説明

耐衝撃性ポリプロピレン樹脂組成物

【課題】引張強度と耐衝撃性のバランスに優れるポリプロピレン樹脂組成物、および、それからなる成形体を提供すること。
【解決手段】プロピレン系重合体(A)51〜99重量%、および密度が0.85〜0.93(g/cm)のエチレン系重合体(B)1〜49重量%、を含む樹脂組成物((A)と(B)の合計重量を100重量%とする)と、前記樹脂組成物100重量部に対して、少なくとも一種の金属塩類(C)0.001〜0.5重量部と、を含むポリプロピレン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂に造核剤が配合されたポリプロピレン樹脂組成物は、機械的物性や透明性等の特性に優れる材料であることから、自動車内外装材、家電用材料、建築用材料、農業用材料、日用雑貨、食品包装等のフィルム、ボトル、キャップ、コンテナ−、パレット等の成形体に用いられる材料として、広範な用途に利用されている。
【0003】
該樹脂組成物として、例えば、特許文献1には、プロピレン系重合体成分とエチレンおよび炭素原子数4〜12個のα−オレフィンから選択されるモノマーとを共重合して得られる成分を有するプロピレン系ブロック共重合体に対して、粒子径が特定の範囲にある造核剤を配合するポリプロピレン樹脂組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリオレフィンマトリックスとマトリックス中に分散或は溶解した各種の成核剤或は透明化剤を含む樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−213918号公報
【特許文献2】特開2009−508995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の公報等に記載されているポリプロピレン樹脂組成物においても、引張強度と耐衝撃性のバランスについては未だ充分とはいえない。
【0007】
かかる状況の下、本発明の目的は、引張強度と耐衝撃性のバランスに優れるポリプロピレン樹脂組成物、および、それからなる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、かかる実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、プロピレン系重合体(A)51〜99重量%、および密度が0.85〜0.93(g/cm)のエチレン系重合体(B)1〜49重量%、を含む樹脂組成物((A)と(B)の合計量を100重量%とする)と、
前記樹脂組成物100重量部に対して、下記一般式(I)

(式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜9個のアルコキシ基、炭素原子数1〜9個のアルキレンオキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜9個のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、およびフェニル基からなる群から選択される。ここで、これらの基がアルキル基である場合、アルキル基が結合して炭素原子数6個までの炭素環を形成してよい。この化合物はトランスまたはシス配置のいずれであってもよい。)
で示される少なくとも一種の金属塩類(C)0.001〜0.5重量部と、を含むポリプロピレン樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、引張特性と耐衝撃性のバランスに優れるポリプロピレン樹脂組成物、および、それからなる成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<プロピレン系重合体(A)>
プロピレン系重合体(A)は、典型的には、プロピレン単独重合体、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレンとエチレンのランダム共重合体、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレンとエチレンとα−オレフィンとのランダム共重合体、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレンと環状オレフィンとのランダム共重合体、前段の重合工程により製造されるプロピレン単独重合体成分または主にプロピレン由来の単位からなる共重合体成分(以下、重合体成分(I)と称する)と、後段の重合工程により製造されるプロピレンとエチレンおよび/またはα−オレフィンの共重合体成分(以下、重合体成分(II)と称する)からなる共重合体(該共重合体は、当業者によって習慣的に、インパクト・コポリマーと呼ばれたり、重合体関係の教科書に載っているスチレンとブタジエンとのブロック共重合体のような典型的なブロック共重合体ではないものの、プロピレン系ブロック共重合体と呼ばれたりしている。)が挙げられる。これらのプロピレン系重合体は単独で使用してもよく、2種以上をブレンドして使用してもよい。
ここで、「主にプロピレン由来の単位からなる」とは、プロピレン系重合体を100重量%として、プロピレンに由来する単位を50重量%より多く含有する重合体を意味する。
【0011】
プロピレン系重合体(A)の製造に用いられるα−オレフィンとしては、典型的には、炭素原子数4〜10個のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
プロピレン系重合体(A)の製造に用いられる環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、ノルボルネン等が挙げられる。
【0012】
プロピレン系重合体(A)は、結晶性が高く、ポリプロピレン樹脂組成物の引張り強度と耐衝撃性のバランスの観点から、13C−NMRで測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率(mmmm分率)が0.97以上のプロピレン系重合体が好ましい。より好ましくは、0.98以上のプロピレン系重合体である。なお、アイソタクチック・ペンタッド分率は、プロピレン系重合体(A)の四級炭素原子(不斉炭素原子)が同じ絶対配置を持つアイソタクチック構造の度合い(アイソタクチシティー:isotacticity)を表す指標であり、アイソタクチック・ペンタッド分率の値が大きいほど、アイソタクチシティーの高いプロピレン系重合体であることを示す。アイソタクチック・ペンタッド分率(mmmm分率)の値が大きいプロピレン系重合体(A)は、高い融点を示し、また、高い結晶性を有する。アイソタクチック・ペンタッド分率は、後述する測定方法によって求められる。なお、プロピレン系重合体(A)が主にプロピレン由来の単位からなるプロピレンとエチレンのランダム共重合体、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレンとエチレンとα−オレフィンとのランダム共重合体、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレンと環状オレフィンとのランダム共重合体、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体の場合には、該重合体または共重合体中のプロピレン単位の連鎖について測定される。そして、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体の場合には、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系重合体成分(I)について測定される値である。
【0013】
プロピレン系共重合体(A)は、引張強度と耐衝撃性のバランス、成形加工性の観点から、典型的には、測定温度230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.5〜200g/10分であり、より好ましくは1〜100g/10分であり、さらに好ましくは2〜80g/10分であり、最も好ましくは5〜50g/10分である。
【0014】
プロピレン系重合体(A)は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造することができる。
重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、またはシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系、シリカ、粘土鉱物等の無機粒子にシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、イオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物等の触媒成分を担持し変性させた触媒系等が挙げられ、また、上記の触媒系の存在下でエチレンやα−オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒を用いてもよい。
【0015】
上記の触媒系としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平9−316147号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報に記載の触媒系が挙げられる。
【0016】
重合方法としては、バルク重合、溶液重合、スラリー重合または気相重合が挙げられる。バルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法であり、溶液重合もしくはスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法であり、また、気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法である。これらの重合方法は、バッチ式、連続式(連続的に接続させた2以上の重合反応槽を用いて、各々の重合反応槽で重合体の組成や特性を調整しながら目的の重合体の製造を行う方法であり、多段式と称することもある)のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法、バルク重合法と気相重合法を連続的に行うバルク−気相重合法による方法が好ましい。
【0017】
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするプロピレン系重合体(A)に応じて、適宜、変更し、決定すればよい。
【0018】
プロピレン系重合体(A)の製造において、プロピレン系重合体(A)中に含まれる残留溶媒や、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、必要に応じてプロピレン系重合体(A)をそのプロピレン系重合体(A)が融解する温度以下の温度で乾燥してもよい。乾燥方法としては、例えば、特開昭55−75410号公報、特許第2565753号公報に記載の方法等が挙げられる。
<プロピレン系ランダム共重合体>
【0019】
プロピレン系重合体(A)としては、下記要件(a)および(b)を満足する共重合体が好ましい。
要件(a):
230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.5〜200g/10分である。
要件(b):
エチレンおよび/または炭素原子数4〜10個のα−オレフィンに由来する単位が0.1〜40重量%であり、プロピレンに由来する単位が99.9〜60重量%である(プロピレン系重合体(A)の重量を100重量%とする)。
【0020】
要件(a)に関し、プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1〜100g/10分であり、より好ましくは2〜80g/10分であり、さらに好ましくは5〜50g/10分である。
【0021】
要件(b)に関し、好ましくは、プロピレン系重合体(A)の前記エチレンおよび/または炭素原子数4〜10個のα−オレフィンに由来する単位が0.1〜30重量%であり、プロピレンに由来する単位が99.9〜70重量%であり、より好ましくは、前記エチレンおよび/または炭素数4〜10個のα−オレフィンに由来する単位が0.2〜20重量%であり、プロピレンに由来する単位99.8〜80重量%であり、さらに好ましくは、前記エチレンおよび/または炭素数4〜10個のα−オレフィンに由来する単位が2〜15重量%であり、プロピレンに由来する単位98〜85重量%である。
【0022】
主にプロピレン由来の単位からなるプロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム、プロピレン−1−デセンランダム共重合体等が挙げられる。
【0023】
主にプロピレン由来の単位からなるプロピレンとエチレンとα−オレフィンとのランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体等が挙げられる。
【0024】
<重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体>
【0025】
また、プロピレン系重合体(A)としては、下記要件(c)、(d)および(e)を満足するプロピレン系共重合体が好ましい。プロピレン系共重合体について以下詳述する。
要件(c):
プロピレン系重合体(A)は、前段の重合工程により製造される重合体成分(I)、および後段の重合工程により製造される重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体であり、
重合体成分(I)は、135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η])が0.1〜5(dl/g)のプロピレン系重合体成分であり、
重合体成分(II)は、エチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレンに由来する単位とを有する共重合体成分であって、135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]II)が1〜20(dl/g)のプロピレン系共重合体成分である。
要件(d):
重合体成分(II)に含有されるエチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量が、1〜80重量%である(重合体成分(II)の重量を100重量%とする)。
要件(e):
重合体成分(II)の含有量が、1〜50重量%である(プロピレン系重合体(A)の重量を100重量%とする)。
【0026】
<重合体成分(I)について>
重合体成分(I)としては、プロピレン単独重合体成分または主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分である。主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分とは、エチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、主にプロピレン由来の単位とからなるプロピレン系共重合体成分である。
【0027】
重合体成分(I)が、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分である場合、エチレンおよび炭素原子数4〜10個のα―オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、0.01〜30重量%である(但し、重合体成分(I)の重量を100重量%とする)。
【0028】
重合体成分(I)に用いられる炭素原子数4〜10個のα−オレフィンとしては、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは1−ブテンである。
【0029】
重合体成分(I)に用いられる主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
【0030】
そして、プロピレン系重合体(A)の重合体成分(I)としては、好ましくは、プロピレン単独重合体成分、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分である。
【0031】
<重合体成分(II)について>
重合体成分(II)は、エチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレンに由来する単位とを有する共重合体成分である。
【0032】
重合体成分(II)に含有されるエチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、1〜80重量%であり、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは20〜60重量%である(但し、重合体成分(II)の重量を100重量%とする)。
【0033】
重合体成分(II)に用いられる炭素原子数4〜10個のα−オレフィンとしては、例えば、前記重合体成分(I)で用いられる炭素原子数4〜10個のα−オレフィンと同様のα−オレフィンが挙げられる。
【0034】
重合体成分(II)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−デセン共重合体成分等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、より好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分である。
【0035】
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体の重合体成分(II)の含有量は、典型的には、1〜50重量%であり、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。但し、プロピレン系重合体(A)の重量を100重量%とする。
【0036】
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体の重合体成分(I)がプロピレン単独重合体成分の場合、該プロピレン系共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体等が挙げられる。これらの重合体において、(プロピレン)なる記載は、プロピレンの単独重合体なる重合体成分(I)を表し、(プロピレン−エチレン)のような記載は、プロピレンとエチレンとの共重合体のような共重合体なる重合体成分(II)を表す。
【0037】
また、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体の重合体成分(I)が主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分の場合、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体としては、例えば、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体等が挙げられる。これらの重合体において、前者の、(プロピレン−エチレン)のような記載は、プロピレンとエチレンとの共重合体のような共重合体なる重合体成分(I)を表し、後者の、(プロピレン−エチレン)のような記載は、プロピレンとエチレンとの共重合体のような共重合体なる重合体成分(II)を表す。
【0038】
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体として、好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体であり、より好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体である。
【0039】
重合体成分(I)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η])は、0.1〜5dl/gであり、好ましくは0.3〜4dl/gであり、より好ましくは0.5〜3dl/gである。
【0040】
重合体成分(II)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]II)は1〜20dl/gであり、好ましくは1〜10dl/gであり、より好ましくは2〜7dl/gであり、さらに好ましくは3〜7(dl/g)である。
【0041】
また、重合体成分(I)の極限粘度([η])に対する重合体成分(II)の極限粘度([η]II)の比として、好ましくは1〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは3〜8である。
【0042】
上記の極限粘度は、以下の手順(1)〜(3)からなる方法によって測定される。
(1)サンプル濃度が0.1g/dl、0.2g/dlおよび0.5g/dlなる各溶液の還元粘度をウベローデ型粘度計にて測定する。
(2)該還元粘度を該濃度に対しプロットする。
(3)該濃度をゼロに外挿したときの粘度を極限粘度とする(外挿法)。
該外挿法は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載されている。
【0043】
なお、プロピレン系重合体が、前段の重合工程により製造される重合体成分(I)、および後段の重合工程により製造される重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体である場合、該重合体成分(I)の極限粘度([η])は、前段の重合工程の終了後に重合槽から抜き出された重合体を測定して求められる極限粘度であり、該重合体成分(II)の極限粘度([η]II)は、下記式(1)から求められる。
【0044】
[η]II=([η]Total−[η]×X)/XII (1)

