説明

耐熱構造複合材料でつくられる部品の製造方法

本発明は、耐熱構造複合材料部品を作製する方法であって、ワイヤまたはケーブルからつくられかつ炭素またはセラミック前駆体を含有する団結組成物で含浸された繊維プリフォームをつくることと、熱分解により前駆体を炭素またはセラミックへと転化させることと、繊維プリフォームを化学気相浸透によって緻密にすることとを含む方法に関する。団結組成物は平均粒径が200ナノメートル未満の粉末の形態にある耐熱性固体フィラーをさらに含有しかつ熱分解後に団結固体相を残し、前記団結固体相では、前駆体に由来する炭素またはセラミックがプリフォームの見かけ体積の3%ないし10%の間にある体積を占め、一方固体フィラーがプリフォームの見かけ体積の0.5%ないし5%の間にある体積を占める。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の背景
本発明は耐熱構造複合材料部品、特には航空の分野または宇宙の分野における使用のための部品を作製することに関する。このような部品の例はガスタービン航空機用エンジン用のアフターボディー部材、たとえば多流式エンジンのミキサもしくは補助ノズルまたはセントラルボディーまたは「プラグ」である。
【0002】
耐熱構造複合材料は、それらを構造部品を構成するのに好適にするそれらの機械的特性と、これら特性を高温において維持するそれらの能力とを特徴とする。周知されている耐熱構造複合材料は、炭素繊維強化材を炭素マトリックスと共に含む炭素/炭素(C/C)複合材、ならびに耐熱性繊維強化材(炭素繊維またはセラミック繊維)およびセラミックマトリックスを含むセラミックマトリックス複合材料(CMC)である。CMCは高温での非常に優れた機械的強度だけでなく、腐食性環境(酸化剤および水分の存在)に耐える優れた能力をも示す。それゆえに、動作中に一般に400℃ないし750℃の範囲内にある温度において曝される航空機用エンジン用のアフターボディー部材のためのCMCの使用は既に提案されている。
【0003】
耐熱構造複合材料部品を作製する1つの知られている方法は以下の工程を含む:
・繊維プリフォームを、炭素前駆体またはセラミック前駆体、一般には溶媒によって任意に希釈された樹脂を含有した団結組成物で含浸された炭素またはセラミックのヤーン(またはトウ)からつくり出す工程;
・炭素前駆体またはセラミック前駆体を熱分解によって変化させる工程;およびその後
・プリフォームを化学気相浸透(CVI)によって緻密にする工程。
【0004】
含浸繊維プリフォームをつくるために、繊維テクスチャの1つ以上のプライ、たとえば三次元(3D)織布を使用し、団結組成物で含浸させ、この繊維テクスチャをたとえば型合わせ成形具に掛けることによって付形し、それにより、作製されるべき部品の形状に対応した形状を有するプリフォームが得られる。団結組成物の樹脂は硬化されその後熱分解されて、プリフォームを団結させるのに役立つ固体の炭素またはセラミック残留物を残す。団結されたプリフォームはCVIによって得られる炭素またはセラミックマトリックスによって緻密にされる。周知の方法では、CVI緻密化は、団結されたプリフォームを反応チャンバ内に置き、1種以上の炭素前駆体またはセラミック前駆体を含有する反応ガスを、反応チャンバ内の条件、特には圧力および温度の条件であって、この反応ガスがプリフォームの細孔内へと拡散しそこで炭素またはセラミックの固体堆積物をこの反応ガスの成分のうちの1種以上の分解によってまたは複数のそれの成分間の反応によって形成することを可能にするように選択される条件で、このチャンバへと導入することによって行われる。
【0005】
団結組成物での含浸は、良好な団結に必要な量の固体残留物を熱分解のあとに得るのに十分となるように行われる必要がある。用語「良好な団結」は、ここでは、閾値に達するかまたはこれを僅かに超える繊維プリフォームの部分的な緻密化を意味するように使用され、前記閾値は、これを超えると、プリフォームが、それを保持する成形具を必要とせずに、単独でその形状を維持しおよび、必要な場合には処理されてもよいという値である。出願人は、十分な団結は、体積パーセント(すなわち、固体残留物によって占められるプリフォームの見かけ体積のパーセント)が12%ないし14%である熱分解後の固体残留物で一般に得られることを見出した。
【0006】
