説明

耐火被覆用軽量金属下地

【課題】湿式耐火被覆材の厚さを確保しつつ仕上げ面の距離を必要最低限にすることができ、耐火被覆板を小さなピースに分割することなく取り付けることができる軽量金属下地であって、加工が容易で、取り付けも簡便な軽量金属下地を提供する。
【解決手段】耐火被覆材や耐火被覆板が取り付けられる鉄骨柱および/または鉄骨梁の隅部に並行して添設される断面がL字の隅用アングル部材と、該隅用アングル部材間に直交して架設される略平板断面の架け渡し部と該架け渡し部の両端にあって該隅用アングル部材を把持する固定部とからなる架設部材と、からなり、前記架設部材の固定部は前記隅用アングル部材のアングル面の外側を囲繞する固定部本体と該固定部本体の両縁部または片縁部にあって折り曲げられて該隅用アングル部材のアングル面の側縁であるアングル鍔部を把持する把持子を具え、該固定部本体には架け渡し部が連設される、構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火被覆用軽量金属下地に関し、より詳しくは、耐火被覆材の吹き付け用軽量金属下地や耐火被覆板貼り用軽量金属下地として使用できる下地金物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から鉄骨柱・鉄骨梁の耐火性を高めるために、その表面を耐火材で被覆することが行われているが、耐火材で被覆する方法としては、耐火材を吹き付ける湿式方法や耐火板で囲繞する乾式方法がある。そして、いずれの方法であっても、多くの場合、居住空間においては、鉄骨柱・鉄骨梁の耐火材をさらに仕上げ材で被覆することが行われる。
【0003】
湿式方法では、所定の耐火性能を確保するために吹き付けした耐火被覆層の厚さを確保することが重要となる。この耐火被覆層の厚さを確保する発明としては、特開平07−310378号公報に開示のものがある。この発明は「鉄骨部材の耐火被覆構造であって、鉄骨部材の周囲に形成する耐火被覆層の厚さを確保することが容易であり、厚すぎる無駄な被覆層を形成することがなく、かつ吹き付け材料が床に落ちるのを防ぐことができて、全体として被覆層を整然と仕上げることができる耐火被覆構造を提供すること」を目的としていて、その目的を達成するために「鉄骨構造の建物を構成する鉄骨部材を耐火被覆する構造であって、クリップ付耐熱性網材をその鉄骨部材に取り付けて、その鉄骨部材の周囲に吹き付け材による耐火被覆層を形成することからなる鉄骨部材の耐火被覆構造である」構成としている。
【0004】
また、乾式方法では、凹凸のある鉄骨柱・鉄骨梁の表面に撓みの少ない耐火被覆板を取り付けるために小さなピースに分割する場合が多くて施工能率が悪く、工期の短縮化を期待できないという課題があった。この課題を解決するための発明として、特開2006−161277公報に開示のものがある。この発明は「溝形状のユニットに組み立て、H形鋼梁に向かって垂直に持ち上げて被せ、上下のフランジ側面部へ下地として取り付けた固定用金物へビス止めし固定する乾式耐火被覆ユニット工法を提供する」ことを目的としていて、その目的を達成するために「スラブの下面に露出したH形鋼梁の上側フランジの側面部に下向きの固定用金物を、同下側フランジの側面部には上向きの固定用金物を、それぞれ梁の材軸方向に間隔をあけて複数個取り付け、耐火被覆板を、H形鋼梁の横断面形状における上下のフランジ間のせいの高さと同等ないしそれよりも少し深くかつフランジの幅寸とほぼ等しい溝幅の溝形状ユニットに組み立て、耐火被覆板による溝形状ユニットを垂直上方へ持ち上げてH形鋼梁の両側面に沿って被せ、溝形状ユニットの上端がスラブの下面へ突き当たった状態で、その側壁部分を上下の固定用金物へビス止め等の手段で止着する」構成としている。
【0005】
しかしながら、湿式方法においては、従来、軽量鉄骨で湿式耐火被覆材を囲繞し、その軽量鉄骨にボードを貼った上にクロスまたは塗装等の内装仕上材料を貼るようにしているが、軽量鉄骨の寸法は40mm〜65mmであり、湿式耐火被覆材とのクリアランスおよびボード厚を考慮すると、湿式耐火被覆材と仕上げ面の距離は概ね70mm〜100mm程度となる。また、特開平07−310378号公報に開示の発明では、耐火被覆層の厚さを確保することを目的としているため、湿式耐火被覆材と仕上げ面の距離を縮小するものではない。
そして、特開2006−161277号公報に開示の発明では、鉄骨梁を対象とした乾式耐火被覆ユニット工法であり、鉄骨柱を対象としたものではなく、かつ、ユニット自体が重くなって人力では扱い難いという難点がある。
【0006】
そのため、本願出願人は、湿式耐火被覆材と仕上げ面の距離を必要最低限にすることができ、要求される耐火被覆層の厚さを確実に確保することができる軽量金属下地金物を提供するとともに、この軽量金属下地金物を使用する鉄骨柱や鉄骨梁の耐火被覆工法を提供することを目的とした発明を出願した。当該発明は特開2010−59780号公報に開示されていて、前述の目的を達成するために、「湿式耐火被覆材が吹付けられる鉄骨柱・梁の出隅部に並行して添設される出隅用アングル部材と、鉄骨柱・梁の入隅部に並行して添設される入隅用アングル部材と、この出隅用アングル部材・入隅用アングル部材間あるいは出隅用アングル部材間に架設される略平板状の繋ぎ部材と、これらを着脱自在に嵌着する嵌着部材あるいは挟着する挟着部材と、から構成される軽量金属下地金物を、鉄骨柱・梁周りに枠組みし、これらの部材を定規として湿式耐火被覆材を吹き付け、または、吹き付けられた湿式耐火被覆材に接してこれらの部材を枠組みしてボード貼り等の仕上げを行う。」こととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−310378号公報