(式中、[η]Totalは、重合体成分(I)と重合体成分(II)とからなる重合体の極限粘度であり、Xは、該重合体中の重合体成分(I)の重量割合であり、XIIは、該重合体中の重合体成分(II)の重量割合である。XおよびXIIは、該重合体製造時の物質収支から求められる。)
【0045】
<エチレン系重合体(B)>
エチレン系重合体(B)は、密度が0.85〜0.93(g/cm)のエチレン系重合体であり、エチレン単独重合体でもエチレンとエチレン以外のオレフィンとの共重合体でもよい。エチレン以外のオレフィンとしては、例えば、α−オレフィン、環状オレフィン等が挙げられる。
【0046】
エチレン系重合体(B)としては、ラジカル開始剤を用いて高圧ラジカル重合により繰り返し単位のエチレンがランダムに分岐構造をもって結合した、密度が0.91〜0.93(g/cm)の高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)が挙げられる。
【0047】
エチレンとα−オレフィンの共重合体としては、密度が0.85〜0.93(g/cm)の範囲にあるものである。例えば、密度が0.90〜0.93(g/cm)の範囲にある結晶性を有する直鎖状低密度ポリエチレン、密度が0.85〜0.90(g/cm)の範囲にある結晶性が低くゴム状の弾性特性を有するエチレンとα−オレフィン共重合体のエラストマー等が挙げられ、好ましくは、密度が0.85〜0.90(g/cm)の範囲にある結晶性が低くゴム状の弾性特性を有するエチレンとα−オレフィン共重合体のエラストマー、より好ましくは、0.85〜0.89(g/cm)の前記エラストマーである。
【0048】
エチレン系重合体(B)の製造に用いられるα−オレフィンとしては、典型的には、炭素原子数3〜10個のα−オレフィンであり、例えば、1−プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
エチレン系重合体(B)の製造に用いられる環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、ノルボルネン等が挙げられる。
【0049】
エチレン系重合体(B)としては、好ましくは、エチレン単独重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体であり、より好ましくは、エチレンとα−オレフィンの共重合体である。エチレンとα−オレフィンの共重合体としては、例えば、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体、エチレン−(3−メチル−1−ブテン)共重合体等である。
【0050】
エチレン系重合体(B)に含有するエチレン以外のオレフィンの含有量は、好ましくは1〜49重量%であり、より好ましくは5〜49重量%であり、さらに好ましくは10〜49重量%である(エチレン系重合体(B)の重量を100重量%とする)。
【0051】
エチレン系重合体(B)は、測定温度190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.5〜50g/10分である。MFRは、より好ましくは1〜30g/10分であり、さらに好ましくは1〜20g/10分である。
【0052】
エチレン系重合体(B)としては、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造することができる。
重合触媒としては、例えば、メタロセン触媒に代表される均一系触媒系、チーグラー型触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系等が挙げられる。均一系触媒系としては、例えば、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、またはシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系、シリカ、粘土鉱物等の無機粒子にシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、イオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物等の触媒成分を担持し変性させた触媒系等が挙げられ、また、上記の触媒系の存在下でエチレンやα‐オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒系が挙げられる。
【0053】
また、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)は、重合触媒としてラジカル開始剤を用いて製造することができる。
なお、エチレン系重合体(B)は、公知の市販品を用いてもよい。例えば、ダウ・ケミカル日本株式会社製エンゲージ(登録商標)、三井化学株式会社製タフマー(登録商標)、株式会社プライムポリマー製ネオゼックス(登録商標)、ウルトゼックス(登録商標)、住友化学株式会社製エクセレンFX(登録商標)、スミカセン(登録商標)、スミカセン−L(登録商標)、エスプレンSPO(登録商標)等が挙げられる。
【0054】
<金属塩類(C)>
金属塩類(C)は、下記一般式(I)

(式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜9個のアルコキシ基、炭素原子数1〜9個のアルキレンオキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜9個のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、およびフェニル基よりなる群から選択される。ここで、これらの基がアルキル基である場合、アルキル基が結合して炭素原子数6個までの炭素環を形成してよい。この化合物はトランスまたはシス配置のいずれであってもよい。)で示される少なくとも一種の金属塩類である。
一般式(I)において、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10がアルキル基である場合、アルキル基が結合して炭素原子数6個までの炭素環を形成してよく、好ましくは、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10の基の中の任意の2つの基は、相互に結合して炭素原子数3〜6個の炭素環を形成してよい。また、一般式(I)において、RとRとは相互にトランス配置またはシス配置である。
【0055】
、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10における炭素原子数1〜9個のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、炭素原子数1〜9個のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられ、炭素原子数1〜9個のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、炭素原子数1〜9個のアルキレンオキシ基としては、例えば、下記一般式(II)で表される基等が挙げられる。

R−(R’−O)− (II)

(式中、Rは、水素原子または炭素原子数1〜3個のアルキル基を表し、R’は、炭素原子数2または3個のアルキレン基を表し、nは、2〜4の整数を表す。ただし、RおよびR’の合計の炭素原子数は、9個以下である。)
【0056】
上記一般式(II)で表される基として、好ましくは、H−(CHCHO)−、H−(CHCHO)−、H−(CHCHO)−、CH−(CHCHO)−、CH−(CHCHO)−、CH−(CHCHO)−、C−(CHCHO)−、C−(CHCHO)−、C−(CHCHO)−、C−(CHCHO)−、H−(CH(CH)CHO)−、H−(CH(CH)CHO)−、CH−(CH(CH)CHO)−またはC−(CH(CH)CHO)−である。
【0057】
上記一般式(I)で示される金属塩類としては、例えば、下記構造式で表される化合物等である。


















【0058】
金属塩類(C)としては、好ましくは、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10が、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜3個のアルキル基である化合物であり、より好ましくは下記構造式で示される1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩である。