この方法においてセラミック前駆体樹脂での液体技術を使用する団結とCVIによる緻密化とによって得られたCMC部品に対して行われた機械的試験は、熱機械的な観点から良好である結果を与えたが、そのためには材料のヤング係数に関する向上を達成することが望ましいであろう。出願人は、団結組成物の必要とされる量のせいで、ヤーンの間の空間の大部分が熱分解からの固体残留物で占められ、それにより与えられる機械的特性がCVIによって得られるセラミックマトリックスによって提供されるものほど良好ではないことを見出した。
【0007】
本発明の目的および概要
本発明の1つの目的は、液体技術による団結とCVIによる緻密化とを関連付けながらも、力学的ポテンシャルが非常に高まった耐熱構造複合材料部品を作製する方法を提案することにある。
【0008】
この目的は、耐熱構造複合材料部品を作製する方法であって、ヤーンまたはトウから繊維プリフォームを形成することと、この繊維プリフォームをその形状で団結させることと、その後団結された繊維プリフォームを化学気相浸透によって緻密にすることとを含み、団結を繊維プリフォームのヤーンまたはトウに炭素前駆体またはセラミック前駆体を含有する団結組成物を含浸させることと、前記炭素前駆体またはセラミック前駆体を熱分解によって変化させることとによって行い、ここで、ここで、平均粒径が200ナノメートル未満の粉末の形態にある耐熱性固体フィラーをさらに含有しかつ熱分解後に団結固体相を残す団結組成物が使用され、前記団結固体相では、前記前駆体に由来する炭素またはセラミックが前記プリフォームの見かけ体積の3%ないし10%に相当する体積を占めおよび前記固体フィラーがプリフォームの見かけ体積の0.5%ないし5%に相当する体積を占める方法によって達成される。
【0009】
団結液体組成物中でのサブミクロンフィラーの存在は以下の利点を提供する:
・団結組成物は低ポロシティーのヤーン内またはトウ内の空間に浸透しにくく、それによりこれら空間の大部分をCVI緻密化のために開放しおよびその結果各ヤーンまたはトウにおいて高度な機械的特性を有する「ミニ複合材」を得ることを可能にする;および
・熱分解からの固体残留物はフィラーの存在により強化され、それによりそれの機械的特性およびそれの緻密化容量が増加する。
【0010】
結果的に、上で説明した技術水準と比較すると、良好な団結を達成するのに、団結組成物中の少量の炭素前駆体またはセラミック前駆体で足り、プリフォーム中での団結相の熱分解からの固体残留物の体積パーセントをそれが3%ないし10%の範囲内に、および好ましくは3%ないし6%の範囲内にあるように減らすことが可能である。
【0011】
団結組成物中の固体フィラーの量は、環境的および作業的問題を引き起こしうるその粘性の増加または大量の溶媒の使用を避けるために、過剰であってはならない。プリフォーム中での団結相からの固体フィラーの体積パーセントはたとえば0.5%ないし5%に範囲内にあり、および好ましくは0.5%ないし3%の範囲内にある。
【0012】
固体フィラーの粒径は、団結組成物を使えるようにした際に起こる、固体フィラーがヤーンまたはトウの周縁部に凝集しおよび液体の炭素前駆体またはセラミック前駆体が単独でヤーンまたはトウ内に浸透するフィルタリング現象を避けるのに十分に小さくなるように選択される。たとえば、この粒径は平均で200ナノメートル未満か、またはさらには100ナノメートル未満である。
【0013】
前記方法のある特徴によると、繊維プリフォームは、ヤーンまたはトウから形成された繊維テクスチャを型合わせしこれに団結組成物を含浸させることによってつくられる。団結組成物中の炭素前駆体またはセラミック前駆体が樹脂である場合、有利には樹脂が予備硬化された後に繊維温度に適合される。
【0014】
前記方法のもう1つの特徴によると、相間層が、団結組成物での含浸の前に、ヤーンまたはトウの繊維に対しての化学気相浸透によって形成される。
【0015】
前記方法のさらにもう1つの特徴によると、第1の相間層が、団結組成物による含浸の前に、ヤーンまたはトウの繊維に対しての化学気相浸透によって形成され、および第2の相間層が、繊維プリフォームの団結の後であって団結された繊維プリフォームの緻密化の前に形成される。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な表示として挙げられ、添付の図面を参照している以下の説明を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明のある実施における耐熱構造複合材料からつくり出される部品の作製方法の連続工程を示している。
