量が多くなり、モノマーの飛散により作業環境が悪くなることがある。
【0004】
特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4にゲルコート用樹脂の耐水性・耐候性の改善、更にモノマーの低減を目的とした発明が記載されている。これらの文献等では、不飽和ポリエステルの合成に用いる酸成分やグリコール成分にシクロヘキサン構造を有する原料を使用したり、末端封鎖(モノアルコールを使用)により、その目標をクリアーすることが記載されている。
これらのシクロヘキサン構造を有する酸またはグリコールを使用することで、耐候性の改善は可能であるが、逆に硬化物が硬くて脆くなる傾向にあり、それによりゲルコート樹脂やトップコート樹脂として必要な靭性が低下し、即ち伸び率の低下を招来する。ゲルコートやトップコートは、その使用においてFRP層のように繊維強化材を含まないため、使用される樹脂の特性に性能が依存を受ける。それゆえ、これらの靭性の低下により製品の使用時にひび割れ・クラック等を発生することがしばしばあり、美観を損ねることや性能の維持が出来なくなり問題となることがある。
また、これらゲルコートやトップコート硬化物の靭性低下や伸び率の低下を防止するために、原料としてジエチレングリコールやジプロピレングリコールなどのグリコール原料や、アジピン酸などの酸原料を併用することで、硬化物の物性改善(伸び率の改善)を図っているが、これらの手段は硬化物の耐水性や耐候性を低下させてしまうことがあり、この様な方法では優れた耐水性や耐候性と、優れた靭性や伸び率を有するゲルコートまたはトップコート硬化物を得ることが難しい。
【0005】
一般的な不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂は、ラジカル重合性モノマーであるスチレンを30〜60重量%程度配合されている。それゆえハンドレイアップ成形やスプレーアップ成形などのオープンモールド成形方法では、FRP成形時に樹脂に含まれるスチレンが揮散して成形作業環境を悪化させることがしばしばある。近年はPRTR(環境汚染物資排出・移動登録制度)法などの施行に伴い、化学物質の排出規制が強化される状況にあり、これらの樹脂に含まれるスチレンもその対象となり、成形作業環境を改善するためや規制対応のためにスチレン揮散量の抑制及びスチレン含有量の低減の対応が求められている。
【0006】
このスチレンの揮散量を低減する方法としては、数種類の方法がある。1つは不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂に揮散防止のための添加剤を添加して、液状樹脂表面に添加剤の皮膜を形成し、樹脂表面からのスチレンの揮散を抑制する方法である。この方法にはパラフィンワックス系の添加剤が使用されている。この方法では樹脂を静置した状態では添加剤が樹脂表面に皮膜を形成し、それによりスチレンの揮散抑制効果が見られるが、ハンドレイアップ成形、スプレーアップ成形あるいは樹脂スプレー塗布などの成形方法では、添加剤による皮膜の形成が不十分となり、スチレン揮散抑制効果が激減することが避けられない。
その上、上記のパラフィンワックス系の添加剤を添加していると、ゲルコートを塗布して硬化させた後に、FRP層を成形してFRP層とゲルコート層の二次接着性をさせる場合では層間の接着力を大幅に低下させしまうことがしばしばあり、成形した後にFRP層とゲルコート層の剥離が生じて問題になる。
【0007】
モノマー揮散防止の他の方法は、不飽和ポリエステル樹脂の分子量を低く抑えて、低粘度化してモノマー配合量(含有量)の低下(例えば低スチレン化)を行う方法である。
不飽和ポリエステル樹脂では、この低分子量化の方法には一般的に、反応を制御して分子量を低く抑える方法と、ジシクロペンタジエン変性して分子末端を封鎖し分子量を低く抑える方法(例えば特許文献5、特許文献6参照)や、多価アルコールの一部をモノアルコールに代替使用して分子末端を封鎖し、分子量を低く抑える方法(例えば特許文献7参照)がある。これらの方法では不飽和ポリエステル樹脂に含有されるスチレンの絶対量を低減できるが、不飽和ポリエステル樹脂の低分子量化に伴い、得られる硬化物の強度や伸び率などの機械的物性を低下させ、さらにポリエステルの末端基(水酸基、カルボキシル基)が増加するので、硬化物の耐水性を大きく低下してしまう問題がある。特にゲルコート樹脂やトップコート樹脂には耐水性、耐候性の高いレベルが要求されるため、それらの目的には不適当な方法である。
【0008】
さらに3つ目は、重合性モノマーとして(メタ)アクリル系モノマーなどの低臭気・高沸点モノマーを用いる方法も試みられている。これらの(メタ)アクリル系モノマーは、スチレンとは異なり空気中の酸素が重合阻害剤として働くため、塗膜の硬化不良や成形品の表面硬化不良を起こりやすいという問題があり、解決が必要となる。
また、これらの(メタ)アクリル系モノマーを不飽和ポリエステル樹脂に利用した場合には、不飽和ポリエステル骨格のフマル酸やマレイン酸の由来の不飽和基と(メタ)アクリル系モノマーの共重合性が劣るため十分な強度や硬化物特性を有する硬化物が得られないだけでなく、硬化不良を生じやすい結果にもなりやすい。特に、ゲルコート・トップコート用の樹脂としては、その使用に耐えられなくなってしまう。
【0009】
このように作業環境保全として、ラジカル重合性モノマーの含有量を減少させるため、その配合量を低減した不飽和ポリエステル樹脂、例えば低スチレン含有量の不飽和ポリエステル樹脂にすることは、それにより安定したラジカル重合性モノマー揮散の抑制効果(例えば低スチレン揮散性)を示すが、ゲルコート樹脂またはトップコート用樹脂としては成形作業性に優れ、更に、硬化物の物性低下を招かない不飽和ポリエステル樹脂とすることが大変難しい問題である。近年、作業環境の改善や化学物質の管理・規制が強化される中で、不飽和ポリエステル樹脂組成物のユーザー側である成形業者などから、ラジカル重合性モノマー揮散を抑制しても硬化成形体の特性低下のない硬化性樹脂組成物の開発が望まれてきている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−002933
【特許文献2】特開2002−80544
【特許文献3】特開2002−69137
【特許文献4】特開平11−268218
【特許文献5】特開昭53−92888
【特許文献6】特開昭54−159492
【特許文献7】特開昭52−3686
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の問題点を解決出来る不飽和ポリエステル、それを用いてラジカル重合性モノマーの含有量を低減し、低臭気性及び硬化性の作業性に優れた不飽和ポリエステル樹脂の開発、さらには硬化物の耐水性及び耐候性、機械的特性に高度の要求がなされているゲルコート樹脂組成物及びトップコート樹脂組成物に適した不飽和ポリエステル樹脂組成物、該樹脂組成物を利用した成形物及びまたはライニング構造物、更に該樹脂及び樹脂組成物、成形物、ライニング構造物の製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、
[1] (A)エーテル基を含まない炭素数4以上のアルキレングリコールからなる多価アルコール成分、(B)末端封鎖成分、(C)α、β−不飽和多価カルボン酸及びその反応性誘導体の中から選ばれる不飽和多価酸成分及び(D)イソフタル酸またはテレフタル酸を必須成分として含有する飽和多価カルボン酸あるいは、その反応性誘導体の中から選ばれる飽和多価酸成分とをエステル化反応して得られる不飽和ポリエステルであり、そのポリスチレン換算の重量平均分子量が4000〜10000である不飽和ポリエステル、
【0013】
[2] (A)成分の多価アルコール成分が多価アルコール成分100モル中に炭素数6以上で水酸基と水酸基の間の炭素数が5以上のアルキレングリコールを10モル以上含む上記[1]に記載の不飽和ポリエステル、
[3] (B)末端封鎖成分が(イ)フェニル基を1つ以上有するアルキルモノアルコールからなるアルコール成分または(ロ)芳香族物カルボン酸からなる酸性分のいずれかである上記[1]に記載の不飽和ポリエステル、
[4] (D)飽和多価酸成分を、全多価酸成分中20〜50モルを配合した上記[1]に記載の不飽和ポリエステル、
【0014】
[5] (A)多価アルコール成分/(B)末端封鎖成分/(C)不飽和多価酸成分/(D)飽和多価酸成分の配合比率を、水酸基(OH)/カルボキシル基(COOH)の比率が1.01から1.15であり且つ、末端封鎖成分として(B)(イ)アルコール成分を使用するときは末端封鎖成分としてアルコール成分の比率が(A)成分100モルに対して(B)(イ)成分が5〜20モルをエステル化して得られたことを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の不飽和ポリエステル、
