説明

耐火物の試験方法

【課題】実験室規模で行うことができ、しかも実操業の状態の再現性が高い通気性耐火物の試験方法を提供すること。
【解決手段】上下端が閉じられ、内部に中空部11を有する管状の試料体10の管壁の一部又は全部に通気性耐火物13を配置し、この通気性耐火物13を溶融金属浴30に浸漬し、溶融金属浴30の温度を高周波加熱によって制御しつつ、試料体10の中空部11にガスを導入し、当該試料体10の管壁に配置した通気性耐火物13の外周面から溶融金属浴30中にガスを吹き出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造用ノズル等に使用する通気性耐火物を始めとする耐火物の試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属を取り扱う産業において、溶融金属中にガスを吹き込む、又は溶融金属と接する耐火物面にガスを介在させることが多い。
【0003】
例えば、タンディッシュから鋳型への鋼の注入に浸漬ノズルを使用する連続鋳造工程においては、近年の鋼中へのアルミニウムの添加量の増加等に伴い、浸漬ノズルの内孔面に非金属介在物や凝固した金属(以下「介在物等」という。)が付着し、それが成長して浸漬ノズルの内孔を閉塞することが問題となっている。
【0004】
この対策として、通気性耐火物からなる耐火物層を浸漬ノズルの内孔に面するように配置し(以下、浸漬ノズル等の連続鋳造用ノズルの内孔に面するように配置した耐火物層を「内孔体」という。)、その外周側にガスプールを形成し、このガスプールに導入した不活性ガスを内孔体から内孔に吹き出して不活性ガスの皮膜を形成することで、内孔面への介在物等の付着を防止するという対策が採用されている。
【0005】
また、このようなガスの吹き込みは、浸漬ノズルの内孔面への介在物等の付着を軽減するだけでなく、鋳片の欠陥等の原因となる鋼中の介在物を不活性ガスが捕捉ないし浮上させて、鋳片の清浄化に寄与することができる。
【0006】
このような通気性耐火物を有する浸漬ノズルを鋼の連続鋳造に使用する実操業においては、例えば、次のような傾向があることが確認されている。
1.通気性を有する内孔体には、Al及び黒鉛を主とする材質(以下「AG材質」という。)が多く使用されているが、AG材質中にSiOを含有する系では、使用中のSiOのガス化に起因した耐火物組織の多気孔化、気孔径の拡大が生じ、通気性が高くなって不活性ガスが流れやすくなると共に、溶鋼中に吹き出すガスの気泡径も大きくなる。この傾向はSiOの含有量が多いほど、また使用時間が長くなるほど大きくなる。その際、吹き込まれた不活性ガス気泡の合体等により、粗大ガス気泡が生成し、鋳込まれた鋳片にガス欠陥が発生することがある。
2.AG材質中のSiO含有量が多いほど、SiOのガス化の際に発生するCOガス、SiOガスと溶鋼中のAlの反応に起因したAl系の介在物の生成、及びその増加を来して浸漬ノズル内孔面への介在物等の付着量が増加しやすくなる。また、内孔体耐火物組織の多気孔化、気孔径の拡大に伴い内孔体耐火物の溶鋼に接する面の粗度が粗くなることによって、浸漬ノズル内孔面への介在物等の付着量が増加しやすくなる。
【0007】
このような通気性耐火物によるガス吹きを伴う操業に関する技術開発においては、実操業の状態の再現性が高い実験室規模(小規模)での通気性耐火物の通気特性等の試験が必要である。
【0008】
既存の試験方法として、例えば非特許文献1には、実際の連続鋳造の操業に供される浸漬ノズルと同様に、通気性耐火物を内孔体(管状の構造体)として内孔に配置した試料体を製作し、高周波加熱をしている溶融金属浴内に浸漬し、その通気性耐火物部分にガスを供給して通気特性や耐火物の状態等を観察する方法が示されている。
【0009】
この非特許文献1による試験方法を図5に示す。この試験方法は、上下端が開放する管状の試料体50の内孔51に面するように筒状の通気性耐火物52を配置し、この通気性耐火物52の外周を囲むようにスリット状のガスプール53を設け、このガスプール53にガス導入経路40を経由してガスを導入し、ガスプール53内に充填して加圧することで、通気性耐火物52の内周面から内孔51内の溶融金属中にガスを吹き出させるようにしたものである。
【0010】
しかしながら、この試験方法では、ガスの吹き出しにより内孔51内での溶融金属の冷却が急激に進み、内孔面に凝固した金属膜が形成されやすく、通気性耐火物の通気特性等を適正に試験することができない。
【0011】
すなわち、溶融金属浴30は、その容器31の外側に配置された高周波加熱装置32によって加熱されるが、試料体50の内孔51内の溶融金属は、高周波加熱装置32との間に試料体50の本体が存在するので高周波加熱を直接受けることができず、高い昇温又は冷却防止効果を得ることはできない。また、内孔内の狭い領域における少量の溶融金属にガスを供給することで、相対的にその部分の溶融金属の冷却は大きくなる。そして、試料体の外周側の溶融金属と試料体の内孔内の溶融金属との間では、管状であるという構造上、対流が生じにくく、それに加え温度降下に伴う溶融金属の粘性上昇や吹き込まれたガスによる浮力の影響も加わって、溶融金属の対流が生じにくく、溶融金属の温度を高め又は維持することは困難となる。
【0012】