【図2】図2は、航空機用エンジンのノズル部材を作製するための繊維プリフォームの型合わせを示した、高度に概略化された軸方向の半断面図である。
【図3】図3は、本発明のもう1つの実施における耐熱構造複合材料からつくり出される部品の作製方法の連続工程を示している。
【図4】図4は、本発明の方法によって得られるCMCのサンプルの縁部でのおよび中心での光学像を示している。
【図5】図5は、従来技術の方法によって得られるCMCのサンプルの中心での光学像を示している。
【0018】
実施の詳細な説明
本発明の方法の実施を、CMCタイプの耐熱構造複合材料からつくり出される部品の製造に関して、図1を参照しながら以下に説明する。
【0019】
この方法の工程10は、炭素繊維またはセラミック繊維からつくり出される繊維テクスチャを作ることにあり、ここから製作されるべき部品のためのプリフォームが調製されうる。
【0020】
繊維テクスチャは炭素繊維もしくはセラミック繊維のまたは炭素前駆体繊維もしくはセラミック前駆体繊維からなるヤーンまたはトウ(以下、「ヤーン」と呼ぶ)から形成され、炭素前駆体またはセラミック前駆体は繊維テクスチャが形成された後に熱処理によって変えられる。
【0021】
繊維テクスチャは織布、特には三次元(3D)製織によって得られ、それにより互いに連結したヤーンの複数の層を有する比較的大きな厚さの繊維テクスチャを得ることを可能にする織物の形態にあってもよい。
【0022】
繊維テクスチャを形成するのに、他の繊維加工、たとえば:一方向繊維のシートを様々な方向で重ね合わせて互いに接続することによって多方向シートを編組すること、編成することまたは形成することなどを使用でき、前記接続はたとえば縫い合わせによって行われる。
【0023】
前記方法のもう1つの工程20は、液体の形態にあり、セラミック前駆体、典型的には樹脂をセラミック粉末の形態にある固体フィラーと共に含む団結組成物を調製することにある。団結組成物は固体フィラー用の分散剤と、樹脂用の溶媒と、分散剤用の溶媒(共通の溶媒を使用できない場合)とをさらに含有してもよく、溶媒の量は繊維テクスチャに含浸するのに適した粘度を組成物に与えるように調節される。
【0024】
セラミック前駆体、特には樹脂の形態にある前駆体は周知されている。たとえば、炭化ケイ素(SiC)前駆体樹脂はポリシロキサン樹脂、ポリシラザン樹脂、およびポリカルボシラン樹脂から選択されてもよい。
【0025】
固体フィラーは1種以上のセラミック粉末、たとえば炭化ケイ素SiC、炭化チタンTiC、炭化ホウ素B4C、および窒化ホウ素BNの粉末から選択されるものからなる。前記方法のある特徴によると、粒径は、選択されるセラミック粉末のために利用可能な粒径に依存するが、比較的小さくなるように、平均で200ナノメートル未満か、または好ましくは100ナノメートル未満になるように選択される。
【0026】
用語粒径は粉末の粒子の平均の大きさまたは直径を意味するようにここでは使用される。
【0027】
工程30では、繊維テクスチャに団結組成物が含浸される。団結組成物中のセラミック前駆体およびセラミック粉末のそれぞれの量、ならびにさらには繊維テクスチャへと導入される団結組成物の量は、前駆体の固体セラミック残留物への変化の後に繊維プリフォームが以下を示すように選択される:
・プリフォーム中でのセラミック残留物の体積パーセントが3%ないし10%の範囲内、好ましくは3%ないし6%の範囲内にある;および
・プリフォーム中でのセラミック粉末の体積パーセントが0.5%ないし5%の範囲内、好ましくは0.5%ないし3%の範囲内にある。
【0028】
用語「体積パーセント」はプリフォームの見かけ総体積の百分率として表される占有割合を意味するようにここでは使用される。
【0029】
繊維テクスチャは、ブラシを用いた塗布によってかまたは散布によってかまたは、浴中での,場合によって減圧下での,浸漬によってか、または減圧しながら団結組成物を注入することによって含浸されうる。
【0030】
