説明

耐熱性ガラス繊維

本発明は、少なくともSiO、Al、TiOから成る耐熱性ガラス繊維に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
高度先端技術のサンドイッチ建築部品、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の複合材料の強度は、ガラス品質、従って複合材料を強化するのに使用するガラス繊維の品質によって特に左右される。ガラス繊維は、理化学的性質について、互いに非常に異なっている。要求が厳しい複合材料は、優れた理化学的性質を有するガラス繊維からのみ作製される。ガラス繊維の化学組成については、表1を参照されたい。
【0002】
(表1)ガラス繊維の組成

【0003】
Eガラス(E=電気(Electric))は、極少量のアルカリ酸化物(<2質量%)を含有し、良好な電気絶縁性を有するアルミノホウケイ酸ガラスである。Eガラス繊維は、特にプリント基板及び強化プラスチックを製造するのに適している。しかしながら、Eガラスの(変態温度で規定する)耐熱性は、摂氏680度未満であり、十分ではない。Eガラスの1つの重大な短所は、耐酸性が低い(耐酸性クラス4)点である。こうしたEガラスについては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10等の特許明細書に記載されている。
【0004】
R−ガラス(R=耐性(Resistance))は、石灰ケイ酸塩ガラス及びアルミノケイ酸塩ガラスであり、変態温度及び軟化点は夫々摂氏730度、950度である。同様なガラス、例えば“Supremax”ガラスを、該ガラスは膨張係数が低いため、温度計ガラスとして使用してもよい。R−ガラス繊維は、高い機械性や熱性が求められるあらゆる用途分野で使用されている。R−ガラス繊維は、高温でも引張強度がかなり高い。
【0005】
特許文献11に記載されたもの等のECRガラス(ECR=Eガラス耐腐食性(E−Glass Corrosion Resistance))は、アルカリ酸化物の割合が低い、ホウ酸を含有しない石灰アルミノケイ酸塩ガラスである。ECRガラス繊維は、耐酸性が高く、機械的及び電気的品質も良好である。ECRガラス繊維は、プラスチックを一層強化したい場合に使用されている。
【0006】
特許文献12に記載された、Advantex(登録商標)ガラスは、改良ECRガラスで、アルカリ酸化物の含有量が極めて少なく、理化学的性質を向上させたものである。この種の繊維には、長期に亘る温度耐性があり、摂氏740度程度まで耐えられる。
【0007】
Sガラス(S=強化(Strength))は、マグネシウムアルミノケイ酸塩ガラスである。該ガラスは、高度な機械的要求、特に高温用の特殊ガラスとして開発され(例えば、特許文献13で)、Alを10mol%超含有する。その他の高温ガラスについては、とりわけ、特許文献4、特許文献2、特許文献14に記載されている。
【0008】
最良なタイプのガラス繊維の特性について、Eガラスの特性と比較したものを、表2に示す。
【0009】
(表2)主要ガラス繊維の特性

【0010】
表2から、Sガラス繊維が最良な機械特性を有することが、分かる。また、Sがラス繊維は、極めて優れた耐化学性及び耐熱性も有する。従来のSガラスは、マグネシウムアルミノケイ酸塩ガラスであり、これは高度な機械的要求、特に高温での要求に対して、開発されたものである。このMgO−Al−SiO三成分系ガラスは容易に固化するが、その後熱処理すると結晶化及び相分離する傾向がある。Sガラスを熱処理すると、その結果、MgO及びAlを多く含むケイ酸塩ガラス滴下相が分離され、最終的に結晶化する。つまり、これは従来のSガラスやSガラス製製品全てに関する重大な短所である。このMgO−Al−SiO三成分系により、ムライト3Al・2SiO、フォルステライト2MgO・SiO、スピネルMgO・Al、コージライト2MgO・2Al・5SiO及びペリクレースMgO等の結晶化に繋がる可能性がある。
【0011】
