説明

耐火層の施工方法と耐火構造物

【課題】耐火層の施工時に耐火層の膜厚を確認できしかも耐火性を低下させることなく効率的な施工を行う。
【解決手段】構造物(セグメント2)の表面に耐火物を吹き付け塗膜して耐火層3を形成する耐火層の施工方法であって、前記構造物は耐火層3に埋設されると共に耐火性を有する層厚測定手段4を設け、層厚測定手段4はその設置高さが予め定められた耐火層3の厚みと同寸法に設定され、前記吹き付け塗膜時に層厚測定手段4は前記構造物に形成される耐火層3の厚みを示す。層厚測定手段4は複数設けられる。層厚測定手段4は例えば前記構造物には耐火層3を補強する補強材5が設けられた後に耐火層3が形成される。層厚測定手段4の表面は適宜粗面処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種材料(例えばコンクリート、モルタル、金属類)からなる構造物の表面に形成される耐火層の施工方法とこれによって得られた耐火構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルに例示される構造物においては、その表面の覆工材としてコンクリート製やモルタル製または金属製等のセグメントが一般的に用いられている。そして、近年になって、この種の構造物に耐火性が要求されるようになってきた。そこで、前記構造物が耐火性を有するようにするために、例えば特許文献1(特開2003−239693)に示された施工方法が採用されている。この方法は補強材が設置されたセグメントの表面に耐火材料を直接吹き付け塗布することにより前記構造物に耐火性を付与させている。
【0003】
また、前記耐火層の施工の過程では耐火層の厚みが適宜監視されている。例えば特許文献2(特開平11−44199)や特許文献3(特開平05−59894)には計測ピンを用いた監視方法が示されている。さらに、特許文献2及び特許文献3にはレーザ光を用いた計装機器を採用した監視方法が開示されている。また、特許文献4〜6に示された施工方法では画像データを用いて監視する方法が採用されている。
【特許文献1】特開2003−239693
【特許文献2】特開平11−44199(段落番号0003及び0013)
【特許文献3】特開平05−59894(段落番号0002及び0009)
【特許文献4】特開2003−13699
【特許文献5】特開2000−283756
【特許文献6】特開平11−44529
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物に形成される耐火層の厚みは30mm程度と薄いことから広範囲に渡って厚み測定管理が必要となり、計測ピンを用いた監視方法では、甚大な工数が必要となり適切ではない。しかも、計測ピンは金属であり熱伝導性はコンクリート素材のものよりも高いので構造物の耐火特性に悪影響を及ぼす場合がある。また、画像データを用いて監視する方法が採用されている場合、耐火層の厚さの測定は耐火層施工後となる。そして、その測定結果が適当でない場合、補修工事が必要となり、結果的に工数が増大する。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みなされたもので、その目的は耐火層の施工時に耐火層の膜厚を確認できしかも耐火性を低下させることなく効率的な施工を行える耐火層の施工方法と耐火構造物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1記載の耐火層の施工方法は、構造物の表面に耐火物を吹き付け塗膜して設定厚さの耐火層を形成する耐火層の施工方法であって、前記構造物は前記耐火層に埋設されると共に耐火性を有する層厚測定手段を設け、前記層厚測定手段はその設置高さが予め定められた耐火層の厚みと同寸法に設定され、前記吹き付け塗膜時に前記層厚測定手段は前記構造物に形成される耐火層の厚みを示すことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の耐火層の施工方法は、請求項1記載の耐火層の施工方法において、前記層厚測定手段は複数設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の耐火層の施工方法は、請求項1または2記載の耐火層の施工方法において、前記構造物には前記耐火層を補強する補強材が設けられた後に前記耐火層が形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の耐火層の施工方法は、請求項1から3のいずれか1項に記載の耐火層の施工方法において、前記層厚測定手段は前記構造物と一体的に形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の耐火層の施工方法は、請求項1から4のいずれか1項に記載の耐火層の施工方法において、前記層厚測