得られるべき団結されたプリフォームの見かけの体積と使用されるセラミック前駆体に対する熱分解からの固体残留物の体積割合とを知ることによって、プリフォーム中でのセラミック残留物の所望される体積パーセントを得るのに使用することが必要な前駆体の量を決定することは容易である。得られるべき団結されたプリフォームの見かけの体積を知ることによって、プリフォーム中でのセラミック粉末の所望される体積パーセントを得るのに使用することが必要なセラミック粉末の量を決定することも容易である。使用されるべきセラミック前駆体のおよびセラミック粉末の量を知ることによって、粉末が適切に処理されるのを確実にするためのおよび繊維テクスチャに含浸するのに適した粘度を団結組成物に与えるための任意の分散剤のおよび溶媒の量を容易に決定できる。
【0031】
含浸後、乾燥工程40(あらゆる溶媒を除去する)が行われてもよく、その後、セラミック前駆体樹脂が予備硬化される予備硬化工程50が行われる。用語樹脂の「予備硬化」は、樹脂を硬化されていない樹脂と完全に硬化された樹脂との間の中間の状態にすることを意味するように使用される。このアイデアは、繊維テクスチャを型合わしてそれにより製作されるべき部品用のプリフォームをつくることができるのに必要とされる変形性を維持しながら、より大きな剛性をこの繊維テクスチャに与えるものである。したがって、変形後のそれの形状を型合わせされている間中維持する向上した能力を繊維テクスチャに与えることと、任意の不連続接続(縫い合わせ、埋め込み接続部材)を使用できるようにすることを容易にすることとが可能であり、このような予備硬化が全ての状況において有用であるわけではないことは理解される。
【0032】
作製されるべき部品用の繊維プリフォームの調製(工程60)は、含浸された繊維テクスチャからプライまたはパネルを切り出すことと、作製されるべき部品の形状に対応する形状を与える成形部材上でそれらを付形することとを含みうる。なお、このようなプライまたはパネルを切り出した後に繊維テクスチャを含浸させてもよい。
【0033】
繊維プリフォームに与えられるべき形状の複雑さに、大きなムラを生じさせることなく変形できる繊維テクスチャの容量に、および繊維プリフォームの厚さに応じて、それの調製は以下の作業のうち1つ以上を含んでもよい:
・繊維テクスチャプライを成形部材上に掛ける(付形する);
・複数のプライを重ね合わせて掛ける,これらは繊維プリフォームが多様な厚さを示す場合には同様の大きさを有する必要はない,;および
・繊維テクスチャパネルを切り出して、これらパネルを成形部材上にそれらの縁部を隣接させた状態、場合によってはそれらの縁部を互いに重ね合わせた状態で据える。
【0034】
重ね合わされたプライまたは繊維テクスチャパネルの隣接する縁部は、縫い合わせによりまたは埋め込み接続部材たとえばヤーンにより互いに接続できる。
【0035】
繊維プリフォームは、型合わせ成形部材上で、ダイアフラム、たとえばバッキングモールドを形成しプリフォームの外部表面にあてがわれるエラストマーダイアフラムを用いて所望される形状に保持できる。
【0036】
図2は、たとえばバイパスガスタービンを具備する航空機用エンジンのためのCMCからなる補助ノズルの下流部材を作製するための繊維プリフォーム100を示している。プリフォーム100は繊維テクスチャの1枚以上のプライをマンドレル102上に掛けることによって調製され、それはエラストマーダイアフラム104を用いて所望される形状に保持される。
【0037】
切り出されたパネルおよびプライを掛けて接続する作業を必要とするより複雑な形状の繊維プリフォームは、バイパスガスタービン航空機用エンジンのローブ型ミキサに関する特許出願PCT/FR2008/050207に記載されているように調製できる。
【0038】
繊維テクスチャを調製したあと、セラミック前駆体樹脂の硬化を完了させる(工程70)。
【0039】
その後、繊維プリフォームが、樹脂を熱分解させるための熱処理(工程80)に供すために、型合わせ成形具から取り外されうる。このような熱処理は700℃ないし1000℃、たとえば約900℃の温度で、1時間ないし数時間にわたって通常行われる。
【0040】
その後、団結組成物中に含有された前駆体の熱分解からのセラミック残留物によって団結されている繊維プリフォームが得られ、このセラミック残留物自体はセラミック粉末によって強化されている。
【0041】