[6] (A)多価アルコール成分/(B)末端封鎖成分/(C)不飽和多価酸成分/(D)飽和多価酸成分の配合比率を、水酸基(OH)/カルボキシル基(COOH)の比率が1.01から1.15であり且つ、末端封鎖成分として(B)(ロ)を使用するときは酸成分の比率が(C)+(D)成分100モルに対して(C)成分50〜80モル/(D)成分50〜20モル/(B)(ロ)成分5〜20モルをエステル化して得られたことを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の不飽和ポリエステル、
[7] 不飽和ポリエステルの酸価が、15mgKOH/g以下になるまでエステル化反応を行って得られた上記[1]〜[6]のいずれかに記載の不飽和ポリエステル、
【0015】
[8] 上記[1]〜[7]のいずれかに記載の不飽和ポリエステルを合成するに際し、(A)多価アルコール成分及び(D)飽和多価酸成分とを、酸価が10mgKOH/g以下になるまでエステル化し、その後に、末端封鎖成分として(B)(イ)モノアルコール成分又は(ロ)モノカルボン酸成分と(C)不飽和多価酸成分を加えて、酸価を15mgKOH/g以下、且つポリスチレン換算の重量平均分子量を4000〜10000までエステル化反応を行なうことを特徴とする不飽和ポリエステルの製造方法、
【0016】
[9] 上記[1]〜[7]のいずれかに記載の不飽和ポリエステルに、(E)ラジカル重合性モノマーを配合して得られる不飽和ポリエステル樹脂、
[10] 上記[9]に記載の不飽和ポリエステル樹脂において、(E)、ラジカル重合性モノマーの含有量が35質量%以下である不飽和ポリエステル樹脂、
【0017】
[11] 上記[9]または[10]に記載の不飽和ポリエステル樹脂を使用したゲルコート樹脂組成物またはトップコート樹脂組成物、及び
[12] 上記[11]に記載のゲルコート樹脂組成物またはトップコート樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を含む成形物またはライニング構造物、を開発することにより上記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0018】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂は、エーテル基を含まない炭素数4以上のアルキレングリコールからなる多価アルコール成分、末端封鎖成分としてフェニル基を1つ以上有するアルキルモノアルコールからなるアルコール成分又は芳香族モノカルボン酸からなる酸成分、α、β−不飽和多価カルボン酸及びその反応性誘導体の中から選ばれる不飽和多価酸成分と、イソフタル酸及びまたはテレフタル酸を必須成分とする飽和多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸及びその反応性誘導体の中から選ばれる飽和多価酸成分とをエステル化反応を行って得られる不飽和ポリエステルであり、そのポリスチレン換算の重量平均分子量が4000〜10000である不飽和ポリエステルから得られる不飽和ポリエステル樹脂であり、この樹脂を利用することにより成形時の低臭気化ができ、更に耐水性、耐候性、機械特性に優れる硬化物が得られることから、ゲルコート樹脂組成物及びまたはトップコート樹脂組成物、更にそれらの樹脂組成物を利用して硬化させて得られる成形物及びライニング構造物に大変有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の不飽和ポリエステルは、原料として
(A)エーテル基を含まない炭素数4以上のアルキレングリコールからなる多価アルコール成分、
(B)末端封鎖成分
(イ)フェニル基を1つ以上有するアルキルモノアルコールからなるアルコール成分又は、
(ロ)芳香族モノカルボン酸からなるモノカルボン酸成分、
(C)α、β−不飽和多価カルボン酸及びその反応性誘導体の中から選ばれる不飽和多価酸成分及び
(D)イソフタル酸またはテレフタル酸を、全多価酸成分中に必須成分として含有する飽和多価カルボン酸あるいはその反応性誘導体の中から選ばれる飽和多価酸成分とをエステル化反応して得られる不飽和ポリエステルであり、且つそのポリスチレン換算の重量平均分子量が4000〜10000である不飽和ポリエステルである。
【0020】
本発明は、(A)多価アルコール成分としては、炭素数が3以上の主鎖であって主鎖中にエーテル基を含まない炭素数4以上のアルキレングリコールからなる多価アルコール成分を使用する。より好ましくは、多価アルコール成分100モル中に炭素数6以上で水酸基と水酸基の間の炭素数が5以上のアルキレングリコールを10モル以上含む多価アルコール成分を使用する。
エーテル基を含まない炭素数4以上のアルキレングリコールの例としては、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、などが挙げられる。
【0021】
更に炭素数6以上で水酸基と水酸基の間の炭素数が5以上のアルキレングリコールの例としては、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、更に2,2−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールA)などの市販の2価アルコールが挙げられる。
【0022】
これらのエーテル基を含まない炭素数4以上のアルキレングリコールを使用することで、硬化物の耐候性及び耐水性の改善ができると共に機械的特性を改善できる。より好ましくは多価アルコール成分が、多価アルコール成分100モル中に炭素数6以上で水酸基と水酸基の間の炭素数が5以上のアルキレングリコールを10モル以上含む主鎖中にエーテル基を含まない炭素数4以上の多価アルコール成分であるときは耐候性及び耐水性のさらなる改善ができる。特に低分子量の不飽和ポリエステルを得る場合には、不飽和ポリエステル骨格中のエステル濃度を下げるために、炭素数6以上で水酸基と水酸基の間の炭素数が5以上のアルキレングリコールを多く利用することが良い。更に、アルキレングリコールの水酸基が第1アルコールであり、さらに炭素数1以上の置換基、例えばメチル基やエチル基などを有するアルキレングリコールを使用することで、不飽和ポリエステル樹脂硬化物の耐候性及び耐水性の改善ができると共に機械的特性を改善が期待でき、不飽和ポリエステルのエステル化反応をスムーズに行うことができる。全炭素数が4より少ないアルキレングリコールを使用した場合には、不飽和ポリエステルの中に含まれるエステル基濃度が高くなり、耐水性や耐候性を低下させることがある。
【0023】
本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外のアルコール成分を併用して使用することができる。それらの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、更に、ビスフェノールA及びビスフェノールF、ビスフェノールSなどのプロピレンオキサイド付加物又はエチレンオキサイド付加物などの市販の2価アルコールが挙げられる。耐水性や耐候性への影響を出来るだけ少なくするためには、多価アルコール成分100モル中に10モル以下が良く、より好ましくは使用しない方が良い。
【0024】
本発明は、(B)末端封鎖基成分として、(B)(イ)フェニル基を1つ以上有するアルキルモノアルコールからなるアルコール成分(以下「モノアルコール成分」)、または(B)(ロ)芳香族モノカルボン酸からなる酸成分(モノカルボン酸成分)を使用する。
(B)(イ)モノアルコール成分としては、フェニル基を1つ以上有するアルキルモノアルコールからなるアルコール成分を使用する。より好ましくはアルキル基の炭素数が1から4の、置換基としてフェニル基を1つ以上有するアルキルアルコールである。
これらの例としては、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェニルブタノールなどのアルキル基の炭素数が1から4である市販のフェニル置換アルキルアルコールが挙げられる。特に、得られる樹脂の耐水性、機械的特性等を良好にするには、フェニル基の置換アルキル基は炭素数が少ないベンジルアルコールが好ましい。