このようなことから、図5の試験方法では、試料体の内孔面に凝固した金属膜が形成されやすく、内孔面、すなわち通気性耐火物の内周面に金属膜が形成されると、試験により得られる通気性耐火物のガスの流出特性やガス吹き込み機能等の通気特性や、通気性耐火物の損傷及び変化等のデータは、凝固した金属膜の影響を受けたものとなるので、実際の溶融金属中におけるデータを再現したものとは言えない。
【0013】
したがって、図5の試験方法における試験条件は、自ずとガスの供給量が少量で溶融金属の凝固等による弊害が出ない条件に限定される。例えば、溶融金属としては比較的凝固し難い溶銑を用いざるを得ず、実操業で使用される溶鋼等の低炭素含有の溶融金属が使用できないなど、溶融金属の選択肢が大きく制限され、実操業の状態の再現が困難である。
【0014】
また、図5の試験方法では、通気性耐火物が管状の試料体の内孔面に配置されていることから、試験中のその状態の変化等を直接目視することができず、試験後に試料体を切断する等により観察することしかできない。
【0015】
したがって、このような試験方法では、例えば前述のような浸漬ノズルの内孔に面した耐火物中のSiO量の実操業における影響を、高い精度で推測し知見することは困難である。
【0016】
一方、連続鋳造用ノズルの内孔からのガス噴き出しを目的とした領域以外の耐火物部分、すなわち本体部には一般的にAG材質が配置されており、モールドパウダー(以下、単に「パウダー」という。)に接する部位には高耐食性が耐熱衝撃性と共に要求されることから、ZrO及びCを含む耐火物が多く使用されている。また、このような耐火物層は連続鋳造用ノズルの内孔からガスを吹き出すためのガス流通経路の一部を構成しているか、又はガスの流通経路近くに配置されているために、流通させるガスの影響を受けることがある。
【0017】
この影響としては、
1.これらの耐火物、とくにZrO及びCを含む耐火物は、本来、耐食性を重視するため緻密質として通気性を期待しない設計とされることが多いが、この耐火物から外周方向への本来意図していないガスの流出、
2.流通させるガス中に存在する微量な酸素等の酸化性ガスによる、耐火物の劣化、
3.ZrO及びCを含む耐火物に窒素ガスが作用する場合には、炭化ジルコニウムの生成を促進してZrO及びCを含む耐火物の損傷が大きくなる
等がある。
【0018】
しかし、これらの影響については、その発生の速度が小さいこともあって、従来、明確な有意差を示す能率の高い試験方法はなく、ましてや実験室レベルで簡便に、また実操業での再現性が高い試験方法は見出されていない。
【0019】
このように連続鋳造用ノズルに使用される耐火物、とくに浸漬ノズルの内孔体等として使用される通気性耐火物ついて、実験室規模で行うことができ、しかも実操業の状態の再現性が高い試験方法は見出されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】耐火物技術協会「耐火物」誌 38−787(1986−No.11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の第1の課題は、通気性耐火物につき、実験室規模で行うことができ、しかも実操業の状態の再現性が高い試験方法を提供することにある。
【0022】
さらに本発明の第2の課題は、難通気性耐火物へのガスの影響、とくにZrO及びCを含む耐火物への窒素ガスの影響を、実験室規模で簡便に、しかも高い能率かつ実操業の状態の再現性が高い試験方法を提供することにある。
【0023】
ここで、本発明において「通気性耐火物」とは、耐火物組織内をガスが通過して、耐火物の表面の少なくとも一部からガスを吹き出させることを目的として、耐火物自体に通気性(後述の難通気性耐火物に比較して相対的に高い通気性)を備えている耐火物をいう。
【0024】
また、「難通気性耐火物」とは、例えば連続鋳造用ノズルの本体部、パウダーとの接触部分等に供する目的で、強度や耐食性等に優れた特性を備えていて、耐火物からガスを通過させることを目的とせず、耐火物自体に通気性を備えていないか、又は前述の通気性耐火物に比較して相対的に低い通気性を備えている耐火物をいう。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の耐火物の試験方法は、
1.上下端が閉じられ、内部に中空部を有する管状の試料体の管壁の一部又は全部に耐火物を配置し、この耐火物を溶融金属又は溶融金属及び非金属物からなる溶融金属浴に浸漬し、溶融金属浴の温度を高周波加熱によって制御しつつ(非金属物が併存する場合には非金属物は溶融金属を熱源として温度制御が可能)、前記試料体の中空部にガスを導入し、当該試料体の中空部内にガスを流通させること、
2.前記耐火物の一部又は全部が通気性耐火物であり、試料体の管壁に配置した通気性耐火物の外周面から溶融金属浴にガスを吹き出させること、
を基本とする。
【0026】
本発明において通気性耐火物の試験の具体的な試験項目を例示すると、以下のとおりである。
1.通気性耐火物の通気特性
2.通気性耐火物表面(ガス吹き出し側の表面をいう。以下同じ。)への溶融金属成分や介在物等の付着状態
3.通気性耐火物表面への溶融金属等の湿潤状態
4.通気性耐火物表面のガスや溶融金属等による摩耗損耗状態(エロージョン又はアブレーション)