【0059】
金属塩類(C)は、前記プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)を含む樹脂組成物に対する分散性を向上させるために、分散剤と混合して用いてもよい。分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸のアルキルエステル、脂肪酸の金属塩、炭素原子数10〜30個のアルコール類、多価アルコールおよびそのエステル類が挙げられる。
脂肪酸として、好ましくは、炭素原子数が10〜24個の脂肪酸であり、前記脂肪酸の金属塩はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属塩である。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム、リチウムであり、アルカリ土類金属としてはカルシウム、マグネシウム、亜鉛等である。また、多価アルコールおよびそのエステル類は、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトールおよびそのエステル等である。中でも脂肪酸の金属塩が好ましく用いられる。
【0060】
金属塩類(C)の形態は、好ましくは粒子状である。金属塩類(C)の粒子径としては、レーザー回折式粒度分布測定法で求められる平均粒子径が0.01〜10μmであり、好ましくは0.01〜5μmであり、さらに好ましくは0.01〜3μmである。尚、レーザー回折式粒度分布測定法とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(Sympatec社製HELOS(商品名))を用いて粒度分布を測定する方法である。
【0061】
金属塩類(C)の製造方法としては、例えば、特表2004−525227号公報、特表2009−504842号公報に記載の方法が挙げられる。また、1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩については、Milliken Chemical、ミリケン・ジャパン株式会社からHyperform HPN−20E(登録商標、1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩含有量:66重量%)を入手することができる。
【0062】
<ポリプロピレン樹脂組成物>
金属塩類(C)の含有量は、プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)を含む樹脂組成物100重量部に対して0.001〜0.5重量部である。好ましくは0.01〜0.5重量部であり、より好ましくは0.05〜0.3重量部である。
また、前記樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)51〜99重量%およびエチレン系重合体(B)1〜49重量%を含み、好ましくは、プロピレン系重合体(A)60〜99重量%およびエチレン系重合体(B)1〜40重量%を含み、さらに好ましくは、プロピレン系重合体(A)70〜95重量%およびエチレン系重合体(B)5〜30重量%を含む((A)と(B)の合計重量を100重量%とする)。
【0063】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、230℃で測定されるメルトフローレート(MFR)が、成形加工性という観点から、好ましくは0.1〜400g/10分であり、より好ましくは、0.5〜300g/10分であり、さらに好ましくは、1〜200g/10分である。
【0064】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、耐衝撃性や外観の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物を用いて得られる成形体(フィルム、シートまたは射出成形体等)の表面に発生するフィッシュアイ(点状の突起物又はへこみ物)の個数が少ないことが好ましい。
【0065】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)、エチレン系重合体(B)および金属塩類(C)の各成分の分散不良に由来するフィッシュアイを低減する目的で、例えば、ポリプロピレン樹脂組成物を、180℃以上の温度で溶融混合し、得られた溶融混合物を、フィルターを通過させて製造することができる。
【0066】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法において、単位時間およびフィルターの単位面積あたりに、フィルターを通過する前記ポリプロピレン樹脂組成物の溶融物の重量は、溶融物の濾過効率を損なわない範囲で任意に決定してもよい。フィルターは1段式または多段式に、並列もしくは樹脂の通過方向に直列に設置して、使用してもよい。
【0067】
また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、公知の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、加工助剤、有機系過酸化物、着色剤(無機顔料、有機顔料、顔料分散剤等)、発泡剤、発泡核剤、造核剤(金属塩類(C)は除く)、可塑剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤、抗菌剤、光拡散剤、無機フィラー、耐傷付防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤が好適に用いられる。本発明のポリプロピレン樹脂組成物として、好ましくは、プロピレン系重合体(A)、エチレン系重合体(B)および金属塩類(C)の他に、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤および着色剤からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のみを含有するポリプロピレン樹脂組成物である。
【0068】
中和剤としては、例えば、高級脂肪酸の金属塩(金属石鹸)、ハイドロタルサイト類、アルカリ土類金属の酸化物または水酸化物等が挙げられる。これらの中和剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
高級脂肪酸の金属塩(金属石鹸)を構成する高級脂肪酸としては、例えば、炭素数が10〜30のものが好ましく、さらに好ましくは、炭素原子数が12〜18個のものである。金属塩としては、例えば、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が好ましく、さらに好ましくは、カルシウム塩または亜鉛塩である。好ましくは、ステアリン酸のカルシウム塩または亜鉛塩である。
【0070】
ハイドロタルサイト類は、天然鉱物であっても、合成品であってもよく、またその結晶構造、結晶粒子径、含水率等は、適宜、決定すればよい。また、必要に応じて、ハイドロタルサイト類には表面処理を行ってもよい。
【0071】
ハイドロタルサイト類の中で、好ましくは下記式で表されるハイドロタルサイトである。
MgAl(OH)2Y+4CO・mH
(式中、Yは、Y≧4であり、mは正の数である。)
また、ハイドロタルサイト類として、より好ましくは下記のハイドロタルサイトである。
Mg4.5Al(OH)13CO・3H
Mg4.5Al(OH)11(CO0.8・O0.2
MgAl(OH)12CO・3H
MgAl(OH)14CO・4H
MgAl(OH)16CO・4H
MgZnAl(OH)12CO・mHO(mは0〜4)
【0072】
アルカリ土類金属の酸化物または水酸化物とは、周期表第2族の金属原子の酸化物または水酸化物であり、例えば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。好ましくは水酸化カルシウムである。
【0073】
中和剤の配合量は、例えば、プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)を含む樹脂組成物100重量部に対して、0.001〜0.5重量部である。好ましくは0.005〜0.2重量部であり、より好ましくは0.01〜0.2重量部である。
【0074】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、金属不活性化剤等が挙げられる。
好ましくは、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤である。
【0075】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス[メチレン−3(3’,5’ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオビス−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トコフェロール類等が挙げられる。
【0076】
好ましくは、ポリプロピレン樹脂組成物の色相安定性の観点から、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンである。
【0077】
フェノール系酸化防止剤の配合量は、プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)を含む樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜2重量部である。好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0078】
リン系酸化防止剤としては、例えば、ポリプロピレン樹脂組成物の加工安定性の観点から、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0079】
リン系酸化防止剤の配合量は、プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)を含む樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜2重量部である。好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0080】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ポリプロピレン樹脂組成物の耐熱老化性の観点から、ジミリスチル 3,3’−チオジプロピオネート、ネオペンタンテトライルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキル(C12〜C14)チオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィドである。なお、C12は炭素原子数12個、C14は炭素原子数14個を表す。
【0081】
硫黄系酸化防止剤の配合量は、プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)を含む樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜2重量部である。好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0082】
紫外線吸収剤としては、例えば、フェニル サリシレート、4−t−ブチルフェニル サリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル 3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ミリスチル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ラウリル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、パルミチル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ステアリル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ベヘニル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、モンタニル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−t−オクチルフェニル サリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5’−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−sec−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0083】
好ましくは、色相に優れる樹脂組成物が得られるということから、2,4−ジ−t−ブチルフェニル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ラウリル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、パルミチル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ステアリル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ベヘニル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートである。
【0084】
紫外線吸収剤の配合量は、一般には、典型的には、プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)を含む樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜2重量部である。好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0085】
光安定剤としては、低分子量体、オリゴマー型高分子量体のいずれの光安定剤を使用してもよく、例えば、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートおよびメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートを含有する混合物、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、
デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、
テトラキス(2,2,6,6−テトラ−メチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、
テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタ−メチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、
コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物、
ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、
ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、
N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、
ミックスト{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオクスアスピロ(5,5)ウンデカン]ジメチル}−1,2,3,4ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
【0086】
好ましくは、光安定性に優れる樹脂組成物が得られるということから、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、テトラキス(2,2,6,6−テトラ−メチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタ−メチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}である。
【0087】
光安定剤の配合量は、一般には、典型的には、プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)を含む樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜2重量部である。好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0088】
着色剤としては、無機顔料や有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛や、弁柄、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、群青、コバルトブルー、チタンイエロー、鉛白、鉛丹、鉛黄、紺青等が挙げられ、有機顔料としては、例えば、キナクリドン、ポリアゾイエロー、アンスラキノンイエロー、ポリアゾレッド、アゾレーキイエロー、ペリレン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、イソインドリノンイエロー等が挙げられる。これらの着色剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、顔料を樹脂組成物中に分散させる目的で、顔料と顔料分散剤を併用してもよい。
【0089】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)以外の樹脂やゴムを含有してもよい。
例えば、ポリスチレン類(例えばポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0090】
また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、バイオ原料から抽出された植物由来のモノマーを重合して製造される重合体を含有してもよい。例えば、PLA樹脂(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0091】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物と、それに添加した添加剤、他の樹脂、ゴム等は、公知の方法によって180℃以上、好ましくは180〜300℃、より好ましくは180〜250℃で溶融混合することができ、溶融混練には、例えば、溶融押出機やバンバリーミキサー等を使用することができる。
【0092】
金属塩類(C)を、プロピレン系重合体(A)およびエチレン系重合体(B)と配合する方法として、以下の方法(1)〜(3)を例示することができる。
(1)必要量のプロピレン系重合体(A)と必要量のエチレン系重合体(B)とからなる混合物に、必要量の金属塩類(C)を混合する方法、
(2)プロピレン系重合体(A)100重量部、エチレン系重合体(B)100重量部またはプロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)とからなる混合物100重量部と、金属塩類(C)1〜100重量部、好ましくは、1〜50重量部、より好ましくは、5〜30重量部とを混合して、マスターバッチを製造する工程(工程(1))、並びに該マスターバッチと、プロピレン系重合体(A)およびエチレン系重合体(B)を含む混合物とを混合する工程(工程(2))、からなる方法、
(3)前記の添加剤(少なくとも1種)100重量部と、金属塩類(C)10〜900重量部、好ましくは、10〜500重量部、より好ましくは、20〜200重量部とを混合して混合物を得る工程(工程(3))、該混合物を顆粒状に固形化して顆粒物を得る工程(工程(4))、所定量の該顆粒物と、必要量のプロピレン系重合体(A)および必要量のエチレン系重合体(B)からなる混合物とを混合する工程(工程(5))、からなる方法。
中でも、マスターバッチを用いる方法(2)は、引張強度と耐衝撃性とのバランスに極めて優れたポリプロピレン樹脂組成物を製造することができる。上記の「必要量」とは、本発明で規定された量に相当する量を意味し、上記の「所定量」とは、得られる最終混合物中の成分の量が、本発明で規定された量を充足するような量を意味する。
【0093】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法で用いられる溶融混練装置としては、公知の溶融混練装置が挙げられる。例えば、単軸押出機、二軸同方向回転押出機(Wernw Pfleideren製 ZSK(登録商標)や東芝機械(株)製 TEM(登録商標)、日本製鋼所(株)製 TEX(登録商標)、(株)テクノベル製KZW(登録商標)等)、二軸異方向回転押出機(日本製鋼所(株)製 CMP(登録商標)、TEX(登録商標)、神戸製鋼所(株)製 FCM(登録商標)、NCM(登録商標)、LCM(登録商標)等)が挙げられる。
【0094】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の形状としては、例えば、ストランド状、シート状、平板状、ストランドを適当な長さに裁断したペレット状等が挙げられる。本発明のポリプロピレン樹脂組成物を成形加工するためには、得られる成形体の生産安定性の観点から、形状として好ましくは、長さが1〜50mmのペレット状である。
【0095】
本発明の成形体は、本発明のポリプロピレン樹脂組成物を各種成形方法によって、成形加工して得られる成形体であり、成形体の形状やサイズ等は、適宜、決定すればよい。
【0096】
本発明の成形体の製造方法としては、例えば、通常工業的に用いられている射出成形法、プレス成形法、真空成形法、発泡成形法、押出成形法等が挙げられ、また、目的に応じて、本発明のポリプロピレン樹脂組成物と同種の樹脂や他の樹脂と貼合する成形方法、共押出成形する方法等も挙げられる。
【0097】
本発明の成形体として、好ましくは、射出成形法により製造した射出成形体である。射出成形法としては、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、インサート・アウトサート成形法等の方法が挙げられる。
【0098】
本発明の成形体の用途としては、例えば、自動車材料、家電材料、モニター用材料、OA機器材料、医療用材料、排水パン、トイレタリー材料、ボトル、コンテナー、シート、フィルム、建材等が挙げられ、好ましくは、自動車材料、家電材料であり、より好ましくは、自動車材料である。
【0099】
自動車材料としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーパネル、スペアタイヤカバー等の内装部品等、および、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ等の外装部品、その他エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、フェンダーライナー、ファン、アンダーデフレクター等の部品、また、フロント・エンドパネル等の一体成形部品等が挙げられる。
【0100】
家電材料としては、例えば、洗濯機用材料(外槽、内槽、蓋、パルセータ、バランサー等)、乾燥機用材料、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料等が挙げられる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例および比較例によって本発明を説明する。実施例および比較例で使用したプロピレン系重合体、エチレン系重合体および添加剤を下記に示した。
【0102】
(1)プロピレン系重合体(成分(A))
(A−1)プロピレン−エチレンランダム共重合体
住友ノーブレン「H501N」(住友化学(株)製):ペレット
MFR(230℃、2.16kg荷重):3g/10分
エチレン含有量:0.6重量%
極限粘度([η]):2.0dl/g
融解温度(Tm):160℃
【0103】
(A−2)重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体
特開2004−182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、下記物性のプロピレン系共重合体が得られるような条件で液相−気相重合法によって製造した。
【0104】
(A−2)(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体の組成と特性
該共重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重):26g/10分
該共重合体のエチレン含量:7.4重量%
該共重合体の極限粘度([η]total):1.4dl/g
[η]II/[η]=2.52
重合体成分(I):プロピレン単独重合体成分
重合体成分(I)のアイソタクチック・ペンタッド分率:0.983
重合体成分(I)の極限粘度([η]):1.07dl/g
重合体成分(II):プロピレン−エチレン共重合体成分
重合体成分(II)の含有量:20重量%
重合体成分(II)のエチレン含有量:37重量%
重合体成分(II)の極限粘度([η]II):2.7dl/g
【0105】
(A−3)プロピレン−エチレンランダム共重合体
前記(A−1)の原料パウダー
MFR(230℃、2.16kg荷重):3g/10分
エチレン含有量:0.6重量%
極限粘度([η]):2.0dl/g
融解温度(Tm):160℃
【0106】
(A−4)特開2004−182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用い、液相重合工程と気相重合工程とからなる製造方法によって製造した、プロピレンの単独重合体(後記の実施例11参照)
該重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重):8g/10分
極限粘度([η]):1.61dl/g
重合体成分のアイソタクチック・ペンタッド分率:0.981
融解温度:163℃
【0107】
(A−5)特開2004−182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用い、液相重合工程と気相重合工程とからなる製造方法によって製造した、プロピレン−エチレンランダム共重合体(後記の実施例13参照)
該重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重):6g/10分
エチレン単位の含有量:3.7重量%(5.4mol%)
極限粘度([η]):1.65dl/g
融解温度:141℃
【0108】
(2)エチレン系重合体(成分(B))
(B−1)直鎖状低密度ポリエチレン
エクセレン「CN3009」(住友化学(株)製)
密度:0.90(g/cm
MFR(190℃、荷重2.16kg):5g/10分
α−オレフィン:1−ブテン
α−オレフィンの含有量:21.8重量%(8.5mol%)
融解温度(Tm):第1ピーク温度86.2℃、第2ピーク温度113.4℃
【0109】
(B−2)エチレン−1−オクテン共重合体エラストマー
(登録商標)ENGAGE EG8100(ダウ・ケミカル日本(株)製)
密度:0.87(g/cm
MFR(190℃、荷重2.16kg):1g/10分
α−オレフィン:1−オクテン
α−オレフィンの含有量:34.0重量%(11.4mol%)
融解温度(Tm):50.5℃
【0110】
(B−3)エチレン−1−オクテン共重合体エラストマー
(登録商標)ENGAGE EG8200(ダウ・ケミカル日本(株)製)
密度:0.87(g/cm
MFR(190℃、荷重2.16kg):5g/10分
α−オレフィン:1−オクテン
α−オレフィンの含有量:34.6重量%(11.7mol%)
融解温度(Tm):第1ピーク温度46.9℃、第2ピーク温度59.5℃
【0111】
(B−4)エチレン−1−オクテン共重合体エラストマー
(登録商標)ENGAGE EG8450(ダウ・ケミカル日本(株)製)
密度:0.90(g/cm
MFR(190℃、荷重2.16kg):3g/10分
α−オレフィン:1−オクテン
α−オレフィンの含有量:16.2重量%(4.6mol%)
融解温度(Tm):98.5℃
【0112】
(B−5)エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー
(登録商標)タフマー A1050S(三井化学(株)製)
密度:0.86g/cm
MFR(190℃、荷重2.16kg):1.4g/10分
1−ブテン単位の含有量:31.8重量%(18.9mol%)
融解温度:第1ピーク温度 5.7℃、第2ピーク温度 38.0℃
【0113】
(B−6)高密度ポリエチレン「略名称:HDPE」
(登録商標)G1900(京葉ポリエチレン(株)製)
密度:0.96g/cm
MFR(190℃、荷重2.16kg):16g/10分
プロピレン単位の含有量:1.05重量%(0.7mol%)
融解温度:131℃
【0114】
(B−7)低密度ポリエチレン「略名称:LDPE」
(登録商標)スミカセン G801(住友化学(株)製)
密度:0.92g/cm
MFR(190℃、荷重2.16kg):20g/10分
融解温度:106℃
【0115】
(B−8)直鎖状低密度ポリエチレン「略名称:L-LDPE」
(登録商標)スミカセン−L GA801(住友化学(株)製)
密度:0.92g/cm
MFR(190℃、荷重2.16kg):20g/10分
1−ブテン単位の含有量:8.6重量%(4.5mol%)
【0116】
(3)成分(C)
(C−1)(登録商標)Hyperform HPN−20E(ミリケン・ジャパン(株)製)
主成分の化学名:1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩
CAS Reg.NO.:491589−22−1
主成分の化学構造式:

主成分の含有量:66重量%
副成分の化学名:ステアリン酸亜鉛
CAS Reg.NO.:557−05−1
副成分の含有量:34重量%
HPN−20Eの平均粒子径: 主成分の平均粒子径:2.6μm
(平均粒子径はレーザー回折式の粒度分布測定器(Sympatec社製HELOS(商品名))を用いて測定した。)
【0117】
成分(C)との比較に用いた造核剤(C−2、3、4、5および6)
(C−2)(登録商標)Hyperform HPN−68L(ミリケン・ジャパン(株)製)
主成分の化学名:ジナトリウム=(1R,2R,3S,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(80重量%含有)
主成分の化学構造式:以下の通り

【0118】
(C−3)(登録商標)AL−PTBBA(共同薬品(株)製)
化学名:ヒドロキシ−ジ(p−tert−ブチル安息香酸)アルミニウム

【0119】
(C−4)(登録商標)アデカスタブNA−11((株)ADEKA製)
化学名:2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム

【0120】
(C−5)(登録商標)アデカスタブNA−21((株)ADEKA製)
化学名:ビス[2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸]アルミニウム

【0121】
(C−6)(登録商標)Millad NX8000J(ミリケン・ジャパン(株)製)化学名:1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−オルト−[(4−プロピルフェニル)メチレン]ノニトール (CAS Reg. No. 882073−43−0)