その後、このようにして団結された繊維プリフォームはCVIによりセラミックマトリックスで緻密にされる(工程90)。多孔質基材をセラミックマトリックスで緻密にするためのCVIプロセスは周知されている。有利には、この緻密化はセラミックマトリックスによって行われ、このマトリックスは、少なくとも部分的に自己修復性である、すなわち利用温度でペースト状になることによりこのマトリックス中のあらゆるクラックを塞ぐことができるものである。セラミックマトリック、特には自己修復性マトリックスを形成する方法は、たとえばUS5965266、US6068930およびUS6291058に記載されている。
【0042】
なお、B4C粉末が団結された組成物の固体フィラー中に存在している場合、この粉末は酸素の存在下でガラスを形成することによって自己修復機能に寄与するであろう。
【0043】
CVI緻密化は団結組成物のセラミック前駆体を熱分解させるための温度よりも高い温度で行われるので、工程80および工程90は、CVI緻密化の開始の前に温度を上昇させながら熱分解を行うことによって同じオーブン内で互いに連続して行われてもよい。
【0044】
上で述べたように、本発明の方法は、液体技術を使用する既知の団結プロセスと比較すると:
・団結組成物中のセラミック前駆体のより少ない量;および
・CVIによって得られるセラミックマトリックスのために利用可能なヤーン内部のより大きな体積
で有効な団結を得ることができる点を特徴とする。
【0045】
これは、比較的小さな粒径のセラミック粉末の形態にある固体フィラーの団結組成物中における存在の結果であり、このフィラーは:
・団結組成物中に含有されるセラミック前駆体残留物を強化する機能を提供しおよびそれにより団結容量を向上させる;および
・団結組成物、特にはそれが含有するセラミック前駆体がヤーン内の空間(ヤーンの内部体積)へと浸透するのがより困難なことを確実にする;しかしながら、この目的のためには、上述したように、団結組成物をフィルタリングするヤーンの効果を避けるのに、固体フィラーの粒径が比較的小さいことが必要である。
【0046】
本発明の方法のもう1つの実施を図3に示しており、この他方の実施は、プリフォームが調製された後に繊維テクスチャが含浸される点で図1のものと異なる。
【0047】
図1の方法の工程10および20に類似した、繊維テクスチャをつくる工程および団結組成物を調製する工程110および120が存在する。
【0048】
工程130では、繊維プリフォームが乾燥繊維テクスチャのプライおよび/またはパネルから、図1の方法の工程60を参照して上で説明したものと類似した方法で調製される。
【0049】
工程140では、繊維プリフォームが団結組成物によって含浸される。含浸はブラシを使用することによってまたは散布によってまたは浴中における,場合によって減圧下での,浸漬によって、または減圧をしながら団結組成物を注入することによって行われてもよい。最後の場合、図2に示すように、プリフォーム100、マンドレル102、およびダイアフラム104からなるアセンブリがジャケット106内に据えられうる。ジャケット106の内部体積が減圧源に接続された状態で、団結組成物が注入される。ダイアフラム104の変形性の程度に依存するが、繊維プリフォームがこのプリフォーム中の繊維の体積パーセントを高めるように同時に圧縮されてもよい。
【0050】
任意の乾燥(工程150)と団結組成物中に含有されたセラミック前駆体樹脂の硬化(160)のあと、繊維プリフォームが、図1の方法の工程80および90に類似した熱分解の工程およびCVI緻密化の工程170および180の前に、型合わせ成形具から取り外されうる。
【0051】
上の説明では、CMC部品の作製について検討している。
【0052】
しかし、本発明の方法は、C/C複合材料からつくられる部品を作製するのにも同様に首尾よく使用できる。このような状況下では、繊維テクスチャは炭素繊維からつくられおよび団結組成物は液体の形態にある炭素前駆体、典型的には樹脂,場合により溶媒で希釈されている,と、好ましくは炭素粉末の形態にある固体フィラー、たとえばダイアモンドフィラーまたはカーボンブラックとを含有し、セラミック粉末の形態にある固体フィラーを任意に使用できることが理解される。前記団結組成物は炭素粉末用の分散剤と任意にこの分散剤用の溶媒とをさらに含有してもよい。
【0053】