5.通気性耐火物表面の化学的溶損状態(コロージョン)
6.通気性耐火物と難通気性耐火物との境界付近の損傷状態
ここでの「難通気性耐火物」とは、通気性耐火物と同時に又は組み合わせて同一の試験に供する場合に、前記通気性耐火物に対して相対的に低い通気性を有するか全く通気性を有さない耐火物のことをいう。
【0027】
本発明において難通気性耐火物の試験の具体的な試験項目を例示すると、以下のとおりである。
1.難通気性耐火物の通気特性(耐火物組織内を通過して外周側に至る、ガスのリーク程度)
2.難通気性耐火物の内孔(中空部)側表面の酸化等による劣化状態
3.ZrO及びCを含む難通気性耐火物に対する窒素ガスの影響(劣化等)
4.難通気性耐火物外周表面への溶融金属成分や介在物等の付着状態
5.難通気性耐火物外周表面への溶融金属等の湿潤状態
6.難通気性耐火物外周表面のガスや溶融金属等による摩耗損耗状態(エロージョン又はアブレーション)
7.難通気性耐火物外周表面の化学的溶損状態(コロージョン)
8.難通気性耐火物と難通気性耐火物との境界付近の損傷状態
【0028】
本発明において管状の試料体の中空部は、試料体の上下端と管壁によって囲まれる全域に形成することができるし、試料体の管壁の内周面に沿ってスリット状に形成することもできる。
【0029】
すなわち、本発明において「管状」とは、内部に中空部を有するすべての形状を意味し、その横方向(長尺軸方向と直交する方向)の断面における外郭及び中空部の形状は、いかなる形状であってもよい。
【0030】
また、本発明においては、複数の試料体を溶融金属浴に浸漬し、それぞれの試料体の管壁に配置した耐火物について同時に試験することができる。そして、溶融金属浴は、典型的には溶鋼からなる溶鋼浴とすることができる。
【0031】
ZrO及び炭素を含む耐火物の試験方法について以下に詳細に述べる。
ZrO及び炭素を含む耐火物は、通常、通気性を具備せず、パウダーや溶鋼容器内のスラグに対する優れた耐食性を要求される。そのため通常は、これらの用途に合致した品質(例えば、緻密質等)になるよう材料設計が行われ、そのような品質の耐火物試料を用いて単に耐食性等の評価を行うことが一般的となっている。
【0032】
しかし、このような一般的な方法では、例えば溶融金属やスラグ等に浸漬して行う耐食性試験等の際に、溶融金属やスラグ等に浸漬されていない単に試料周辺の雰囲気を非酸化雰囲気にする等が行われているに過ぎない。このような方法で試料周辺を窒素雰囲気にしても、ほとんど有意差を確認することができない。
【0033】
本発明では、簡便に行える前述の耐火物の試験方法をZrO及び炭素を含む耐火物の、ガスによる影響を試験するためにも利用する。
具体的には、前述の試験方法において、次の3点を主たる構成とする。
1.試料体に配置する耐火物をZrO及び炭素を含む耐火物とする。
2.試料体の中空部内に、ガス、とくに窒素ガスを流通させる。
3.さらに差異の大きな結果を得るためには、試料体の中空部から外周側にガスを通過させて外周側から吹き出させる。
【0034】
ZrO及び炭素を含む耐火物は、通常、連続鋳造用ノズルのパウダー接触部分等に組み込むための緻密な品質であっても、通気性は皆無ではなく、試料体の中空部からガスを供給して適宜な加圧を行うことで試料体の外周側にガスを通過させ、外周表面から吹き出させることができる。このように、試料体の耐火物内をガスが通過して外周表面から吹き出させる方法とすることで、試料体の耐火物内をガスが通過しない場合よりも短時間で、かつより顕著に耐火物へのガスの影響が現れ、簡便な方法でより能率的に顕著な有意差を確認することが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の試験方法では、試験対象の耐火物を管状の試料体の管壁として配置し、試料体の中空部内にガスを流通させ、必要に応じて耐火物の外周面からガスを吹き出させるようにしているので、以下の効果を奏する。
【0036】
1.溶融金属浴においてガスが吹き込まれる部分の溶融金属は、高周波による加熱効果を直接かつ十分に受けることから、ガスの吹き込みに伴う溶融金属の温度降下を直ちに復元(昇温)することができ、試験対象の通気性耐火物表面に、凝固した金属膜が形成されることを防止できる。
【0037】
2.溶融金属浴の温度測定を、試料体の管壁として配置した耐火物の外周面、すなわちガス吹き出し面近傍で行うことができる。したがって、ガスを吹き込む領域における溶融金属の温度を直接的に測定でき、とくに溶融金属の温度と相関のある試験項目において、正確な試験データを得ることができる。
【0038】
3.試験中に試験対象の耐火物表面への介在物等の付着状態等の外観観察が可能となる。すなわち、耐火物の通気特性や溶融金属の温度等を把握できるだけでなく、試験中における耐火物の状態を目視で把握することができる。したがって、試験中にその状態を把握しながら諸条件の調整等を行うことも可能となる。
【0039】
4.上記1〜3によって、実操業の状態の再現性が高い試験を行うことができる。
【0040】