相分離と結晶化とにより、繊維強度の著しい減少、脆化や破壊(横断的分裂)へと繋がる。温度変化に応じた繊維抵抗も、不十分なものとなる。別の重大な短所は、Sガラス繊維の購入価格が比較的高い点である。その他の点に関しては、かかるタイプの繊維は、僅かな用途で合理的に使用できるだけである。
【0012】
一層高度にプラスチックを強化する目的で使用する別の種類の繊維として、ホウ酸を含有しないAdvantex(登録商標)ガラス製のガラス繊維がある。Sガラスと比較すると、Advantexガラス繊維の強度は低く、耐熱性も低いものの、結晶化する傾向が比較的低い。
【0013】
ガラス繊維を製造するには、ガラスを溶解炉で特定の混合組成で溶解する。次に、溶融ガラスをスロート及びフィーダを用いてブッシングに給送する。ブッシングは、通常貴金属合金(主に白金ロジウム合金)製で、紡糸工程を正確に行う1繊維化装置のことである。ブッシングには、複数の先端部を備え、該先端部を使用して単フィラメントを引出し、該フィラメントが使用可能な場合に、数本を集束する。当然、溶融ガラスの品質は紡糸工程にとって極めて重要である。完全に均質な溶融塊体を加工するだけで、繊維引出し工程において、ガラス製造からの欠陥が無くなる可能性がある。小石や石膏等が溶融塊体内に存在すると、紡糸工程に悪影響を与える、或は多くの繊維が加熱状態で破壊される可能性があるために、完全に損傷してしまう。紡糸工程は、特定範囲の温度(所謂上限〜下限温度)でのみ実施可能であり、紡糸工程の最適安定性には、log η≒3.0(ηは単位dPas)で到達する。下限温度付近では、先端部での塊体の流れが、粘度が高くなるにつれて遅くなる。大きな引出し力で発生させる引出しバルブ内の張力が、より強くなる。下限温度付近での繊維引出し中に張力が高くなるため、ネットワーク内で以前に発生した歪みや脆弱な箇所が、フィラメントで“凍結”される。これにより、繊維強度が著しく減少し、ひいては特に紡糸工程が悪化する。繊維引出し力が高く、併せて溶融ガラス塊体の粘度が高いと、ブッシング内での該塊体への油圧により、先端ベースの変形へとも繋がりかねない。繊維を下限温度付近で引出す場合、加熱による損傷後紡糸を再始動させる工程に、若干長い時間がかかり、従ってガラス繊維製造の効率度が悪くなる。
【0014】
紡糸工程を上限温度付近で行う場合、先端部のリム(先端面)を集中的に加湿し、その結果引出しバルブ内で一定の“デッドゾーン”を作り、次に溶解塊体の滞留期間を長くして、先頭を形成してもよい。引出し工程の温度を高くする程、引出しバルブが大きくなるため、冷却期間が長くなり、従って塵粒子、水蒸気、反応ガスの攻撃を助長させてしまう。その結果、特に、紡糸工程を高空気湿度で実施した場合、強度が減少する。繊維を上限温度付近又は以上で引出すと、紡糸工程が不安定になる。引出しドラムへの若干の妨害(例えば、震え又は振動)がみられ、引出しバルブの振動を引き起し、繊維の早急な高温による破断に繋がる可能性がある。ガラス表面の張力が増すと、紡糸工程の安定効果が有り、従って表面張力が低いガラスと比べて引出し速度を速くできる。ガラス組成を変更することで、溶解ガラスの表面張力に影響を与えてもよい。
【0015】
ガラス繊維製造の技術工程中、繊維の冷却は、とりわけ重要である。引出されたガラス繊維を急速に、ガラス転移温度以下の温度まで、約30mm長さに亘り、冷却する必要がある。冷却温度は、1cm当り摂氏約200度(20000℃/m)又は約1000℃/msに達するかも知れない。この冷却段階を速く、集中的に行う程、ガラス状態が“凍結”し易く、最終的な繊維の機械特性が良好になる。更に、引出したガラス繊維を、引出しバルブの領域で集中的に冷却し、該領域の下で冷却櫛(フィンクーラー)又は冷却管を使用して、ガラス繊維冷却工程を強化する必要があり、場合によっては追加のウォータージェットノズルをブッシングの下に設置する。ガラスフィラメントに噴射する水には、冷却目的だけでなく、繊維の静的変化を軽減する目的もある。
【0016】