【0025】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の、沸点が130℃以上のモノアルコール成分を併用して使用ても良い。それらアルコール成分の例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2エチルヘキサノールなどの脂肪族系のもの、さらにシクロヘキサンメタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、メチルシクロヘキシニルメタノールなど環状脂肪族系やエーテル結合を有するモノアルコールが挙げられる。これらの中から耐水性や耐候性に影響を与えない種類や使用量を選択して使用することが好ましく、1種だけを使用しても良く、また2種以上を組み合わせて使用しても良い。使用量としては、(B)(イ)成分100モル中に50モル以下が好ましい。
(B)(イ)成分としてフェニル基を1つ以上有するアルキルアルコールを使用することで、不飽和ポリエステルの分子量を低く抑えることができ、さらにこれらのモノアルコールで分子末端を封鎖することで分子末端間の相互作用、親水性を低下させることができる。それにより、樹脂粘度を下げてモノマー含有量の低減が可能となり、更に分子末端に残る水酸基の濃度を下げることが出来るため、耐水性の低下の防止が出来る。
【0026】
また、(B)(ロ)成分として、フェニル基を1つ以上有するモノカルボン酸からなる酸成分を使用することもできる。この場合に用いるモノカルボン酸は、好ましくはアルキル基の炭素数が0から4のフェニル基を1つ以上有するアルキルモノカルボン酸である。これらの例としては、安息香酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、フェニルブタン酸、トルイル酸、ナフトエ酸などのアルキル基の炭素数が1から4である市販の芳香族モノカルボン酸が挙げられる。特に、得られる樹脂の耐水性、機械的特性等を良好にするには、アルキル基の炭素数が少ない安息香酸がより好ましい。
【0027】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の沸点が130℃以上のモノカルボン酸成分を併用して使用することができる。それらの例としては、プロピオン酸、ブタン酸、シクロヘキサンカルボン酸(ヘキサヒドロ安息香酸)、シクロヘキサンブタン酸などの脂肪族系のものや環状脂肪族系のモノカルボン酸が挙げられる。これらの中から耐水性や耐候性に影響を与えない種類や使用量を選択して使用することが好ましく、1種だけを使用しても良く、また2種以上を組み合わせて使用しても良い。使用量としては、(B)(ロ)成分100モル中に50モル以下が好ましい。
【0028】
また、(B)(イ)モノアルコール成分と(B)(ロ)モノカルボン酸成分は別々に使用することが好ましく、また、本発明を損なわない範囲で、併用することが出きる。併用する場合には、(B)(イ)成分と(B)(ロ)成分のエステル化物である低分子量物が生成するため、硬化物物性や耐水性の低下を招いてしまうので、反応の順序を考慮し低分子量物が生成しないように反応させることが必要であり、出来れば併用することは避けたい。
更に、(B)(イ)モノアルコール成分と(B)(ロ)モノカルボン酸成分では、耐水性を特に重要視する場合には、(イ)モノアルコール成分を使用することが好ましく、耐候性を特に重要視する場合には、(ロ)モノカルボン酸を使用することが好ましい。
【0029】
本発明は、(C)成分として、α、β−不飽和多価カルボン酸及びその反応性誘導体の中から選ばれる少なくとも1種の不飽和多価酸成分を使用する。α、β−不飽和多価カルボン酸及びその反応性誘導体の例としては、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが挙げられる。また、これらの反応性誘導体の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水クロロマレイン酸などの酸無水物、上記不飽和多価カルボン酸の低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらの中から一種を選択して用いてもよく、また、これらを併用し組み合わせて二種以上用いてもよい。一般的には、(無水)マレイン酸及びフマール酸を使用し、更に好ましくはフマール酸を使用する。特に、(A)成分のエーテル基を含まない炭素数4以上のアルキレングリコールの水酸基がすべて第1アルコールである場合には(無水)マレイン酸を使用するとフマール酸エステルへの転移が不充分となり、耐水性等の性能を落とすことがあるため、フマール酸を使用する方が耐水性等の向上が図れる。
【0030】
更に本発明は、(D)成分として、イソフタル酸及びまたはテレフタル酸及びその反応性誘導体の中から選ばれる少なくとも1種を必須成分とする多価カルボン酸からなる飽和多価酸成分を使用する。これらの例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、それらの反応性誘導体であるジメチルイソフタレート、ジメチルテレフタレートなどの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらの中から一種を選択して用いてもよく、また、これらを併用し組み合わせて二種以上用いてもよい。
さらに耐候性を向上させるためには、ヘキサヒドロフタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸)、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)等のシクロヘキサン構造を有するジカルボン酸を耐水性の低下をさせないレベルで使用することが好ましい。その使用量は(D)成分100モル中の50モル以下が好ましい。
【0031】
さらに本発明の効果を損なわない範囲で、上記イソフタル酸及びまたはテレフタル酸及びその反応性誘導体、シクロヘキサン構造を有するジカルボン酸等の飽和多価酸と併用して、他の飽和多価カルボン酸や芳香族多価カルボン酸およびこれらの反応性誘導体を使用できる。
それら飽和多価カルボン酸の例としては、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸などが挙げられ、芳香族多価カルボン酸の例としては、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など、更にクロレンディク酸(ヘット酸)、テトラブロモフタル酸のようなハロゲン化フタル酸などが挙げられる。
【0032】
また、これらの反応性誘導体の例としては、無水フタル酸、無水琥珀酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水クロレンディク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(シクロヘキサンジカルボン酸)、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物、あるいはジメチルフタレート、ジエチルフタレートなどの上記飽和多価カルボン酸や芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステルなどが挙げられる。
これらの飽和多価カルボン酸や芳香族多価カルボン酸やそれらの反応性誘導体は、これらの中から一種を選択して用いてもよく、また、これらを併用し組み合わせて二種以上用いてもよい。
【0033】
本発明の不飽和ポリエステルは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が4000〜10000の範囲の物が必要である。樹脂の低粘度化することおよびモノマー含有量を減らすためには、重量平均分子量をこの範囲にすることが好ましい。この範囲より小さいと低粘度化は出来るが、得られる硬化物の耐水性や機械的特性を低下させてしまうことがあり、一方この範囲より高いと低粘度化が出来ないことがあり、ラジカル重合性モノマーの低減が出来なくなる。
【0034】
本発明の不飽和ポリエステルは、酸価が15mgKOH/g以下である不飽和ポリエステルである。より好ましくは酸価を10mgKOH/g以下である。このレベルまで酸価を下げることで、不飽和ポリエステルの分子末端に残るカルボン酸(COOH)の濃度及び不飽和ポリエステル中に残る未反応の酸(フリー酸)を低減することができ、カルボン酸(またはフリー酸)の濃度を低くすることで耐水性等を向上させることが出来る。この範囲より酸価が高いと分子末端に残るカルボン酸(COOH)及び不飽和ポリエステル中に残る未反応の酸(フリー酸)の濃度が上がることで、耐水性の低下を招くことがある。
【0035】
本発明の不飽和ポリエステルの合成方法は、第1段階として(A)多価アルコール成分と(D)飽和多価酸成分とを、酸価が10mgKOH/g以下になるまでエステル化する。その後第2段階として、(B)(イ)モノアルコール成分または(ロ)モノカルボン酸成分と、(C)不飽和多価酸成分を加えて、酸価が15mgKOH/g以下まで、より好ましくは酸価を10mgKOH/g以下までで且つ、そのポリスチレン換算の重量平均分子量が4000〜10000の範囲まで、エステル化反応をさせることにより不飽和ポリエステルとする。