【0122】
(4)添加剤
(D−1)中和剤
カルシウムステアレート:共同薬品(株)製
(D−2)酸化防止剤
(登録商標)スミライザーGA80:住友化学(株)製
化学名:3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン
【0123】
(D−3):酸化防止剤
(登録商標)SONGNOX6260:松原産業(株)製
化学名:ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
(D−4)中和剤
(登録商標)ハイドロタルサイトDHT4C:協和化学工業(株)製
化学式:Mg4.5Al(OH)11(CO0.8・O0.2
(D−5)酸化防止剤
(登録商標)スミライザーGP:住友化学(株)製
化学名:2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(CAS Reg. No.:203255−81−6)
【0124】
(5)フィルター
(フィルターA)
50メッシュ(織金網フィルター)
濾過精度:410μm
(フィルターB)
(登録商標)ファインポアNF15N(日本精線株式会社製、焼結金網フィルター)
濾過精度:100μm
【0125】
プロピレン系重合体(A)、エチレン系重合体(B)およびポリプロピレン樹脂組成物の物性は下記に示した方法に従って測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−6758(JIS−K−7210−1999)に規定された方法に従って測定した。
・プロピレン系重合体(A):測定温度は230℃で、荷重は2.16kg。
ペレットまたはパウダーを用いて測定した。プロピレン系重合体がパウダーの場合は、該プロピレン系重合体パウダーと少量の酸化防止剤とを混合させた状態で測定した。詳しくは、プロピレン系重合体のパウダーを50gと、酸化防止剤としてBHT(2,6−ジ−t−ブチル-4-ヒドロキシトルエン)の粉末0.5gとを混合した。混合は蓋付きのステンレス製容器の中で数回振り混ぜることで行った。プロピレン系重合体パウダーとBHTの混合物を入れて、蓋付きのステンレス製容器をオーブン内で温度80℃の条件下で30分間熱処理を行い、その後、室温に冷却して得られた混合物をメルトフローレート用の測定試料(安定化した重合体パウダー)とした。
・エチレン系重合体(B):測定温度は190℃で、荷重は2.16kg。
市販製品のペレットを用いて測定した。
・ポリプロピレン樹脂組成物:測定温度は230℃で、荷重は2.16kg。
溶融混練物のペレットを用いて測定した。
【0126】
(2)密度(単位:g/cm
JIS−K6760−1981(JIS−K7112−1999)に規定された方法に従って測定した。
【0127】
(3)融解温度(Tm、単位:℃)
JIS−K−7121−1987に規定された方法に従って測定した。詳しくは、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定した。尚、融解温度の測定は、試料が融解する温度の50℃以上の温度で一度完全に融解させ、その後、1分間に5℃の降温速度で冷却して試料が結晶化する温度よりも低い温度まで冷却した後(プロピレン系重合体(A)では23℃、エチレン系重合体(B)では−20℃)、1分間に5℃の昇温速度で測定される際に観測される吸熱曲線のピークの温度とした。
【0128】
(4)極限粘度([η]、単位:dl/g)
プロピレン系重合体およびエチレン系重合体の極限粘度は、以下の手順(1)〜(3)からなる方法によって測定した。
(1)サンプル濃度が0.1g/dl、0.2g/dlおよび0.5g/dlなる各溶液の還元粘度をウベローデ型粘度計にて測定した。
(2)該還元粘度を該濃度に対しプロットした。
(3)該濃度をゼロに外挿したときの粘度を極限粘度とした(外挿法)。
該外挿法は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載されている方法に従った。
極限粘度の測定は、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で行った。試料は、ペレットまたはパウダーを用いた。
なお、プロピレン系重合体が、重合体成分(I)および重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体である場合、以下に示す測定方法と算出方法により、重合体成分(I)、重合体成分(II)およびプロピレン系重合体全体の極限粘度を求めた。

[η]Total:後段の重合工程後の最終重合体の極限粘度(dl/g)。測定試料には、後段の重合工程後に重合槽より抜き出した最終重合体パウダーを用いた。
[η]:前段の重合工程で製造した重合体成分(I)の極限粘度(dl/g)。測定試料には、前段の重合工程後に重合槽より抜き出した重合体パウダーを用いた。
[η]II:後段の重合工程で製造した重合体成分(II)の極限粘度(dl/g)。下記式から計算して求めた。

[η]II=([η]Total−[η]×X)/XII

(式中、Xは、前段の工程で重合された成分の重量割合であり、XIIは後段の工程で重合された成分の重量割合である。XおよびXIIは、該重合体製造時の物質収支から求めた。)
【0129】
(5)プロピレン系重合体、エチレン系重合体中のエチレン、α−オレフィンの含有量(重量%)
13C−NMR法を用いて測定した。詳しくは、「新版 高分子分析ハンドブック」(日本化学会、高分子分析研究懇談会編 紀伊国屋書店(1995))に記載されているNMR法(核磁気共鳴法)を用いて測定した。なお、エチレン系重合体中のα‐オレフィンの含有量を求めるための13C−NMRの検出ピークの帰属は、文献「James.C.Randall,J.Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phs.,C29(2ε3),29,201−317(1989)」を参考に行った。
【0130】
(6)(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のプロピレン−エチレン共重合体成分(II)の含有量(単位:重量%)及びプロピレン−エチレン共重合体成分
(II)中のエチレン含有量(単位:重量%)の算出
下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982年,第15巻,第1150〜1152頁)に基づいて求めた。
10mmΦの試験管中で約200mgの(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体を3mlの混合溶媒(オルトジクロロベンゼン/重オルトクロロベンゼン=4/1(容積比))に均一に溶解させて試料を調整し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。測定は、日本電子社製JNM−EX270を用いて行った。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
なお、プロピレン系重合体(A)が、プロピレンと炭素原子数4〜10個のα−オレフィンとのランダム共重合体の場合には、炭素原子数4〜10個のα−オレフィンの含有量は、13C−NMRスペクトルから、プロピレン系重合体(A)の全体の炭素原子数4〜10個のα−オレフィンの含有量を算出することによって求められる。
また、プロピレン系重合体(A)が、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体の場合には、該プロピレン系共重合体の全体の炭素原子数4〜10個のα−オレフィンの含有量と、重合体成分(II)の含有量(重量%で表される。但し、該プロピレン系共重合体を100重量%とする。)を基に、重合体成分(II)に含まれる炭素原子数4〜10個のα−オレフィンの含有量を求めることができる。
また、重合体成分(I)と重合体成分(II)何れも同一のα−オレフィンを含有する場合には、重合体成分(I)と重合体成分(II)各々のα−オレフィンの含有量は、まず、重合体成分(I)に含有するα−オレフィンの含有量をあらかじめ求めておき、ついで、重合体成分(I)と重合体成分(II)とを含有するプロピレン系共重合体の全体のα−オレフィンの含有量を求めて、重合体成分(I)と(II)の含有量の組成比を基に、算出することによって求められる。
【0131】
(7)アイソタクチック・ペンタッド分率(mmmm分率)
プロピレン系重合体(A)について測定を行った。尚、プロピレン系重合体(A)が重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体の場合には、プロピレン単独重合体成分(第一段階の重合槽からサンプリングしたパウダー)について測定を行った。
NMR吸収ピークの帰属に関しては、Macromolecules, 第8巻, 第687頁 (1975年)に基づいて行った。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定した。なお、測定はBRUKER社製AM400を用いて行った。
【0132】
(8)引張試験
ASTM D638に規定された方法に従って測定した。射出成形によって得られた厚みが2mmである試験片を用いて測定した。引張り速度は50mm/分であり、引張降伏強度(単位:MPa)を評価した。測定温度は23℃で行った。
【0133】
(9)アイゾッド衝撃強度(単位:kJ/m
JIS−K−7110に規定された方法に従って、測定した。射出成形によって得られた厚みが4mmであり、成形の後にノッチ加工された、ノッチ付きの試験片を用いて、測定温度は23℃または−20℃で行った。
【0134】
(10)射出成形体の作製
上記(8)および(9)の物性特性評価用の試験片(射出成形体)は下記の方法に従い作製した。
[物性評価用試験片の作製]
TOYO SI30III型 射出成形機(東洋機械金属(株)製)を用い、成形温度230℃、金型温度50℃で射出成形を行い、物性評価用試験片を得た。尚、試験片は引張測定用試験片(厚み:2mm)、アイゾッド試験用試験片(厚み:4mm)である。
【0135】
実施例1
[各成分の混合]
(A−1)87重量%と(A−3)3重量%と(B−1)10重量%からなる混合物(合計量:100重量部)と、この混合物100重量部に対して、(C−1):0.3重量部(C−1の主成分であるカルシウム塩の含有量は0.2重量部)を配合し、タンブラーを用いて室温にて5分間混合することにより混合物を作製した。
[造粒(溶融混練)]
前記のタンブラーで作製した混合物を、内径40mmの単軸押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)にてシリンダー設定温度:220℃、スクリュー回転数:100rpm、押出量:約16kg/時間の条件で加熱溶融混練した。この溶融混練物の温度は220〜230℃を示していた。次いで、この溶融混練物をシリンダー最下流部のダイ内に取り付けたフィルターAを通過させた後に、ダイ部の樹脂排出孔(直径:3mm、3ヶ)から溶融状態で押出し、この押出物を冷水により冷却固化、切断してポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。
この得られたペレットを用いてMFRを測定した。また、上記に示したように射出成形機によって評価用の試験片を作製し、状態調整後、物性を測定した。評価結果を表1に示した。
【0136】
比較例1
成分(C)であるC−1をC−5に変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様に行った。結果を表1に示した。
【0137】
比較例2
成分(C)であるC−1を配合しなかった以外は、実施例1に記載の方法と同様に行った。結果を表1に示した。
【0138】
【表1】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量