【特許文献2】特開2006−161277号公報
【特許文献3】特開2010−59780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、湿式方法にあっては、湿式耐火被覆材と仕上げ面の距離を必要最低限にすることができるとともに、要求される耐火被覆層の厚さを確実に確保することができる軽量金属下地を提供し、乾式方法にあっては、小さなピースに分割することなく耐火被覆板を取り付けることができる軽量金属下地を提供しつつ、従来よりも加工が容易で、取り付けもより簡便な軽量金属下地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本願請求項1に係る耐火被覆用軽量金属下地は、耐火被覆材や耐火被覆板が取り付けられる鉄骨柱および/または鉄骨梁の隅部に並行して添設される略L字断面の金属製隅用アングル部材と、前記隅用アングル部材間に直交して架設される断面が略平板状の架け渡し部と該架け渡し部の両端または片端にあって該隅用アングル部材を把持して固定される固定部とからなる金属製架設部材と、からなり、前記架設部材の固定部は前記隅用アングル部材のアングル面の外側を囲繞する固定部本体と該固定部本体の両縁部または片縁部にあって折り曲げられて該隅用アングル部材のアングル面の側縁であるアングル鍔部を把持する把持子とを具え、該固定部本体は延伸して該架設部材の架け渡し部に連設される、ことを特徴としている。
なお、使用される金属としては、建築工事で使用されるいわゆる軽鉄と称される板厚が0.3mmないし0.6mm程度の薄板の亜鉛メッキ鋼板であることが好ましい。また、「内側」および「外側」とは、湿式耐火被覆用軽量金属下地金物を鉄骨柱および/または鉄骨梁に囲繞するように組み立てたときに、鉄骨柱および/または鉄骨梁に対向する側を「内側」といい、その反対側を「外側」ということとする。
また、本願請求項2に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項1に記載の耐火被覆用軽量金属下地であって、前記架設部材の架け渡し部には雌型架け渡し部と雄型架け渡し部があり、前記雌型架け渡し部はその長さ方向に沿った両側縁が略直角以下に内側に折り曲げられる一方、前記雄型架け渡し部は平板状であって、該雌型架け渡し部に該雄型架け渡し部が挿入されて摺動することにより、該架け渡し部の長さが調整可能である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項1または請求項2に記載の耐火被覆用軽量金属下地であって、 前記隅用アングル部材のアングル鍔部はアングル面との挟角が90°以下となるように内側に折り曲げられてアングル鍔曲折部が形成され、該隅用アングル部材は所定の長さを有する第1の隅用アングル部材と該第1の隅用アングル部材と断面が相似形の所定の長さを有する第2の隅用アングル部材と、からなり、前記第2の隅用アングル部材は前記第1の隅用アングル部材に挿入されて摺動することにより前記隅用アングル部材の全長が調整可能である、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項3に記載の耐火被覆用軽量金属下地であり、鉄骨柱と壁とが取り合う隅部に使用する前記隅用アングル部材のアングル鍔部は該壁に接する側のアングル鍔曲折部が不形成であって、前記雌型架け渡し部および/または前記雄型架け渡し部が形成される一方の側とは異なる他方の側が前記固定部本体から平板状に延伸して該延伸部分が前記壁と前記隅用アングル部材との間に挟持されて前記架設部材が固定される、ことを特徴としている。
また、本願請求項5に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項3に記載の耐火被覆用軽量金属下地であって、鉄骨柱と壁とが取り合う隅部には略L字断面の軽量の壁固定アングルが該壁に固着され、該壁に固着される該壁固定アングルの一方のアングル面とは異なる他方のアングル面が平板状に延伸して前記雌型架け渡し部に挿入されて前記架設部材が固定される、ことを特徴としている。
そして、本願請求項6に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項5に記載の耐火被覆用軽量金属下地であり、前記雌型架け渡し部の長さ方向に沿った両側縁の折り曲げられた挟角は略45°であって、該雌型架け渡し部に挿入される前記雄型架け渡し部および前記壁固定アングルの他方の側の長さ方向に沿った両側縁は挟角が鈍角となるように内側に折り曲げられて両側縁を除く平板状の部分が該雌型架け渡し部の平板状の部分に重ね合わされる、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項7に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の耐火被覆用軽量金属下地であって、鉄骨柱に対する耐火被覆材の被り厚が確保され得る位置に合わせて、または鉄骨柱面の凸部よりも外側の位置に合わせて固定された略L字断面の足元固定アングルと前記隅用アングル部材とは、該隅用アングル部材のアングル面を囲繞して上下方向に摺動する隅用アングル・足元固定アングル挟持金物により挟持されて固定される、ことを特徴としている。