本発明の不飽和ポリエステルの合成におけるその他の反応の条件は、常法に従い、窒素などの不活性ガス気流中で、140〜230℃の温度で行われ、加圧下または減圧下で所要の段階までエステル化させる方法で行なう。
【0036】
本発明の不飽和ポリエステルのエステル化反応は、前記のごとき2段反応方式で行うことが好ましい。まず、1段目の反応で前記(A)多価アルコール成分と(D)飽和多価酸成分を加えてエステル化を進め、引き続き(B)末端封鎖成分[(イ)モノアルコール成分または(ロ)モノカルボン酸成分]と、(C)不飽和多価成分を加えてエステル化させる。
この方式を取ることで、エステル化が比較的難しい(D)飽和多価成分をポリエステル分子鎖の中に有効的に組み込め、分子末端近くに(C)不飽和多価成分の不飽和基を導入できるため、低分子量化による物性低下を防止できる。
また、前記のエステル化反応では、必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。その触媒例としては、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド、シュウ酸第一錫、酢酸亜鉛、酢酸コバルト等の公知の触媒が挙げられる。しかし、硬化物の耐水性を低下させないためには、エステル化触媒を使用しない方が好ましい。
【0037】
本発明の不飽和ポリエステルの合成において、(A)多価アルコール成分、(B)末端封鎖成分[(B)(イ)モノアルコール成分又は(ロ)モノカルボン酸成分]、(C)不飽和多価酸成分及び(D)飽和多価酸成分の配合において、(A)多価アルコール成分中と(B)(イ)モノアルコール成分中のヒドロキシル基(OH)総計に対し(C)不飽和多価酸成分中と(D)飽和多価酸成分中のカルボキシル基(COOH)総計の配合比または、(A)多価アルコール成分中のヒドロキシル基(OH)総計に対し(B)(ロ)モノカルボン酸成分中と(C)不飽和多価酸成分中と(D)飽和多価酸成分中のカルボキシル基(COOH)総計の配合比[水酸基(OH)/カルボキシル基(COOH)]は、1.01から1.15、より好ましくは1.01から1.12の配合となるようにする。
水酸基(OH)/カルボキシル基(COOH)の比率がこの範囲より低いと得られる不飽和ポリエステルの酸価を低くすることが出来ず、カルボン酸またはフリー酸の濃度が上がり耐水性を劣化することがある。またこの範囲より比率が高いと、不飽和ポリエステルの低分子量化による物性低下を招くことがある。
【0038】
さらにアルコール成分の配合比率が(A)成分100モルに対して末端封鎖成分の(B)(イ)モノアルコール成分が5〜20モル、特に好ましくは10〜20モルであり、また酸成分の配合比率が、(C)+(D)成分100モルに対して(C)成分50〜80モル、(D)成分50〜20モル、(B)(ロ)モノカルボン酸成分5〜20モルで、エステル化反応をさせる。
また(B)(ロ)モノカルボン酸を使用する場合には、(C)+(D)の多価カルボン酸成分の100モルに対して、5〜20モル、特に13〜18モルを配合することが好ましい。この範囲の比率より少ないと低粘度化が出来なくなることがあり、この範囲より多いと耐水性の低下などを招いてしまうことがある。
(B)(イ)モノアルコール成分または(ロ)モノカルボン酸成分がこの範囲より少ないと不飽和ポリエステルの分子末端の封鎖効果が得られなく、耐水性の低下や粘度のアップになることがあり、この範囲より多いとモノアルコール成分またはモノカルボン酸成分が残ったり、分子量が小さくなり過ぎて耐水性の低下を招くことがある。
さらに、(C)不飽和多価酸成分がこの範囲より少ないと耐熱性の低下に伴って耐水性の低下を招くことがあり、この範囲より高いとイソフタル酸やテレフタル酸を必須成分とする酸成分である(D)飽和多価酸成分の比率が下がり、耐水性の低下を招くことがある。
【0039】
次に、本発明の不飽和ポリエステルは、このポリエステルと共重合可能なラジカル重合性モノマーを配合することにより、本発明の不飽和ポリエステル樹脂に含有されるラジカル重合性モノマーの含有量を低減させ、それによってそのモノマーの揮散量を低減して作業環境の改善を可能とした不飽和ポリエステル樹脂が得られる。
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるラジカル重合性モノマーとしては、例えばスチレン系のスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ジクロルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、更にエチルビニルエーテル、メチルビニルケトンなどのビニルモノマーや、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルサクシネート、トリアリルシアヌレートなどのアリル化合物およびそれらのオリゴマーなどが挙げられる。
【0040】
更に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなど、更に炭素数12〜15の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの混合物(例えば、共栄社製のライトエステルL−7、ライトエステルL−8、日本油脂製のブレンマーSLMA、ブレンマーCMAなど)、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレートベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のモノ(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0041】
更に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。これらラジカル重合性モノマーは単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。一般的にはスチレンが好ましく用いられる。耐水性・耐候性への影響を考慮してモノマーを選定して使用することが好ましい。ラジカル重合性モノマーの揮散の抑制と低臭気化するためには、より沸点の高いモノマーや刺激臭や異臭の少ないモノマーを選定して使用する。
【0042】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂における上記ラジカル重合性モノマーの含有量としては、不飽和ポリエステル100質量部当たり、20〜75質量部の範囲である。更に低モノマー揮散性樹脂にするためには、不飽和ポリエステル100質量部当たり、20〜55質量部の範囲である。不飽和ポリエステル樹脂に含まれる上記ラジカル重合性モノマーの含有量を35質量%以下にすることが好ましい。
また、該樹脂の粘度は、通常温度25℃で0.1〜100dPa・s(デシパスカル・秒)の範囲である。より好ましくは、0.1〜50dPa・sの範囲である。
【0043】
本発明の不飽和ポリエステル及び不飽和ポリエステル樹脂には、所望により、重合禁止剤を添加することができる。この重合禁止剤としては、従来不飽和ポリエステル樹脂に慣用されているもの、例えばハイドロキノン、トリハイドロベンゼン、ベンゾキノン、P−ベンゾキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルハイドロキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどが挙げられる。好ましくは樹脂組成物に、10〜1000ppmの範囲で添加しうるものである。
【0044】
本発明の不飽和ポリエステル及び不飽和ポリエステル樹脂をゲルコート樹脂組成物及びトップコート樹脂組成物として使用する場合には、揺変性付与剤、着色剤、紫外線吸収剤、増粘剤、消泡剤、ワックス、可塑剤などの各種添加剤を配合する。
特に、ゲルコート樹脂組成物及びトップコート樹脂組成物として使用する場合には、揺変性付与剤及び揺変性付与助剤を添加して、揺変性(チクソトロピー性)を付与させる。揺変性付与剤の具体的な例としては、無水微粉末シリカ、アスベスト、クレー等が挙げられる。また、揺変性付与助剤の具体的な例としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、有機4級アンモニウム塩、BYK−R−605(商品名;ビックケミージャパン(株)製)等が挙げられる。これら揺変性付与剤を添加することで、樹脂に揺変性(チクソトロピー性)を付与することができ、樹脂が垂れ難くなり、水平面だけでなく立ち面などにも均一に樹脂を塗布でき、均一な樹脂硬化塗膜を形成できる。これらの添加量は樹脂100重量部に対して0.2〜10重量部の比率で使用する。