【0139】
[高濃度マスターバッチ(MB−1)〜(MB−5)の調製方法]
東洋精機株式会社製ラボプラストミル(バッチ式、容量:100ml)を用いて、各成分(A、B、C)と添加剤とを溶融混練することにより調製した。条件は、試料量(合計):70g、シリンダー設定温度:200℃、ローター回転数:50rpm、混練時間:5分、窒素雰囲気下とした。添加剤は、高濃度マスターバッチの原料であるプロピレン系重合体(A)またはエチレン系重合体(B)と成分Cの合計量100重量部に対して、D−4:0.03重量部とD−5:0.3重量部を配合した。高濃度マスターバッチの組成を表2に示した。
【0140】
【表2】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0141】
実施例2
C−1を粉体で使用する代わりに、A−1:87重量%とB−1:10重量%とMB−1(A−3:90重量%とC−1:10重量%からなる高濃度マスターバッチ)のペレット:3重量%からなる混合物を溶融混合し、ポリプロピレン樹脂組成物を作製した以外は、実施例1に記載の方法と同様に行った。尚、この樹脂組成物中のC−1の含有量は0.3重量%であった(C−1の主成分であるカルシウム塩の含有量は、MB−1中には6.6重量%であり、A−1とB−1とA−3の混合物100重量部に対しては0.2重量部であった)。
【0142】
実施例3
MB−1の代わりに表2に記載のマスターバッチMB−2に変更した以外は実施例2に記載の方法と同様に行った。結果を表3に示した。
【0143】
比較例3〜5
MB−1の代わりに表2に記載のマスターバッチMB−3〜MB−5に変更した以外は実施例2に記載の方法と同様に行った。結果を表3に示した。
【0144】
【表3】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0145】
実施例4
(1)(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体(A−2)の製造
[前段:プロピレン単独重合]
[液相重合]
プロピレンで十分置換されたSUS製ループ型液相重合反応器にトリエチルアルミニウム及びシクロヘキシルエチルジメトキシシランを供給した。該重合反応器の内温(重合温度)を65〜75℃に調整し、該反応器の内圧(ゲージ圧力)をプロピレン及び水素で4.5MPaに調整しつつ、固体触媒成分(特開2004−182981号公報の実施例1に記載の方法で合成した)を該反応器に連続供給して液相中でプロピレンを単独重合させた。ついで、ループ型液相重合反応器で生成したプロピレン単独重合体成分を断続的に気相重合反応器(第一槽)へ移送した。気相重合反応器は連結された三槽で構成される。
[気相重合]
第一槽では、前記ループ型液相重合反応器で生成されたプロピレン単独重合体の存在下、第一槽の重合温度:80℃および重合圧力(ゲージ圧力):2.1MPaを一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を一定に保つように供給しながらプロピレン単独重合体成分の気相重合を継続した。この第一槽で重合したプロピレン単独重合体成分を断続的に第二槽へ移送した。
第二槽では、重合温度:80℃および重合圧力(ゲージ圧力):1.7MPaを一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を一定に保つように水素を供給しつつ、第一槽から移送されたプロピレン単独重合体成分の存在下、気相中でプロピレンの単独重合を継続し、プロピレン単独重合体成分(以下、重合体成分(I)と省略する)を生成した。ついで、この第二槽で重合したプロピレン単独重合体成分(重合体成分(I))を断続的に第三槽へ移送した。
第二槽からサンプリングした重合体成分(I)の極限粘度([η])は1.07dl/g、アイソタクチック・ペンタッド分率は0.983であった。
[後段:プロピレン−エチレン共重合]
[気相重合]
第三槽では、重合温度:70℃および重合圧力(ゲージ圧力):1.35MPaを一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度とエチレン濃度とを一定に保つように水素とエチレンとを供給しながら、第二槽から移送された重合体成分(I)の存在下、気相中でプロピレンとエチレンとを共重合して、プロピレン−エチレン共重合体成分(以下、重合体成分(II)と省略する)を生成させた。ついで、重合反応器内(第三槽)の重合体成分(I)と重合体成分(II)からなる粉末を断続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、該粉末を80℃の窒素により乾燥して、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体からなる白色の粉末状パウダー(A−2)を得た。
得られた(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体全体の極限粘度([η]Total)は、1.4dl/gであり、エチレン含量は7.4重量%であった。又、プロピレン単独重合体成分(重合体成分(I))とプロピレン−エチレン共重合体成分(重合体成分(II))の重合比は、最終的に得られた(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体の重量とプロピレン単独重合体成分(重合体成分(I))の量から算出したところ、重量比で80/20であった。したがってプロピレン−エチレン共重合体成分(重合体成分(II))中のエチレンの含有量は37重量%であり、プロピレン−エチレン共重合体成分(重合体成分(II))の極限粘度([η]II)は2.7dl/gであった。また、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のMFRは、26(g/10分)であった。
【0146】
(2)ポリプロピレン樹脂組成物の製造:造粒(溶融混練)
得られた(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のパウダー(A−2)85重量%と、エチレン−オクテン共重合体のエラストマー(B−2)15重量%とを含む混合物100重量部に対して、(C−1)0.05重量部を配合し(C−1の主成分であるカルシウム塩の含有量は、0.033重量部に相当する)、さらに添加剤として(D−1)0.05重量部と(D−2)0.1重量部および(D−3)0.1重量部を配合して、タンブラーにより混合物を作製した。この混合物を、金属焼結フィルター(フィルターB、NF15N:開き目(濾過精度)が100μm)をダイ部にセットした内径15mmの二軸混練機(テクノベル社製、同方向回転式、L/D=45)にて、シリンダー温度を原料供給側からC1:190、C2:200、C3〜ダイ:220℃に設定し、スクリュー回転数:300rpm、押出量:約6kg/時間の条件で加熱溶融混練し、この溶融混練物をシリンダー最下流部のダイ内に取り付けたフィルターBを通過させた後に、ダイ部の樹脂排出孔(直径:3mm、3ヶ)から溶融状態で押出し、この押出物を冷水により冷却固化、切断してポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。
この得られたペレットを用いてMFRを測定した。また、上記に示したように射出成形機によって評価用の試験片を作製し、状態調整後、物性を測定した。評価結果を表4に示した。
【0147】
実施例5および6
C−1の配合量を変更した以外は、実施例4に記載の方法と同様に行った。結果を表4に示した。
【0148】
比較例6〜9
C−1の代わりに表4に記載の造核剤に変更した以外は、実施例4と同様に行った。結果を表4に示した。
【0149】
比較例10
C−1、造核剤何れも配合しなかった以外は、実施例4と同様に行った。結果を表4に示した。
【0150】
【表4】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0151】
実施例7
A−2およびB−2の配合量を変更した以外は、実施例4に記載の方法と同様に行った。結果を表5に示した。
【0152】
比較例11
C−1を配合しなかった以外は、実施例7に記載の方法と同様に行った。結果を表5に示した。
【0153】
【表5】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0154】
比較例12
B−2を配合しなかった以外は、実施例6に記載の方法と同様に行った。結果を表6に示す。
【0155】
比較例13
C−1の代わりにC−2に変更した以外は、比較例12に記載の方法と同様に行った。
結果を表6に示す。
【0156】
比較例14
C−1を配合しなかった以外は、比較例12に記載の方法と同様に行った。結果を表6に示す。
【0157】
【表6】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0158】
実施例8
(1)高濃度マスターバッチ(MB−6)の調製
プロピレン系重合体(A−3)95重量%と成分C(C−1)5重量%の混合物100重量部に対して、添加剤としてD−4:0.03重量部とD−5:0.3重量部を配合し、タンブラーにより混合物を作製した。この混合物を、内径15mmの二軸混練機(テクノベル社製、同方向回転式、L/D=45)にて、シリンダー温度を原料供給側からC1:160、C2:160、C3:180、C4〜ダイ:200℃に設定し、スクリュー回転数:700rpm、押出量:約6kg/時間の条件で加熱溶融混練し、この溶融混練物をシリンダー最下流部のダイ内に取り付けたフィルターAを通過させた後に、ダイ部の樹脂排出孔(直径:3mm、3ヶ)から溶融状態で押出し、この押出物を冷水により冷却固化、切断して高濃度マスターバッチを作製した。添加剤を除く高濃度マスターバッチの組成を表7に示した。
【0159】
(2)ポリプロピレン樹脂組成物の製造:造粒(溶融混練)
プロピレン系重合体(A−1)84重量%とエチレン系重合体(B−1)10重量%と高濃度マスターバッチのペレット(MB−6)6重量%からなる混合物(全体:100重量%)をタンブラーにより作製した。この混合物を、内径15mmの二軸混練機(テクノベル社製、同方向回転式、L/D=45)にて、シリンダー温度を原料供給側からC1:190、C2:210、C3〜ダイ:230℃に設定し、スクリュー回転数:300rpm、押出量:約6kg/時間の条件で加熱溶融混練し、この溶融混練物をシリンダー最下流部のダイ内に取り付けたフィルターAを通過させた後に、ダイ部の樹脂排出孔(直径:3mm、3ヶ)から溶融状態で押出し、この押出物を冷水により冷却固化、切断してポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。そして、実施例1に記載の方法と同様に得られたペレットを用いてMFRを測定した。また、射出成形機によって評価用の試験片を作製し、状態調整後、物性を測定した。評価結果を表8に示した。
尚、このポリプロピレン樹脂組成物中のC−1の含有量は0.3重量%であった(C−1の主成分であるカルシウム塩の含有量は、MB−6中には3.3重量%であり、A−1とB−1とA−3の混合物100重量部に対しては0.2重量部であった)。
【0160】
【表7】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0161】
実施例9
(1)高濃度マスターバッチ(MB−7)の調製
プロピレン系重合体(A−3)90重量%と造核剤(C−4)10重量%の混合物100重量部に変更した以外は、前記(MB−6)の作製方法と同様に行い、MB−7の作製を行った。添加剤を除く高濃度マスターバッチの組成を表7に示した。
【0162】
(2)ポリプロピレン樹脂組成物の製造:造粒(溶融混練)
エチレン系重合体(B−1)の代わりに(B−3)に変更した以外は実施例8に記載の方法と同様に行った。結果を表8に示した。
【0163】
実施例10
エチレン系重合体(B−1)の代わりに(B−4)に変更した以外は実施例8に記載の方法と同様に行った。結果を表8に示した。
【0164】
比較例15
高濃度マスターバッチMB−6の代わりに高濃度マスターバッチMB−7に変更した以外は実施例8に記載の方法と同様に行った。結果を表8に示した。
【0165】
比較例16
高濃度マスターバッチMB−6の代わりに高濃度マスターバッチMB−7に変更し、表8に示すようにプロピレン系重合体(A−1)と(MB−7)の配合比率を変更した以外は実施例9に記載の方法と同様に行った。結果を表8に示した。
【0166】
比較例17
高濃度マスターバッチMB−6の代わりに高濃度マスターバッチMB−7に変更し、表8に示すようにプロピレン系重合体(A−1)と(MB−7)の配合比率を変更した以外は実施例10に記載の方法と同様に行った。結果を表8に示した。
【0167】
【表8】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0168】
実施例11
(1)プロピレンの単独重合体(A−4)の製造
[液相重合工程:工程(L)]
プロピレンで十分置換されたSUS製ループ型液相重合反応器に、トリエチルアルミニウム及びシクロヘキシルエチルジメトキシシランを供給した。該反応器の内温を56〜58℃に調整し、該反応器の内圧(ゲージ圧力)をプロピレン及び水素で3.5MPaに調整し、特開2004−182981号公報の実施例1に記載された方法で合成した固体触媒成分を該反応器に連続供給して、液相中でプロピレンを単独重合させた。ついで、生成したプロピレン単独重合体を断続的に下記気相重合工程(工程(G))の気相重合反応器へ移送した。
工程(L)からサンプリングした重合体成分の極限粘度([η])は1.61dl/gであり、アイソタクチック・ペンタッド分率は0.981であった。
[気相重合工程:工程(G)]
気相重合反応器の重合温度:86℃および重合圧力(ゲージ圧力):2.1MPaを一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を一定に保つように水素を供給しつつ、工程(L)から移送されたプロピレン単独重合体の存在下、気相中で継続してプロピレンを単独重合させ、プロピレン単独重合体の生成を完了させた。
工程(G)の粉末状のプロピレン単独重合体を断続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、110℃の窒素により乾燥して、プロピレン単独重合体を得た。なお、工程(L)と工程(G)での重合比率は、10/90であった。
工程(G)で得られた最終重合体であるプロピレン単独重合体(A−4)のMFRは8.0(g/10分)、極限粘度([η])は1.61dl/gであり、アイソタクチック・ペンタッド分率は0.981であった。
【0169】
(2)ポリプロピレン樹脂組成物の製造:造粒(溶融混練)
上記粉末状のプロピレン系重合体(A−4)85重量部と、エチレン系重合体(B−2)15重量部と、金属塩(C−1)0.2重量部(この中、主成分の含有率は0.2×0.66=0.132重量部)とを配合し、これに添加剤(D−1)0.05重量部と、添加剤(D−2)0.1重量部と、添加剤(D−3)0.1重量部とを配合して、タンブラーにより混合物を作製した。
この混合物を、内径が15mmでL/Dが45の同方向回転式の二軸混練機(テクノベル社製)にて、シリンダー温度を原料供給側から順番に、C1域を190℃に、C2域を200℃、C3域からダイまでを220℃にそれぞれ設定し、スクリュー回転数300rpm、押出量約6kg/時間の条件で加熱溶融混練した。該溶融混練物を、シリンダー最下流部のダイ内に取り付けたファインポアNF15N(日本精線株式会社製の商品名)なる開き目(濾過精度)が100μmの金属焼結フィルター(「フィルターB」と称する)にかけた後、ダイ部の樹脂排出孔(直径:3mm、3ヶ)から溶融状態で押出し、冷水により冷却固化、切断してポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。
該ペレットのMFRは8.0g/10分、引張降伏強度は33MPa、アイゾッド衝撃強度は27.3kJ/m(23℃)、2.4kJ/m(−20℃)であった。結果を表9に示した。
【0170】
実施例12
エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−5)15重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは8.2g/10分、引張降伏強度は33MPa、アイゾッド衝撃強度は29.6kJ/m(23℃)、2.9kJ/m(−20℃)であった。結果を表9に示した。
【0171】
比較例18
金属塩(C−1)0.2重量部を金属塩(C−4)0.2重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは7.6g/10分、引張降伏強度は33MPa、アイゾッド衝撃強度は24.0kJ/m(23℃)、2.3kJ/m(−20℃)であった。結果を表9に示した。