5.管状の試料体の中空部には溶融金属が入らず、単にガスの通過経路及び圧力安定機能のみが備わっていればよいので、その大きさは大幅に小さくすることができる。これに伴い、試料体全体を大幅に小さくすることができる。例えば、肉厚10mmの耐火物の試験では中空部の直径は10mm程度でよく、この場合、試料体の外径は30mm程度でよいことになる。これに対し、先に図5で説明した従来の試験方法では、管状の試料体の内孔内には溶融金属が入り、しかもその内孔内の溶融金属が凝固しないような温度で、かつ成分の均一性等を保つために十分な対流を維持する必要があり、必然的に大きな空間にする必要があり、さらに、管状の試料体の管壁部分は、通気性耐火物と難通気性耐火物(本体用耐火物)の複数層になることから、試料体の外径はますます大きくなる。例えば、肉厚10mmの通気耐火物、幅1mmのガスプール、肉厚15mmの本体用耐火物と、直径50mmの内孔からなる管状の試料体とすると、その外径は102mmとなる
【0041】
6.上記5のとおり、管状の試料体を小型化できることから、次のようなことが可能となる。
(1)同一の試料体における通気性耐火物等の耐火物組成や構造の均一性等を高めることができ、通気特性等の分布(ばらつき)を小さくすることができる。
(2)高周波加熱装置や試験設備全体を小規模化することができ、溶融金属浴内の場所による温度や成分等の分布(ばらつき)を小さくすることができる。
(3)小規模の試験設備でも同時に複数の試料体の試験を行うこと、すなわち同一の試験条件にて複数の試料体の試験を行うことができる。したがって、複数の試料体を相互に比較する場合に、結果にばらつきをもたらす大きな要因となる、試験単位ごとの溶融金属浴の温度、成分その他の条件変動(ばらつき)の影響を小さくすることができる。
(4)試験費用を小さくすることができる(材料使用量が少ない、試料体製作の工程が簡素かつ容易になる、その他試験に必要な消耗品等全般費用の削減、その他)。
(5)試料体、試験諸設備等の準備、試験実施作業等の短時間化、省力化を図ることができる。
【0042】
7.さらに本発明の試験方法によって、前述の通気性耐火物の試験方法で述べたと同様の効果を難通気性耐火物のみの場合にも得ることができ、加えて、
(1)難通気性耐火物の通気特性(耐火物組織内を通過して外周側に至る、ガスのリーク程度)
(2)難通気性耐火物の内孔(中空部)側表面の酸化等による劣化状態
(3)ZrO及びCを含む耐火物に対する窒素ガスの影響(劣化等)
をも調査及び評価することができる。
とくに、ZrO及びCを含む耐火物について外周側からガス、とくに窒素ガスを吹き出す方法で試験をすることで、試料体の耐火物内をガスが通過しない場合よりも短時間で、かつより顕著に耐火物へのガスの影響が現れ、簡便な方法でより能率的に有意差を確認することが可能となる。しかも、実操業での状況を高い精度で再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の試験方法の一例を示す断面図である。
【図2A】本発明の試験方法に供する試料体の一例を示す断面図である。
【図2B】本発明の試験方法に供する試料体の一例を示す断面図である。
【図2C】本発明の試験方法に供する試料体の一例を示す断面図である。
【図2D】本発明の試験方法に供する試料体の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の試験方法による試料体の中空部側及び外周側の損傷形態のイメージを示す断面図である。
【図4】実施例Eに供した連続鋳造用浸漬ノズルの形状を示す断面図である。
【図5】従来の試験方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0045】
図1は、本発明の試験方法の一例を示す断面図である。試料体10は、上下端が閉じられ、内部に中空部11を有する管状となっている。具体的には、上端は栓体12をねじ込むことによって閉じられ、下端は耐火物によって一体的に閉じられている。そして、この試料体10の管壁の一部に試験対象の通気性耐火物13が配置されている。なお、試料体10の本体部分、すなわち管壁の通気性耐火物13と栓体12を除いた部分は難通気性耐火物で形成されている。栓体12については、難通気性耐火物で形成することもできるが、金属等の他の材料で形成してもよい。
【0046】
この試料体10の上端部分を保持装置20で保持し、その管壁に配置された通気性耐火物13を溶融金属浴30に浸漬する。溶融金属浴30は、耐火物製の容器31に溶融金属30aと、必要に応じてスラグやパウダーなどの非金属物30bを入れることによって形成され、容器31の外周に高周波加熱装置32を配置することによって、溶融金属浴30の温度制御を行うようにしている。すなわち、溶融金属浴30においては、高周波加熱により温度が維持され、かつ温度や成分の均一性を維持し得るに十分な程度の対流状態等が継続される。
【0047】
試験の際には、溶融金属浴30の温度を高周波加熱装置32の高周波出力の調整によって一定(個別の実操業の条件に合わせて設定した温度。一般的は1000℃程度)に維持しつつ、試料体10上端の栓体12を貫通するガス導入経路40から中空部11にガスを導入し、中空部11内に充填して加圧することで、通気性耐火物13の外周面から溶融金属浴30中にガスを吹き出させる。
【0048】