【0045】
また、トップコート樹脂組成物に使用する場合には、ワックスを添加する。使用されるワックスとしては、石油系ワックス、オレフィン系ワックス、極性ワックス、特殊ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
前記石油系ワックスとしては、たとえば、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。前記オレフィン系ワックスとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。さらに極性ワックスとしては、これらの石油系ワックス、オレフィン系ワックスに極性基(水酸基・エステル基など)を導入したワックス類やオレイン酸・リノール酸・リノレン酸などの不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられる。特殊ワックスとしては、ビックケミー社製のByk LPS−6665などが挙げられる。ワックスの添加量は樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部の比率で使用する。
これらのワックスを使用することで、樹脂が硬化する際に塗膜表面やライニング層表面に析出して酸素遮断剤として有効に働き、塗膜やライニング層の良好な表面乾燥性を得ることができる(表面の空気や酸素による硬化阻害等を防止できる)。これらのワックスを使用しないと、良好な表面乾燥性を得ることが難しいことがある。
【0046】
着色剤としては、具体的には、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
可塑剤としては、具体的には、塩素化パラフィン、リン酸エステル、フタル酸エステル等が挙げられる。
また、増粘剤としては、具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。
消泡剤としては、シリコン系やポリマー系のものなど公知のものが使用できる。
紫外線吸収剤としては、2(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、ベンゾエート系など公知のものが使用できる。更にヒンダードアミン系なども使用できる。添加量は、好ましくは樹脂組成物の合計量100重量部に対して、0.01〜5重量部である。
【0047】
本発明の不飽和ポリエステル及び不飽和ポリエステル樹脂は、通常の不飽和ポリエステル樹脂に慣用されているラジカル硬化剤と硬化促進剤を添加することによって、又は光ラジカル開始剤により容易に常温硬化や加熱硬化によって硬化できる。ラジカル硬化剤とは、有機過酸化物が挙げられ、具体的にはベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル系、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド系、ジクミルパーオキサイドなどジアルキルパーオキサイド系、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等公知公用のものが使用される。硬化剤の添加量は、好ましくは樹脂組成物の合計量100重量部に対して、0.1〜6重量部である。
【0048】
一方、 硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等金属石鹸類、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4-(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4-(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられる。硬化促進剤の添加量は、0.1〜5重量部の範囲で使用する。
【0049】
光ラジカル開始剤としては、光増感剤であり具体的にはベンゾインアルキルエーテルのようなベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系等が挙げられる。 開始剤の添加量は、好ましくは樹脂組成物の合計量100重量部に対して、0.1〜6重量部である。
【0050】
本発明では、発明を損なわない範囲で樹脂組成物に繊維補強材及び又は充填材・骨材を組合わせて樹脂複合組成物を作成できる。使用される繊維補強材としては、例えば、ガラス繊維、アミド、アラミド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維或いはこれらを組合わせて用いることができる。施工性、経済性を考慮した場合、好ましいのはガラス繊維及び有機繊維であり、特にガラス繊維である。また、繊維の形態は、平織り、朱子織り、不織布、マット、ロービング、チョップ、編み物、組み物、これらの複合構造の物等があるが、施工法、厚み保持等によりマット状が好ましい。また、ガラスロービングを20〜100mmにカットしてチョップドストランドにして使用することも可能である。上記の樹脂組成物の全体に占める繊維補強材成分の割合としては、1〜50重量%が好ましい。
【0051】
充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、フライアッシュ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス粉末など、骨材としては、珪砂・砂利・砕石などが挙げられる。これらをモルタル用として使用するときは、これらの粒径が5mm以下程度のものが好ましい。充填剤または骨材の配合量としては、上記樹脂組成物の全体量に対して、充填剤及び骨材成分の割合としては、1〜300重量%が好ましい。
【0052】
本発明の樹脂組成物及びゲルコート樹脂組成物、トップコート樹脂組成物は、FRP成形品の表面保護材やFRP防水被覆構造体またはライニング被覆構造体などの表面保護材、仕上げ材として使用できる。
FRP成形品の表面保護材としては、ゲルコート樹脂組成物を使用する。これらFRP成形品にゲルコート層を塗布する方法は、通常行われるハンドレイアップやスプレーアップ法等で行なう方法でできる。例えば、型の離型処理、スプレー法又は刷毛塗り法などでゲルコート樹脂組成物の塗布・硬化、FRP層の積層・硬化、脱型の工程を経て、ゲルコート層を塗布したFRP成形品が得られる。
【0053】
FRP防水被覆構造体またはライニング被覆構造体などの表面保護材、仕上げ材としては、トップコート樹脂組成物を使用する。トップコート樹脂組成物を塗布する方法は、通常行われるハンドレイアップやスプレーアップ法等で行なうFRP防水及びFRPライニングの作業工程に従って行なうことができる。例えば、下地処理、プライマー塗布・硬化、下塗り層塗布・硬化、FRP層のライニング・硬化、上塗り層塗布・硬化、トップコートの塗布・硬化の工程を経て、トップコート層を塗布したFRP防水材及びFRPライニング材、即ちFRP防水被覆構造体またはライニング被覆構造体が得られる。
【0054】
本発明の樹脂組成物及びゲルコート樹脂組成物が利用できるFRP成形品の用途としては、モーターボート、ヨット、ウォータージェット、漁船などの舟艇、船舶関連材料、浴槽、防水パン、浴室壁、洗面ボール、キッチンカウンターなどの住宅設備関連材料、スポイラー、バンパー、風洞板、などの自動車車両部品関連材料、遊具、擬岩、ウォータースライダー、プールなどの遊具関連材料、更にタンク容器、レジンコンクリート、電気電子部品、土木建築材料など多くの物に利用できる。
【0055】
トップコート樹脂組成物を利用できるFRP防水被覆構造体またはライニング被覆構造体は、建築物の屋根、屋上、開放廊下、ベランダ、駐車場、外壁、地下外壁、室内及び水槽類の防水構造体及びメンブレン防水構造体として適する。更にこれらの構造物の基体としては、例えばセメントコンクリート、アスファルトコンクリート、ALC板、PC板、FRP、プラスチック、木質物、金属などの単独あるいは組み合わせて構成されたものを意味し、その形状はいずれのものでも良く、土木建築物の表面であれば球面、曲面、円柱面、平面、垂直面、斜面、天井面等のいずれでも塗布できる。特に新設または補修工事に拘らず使用でき、更に屋外防水では人や車がその上を通行しても十分耐久性を保持するので、重歩行防水や駐車場等の被覆用材として利用できる。