また、本願請求項8に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の耐火被覆用軽量金属下地であって、L字断面の金属製頂部アングル部材が鉄骨柱の隅部に添設される前記隅用アングル部材間の頂部に架設されて掛着され、該頂部アングル部材の一方のアングル面は該隅用アングル部材のアングル面に重ね合わされ、該頂部アングル部材の他方のアングル面は上部に位置して鉄骨梁の隅部に添設される前記隅用アングル部材が載置され、前記頂部アングル部材は鉄骨柱方向に出入する出入子を具え該出入子により鉄骨柱との離間距離が調整可能である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項9に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項8に記載の耐火被覆用軽量金属下地であって、前記掛着は前記頂部アングル部材の両端部近傍に位置する掛着子と該頂部アングル部材のアングル面とで前記隅用アングル部材のアングル面を挟持することにより行われ、前記出入子は前記頂部アングル部材の他方のアングル面上に凸設された出入子貫入孔に掴持されて固定される、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項10に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の耐火被覆用軽量金属下地であって、H形断面の鉄骨梁の隅部に添設される前記隅用アングル部材は該鉄骨梁のフランジから直接的または間接的に懸吊される梁用取付金物により支持され、該梁用取付金物は該フランジから懸吊されて下方に延伸する被懸吊部と該被懸吊部の延伸先に接続し該隅用アングル部材を固定する固定部とからなり、該固定部は該隅用アングル部材のアングル面の外側を囲繞する固定部本体と該固定部本体の両縁部または片縁部にあって折り曲げられて該隅用アングル部材のアングル面の側縁であるアングル鍔部を把持する把持子を具え、前記H形断面の鉄骨梁の継ぎ手部分には前記梁用取付金物の固定部が上下に連接された梁用ダブル取付金物が該H形断面の鉄骨梁のフランジから直接的または間接的に懸吊され、該梁用ダブル取付金物により2本の前記隅用アングル部材が側面から見て段違いに支持されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の被覆用軽量金属下地。H形断面の鉄骨梁の隅部に添設される前記隅用アングル部材は該鉄骨梁のフランジから懸吊される梁用取付金物により支持され、該梁用取付金物は該フランジに挟着されて下方に延伸する被懸吊部と該被懸吊部の延伸先に接続し該隅用アングル部材を固定する固定部とからなり、該固定部は該隅用アングル部材のアングル面の外側を囲繞する固定部本体と該固定部本体の両縁部または片縁部にあって折り曲げられて該隅用アングル部材のアングル面の側縁であるアングル鍔部を把持する把持子を具え、前記H形断面の鉄骨梁の継ぎ手部分には前記梁用取付金物の固定部が上下に連接された梁用ダブル取付金物が該H形断面の鉄骨梁のフランジから懸吊され、該梁用ダブル取付金物により2本の前記隅用アングル部材が側面から見て段違いに支持されている、ことを特徴としている。
そして、本願請求項11に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項10に記載の耐火被覆用軽量金属下地であって、前記梁用ダブル取付金物の下部に位置する垂直方向の固定部の把持子はその両縁部が予め下方が開放されたレの字形に切り欠きされ略直角に内側に折り曲げられて隅用アングル部材のアングル鍔部を把持する、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項12に係る耐火被覆用軽量金属下地は、請求項10または請求項11に記載の被覆用軽量金属下地であって、前記梁用取付金物の被懸吊部および/または前記梁用ダブル取付金物の被懸吊部は前記鉄骨梁のフランジを挟持するフランジ挟持金物と該鉄骨梁のフランジとの間で挟着されて間接的に該鉄骨梁のフランジから懸吊される、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記の構成により以下の効果を奏する。
(1)本発明に係る耐火被覆用軽量金属下地は、隅用アングル部材を耐火被覆用軽量金属下地に作用する応力を負担する主部材とし、架設部材を隅用アングル部材に作用する応力を分担する副部材としていて、主部材である隅用アングル部材は剛性が高く、特にアングル鍔曲折部を設けた場合には捻れに対する剛性も高くなって、隅用アングル部材と架設部材とを一体化することにより全体として剛性がより高い枠体となる。
(2)隅用アングル部材と架設部材は、架設部材の固定部の把持子を手で折り曲げることにより簡単に固定することができる。また、隅用アングル部材と架設部材は、いずれも型抜きした平板を折り曲げることにより簡単に製造することができる。
(3)架設部材の架け渡し部を雌型架け渡し部と雄型架け渡し部の2種類とした場合には、雌型架け渡し部に雄型架け渡し部を摺動自在に挿入することにより隅用アングル部材間の間隔に応じて架設部材の長さを自在に調整することができる。
(4)隅用アングル部材を第1の隅用アングル部材と第2の隅用アングル部材とから構成した場合には、隅用アングル部材を切断し、あるいは継ぎ足すことなくその長さを自在に調整することができる。
(5)雌型架け渡し部の長さ方向に沿って折り曲げられた両側縁の挟角を略45°とし、雌型架け渡し部に挿入される雄型架け渡し部および固定用アングル片の他方の側の長さ方向に沿った両側縁を挟角が鈍角となるように内側に折り曲げ、雌型架け渡し部に雄型架け渡し部および固定用アングル片の他方の側を挿入すると、それらは互いにガタつくことなく確りと保持される。