このように、本発明では、試験対象の通気性耐火物13を管状の試料体10の管壁として配置し、その外周面からガスを吹き出させるようにしているので、溶融金属浴30においてガスが吹き込まれる部分の溶融金属は、高周波による加熱効果を直接かつ十分に受けることから、ガスの吹き込みに伴う溶融金属の温度降下を直ちに復元(昇温)することができる。したがって、試験対象の通気性耐火物13表面に、凝固した金属膜が形成されることを防止でき、通気性耐火物13表面が溶融金属浴30に直接接した状態を維持することができる。
【0049】
また、本発明では、設定した試験条件によって、適宜、試料体10や溶融金属を交換し、ガスの量等も変動させることができる。さらに、一つの溶融金属浴30に複数の試料体10を同時に浸漬して試験を行うこともできる。
【0050】
なお、試料体10や溶融金属の交換にあたっては、実際に試験を行う設備以外の設備で試料体10の予熱、溶融金属の溶解及び温度管理等の準備を行い、試験を行う設備に順次移行しながら行うことも可能である。
【0051】
図2A〜図2Dには、試料体の形状例を示す。
【0052】
いずれも浸漬ノズルの形状としたものであるが、図2Aでは、栓体12を除く試料体10の全てを同一の通気性耐火物、しかも単層構造としたもので、この構造が最も簡素で製作も容易である。この構造において溶融金属浴に浸漬しない部分からのガスの吹き出しを抑制するためには、図2Aに示すように、その部分に難通気性皮膜14を設ければよい。この難通気性皮膜14は、例えば、予熱後に緻密化して難通気性を示す酸化防止材等の材料を塗布することによって設けることができる。
【0053】
溶融金属浴に浸漬しない部分からのガスの吹き出しをさらに抑制するため、又は通気性耐火物の部分ごとの条件変動をできるだけ小さくしてより正確性を求める等の場合には、図2Bに示すように、試料体10の管壁において溶融金属浴に浸漬する部分の一部に通気性耐火物13、溶融金属浴に浸漬しない部分や下端部等を難通気性耐火物で形成することが好ましい。
【0054】
図2C及び図2Dの例は、それぞれ図2A及び図2Bの試料体10において、その中空部11の中心部分に難通気性耐火物からなる円柱状の中間体15を配置することによって、中空部11を試料体10の管壁の内周面に沿ってスリット状に形成したものである。このスリット状の中空部11は、実際の浸漬ノズルのおけるガスプール(図5の符号53参照)を模したもので、このような構造とすることで、ガスプールに相当するスリット状の中空部11に面した部分の操業温度での時間経過に伴う酸化、その他の状態変化の観察等の試験も行うことができる。
【0055】
以上の試料体10において耐火物に炭素を含む場合は、大気と接触する面に、予熱温度以上の温度域で緻密化して難通気性を示す、酸化防止材等の材料を塗布すればよい。
【0056】
なお、以上の例では、試料体10を浸漬ノズルの形状とし、浸漬ノズルの内孔体用の通気性耐火物を想定して試験を行うようにしたが、本発明の試験方法は、浸漬ノズルの内孔体用にとどまらず、溶鋼容器に精錬や攪拌等の目的でガスを吹き込むために使用する通気性耐火物全般の試験にも適用することができる。また、通気性耐火物13に換えて、難通気性耐火物を配置し、その難通気性耐火物にガスを作用させる等の試験を行うこともできる。この具体的な例としては、ガスの種類を特定せずに流通量を変化させて冷却の効果若しくは影響を調査する、又は実操業において不活性ガス中に微量に混在する酸化性のガス(空気、炭酸ガス等)を想定した、酸化性ガスの濃度の影響を調査する、等がある。
【0057】
次に、ZrO及び炭素を含む耐火物の試験方法の実施形態について述べる。
ZrO及び炭素を含む耐火物には、試料体10の中空部11から肉厚方向に試料体10を貫通してガスが流通し、外周表面からガスを吹き出させることが好ましい。すなわち、前述の通気性耐火物の試験方法と同様に、試料体10の中空部11にガスを供給しながら、溶融金属浴30に浸漬することが好ましい。なお、任意の試験計画に応じて、適宜、溶融金属や非金属物の種類、ガスの種類、及びその供給速度等を変化させながら、前述の通気性耐火物の試験方法に準じて試験を行うことができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明の効果を示す。
【0059】
[実施例A]
実施例Aは浸漬ノズルの内孔体用の通気性耐火物について、溶融金属の種類の違いによる試験中の通気特性等の状況、介在物等の付着状況等を、本発明の試験方法と従来の試験方法との比較により示したものである。また、試料体の製作費用も指数表示にて示す。なお、本発明の実施例における試料体の形状は、外周直径φ30mm、内孔直径φ10mm、外部高さ100mm、底部厚み10mmの、底部を塞いだ円柱管とした。
【0060】
本発明の実施例の試験は図1に示した要領で行い、比較例の試験は図5に示した要領で行った。試験対象の通気用耐火物は、何れも同一の化学組成、構成とし、溶融金属浴は、銑鉄浴、アルミキルド鋼浴とし、非金属物は入れなかった。
【0061】
溶融金属浴への浸漬の前に酸化により組織が劣化すること防止するために、いずれの試料体の表面にも酸化防止材を塗布し、溶融金属浴への浸漬の前にガスバーナーにて、試料体表面が1000℃に達するまで予熱を行った。
【0062】