【0056】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物の成形法としては特に制限するものでなく、例えばハンドレイアップ成形法・スプレーアップ成形法・フィラメントワインディング成形法・レジンインジェクション成形法・レジントランスファー成形法・引き抜き成形法・真空成形法・圧空成形法・圧縮成形法・インジェクション成形法・注型法・スプレー法などを適用することができる。
特に、ゲルコート樹脂組成物及びトップコート樹脂組成物として使用される場合には、スプレー法、刷毛塗り法、ローラー塗布などの方法が使用される。
【0057】
本発明の不飽和ポリエステル及び不飽和ポリエステル樹脂は、ゲルコート樹脂組成物及びトップコート樹脂組成物以外の用途でも使用できる。その用途としては、上記に示した用途と同様のもの、更にはBMC(Bulk Molding Compound)、SMC(Sheet Molding Compound)などの成形材料などが挙げられる。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例よりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各実施例、比較例の不飽和ポリエステルの合成条件と得られた不飽和ポリエステル及び樹脂の液状及び硬化物物性の評価は、以下の要領に従って求めた。
【0059】
<合成条件及び合成結果>
(1)酸価、粘度
合成して得られた不飽和ポリエステル又はその樹脂組成物の酸価及び粘度をJIS K 6901に記載の「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の方法に従って測定した。酸価は水酸化カリウム溶液で滴定して、その滴定に要した水酸化カリウムのmg数から計算した。粘度は、ブルックフィールド形粘度計法に従い、B型(BM)粘度計にて25℃で測定した。
【0060】
(2)数平均分子量、重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC){ショウデックスGPC−104:昭和電工製、溶剤:テトラヒドロフラン(THF)}にて、合成物のポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を測定した。
【0061】
<ゲルコート用樹脂の調整>
合成して得られた樹脂1000質量部、シリカ系チクソトロピー性付与剤15質量部(日本エアロジール社製:エアロジール200)を混合分散したものに、さらに、淡色コバルト系促進剤(PA−202)1.5質量部、ターシャリーブチルカテコール0.15質量部を追加混合し、紫外線吸収剤1.0質量部(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製:チュニビン213)、アセチルブチルラクトン0.7質量部、必要に応じてスチレン(SM)及びブチルヒドロキシトルエン(BHT)を添加し、粘度が25〜30dPa・s、ゲル化時間(25℃/55質量%のメチルエチルケトンパーオキサイド溶液を1.0質量%添加)が約20〜30分になるように樹脂を調整した。これら樹脂の粘度、チクソトロピーインデックスをJIS K 6901の方法に従って測定した。
【0062】
<トップコート用樹脂の調整>
ゲルコート用樹脂500質量部にパラフィンワックス125°F 0.5質量部、140°F 0.5質量部を混合溶解させた。
【0063】
<変性樹脂の作業性の評価>
(1)スチレン揮散性
ゲルコート用樹脂の作業環境の評価として、液状樹脂のスチレン揮散性の測定をした。直径5cmのブリキキャップに積層用変性樹脂10質量部を計量し、23℃の無風下で時間を追って重量変化を測定した。スチレン揮散量は、樹脂の減少量と樹脂の空気面の表面積(ブリキキャップ内の樹脂の表面積)から、単位表面積当たり・単位時間当たりの数値に換算した。この揮散量が低い方が実際の作業時の揮散量も少なくなり、低臭気化が可能になる。
【0064】
(2)トップコート用樹脂の表面乾燥性評価
23℃の雰囲気下で、水平に置いた厚さ5mm、大きさ30cm×30cmのガラス板に、55質量%のメチルエチルケトンパーオキサイド溶液を1.0質量%添加して混合したトップコート用樹脂を0.5mmの厚さで塗布(ヨシミツ精機(株)製:YBA型ベーカーアプリケーターを使用)して硬化させた。1.5時間後及び2時間後の塗膜の表面乾燥性を指触乾燥で評価した。
【0065】
<硬化物物性評価用の試験片の作製>
ゲルコート用樹脂500質量部に55質量%メチルエチルケトンパーオキサイド溶液5.0質量部を配合して均一に混合して、厚さ4mmの板状硬化物が得られるように組んだ型に流し込み、25℃で16時間放置して硬化後させ、120℃で2時間にて後硬化させた。また、ゲルコート用樹脂の実用的な後硬化条件として60℃で2時間実施したものも行った。この硬化物からJISの規格に従って切削加工して試験片を作製した。
【0066】
<硬化物の物性>
(1)耐煮沸性、熱変形温度
前記試験片について、JIS K 6911の方法に従って100℃の連続煮沸試験を行いブリスター(膨れ・クラック)の発生時間を測定した。さらに、JIS K 6911法に従って熱変形温度を測定した。耐煮沸性は後硬化条件120℃と60℃の2種類を評価した。
(2)引張り強度、引張り伸び率
前記試験片について、JIS K 7162法に従って引張り試験を行い、引張り強度、引張り弾性率及び引張り破壊伸び率を測定した。
【0067】
<耐候性の評価>
(1)促進暴露試験
前記試験片について、キセノンランプ(100W:東洋精機製 ATLASウェザーメーターCi4000)によるデゥーサイクル(照射ブラックパネル温度65℃、水の噴霧18分/120分中)での促進暴露試験を行なった。促進暴露試験は後硬化条件120℃と60℃の2種類を評価した。
(2)表面光沢の測定
促進暴露試験前、試験後の試験片の照射面の表面光沢度を光沢計(村上色材技術研究所製:GM−26PRO/Auto)にて60度で測定した。
【0068】
[実施例1]
撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した5リッターのフラスコに、イソフタル酸835重量部、ネオペンチルグリコール716重量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール468重量部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール594重量部、亜燐酸0.35重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながら190℃まで昇温して、その後徐々に215℃まで昇温してエステル化反応させ、酸価 が9.5mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃で120℃でベンジルアルコール181重量部、フマール酸1363重量部を仕込み、150℃から210℃で定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が9.8mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が2410、重量平均分子量が9310であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて不飽和ポリエステル樹脂PE−1を調製した。この樹脂PE−1の粘度(25℃)は28.7dPa・sであった。
【0069】
[実施例2]
実施例1と同様の方法にて、イソフタル酸822重量部、ネオペンチルグリコール687重量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール446重量部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール585重量部、亜燐酸0.35重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながらエステル化反応させ、酸価 が9.2mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃でベンジルアルコール267重量部、フマール酸1341重量部を仕込み、定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が8.6mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1980、重量平均分子量が7440であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)14.8dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−2を調製した。