(6)足元固定アングルと隅用アングル部材とは、隅用アングル部材に沿って摺動する隅用アングル部材・足元固定アングル挟持金物により挟持されるので、極めて容易に隅用アングル部材を所定の位置に固定することができる。
(7)頂部アングル部材の出入子により隅用アングル部材の垂直性が容易に確保できるので、鉄骨柱に対する耐火被覆厚さの確保や取り付ける耐火被覆板の垂直性の確保、さらには仕上げ面の垂直性も容易に確保できる。
(8)梁用取付金物により、鉄骨梁の隅部に添設される隅用アングル部材のたるみが防止でき、鉄骨梁に対する所定の耐火被覆厚さの確保や鉄骨梁に対する耐火被覆板の取り付けが容易となる。また、梁用ダブル取付金物により、鉄骨梁の継ぎ手部分についても耐火被覆厚さの確保や鉄骨梁の継ぎ手部分に対する耐火被覆板の取り付けが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1に係る湿式耐火被覆用軽量金属下地を使用した鉄骨柱部分の平断面図である。
【図2】図1における軽量金属下地のA部詳細図である。
【図3】図2における軽量金属下地のB部側面図、および各部矢視図である。
【図4】実施例1に係る湿式耐火被覆用軽量金属下地を使用した鉄骨梁部分の側面図である。
【図5】図4における軽量金属下地のC部詳細図、および各部矢視図である。
【図6】図4における軽量金属下地のD部詳細図、および各部矢視図である。
【図7】梁用取付金物の他の実施例に係る各詳細図である。
【図8】実施例1に係る第1の隅用アングル部材および第2の隅用アングル部材の組み立て斜視図である。
【図9】実施例1に係る架設部材の部分斜視図である。
【図10】実施例2に係る乾式耐火被覆用軽量金属下地を使用した鉄骨柱部分の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態に係る実施例1および実施例2について、図1ないし図10に基づいて説明する。
【0013】
図1ないし図10において、符号10は隅用アングル部材、符号10aは第1の隅用アングル部材、符号10bは第2の隅用アングル部材、符号11はアングル鍔曲折部、符号20は架設部材、符号21は架け渡し部、符号21aは雌型架け渡し部、符号21bは雄型架け渡し部、符号23は固定部、符号231は固定部本体、符号233は把持子、符号31は壁固定アングル、符号33は足元固定アングル、符号35は隅用アングル・足元固定アングル挟持金物、符号351はアングル鍔曲折部、符号353はスリット、符号40は頂部アングル部材、符号41は掛着子、符号43は出入子、符号45は出入子貫入孔、符号47は切り欠き部、符号49は出入子抜出防止子、符号50aは梁用取付金物、符号50bは梁用ダブル取付金物、符号51は被懸吊部、符号53は固定部、符号531は固定部本体、符号533は把持子、符号55はフランジ挟持金物、符号63はボックス型鉄骨柱、符号65はH形鉄骨梁、符号651は鉄骨梁フランジ、符号67は鉄骨梁継ぎ手部、符号69は壁、符号71は床スラブ、符号73は湿式耐火被覆材、符号75は乾式耐火被覆板、符号77は仕上げ用ボード、である。
【実施例1】
【0014】
〔鉄骨柱の湿式耐火被覆用軽量金属下地の構成〕
まず、実施例1に係る鉄骨柱の湿式耐火被覆用軽量金属下地の構成について、主に、図1ないし図3、図8、図9を基に説明する。
【0015】
鉄骨柱に使用される湿式耐火被覆用軽量金属下地は、隅用アングル部材10と、架設部材20と、壁固定アングル31と、足元固定アングル33と、隅用アングル・足元固定アングル挟持金物35と、頂部アングル部材40と、から構成されている。そして、隅用アングル部材10はボックス型鉄骨柱63の出隅近傍に添設されていて、その足元は隅用アングル・足元固定アングル挟持金物35を介して床スラブ71の床面に固定される足元固定アングル33に固着され、その頂部には水平方向に頂部アングル部材40が取着されている。また、互いに隣接する隅用アングル部材10同士の間あるいは隅用アングル部材10と壁69の表面に固着された壁固定アングル31との間には水平方向に複数段の架設部材20が架け渡されている。
【0016】
隅用アングル部材10は断面がL字のアングルであって、2つのL字を形成する面(アングル面)の側縁が略45°の挟角となるようにアングル面の挟角90°側(内側)に折り曲げられて、折り曲げられた部分がアングル鍔曲折部11となっている。そして、隅用アングル部材10には、互いに断面が相似形の第1の隅用アングル部材10aと第2の隅用アングル部材10bとがあり、第2の隅用アングル部材10bが第1の隅用アングル部材10aに挿入されて摺動することにより隅用アングル部材10の全長が調整可能となっている。
【0017】
架設部材20は、架け渡し部21と、架け渡し部21の端部に位置する固定部23とから構成されていて、略平板状の架け渡し部21には、その長さ方向に沿った両側縁が内側に折り曲げられてその挟角が鋭角となっている雌型架け渡し部21aとその挟角が鈍角となっている雄型架け渡し部21bがあり、雌型架け渡し部21aに雄型架け渡し部21bが挿入できるようになっている。また、固定部23は断面がL字のアングル状であって、隅用アングル部材10のアングル面の外側を囲繞する固定部本体231と、固定部本体231の両縁部にあって内側に折り曲げられて隅用アングル部材10のアングル鍔曲折部11を把持する把持子233と、から構成されている。そして、固定部本体231のアングル面の内、一対の把持子233を除く中間部分が延伸して架け渡し部21に連設されている。なお、実施例における架設部材20は、固定部本体231の2つのアングル面のそれぞれに雌型架け渡し部21aおよび雄型架け渡し部21bが連設されているが、雌型架け渡し部21aのみ、あるいは雄型架け渡し部21bのみが連設されていても良く、さらには、固定部本体231の2つのアングル面のそれぞれに雌型架け渡し部21a、あるいは雄型架け渡し部21bを連設するようにしても良い。