定手段は固定手段によって前記構造物の表面に固定されることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の耐火層の施工方法は、請求項5記載の耐火層の施工方法において、前記固定手段は接着剤、両面テープ、粘土のいずれかであることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の耐火層の施工方法は、請求項3記載の耐火層の施工方法において、前記層厚測定手段は前記補強材に具備されることにより前記構造物に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の耐火層の施工方法は、請求項7記載の耐火層の施工方法において、前記補強材はメッシュ構造を構成する線材からなり、前記線材に前記層厚測定手段が装着されることにより、前記層厚測定手段は前記構造物に設けられることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の耐火層の施工方法は、請求項1から8のいずれか1項に記載の耐火層の施工方法において、前記層厚測定手段は耐火層の材料またはこの材料よりも耐火特性を有する材料からなることを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の耐火層の施工方法は、請求項1から9のいずれか1項に記載の耐火層の施工方法において、前記層厚測定手段は断面が円形または多角形のいずれかに形成されたことを特徴とする。
【0016】
請求項11記載の耐火層の施工方法は、請求項1から10のいずれか1項に記載の耐火層の施工方法において、前記層厚測定手段はその表面が粗面処理されることを特徴とする。
【0017】
請求項12記載の耐火構造物は、耐火物が吹き付け塗膜されて耐火層が形成された耐火構造物であって、前記耐火層が形成される面に前記耐火層によって埋設されると共に耐火性を有する層厚測定手段を備え、前記層厚測定手段は、その設置高さが予め定められた耐火層の厚みと同寸法に設定され、前記吹き付け塗膜時に形成される耐火層の厚みを示すことを特徴とする。
【0018】
請求項1〜11に記載された耐火層の施工方法及び請求項12に記載された耐火構造物によれば、構造物に対する耐火層の被り状態すなわち耐火層の厚みを監視しながらの耐火物の吹き付け塗膜作業を行えるようになる。また、前記層厚測定手段は耐火層によって埋設されるので、耐火層が形成された後の前記層厚測定手段の撤去は必要なくなり、構造物の施工に費やされる工数が低減する。さらに、前記層厚測定手段は、耐火性を有するので、構造物の耐火特性を維持させることができる。
【0019】
特に、請求項2記載の耐火層の施工方法によれば、請求項1記載の耐火層の施工方法に係る作用に加え、形成される耐火層の層厚がより一層均等なものとなる。
【0020】
また、請求項3記載の耐火層の施工方法によれば、請求項1または2記載の耐火層の施工方法に係る作用に加え、耐火層の強度が高まる。
【0021】
さらに、請求項7及び8記載の耐火層の施工方法によれば、請求項3記載の耐火層の施工方法に係る作用に加え、前記層厚測定手段の脱落が防止されると共に耐火層の強度が維持される。
【0022】
また、請求項9記載の耐火層の施工方法によれば、請求項1〜8記載の耐火層の施工方法に係る作用に加え、耐火層の耐火特性を維持及び向上させることができる。
【0023】
さらに、請求項10記載の耐火層の施工方法によれば、請求項1〜9記載の耐火層の施工方法に係る作用に加え、前記層厚測定手段の表面積が広くなり、耐火層のとの接着強度が高まる。
【0024】
また、請求項11記載の耐火層の施工方法によれば、請求項1〜10記載の耐火層の施工方法に係る作用に加え、前記層厚測定手段の表面積がより一層広くなり、耐火層のとの接着強度がより一層高まる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように請求項1〜11記載の耐火層の施工方法と請求項12記載の耐火構造物によれば、耐火層の形成と同時に耐火層の膜厚管理を行えるので、効率的に信頼性の高い耐火層の形成を実現できる。また、構造物の耐火特性に悪影響を及ぼすことなく、安定した信頼性の高い耐火構造物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明を実施する形態について説明する。
【0027】
図1は本発明の一実施形態に係る構造物を採用したトンネルの断面を示した概略図である。
【0028】
トンネル1は、トンネル構造を形成させる複数のコンクリート製の構造物であるセグメント2と、これらのセグメント2の表面に形成される耐火層3とからなる。
【0029】