【0172】
比較例19
エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−5)15重量部へ変更したこと、金属塩(C−1)0.2重量部を金属塩(C−4)0.2重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは7.6g/10分、引張降伏強度は32MPa、アイゾッド衝撃強度は22.8kJ/m(23℃)、2.3kJ/m(−20℃)であった。結果を表9に示した。
【0173】
比較例20
エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−6)15重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは11.8g/10分、引張降伏強度は40MPa、アイゾッド衝撃強度は2.8kJ/m(23℃)、1.4kJ/m(−20℃)であった。結果を表9に示した。
【0174】
比較例21
プロピレン系重合体(A−4)の85重量部を100重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)を用いなかったこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは9.4g/10分、引張降伏強度は42MPa、アイゾッド衝撃強度は2.5kJ/m(23℃)、1.4kJ/m(−20℃)であった。結果を表9に示した。
【0175】
【表9】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0176】
実施例13
(1)プロピレンとエチレンのランダム共重合体(A−5)の製造
[液相重合工程:工程(L)]
プロピレンとエチレンで十分置換されたSUS製ループ型液相重合反応器に、トリエチルアルミニウム及びシクロヘキシルエチルジメトキシシランを供給した。該反応器の内温を54〜56℃に調整し、該反応器の内圧(ゲージ圧力)をプロピレン、エチレン及び水素で3.5MPaに調整し、特開2004−182981号公報の実施例1に記載された方法で合成した固体触媒成分を該反応器に連続供給して、液相中でプロピレンとエチレンを共重合させた。生成したプロピレンとエチレンのランダム共重合体を断続的に下記気相重合工程(工程(L))の気相重合反応器へ移送した。
工程(G)からサンプリングしたプロピレンとエチレンのランダム重合体成分の極限粘度([η])は1.7dl/gであり、エチレン単位の含量は2.5重量%であった。
[気相重合工程:工程(G)]
気相重合反応器の重合温度:81℃および重合圧力(ゲージ圧力):2.1MPaを一定に保つようにプロピレンおよびエチレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を一定に保つように水素を供給しつつ、工程(L)から移送されたプロピレンとエチレンの共重合体の存在下、気相中で継続してプロピレンとエチレンを共重合させ、プロピレンとエチレンのランダム共重合体の生成を完了させた。
工程(G)の粉末状のプロピレンとエチレンのランダム共重合体を断続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、95℃の窒素により乾燥して、プロピレンとエチレンのランダム共重合体を得た。 なお、工程(L)と工程(G)での重合比率は、6/94であった。
工程(G)で得られた最終重合体であるプロピレンとエチレンのランダム共重合体のMFRは6.0(g/10分)、極限粘度([η])は1.7dl/g、エチレン単位の含量は3.7重量%であり、アイソタクチック・ペンタッド分率はエチレン単位の含量が多い理由により測定できなかった。
【0177】
(2)ポリプロピレン樹脂組成物の製造:造粒(溶融混練)
上記粉末状のプロピレン系重合体(A−5)85重量部と、エチレン系重合体(B−2)15重量部と、金属塩(C−1)0.2重量部(この中、主成分の含有率は0.2×0.66=0.132重量部)とを配合し、これに添加剤(D−1)0.05重量部と、添加剤(D−2)0.1重量部と、添加剤(D−3)0.1重量部とを配合して、タンブラーにより混合物を作製した。
この混合物を、内径が15mmでL/Dが45の同方向回転式の二軸混練機(テクノベル社製)にて、シリンダー温度を原料供給側から順番に、C1域を190℃に、C2域を200℃、C3域からダイまでを220℃にそれぞれ設定し、スクリュー回転数300rpm、押出量約6kg/時間の条件で加熱溶融混練した。該溶融混練物を、シリンダー最下流部のダイ内に取り付けたファインポアNF15N(日本精線株式会社製の商品名)なる開き目(濾過精度)が100μmの金属焼結フィルター(「フィルターB」と称する)にかけた後、ダイ部の樹脂排出孔(直径:3mm、3ヶ)から溶融状態で押出し、冷水により冷却固化、切断してポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。
該ペレットのMFRは5.6g/10分、引張降伏強度は24MPa、アイゾッド衝撃強度は40.8KJ/m(23℃)、2.4KJ/m(−20℃)であった。結果を表10に示した。
【0178】
実施例14
エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−5)15重量部へ変更したこと以外は実施例13と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは5.6g/10分、引張降伏強度は23MPa、アイゾッド衝撃強度は42.4kJ/m(23℃)、2.5kJ/m(−20℃)であった。結果を表10に示した。
【0179】
比較例22
金属塩(C−1)0.2重量部を金属塩(C−4)0.2重量部へ変更したこと以外は実施例13と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは5.5g/10分、引張降伏強度は24MPa、アイゾッド衝撃強度は34.3kJ/m(23℃)、2.2kJ/m(−20℃)であった。結果を表10に示した。
【0180】
比較例23
エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−5)15重量部へ変更したこと、金属塩(C−1)0.2重量部を金属塩(C−4)0.2重量部へ変更したこと以外は実施例13と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは5.3g/10分、引張降伏強度は23MPa、アイゾッド衝撃強度は37.2kJ/m(23℃)、2.4kJ/m(−20℃)であった。結果を表10に示した。
【0181】
比較例24
エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−6)15重量部へ変更したこと以外は実施例13と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは7.8g/10分、引張降伏強度は29MPa、アイゾッド衝撃強度は4.7kJ/m(23℃)、1.4kJ/m(−20℃)であった。結果を表10に示した。
【0182】
比較例25
プロピレン系重合体(A−5)の85重量部を100重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)を用いなかったこと以外は実施例13と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは6.2g/10分、引張降伏強度は31MPa、アイゾッド衝撃強度は5.8kJ/m(23℃)、1.4kJ/m(−20℃)であった。結果を表10に示した。
【0183】
【表10】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0184】
参考例1
プロピレン系重合体(A−4)の85重量部を90重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−7)10重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは10.8g/10分、引張降伏強度は38MPa、アイゾッド衝撃強度は2.7kJ/m(23℃)、1.5kJ/m(−20℃)であった。結果を表11に示した。
【0185】
参考例2
プロピレン系重合体(A−4)の85重量部を90重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−8)10重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは10.6g/10分、引張降伏強度は38MPa、アイゾッド衝撃強度は2.8kJ/m(23℃)、1.5kJ/m(−20℃)であった。結果を表11に示した。
【0186】
参考例3
プロピレン系重合体(A−4)の85重量部を80重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−8)20重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは12.6g/10分、引張降伏強度は34MPa、アイゾッド衝撃強度は2.5kJ/m(23℃)、1.5kJ/m(−20℃)であった。結果を表11に示した。
【0187】
参考例4
プロピレン系重合体(A−4)の85重量部を70重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−8)30重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは14.8g/10分、引張降伏強度は31MPa、アイゾッド衝撃強度は2.9kJ/m(23℃)、1.5kJ/m(−20℃)であった。結果を表11に示した。
【0188】
参考例5
プロピレン系重合体(A−4)の85重量部を60重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−8)40重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは17.7g/10分、引張降伏強度は27MPa、アイゾッド衝撃強度は3.0kJ/m(23℃)、2.2kJ/m(−20℃)であった。結果を表11に示した。
【0189】
【表11】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0190】
比較例26
プロピレン系重合体(A−4)の85重量部を40重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−8)60重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは23.6g/10分、引張降伏強度は19MPa、アイゾッド衝撃強度は2.7kJ/m(23℃)、2.2kJ/m(−20℃)であった。結果を表12に示した。
【0191】
比較例27
プロピレン系重合体(A−4)の85重量部を30重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−8)70重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは27.8g/10分、引張降伏強度は15MPa、アイゾッド衝撃強度は3.7kJ/m(23℃)、2.9kJ/m(−20℃)であった。結果を表12に示した。
【0192】
比較例28
プロピレン系重合体(A−4)の85重量部を10重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−8)90重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは35.8g/10分、引張降伏強度は10MPa、アイゾッド衝撃強度は26.6kJ/m(23℃)、6.7kJ/m(−20℃)であった。結果を表12に示した。
【0193】
比較例29
プロピレン系重合体(A−4)の85重量部を10重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−2)15重量部を(B−7)90重量部へ変更したこと以外は実施例11と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは50.3g/10分、引張降伏強度は測定できず、アイゾッド衝撃強度は35.4kJ/m(23℃)、4.6kJ/m(−20℃)であった。結果を表12に示した。
【0194】
【表12】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量
【0195】
実施例15
実施例4に記載の(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体(A−2)90重量部と、エチレン系重合体(B−1)10重量部と、金属塩(C−1)0.2重量部(この中、主成分の含有率は0.2×0.66=0.132重量部)とを配合し、これに添加剤(D−1)0.05重量部と、添加剤(D−2)0.1重量部と、添加剤(D−3)0.1重量部とを配合して、タンブラーにより混合物を作製した。
この混合物を、内径が15mmでL/Dが45の同方向回転式の二軸混練機(テクノベル社製)にて、シリンダー温度を原料供給側から順番に、C1域を190℃に、C2域を200℃、C3域からダイまでを220℃にそれぞれ設定し、スクリュー回転数300rpm、押出量約6kg/時間の条件で加熱溶融混練した。該溶融混練物を、シリンダー最下流部のダイ内に取り付けたファインポアNF15N(日本精線株式会社製の商品名)なる開き目(濾過精度)が100μmの金属焼結フィルター(「フィルターB」と称する)にかけた後、ダイ部の樹脂排出孔(直径:3mm、3ヶ)から溶融状態で押出し、冷水により冷却固化、切断してポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。
該ペレットのMFRは19.3g/10分、引張降伏強度は24MPa、アイゾッド衝撃強度は41.5KJ/m(23℃)、6.7KJ/m(−20℃)であった。結果を表13に示した。
【0196】
実施例16
エチレン系重合体(B−1)10重量部をエチレン系重合体(B−7)10重量部へ変更したこと以外は実施例15と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは20.7g/10分、引張降伏強度は24MPa、アイゾッド衝撃強度は42.4kJ/m(23℃)、6.9kJ/m(−20℃)であった。結果を表13に示した。
【0197】
実施例17
エチレン系重合体(B−1)10重量部をエチレン系重合体(B−6)10重量部へ変更したこと以外は実施例15と同様に行いポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは22.0g/10分、引張降伏強度は25MPa、アイゾッド衝撃強度は42.3kJ/m(23℃)、6.7kJ/m(−20℃)であった。結果を表13に示した。
【0198】
比較例30
プロピレン系重合体(A−2)の90重量部を10重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−1)10重量部を90重量部へ変更したこと以外は実施例15と同様に行い樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは28.4g/10分、引張降伏強度は0MPa(測定できず)、アイゾッド衝撃強度は25.3kJ/m(23℃)、50.6kJ/m(−20℃)であった。結果を表13に示した。
【0199】
比較例31
プロピレン系重合体(A−2)の90重量部を10重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−1)10重量部をエチレン系重合体(B−7)90重量部へ変更したこと以外は実施例15と同様に行い樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは50.5g/10分、引張降伏強度は0MPa(測定できず)、アイゾッド衝撃強度は41.5kJ/m(23℃)、6.9kJ/m(−20℃)であった。結果を表13に示した。
【0200】
比較例32
プロピレン系重合体(A−2)の90重量部を10重量部へ変更したこと、エチレン系重合体(B−1)10重量部をエチレン系重合体(B−6)90重量部へ変更したこと以外は実施例15と同様に行い樹脂組成物からなるペレットを得た。該ペレットのMFRは30.6g/10分、引張降伏強度は24MPa(測定できず)、アイゾッド衝撃強度は2.4kJ/m(23℃)、2.4kJ/m(−20℃)であった。結果を表13に示した。
【0201】
【表13】