【0018】
壁固定アングル31は断面がL字のアングルであって、一方のアングル面は壁69に糊着や鋲着等で固定され、他方のアングル面は延伸し、その長さ方向に沿って両側縁が内側にその挟角が鈍角となるように折り曲げられていて、雌型架け渡し部21aに挿入できるようになっている。したがって、架設部材20の取り付けの位置と壁固定アングル31の取り付けの位置とは同一高さとする必要がある。なお、壁固定アングル31の代わりに、隅用アングル部材10を壁69に固定するようにしても良く、あるいは隅用アングル部材10の一方のアングル面の側縁であるアングル鍔部のみがアングル鍔曲折部11を具えるようにして、アングル鍔曲折部11が不形成のアングル面を壁69に固定するようにしても良い。この場合、隅用アングル部材10に取り付ける架設部材20については、固定部本体231の一方にのみ架け渡し部21を連設して、他方を壁69と隅用アングル部材10との間に挿入するようにしても良い。
【0019】
足元固定アングル33は断面がL字のアングルであって、床スラブ71の床面の所定の位置に糊着や鋲着等で固定されるが、床面に接するアングル面の向きは鉄骨柱に対して外向きであっても内向きであっても良く、図3では外向きとなっている。
隅用アングル・足元固定アングル挟持金物35は隅用アングル部材10を一回り大きくした断面形状を呈していて、隅用アングル部材10の2つのアングル面とアングル鍔曲折部11とを囲繞して上下方向に摺動する。そして、隅用アングル・足元固定アングル挟持金物35のアングル鍔曲折部351に切り込まれたスリット353が隅用アングル部材10のアングル面と足元固定アングル33のアングル面とを挟持するようになっている。
【0020】
隅用アングル部材10間の頂部に架設される頂部アングル部材40は、断面がL字のアングルであって、一方のアングル面は隅用アングル部材10のアングル面に接し、他方のアングル面は上部に位置するようになっている。そして、隅用アングル部材10の一方のアングル面の両端には垂直方向に切り込みが入れられて掛着子41が形成され、掛着子41と一方のアングル面とが隅用アングル部材10のアングル面を挟持することにより、隅用アングル部材10と頂部アングル部材40が掛着される。さらに、頂部アングル部材40の上部に位置するアングル面上には、複数の出入子貫入孔45が凸設されていて、この出入子貫入孔45に出入子43がボックス型鉄骨柱63方向に向けて出入自在に挿入されている。この出入子43は細長い平板状を呈していて、長さ方向に曲げ剛性を大きくするための溝が凸設され、出入子43の一端がボックス型鉄骨柱63に当接してボックス型鉄骨柱63と隅用アングル部材10との所定の離間距離を保持するようになっている。
なお、実施例では頂部アングル部材40の上部に位置するアングル面には平面から見てL字状の切り欠き部47が設けられて出入子抜出防止子49が形成されている。この出入子抜出防止子49は、頂部アングル部材40の上部に位置するアングル面に他端を折り曲げることにより固定した出入子43が抜け出すことを防止する役割を担っている。
【0021】
〔鉄骨柱の湿式耐火被覆用軽量金属下地の組み立て〕
つぎに、ボックス型鉄骨柱63周りの湿式耐火被覆用軽量金属下地金物の組み立て手順例を以下に説明する。
【0022】
(1)所定の耐火被覆厚さが確保できる隅用アングル部材10の位置となるように、足元固定アングル33を床面に固着する。この固着は、糊着、鋲着および螺着等の周知の手段によることができる。
(2)隅用アングル部材10に隅用アングル・足元固定アングル挟持金物35を外嵌めし、足元固定アングル33のアングル面に隅用アングル部材10のアングル面を密着させて隅用アングル・足元固定アングル挟持金物35を下方に摺動させ、スリット353が隅用アングル部材10のアングル面と足元固定アングル33のアングル面とを挟持するようにする。これにより隅用アングル部材10の足元は所定の位置に固定される。なお、隅用アングル部材10に第1の隅用アングル部材10aと第2の隅用アングル部材10bを使用する場合には、前以て隅用アングル部材10の全長を調整して第1の隅用アングル部材10aと第2の隅用アングル部材10bとを固定し、第2の隅用アングル部材10bが下に位置するようにする。そして、第2の隅用アングル部材10bに隅用アングル・足元固定アングル挟持金物35を外嵌めすれば、第1の隅用アングル部材10aと隅用アングル・足元固定アングル挟持金物35の断面形状は略同一になる。また、第1の隅用アングル部材10aと第2の隅用アングル部材10bの固定方法としては、糊着、鋲着および螺着でも構わないが、重ね合わされた第1の隅用アングル部材10aのアングル鍔曲折部11と第2の隅用アングル部材10bのアングル鍔曲折部11とを外側から押圧してかしめると簡単に固定できる。
(3)隅用アングル部材10の頂部間に頂部アングル部材40を架け渡して掛着させる。一方が壁面である場合には壁固定アングル31を壁69の面に固着して、この壁固定アングル31に掛着させるようにすると良い。そして、頂部アングル部材40の出入子43の一端をボックス型鉄骨柱63に当接させて、隅用アングル部材10の垂直性を確保する。