【0070】
[実施例3]
実施例1と同様の方法にて、イソフタル酸830重量部、ネオペンチルグリコール780重量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール525重量部、1,6−ヘキサンジオール394重量部、亜燐酸0.35重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながらエステル化反応させ、酸価 が9.1mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃でベンジルアルコール270重量部、フマール酸1354重量部を仕込み、定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が7.3mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1970、重量平均分子量が6780であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)13.7dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−3を調製した。
【0071】
[実施例4]
実施例1と同様の方法にて、イソフタル酸1023重量部、ネオペンチルグリコール1040重量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール600重量部、亜燐酸0.35重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながらエステル化反応させ、酸価 が9.3mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃でベンジルアルコール270重量部、フマール酸1219重量部を仕込み、定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が7.8mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1770、重量平均分子量が5310であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)14.3dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−4を調製した。
【0072】
[実施例5]
実施例1と同様の方法にて、イソフタル酸1046重量部、ネオペンチルグリコール492重量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール568重量部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール558重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながらエステル化反応させ、酸価 が10.2mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃でベンジルアルコール341重量部、フマール酸1098重量部を仕込み、定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が5.7mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1420、重量平均分子量が4540であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)5.7dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−5を調製した。
【0073】
[実施例6]
実施例1と同様の方法にて、イソフタル酸857重量部、ネオペンチルグリコール588重量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール291重量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール767重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながらエステル化反応させ、酸価 が6.6mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃でベンジルアルコール340重量部、フマール酸1273重量部を仕込み、定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が8.7mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1540、重量平均分子量が4680であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)17.8dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−6を調製した。
【0074】
[実施例7]
実施例1と同様の方法にて、イソフタル酸788重量部、ネオペンチルグリコール741重量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール499重量部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール561重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながらエステル化反応させ、酸価 が9.3mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃で安息香酸290重量部、フマール酸1286重量部を仕込み、定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が9.6mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が2010、重量平均分子量が7530であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)17.5dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−7を調製した。
【0075】
[実施例8]
実施例1と同様の方法にて、イソフタル酸897重量部、ネオペンチルグリコール1075重量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール644重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながらエステル化反応させ、酸価 が3.4mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃で安息香酸291重量部、フマール酸1218重量部を仕込み、定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が8.6mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1960、重量平均分子量が6910であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)20.7dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−8を調製した。
【0076】
[比較例1]
実施例1と同様の方法にて、イソフタル酸1072重量部、ネオペンチルグリコール588重量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール509重量部、ジプロピレングリコール649重量部、亜燐酸0.35重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながらエステル化反応させ、酸価 が9.0mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃でベンジルアルコール174重量部、フマール酸1124重量部を仕込み、定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が8.3mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1950、重量平均分子量が7950であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)13.8dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−6を調製した。
