説明

耐火物屑のリサイクル方法

【課題】 マグネシア系耐火物屑を含有する製鋼時の耐火物屑を土木材料としてリサイクルするために、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑の土木材料としての使用時の膨張を抑制する方法を提供する。
【解決手段】 マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を土木用途として利用するために、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を0.3MPa未満の加圧蒸気雰囲気下で30時間以上保持するか、0.3MPa以上1.0MPa未満の加圧蒸気雰囲気下で30時間未満保持するかのエージングを実施することによって、マグネシア系耐火物屑中のMgOを水和させる、または0.3MPa以上1.0MPa未満の加圧蒸気雰囲気下に30時間以上保持してエージングを実施し、マグネシア系耐火物屑中のMgOの水和反応を予め完了させることによって、土木材料として使用時の膨張を抑制する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は製鉄所や鉄鋼所などで発生するマグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を土木材料としてリサイクルするために、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を土木材料として使用する際の膨張を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所や鉄鋼所で発生する耐火物屑について、これまでさまざまなリサイクル方法が提案されている。すなわち、製鉄所で使用済み耐火物を組成別に分別して粉砕して分級しそれらの組成、粒径に基づいて、一部は耐火物製造の原料と混合して耐火物に製造して再び製鉄所で使用し、他の一部は精錬用副原料として使用し、残余は土木材料として例えば路盤材としている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
これらの提案の中で、耐火物屑を土木材料として利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この提案の方法では、MgOレンガ、MgO−Cレンガ、Al23−MgO−Cレンガ、ドロマイトレンガなどの膨張を引き起こすマグネシア系耐火物屑が混在しているものは使用できない問題があった。
【0004】
ところで、耐火物屑の発生時に非マグネシア系耐火物屑のみを分別することができる場合は、問題なく土木材料として用いることが可能である。しかし、例えば、取鍋用のレンガはMgOレンガ、MgO−Cレンガ、Al23−MgO−Cレンガ、High−Al23レンガなどさまざまな種類の耐火物が使用されており、耐火物屑の発生時に、これらを完全に分別回収するのは困難である。完全分離には、通常手選などの処理工程が必要となる。しかし、この手選は非常に手間がかかるうえ目視での判断のために完全な分別は困難である。また、粉状となった耐火物屑については分別不能である。
【0005】
一方、製鉄所や製鋼所で発生するマグネシア系耐火物はfree−MgOを多量に含有している。そこでfree−MgOが水と長期間接触すると、MgO+H2O→Mg(OH)2の水和反応により、体積が膨張する。このようなマグネシア系耐火物の成分の中のMgOの割合を示すと、MgOレンガでは、MgOが80〜100%、MgO−Cレンガでは、MgOが70〜80%で、Cが10〜20%、Al23−MgO−Cレンガでは、MgOが10〜30%、Al23が50〜70%で、Cが0〜10%、ドロマイトレンガでは、MgO:40〜70%、CaO:30〜40%である。
【0006】
上記のfree−MgOを人工的に膨潤させて道路用路盤材とする製鋼スラグのエージング方法が提案されている(例えば、特許文献2あるいは特許文献3参照。)
【0007】
【特許文献1】特開2005−58835号公報
【特許文献2】特開2007−106631号公報
【特許文献3】特開平08−165151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、マグネシア系耐火物屑を含有する製鋼時の耐火物屑を土木材料としてリサイクルするために、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑の土木材料としての使用時の膨張を抑制する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を加圧蒸気雰囲気下でエージングすることによって、マグネシア系耐火物屑中のMgOを水和させ、土木材料として使用時の膨張を抑制する方法からなる耐火物屑のリサイクル方法である。
【0010】
請求項2の発明では、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を土木用途として利用するために、加圧蒸気雰囲気下でエージングすることによってマグネシア系耐火物屑中のMgOを水和させる方法は、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を0.3MPa未満の加圧蒸気雰囲気下で30時間以上保持するか、0.3MPa以上1.0MPa未満の加圧蒸気雰囲気下で30時間未満保持するかのいずれかとすることによって、マグネシア系耐火物屑中のMgOを水和させ、土木材料として使用時の膨張を抑制する方法からなる請求項1の手段の耐火物屑のリサイクル方法である。
【0011】
請求項3の発明では、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を土木用途として利用するために、加圧蒸気雰囲気下でエージングすることによってマグネシア系耐火物屑中のMgOを水和させる方法は、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を0.3MPa以上1.0MPa未満の加圧蒸気雰囲気下に30時間以上保持することによって、マグネシア系耐火物屑中のMgOを水和反応を完了させ、土木材料として使用時の膨張を抑制する方法からなる請求項1の手段の耐火物屑のリサイクル方法である。
【0012】
ここで、請求項3の発明の手段の加圧蒸気の圧力やエージング時間の限定理由を説明する。加圧蒸気の圧力が0.3MPa未満であると、膨張を完全に抑制するための処理時間が非常に長くなる。そこで、本発明では、加圧蒸気の圧力を0.3MPa以上とする。一方、加圧蒸気の圧力が1.0MPa以上になると、高圧ガス保安法などの制約や設備費や維持費など負荷が増大するため、1.0MPa未満とする。さらに、エージング時間は、30時間未満では水和反応が完了せず、膨張を十分に、予め抑制することができないので30時間以上とする。
【発明の効果】
【0013】
上記の手段とすることで、製鋼所から発生するマグネシア系耐火物屑中のMgOを予め水和させておくことによって、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を土木材料として利用する際の膨張を抑制することを可能とし、土木材料として利用しうるものとすることができ、耐火物屑を埋立処分する量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態について、以下に説明する。製鋼所から発生するマグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を耐圧容器内に装入し、所定圧力の加圧蒸気雰囲気下に所定時間保持するエージング処理を実施する。この場合、エージング処理による膨張抑制効果は、エージング処理後の耐火物屑の粒度調整を行った後、JIS A 5015に規定の鉄鋼スラグの水浸膨張試験方法に準拠して、測定した水浸膨張比で評価する。ただし、鉄鋼スラグの水浸膨張比は、80℃の温水中に1日6時間の浸漬と放冷を10日間繰り返したもので評価するが、マグネシア系耐火物屑の膨張は長期に渡って続くため、本発明の手段における例では20日間連続水浸したもので評価するものとする。
【実施例】
【0015】
マグネシア系耐火物屑としてMgO−Cレンガ屑を20%程度含有する耐火物屑に対して、比較例1並びに実施例1、実施例2、実施例3および実施例4について、表1に示す所定の蒸気圧力の加圧蒸気雰囲気下に、所定の時間保持するエージング処理を実施し、水浸膨張比を測定した。
【0016】
【表1】