溶融金属浴の昇温及び浸漬中の温度維持は、外周から高周波による加熱にて行った。溶融金属浴の温度測定は試料体の外周付近にて行った。この測定位置は、実施例では試料体(通気性耐火物)からガスを吹き出す部分付近であるが、比較例ではそのガスを吹き出す部分が内孔側であることから、単に試料体の外周近辺の温度を示していて、内孔側の温度は示していない。比較例の試料体の構造では内孔側の溶融金属の温度測定は、その複雑な構造の内部に測温器具を設置すること等が事実上困難であり、内孔側の溶融金属の温度は測定していない。
【0063】
ガスの供給量は、いずれも単位時間及び単位面積当たりの量を同量に設定して試験を開始した。背圧の測定は、図1及び図5に示すガス導入経路40の途中に設けた圧力計41にて行った。
【0064】
試料体(通気性耐火物)のガス吹き部分表面の付着等の状態は、試験の終了後に冷却し、試料体を縦方向(管状の中心軸の長手方向)に切断して観察した。
【0065】
表1に実施例Aの試験条件、試験中の状況等を含む試験結果を示す。
【表1】

【0066】
実施例ではいずれの種類の溶融金属浴においても、試験を継続できなくなるような通気挙動の変化や、金属の凝固等の異状は発生せずに計画の時間である240分間の試験を行うことができた。試料体表面には金属の冷却に伴う凝固は観られず、介在物等の付着の状況等、溶融金属浴の種類の違いによる有意差を観察することができた。
【0067】
これらは、実施例では、溶融金属浴は高周波による加熱効果を直接かつ十分に受けることから、ガスの吹き込みに伴う溶融金属の温度降下を直ちに復元(昇温)することができ、実操業の状態の再現性が高い試験を行うことができることを示すものである。現実に、溶融金属にアルミキルド鋼を使用した実施例2の付着等の状況及び結果は、実操業における現象とよく合致していた。なお、実施例1の結果については、実操業において銑鉄にガスを吹き込むことはないので、実操業との比較はできない。
【0068】
これに対し、溶融金属にアルミキルド鋼を使用した比較例2では、30分で通気性の低下(通気困難)を来たし、試験後の試料体表面には地金が層状に付着し、その外側に介在物が地金と混濁して付着し、閉塞状態となっていた。これは通気性耐火物の特性によるガスの挙動や介在物等の付着等の差異が現れる前に、内孔側の溶融金属の温度が凝固する程度にまで低下して、通気性耐火物からの溶融金属中へのガスの吹き込みが阻害されたためと考えられる。なお、ガスの多くは通気性耐火物表面と凝固した金属との間からリークしたと考えられる。
【0069】
この原因としては、比較例において試料体の内孔内の溶融金属は、耐火物に遮断されて高周波の直接の効果が及ばす、また、環流し難い内孔の構造の故に溶融金属を均一化するに十分な対流も得られなかったことが考えられる。
【0070】
このアルミキルド鋼での比較例2の凝固等に伴う状況は、溶融金属に銑鉄を使用した比較例1の場合にも、その浸漬可能時間は120分と長くはなっているものの、同様な状況となっている。溶融金属中に耐火物表面に付着する成分(Al等)をほとんど含まない銑鉄で閉塞傾向を示すことは、従来の試験方法では実操業の再現性を阻害する溶融金属の温度等に関する要因が存在することを示している。
【0071】
また、実施例の試料体の製作費用は、比較例を100とする指数で約25と、大幅にコストの優位性が確認できた。さらに予熱にかかる時間は5分と、比較例の約1/12程度に短縮することが可能となり、エネルギーその他の試験操作上のコストや能率の大幅な優位性も確認できた。
【0072】
[実施例B]
実施例Bは、本発明の試験方法によって、3種の化学組成が異なる通気性耐火物について、同一の溶融金属浴に同時に浸漬して試験を行った例を示す。
【0073】
本実施例は、「背景技術」の欄で記載したとおり、従来の試験方法では高い精度で実操業における状況を推測し又は知見することが困難であった事項のうち、浸漬ノズルの内孔に面した通気性耐火物中のSiO量が実操業において及ぼす影響を調査した例である。
【0074】
試験は前記の実施例Aと同様の装置、方法により行った。
【0075】
本試験では試験対象の通気性耐火物のSiOの含有量を変化させ、その含有量の多少が介在物等の付着に及ぼす影響を調査した。
【0076】
表2に試験の条件、通気性耐火物の化学組成等と結果を示す。
【表2】

【0077】
この結果、通気性耐火物のSiOの含有量が多くなるに伴って試験中の背圧が低下し、また介在物の付着の厚みが大きくなっている。通気性耐火物のSiO含有量の多少と背圧低下及び介在物の付着の厚みの関係には明らかな有意差が観られる。すなわち本実施例では、実操業において一般に認識されているSiO量と介在物等の付着程度等との関係を裏付ける結果を得ることができることがわかる。
【0078】
また、本発明の方法では、試料体サイズが小さいことや、さらには最適な試料体構造等にすることで、ガス吹き込み量も大幅に低減(過度な溶融金属の温度低下等も抑制できる)しつつ実操業の再現性を得るために必要な最適化が可能となり、同一の試験条件で同時に複数の試料体を評価することが可能であることがわかる。
【0079】