(4)隅用アングル部材10間、あるいは予め壁69の面に固着した壁固定アングル31と隅用アングル部材10間に所定の間隔となるように複数の架設部材20を架け渡し、架設部材20の固定部23の把持子233を手で折り曲げて固定する。必要に応じて、重ね合わせて固定した架設部材20の把持子233と隅用アングル部材10のアングル鍔曲折部11とを外側から押圧してかしめるようにしても良い。
【0023】
以上の手順により、ボックス型鉄骨柱63周りに湿式耐火被覆用軽量金属下地金物が組み立てられるが、足元固定アングル31の床面への固着以外の取り付けは、手によりワンタッチで行われるため、特別な道具を必要としないばかりか、極めて短時間に組み立てることができる。
【0024】
〔鉄骨梁の湿式耐火被覆用軽量金属下地の構成〕
つぎに、実施例1に係る鉄骨梁の湿式耐火被覆用軽量金属下地の構成について、主に、図4ないし図7を基に説明する。
鉄骨梁に使用される湿式耐火被覆用軽量金属下地は、隅用アングル部材10と、架設部材20と、梁用取付金物50aと、梁用ダブル取付金物50bと、から構成されている。そして、隅用アングル部材10はH形鉄骨梁65の出隅近傍に添設されていて、その端部は頂部アングル部材40上に載置され、その中間部は梁用取付金物50aおよび梁用ダブル取付金物50bを介して鉄骨梁フランジ651から吊り下げられている。
【0025】
隅用アングル部材10については、「鉄骨梁の湿式耐火被覆用軽量金属下地の構成」で説明したのでその説明を省略する。
架設部材20は、架け渡し部21と、架け渡し部21の両端部に位置する固定部23とから構成されていて、この架け渡し部21には剛性の高い雌型架け渡し部21aが使用されている。なお、実施例では、架け渡し部21の両端部に固定部23を具える架設部材20を使用しているが、「鉄骨梁の湿式耐火被覆用軽量金属下地の構成」で説明した片端部に固定部23を具える雌型架け渡し部21aと、片端部に固定部23を具える雄型架け渡し部21bとを組み合わせて使用することもできる。架け渡し部21および固定部23の形状は「鉄骨梁の湿式耐火被覆用軽量金属下地の構成」で説明したのでその説明を省略する。
【0026】
梁用取付金物50aは鉄骨梁フランジ651から懸吊される先端部がL字に曲折された被懸吊部51と、被懸吊部51が下方に延伸するその延伸先に接続し隅用アングル部材10を固定する断面がL字のアングル状の固定部53とからなり、さらに、固定部53は隅用アングル部材10のアングル面の外側を囲繞する固定部本体531と固定部本体531の両縁部にあって折り曲げられて隅用アングル部材10のアングル鍔部を把持する把持子533を具えている。なお、実施例では、設備配管の吊り下げに使用される既製のフランジ挟持金物55を使用していて、図6に示すように、鉄骨梁フランジ651の上面と側面を囲繞するL字状の被懸吊部51の先端部がフランジ挟持金物55により挟持されることにより、梁用取付金物50aが鉄骨梁フランジ651から確りと懸吊されるようになっている。
なお、図7に示すように、被懸吊部51の先端部の形状を側面から見て直線状とし正面から見てT字状として、鉄骨梁フランジ651の側面に被懸吊部51の先端部を当接させ、被懸吊部51の先端部をフランジ挟持金物55で挟持するとともに、T字状の両脇部分がフランジ挟持金物55に支持されるようにして、梁用取付金物50aが間接的に鉄骨梁フランジ651から懸吊されるようにしても良い。そして、T字状の両脇部分は鉄骨梁フランジ651側に僅かに折り曲げられていて、被懸吊部51の先端部をフランジ挟持金物55で挟持したときには、フランジ挟持金物55に被懸吊部51の先端部が密着するようになっている。
また、フランジ挟持金物55と被懸吊部51とを一体として被懸吊部とし、この被懸吊部を鉄骨梁フランジ651に挟着させて直接的に鉄骨梁フランジ651から懸吊されるようにしても良いことは勿論である。
【0027】
梁用ダブル取付金物50bは、梁用取付金物50aの固定部53が上下に連なった形状であって鉄骨梁継ぎ手部67近傍に使用される。梁用ダブル取付金物50bもまた、鉄骨梁フランジ651から懸吊される被懸吊部51と、被懸吊部51が下方に延伸するその延伸先に接続し隅用アングル部材を固定する断面がL字のアングル状の上部の固定部53と、その固定部53の垂直方向のアングル面が延伸してその延伸先に接続される下部の固定部53と、からなっている。上部の固定部53は前述した梁用取付金物50aと同一仕様であるが、下部の固定部53の上部に位置する把持子533は下方が開放されたレの字形に予め切り欠きされてアングル面に対して直角方向に折り曲げられていて、このレの字形の切り欠き部分により隅用アングル部材10のアングル鍔部を把持するようになっている。そして、梁用ダブル取付金物50bの下部の固定部53により取り付けられた隅用アングル部材10により、鉄骨梁継ぎ手部67に使用される継ぎ手ボルトに対する所定の湿式耐火被覆厚が確保できるようになる。
【0028】
〔鉄骨梁の湿式耐火被覆用軽量金属下地の組み立て〕
つぎに、H形鉄骨梁65の下部周りの湿式耐火被覆用軽量金属下地金物の組み立て手順例を以下に説明する。
【0029】
(1)所定の間隔で梁用取付金物50aを鉄骨梁フランジ651から吊り下げ、さらに、梁用ダブル取付金物50bを鉄骨梁継ぎ手部67近傍の鉄骨梁フランジ651から吊り下げる。
(2)梁用取付金物50aおよび梁用ダブル取付金物50bのアングル状の固定部53に隅用アングル部材10を内嵌めし、下部の固定部53の上部に位置する把持子533以外の把持子233を手で折り曲げて隅用アングル部材10を固定する。したがって、梁用ダブル取付金物50bでは隅用アングル部材10が上下2段となる。必要に応じて、重ね合わせて固定した梁用取付金物50aと梁用ダブル取付金物50bの把持子533と隅用アングル部材10のアングル鍔曲折部11とを外側から押圧してかしめるようにしても良い。