セグメント2は現場に応じて既知のコンクリート成分からなり略板状に形成されている。本実施形態では複数のセグメント2が端面で互いに接合することにより前記トンネル構造が形成されている。セグメント2の形状は本実施形態のような略板状のものに限定されず例えば管状に形成してもよい。
【0030】
耐火層3は耐火性を有する既知の材料からなる。例えば特開2003−300783に開示されものが挙げられる。より具体的には、水硬性混合物を自硬化したもので、コーディライト等に例示される骨材と、アルミナセメントや高炉セメント等に例示される水硬性無機質材と、ポリビニールアルコール系繊維等の耐アルカリ性の繊維質材とを主成分とするものが例示される。
【0031】
図2(a)は本実施形態に係る構造物であるセグメントに形成された耐火層の構成を示した断面図である。図2(b)は前記耐火層に有する補強材を前記セグメントに取り付ける取り付け手段の一実施形態を示した断面図である。図2(c)は前記セグメントに対する耐火層の被り厚を示す層厚測定部の一実施形態を示した平面図である。図3(a)及び図3(b)は層厚測定部の実施形態を例示列挙した断面図である。
【0032】
耐火層3は図2(a)に示したようにセグメント2を覆うように設けられる。耐火層3は、耐火層3の材料がセグメント2の表面に吹き付け塗膜されることにより、セグメント2に設けられる。セグメント2に対する耐火層3の被り(層厚)は現場に応じて所定の値(例えば30mm)に適宜設定される。
【0033】
耐火層3には補強材5を含ませてもよい。補強材5は取り付け手段6によってセグメント2の表面に取り付けられる。補強材5及び取り付け手段6としては既知のものを採用すればよい。例えば、補強材5としては実公平4−42395号公報、特開平8−128154号公報、特開2003−155899、特開2003−239693等に開示された補強材が挙げられる。
【0034】
図4(a)は補強材の一実施形態を示した斜視図で,図4(b)は前記補強材がセグメントに固定された状態を示した平面図で,図4(c)は前記補強材がセグメントに固定された状態を示したA−A断面図である。
【0035】
補強材50は図4(a)に示されたように複数の縦線材53と複数の横線材54とからなるメッシュ構造を形成している。前記メッシュ構造は平網状でもよいが図示されたように波状に加工してもよい。補強材50の強度が高くなると共に補強材50をセグメント2に固定し易くなるからである。縦線材53と横線材54の材料は特開2003−239693に開示されている周知のものを採用すればよい。縦線材53と横線材54の線材径は例えば0.8〜3.0mmに設定される。前記メッシュ構造の目開き径としては例えば200〜500mmに設定される。
【0036】
前記メッシュ構造は補強部51と固定部52とを形成させている。補強部51は耐火層3を補強するための部位である。固定部52は取り付け手段6によってセグメント2に固定される部位である。補強部51と固定部52は、図4(b)及び図4(c)に示されたように、横線材54において所定の間隔で曲げ加工が施された部位に二本の縦線材53が設置されることにより形成されている。固定部52における縦線材53の間隔は、取り付け手段6を取り付けできるように取り付け手段6の軸の外径よりも広く且つ取り付け手段6に装着された座金60の外径によりも狭く設定される。
【0037】
取り付け手段6としては特開2003−239693に開示されたアンカーや図2(b)に示されたものが例示される。図2(b)に示された取り付け手段6は、セグメント2に埋設される埋設部61と、この埋設部61に装着されるアンカーボルト62とからなる。図示省略されているが取り付け手段6にはアンカーボルト62に締め付けられて縦線材53を押さえ付ける座金が装着される。一方、埋設部61の上端にはアンカーボルト62に締め付けられる図示省略したパッキンが載置される。埋設部61は、アンカーボルト62と螺合する筒状のスリーブ611と、このスリーブ611の下端部に接続される略樽状のインサート612からなる。埋設部61は、このようにスリーブ611とインサート612の形状を異にすることにより、セグメント2からの脱落を防止させている。また、インサート612の側面の一部には適宜に切り欠き部613が形成されることにより前記脱落防止機能をより一層効果的なものにしている。
【0038】
埋設部61の施工要領を図5(a)〜図5(c)に示した。先ず、図5(a)に示したようにセグメント2の型枠60に埋設部61が仮固定ボルト63によって装着される。仮固定ボルト63は図5(b)に示したように型枠60の孔601に挿通される芯出し部631を備えている。型枠60と埋設部61との間にはパッキン602が介在される。この状態で型枠60にセグメント2の成分が流し込まれる。セグメント2の成分が固化した後に型枠60を撤去すると共にパッキン602を外すと、図5(c)に示したように埋設部61を備え且つ定型されたセグメント2が出来上がる。
【0039】