【0077】
[比較例2]
実施例1と同様の方法にて、イソフタル酸1190重量部、ネオペンチルグリコール1156重量部、プロピレングリコール586重量部、亜燐酸0.35重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながらエステル化反応させ、酸価 が4.7mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃でフマール酸1248重量部を仕込み、定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が9.7mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が3200、重量平均分子量が12860であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)56.8dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−7を調製した。
【0078】
[比較例3]
実施例1と同様の方法にて、イソフタル酸1158重量部、ネオペンチルグリコール1107重量部、プロピレングリコール557重量部、亜燐酸0.35重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながらエステル化反応させ、酸価 が9.5mgKOH/gなった時点で冷却し、引き続き120℃でベンジルアルコール126重量部、フマール酸1215重量部を仕込み、定法手順によりエステル化反応を行ない酸価 が9.2mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が2440、重量平均分子量が8770であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)39.2dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−8を調製した。
【0079】
[比較例4]
実施例1と同様の方法にて、ヘキサヒドロ無水フタル酸924重量部、フマール酸1044重量部、ネオペンチルグリコール936重量部、2,2−ブチルエチル1,3−プロパンジオール1080重量部、亜燐酸0.35重量部を仕込み、窒素気流下で加熱撹拌しながら定法手順によりエステル化反応させ、酸価 が22.5mgKOH/gなった時点で冷却し、不飽和ポリエステル3500重量部を得た。このポリエステルの分子量をGPCにて測定した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1520、重量平均分子量が5280であった。
次に、この不飽和ポリエステル3500重量部にハイドロキノン0.50重量部を添加し、スチレン1500重量部に溶解させて粘度(25℃)12.2dPa・sの不飽和ポリエステル樹脂PE−8を調製した。
これら合成結果および評価結果を表1および表2に、比較例を表3に示す。また、評価基準を表4に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、ラジカル重合性モノマーであるスチレン含有量を低減した不飽和ポリエステル樹脂即ち低スチレン含有の不飽和ポリエステル樹脂であり、それにより安定した低モノマー揮散性(低スチレン揮散性)の効果である作業環境の改善が期待でき且つ、更に該不飽和ポリエステル樹脂を用いて得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物、ゲルコート樹脂組成物及びトップコート樹脂組成物を硬化させて得られる塗膜硬化物、成形物及びライニング構造物の耐水性、耐候性、機械的物性を改善できる不飽和ポリエステル、その製造方法及び該不飽和ポリエステルを用いてなる上記特性を有する不飽和ポリエステル樹脂を提供することが出来るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エーテル基を含まない炭素数4以上のアルキレングリコールからなる多価アルコール成分、(B)末端封鎖成分、(C)α、β−不飽和多価カルボン酸及びその反応性誘導体の中から選ばれる不飽和多価酸成分及び(D)イソフタル酸またはテレフタル酸を必須成分として含有する飽和多価カルボン酸あるいは、その反応性誘導体の中から選ばれる飽和多価酸成分とをエステル化反応して得られる不飽和ポリエステルであり、そのポリスチレン換算の重量平均分子量が4000〜10000である不飽和ポリエステル。
【請求項2】
(A)成分の多価アルコール成分が多価アルコール成分100モル中に炭素数6以上で水酸基と水酸基の間の炭素数が5以上のアルキレングリコールを10モル以上含む請求項1に記載の不飽和ポリエステル。
【請求項3】
(B)末端封鎖成分が(イ)フェニル基を1つ以上有するアルキルモノアルコールからなるアルコール成分または(ロ)芳香族物カルボン酸からなる酸性分のいずれかである請求項1に記載の不飽和ポリエステル。
【請求項4】
(D)飽和多価酸成分を、全多価酸成分中20〜50モルを配合した請求項1に記載の不飽和ポリエステル。
【請求項5】
(A)多価アルコール成分/(B)末端封鎖成分/(C)不飽和多価酸成分/(D)飽和多価酸成分の配合比率を、水酸基(OH)/カルボキシル基(COOH)の比率が1.01から1.15であり且つ、末端封鎖成分として(B)(イ)アルコール成分を使用するときは末端封鎖成分としてアルコール成分の比率が(A)成分100モルに対して(B)(イ)成分が5〜20モルをエステル化して得られたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル。
【請求項6】
(A)多価アルコール成分/(B)末端封鎖成分/(C)不飽和多価酸成分/(D)飽和多価酸成分の配合比率を、水酸基(OH)/カルボキシル基(COOH)の比率が1.01から1.15であり且つ、末端封鎖成分として(B)(ロ)を使用するときは酸成分の比率が(C)+(D)成分100モルに対して(C)成分50〜80モル/(D)成分50〜20モル/(B)(ロ)成分5〜20モルをエステル化して得られたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル。
【請求項7】
不飽和ポリエステルの酸価が、15mgKOH/g以下になるまでエステル化反応を行って得られた請求項1〜6のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステルを合成するに際し、(A)多価アルコール成分及び(D)飽和多価酸成分とを、酸価が10mgKOH/g以下になるまでエステル化し、その後に、末端封鎖成分として(B)(イ)モノアルコール成分又は(ロ)モノカルボン酸成分と(C)不飽和多価酸成分を加えて、酸価を15mgKOH/g以下、且つポリスチレン換算の重量平均分子量を4000〜10000までエステル化反応を行なうことを特徴とする不飽和ポリエステルの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステルに、(E)ラジカル重合性モノマーを配合して得られる不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項10】
請求項9に記載の不飽和ポリエステル樹脂において、(E)ラジカル重合性モノマーの含有量が35質量%以下である不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項11】
請求項9または10に記載の不飽和ポリエステル樹脂を使用したゲルコート樹脂組成物またはトップコート樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のゲルコート樹脂組成物またはトップコート樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を含む成形物またはライニング構造物。

【公開番号】特開2006−56975(P2006−56975A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239454(P2004−239454)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【復代理人】
【識別番号】100094178
【弁理士】
【氏名又は名称】寺田 實
【Fターム(参考)】