間接溶解法を、紡糸助剤(グリコール又はポリグリコールのような薬剤)で補助することが多く、紡糸助剤を引出しバルブ及び繊維形成領域に、気体状態で注入する。繊維冷却だけでなく、紡糸助剤も、引出しバルブの表面張力を増大させるのに役立ち、フィラメントに生じる静的変化を排除又は大いに減少させ、出来たてのガラス面を最初に保護する。繊維の冷却が不十分及び/又は不均一だと、ブッシングの飛走性、従って引出したガラス繊維の品質に影響が出てしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第3 876 481号
【特許文献2】米国特許第3 847 627号
【特許文献3】米国特許第2 334 961号
【特許文献4】米国特許第2 571 074号
【特許文献5】米国特許第4 026 715号
【特許文献6】米国特許第3 929 497号
【特許文献7】米国特許第5 702 498号
【特許文献8】欧州特許第0 761 619 A1号
【特許文献9】米国特許第4 199 364号
【特許文献10】米国特許第3 095 311号
【特許文献11】独国特許第69607614 T2号
【特許文献12】米国特許第5 789 329号
【特許文献13】国際公開第02/042233 A3号
【特許文献14】米国特許第4 542 106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、既知の織物繊維の欠陥が無く、更に優れた熱安定性を有する、新規の織物用ガラス繊維を開発し、市場に提供するタスクに基づくものである。かかる新規な繊維の種類では、機械特性に影響を与える長期の温度処理による結晶化の傾向があってはならない。同時に、同様なタイプの繊維と比べて、ガラスの理化学的性質を損なわずに、ガラス繊維の製造コストを大幅に削減することを意図するものである。その上、本新規タイプの繊維により、連続した工業生産においてガラス繊維製造の効率を増大させる。
【0019】
また、本発明の目的は新規な繊維を開発することであるが、該繊維は優れた理化学的性質を示すだけでなく、該新規な繊維を使用して製造した複合材料の機械特性を、本質的に向上させるに資するものである。この新規な繊維を、温度変化に対する耐性が高く、且つ耐屈曲性が高いものにする。特に、ガラスフィラメントの耐熱性が、摂氏750度超になるようにする。
【0020】
該繊維を作製するのに使用するガラスには、以下の耐化学性を有するものとする:
耐加水分解性 クラス1 (<0.1cm 0.01N HCl)
耐酸性 クラス1 (<0.7mg/dm
耐塩基性 ≦クラス2 (<175mg/dm
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的を、請求項1の特徴によって実現する。
【0022】
副請求項2乃至8では、本発明の耐熱性ガラス繊維の有利な実施形態について示し、本明細書では、実施例として記載したが、これに限定するものではない。
【0023】
本発明の意味における耐熱性ガラス繊維のガラス特性は、特に以下である:
− 高化学的強度:
耐加水分解性 クラス1 (<0.1cm 0.01N HCl)
耐酸性 クラス1 (<0.7mg/dm
耐塩基性 ≦クラス2 (<175mg/dm
− 耐熱性、特に温度耐性>750℃
− 特に24時間以上に亘る温度>750℃によって、特に<50%という低張力損失
− 良好な誘電特性、即ち誘電率が1MHzで最大6.5
− 温度変化に対する高耐性、即ち、300℃から室温まで冷却する最中に、少なくとも10μm繊維は横断方向に分裂しない。
【0024】
驚くべきことに、幾多の試験及び試用中に、特に上述した必要なガラス繊維特性を、該繊維を以下の組成のガラス製にすると、獲得できることが明らかになった:
SiO − 62.0〜66.0質量%
Al − 14.0〜16.4質量%
TiO − 0.8〜 1.2質量%
CaO − 10.0〜12.0質量%
MgO − 4.0〜 6.0質量%
ZnO − 0.8〜 1.5質量%
NaO+KO+LiO − 0.2〜 0.6質量%
CeO − 0.2〜 0.5質量%
TeO+HfO+La − 0.5質量%未満.