また、本実施形態では、図2(a)に示されたように、セグメント2が耐火層3の形成作業時に耐火層3の被り厚を示す層厚測定手段4を備えることにより、前記作業時にセグメント2に対する耐火層3の被り状態(層厚)を監視できるようになっている。
【0040】
層厚測定手段4は耐火層3と同じ材料またはこれよりも耐火性の高い材料からなる。前記耐火性の高い材料としては例えばアルミナ、ムコライト、コーディエライト等のセラミックスが挙げられる。層厚測定手段4はセグメント2の表面から突起するように設けられ、その突起の高さは予め定められた耐火層3の厚さと同じ寸法に設定される。また、耐火層3に補強材50を含ませる場合、層厚測定手段4は図2(c)に示したように補強材50の縦線材53及び横線材54と緩衝しないように設けられる。さらに、層厚測定手段4は単一のセグメント2において所定の間隔(例えば200〜500mm)で複数設けるとよい。これにより、セグメント2に形成される耐火層3の厚さがより一層均等に確保される。
【0041】
層厚測定手段4の形状は突起方向の断面形状が図3(a)に示された膜層測定部42のように台形状のものに限定されない。例えば同図に示された層厚測定部43は突起方向の断面形状が蒲鉾型に形成されている。同図に示された層厚測定部44は突起方向の断面形状が半円形となっている。また、図3(b)に示された層厚測定部は突起方向の断面形状が円形状または多角形状のものに形成されている。すなわち、層厚測定部45は突起方向の断面形状が円形状となっている。層厚測定部46は突起方向の断面形状が四角形状となっている。層厚測定部47は突起方向の断面形状が六角形状となっている。
【0042】
層厚測定手段4は図3(a)に示されたように層厚測定部41のようにセグメント2との一体成形されるか、または同図に示された層厚測定部42,43,44のように固定手段40によってセグメント2に設置される。固定手段40としては接着剤、両面テープ、粘土等が例示される。前記接着剤としては土木建築に用いられている既知の接着剤を使用すればよい。
【0043】
層厚測定手段4をセグメント2に固定するための他の手段としては図6(a)に示したような補強材50の縦線材53または横線材54に装着する形態がある。縦線材53または横線材54に装着される層厚測定手段4の実施形態としては図6(b)に例示された層厚測定部71,72がある。層厚測定部71は円柱形状に形成されている。層厚測定部72は略樽形状に形成されている。耐火層3の層厚を規定する層厚測定部71,72の最大外径は予め定められた耐火層3の厚さと同じ寸法に設定される。
層厚測定部72の側面の曲率はセグメント2の表面の曲率によって定まる。
【0044】
層厚測定部71の構成と装着要領について説明する。図7(a)は層膜厚測定部の構成を示した分解平断面図で,図7(b)は層厚測定部の一実施形態を示した断面図で,図7(c)は層厚測定部の他の一実施形態を示した断面図で、図7(d)は補強材に層厚測定部が装着された状態を示した断面図である。
【0045】
層厚測定部71は図7(a)に示したように外筒部711とこれに挿通される内筒部712とからなる。外筒部711の外径は予め定められた耐火層3の厚みと同寸法に設定される。外筒部711と内筒部712の全長は同一であるが、内筒部712の全長は、必ずしも外筒部711の全長と一致させる必要はない。例えば図7(c)に示した内筒部716のように外筒部711の全長よりも短小のものに設定してもよい。内筒部716は外筒部711の両端付近に挿通される。このような内筒部716を採用することで層厚測定部71の軽量化が図れる。尚、図6(b)に示した層厚測定部72にも以上の構成に準拠すればよい。
【0046】
外筒部711は耐火層3の表面近傍の位置に埋設されるので、その構成成分としてはセラミックスや耐火層3を構成する材料等の耐火性の高い無機質材料が例示される。層厚測定部71が耐火層3に埋設されたとき内筒部712は外筒部711を介して耐火層3と離間するので、内筒部712の構成成分は特に限定しない。例えば、前述の外筒部711の構成成分と同じもの、またはゴム類、プラスチック類等が挙げられる。内筒部712の中心軸には縦線材53または横線材54が挿通される貫通孔715が形成されている。また、外筒部711には縦線材53または横線材54を導入するためのスリット713が形成されている。内筒部712においても縦線材53または横線材54を導入するためのスリット713が形成されている。スリット713とスリット714の幅は縦線材53または横線材54の径に基づいて定まる。尚、図6(b)に示した層厚測定部72及び図7(c)に示した層厚測定部71にも以上の構成成分を適用すればよい。
【0047】