(3)隅用アングル部材10間に所定の間隔となるように複数の架設部材20を架け渡し、架設部材20の固定部23の把持子233を手で折り曲げて固定する。必要に応じて、重ね合わせて固定した架設部材20の把持子233と隅用アングル部材10のアングル鍔曲折部11とを外側から押圧してかしめるようにしても良い。
【0030】
以上の手順により、H形鉄骨梁65の下部周りに湿式耐火被覆用軽量金属下地金物が組み立てられるが、この組み立ては手によるワンタッチで行われるため、特別な道具を必要としないばかりか、極めて短時間で組み立てることができる。
【0031】
〔鉄骨柱および鉄骨梁の湿式耐火被覆工法〕
つぎに、本発明に係る耐火被覆用軽量金属下地を使用した鉄骨柱および鉄骨梁の湿式耐火被覆工法の手順例を以下に説明する。なお、この湿式耐火被覆工法は、主にボックス型鉄骨柱またはH型鉄骨梁を対象としているが、ここでは、ボックス型鉄骨柱63を対象とした場合について説明する。
【0032】
(1)前述した「鉄骨柱の湿式耐火被覆用軽量金属下地の組み立て」によりボックス型鉄骨柱63周りに湿式耐火被覆用軽量金属下地を組み立てる。
(2)湿式耐火被覆材73をボックス型鉄骨柱63の外周面に吹付けし、湿式耐火被覆材73が所定の密度となるように木ごて等でその表面を押圧して、湿式耐火被覆材73の表面が隅用アングル部材10や架設部材20の架け渡し部21の外面と面一となるようにする。なお、湿式耐火被覆材73の表面が隅用アングル部材10や架設部材20の架け渡し部21の外面よりも突出している場合は、その表面を掻き落とす。
(3)仕上ボード77を隅用アングル部材10や架設部材20の架け渡し部21にタッピングビス等で螺着する。さらに、必要に応じて、仕上ボード77の表面にクロス(図示外)を貼る。
以上の手順により、ボックス型鉄骨柱63に耐火被覆工事が施工されて、ボックス型鉄骨柱63周りの仕上げが行われる。
【実施例2】
【0033】
〔鉄骨柱/鉄骨梁の乾式耐火被覆用軽量金属下地の構成および組み立て〕
つぎに、実施例2に係る鉄骨柱/鉄骨梁の乾式耐火被覆用軽量金属下地の構成および組み立てについて説明するが、鉄骨柱/鉄骨梁の乾式耐火被覆用軽量金属下地の構成は、前述した湿式耐火被覆用軽量金属下地の構成と同一であるのでその説明を省略する。
また、鉄骨柱/鉄骨梁の乾式耐火被覆用軽量金属下地の組み立てについては、前述した湿式耐火被覆用軽量金属下地の組み立てと略同一であるが、異なるところは、湿式耐火被覆用軽量金属下地が鉄骨柱および鉄骨梁に対する所定の耐火被覆厚を確保し得る位置に組み立てるのに対して、乾式耐火被覆用軽量金属下地が撓みの少ない乾式耐火被覆板75を取り付けことができるような鉄骨柱面または鉄骨梁面の凸部よりも外側の位置に組み立てることにある。それ以外は、前述した湿式耐火被覆用軽量金属下地の組み立てと同一であるのでその説明を省略する。
【0034】
〔鉄骨柱および鉄骨梁の乾式耐火被覆工法〕
本発明に係る耐火被覆用軽量金属下地を使用した乾式耐火被覆工法については、主に図9を基に、鉄骨柱について説明する。
(1)ボックス型鉄骨柱63周りに乾式耐火被覆用軽量金属下地を組み立てる。前述したように、この際、隅用アングル部材10は、撓みの少ない乾式耐火被覆板75を取り付けことができるように鉄骨柱面の凸部よりも外側の位置とする。
(2)乾式耐火被覆板75を隅用アングル部材10や架設部材20の架け渡し部21にタッピングビス等で螺着する。さらに、必要に応じて、乾式耐火被覆板75の表面にクロス等の仕上げ材(図示外)を貼ったり塗装したりする。なお、多くの場合、乾式耐火被覆板75には所定厚のケイ酸カルシウム板が使用される。
以上の手順により、ボックス型鉄骨柱63に耐火被覆工事が施工されて、ボックス型鉄骨柱63周りの仕上げが行われる。
【符号の説明】
【0035】
10 実施例に係る隅用アングル部材
10a 第1の隅用アングル部材
10b 第2の隅用アングル部材
11 アングル鍔曲折部
20 実施例に係る架設部材
21 架け渡し部
21a 雌型架け渡し部
21b 雄型架け渡し部
23 固定部
231 固定部本体
233 把持子
31 壁固定アングル
33 足元固定アングル
35 隅用アングル・足元固定アングル挟持金物
40 頂部アングル部材
41 掛着子
43 出入子
45 出入子貫入孔
50a 梁用取付金物
50b 梁用ダブル取付金物
51 被懸吊部
53 固定部
531 固定部本体
533 把持子
55 フランジ挟持金物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火被覆材や耐火被覆板が取り付けられる鉄骨柱および/または鉄骨梁の隅部に並行して添設される略L字断面の金属製隅用アングル部材と、
前記隅用アングル部材間に直交して架設される断面が略平板状の架け渡し部と該架け渡し部の両端または片端にあって該隅用アングル部材を把持して固定される固定部とからなる金属製架設部材と、からなり、
前記架設部材の固定部は前記隅用アングル部材のアングル面の外側を囲繞する固定部本体と該固定部本体の両縁部または片縁部にあって折り曲げられて該隅用アングル部材のアングル面の側縁であるアングル鍔部を把持する把持子とを具え、該固定部本体は延伸して該架設部材の架け渡し部に連設される、ことを特徴とする耐火被覆用軽量金属下地。
【請求項2】
前記架設部材の架け渡し部には雌型架け渡し部と雄型架け渡し部があり、