これに対して従来の方法では、試料体の大きさにより決定づけられる装置の規模が大きくならざるを得ない等の理由から、1回の溶融金属浴内浸漬で1つの試料体にて試験を行うことしか事実上できなかった。このため従来の方法では溶融金属の成分や温度、対流等に伴う摩耗その他の浸漬試験を行う際に変動する諸条件を、異なる試験ごとに同一にすることは困難であった。それらの諸条件の変動により、試験結果も無視できない程度のばらつきを生じることがあり、また前記の実施例Aに示すような実操業の状態の再現性を得にくい根本的な問題も内在していた。
【0080】
[実施例C]
実施例Cは、本発明の試験方法によって、同一の化学組成及び組織の通気性耐火物について、同一の溶融金属浴に同時に浸漬して、その供給ガス量を変化させて試験を行った例を示す。
【0081】
本実施例は、従来の試験方法では高い精度で実操業における状況を推測し又は知見することが困難であった事項のうち、浸漬ノズルの内孔に面した通気性耐火物からのガス吹き出し量が実操業において及ぼす影響を調査した例である。なお、実操業においては、ガス量に伴い介在物等の付着が或る程度までは減少する傾向があることが一般に認識されている。
【0082】
試験は前記の実施例A、Bと同様の装置、方法により行った。
【0083】
本試験では実施例Bの実施例4の試料体において、供給ガス量を3倍、5倍(0.01〜0.05L/min.cm)と大幅に変化させ、そのガス量の多少が介在物等の付着に及ぼす影響を調査した。
【0084】
表3に試験の条件、通気性耐火物の化学組成等と結果を示す。
【表3】

【0085】
この結果、試料体への供給ガス量が多くなるに伴って介在物の付着の厚みが小さくなっており、供給ガス量と介在物の付着の厚みの関係には明らかな有意差が観られる。すなわち本実施例では、実操業において一般に認識されているガス量と介在物等の付着程度等との関係を裏付ける結果を得ることができることがわかる。
【0086】
また、本発明の方法では、前記の実施例Bで述べたと同様に、同一の試験条件で同時に複数の試料体を評価することが可能であることがわかる。
【0087】
これに対して従来の方法では、前記の実施例Bで述べたと同様に、溶融金属の成分や温度、対流等に伴う摩耗その他の浸漬試験を行う際に変動する諸条件を、異なる試験ごとに同一にすることは困難であった。それらの諸条件の変動により、試験結果も無視できない程度のばらつきを生じることがあり、また前記の実施例Aに示すような実操業の状態の再現性を得にくい根本的な問題も内在していた。とくに、ガスの大幅な供給量の変化に伴う付着等への影響の調査は、ガスの吹き込みが溶融金属の温度低下を大きくすることと、内孔での溶融金属の凝固等に影響を及ぼさない程度に迅速かつ十分に溶鋼の昇温を行うことが困難である等の問題があって、実操業の状態の再現性の高い試験は困難であった。
【0088】
[実施例D]
実施例Dは、本発明の試験方法によって、ZrO及び炭素を含む耐火物について、化学組成、ガスの流通形態、ガスの種類等を変化させて試験を行った例を示す。
【0089】
本実施例は、従来の試験方法では高い精度で実操業における状況を推測し、又は知見することが困難であった事項のうち、浸漬ノズルのパウダーに接触する部分用のZrO及び炭素を含む耐火物に対し、その内孔側に面した中空室(試料体の中空部)を流通する窒素ガスが及ぼす影響を調査した例である。なお、実操業においては、窒素ガスは浸漬ノズルの内孔側表面に配置された通気性耐火物層から溶鋼内に供給されている。
【0090】
試験は前記の実施例A、Bと同様の装置、方法により行った。ただし、溶融金属の上部に、連続鋳造のモールド上面に使用するパウダーに相当する非金属の溶融物層を設け、試料体外周側の溶損への影響も併せて調査した。図3は、本発明の試験方法による試料体10の内孔側及び外周側の損傷形態のイメージを示し、A部が中空部側劣化層、B部が外周側のパウダーライン溶損部である。
【0091】
本試験では、試料体の中空部にガスを流通させない場合(比較例3、4、5)に対し、ガスを試料体の中空部にのみ環流させた場合(実施例15)、ガス(2種類)を試料体の中空部から外周側に吹き出させた場合(実施例9〜14)について、試験を行った。なお、中空部にのみガスを環流させた試料体には、中空部内にガスの方向を異にするための隔壁を設けた。これらの試験の一部は、化学組成が異なる3種の耐火物につき行った。
【0092】
これらの試料特性、条件、結果を表4に示す。
【表4】

【0093】
この結果、次のことがわかる。
1.試料体の中空部側の劣化は、ガスを試料体の耐火物を通過させて外周表面から吹き出す場合(実施例9〜14)が最も大きく、次に中空部にのみ環流させた場合(実施例15)、が大きくなった。ガスを流通させなかった比較例では中空部側の損傷は観られない。
2.アルゴンガス(実施例9、11、13)より窒素ガス(実施例10、12、14)の方が中空部側の劣化(劣化速度)が大きい
3.耐火物の通気率が小さい方が、中空部側の劣化が小さい(劣化速度が小さい)(実施例9>実施例11>実施例13,実施例10>実施例12>実施例14)
4.外周側(パウダーライン部)の溶損量(溶損速度)は、ガスを試料体の耐火物を通過させて外周表面から吹き出す場合(実施例9〜14)が小さくなった。これは、ガス吹き込みにより、耐火物と外周の溶融パウダーの間にガス層が生成し、それによって化学的溶損進行を遅らせたためである。また、吹き込みガスが窒素ガスの方が、溶損量(溶損速度)は大きくなることがわかる。これは実操業における多くの例と一致する。