かかるガラス組成により、特に良好なガラス繊維の理化学的性質を提供できる。
【0025】
本発明のガラスに関する好適な設計によれば、該ガラスの組成を以下とする:
SiO − 64.6質量%
Al − 16.0質量%
TiO − 1.0質量%
Fe − 0.1質量%
CaO − 11.2質量%
MgO − 4.8質量%
ZnO − 1.2質量%
NaO+KO+LiO − 0.5質量%
CeO − 0.3質量%
TeO+HfO+La − 0.3質量%
【0026】
本発明の目的を、請求項9を特徴とする、本発明の耐熱性ガラス繊維をサイジング処理する方法で、更に達成する。
【0027】
副請求項10乃至12では、本発明の耐熱性ガラス繊維の有利な実施形態を示し、本明細書には実施例として記載したが、これらに限定するものではない。
【0028】
本発明の目的を、請求項13の特徴によるサイジング処理したガラス繊維により、更に達成する。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0029】
実験用溶解装置で、以下の組成のガラスを製造した:
SiO − 64.6質量%
Al − 16.0質量%
TiO − 1.0質量%
Fe − 0.1質量%
CaO − 11.2質量%
MgO − 4.8質量%
ZnO − 1.2質量%
NaO+KO+LiO − 0.5質量%
CeO − 0.3質量%
TeO+HfO+La − 0.3質量%
【0030】
この新規なガラスの変態温度は、摂氏770度で、軟化温度は、972℃であった。繊維化点は、log η=3.0(ηは粘度、単位dPas)で規定し、約1400℃であった。溶解塊体から引出し、本発明のサイジング剤で処理したロービング繊維では、単フィラメントの引張強度は4000MPaであった。
【0031】
本新規なタイプの繊維を試験してみると、驚くべきことに、本発明のガラス組成で作製した繊維は、一般的に知られるRガラス、ECRガラス、Advantexガラス繊維等の高温繊維と比較して、優れた応力−歪み挙動を備えることが分かった。本発明の繊維伸び率は、5%であった。
【0032】
このガラスで製造した繊維を、該繊維を樹脂で構成して複合材料を形成した時点で優れた理化学的性質を発現させるために、特殊なサイジング剤で処理すべきである。高分子マトリックスと適合するガラス繊維だけで、確実に強化プラスチック(GFRP)は優れた理化学的性質を有する。
【0033】
多数の試験から、繊維及び該繊維を使用して作製した複合材料の優れた理化学的性質は、本発明の繊維をロービング繊維製造用サイジング剤で処理する場合、特に発現するが、該サイジング剤は:
a)2.0〜4.0質量%のエチレン−ポリ酢酸ビニル共重合体
b)0.3〜0.7質量%のポリアミドアミド
c)0.1〜0.3質量%のポリビニルアルコールとポリエーテルの混合物
d)0.1〜0.3質量%のポリオレフィンワックス
e)0.4〜0.7質量%のカップリング剤
f)100質量%の残りを水、
で構成する。
【0034】
これらの性質には、特に:
繊維に関して:張力:4000 MPa
伸び率:5% (+/−0.2%)
24時間後に、600℃で損失する張力:50%
弾性率:84 MPa
ポリエステルを含有する複合材料に関して:
Eガラスと比較した張力:約+10%
Eガラスと比較した、沸騰水中での3日後の膨張率:約+6%
【0035】
このようにサイジングしたガラス繊維は、優れた一体性、弾性、極めて良好な張力(約4000MPa)と共に、優れた伸び率(5%)も、同様なタイプの繊維、例えばRガラス又はAdvantex(登録商標)ガラス等と比べて、備えている。製織工程中、本新規な繊維により、縦糸と横糸との優れた滑り止め品質及び切断性を確保できる。特に良好な適合性によって、これらの繊維で作製した複合材料は優れた強度値を有する。
【0036】
エポキシ樹脂系(エポキシ樹脂マトリックス)に対して、ガラス繊維を処理する際に、以下の化学組成のサイジング剤(PF1)を、使用してもよい。
サイジング剤 PF1
1)CHCOOH(60%) − 0.25質量%
2)Appretan 3588(55%) − 3.00質量%
3)Albosize GL(12.5%) − 1.60質量%
4)Arkofil CS(20%) − 1.00質量%
5)ポリプロピレンワックス PP−W(30%) − 0.40質量%
6)A1100 − 0.50質量%
7)水 − 93.25質量%
【0037】
以下の式を使用して、サイジング剤を混合する:
100kgの混合処理方法
1)水60kg+酢酸[CHCOOH(60%)]240gをレシーバとして使用する。
2)γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A−1100)0.5kgを、脱イオン水5.0kg+[CHCOOH(60%)]10gで、加水分解する。加水分解時間は約15分とする。
3)加水分解物溶液A−1100を添加する。