前記雌型架け渡し部はその長さ方向に沿った両側縁が略直角以下に内側に折り曲げられる一方、前記雄型架け渡し部は平板状であって、該雌型架け渡し部に該雄型架け渡し部が挿入されて摺動することにより、該架け渡し部の長さが調整可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の耐火被覆用軽量金属下地。
【請求項3】
前記隅用アングル部材のアングル鍔部はアングル面との挟角が90°以下となるように内側に折り曲げられてアングル鍔曲折部が形成され、該隅用アングル部材は所定の長さを有する第1の隅用アングル部材と該第1の隅用アングル部材と断面が相似形の所定の長さを有する第2の隅用アングル部材と、からなり、
前記第2の隅用アングル部材は前記第1の隅用アングル部材に挿入されて摺動することにより前記隅用アングル部材の全長が調整可能である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐火被覆用軽量金属下地。
【請求項4】
鉄骨柱と壁とが取り合う隅部に使用する前記隅用アングル部材のアングル鍔部は該壁に接する側のアングル鍔曲折部が不形成であって、
前記雌型架け渡し部および/または前記雄型架け渡し部が形成される一方の側とは異なる他方の側が前記固定部本体から平板状に延伸して該延伸部分が前記壁と前記隅用アングル部材との間に挟持されて前記架設部材が固定される、ことを特徴とする請求項3に記載の耐火被覆用軽量金属下地。
【請求項5】
鉄骨柱と壁とが取り合う隅部には略L字断面の軽量の壁固定アングルが該壁に固着され、該壁に固着される該壁固定アングルの一方のアングル面とは異なる他方のアングル面が平板状に延伸して前記雌型架け渡し部に挿入されて前記架設部材が固定される、ことを特徴とする請求項3に記載の耐火被覆用軽量金属下地。
【請求項6】
前記雌型架け渡し部の長さ方向に沿った両側縁の折り曲げられた挟角は略45°であって、該雌型架け渡し部に挿入される前記雄型架け渡し部および前記壁固定アングルの他方の側の長さ方向に沿った両側縁は挟角が鈍角となるように内側に折り曲げられて両側縁を除く平板状の部分が該雌型架け渡し部の平板状の部分に重ね合わされる、ことを特徴とする請求項5に記載の耐火被覆用軽量金属下地。
【請求項7】
鉄骨柱に対する耐火被覆材の被り厚が確保され得る位置に合わせて、または鉄骨柱面の凸部よりも外側の位置に合わせて固定された略L字断面の足元固定アングルと前記隅用アングル部材とは、該隅用アングル部材のアングル面を囲繞して上下方向に摺動する隅用アングル・足元固定アングル挟持金物により挟持されて固定される、ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の耐火被覆用軽量金属下地。
【請求項8】
L字断面の金属製頂部アングル部材が鉄骨柱の隅部に添設される前記隅用アングル部材間の頂部に架設されて掛着され、該頂部アングル部材の一方のアングル面は該隅用アングル部材のアングル面に重ね合わされ、該頂部アングル部材の他方のアングル面は上部に位置して鉄骨梁の隅部に添設される前記隅用アングル部材が載置され、
前記頂部アングル部材は鉄骨柱方向に出入する出入子を具え該出入子により鉄骨柱との離間距離が調整可能である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の耐火被覆用軽量金属下地。
【請求項9】
前記掛着は前記頂部アングル部材の両端部近傍に位置する掛着子と該頂部アングル部材のアングル面とで前記隅用アングル部材のアングル面を挟持することにより行われ、
前記出入子は前記頂部アングル部材の他方のアングル面上に凸設された出入子貫入孔に掴持されて固定される、ことを特徴とする請求項8に記載の耐火被覆用軽量金属下地。
【請求項10】
H形断面の鉄骨梁の隅部に添設される前記隅用アングル部材は該鉄骨梁のフランジから直接的または間接的に懸吊される梁用取付金物により支持され、該梁用取付金物は該フランジから懸吊されて下方に延伸する被懸吊部と該被懸吊部の延伸先に接続し該隅用アングル部材を固定する固定部とからなり、該固定部は該隅用アングル部材のアングル面の外側を囲繞する固定部本体と該固定部本体の両縁部または片縁部にあって折り曲げられて該隅用アングル部材のアングル面の側縁であるアングル鍔部を把持する把持子を具え、
前記H形断面の鉄骨梁の継ぎ手部分には前記梁用取付金物の固定部が上下に連接された梁用ダブル取付金物が該H形断面の鉄骨梁のフランジから直接的または間接的に懸吊され、該梁用ダブル取付金物により2本の前記隅用アングル部材が側面から見て段違いに支持されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の被覆用軽量金属下地。
【請求項11】
前記梁用ダブル取付金物の下部に位置する垂直方向の固定部の把持子はその両縁部が予め下方が開放されたレの字形に切り欠きされ略直角に内側に折り曲げられて隅用アングル部材のアングル鍔部を把持する、ことを特徴とする請求項10に記載の耐火被覆用軽量金属下地。
【請求項12】
前記梁用取付金物の被懸吊部および/または前記梁用ダブル取付金物の被懸吊部は前記鉄骨梁のフランジを挟持するフランジ挟持金物と該鉄骨梁のフランジとの間で挟着されて間接的に該鉄骨梁のフランジから懸吊される、ことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の被覆用軽量金属下地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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