炭素前駆体樹脂は周知されている。例として、エポキシ樹脂、フラン樹脂、またはフェノール樹脂から選択される樹脂を使用できる。炭素前駆体としてピッチを使用することもできる。
【0054】
上記のとおり、固体フィラーは200ナノメートル未満、およびこの好ましくは100ナノメートル未満の平均粒径を示す。加えて、団結組成物中の炭素前駆体および固体フィラーの量も、炭素前駆体が熱分解された後に、団結された繊維プリフォーム中での前記前駆体の熱分解からの固体残留物の体積パーセントが3%ないし10%の範囲内、好ましくは3%ないし6%の範囲内にあり、プリフォーム中での固体フィラーの体積パーセントが0.5%ないし5%の範囲内、および好ましくは0.5%ないし3%の範囲内にあるように選択される。
【0055】
繊維テクスチャの繊維とCMCまたはC/C材料のマトリックスとの間に相間が提供される場合がある。既に知られているように、CMC材料では、このような相間はマトリックスを通してこの相間に到達するクラックの底部での応力を緩和して、繊維を破断させる影響を及ぼすこの繊維を通してのクラックの広がりを防ぐまたは遅らせることができる材料であることにより、脆性を低減させる機能を有しうる。例として、相間を構成する材料は熱分解炭素(PyC)、窒化ホウ素(NN)、またはホウ素をドープした炭素(BC、たとえば5原子%ないし20原子%のホウ素を有し、残部がCであるもの)である。C/C複合材料では、相間は、特にこの相間がホウ素、たとえばBNまたはBCを含有している場合、酸化に耐える能力を向上させるのに有用であろう。
【0056】
有利には、相間は小さな厚さの、たとえば10ナノメートル(nm)ないし100nmの範囲内にある、または10nmないし50nmの範囲内にある厚さの、団結組成物での含浸の前にCVIによって繊維テクスチャの繊維上に堆積される第1の層と、たとえば100nm以上の厚さを有し、団結組成物中のセラミック前駆体または炭素前駆体の熱分解の後であって緻密化の前に堆積される第2の層とから形成される。第1の相間層の小さな厚さは、所望される形状を有する繊維プリフォームを得るのに十分な繊維テクスチャの変形する容量を維持するのに役立つ。第2の相間層は繊維プリフォームの繊維と熱分解後の団結組成物の残留物の粒子とを覆う。2つの相間層が同じ材料からつくられる必要はない。熱分解の工程、第2の相間層を形成する工程、およびCVI緻密化の工程は同じオーブンで互いに連続して行われてもよい。
【0057】
相間をこのように2つの層としてつくることは2008年7月21日に出願された本出願人の仏国特許出願第0854937号において説明されており、その出願内容は参照によりここに組み込まれる。
【0058】
本発明の方法の実施例を以下に説明する。
【0059】
例1(団結レベルの評価)
C繊維の繊維テクスチャを、日本の供給業者Tenaxから「NM5 Roving HTS Fibers」という名称で供給されているC繊維ヤーンの多層3D製織によってつくった。得られたC織物は約4ミリメートル(mm)の厚さを示した。それらを減圧下で約1600℃の温度で約30分(min)間にわたって熱処理した。
【0060】
厚さが約30nmのPyCの第1の相間層をCVIによってメタンを含有する反応ガスを使用して繊維テクスチャの繊維上に堆積させた。
【0061】
ドイツの供給業者Wacker Chemieによって「MK」という参照で供給されているポリシロキサン樹脂の形態にあるSiC前駆体と、約150nmの平均粒径を有するB4C粉末か、または約50nmの平均粒径を有するSiC粉末とを含有する団結組成物を、以下のように実行することによってつくった:
・B4C粉末またはSiC粉末をポリエチレンイミンからなる分散剤とこの分散剤用の溶媒(エタノール)との混合物中に分散させ;
・ポリシロキサン樹脂用の溶媒、具体的にはメチルエチルケトン(MEK)を添加し;および
・ポリシロキサン樹脂を添加する。
【0062】
繊維プリフォームが形成されかつ熱分解された後の前駆体樹脂からのSiCとB4CまたはSiC粉末とによって団結されたプリフォーム中での体積パーセントが以下の表1に詳述されたようなものとなるような量のポリシロキサン樹脂およびB4CまたはSiC粉末を用いて、様々な団結組成物をつくった。ポリシロキサン樹脂の希釈率xも示しており、ここではxは
【数1】

【0063】
に等しく、ここでwrは樹脂の重量でありおよびwsは溶媒の総重量である。