図7を参照しながら縦線材53または横線材54への層厚測定部71の装着手順について説明する。先ず、内筒部712を外筒部711に挿通させた後、縦線材53または横線材54をスリット713及びスリット714を介して内筒部712の貫通孔715内に導入する。そして、図7(d)に示したようにスリット713とスリット714の開口部の位置をずらせば、図7(b)に示したように層厚測定部71が縦線材53または横線材54に装着される。この際、必要に応じて接着剤で内筒部712と外筒部711を接着させてもよい。尚、層厚測定部72及び図7(c)に示した層厚測定部71にも以上の装着手順を適用すればよい。
【0048】
また、層厚測定手段4の他の実施形態としては図8に示した層厚測定部73が挙げられる。図8(a)及び図8(b)は層厚測定部73の構成を示した分解断面図で、図8(c)は層厚測定部73の構成要素である固定部の一実施形態を示した断面図である。
【0049】
層厚測定部73は、図8(a)及び図8(b)に示されたように、略円柱状に形成された本体部731と、この本体部731の中心軸に挿通された縦線材53または横線材54を封止するための封止部732とからなる。本体部731は中心軸に縦線材53または横線材54を導入させるスリット732が形成されている。スリット732の幅は縦線材53または横線材54の径に基づいて定まる。前記線材が導入されたスリット732には封止部732が図8(a)及び図8(b)に示した矢印方向に挿入され固定される。この固定手段の一実施形態として図8(c)に示された封止部732の適所に複数設けられるストッパー734が例示される。ストッパー734としてはゴム類やプラスチック類等の弾性変形機能を有する材料からなるものがある。
【0050】
次に図9を参照しながら層厚測定手段4の製造方法の一例について説明する。
【0051】
ステップS1の原料混合の工程では、主成分となる例えば酸化アルミニウム(アルミナ)に焼結を助けるための副成分すなわち焼結助剤が添加されさらに純水が加えられものがボールミルにより10時間混合粉砕される。尚、前記アルミナの純度としては例えば60重量%程度に設定される。
【0052】
ステップS2の連続押出し成形の工程では、ステップ1によりスラリー状態となっている原料が、ポリビニールアルコール等の有機バインダと分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム塩が添加された後に、押出成形機に供されて加熱乾燥されながら例えば図3及び図6に示された形態や図7や図8に例示列挙されたようなスリットを有する形態で連続押出成形される。このようにして得られた成形体91は、耐火層3との接合やなじみの効果を高めるために、必要に応じてサンドブラスト処理または凹凸ローレット処理手段に供されて表面の一部部分が適宜に粗面加工される。この粗面処理はステップS4での切断処理の後に行ってもよい。
【0053】
ステップS4の焼成の工程では、成形体91がピアノ線等を用いたワイヤ切断機によって所定の長さに切断されて仮成形される。前記仮成形によって得られた成形体92はバッチタイプのガス炉に連続的に供されて1000〜1500℃の焼成保持温度のもと2時間焼成される。
【0054】
ステップS5の完成の工程では、前記焼成処理された成形体92が100℃/時の降温速度の冷却処理に供されることにより層厚測定手段4が完成する。層厚測定手段4の表面は粗面処理すると、耐火層2に埋設された場合に耐火層2との接着強度を高めることができる。前記粗面処理はサンドプラスト処理、凹凸ローレット処理で行ってもよい。
【0055】
以上の実施形態の説明から明らかなように、層厚測定手段4は、耐火層3の施工の過程で、セグメント2に形成される耐火層3の厚みを示すことができる。したがって、セグメント2に対する耐火層3の被り状態すなわち耐火層3の厚みを監視しながらの耐火物の吹き付け塗膜作業を行えるようになる。また、層厚測定手段4は耐火層3によって埋設されるので、耐火層3が形成された後の層厚測定手段4の撤去は必要なくなり、耐火層3を備えたセグメント2の施工に費やされる工数が低減する。さらに、層厚測定手段4は耐火性を有するので、セグメント2の耐火特性を維持させることができる。尚、本実施形態に係る耐火層3の施工方法は、コンクリート製のセグメント2に限定されず、モルタル製や金属製のものにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る構造物を採用したトンネルの断面を示した概略図。
【図2】(a)本発明の一実施形態に係る構造物であるセグメントに形成された耐火層の構成を示した断面図,(b)耐火層に有する補強材を前記セグメントに取り付ける取り付け手段の一実施形態を示した断面図,(c)層厚測定部の一実施形態を示した平面図。
【図3】(a)層厚測定部の実施形態を例示列挙した断面図(b)層厚測定部の実施形態を例示列挙した断面図。
【図4】(a)補強材の一実施形態を示した斜視図,(b)前記補強材がセグメントに固定された状態を示した平面図,(c)前記補強材がセグメントに固定された状態を示したA−A断面図。