4)エチレン酢酸ビニル共重合体[Appretan 3588(55%)]3.0kgを水10kgと撹拌して添加し、調製する。
5)ポリアミドアミド[Albosize GL(12.5%)]1.6kgを添加して、調製する。
6)ポリビニルアルコールポリエーテル[Arkofil CS(20%)]1.0kgを、水6.0kgで薄めて添加し、調製する。
7)ポリプロピレンワックス分散物PP−W(30%)0.4kgを添加して、調製する。
8)残余水(12.25kg)+消泡剤(Surfynol 440)1〜2gを添加する。
9)サイジング剤を撹拌し、pH値を測定する。
【0038】
不飽和ポリエステル樹脂に対して、例えば以下の組成のサイジング剤(PF12)を使用してもよい:
サイジング剤PF12
1)CHCOOH(60%) − 0.20質量%
2)Appretan 3588(55%) − 2.80質量%
3)Albosize GL(12.5%) − 2.00質量%
4)Arkofil CS20(20%) − 2.00質量%
5)ワックスMichem 42035(35%) − 0.30質量%
6)A174 − 0.50質量%
7)水 − 92.20質量%
【0039】
下式を使用して、サイジング剤を混合する:
100kgの混合処理方法
1.水55kg+酢酸[CHCOOH(60%)]180gをレシーバとして使用する。
2.γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A174)0.5kg+CHCOOH(60%)20gを、高温脱イオン水3.5kgで、加水分解する。加水分解時間は約20分とする。
3.加水分解物溶液A174を添加する。
4.エチレンポリ酢酸ビニル分散物[Appretan 3588−55%]2.8kgを水10kgと撹拌して添加し、調製する。
5.ポリビニルアルコールポリエステル[Arkofil CS20−20%)2.0kgを添加して、調製する。
6.ポリアミドアミド(Albosize)2.0kgを添加して、調製する。
7.ポリオレフィンワックス(Michem 42035)0.3kgを添加して、調製する。
8.残余水(23.7kg)+消泡剤(Surfynol 440)約1gを添加する。
9.サイジング剤を撹拌し、pH値を測定する。
【0040】
固体状態の濃度が約2.8質量%のサイジング剤では、優れた繊維湿潤を、プラスチックマトリックスとの親水性を向上することで確保でき、従って最終製品を極めて良好な強度にするのに重要である。
【実施例2】
【0041】
実験室内で、以下の組成のガラスを溶融した:
SiO − 65.0質量%
Al − 15.6質量%
TiO − 1.0質量%
Fe − 0.1質量%
CaO − 11.0質量%
MgO − 5.0質量%
ZnO − 1.0質量%
NaO+KO+LiO − 0.5質量%
CeO − 0.4質量%
TeO+HfO+La − 0.4質量%
【0042】
本発明の上記ガラスの最も重要な固定点は:
変態温度 768℃
軟化温度 970℃
繊維化温度 1400℃、である。
繊維化点(log η=3)=繊維化温度=繊維を形成する温度
【0043】
該ガラスの耐加水分解性は、0.03cm 0.01N HClで、クラス2に分類される。また該ガラスの耐酸性(0.7mg/dm未満の溶出)は、クラス1である。耐塩基性(102mg/dmの材料消費)はクラス2に相当する。このガラスから引出したフィラメントを直径10μmとすると、その張力は3800MPaとなる。この引張試験で測定した伸び率は5%であった。このフィラメントを、サイジング剤PF1でコーティングした。
【実施例3】
【0044】
実験用溶解装置で、以下の組成の本発明のガラスを製造した:
SiO − 64.2質量%
Al − 16.2質量%
TiO − 1.0質量%
Fe − 0.1質量%
CaO − 11.6質量%
MgO − 4.6質量%
ZnO − 1.2質量%
NaO+KO+LiO − 0.5質量%
CeO − 0.3質量%
TeO+HfO+La − 0.3質量%
【0045】
該ガラスには以下の固定点を有した:
変態温度 775℃
軟化温度 975℃
繊維化温度 1390℃
【0046】
該ガラスの耐加水分解性は、0.05cm 0.01N HClで、(DIN ISO 719に従い)クラス1に分類される。また耐酸性(0.7mg/dm未満の値、及び/又はアルカリ剥離10μg/dm)も、クラス1である。測定した耐塩基性(材料消費100mg/dm)により、該ガラスは耐性クラス2に該当した。
【0047】
ガラス繊維を次に本発明のガラスから引出し、引出し工程中にコーティングした。使用したサイジング剤はPF12であった。繊維の直径を10μmとした。単フィラメントの張力は4200MPaであることが分かった。伸び率は5.0%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性ガラス繊維であって、該ガラス繊維には少なくとも
62.0〜66.0質量% − SiO