【0064】
C織物に団結組成物を含浸させて乾燥させた後、温度を約140℃へと約2時間(h)かけて上昇させることによってSiC前駆体樹脂を予備硬化させた。
【0065】
プリフォームを付形した後、温度を約200℃へと約20時間かけて上昇させることによって樹脂の硬化を終わらせ、硬化した樹脂をオーブン内で温度を約900℃へ約3時間かけて上昇させることによって熱分解させた。
【0066】
熱分解からのSiC残留物によって団結され、B4CまたはSiC粉末が入っている繊維プリフォームをその後試験した。
【0067】
使用した様々な団結組成物について、表Iは、希釈比、セラミック固体残留物の体積パーセント、セラミック粉末の性質および粒径、粉末の体積パーセント、熱分解の重量収率(熱分解の前であって硬化の後のものと比較した熱分解後の重量パーセント)ならびに得られた団結レベルを示している。団結レベルは以下のように評価した:
−1:辛うじて良好な団結
0:優れた団結
+1:非常に優れた団結
+2:プリフォームが非常に堅く、団結は有効であるが、過度であると見なされうる。
【0068】
比較として、同様のC織物を使用し、固体フィラーを何ら含まなかった点および団結されたプリフォーム中での熱分解SiC残留物の体積パーセントが12%となる量のSiC前駆体樹脂を含んでいた点で他の組成物と異なる団結組成物を使用して得られた類似したプリフォームについて、従来技術を使用した団結によって得られた熱分解重量収率および団結レベルを表の第1行に示す。
【表1】

【0069】
なお、本発明の団結組成物を用いて得られる団結レベルは非常に良好である、すなわちそれは、従来技術の組成物を用いて得られるものよりも十分に低いSiC残留物体積パーセントを有する団結組成物を用いたとしても、プリフォームを変形なしに処理することを可能にする。
【0070】
例2
CMC部品を以下のようにつくった。
【0071】
C繊維の繊維テクスチャを、日本の供給業者Tenaxから「NM5 Roving HTS Fibers」という名称で供給されているC繊維ヤーンの多層3D製織によって得た。得られた織物は約4.5mmの厚さを有していた。それらを、減圧下で約1600℃の温度で約30min間にわたって熱処理した。
【0072】
厚さが約30nmの第1のPyC相間層をCVIによってメタンを含有した反応ガスを使用して繊維テクスチャの繊維上に堆積させた。
【0073】
ドイツの供給業者Wacker Chemieによって「MK」という参照で供給されているポリシロキサン樹脂の形態にあるSiC前駆体と約50nmの平均粒径を有するSiC粉末とを含有する団結組成物を、以下のように実行することによってつくった:
・SiC粉末をポリエチレンイミンからなる分散剤混合物とこの分散剤用の溶媒(エタノール)とに分散させ;
・ポリシロキサン樹脂用の溶媒、具体的にはMEKを添加し;および
・ポリシロキサン樹脂を3/10の希釈比で添加する。
【0074】
プリフォームを形成したのち、温度を約200℃へと約20hかけて上昇させることによって樹脂を硬化させ、硬化した樹脂をオーブン内で温度を900℃へと約3hかけて上昇させることによって熱分解させた。
【0075】
このようにして団結したプリフォームをCVIによってセラミックマトリックスで緻密にし、CVI後、厚さが約200nmに等しくおよびCVIによって得られた第2のPyC相間層が形成した。
【0076】
熱分解および緻密化の工程は同じオーブン内で互いに連続して行った。
【0077】
団結相の量および成分は、ポリシロキサン前駆体から得られるセラミックが団結されたプリフォーム中の約6%の体積パーセントに相当する体積を占有しおよびSiC粉末が約2%の体積パーセントに相当する体積を占有している団結固体相を熱分解後に残すように選択した。
【0078】
材料の縁部および中心(コア)に位置した領域において、形態学的分析を行った。図4は得られた画像を示しており、中心領域についての縮尺が異なる2つの画像を含んでいる。
【0079】
団結相(濃い灰色)はヤーンの内部にはないが、CVIによって得られたセラミック相(淡い灰色)が著しい量でそこにあることがわかり得る。濃い方の部分は残留細孔である。
【0080】
例3(比較)
比較として、手順は、従来技術のように、固体フィラーを何ら含んでおらずそれによりプリフォーム中の12%の体積割合に相当する体積を占有する団結固体相を残す団結組成物を使用した以外、例2と同様であった。