【0017】
表1の比較例1はエージング処理を実施しないものであって、これは膨張が著しく大きく水浸膨張比は測定不能であった。一方、エージング処理を実施した本発明の各実施例1〜4はいずれも水浸膨張比は測定可能な値まで低減された。ここで、実施例3、実施例4は請求項3の手段の条件を満たすエージング処理であり、膨張が完全に抑制できたことを示している。
【0018】
マグネシア系耐火物としてMgO−Cレンガ、Al23−MgO−Cレンガを合わせて50%程度含有する耐火物屑に対して、比較例2並びに実施例5、実施例6、実施例7および実施例8について、表2に示す所定の蒸気圧力の加圧蒸気雰囲気下に、所定の時間保持するエージング処理を実施し、水浸膨張比を測定した。
【0019】
【表2】

【0020】
表2の比較例2はエージング処理を実施しないものであって、これは膨張が著しく大きく水浸膨張比は測定不能であった。一方、エージング処理を実施した本発明の各実施例5〜8はいずれも水浸膨張比は測定可能な値まで低減された。ここで、実施例6は請求項3の条件を満たすエージング処理であり、膨張が完全に抑制できたことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を加圧蒸気雰囲気下でエージングすることによってマグネシア系耐火物屑中のMgOを水和させて土木材料として使用する際の膨張を抑制することを特徴とする耐火物屑のリサイクル方法。
【請求項2】
加圧蒸気雰囲気下でエージングすることによってマグネシア系耐火物屑中のMgOを水和させる方法は、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を0.3MPa未満の加圧蒸気雰囲気下で30時間以上保持するか0.3MPa以上1.0MPa未満の加圧蒸気雰囲気下で30時間未満保持するかのいずれかとすることを特徴とする請求項1に記載の耐火物屑のリサイクル方法。
【請求項3】
加圧蒸気雰囲気下でエージングすることによってマグネシア系耐火物屑中のMgOを水和させる方法は、マグネシア系耐火物屑を含有する耐火物屑を0.3MPa以上1.0MPa未満の加圧蒸気雰囲気下に30時間以上保持することからなることを特徴とする請求項1に記載の耐火物屑のリサイクル方法。

【公開番号】特開2010−12403(P2010−12403A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174276(P2008−174276)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】