5.耐火物のジルコニア含有量の多い方が外周側(パウダーライン部)の溶損量(溶損速度)が小さいのに対し、耐火物のジルコニア含有量の多い方が中空部側の劣化(劣化速度)が大きい。これは、ジルコニア含有量を多くすると相対的に炭素量が少なくなり、ジルコニア粒子同士が接触する頻度が増えて耐火物の成形性(充填性)が悪くなり、必然的に通気率が大きくなるためである。外周側(パウダーライン部)の溶損については、化学的溶損であるのでジルコニア含有量を多くすれば溶損が小さくなることが当然であり、その通りの傾向が観られる。これに対し中空部側の劣化(劣化速度)については、ジルコニア含有量増加に伴う組織低下(通気率上昇)の影響により、ジルコニア含有量が多くなるのに伴い劣化(劣化速度)が大きくなっており、とくに窒素ガスを吹き出す場合の顕著な傾向が再現されていることがわかる。これは実操業における多くの例と一致する。
【0094】
このように本発明の方法であれば、実操業に使用する連続鋳造用ノズルよりもはるかに小さな試料体で、かつ簡便な方法で、しかも実操業よりも短時間で、顕著な有意差を確認することができることがわかる。
【0095】
[実施例E]
実施例Eは、本発明の試験方法の実操業における再現性を確認した試験例である。
【0096】
供試料として、前記の実施例Dに供した実施例12及び実施例14の耐火物を、それぞれ異なる浸漬ノズルのパウダー接触部(内孔側の表面は窒素ガスの流通経路たる中空室に暴露されている)に配置した。すなわち、図4の斜線部分が耐火物を配置した部分で、実施例16では実施例Dの実施例14の耐火物、実施例17では実施例Dの実施例12の耐火物を配置した。
【0097】
これらの試料特性、条件、結果を表5に示す。
【表5】

【0098】
この結果、次のことがわかる。
1.内孔側の劣化(劣化速度)が、実施例Dでは実施例12>実施例14となっており、かつその相対的な大きさは、実施例12/実施例14比で約1.8であるが、実操業の実施例Eにおいても実施例17>実施例16となり、かつその相対的な大きさは、実施例17/実施例16比で約1.8と、ほぼ同様の相対的な結果となっている。
2.外周側(パウダーライン部)の溶損量(溶損速度)は、大差はないものの、実施例Dにでは実施例14>実施例12となっており、実操業の実施例Eにおいてもほぼ同様の相対的な結果となっている。
【0099】
なお、従来の方法(例えば、実操業に供する製品と同じ連続鋳造用ノズルを使用して溶融金属中に浸漬する等)であれば、実験規模が大きく、多くの費用や時間その他を要する上、顕著な、また安定した再現性のある差異を得ることが困難であった。
【0100】
このように本発明の方法が、実操業に使用する実際の連続鋳造用ノズルでの高い再現性を示すことができることがわかる。
【符号の説明】
【0101】
10 試料体
11 中空部
12 栓体
13 通気性耐火物
14 難通気性皮膜
15 中間体
20 保持装置
30 溶融金属浴
30a 溶融金属
30b 非金属物
31 容器
32 高周波加熱装置
40 ガス導入経路
41 圧力計
50 試料体
51 内孔
52 通気性耐火物
53 ガスプール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下端が閉じられ、内部に中空部を有する管状の試料体の管壁の一部又は全部に耐火物を配置し、この耐火物を溶融金属又は溶融金属及び非金属物からなる溶融金属浴に浸漬し、溶融金属浴の温度を高周波加熱によって制御しつつ、前記試料体の中空部にガスを導入し、当該試料体の中空部内にガスを流通させることを特徴とする耐火物の試験方法。
【請求項2】
前記耐火物の一部又は全部が通気性耐火物であり、試料体の管壁に配置した通気性耐火物の外周面から溶融金属浴にガスを吹き出させる請求項1に記載の耐火物の試験方法。
【請求項3】
試料体の中空部は、試料体の上下端と管壁によって囲まれる全域に形成されたものである請求項1又は請求項2に記載の耐火物の試験方法。
【請求項4】
試料体の中空部は、試料体の管壁の内周面に沿ってスリット状に形成されたものである請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物の試験方法。
【請求項5】
複数の試料体を溶融金属浴に浸漬し、それぞれの試料体の管壁に配置した耐火物について同時に試験する請求項1から請求項4のいずれかに記載の耐火物の試験方法。
【請求項6】
溶融金属が溶鋼である請求項1から請求項5のいずれかに記載の耐火物の試験方法。
【請求項7】
耐火物がZrO及びCを含む耐火物であり、ガスが窒素ガスである請求項1から請求項6のいずれかに記載の耐火物の試験方法。
【請求項8】
ガス中に酸化性のガスを任意の割合で含む請求項1から請求項7のいずれかに記載の耐火物の試験方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−112945(P2010−112945A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233543(P2009−233543)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】