( )はC−1の主成分であるカルシウム塩の含有量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(A)51〜99重量%、および密度が0.85〜0.93(g/cm)のエチレン系重合体(B)1〜49重量%を含む樹脂組成物((A)と(B)の合計重量を100重量%とする)と、
前記樹脂組成物100重量部に対して、下記一般式(I)

(式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜9個のアルコキシ基、炭素原子数1〜9個のアルキレンオキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜9個のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、およびフェニル基からなる群から選択される。ここで、これらの基がアルキル基である場合、アルキル基が結合して炭素原子数6個までの炭素環を形成してよい。この化合物はトランスまたはシス配置のいずれであってもよい。)
で示される少なくとも一種の金属塩類(C)0.001〜0.5重量部と、を含むポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
前記プロピレン系重合体(A)は、下記要件(a)および(b)を満足するプロピレン系ランダム共重合体である請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
要件(a):
測定温度230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.5〜200g/10分である。
要件(b):
エチレンおよび/または炭素原子数4〜10個のα−オレフィンに由来する単位が0.1〜40重量%であり、プロピレンに由来する単位が99.9〜60重量%である(プロピレン系重合体(A)の重量を100重量%とする)。
【請求項3】
前記プロピレン系重合体(A)は、
下記要件(c)、(d)および(e)を満足するプロピレン系共重合体である、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
要件(c):
プロピレン系重合体(A)は、前段の重合工程により製造される重合体成分(I)、および後段の重合工程により製造される重合体成分(II)からなるプロピレン系共重合体であり、
重合体成分(I)は、135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η])が0.1〜5(dl/g)のプロピレン系重合体成分であり、
重合体成分(II)は、エチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレンに由来する単位とを有する共重合体成分であって、135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]II)が1〜20(dl/g)のプロピレン系共重合体成分である。
要件(d):
重合体成分(II)に含有されるエチレンおよび炭素原子数4〜10個のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量が、1〜80重量%である(重合体成分(II)の重量を100重量%とする)。
要件(e):
重合体成分(II)の含有量が、1〜50重量%である(プロピレン系重合体(A)の重量を100重量%とする)。
【請求項4】
エチレン系重合体(B)は、エチレンと炭素原子数4〜10個のα−オレフィンとの共重合体であり、前記α−オレフィンに由来する単位の含有量が1〜49重量%であり(エチレン系重合体(B)の重量を100重量%とする)、密度が0.85〜0.93(g/cm)であり、190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.5〜50g/10分である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
金属塩類(C)が、下記構造式で示される1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。

【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物を成形して得られる成形体。

【公開番号】特開2011−74379(P2011−74379A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198561(P2010−198561)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】