【図5】(a)取付手段の埋設部を備えたセグメントの施工要領の一例を示した断面図,(b)前記施工要領に供する仮固定ボルトの一実施形態を示した断面図,(c)前記固定手段がセグメントに設置された状態を示した断面図。
【図6】(a)本発明の一実施形態に係る構造物であるセグメントに形成された耐火層の構成を示した断面図,(b)前記耐火層の被り厚を示す層厚測定部の一実施形態を示した断面図。
【図7】(a)層膜厚測定部の構成を示した分解平断面図,(b)層厚測定部の一実施形態を示した断面図,(c)層厚測定部の他の一実施形態を示した断面図,(d)補強材に層厚測定部が装着された状態を示した断面図。
【図8】(a)及び(b)は層厚測定部の構成を示した分解断面図,(c)は層厚測定部の構成要素である固定部の一実施形態を示した断面図である。
【図9】層厚測定部の作成工程を示したフローチャート。
【符号の説明】
【0057】
1…トンネル
2…セグメント
3…耐火層
4…層厚測定手段
5,50…補強材
6…取り付け手段
40…固定手段
41,42,43,44,45,46,47…層厚測定部
51…補強部、52…固定部、53…縦線材、54…横線材
61…埋設部、611…スリーブ、612…インサート、613…切り欠き部
62…アンカーボルト
71,72,73…層厚測定部
711,731…外筒部、712,716…内筒部、713,714,733…スリット、715…貫通孔、732…封止部、734…ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面に耐火物を吹き付け塗膜して設定厚さの耐火層を形成する耐火層の施工方法であって、
前記構造物は、前記耐火層に埋設されると共に耐火性を有する層厚測定手段を設け、前記層厚測定手段はその設置高さが予め定められた耐火層の厚みと同寸法に設定され、前記吹き付け塗膜時に前記層厚測定手段は前記構造物に形成される耐火層の厚みを示すこと
を特徴とする耐火層の施工方法。
【請求項2】
前記層厚測定手段は複数設けられることを特徴とする請求項1記載の耐火層の施工方法。
【請求項3】
前記構造物には前記耐火層を補強する補強材が設けられた後に前記耐火層が形成されることを特徴とする請求項1または2記載の耐火層の施工方法。
【請求項4】
前記層厚測定手段は前記構造物と一体的に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の耐火層の施工方法。
【請求項5】
前記層厚測定手段は固定手段によって前記構造物の表面に固定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の耐火層の施工方法。
【請求項6】
前記固定手段は接着剤、両面テープ、粘土のいずれかであることを特徴とする請求項5記載の耐火層の施工方法。
【請求項7】
前記層厚測定手段は前記補強材に具備されることにより前記構造物に設けられることを特徴とする請求項3記載の耐火層の施工方法。
【請求項8】
前記補強材はメッシュ構造を構成する線材からなり、前記線材に前記層厚測定手段が装着されることにより、前記層厚測定手段は前記構造物に設けられることを特徴とする請求項7記載の耐火層の施工方法。
【請求項9】
前記層厚測定手段は耐火層の材料またはこの材料よりも耐火特性を有する材料からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の耐火層の施工方法。
【請求項10】
前記層厚測定手段は断面が円形または多角形のいずれかに形成されたことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の耐火層の施工方法。
【請求項11】
前記層厚測定手段はその表面が粗面処理されることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の耐火層の施工方法。
【請求項12】
耐火物が吹き付け塗膜されて耐火層が形成された耐火構造物であって、
前記耐火層が形成される面に前記耐火層によって埋設されると共に耐火性を有する層厚測定手段を備え、前記層厚測定手段は、その設置高さが予め定められた耐火層の厚みと同寸法に設定され、前記吹き付け塗膜時に形成される耐火層の厚みを示すこと
を特徴とする耐火構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−39958(P2007−39958A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224819(P2005−224819)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(500551323)明電セラミックス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】