【0081】
材料の縁部および中心(コア)に位置した領域において、形態学的分析を行った。図5は異なる縮尺で得られた画像を示している。
【0082】
団結相の存在をヤーンの内側で認めることができ、図4と比較して、CVIによって得られるセラミックマトリックスの存在は少なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱構造複合材料部品を作製する方法であって、ヤーンまたはトウから繊維プリフォームを形成することと、前記繊維プリフォームをその形状で団結させることと、その後団結された前記繊維プリフォームを化学気相浸透によって緻密にすることとを含み、前記団結を、前記繊維プリフォームの前記ヤーンまたはトウに炭素前駆体またはセラミック前駆体を含有する団結組成物を含浸させることと、前記炭素前駆体またはセラミック前駆体を熱分解によって変化させることとによって行い、ここで、平均粒径が200ナノメートル未満の粉末の形態にある耐熱性固体フィラーをさらに含有しかつ熱分解後に団結固体相を残す団結組成物が使用され、前記団結固体相では、前記前駆体に由来する炭素またはセラミックが前記プリフォームの見かけ体積の3%ないし10%に相当する体積を占めおよび前記固体フィラーがプリフォームの見かけ体積の0.5%ないし5%に相当する体積を占めることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記プリフォーム中での前記前駆体に由来する前記団結相の前記炭素またはセラミックの体積パーセントが3%ないし6%の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プリフォーム中での前記団結相の前記固体フィラーの体積パーセントが0.5%ないし3%の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
使用される前記固体フィラーが200ナノメートル未満の平均粒径を示すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ヤーンまたはトウから形成された繊維テクスチャに型合わせを行い、これに前記団結組成物を含浸させることによって前記繊維プリフォームをつくることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記団結組成物中の前記炭素前駆体またはセラミック前駆体が樹脂であり、前記樹脂を予備硬化させた後に前記繊維プリフォームに型合わせを行うことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
セラミックマトリックス複合材料からつくり出される部品を製作するための請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体フィラーがSiC、TiC、B4C、およびBNから選択される少なくとも1種の化合物の粉末を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記団結組成物での含浸に先立ち、前記ヤーンまたはトウの前記繊維に対する化学気相浸透によって相間を形成することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記団結組成物での含浸に先立ち、前記ヤーンまたはトウの前記繊維に対する化学気相浸透によって第1の相間層を形成し、前記繊維プリフォームの団結の後であって団結された前記繊維プリフォームの緻密化の前に第2の相間層を形成することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−504091(P2012−504091A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528397(P2011−528397)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051804
【国際公開番号】WO2010/034937
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【Fターム(参考)】