14.0〜16.4質量% − Al
0.8〜1.2質量% − TiO
10.0〜12.0質量% − CaO
4.0〜6.0質量% − MgO
0.8〜1.5質量% − ZnO
0.2〜0.6質量% − NaO+KO+Li
0.2〜0.5質量% − CeO
0.5質量%未満 − TeO+HfO+La
を含み、全ガラス繊維成分を合計して100質量%にすること、を特徴とするガラス繊維。
【請求項2】
16.5mol%未満のAlを含むこと、を特徴とする請求項1に記載のガラス繊維。
【請求項3】
64.6質量% − SiO
16.0質量% − Al
1.0質量% − TiO
0.1質量% − Fe
11.2質量% − CaO
4.8質量% − MgO
1.2質量% − ZnO
0.5質量% − NaO+KO+Li
0.3質量% − CeO2
0.3質量% − TeO+HfO+La
を含むこと、を特徴とする請求項1に記載のガラス繊維。
【請求項4】
CeO対TeO+HfO+Laの質量比を1:1とすること、を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のガラス繊維。
【請求項5】
ZnO対CeO質量比を2:1〜6:1(ZnO:CeO=2:1〜6:1)とすること、を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のガラス繊維。
【請求項6】
LiOの比率を0.25質量%未満とすること、を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のガラス繊維。
【請求項7】
以下の最低耐化学性:
耐加水分解性 クラス1(<0.1cm 0.01N HCl)
耐酸性 クラス1(<0.7mg/dm
耐塩基性 ≦クラス2(<175mg/dm
を有すること、を特徴とする請求項1に記載のガラス繊維。
【請求項8】
2.0〜3.0質量%の固体材料部分を備える水性サイジング剤で処理でき、該サイジング剤を:
a)2.0〜4.0質量%のエチレン−ポリ酢酸ビニル共重合体
b)0.3〜0.7質量%のポリアミドアミド
c)0.1〜0.3質量%のポリビニルアルコールとポリエーテルの混合物
d)0.1〜0.3質量%のポリオレフィンワックス
e)0.4〜0.7質量%のカップリング剤
f)100質量%の残りを水、
で構成すること、を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のガラス繊維。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れかに記載のサイジング剤で前記ガラス繊維を処理し、続いて熱処理を施す方法であって、前記ガラス繊維を、2.0〜3.0質量%の固体材料含有量を備える水性サイジング剤で処理し、該サイジング剤を:
a)2.0〜4.0質量%のエチレン−ポリ酢酸ビニル共重合体
b)0.3〜0.7質量%のポリアミドアミド
c)0.1〜0.3質量%のポリビニルアルコールとポリエーテルの混合物
d)0.1〜0.3質量%のポリオレフィンワックス
e)0.4〜0.7質量%のカップリング剤
f)100質量%の残りを水、
で構成すること、を特徴とする方法。
【請求項10】
水性サイジング剤を前記ガラス表面に塗布装置、特にギャレット又はクッション塗布装置で塗布し、前記次なる熱処理を小室乾燥装置又は高周波乾燥装置内で、24時間以上緩和した後、施すこと、を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理を、小室乾燥装置又は高周波乾燥装置内で、100°C〜180°Cの温度で施すこと、を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
これらの結果、熱処理後の燃焼に関する損失(LOI)が、0.2〜0.8質量%となること、を特徴とする請求項9乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項13】
請求項9乃至12の何れかに記載の方法で製造したサイジング処理したガラス繊維。
【請求項14】
ロ−ビング、単糸又は双糸としての、請求項13に記載したサイジング処理したガラス繊維の使用。

【公表番号】特表2010−535145(P2010−535145A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518557(P2010−518557)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006233
【国際公開番号】WO2009/018944
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510010300)エス.ディー.アール.バイオテック ヴェルファウレンステクニック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】